JP4773485B2 - セラミックス積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の積層用セラミックグリーンシートを積層し、その積層したセラミックグリーンシートを焼成することによりセラミックス積層体を製造するセラミックス積層体の製造方法に関する。
従来から知られるLTCC基板(Low−Temperature Co−fired Ceramics)は、例えば、誘電体積層フィルター、多層配線基板、誘電体アンテナ、誘電体カプラー及び誘電体複合モジュール等の電子デバイスに用いられるセラミックス積層体である。
LTCC基板は、従来、以下のようにして製造される。
(1)ガラス成分を比較的多量に含有する複数のセラミックグリーンシート(ガラスリッチなセラミックグリーンシート)を準備する。
(2)セラミックグリーンシートの表面に必要に応じて導体膜等を形成する。
(3)セラミックグリーンシートを積層することにより積層体を形成する。
(4)積層体を導体膜に悪影響を及ぼさない程度の比較的低い焼成温度にて焼成する。
ところが、上記従来の製法によると、積層されたセラミックグリーンシートの焼成収縮に伴ってX−Y平面(LTCC基板の表面に平行な面、以下、「基板主面」とも称呼する。)に歪みが生じる。その結果、例えば、導体膜の形状が変化してしまうという問題、或は、ある層の導体膜と他の層の導体膜との相対位置が予定されている相対位置から大きく乖離する(即ち、異なるセラミックグリーンシートに形成された導体膜の相対位置のズレ量が大きくなる)という問題があった。一方、生産効率を向上するためには、セラミックグリーンシートを大型化する(積層体の基板主面の面積を大きくする)ことによって一つの積層体中に多数のLTCC基板を焼成により作り込み、焼成された積層体を分割することによって個々のLTCC基板を同時に多数個製造することが好ましい。しかしながら、上述した基板主面の歪み、導体膜の変形及び/又は導体膜の相対位置のズレは、セラミックグリーンシートを大型化するほど顕著になる。従って、上記従来の製法によると、セラミックグリーンシートを大型化することによって生産効率を飛躍的に向上することが難しいという問題があった。
このような問題を解決する一つの方法として、拘束焼成法が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4を参照。)。拘束焼成法は、上記セラミックグリーンシートの積層体を、その積層体の焼結温度では焼結しない(従って、焼成収縮しない)難焼結性のセラミックグリーンシートからなる「拘束層」により挟んだ状態にて焼成する方法である。この拘束焼成法によれば、積層体の焼成工程において、拘束層が積層体の基板主面に沿った変形を抑制する。その結果、積層体を大型化することが可能となるから、生産効率を向上することが可能であると考えられる。
特開2005−72558号公報 特開2002−16360号公報 特開2002−193677号公報 特開2004−253497号公報
ところで、近年、電子デバイスの性能を向上すること及び電子デバイスの多機能化に対応すること等を目的として、高容量及び/又は高Q値を有するコンデンサ等をLTCC基板に作り込む要求が高まっている。この要求を満たすためには高い誘電率を備えるセラミックス層をLTCC基板内に形成する必要がある。一般に、高い誘電率を備えるセラミックス層を構成するためのセラミックグリーンシートは、全体に占めるガラス成分の比率が非常に小さいセラミックスを主成分とする原料から形成される。即ち、ガラスリーンである(換言すると、セラミックスリッチである)セラミックグリーンシートを用いてLTCC基板を製造する要求が高まっている。
しかしながら、ガラスリーンなセラミックグリーンシートを含む積層体を上記拘束焼成法によって焼結させた場合、昇温、焼成実施及び降温工程を含む焼成工程(拘束焼成工程)においてガラス成分による粘性流動が発生し難いので、焼成工程中に発生する積層体のX−Y平面(基板主面)内の伸長及び/又は収縮が、X−Y平面と直交するZ軸方向(基板の厚み方向)の変形へと変換され難い。このため、焼成工程における昇温中及び/又は焼成実施中に拘束層に過大なせん断力等の力が作用して拘束層が積層体から剥離し、その結果、セラミックス積層体に反り・うねり等が発生したり、上述した導体膜の変形及び/又は導体膜の相対位置のズレが顕著になったりするという問題があった。
本発明によるセラミックス積層体の製造方法は、ガラスリーンな積層用セラミックグリーンシートを含む積層体を焼成する際に難焼結性のセラミックグリーンシートからなる拘束層が、焼成工程中において積層体が焼成収縮すること、及び/又は、焼成工程中に積層体と拘束層とが互いに相違する熱膨張・熱収縮挙動を示すこと等により、拘束層にある程度までの応力が加わったとしても積層体から剥離することがないように、同拘束層を構成する(拘束層の曲げ強度を設定する)ことにより、上記問題を解決する。
より具体的には、本発明によるセラミックス積層体の製造方法の一つは、
複数の積層用セラミックグリーンシートを積層して焼成前積層体を形成するとともに同焼成前積層体の両面に同焼成前積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を配設することにより複合体を形成し、前記焼成前積層体が焼結し且つ前記拘束層が焼結しない焼成温度にて前記複合体を焼成し、その後、前記拘束層を除去することにより、前記焼成前積層体が焼成されて一体化したセラミックス積層体を得るセラミックス積層体の製造方法であって、
前記積層用セラミックグリーンシートは前記セラミックス積層体のセラミックス含有量が90質量%以上であって且つ同セラミックス積層体のガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように構成され、
前記焼成前積層体及び前記拘束層は前記複合体が前記焼成のために昇温される前の状態において同焼成前積層体の厚みに対する同拘束層の一層分の厚みの比が0.1以上且つ1.0以下となるように構成され、
前記拘束層は同拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であるように構成される、
ことを特徴としている。
ここで、拘束層は一枚の難焼結性セラミックグリーンシートからなっていてもよく、複数枚の難焼結性セラミックグリーンシートを積層することにより形成されてもよい。拘束層の脱脂体の曲げ強度は、JIS R−1601(ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法)に準拠して測定される。但し、この試験方法に従う3点曲げ強度試験において、支持点距離は10mm、試料厚みは0.3mm以上且つ1mm以下、試料幅は5mmに設定した。なお、試料厚みは試料の自重による応力が同試料に影響を及ぼさない程度の厚み(0.3mm)以上であればよく、測定装置が測定できる限りにおいて試料厚みは1mm以上であってもよい。また、クロスヘッド移動速度は0.5mm/分とし、支持点及び荷重点における支持具(円柱体)の曲率直径は5mmΦとした。
発明者は、焼結後のセラミックス積層体のセラミックス含有量が90質量%以上であってガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように積層用セラミックグリーンシートが構成され、且つ、焼成前積層体の厚みに対する拘束層の一層分の厚みの比が0.1以上且つ1.0以下となるように構成されている場合、拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa未満であると、焼成工程における昇温中及び/又は焼成実施中に、拘束層が剥離し、その結果、製造されるセラミックス積層体に反り・うねり等が発生したり、上述した導体膜の変形及び/又は導体膜の相対位置のズレが顕著になったりすることを見いだした。
この拘束層の剥離は、次に述べる理由により発生すると推定される。即ち、焼成工程における昇温中及び焼成実施中、積層体は大きく収縮(焼成収縮)しようとする。一方、拘束層は焼成収縮しないので、積層体の焼成収縮を抑制するように機能する。更に、焼成工程における昇温中及び焼成実施中、積層体と拘束層との間に熱膨張差が発生する。一方、焼成前積層体中のガラス成分の量が少ないから、焼成工程中におけるガラス成分による粘性流動は殆ど発生しない。これらにより、拘束層に基板主面方向に沿った大きなせん断力(応力)が作用する。従って、拘束層の強度が不足すると(即ち、拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa未満であると)、拘束層は、上記せん断力に耐えられず、セラミックス積層体から剥離する。
