JP4774591B2 - 低粘度の液状酸無水物の製造方法およびエポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のメチルテトラヒドロ無水フタル酸を含有してなる低粘度の液状酸無水物の製造方法およびこの液状酸無水物とエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エポキシ樹脂の硬化剤としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸(以下、Me−THPAと略す)がよく知られており、室温で液状のものが一般に知られている。
【0003】
このような室温で液状のMe−THPAとしては、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸(以下、4Me−THPAと略す)を硫酸、リン酸、BF3 コンプレックス、AlCl3 、カチオン交換樹脂等の酸触媒等の存在下に加熱して構造異性化反応をさせて得られるシクロヘキセン環内の二重結合位置の異なる構造異性体混合物が知られている(例えば、米国特許第2,959,599号明細書)。
【0004】
また、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸(以下、3Me−THPAと略す)を塩基性触媒の存在下または不存在下に加熱することによって、シクロヘキセン環内の二重結合位置の移動が伴わない立体異性化反応をさせて得られる立体異性体混合物が知られている(例えば、特開昭54−22499号公報)。
【0005】
さらに、4Me−THPAと3Me−THPAを特定の比率で混合したものを構造異性化する(例えば、特公昭45−15495号公報)か、立体異性化する(例えば、特開昭54−151941号公報)ことによって、−15〜−20℃でも液状を保つ酸無水物混合物が得られることが知られている。
【0006】
また、4Me−THPAと3Me−THPAを特定の比率で混合したものを構造異性化後、立体異性化することによって、−20℃以下の融点を持つ液状物を得ることも公知である(例えば、特開昭55−89277号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の3Me−THPAや4Me−THPAは、通常、ナフサを分解して得られるC5 留分から予めトランス−ピペリレンやイソプレンを抽出分離後、それぞれ無水マレイン酸とディールス・アルダー反応をさせることによって得られる。このように3Me−THPAと4Me−THPAを別々に作っておくと、混合比が自由に調節できるという利点があるものの、共役ジエン類の抽出分離にコストがかかるため、経済的でない。
C5 留分中のトランス−ピペリレンやイソプレンを予め分離することなく無水マレイン酸と反応させれば、より経済的にしかも省エネルギー的に液状酸無水物が製造できると考えられる。
【0008】
しかし、C5 留分中にはこれらの共役ジエンの他にシクロペンタジエンが大量に含まれ、無水マレイン酸と反応してエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸が副生してMe−THPA混合物の純度を低下させることが予想され、無水マレイン酸と反応させる前に、C5 留分中からシクロペンタジエンをできるだけ減少させておく必要がある。
シクロペンタジエンの含有量をトランス−ピペリレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの合計量に対して10重量%以下に減少させたC5 留分と無水マレイン酸を反応させたところ、3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が25/75〜35/65でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸の含有量が10重量%以下のMe−THPA混合物が得られた。
【0009】
このようにして調製したMe−THPA混合物を構造異性化したところ、−20℃で15日間以上安定な液状物が得られたが、粘度が比較的高く(25℃で62.8mPa・s)、また、このMe−THPA混合物を立体異性化したところ、低粘度(25℃で39.7mPa・s)の液状物が得られたが、液状安定性が劣り、−20℃の恒温槽に数時間放置すると結晶が析出した。
【0010】
同様に構造異性化後、立体異性化したところ、低粘度(25℃で37.3mPa・s)で、しかも−20℃で−15日間放置しても結晶が析出しない液状物が得られたが、この異性化物は蒸留後も黄褐色に着色しており、エポキシ樹脂硬化物を切断すると中央部が赤〜褐色に着色して、硬化物の色相が不均一になるという問題があった。
【0011】
