JP4773270B2 - ばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線および線材並びに鋼線の製造方法 - Google Patents

ばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線および線材並びに鋼線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼線の高強度化およびばね成形性に関するものであり、例えば、折損や形状不良の発生を防止して太径の高強度ばねに冷間成形できる高強度鋼線を得ることに関するものである。
これまで高強度ばね用ステンレス鋼線は、オーステナイト系および準安定オーステナイト系ステンレス鋼線を強伸線加工したオーステナイトと加工誘起マルテンサイトの混合組織のものである(例えば、特許文献1,2)。そのため、経済性から高強度ステンレス鋼線はφ4.5mm未満の細径サイズ,φ4.5mm以上の太径ステンレス鋼線では1600N/mm2以下の低強度材が主流となっていた(JIS G 4314のステンレス鋼線の規格)。
一方、太径のばね用高強度鋼線は、オイルテンパー線の塗装メッキ材が使用されていた。しかしながら、最近、耐久性の観点から太径のばね用高強度鋼線のステンレス化が求められるようになってきた。太径ステンレス鋼線の高強度化には、経済性の観点から強伸線加工を伴わない例えば、マルテンサイト系材料のように熱処理による高強度化が有望である。
マルテンサイト系ステンレス鋼の高強度化については多く報告(特許文献3,4)されているが、その多くはねじ製品等の高硬度化や高耐食性化に関するものであり、引張強さの向上に関するものは少ない。一方、焼鈍した軟質なマルテンサイト系ステンレス鋼線をばね成形した後に焼き入れ・焼き戻して高強度のばね製品を得る技術は提案されている(特許文献5)。しかしながら、ばね冷間成形後に焼き入れ・焼き戻しを施すためばねの形状が安定せず、形状不良が多発することから、高強度鋼線のまま安定してばね冷間成形できる技術が望まれている。
このように、これまで太径のマルテンサイト系ステンレス鋼線において、ばね成形性に優れ、引張強さが1600N/mm2超の高強度鋼線は提案されていない。とりわけ、冷間でのばね成形性には、鋼線時の引張試験での破断絞りが30%以上必要である。
特開平10−121208号公報 特開2005−298932号公報 特開平6−264194号公報 特開平10−18001号公報 特開平6−299299号公報 M. O. Speidel, "Corrosion Science of Stainless Steels", Proc. Int. Conf. Stainless Steels, 1991, pp25-26
本発明の目的は、耐久性に優れる太径の高強度ばね製品を安価に得ることを主目的に、延性およびばね冷間成形性に優れた太径の高強度ステンレス鋼線を安価に提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、SUS410やSUS420J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼線をベースに、Niを添加してC+0.4N量等の成分を適正化し、最適な熱処理を施して水素含有量を低減することで、線径がφ4.5mm〜φ20mmの鋼線にて、1600N/mm2超の引張強さ,30%以上の破断絞りで良好なばね冷間成形性が得られることを見出した。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.13〜0.30%,Si:0.2〜3.0%,Mn:2.0%以下,Cr:11.0〜17.0%,N:0.15%以下を含有し、更に、Ni:0.1〜4.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で構成され、C+0.4Nが0.15〜0.30%,(A)式で示されるM値が0(%)以上に制御され、引張強さが1600N/mm2を超え、引張破断絞りが30%以上、線径がφ4.5mm〜φ20mmであることを特徴とするばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
M値(%)=Ni+0.12Mn+0.44Cu+18N+30C−1.2Cr−1.8Si−1.7Mo+13 −−−(A)
式中の元素名はその元素の含有量(%)を表す。