更に、発明者は、焼結後のセラミックス積層体のセラミックス含有量が90質量%以上であってガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように積層用セラミックグリーンシートが構成され、且つ、焼成前積層体の厚みに対する拘束層の一層分の厚みの比が0.1以上且つ1.0以下となるように構成されている場合、拘束層の脱脂体の曲げ強度が10MPaよりも大きいと、製造されるセラミックス積層体にクラック等が発生する場合があることも見いだした。
このクラックは、次に述べる理由により発生すると推定される。即ち、焼成工程中に焼成前積層体の焼結がある程度まで進んだ時点及びその時点以降においては、積層体及び拘束層のそれぞれの「熱膨張・熱収縮」に伴う積層体及び拘束層の挙動の相違、及び/又は、「積層体の焼成収縮」に伴う積層体と拘束層の挙動の相違により、拘束層に基板主面方向に沿った大きなせん断力(応力)が作用することがある。このとき、拘束層の強度が非常に高ければ(即ち、拘束層の曲げ強度が10MPaよりも大きいと)同拘束層は破壊されず、従って、セラミックス積層体から剥離しない。これにより、拘束層がセラミックス積層体の基板主面方向に沿った変形を阻止するように機能するので、セラミックス積層体には基板主面方向に沿った大きな応力が作用する。その結果、セラミックス積層体内にクラックが発生する。
以上から明らかなように、本発明の製造方法の一つにおいては、拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であるように拘束層が構成されているから、焼結が進む段階において拘束層に応力が加わっても、拘束層は焼成前積層体又はセラミックス積層体から剥離せず、焼成前積層体又はセラミックス積層体の基板主面方向における変形を確実に抑制する。更に、その拘束層は、焼結が進んだセラミックス積層体に応力が加わるような場合には破壊される(即ち、同セラミックス積層体から剥離するか又は剥離し得る状態となる)ので、同セラミックス積層体に応力が加わらない。従って、拘束層はセラミックス積層体にクラック等を発生させない。この結果、本発明によれば、反り、うねり及びクラック等を発生させることなく、且つ、偏った変形が生じていない、ガラスリーン且つセラミックスリッチなセラミックス層を含むセラミックス積層体を容易に製造することができる。
本発明によるセラミックス積層体の製造方法の他の一つは、焼成がなされる前の積層用セラミックグリーンシートのガラス含有量を0以上且つ10質量%以下とし、焼成前積層体の厚みに対する拘束層の一層分の厚みの比及び拘束層の脱脂体の曲げ強度を上記のように設定することにより、反り、うねり及びクラック等が存在せず、且つ、偏った変形が生じていないセラミックス積層体を製造する方法である。
即ち、本発明による他のセラミックス積層体の製造方法は、
複数の積層用セラミックグリーンシートを積層して焼成前積層体を形成するとともに同焼成前積層体の両面に同焼成前積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を配設することにより複合体を形成し、前記焼成前積層体が焼結し且つ前記拘束層が焼結しない焼成温度にて前記複合体を焼成し、その後、前記拘束層を除去することにより、前記焼成前積層体が焼成されて一体化したセラミックス積層体を得るセラミックス積層体の製造方法であって、
前記積層用セラミックグリーンシートはセラミックス含有量が90質量%以上であってガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように構成され、
前記焼成前積層体及び前記拘束層は前記複合体が前記焼成のために昇温される前の状態において同焼成前積層体の厚みに対する同拘束層の一層分の厚みの比が0.1以上且つ1.0以下となるように構成され、
前記拘束層は同拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であるように構成される、
ことを特徴とする。
これによれば、上述したように、拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であるように拘束層が構成されているから、焼結が進む段階において拘束層に応力が加わっても、拘束層は焼成前積層体又はセラミックス積層体から剥離せず、焼成前積層体又はセラミックス積層体の基板主面方向における変形を確実に抑制する。更に、その拘束層は、焼結が進んだセラミックス積層体に応力が加わるような場合には破壊され易い状態になるので、同セラミックス積層体に応力が加わらない。従って、拘束層はセラミックス積層体にクラック等を発生させない。この結果、反り、うねり及びクラック等を発生させることなく、且つ、偏った変形が生じていない、ガラスリーン且つセラミックスリッチなセラミックス層を含むセラミックス積層体を容易に製造することができる。
上記何れかのセラミックス積層体の製造方法において、
前記拘束層は、その熱膨張率が前記セラミックス積層体の熱膨張率よりも小さいことが好ましい。
実験によれば、前記難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の熱膨張率を前記セラミックス積層体の熱膨張率よりも小さく設定しておくことにより、偏った変形の程度が極めて少ないセラミックス積層体を得ることができることが判明した。また、前記難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の熱膨張率を前記セラミックス積層体の熱膨張率よりも小さく設定したことにより、焼成工程の降温過程においてセラミックス積層体に引っ張り応力が加わるような場合、上記のような範囲(1.0MPa〜10Mpa)内に曲げ強度を有する拘束層はセラミックス積層体から剥離し易い状態となる(崩壊する)ため、セラミックス積層体に過大な引張り応力が加わることがない。その結果、セラミックス積層体にクラックが発生しないことも判明した。
このように、本発明による上記何れかの製造方法は、積層用セラミックグリーンシートの焼成工程中における基板主面方向の変形を効果的に抑制することができる。従って、これらの製造方法は、複数の積層用セラミックグリーンシートうちの少なくとも一つのシートの表面に導体膜が形成されている場合、その導体膜が変形しないから、特に有効である。
更に、本発明による上記何れかの製造方法は、前記複数の積層用セラミックグリーンシートが、第1の誘電率を有するセラミックグリーンシートと、同第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有するセラミックグリーンシートと、を含む場合にも好適である。第1の誘電率を有するセラミックグリーンシートと第2の誘電率を有するセラミックグリーンシートとは一般に熱膨張率及び焼成収縮挙動が相違するので、焼成によってそれらの相対的な位置ズレが顕著となる虞があるところ、本発明による上記何れかの製造方法はそのような位置ズレを効果的に抑制し得るからである。従って、それらの誘電率が異なるセラミックグリーンシート上に導体膜が形成されている場合、導体膜の変形及び/又は導体膜間の位置ズレが抑制されるので、本発明による上記何れかの製造方法は更に有効である。なお、前記複数の積層用セラミックグリーンシートは、前記第1及び第2の誘電率以外の誘電率を有するセラミックグリーンシートを含んでいてもよい。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法について説明する。
<セラミックス積層体の構造>
先ず、本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法により製造されるセラミックス積層体について図1を参照しながら説明する。図1は、このセラミックス積層体10の分解斜視図である。
セラミックス積層体(セラミックス基板とも言う。)10は、複数のセラミックス層11〜14を備えたLTCC基板である。本例において、セラミックス積層体10は4層のセラミックス層11〜14からなっているが、セラミックス層の数は2層以上であればよい。セラミックス積層体10は、セラミックス層11〜14を構成することになる積層用セラミックグリーンシートを積層し、その積層体(焼成前積層体)を焼成・一体化することにより製造される多層誘電体部品(多層誘電体デバイス)である。
セラミックス層11〜14は、セラミックス薄板体11a〜14a及び導体膜11b〜14bをそれぞれ有している。但し、導体膜は各セラミックス層に必須ではなく、各セラミックス層に必要に応じて形成される。更に、セラミックス層11〜14のそれぞれには、図示しないビアホール(上下の層間の電気的接続を実現するために導電性物質が充填される貫通孔)が必要に応じて形成される。