本発明は、シクロペンタジエンの含有量をトランス−ピペリレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの合計量に対して10重量%以下に減少させたC5 留分と無水マレイン酸から合成した3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が25/75〜35/65でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸の含有量が10重量%以下の3Me−THPA混合物について特定の異性化を行うことにより低粘度(25℃で50mPa・s以下)で、−20℃でも液状安定性を有し、かつエポキシ樹脂硬化物の色相が均一となる液状酸無水物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、この液状酸無水物とエポキシ樹脂からなる低粘度で硬化物の特性の優れたエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決しようとする鋭意研究を重ねた結果、C5 留分と無水マレイン酸から合成したエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸の含有量が10重量%以下のMe−THPA混合物を立体異性化後、構造異性化することによって課題が解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、シクロペンタジエンの含有量をトランス−ピペリレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの合計量に対して10重量%以下に減少させたC5 留分と無水マレイン酸から合成した3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が25/75〜35/65で、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸の含有量が10重量%以下のMe−THPA混合物を立体異性化触媒の存在下または不存在下に加熱して3Me−THPAの異性化率が70%以上となるように立体異性化後、構造異性化触媒の存在下加熱して4Me−THPAの異性化率が35〜60%とする低粘度の液状酸無水物の製造方法に関する。
また、本発明はこの液状酸無水物およびエポキシ樹脂を含有してなるエポキシ樹脂組成物に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においては、前述のようにナフサを熱分解して得られるC5 留分から予め共役ジエンを分離することなく直接無水マレイン酸と反応させることが必須である。一般にC5 留分中にはトランス−ピペリレンが5〜8重量%、イソプレンが12〜15重量%含まれ、その他の共役ジエンとしてシクロペンタジエンが16〜20重量%含まれている。シクロペンタジエンは無水マレイン酸と反応してエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸を生成する。そこで、C5 留分と無水マレイン酸を反応させる前に予めシクロペンタジエンの含有量を減少させないとMe−THPAの純度を下げたり、粘度や凝固点を上昇させる等の不都合が生じる。
【0014】
C5 留分中のシクロペンタジエン含有量を減少させるには、C5 留分を加熱してシクロペンタジエンをジシクロペンタジエンに転化し、沸点差を利用して生成したジシクロペンタジエンを除去する等の公知の技術が使用できる。この際、C5 留分の加熱条件を調節することにより、シクロペンタジエンの含有量を調節できる。
【0015】
ところで、シクロペンタジエンの含有量を実質上零とするには高温で長時間を要し、省エネルギーや経済性の点で好ましくなく、また、高温で長時間の加熱によりトランス−ピペリレンやイソプレンなどの有効成分がシクロペンタジエンとともに二量体を生成し、有効成分の損失を招くので好ましくない。
本発明者らは、Me−THPA混合物中のエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸含有量とエポキシ硬化物の特性について検討したところ、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸が10重量%以下含まれていても耐熱性や機械、電気特性に大きな影響がないことを確認した。
【0016】
C5 留分を穏和な条件で加熱し、シクロペンタジエンの含有量はトランス−ピペリレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの合計量に対して、約10重量%以下に調節される。
本発明は、上記のMe−THPA混合物について特定の異性化を行うことにより低粘度で、−20℃でも液状安定性を有し、かつエポキシ樹脂硬化物の色相が均一となる液状酸無水物の製造方法を提供するものである。
【0017】
3Me−THPA/4Me−THPAの重量比は、C5 留分中のトランス−ピペリレン/イソプレンの含有比によって決まり、通常のC5 留分を使用すれば、3Me−THPA/4Me−THPAの重量比は上記の範囲に入る。
3Me−THPA/4Me−THPAの重量比をこの範囲外とするには、C5 留分にトランス−ピペリレンやイソプレンを添加するか、生成したMe−THPA混合物に3Me−THPAや4Me−THPAを添加することが必要であるが、経済性が損なわれるので、本発明を実施するにはこのような操作は必要がない。
【0018】
Me−THPA混合物中のエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸の含有量が増えるに従って粘度が増加し、10重量%を越えると液状酸無水物の粘度が25℃で50mPa・s以上となり、目的の低粘度品が得られない。
本発明における25℃で50mPa・s以下の低粘度な液状酸無水物は、次のようにして製造される。