(2)さらに、質量%で、Co:0.2〜2.5%を含有することを特徴とする前記(1)記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(3)さらに、質量%で、Mo:0.2〜3.0%,Cu:0.2〜3.0%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1),(2)記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(4)さらに、質量%で、Al:0.01〜1.5%,Nb:0.05〜1.0%,V:0.05〜1.0%,Ti:0.05〜1.0%,W:0.05〜1.0%,Ta:0.05〜1.0%,Zr:0.05〜1.0%の1種類以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(5)さらに、B:0.0005〜0.015%を含有することを特徴とする前記(1)〜()記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(6)さらに、Ca:0.0005〜0.01%,Mg:0.0005〜0.01%,REM:0.0005〜0.003%の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜()記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(7)さらに、Hが1ppm以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(8)さらに、鋼線表面にNiめっきが施されていることを特徴とする前記(1)〜()記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線である。
(9)鋼線の焼入れ処理が、900〜1200℃のAr雰囲気のストランド焼鈍により施されることを特徴とする前記(1)〜(8)記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線の製造方法である。
(10)引張強さが1000N/mm2以下であることを特徴とする前記(1)〜(8)記載の高強度鋼線用のステンレス鋼線材である。
本発明によるばね冷間成形性に優れる高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線は、冷間でのばね成形性を劣化させることなく高強度の太径ばね製品を安定的に製造することができ、太径ばね製品の軽量化・高耐久化に効果を発揮する。
以下に、先ず、本発明の請求項1記載の限定理由について説明する。
Cは、鋼線の高引張強さを確保するために、0.13%以上添加する。しかしながら、0.30%を超えて添加すると、延性が劣化し、低応力破壊が発生するばかりか、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、上限を0.30%に限定する。好ましい範囲は、0.16〜0.25%である。
Nは、Cと同様に高引張強さを確保するために、Cと合わせて添加されるが、0.15%を超えて添加すると気泡が発生する。そのため、上限を0.15%に限定する。好ましい範囲は、0.10%以下である。C+0.4Nが下記範囲を満足すれば、Nは無添加とすることもできる。
C+0.4Nは、焼入れ・焼戻し後の最大引張り強さに及ぼす成分の影響を調査して得られたものであり、CはNの2.5倍の効果を与える。そのため、C+0.4N量が0.15%以上で1600N/mm2超の引張強さが得られるが、0.30%を超えると延性が劣化し、低応力破壊が発生するばかりか、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、上限を0.30%にする。好ましい範囲は、0.16〜0.25%である。
Siは、脱酸のため、また、焼戻し時の時効・析出硬化のため、0.2%以上添加する。しかしながら、3.0%を超えて添加すると脆化して延性が低下し、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、上限を3.0%にする。好ましい範囲は、1.0〜2.0%である。
Mnは、脱酸のため添加するが、2.0%を超えて添加すると脆化し、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、上限を2.0%に限定する。好ましい範囲は、0.2〜1.0%である。
Crは、耐食性を確保するために11.0%以上添加する。しかしながら、17.0%を超えて添加するとフェライト相が生成し、引張強さが低下する。そのため、上限を17.0%にする。
Niは、高強度材の延性を改善して、高引張強さを得るために重要な元素であり、0.1%以上添加する。しかしながら、4.0%を超えて添加すると焼鈍時の鋼線の強度が高く、冷間伸線時の製造性が劣化する。そのため、上限を4.0%にする。好ましい範囲は、0.5〜3.0%である。
非特許文献1には、ステンレス鋼を焼き入れした後の結晶組織をNi当量とCr当量とで整理した結果が示されている。この結果に基づき、前記(A)式で定めるM値を規定した。M値は、焼き入れ後のフェライト相出現との関係を調査して得られた指標である。そこで、ステンレス鋼線の材質とM値との関係を調査したところ、M値が0未満では軟質なフェライト相の割合が多くなり、硬質なマルテンサイト相の割合が低くなり(90%以下になる)、引張強さが低下することが明らかとなった。そのため、本発明ではM値を0%以上に限定する。好ましくは、2%以上である。
引張強さは、1600N/mm2以下では既存の太径ステンレス鋼線との優位性がなくなる。そのため、本発明では鋼線の引張強さを1600N/mm2超に限定する。