セラミックス薄板体11a〜14aのそれぞれは、セラミックスを90質量%以上含有するとともに、ガラス(ガラス成分)を0以上且つ10質量%以下含有している。即ち、セラミックス薄板体11a〜14aのそれぞれは、所謂、ガラスリーン(且つセラミックスリッチ)なセラミックスからなる。セラミックス薄板体11a〜14aのそれぞれは、その厚みが10μm〜1mm程度の平板である。セラミックス薄板体11a〜14aのうちの2以上のセラミックス薄板体が互いに同一の厚みを有していてもよく、セラミックス薄板体11a〜14aのそれぞれが固有の厚みを有していてもよい。セラミックス薄板体11a〜14aのそれぞれの平面視における形状は互いに同じ長方形(又は、正方形)である。但し、セラミックス薄板体11a〜14aの厚み及び平面視における形状はこれらに限定されるものではない。セラミックス薄板体11a〜14aは互いに同じ誘電率を有していてもよく、互いに相違する誘電率を有していてもよい。即ち、例えば、セラミックス薄板体11aは第1の誘電率を有し、セラミックス薄板体12aは第1の誘電率と相違する第2の誘電率を有していてもよい。更に、セラミックス薄板体13a及びセラミックス薄板体14aは、第1及び第2の誘電率とは相違する「第3の誘電率及び第4の誘電率」をそれぞれ有するように構成され得る。
導体膜11b〜14bのそれぞれは、所定のパターンを有する銀(Ag)からなる薄膜である。導体膜11b〜14bのそれぞれは、後述するように、銅(Cu)等の他の金属及び導電性のサーメット等から構成されていてもよい。
更に、セラミックス層11又はセラミックス層14の露呈している面上にICチップ(例えば、フリップチップIC及びベアチップIC等)が配設されてもよい。このようなセラミックス積層体は、所謂「LTCCモジュール」を構成する。
<セラミックス積層体の製造方法>
次に、本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法について図2及び図3を参照しながら説明する。なお、以下においては、説明を簡素化するため、この製造方法によって一つのセラミックス積層体10が製造される場合について説明する。但し、この製造方法は、互いに同一の構成を有する複数の構造体を一つの積層体中に所定の間隔をあけて形成し、その積層体を切断することによって複数のセラミックス積層体10を一時に製造する場合にも適用される。
このセラミックス積層体の製造方法は、以下のステップを含んでいる。
ステップ1:図2の(A)に示した積層用セラミックグリーンシート(誘電体セラミックグリーンシート)11A〜14Aを形成する。積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aは、後の焼成工程において、図1及び図2の(C)に示したセラミック層11〜14へとそれぞれ変化するシートである。積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aは、例えば、周知のドクターブレード法により作製されたセラミックグリーンシートを金型により所定の形状に打ち抜き成形することにより作成される。積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの原料は、セラミックス積層体10のセラミックス含有量(セラミックス層11〜14のそれぞれのセラミックス含有量)が90質量%以上であって、セラミックス積層体10のガラス含有量(セラミックス層11〜14のぞれぞれのガラス含有量)が0以上且つ10質量%以下となるように、調整されている。
この場合、セラミックス積層体10(セラミックス層11〜14のぞれぞれ)がセラミックスを95質量%以上且つ98質量%以下含有し、ガラス(ガラス成分)を2質量%以上且つ5質量%以下含有するように、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの原料が調整されていることが好ましい。セラミックス積層体10にガラスが10質量%より多く含まれていると、セラミックス積層体10の誘電率及び/又はQ値が低下する。その一方、ガラスは焼結助剤として機能する。従って、セラミックス積層体10にガラスが2質量%以上含有されていることが、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの焼結を促進する観点から好ましい。
積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aのそれぞれの厚みは、30〜150μm(30μm以上且つ150μm以下)である事が好ましく、40〜80μmであることが更に好ましい。積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aのそれぞれの厚みが30μmより小さいと、導体膜との同時焼成時における導体元素(本例ではAg)のセラミックス層内への拡散が無視できなくなり、誘電体特性が劣化することがあるからである。また、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aのそれぞれの厚みが150μmより大きいと、積層数が大きくなった場合にセラミックス積層体10の寸法(厚み)が過大になることがあるからである。但し、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの面積、形状、厚み及び原料組成等は、製造するセラミックス積層体10の用途に応じて適宜決定される。
積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aのそれぞれは、例えば、以下に示す原料から形成することができる。
(1)BaO−TiO−Re系組成(Re:レアア−ス成分)に若干のガラス粉末を添加したもの。
(2)BaO−TiO−ZnO系組成に若干のガラス形成成分及び/又はガラス粉末を添加したもの。
(3)BaO−Al−SiO−Bi系組成に若干のガラス形成成分及び/又はガラス粉末を添加したものであって、必要に応じて酸化亜鉛、酸化ビスマス、又は、酸化銅を含むもの。
(4)MgO−CaO−TiO−ZnO−Al−SiO−B系組成に若干のガラス形成成分及び/又はガラス粉末を添加したもの。
(5)BaO−TiO系組成に若干のガラス形成成分及び/又はガラス粉末を添加したもの。
(6)BaO−TiO−Nd−Bi系組成に若干のガラス粉末を添加したもの。
(7)BaO−TiO−ZnO−MnO−Al系組成に若干のガラス形成成分及び/又はガラス粉末を添加したもの。
上記ガラス形成成分及び/又はガラス粉末がセラミックス積層体10に含まれるガラス(ガラス成分)となる。なお、高い誘電率をもたらす組成(比誘電率で85程度)としては、BaO−TiO−Nd−Bi系組成にZnO−SiO−B系ガラスを2〜5質量%配合した組成を挙げることができる。低い誘電率をもたらす組成(比誘電率で7程度)としては、BaO−Al−SiO−Bi系組成にZnO−SiO−B系ガラスを2〜5質量%配合した組成を挙げることができる。セラミックス積層体10は、上記誘電率の高い組成からなる層と、上記誘電率の低い組成からなる層と、を積層した積層体とすることもできる(特開2001−267805号公報(出願人:日本碍子株式会社)を参照。)。
ステップ2:ステップ1において得られた積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aに導体膜11B〜14Bをそれぞれ配設(形成)する。なお、前述したように、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの中の少なくとも一つが、その一つの積層用セラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に導体膜を備えていればよい。加えて、このステップにおいて、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aに複数又は単数のビアホールVIAを必要に応じて形成する。ビアホールVIAは、例えば、金型を用いた打ち抜きにより形成される。その後、ビアホールVIAには導体膜11B〜14Bの材料と同様な材料が充填される。
導体膜11B〜14Bは、例えば、印刷により積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの面上にそれぞれ形成される。導体膜11B〜14Bのパターンは用途に応じて適宜決定される。例えば、セラミックス積層体10を高周波フィルタ等に用いられるLTCC基板として製造する場合、フィルタ、ダイプレクサ、共振器及びコンデンサ等がセラミックス積層体10内に形成されるように導体膜を配置し、更に、配線となる部分等を導体膜により形成する。