【0019】
すなわち、上述したMe−THPA混合物を先ず、立体異性触媒の存在下または不存在下に加熱して立体異性体混合物が得られ、ついで構造異性化触媒の存在下に加熱される。この順序を逆にしたのでは、本発明の目的を達成するような液状酸無水物を得ることはできない。
【0020】
本発明は、立体異性化の際3Me−THPAの異性化率を70%以上となるように調節することが必須である。3Me−THPAの立体異性化率は、ガスクロマトグラフィーにより、シス体とトランス体の含有率を分析し{トランス体/(シス体+トランス体)}×100を計算することによって求められる。
【0021】
3Me−THPAの異性化率が70%未満であると、得られた液状酸無水物の粘度が上昇するとともに−20℃での液状安定性が悪化するので好ましくなく、本発明の目的を達成するような低粘度液状酸無水物を得ることはできない。
【0022】
立体異性化触媒としては、塩基性触媒が用いられる。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、アルコラート、フェノラート等、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジメチルアミノエタノール等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩やゼオライト等がある。
立体異性化は、Me−THPA混合物に対して立体異性化触媒を0.05〜5重量%添加し、100〜250℃で0.5時間〜20時間加熱することが好ましく、特に150〜200℃で2〜10時間加熱することが好ましい。
【0023】
また、立体異性化触媒の不存在下での異性化は150〜250℃で1〜20時間加熱することが好ましく、特に、180〜230℃で3〜10時間加熱することが好ましい。
【0024】
立体異性化触媒の存在下または不存在下での加熱により得られる立体異性化物は、蒸留により立体異性化触媒や高分子量の副生物を分離後または分離せずにそのまま構造異性化触媒の存在下加熱に供される。4Me−THPAの構造異性化率を35〜60%になるように制御することが必須である。
【0025】
4Me−THPAの構造異性体としては、二重結合の位置により4Me−Δ4 −THPA、4Me−Δ3 −THPA、4Me−Δ2 −THPAおよび4Me−Δ1 −THPAがあるが、本発明では4Me−Δ2 −THPAや4Me−Δ1 −THPAの合計量が0.5%未満のものが好ましく、これらを全く含まないものが特に好ましい。
【0026】
本発明でいう4Me−THPAの異性化率は、ガスクロマトグラフィーにより4Me−Δ4 −THPAと4Me−Δ3 −THPAの含有率を分析し、{4Me−Δ3 −THPA/(4Me−Δ4 −THPA+4Me−Δ3 −THPA)}×100を計算することによって求められる。
【0027】
4Me−THPAの異性化率が35%未満の場合、得られた液状酸無水物は低粘度であるものの、−20℃での液状安定性が劣る。また、4Me−THPAの異性化率が60%を越えると得られる液状酸無水物の粘度が上昇する。
【0028】
このため、本発明の目的である50mPa・s以下の低粘度で、−20℃で液状安定性を示し、かつ硬化物の色相が均一となる液状酸無水物を得るには、4Me−THPAの異性化率を35〜60%の範囲に制御することが必要である。
【0029】
構造異性化触媒としては、例えば硫酸、リン酸、ポリリン酸、パラトルエンスルホン酸、BF3 ・エーテラート、BF3 ・フェノラート、AlCl3 、TiCl4 、ZnCl4 、カチオン交換樹脂等の酸性触媒が用いられる。
【0030】
これらの構造異性化触媒の添加量は、Me−THPA混合物に対して0.05〜5重量%が好ましいが、4Me−THPAの異性化率が35〜60%になるように適宜添加量が調節される。
【0031】
また、加熱条件は100〜250℃で0.5〜20時間加熱することが好ましいが、構造異性化触媒の添加量と同様に4Me−THPAの異性化率が35〜60%になるように適宜条件が調節される。
【0032】
構造異性化触媒の存在下に加熱により得られる酸無水物混合物は、加熱終了後、蒸留等により触媒や高分子量の副生物を除去することによって、目的の低粘度の液状酸無水物が得られる。
【0033】
本発明により得られる低粘度の液状酸無水物は、エポキシ樹脂の硬化剤として有用であり、エポキシ樹脂と混合することにより低粘度で硬化物の特性が優れたエポキシ樹脂組成物が得られる。
【0034】
エポキシ樹脂はエポキシ基を分子内に2個以上有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるもの、1,4−ブタジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸のポリグリシジルエステル、アミン、アミドまたは複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、(3′,4′−エポキシシクロヘキシルメチル)−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂等がある。
【0035】
本発明において、エポキシ樹脂と上述の製造方法によって得られた低粘度の液状酸無水物は適宜の割合で混合されるが、エポキシ基1当量に対して酸無水物基が0.8〜1当量になるように配合することが好ましい。