引張破断絞りは、太径の高強度ステンレス鋼線のばね冷間成形性に大きく影響を及ぼし、引張破断絞りが30%未満になるとばね冷間成形性が大きく劣化し、折損や形状不良が多発するようになる。そのため、鋼線の引張破断絞りを30%以上に限定する。好ましくは、35%以上である。
鋼線の線径がφ4.5mm未満の場合、従来の伸線加工による高強度ステンレス鋼線で対応できるため、本発明の効果が不明瞭になる。一方、線径がφ4.5mm以上に太い場合、従来の伸線加工材では強伸線加工が必要であり、不経済になるばかりか伸線縦割れが発生する。そのため、本発明の効果が発揮できるφ4.5mm以上の線径に限定する。しかしながら、φ20mmを超えると熱処理時の応力割れが生成しやすくなるため、φ20mm以下に限定する。好ましい範囲は、φ5〜φ12mmである。
次に、本発明の請求項2記載の限定理由について説明する。
Coは、マトリックスの靱性を向上させ、延性が向上するため、必要に応じて0.2%以上添加する。しかしながら、2.5%を超えて添加しても、その効果は飽和するし、経済的でない。そのため、上限を2.5%に限定する。好ましい範囲は、0.5〜2.0%である。
次に、本発明の請求項3記載の限定理由について説明する。
Moは、素材の耐食性を向上させるため、必要に応じて、0.2%以上添加する。しかしながら、3.0%を超えて添加すると、フェライト相が生成し、引張強さが低下する。そのため、上限を3.0%に限定する。好ましい範囲は、0.5〜2.5%である。
Cuは、素材の耐食性を向上させるため、必要に応じて、0.2%以上添加する。しかしながら、3.0%を超えて添加してもその効果は飽和するし、焼戻し軟化抵抗が増加し、鋼線の成形性が劣化する。そのため、上限を3.0%に限定する。
次に、本発明の請求項4記載の限定理由について説明する。
Alは、脱酸のため、また、窒化物を形成して旧オーステナイト粒径を微細にして延性を改善するため、必要に応じて、0.01%以上添加する。しかしながら、1.5%を超えて添加すると、粗大介在物が生成し、延性が低下し、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、上限を1.5%に限定する。好ましい範囲は、0.015〜0.5%である。
Nb,V,Ti,W,Ta,Zrは、炭窒化物を形成して旧オーステナイト粒径を微細にして延性を改善するため、必要に応じて、Nb:0.05〜1.0%,V:0.05〜1.0%,Ti:0.05〜1.0%,W:0.05〜1.0%,Ta:0.05〜1.0%,Zr:0.05〜1.0%を添加する。しかしながら、上限を超えて添加すると粗大介在物が生成し、延性が低下し、ばね冷間成形性が劣化する。
次に、本発明の請求項5記載の限定理由について説明する。
Bは、熱間製造性および延性を向上させるため、必要に応じて、0.0005%以上添加する。しかしながら、0.015%を超えて添加するとボライドが生成するため、逆に延性が低下し、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、上限を0.015%にする。好ましい範囲は、0.001〜0.01%である。
次に、本発明の請求項6記載の限定理由について説明する。
Ca,Mg,REMは、脱酸のため、必要に応じて、Ca:0.0005〜0.01%,Mg:0.0005〜0.01%,REM:0.0005〜0.003%の1種以上を添加する。しかしながら、各上限を超えて添加すると粗大介在物が生成して延性が低下する。
次に、本発明の請求項7記載の限定理由について説明する。
H(水素)は、延性を劣化させ、ばね冷間成形性を劣化させるため、1ppm以下に低減する。好ましくは、0.8ppm以下である。水素の低減方法としては、通常、水素含有の還元雰囲気で行うストランド焼鈍の雰囲気をAr雰囲気等の不活性ガスに変更する,最終の焼き戻し処理にて脱水素処理する等の方法が考えられる。
次に、本発明の請求項8記載の限定理由について説明する。
高強度ステンレス鋼線のばね冷間成形性には、鋼線の表面潤滑も重要となり、コイリング時の高圧化で適度な潤滑性を有しないと、折損や形状不良が発生し易くなる。そのため、特に強度が高いものにはNiめっきがばね冷間成形性に効果的である。
次に、本発明の請求項9記載の限定理由について説明する。
鋼線の高強度化は、ストランド焼鈍にて行うと経済的に優れるが、通常の水素ガスを含有する還元性雰囲気で行うと、水素含有量が1ppmを超え、ばね冷間成形性が劣化する。そのため、Arガス雰囲気のストランド焼鈍で焼入れすることに限定する。
また、この時の温度が900℃未満では、未固溶炭化物が旧オーステナイト粒界に残存して、靱性を劣化させばね冷間成形性を劣化させる。一方、1200℃以上であると旧オーステナイト粒径が大きくなり、逆に靱性が劣化する。そのため、900〜1200℃に限定する。好ましくは、950〜1150℃の温度範囲である。
請求項1に規定した鋼成分を含有する線材について、上記請求項9に規定する項目以外については通常の冷間伸線加工及び焼き入れ焼戻しを行ってφ4.5mm〜φ20mmのステンレス鋼線とすることにより、鋼線の引張強さ1600N/mm2超、鋼線の引張破断絞り30%以上の材質を実現することができる。ストランド焼鈍の雰囲気をArガス雰囲気とするかわりに、最終の焼戻し処理にて脱水素処理をすることとしても良い。