導体膜11B〜14Bは銀(Ag)からなっている。導体膜11B〜14Bは、例えば、銅(Cu)等の他の導電性金属及び導電性のサーメット等から形成されてもよい。更に、導体膜の耐熱性向上及び導体膜材料の誘電体層(セラミックス層)への成分拡散の抑制等を目的として、これらの材料に添加材料を添加して合金化した材料を導体膜11B〜14Bの材料として使用してもよい。そのような添加材料としては、Pd、Ag、Au、Ru、Rh、Re、Os、Ir、Pt、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、Ta及びW等を挙げることができる。更に、導体膜11B〜14Bを印刷により形成する場合、金属粉末を酸化物などでコーティングした複合粒子を導体膜11B〜14Bの材料として使用してもよい。これにより、セラミックス層と導体膜との焼成収縮挙動を合わせられるので、両者を良好に接合させることが可能となる。
ステップ3:図2の(A)に示した難焼結性セラミックグリーンシート30を複数(少なくとも2枚)形成する。本例においては、一枚の難焼結性セラミックグリーンシート30が後に説明する一層の「拘束層」を形成する。但し、複数枚の難焼結性セラミックグリーンシート30を積層することにより一層の「拘束層」を形成してもよい。難焼結性セラミックグリーンシート30は、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの焼成温度(積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aを焼結させることができる適切な温度)では焼結しない材料からなる。積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aの焼成温度とは、後の焼成工程(拘束焼成工程)において図2の(B)に示した複合体40を焼成するときの温度である。難焼結性セラミックグリーンシート30を構成するセラミックスとして、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア及びスピネル等を挙げることができる。
難焼結性セラミックグリーンシート30は、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aと同様、例えば、周知のドクターブレード法により作製されたセラミックグリーンシートを金型により所定の形状に打ち抜き成形することにより作成される。
難焼結性セラミックグリーンシート30の厚みは、50〜500μmが好ましく、100〜400μmが更に好ましい。但し、難焼結性セラミックグリーンシート30からなる拘束層は、図2の(B)に示したように、後のステップにて積層される積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aからなる焼成前積層体20の厚みt1に対する焼成工程を経る前の「拘束層」一層分の厚みt2の比(=t2/t1)が0.1以上且つ1.0以下となるように構成される。この比(=t2/t1)は、以下において、単に「厚み比」とも称呼する。
更に、難焼結性セラミックグリーンシート30は、その難焼結性セラミックグリーンシート30の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下となるように構成される。即ち、そのような曲げ強度を有するように難焼結性セラミックグリーンシート30の材料が選択される。なお、本例においては、一枚の難焼結性セラミックグリーンシート30が一層分の拘束層を形成する。従って、複数枚の難焼結性セラミックグリーンシートを積層して拘束層を形成した場合も含め、一層分の拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下となるように構成されていると言い換えることができる。ここで、難焼結性セラミックグリーンシート30(即ち、拘束層)の脱脂体の曲げ強度は、JIS R−1601(ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法)に準拠して測定される。但し、この試験方法に従う3点曲げ強度試験において、支持点距離は10mm、試料厚みは0.3mm以上且つ1mm以下、試料幅は5mmに設定する。この曲げ強さ試験方法に供される試料(難焼結性セラミックグリーンシート30の脱脂体)は、以下のようにして作成される。なお、試料厚みは試料の自重による応力が同試料に影響を及ぼさない程度の厚み(0.3mm)以上であればよく、測定装置が測定できる限りにおいて試料厚みは1mm以上であってもよい。また、クロスヘッド移動速度は0.5mm/分とし、支持点及び荷重点における支持具(円柱体)の曲率直径は5mmΦとした。
(1)難焼結性セラミックグリーンシート30と同一組成のセラミックグリーンシートを準備する。
(2)準備したシートを、所定の熱処理温度(例えば、900℃)にて熱処理する。即ち、そのシートの温度を脱脂に必要な時間だけ所定の熱処理温度に維持する。
(3)試料が上記寸法(試料長さは15mm以上の適当な長さ)を有するように同試料を熱処理後(脱脂後)のシートから切り出す。この切り出しはYAGレーザー加工等によって行う。
(4)切り出した試料がバリ及びクラック等を有する場合、それらを#1200SiC研磨紙を用いて削り落とす。
以上により、上記曲げ強さ試験方法に供される試料が作成される。
ステップ4:図2の(B)に示したように、導体膜11B〜14Bが配設された積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aを順に積層して焼成前積層体20を形成するとともに、焼成前積層体20の両面(上面及び下面)に難焼結性セラミックグリーンシート30からなる拘束層を配設することにより、複合体40を形成する。この積層工程において、各セラミックグリーンシート11A〜14A及び難焼結性セラミックグリーンシート30,30の基板主面方向における位置合わせを所定の方法に基いて行う。位置合わせは、例えば、各セラミックグリーンシート11A〜14A及び難焼結性セラミックグリーンシート30,30の周囲を一致させる方法及び基準ピンを用いた方法等により行えばよい。
ここで、基準ピンを用いることにより、位置合わせを行いながらセラミックグリーンシートを積層する一例について簡単に説明する。この場合、図3の(A)及び(B)に示したように、積層用セラミックグリーンシート11A〜14A及び難焼結性セラミックグリーンシート30のそれぞれに、複数(本例においては4個)の貫通孔THを金型による打ち抜き加工等によって形成しておく。なお、図3の(A)及び(B)には、積層用セラミックグリーンシート11A及び積層用セラミックグリーンシート11Aの下面側に配置される難焼結性セラミックグリーンシート30のみが例示的に描かれている。
図3の(A)及び(B)に示したプレート50は、積層用セラミックグリーンシート11A〜14Aを積層する際に使用する治具である。プレート50は、基台部51と複数(本例では4個)の基準ピン52とを備えている。基台部51は金属製の板体である。基台部51の上面は平坦である。基準ピン52は基台部51の上面と直交する向きに沿う中心軸を有する金属製の円柱である。基台部51には、基台部51の厚み方向に貫通する複数の吸引用貫通孔51aが形成されている。吸引用貫通孔51aは、平面視において最短距離を隔てて互いに隣接する二つの基準ピン52,52の間に直線的に配列されている。このプレート50は別途準備される。前述した積層用セラミックグリーンシート11A〜14A及び難焼結性セラミックグリーンシート30,30に形成された貫通孔THの径は基準ピン52の径と略同一である。また、平面視において、複数の貫通孔TH間の相対位置は複数の基準ピン52の相対位置と一致している。
積層用セラミックグリーンシート11A〜14A及び難焼結性セラミックグリーンシート30,30を積層するにあたり、先ず、難焼結性セラミックグリーンシート30をプレート50の基台部51の上に配置する。このとき、難焼結性セラミックグリーンシート30は、基準ピン52が難焼結性セラミックグリーンシート30の貫通孔THを挿通するように基台部51の上に配置される。配置された難焼結性セラミックグリーンシート30は、吸引用貫通孔51aを通して下方に吸引されることにより基台部51に吸着(固定)される。
次いで、積層用セラミックグリーンシート11Aを難焼結性セラミックグリーンシート30の上に配置する。このとき、積層用セラミックグリーンシート11Aは、基準ピン52が積層用セラミックグリーンシート11Aの貫通孔THを挿通するように配置される。更に、積層用セラミックグリーンシート11Aがシート成形用フィルム(例えば、PETフィルム)上に形成されているものであれば、積層用セラミックグリーンシート11AのPETフィルムが形成されていない面が難焼結性セラミックグリーンシート30の上面に接するように、積層用セラミックグリーンシート11Aを配置する。