【0036】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物には、硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の三級アミン、このような三級アミンの2−エチルヘキサン酸塩、フェノール塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、ナトリウムメトキシド、コバルト、ニッケル等の金属アセチルアセトン錯塩等の金属塩などがある。
【0037】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂に対して、0.1〜8重量%使用することが好ましく、特に0.3〜5重量%使用することが好ましい。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物には、さらに反応性希釈剤、可塑剤、充填剤、染料、難燃剤、シランカップリング剤、沈降防止剤等を適宜添加することができる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、部および%は、それぞれ重量部および重量%を意味する。
異性化率は上述したようにガスクロマトグラフィー分析により求めた。色相はガードナーによった。粘度はE型粘度計を用いて25℃で測定した。低温での液状安定性は、液状酸無水物を直径10mm、高さ10cmの試験管に8分目程入れてから密栓し、これを−20℃に設定した恒温槽に放置し、結晶が析出し始めるまでの日数を調べた。また、硬化物の色相均一性は次のようにして評価した。エポキシ樹脂(エピコート828、油化シェルエポキシ(株)、商品名)80部、臭素化エポキシ樹脂(BROC、日本化薬(株)、商品名)20部、チタン白5部およびエロジール(日本アエロジル(株)、商品名)3部を乳鉢で混合したものをA液とする。上記酸無水物100部とシアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ−CN、四国化成(株)、商品名、硬化促進剤)2部の混合液をB液とする。A液108部にB液60部を混合して、エポキシ樹脂組成物を得、プリンカップに30gはかりとる。80℃で3時間、ついで、105℃で3時間加熱して硬化後、硬化物をプリンカップから取り出し、半分に切断して断面の色相を目視で観察した。全体が白色乃至淡黄色で均一な色相を呈するものを○、中央部が赤みを呈し、周囲が淡黄色であり、不均一な色相を呈するものを×として評価した。硬化物の熱変形温度の測定法は、ASTM:D648によった。
【0039】
[実施例1]
シクロペンタジエン18.6%、イソプレン14.2%およびトランス−ピペリレン6.4%を含むC5 留分を110℃で12時間加熱反応処理後、90℃で常圧蒸留を行い沸点が80℃までの留分(以下C5 −D留分と略す)を集めた。このC5 −D留分はシクロペンタジエン1.1%、イソプレン17.1%およびトランス−ピペリレン7.6%を含有していた。
【0040】
このC5 −D留分500部と無水マレイン酸143部とハイドロキノン0.3部を耐圧オートクレーブに仕込み、100℃で5時間反応させた。反応終了後90℃で常圧蒸留を行い、未反応低沸点成分を除去した。さらに90℃、4kPaの減圧下で低沸点成分を除去後、3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が31/69でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸を4.3%含有するMe−THPA混合物233部を得た。
【0041】
このMe−THPA混合物200gとジメチルアミノエタノール(和光純薬工業、試薬一級)0.16gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。この反応液にポリリン酸−105(日本化学工業(株)、商品名、以下ポリリン酸と略す)0.90gを加え、さらに、170℃で2時間加熱攪拌した。その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で低粘度の液状酸無水物184gを得た。表1にMe−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を示す。
【0042】
[実施例2]
シクロペンタジエン17.3%、イソプレン13.9%およびトランス−ピペリレン5.7%を含むC5 留分を110℃で10時間加熱反応処理後、90℃で常圧蒸留を行い沸点が80℃まで留分を集めた。このC5 −D留分中にはシクロペンタジエン2.2%、イソプレン16.4%およびトランス−ピペリレン6.6%を含有していた。
このC5 −D留分500部を用いた以外は実施例1と同様な処理を行い、3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が29/71でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸を8.8%含有するMe−THPA混合物235部を得た。