この状態において、プレート50、難焼結性セラミックグリーンシート30及び積層用セラミックグリーンシート11Aを加熱し、且つ、積層用セラミックグリーンシート11Aに対してその上部からプレート50の基台部51に向かう方向の圧力を加える。即ち、積層用セラミックグリーンシート11Aを難焼結性セラミックグリーンシート30に加熱圧着する。その後、積層用セラミックグリーンシート11Aがシート成形用フィルム上に形成されているものであれば、そのシート成形用フィルムを積層用セラミックグリーンシート11Aから剥離する。以降、同様に、積層用セラミックグリーンシート12A〜14Aが順に下層に対して加熱圧着されながら積層され、最後に難焼結性セラミックグリーンシート30を積層する。
なお、このステップ4においては、図2の(A)に示すように、先ず焼成前積層体20を作製し、その後、図2の(B)に示すように、難焼結性セラミックグリーンシート30,30を焼成前積層体20の上面及び下面に配設してもよい。また、これらのセラミックグリーンシートをどのように積層するかに関わらず、互いに接触するセラミックグリーンシート(互いに隣接する積層用セラミックグリーンシート及び難焼結性セラミックグリーンシート、並びに、互いに隣接する2枚の積層用セラミックグリーンシート)は加熱圧着されていることが好ましい。
ステップ5:複合体40を加熱して複合体40の温度を前述した焼成温度まで上昇させ、複合体40をその焼成温度にて焼成する。難焼結性セラミックグリーンシート30は、この焼成温度では焼結しない。従って、このステップ5においては、焼成前積層体20のみが実質的に焼結してセラミックス積層体10が形成される。その後、複合体40の温度を下降させる。
このステップ5は焼成工程であり、複合体40の温度を前述した焼成温度にまで上昇させる昇温工程、複合体40の温度を前述した焼成温度に所定時間保持することにより複合体40(実際には焼成前積層体20)を焼結させる焼成実施工程、及び、複合体40の温度を下降させる降温工程を含んでいる。この場合、焼成温度は880〜920℃であることが好ましく、910〜920℃であることが更に好ましい。焼成温度が880℃より低いと、セラミックス積層体10の緻密度を所定値以上とすることが難しくなり、焼成温度が920℃より高いと、導体膜を形成している銀(Ag)が拡散する可能性があるからである。この焼成温度は、積層用セラミックグリーンシート11A〜14A、導体膜11B〜14B及び難焼結性セラミックグリーンシート30,30の種類に応じて適宜決定することができ、上記例示した温度に限定されるものではない。
後に詳述するように、ステップ5の焼成工程中、難焼結性セラミックグリーンシート30,30は焼成前積層体20の基板主面に沿う変形を抑制する拘束層として機能する。従って、ステップ5は拘束焼成工程とも称呼される。なお、前述のプレート50を用いて複合体40を作成した場合、複合体40をプレート50から外した状態において焼成する。
ステップ6:焼成工程の終了後、複合体40に残存する難焼結性セラミックグリーンシート30,30(拘束層)の一部を完全に取り除く。これにより、セラミックス積層体10が得られる。難焼結性セラミックグリーンシート30,30を取り除くには、例えば、ウェットブラスト、サンドブラスト、ウォータージェット及び超音波洗浄等の方法を用いることができる。ステップ6は拘束層除去工程に相当している。
<焼成工程中の各層の挙動と上記製造方法による効果>
次に、拘束焼成工程中の複合体40における各層の挙動について説明する。前述したように拘束焼成工程は、昇温工程、焼成実施工程及び降温工程の3つの工程からなる。
(昇温工程及び焼成実施工程)
発明者は、従来の拘束焼成法の昇温工程及び焼成実施工程において、拘束層(難焼結性セラミックグリーンシート)が焼成前積層体から剥離し、その結果、セラミックス積層体に反り/うねりが発生することを実験により発見した。昇温工程及び焼成実施工程において、拘束層が焼成前積層体から剥離するのは、以下に述べる理由によると推定される。
図4の(A)の矢印により概念的に示したように、昇温工程においては、拘束層(難焼結性セラミックグリーンシート)30と焼成前積層体20との間の熱膨張率の差により、両者は互いに相違する量だけ膨張する。このとき、拘束層30の存在により焼成前積層体20の内部に不均一な応力が発生する場合がある。
昇温工程の中期になると焼成前積層体20の焼成が開始する。その結果、図4の(B)に矢印により示したように、焼成前積層体20は収縮する。この焼成に伴う収縮は「焼成収縮」と呼ばれる。焼成収縮による焼成前積層体20の収縮量(体積変化量)は非常に大きい。一方、拘束層30は焼成収縮しないので、焼成前積層体20の焼成収縮を抑制するように機能する。加えて、焼成前積層体20はガラスリーンなセラミックグリーンシート11A〜14Aからなっているので、ガラス成分による粘性流動は殆ど発生しない。
これらのことから、昇温工程及び焼成実施工程において、拘束層30に基板主面方向に沿った大きなせん断力が作用する。従って、拘束層30の強度が不足すると(即ち、後述するように、拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa未満であると)、拘束層30は、上記せん断力に耐えられず、焼成前積層体20の焼結が進行している途中の段階において焼成前積層体20から剥離する。この結果、セラミックス積層体10の基板主面に反り/うねりが発生してしまう。
これに対し、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層30の脱脂体の曲げ強度は1.0MPa以上であり、上記せん断力に対して十分な強度を有している。その結果、昇温工程及び焼成実施工程において、拘束層30が焼成前積層体20から剥離しないので、セラミックス積層体10の基板主面に反り/うねりが発生してしまうことを回避することができる。
(焼成実施工程の後期及び降温工程)
図4の(C)の矢印により概念的に示したように、焼成実施工程の後期及び降温工程においては、拘束層30と焼結後の積層体であるセラミックス積層体10との間の熱膨張率の差により、両者は互いに相違する量だけ収縮する。即ち、例えば、セラミックス積層体10の熱膨張率が拘束層30の熱膨張率よりも大きいと、セラミックス積層体10は拘束層30よりも大きな量だけ熱収縮する。この場合、セラミックス積層体10は既に焼結しているから、拘束層30には基板主面方向に沿う大きなせん断力が加わる。このとき、拘束層30の強度が必要以上に高ければ(即ち、後述するように、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の曲げ強度が10MPaより大きいと)、拘束層30は破壊されず、セラミックス積層体10から剥離しない。これにより、拘束層30は、セラミックス積層体10の基板主面方向に沿った変形を阻止するように機能するので、セラミックス積層体10には基板主面方向に沿った過大な引っ張り応力が作用する。これが、セラミックス積層体内10にクラックが発生する原因の一つであると推定される。
これに対し、本発明の実施形態に係る製造方法によれば、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の曲げ強度が10MPa以下であるので、拘束層30は、焼成実施工程の後期及び降温工程において加わるせん断力に耐えられない。その結果、拘束層30は破壊され、拘束層30はセラミックス積層体10から剥離するか剥離し易い状態となるから、セラミックス積層体10内にクラックが発生することを回避することができる。なお、周知のとおり、焼結が進んだセラミックス積層体の熱収縮量は焼成収縮量に比べてさほど大きくないので、拘束層が剥離してもセラミックス積層体に反り及びうねり等は発生しない。
(実施例)
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
<成形原料の調製>
・積層用セラミックグリーンシート(誘電体グリーンシート)の成形原料:
(高誘電率材料粉末の調製)
高純度の炭酸バリウム,酸化チタン,酸化ネオジウム,酸化ビスマスの各粉末を、0.16BaO−0.67TiO−0.14NdO1.5−0.03BiO1.5のモル比になるように秤量し、湿式混合した。この粉末を1250℃で4時間仮焼し、仮焼粉体を得た。仮焼物の結晶相と結晶性を調べるために、粉末X線回折測定を行った。その後、仮焼粉末を、ボールミルにて、メディアン径(50%粒子径、本明細書において「粒径」と称呼することもある。)が0.8μm以下になるまで粉砕した。次いで、粉砕により得られた粉末を乾燥することにより、セラミック粉末(高誘電率材料粉末)を得た。メディアン径の測定(粒度測定)は、大塚電子社製
ダイナミック光散乱光度計 DSL7000)を用いて、動的光散乱法により測定した。
(低誘電率材料粉末の調製)
高純度の炭酸バリウム、アルミナ、シリカ、酸化ビスマスの各粉末を、0.27BaO−0.03AlO1.5−0.64SiO−0.06BiO1.5のモル比になるように秤量した。その後、上述した高誘電率材料を得る方法と同じ方法により低誘電率材料粉末を作製した。
(ガラス粉末の調製)
酸化亜鉛、酸化ホウ素およびシリカ(酸化珪素)の各粉末を秤量し、乾式混合し、混合粉末を白金ルツボ中で溶融させ、溶融物を水中に投下して急速冷却することにより、塊状のガラスを得た。このガラスをメディアン径が4μm以下になるまで湿式粉砕することにより、低融点ガラス粉末を得た。酸化亜鉛、酸化ホウ素及びシリカの重量比率は、62:29:9質量%であった。
(積層用セラミックグリーンシート原料の作成)
トルエン及びイソプロパノールを等量混合した分散媒に、上記高誘電率材料粉末又は上記低誘電率材料粉末(誘電体原料)、上記ガラス粉末、及び、バインダーとしてのポリビニルブチラールを混合して、スラリー状の積層用セラミックグリーンシート用成形原料を作製した。このとき、各原料の使用量は、誘電体原料100質量部に対して、ガラス2.5質量部、バインダー7.5質量部、分散媒1.5質量部とした。次に、得られた成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、スラリーの粘度が1500〜2000cPとなるように調製した。スラリーの粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。
なお、積層用セラミックグリーンシートは、焼結後のセラミックス積層体のセラミックス含有量が90質量%以上の所定量であってガラス含有量が0以上且つ10質量%以下の所定量となるように、その原料を調整した。
・難焼結性セラミックグリーンシート(拘束層)用の成形原料:
分散媒としてのトルエン、イソプロパノールを等量混合したものに、セラミックス原料粉末としてアルミナ、有機バインダーとしてポリビニルブチラールをそれぞれ混合して、スラリー状のセラミックス拘束層用の成形原料を作製した。次に、得られた成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度1500〜2000cPとなるように調製した。スラリーの粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。
このとき、難焼結性セラミックグリーンシートが下記の表1乃至表4に示したような、粒径(メジアン径)、粉末充填率、セラミックス積層体に対する熱膨張率の高低、粒子形状及び強度(拘束層強度、即ち、上述した曲げ強度)を有するように、原料を調整した。
この場合、粒径が概知の粉末を用いて、難焼結性セラミックグリーンシートを成形した。粉末充填率は、難焼結性セラミックグリーンシートへの有機バインダーの混合量によって調整した。セラミックス積層体の熱膨張率よりも低い熱膨張率を有する難焼結性セラミックグリーンシートはアルミナから形成した。セラミックス積層体の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有する難焼結性セラミックグリーンシートはMgOから形成した。高アスペクト比の粒子形状を有する難焼結性セラミックグリーンシートは、市販されているセラミックス原料粉末である板状アルミナ粒子を用いて作成した。一方、低アスペクト比の粒子形状を有する難焼結性セラミックグリーンシートは、通常のセラミックス原料粉末を用いて作成した。拘束層強度は、予備的な実験を行い、その結果から、粒径・粉末充填率・粒子形状を決定することにより、調整した。
ここで、粒径については上述した高誘電率材料粉末の粒径を測定する場合と同様に測定した。また、粉末充填率とは、焼成工程前の難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の体積あたりに占める前記セラミックス原料粉末の体積である。強度とは難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の曲げ強度のことである。この曲げ強度については、前述したとおりの方法により測定した。
・成形加工:
次に、上記方法により得られた、スラリー状の積層用セラミックグリーンシートの原料及び難焼結性セラミックグリーンシートの原料を、ドクターブレード法を用いて、それぞれシート状に成形加工した。ここで、厚み比は、表1乃至表4に示された通りに調整した。
次いで、得られた難焼結性セラミックグリーンシート及び積層用セラミックグリーンシートを金型により正方形(150×150mm及び200×200mmの二種類)に打ち抜いた。得られた積層用セラミックグリーンシートの表面に導電体を配設した。具体的には、銀の粉末に、溶媒としてテルピネオールを加えるとともにバインダーとしてポリビニルブチラールを加え、それらを十分に混練することにより、導電体ペーストを調製した。得られた導電体ペーストを、積層用セラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷することにより、コンデンサ電極パターン及び共振器パターンを有する導体膜(導電膜)を形成した。
次に、上述した複数枚の積層用セラミックグリーンシートを積層して焼成前積層体を作成し、その焼成前積層体の両面に難焼結性セラミックグリーンシートを積層することにより、焼成前積層体の両面に難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層が配設された複合体を得た。
(複合体の焼成)
次に、複合体を400℃で5時間脱脂し、さらに920℃で1.5時間焼成した。
(拘束層の除去)
焼成後の複合体から、水による洗い流し、及び、超音波洗浄により、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を複合体から除去することにより、セラミックス積層体を取り出した。
(評価方法)
得られたセラミックス積層体について、不良の有無、歩留まり及び寸法精度についての評価を行った。結果を表1乃至表4に示す。表1乃至表4において「基板」とは製造されたセラミックス積層体のことを意味する。この評価においては、接触式表面粗さ計(テーラーホブソン社製
フォームタリサーフPGI1240)で基板表面を計測したとき、基板中央の水平面に対して、外周部が1mm以上ズレている場合、反り・うねりが発生していると判定した。
更に、表1乃至表4に示した寸法精度は以下のように測定した。
(1)図5に示したように、焼成前積層体の基板主面(X−Y面)上における距離X1〜X4及び距離Y1〜Y4(合計8箇所の距離)を測定する。これらの距離のそれぞれは次のように規定される。即ち、焼成前積層体の基板主面(X−Y面)上における外周から1cm内側の直線により規定される長方形(以下、「基準長方形」と言う。なお、基準長方形は基準正方形を含む。)を、9個の長方形(以下、「小長方形」と称呼する。)により分割する。この小長方形は互いに同形であって、基準長方形と相似形(縦横比が同一)である。
距離X1は、基準長方形の上辺(Y軸正方向端部側の辺)の長さである。距離X2は、基準長方形内においてY軸正方向端部側に配列された3個の小長方形の下辺(Y軸負方向端部側の辺)の長さの和である。距離X3は、基準長方形内においてY軸負方向端部側に配列された3個の小長方形の上辺(Y軸正方向端部側の辺)の長さの和である。距離X4は、基準長方形の下辺(Y軸負方向端部側の辺)の長さである。
距離Y1は、基準長方形の左辺(X軸負方向端部側の辺)の長さである。距離Y2は、基準長方形内においてX軸負方向端部側に配列された3個の小長方形の右辺(X軸正方向端部側の辺)の長さの和である。距離Y3は、基準長方形内においてX軸正方向端部側に配列された3個の小長方形の左辺(X軸負方向端部側の辺)の長さの和である。距離Y4は、基準長方形の右辺(X軸正方向端部側の辺)の長さである。
この測定時に、距離X1〜X4及びY1〜Y4を測定した測定点(例えば、距離X1が測定された線分の両端の位置)にパンチ穴又は罫書キズ等によりマーキングしておく。
(2)焼成後のセラミックス積層体の基板主面上において上記距離X1〜X4及び上記距離Y1〜Y4に対応する線分の距離を上記マーキングされた点に基いて測定する。この測定により得られた上記距離X1〜X4に対応する距離を距離X1A〜X4Aとそれぞれ称呼する。同様に、この測定により得られた上記距離Y1〜Y4に対応する距離を距離Y1A〜Y4Aとそれぞれ称呼する。
(3)焼成前後において測定された対応する位置(線分、辺)の長さの変化割合を算出する。例えば、距離X1と距離X1Aとは対応する位置の長さであり、その変化率RX1は、RX1=(X1−X1A)/X1により与えられる。即ち、RXn=(Xn−XnA)/Xn(n=1〜4)を算出する。同様に、RYn=(Yn−YnA)/Yn(n=1〜4)を算出する。
(4)算出された総ての変化率(RXn及びRYn、n=1〜4)の中から最大の変化率Rmaxと最小の変化率Rminとを抽出し、その差Δ(Δ=Rmax−Rmin)を寸法精度として得る。