このMe−THPA混合物200gとジメチルアミノエタノール0.16gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。この反応液にポリリン酸0.80gを加え、さらに170℃で2時間加熱攪拌した。その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で低粘度な液状酸無水物186gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
シクロペンタジエン18.9%、イソプレン13.9%およびトランス−ピペリレン7.3%を含むC5 留分を110℃で10時間加熱反応処理後、90℃で常圧蒸留を行い沸点が80℃までの留分を集めた。このC5 −D留分はシクロペンタジエン2.0%、イソプレン16.7%およびトランス−ピペリレン8.7%を含有していた。
このC5 −D留分500部を用いた以外は実施例1と同様な処理を行い、3Me−THPA/4Me−THPA比率が35/65でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸を7.3%含有するMe−THPA混合物235部を得た。
このMe−THPA混合物200gとジメチルアミノエタノール0.16gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。この反応液にポリリン酸0.90gを加え、さらに170℃で3時間加熱攪拌した。その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で低粘度の液状酸無水物182gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
実施例2で使用したMe−THPA混合物200gを実施例1と同一条件で異性化および減圧蒸留し、室温で低粘度な液状酸無水物186gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
[比較例1]
実施例2で使用したMe−THPA混合物200gとジメチルアミノエタノール0.16gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。この反応液にポリリン酸0.70gを加え、さらに170℃で2時間加熱攪拌した。
その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で低粘度な液状の酸無水物185gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表2に示す。
【0047】
[比較例2]
実施例2で使用したMe−THPA混合物200gとジメチルアミノエタノール0.16gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。この反応液にポリリン酸1.10gを加え、さらに170℃で2時間加熱攪拌した。
その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で液状の酸無水物184gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表2に示す。
【0048】
[比較例3]
実施例1で使用したC5 留分を110℃で8時間加熱処理後、90℃で常圧蒸留を行い沸点80℃までの留分を集めた。このC5 −D留分中にはシクロペンタジエン2.9%、イソプレン16.9%およびトランス−ピペリレン7.5%を含有していた。
このC5 −D留分500部と無水マレイン酸143部とハイドロキノン0.3部を耐圧オートクレーブに仕込み、100℃で5時間反応させた。反応終了後90℃で常圧蒸留を行い、未反応低沸点成分を除去した。さらに90℃、4kPaの減圧下で低沸点成分を除去後、3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が31/69でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸を10.2%含有するMe−THPA混合物235部を得た。
このMe−THPA混合物を実施例1と同一条件で異性化および減圧蒸留し、室温で液状の酸無水物185gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表2に示す。
【0049】
[比較例4]
実施例2で使用したMe−THPA混合物200gと4−メチルΔ4 −テトラヒドロ無水フタル酸(東京化成、試薬)69gを80℃で加熱混合した。このMe−THPA混合物は、3Me−THPA/4Me−THPAの重量比が21/79で、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸を6.5%含有していた。
このMe−THPA混合物の200gについて、実施例1と同一条件で異性化および減圧蒸留し、室温で液状酸無水物185gを得た。Me−THPA混合物の異性化条件と異性化物の性状を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
[比較例5]
実施例2で使用したMe−THPA混合物200gとジメチルアミノエタノール0.16gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で低粘度の液状酸無水物183gを得た。表3に異性化条件と異性化物の性状を示す。
【0052】
[比較例6]