焼成前積層体が焼成工程において均一に変形すると、寸法精度Δは0%に近い値となる。これに対し、焼成前積層体が焼成工程において偏りをもって(歪むように)変形すると、寸法精度Δは大きくなる。従って、寸法精度Δはできるだけ小さい方が好ましい。なお5枚の基板について評価し、それら総ての寸法精度が0.08%以下であり、且つ、不良割合(反り・うねり又はクラックが発生したものの割合である不良率)が0/5(全数合格)であること、を合格水準とする。
Figure 0004773485
Figure 0004773485
表1及び表2は厚み比を約0.3とした場合における実験結果を示している。表1は試料の基板主面を150mm×150mmの大きさとした場合の結果を示している。表2は試料を200mm×200mmの大きさとした場合の結果を示している。
表1及び表2から、比較例1及び比較例3のように、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の上記曲げ強度が0.5MPa以下であると、セラミックス積層体に反り・うねりを有する不良品が発生することが理解される。これに対し、実施例1〜実施例24のように、難焼結性セラミックグリーンシートの脱脂体の上記曲げ強度が1.0MPa以上であると、不良品が発生しないことが理解される(より好ましくは、実施例4、実施例12、実施例16及び実施例24に示したように、曲げ強度が1.5MPa以上であれば、寸法精度が更に向上する。)。
更に、表1及び表2から、比較例2のように、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の上記曲げ強度が15MPa以上であると、セラミックス積層体にクラックが発生することが理解される。これに対し、実施例1〜実施例24(特に、実施例1、実施例9、実施例13及び実施例21)のように、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の上記曲げ強度が10MPa以下であると、クラックが発生しないことが理解される。
即ち、厚み比が約0.3である場合、セラミックス積層体の基板主面の面積に関わらず、難焼結性セラミックグリーンシートの脱脂体の上記曲げ強度が、1.0MPa以上且つ10MPa以下であれば不良品が発生しないことが確認できた。
Figure 0004773485
表3は、試料の基板主面を150mm×150mmの大きさとし、厚み比を変更した場合の実験結果を示している。表3の実施例25〜実施例31に示したように、厚み比が0.1以上且つ1.0以下である場合、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の上記曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下の範囲内にあれば、不良品が発生しないことが確認された。これに対し、表3の比較例4及び比較例5に示したように、厚み比が0.08以下である場合、及び、厚み比が1.2以上である場合、不良品が発生することが確認された。
Figure 0004773485
表4は、試料の基板主面を150mm×150mmの大きさとし、厚み比を約0.3とし、セラミックス積層体のガラス含有量を変化させた場合の実験結果を示している。表4の実施例32〜実施例40に示したように、ガラス含有量が変化しても、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の脱脂体の上記曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下の範囲内にあれば、不良品が発生しないことが確認された。
なお、セラミックス積層体(基板)のガラス含有量(ガラスの重量割合)は以下のようにして測定される。
ステップ1:焼成後のセラミックス積層体の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)解析により調査し、回折パターンに基づいて結晶相とガラス相とを識別する。
ステップ2:ステップ1の識別結果に基づいてTEM像のガラス相の面積分率を求め、そのガラス相の面積分率に基づいて「セラミックス積層体に含有されているガラス」の体積割合を決定する。
ステップ3:上記のガラス相の組成をTEM−EDSスペクトルから同定する。
ステップ4:ステップ3により同定されたガラス組成と同組成のガラスを別途調合し、それを焼成する。
ステップ5:ステップ4において焼成されたガラスの密度を測定する。
ステップ6:ステップ2において決定されたガラスの体積割合と、ステップ5において得られたガラスの密度と、に基づいて「セラミックス積層体に含有されているガラスの重量割合」を算出する。
なお、ガラス含有量を定量化するための方法は上記方法に限定されることはなく、例えば、X線回折スペクトルからガラス相の含有体積割合を評価する方法によってもよい。
以上から、焼結後のセラミックス積層基板のセラミックス含有量が90質量%以上であってガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように積層用セラミックグリーンシートが構成され、且つ、厚み比が0.1以上且つ1.0以下となるように焼成前積層体及び難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層が構成されている場合、不良品を発生させないためには、その拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPaであることが必要との結論を得た。
図6は、表1に示したデータを、横軸に拘束層(難焼結性セラミックグリーンシート)の原料粉末の粒径をとり、縦軸に同拘束層の粉末充填率をとってプロットしたグラフである。このグラフに基いてデータ解析を行うと、不良割合が0であって、且つ、寸法精度が0.04以下の結果が得られた拘束層の粒径及び粉末充填率により決まる点は、実施例1〜4のそれぞれの粒径及び粉末充填率により決まる点(図6中の黒丸で示した4個のプロットJ1〜J4)を直線で結んで得られる領域A内に存在することが判明した。
換言すると、X−Y平面において粒径がxμmであり且つ粉末充填率がy%である点を(x,y)と表すとき、点P1(0.5,41)と点P2(0.9,45)とを結ぶ直線、点P2(0.9,45)と点P3(1.7,65)とを結ぶ直線、点P3(1.7,65)と点P4(1.1,58)とを結ぶ直線、及び、点P4(1.1,58)と点P1(0.5,41)とを結ぶ直線、により囲まれた領域A内に粒径及び粉末充填率を有する難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層であれば、その拘束層の脱脂体の曲げ強度が適切な値(1.0MPa以上且つ10MPa以下)となり、且つ、寸法精度を良好な値(0.04以下)となるように焼成前積層体を焼結させることができるという結論が得られた。
即ち、前記難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層は、X−Y平面において点P1と点P2とを結ぶ直線、点P2と点P3とを結ぶ直線、点P3と点P4とを結ぶ直線、点P4と点P1とを結ぶ直線、により囲まれた領域A内にセラミックス原料粉末の粒径及び同セラミックス原料粉末の粉末充填率を有することが好ましい。これによれば、セラミックス積層体に反り、うねり及びクラック等を発生させず、且つ、セラミックス積層体に偏った変形を生じさせない(即ち、寸法精度が極めて良好なセラミックス積層体を製造することができる)製造方法が提供され得る。なお、この結論は、表2に示したデータついても同様に適用できる。即ち、それぞれ実施例1〜4と同じ粒径及び粉末充填率を有する実施例13〜実施例16を上記のように直線で結んで得られる領域A内にセラミックス原料粉末の粒径及び粉末充填率を有する難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を用いれば、その拘束層の脱脂体の曲げ強度が適切な値(1.0MPa以上且つ10MPa以下)となり、且つ、寸法精度を良好な値(0.04以下)となるように焼成前積層体を焼結させることができる。
加えて、表1及び図6に示したデータ(上記領域A内に属する粒径及び粉末充填率を有する実施例1〜7における、実施例1〜実施例5と、実施例6及び実施例7と、の比較)によれば、上記領域A内にセラミックス原料粉末の粒径及び粉末充填率を有する難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層であって、基板(セラミックス積層体)の熱膨張率よりも小さい熱膨張率を有し、且つ、構成する粒子が低アスペクト比粒である難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層(実施例1〜5)を使用すれば、寸法精度を極めて良好な値(0.02以下)となるように焼成前積層体を焼結させることができるという結論も得られた。この結論は、表2に示したデータからも導くことができる(即ち、上記領域A内に属する粒径及び粉末充填率を有する実施例13〜19における、実施例13〜17に対する実施例18及び実施例19を参照。)。