実施例2で使用したMe−THPA混合物200gとポリリン酸0.40gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で4時間加熱攪拌した。その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温での液状酸無水物193gを得た。異性化条件と異性化物の性状を表3に示す。
【0053】
[比較例7]
実施例3で使用したMe−THPA混合物200gとポリリン酸0.40gを200mLの四つ口フラスコにとり、170℃で2時間加熱攪拌した。この反応液にジメチルアミノエタノール0.84gを加え、さらに170℃で2時間加熱攪拌した。その後減圧蒸留を行い、133Paで104〜108℃の沸点を持つ室温で低粘度な液状酸無水物185gを得た。表3に異性化条件と異性化物の性状を示す。
【0054】
【表3】
【0055】
[実施例5]
エピコート828(油化シェルエポキシ(株)商品名、エポキシ樹脂)100部、実施例2により得られた液状酸無水物85部および硬化促進剤としてDMP−30(ロームアンドハース(株)商品名、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)1部を均一になるまで混合した。この配合物の25℃における粘度は、670mPa・sであった。次にこの配合物を120℃で5時間および150℃で15時間硬化させた。得られた硬化物の熱変形温度は132℃、曲げ強度は132MPaであった。
【0056】
[比較例8]
比較例5で得られた液状酸無水物を用いた以外は、実施例5と同様に配合物と硬化物を製造した。この配合物の25℃における粘度は、550mPa・sであった。また、硬化物の熱変形温度は124℃、曲げ強度は126MPaであった。
[比較例9]
比較例6で得られた液状酸無水物を用いた以外は、実施例5と同様に配合物と硬化物を製造した。この配合物の25℃における粘度は、1080mPa・sであった。また、硬化物の熱変形温度は134℃、曲げ強度は128MPaであった。
[比較例10]
比較例7で得られた液状酸無水物を用いた以外は、実施例5と同様に配合物と硬化物を製造した。この配合物の25℃における粘度は、830mPa・sであった。また、硬化物の熱変形温度は128℃、曲げ強度は128MPaであった。
【0057】
【発明の効果】
本発明の低粘度の液状酸無水物は、C5 留分から予めトランス−ピペリレンやイソプレンを単離せず、直接C5 留分と無水マレイン酸を反応させることによって得られ、使用するC5 留分は、シクロペンタジエンを完全に除去する必要がなく、低粘度(25℃で50mPa・s以下)で、−20℃でも液状安定性を有する液状酸無水物が、従来より経済的にしかも省エネルギー的に製造できる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、低粘度であるため注型、含浸等の作業性に優れ、本発明のエポキシ樹脂組成物により、硬化反応が均一に進むため硬化物の色相が均一の、耐熱性や機械強度等の優れた硬化物が得られる。
Claims (2)
- シクロペンタジエンの含有量をトランス−ピペリレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの合計量に対して10重量%以下に減少させたC5 留分と無水マレイン酸から合成した、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸/4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸の重量比が25/75〜35/65でエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸の含有量が10重量%以下のメチルテトラヒドロ無水フタル酸混合物を、立体異性化触媒の存在下または不存在下に加熱して3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸の異性化率である{トランス体/(シス体+トランス体)}×100で得られる値が70%以上となるように立体異性化後、構造異性化触媒の存在下に加熱して4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸の異性化率である{4−メチル−Δ 3 −テトラヒドロ無水フタル酸/(4−メチル−Δ 4 −テトラヒドロ無水フタル酸+4−メチル−Δ 3 −テトラヒドロ無水フタル酸)}×100で得られる値(ただし、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸における4−メチル−Δ 2 −テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−Δ 1 −テトラヒドロ無水フタル酸の合計量は0.5重量%未満である。)を35〜60%とすることを特徴とする低粘度の液状酸無水物の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法により得られる液状酸無水物とエポキシ樹脂を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
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