更に、表1に示した実施例2と実施例6との比較、表2に示した実施例14と実施例18との比較及びその他のデータに基けば、難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層の熱膨張率は焼結後のセラミックス積層体の熱膨張率よりも小さいことが寸法精度を向上する観点から望ましいとの結論が得られた。
(別の製造方法)
更に、発明者は、上記製造方法と同様の製造方法において、積層用のセラミックグリーンシート(焼成されてセラミックス積層体となる前の段階のシート)のガラス含有量(所謂、仕込み組成)を変更する実験を行った。その実験の結果を表5に示す。
Figure 0004773485
更に、発明者は、厚み比を0.1以上且つ1.0以下の範囲にて変更した場合についても同様の調査(仕込み組成を変更する実験)を行った。その結果、積層用セラミックグリーンシートのセラミックス含有量が90質量%以上であって同積層用セラミックグリーンシートのガラス含有量が0以上且つ10質量%以下であり、拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であれば、製造されたセラミックス積層体に不良は発生しなかった。
これらの実験から、
(1)積層用セラミックグリーンシートのセラミックス含有量が90質量%以上であって同積層用セラミックグリーンシートのガラス含有量が0以上且つ10質量%以下であり、
(2)厚み比が0.1以上且つ1.0以下となるように焼成前積層体及び難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を構成し、且つ、
(3)その拘束層の脱脂体の曲げ強度を1.0MPa以上且つ10MPa以下に調整する、
ことにより、反り、うねり及びクラック等を発生させることなく、且つ、偏った変形が生じていない、ガラスリーン且つセラミックスリッチなセラミックス層を含むセラミックス積層体を容易に製造することができることが判明した。
なお、表5に示したように、上記(1)〜(3)の条件に従って製造されたセラミックス積層体のガラス含有量は、60%以下であった。これは、積層用セラミックグリーンシートの焼成中に、その積層用セラミックグリーンシートの一部がガラス化したからである。
なお、他の実験によれば、粒子形状が針状・板状であってアスペクト比が高い粒子を用いた場合、難焼結性セラミックグリーンシートにおける粉末の密度分布が不均一となり易いため、寸法精度が低下する場合が見られた。
また、セラミックス積層体内における層間剥離の発生を抑制するとともに積層用セラミックグリーンシートを積層する際の変形を抑制するためには、積層用セラミックグリーンシート及び難焼結性セラミックグリーンシートの両者に有機バインダーを含ませることが望ましいことも判明した。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法によれば、反り・うねり及びクラック等をセラミックス積層体に発生させることなく、セラミックス積層体を製造することができる。なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態において、拘束層は、一枚の難焼結性セラミックグリーンシートからなっていたが、複数枚の難焼結性セラミックグリーンシートを積層することにより形成されてもよい。
本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法により製造されるセラミックス積層体の分解斜視図である。 (A)〜(C)のそれぞれは、本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法の工程を説明するための図である。 (A)は本発明の実施形態に係るセラミックス積層体の製造方法において積層用シートを積層する際に使用するプレートの斜視図、(B)は同プレートの縦断面図である。 (A)〜(C)のそれぞれは、セラミックス積層体の製造途中において難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層に加わる力を説明するための図である。 寸法精度の測定方法を説明するための図である。 表1に示したデータを、横軸に拘束層(難焼結性セラミックグリーンシート)の粒径をとり、縦軸に拘束層の粉末充填率をとってプロットしたグラフである。
符号の説明
10…セラミックス積層体、11〜14…セラミックス層、11a〜14a…セラミックス薄板体、11b〜14b…導体膜、11A〜14A…積層用セラミックグリーンシート、11B〜14B…導体膜、20…焼成前積層体、30…難焼結性セラミックグリーンシート(拘束層)、40…複合体、50…プレート、51…基台部、52…基準ピン。

Claims (5)

  1. 複数の積層用セラミックグリーンシートを積層して焼成前積層体を形成するとともに同焼成前積層体の両面に同焼成前積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を配設することにより複合体を形成し、前記焼成前積層体が焼結し且つ前記拘束層が焼結しない焼成温度にて前記複合体を焼成し、その後、前記拘束層を除去することにより、前記焼成前積層体が焼成されて一体化したセラミックス積層体を得るセラミックス積層体の製造方法において、
    前記積層用セラミックグリーンシートは前記セラミックス積層体のセラミックス含有量が90質量%以上であって同セラミックス積層体のガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように構成され、
    前記焼成前積層体及び前記拘束層は前記複合体が前記焼成のために昇温される前の状態において同焼成前積層体の厚みに対する同拘束層の一層分の厚みの比が0.1以上且つ1.0以下となるように構成され、
    前記拘束層は同拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であるように構成される、
    ことを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
  2. 複数の積層用セラミックグリーンシートを積層して焼成前積層体を形成するとともに同焼成前積層体の両面に同焼成前積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性セラミックグリーンシートからなる拘束層を配設することにより複合体を形成し、前記焼成前積層体が焼結し且つ前記拘束層が焼結しない焼成温度にて前記複合体を焼成し、その後、前記拘束層を除去することにより、前記焼成前積層体が焼成されて一体化したセラミックス積層体を得るセラミックス積層体の製造方法において、
    前記積層用セラミックグリーンシートはセラミックス含有量が90質量%以上であってガラス含有量が0以上且つ10質量%以下となるように構成され、
    前記焼成前積層体及び前記拘束層は前記複合体が前記焼成のために昇温される前の状態において同焼成前積層体の厚みに対する同拘束層の一層分の厚みの比が0.1以上且つ1.0以下となるように構成され、
    前記拘束層は同拘束層の脱脂体の曲げ強度が1.0MPa以上且つ10MPa以下であるように構成される、
    ことを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のセラミックス積層体の製造方法において、
    前記拘束層は、その熱膨張率が前記セラミックス積層体の熱膨張率よりも小さいことを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のセラミックス積層体の製造方法において、
    前記複数の積層用セラミックグリーンシートの少なくとも一つにはその少なくとも一方の面に導体膜が形成されていることを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のセラミックス積層体の製造方法において、
    前記複数の積層用セラミックグリーンシートは、第1の誘電率を有するセラミックグリーンシートと、同第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有するセラミックグリーンシートと、を含むことを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
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