次に、本発明の請求項10記載の限定理由について説明する。
請求項1〜8の鋼線は、引張強さが1600N/mm2超の強度を有するが、鋼線に製造するためには、素材である線材の引張強さが1000N/mm2以下にすることが好ましい。素材である線材の引張強さが1000N/mm2を超えると伸線加工時に破断が発生する等、製造性が劣化する。そのため、必要に応じて、素材である線材の引張強さを1000/mm2以下に限定する。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1、2に実施例の鋼の化学組成を示す。
Figure 0004773270
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これらの化学組成の鋼は、100kgの真空溶解炉にて溶解し、φ180mmの鋳片に鋳造し、その鋳片をφ22〜5mmまで熱間の線材圧延を行い、1000℃で熱間圧延を終了した。そして、850℃で2時間の完全焼鈍を施して、酸洗を行い線材製品とした。その後、φ21〜φ3.5mmまで冷間伸線加工を施し、800〜1250℃のArガス雰囲気、または水素含有の還元雰囲気のストランド焼鈍により焼き入れ処理を行い、引き続き200〜500℃の大気で焼き戻し処理を行い、高強度のステンレス鋼線とした。また、一部の鋼線についてはNiめっきを施した。
そして、これらの鋼線について、コイル状ばねのばね冷間成形を実施し、折損や形状不良なく、ばね成形ができるか否かを評価した。
また、線材および鋼線の機械的性質,鋼線の水素量を評価した。その評価結果を表3、4に示す。
Figure 0004773270
Figure 0004773270
機械的性質は、JIS Z 2241の引張試験での引張強さと破断絞りにて評価した。本発明例の線材では、全て1000N/mm2以下であり、本発明例の鋼線では、全て1600N/mm2超,破断絞りが30%以上であり、高強度で延性に優れていた。
鋼線の水素量は、不活性ガス溶融−熱伝導測定法を用いて行った。本発明例の鋼線の水素量は全て1ppm以下であり、ばね冷間成形性に優れていた。
鋼線のばね冷間成形性は、コイルばねの内径が鋼線の直径の10倍になるようにコイリングし、折損または形状不良が発生しないか否かで評価した。良好な場合を○、折損または形状不良が発生する場合を×として評価した。本発明のばね冷間成形性は全て○であった。
一方、比較例No.26は、C量が低く、C+0.4N量が低くなり、鋼線の引張強さが低い。
比較例No.27は、C量が高く、C+0.4N量が高くなり、低応力破壊のため、鋼線の延性が劣化しており、ばね冷間成形性に劣る。
比較例No.28は、N量が高いため、鋳片で気泡が発生し、製品に製造できない。
比較例No.29,30は、それぞれSi,Mn量が高く、鋼線の延性が低く、ばね冷間成形性に劣る。
比較例No.31は、Ni量が少なく、鋼線の延性が低く、ばね冷間成形性に劣る。
比較例No.32,37は、それぞれNi,Cu量が高く、線材の強度が高過ぎるため、鋼線への製造が不可である。
比較例No.33は、Cr量が低く、鋼線の耐食性が低い。
比較例No.34,36は、それぞれCr,Mo量が高く、M値が0未満であり、軟質なδフェライト量が多くなるため、鋼線の強度が低くなっている。
比較例No.35は、Co量が高く、不経済である。
比較例No.38〜48は、それぞれ、Al,Nb,V,Ti,W,Ta,Zr,B,Ca,Mg,REMが高過ぎるため、鋼線の延性が低く、ばね冷間成形性が劣る。
比較例No.49は、鋼線の線径が細過ぎるため、従来の高強度鋼線と差別化ができず、本発明の効果が発揮していない。
比較例No.50は、鋼線の線径が太過ぎるため、鋼線で応力割れが発生している。
比較例No.51は、ストランド焼鈍雰囲気が水素含有の還元性雰囲気のため、鋼線の延性が低く、ばね冷間成形性に劣る。
比較例No.52は、特に強度が高いため、Niめっきを施さないとばね冷間成形性に劣る。従って、ばね冷間成形性の観点から、Niめっきを施す方が好ましい。
比較例No.53は、ストランド焼鈍温度が低過ぎ、旧オースナイトの未固溶炭化物の残存が多いため、延性が低く、ばね冷間成形性に劣る。
比較例No.54は、ストランド焼鈍温度が高過ぎ、旧オーステナイト粒径が大きくなり過ぎるため、延性が低く、ばね冷間成形性に劣る。
以上の各実施例から明らかなように、本発明により、ばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線を安価に製造でき、ばね冷間成形性を劣化させることなく高強度ばね製品に加工が可能であり、軽量化・耐久性に優れる太径ばね製品を安価に提供することができ、産業上極めて有用である。

Claims (10)

  1. 質量%で、C:0.13〜0.30%,Si:0.2〜3.0%,Mn:2.0%以下,Cr:11.0〜17.0%,N:0.15%以下を含有し、更に、Ni:0.1〜4.0%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で構成され、C+0.4Nが0.15〜0.30%,(A)式で示されるM値が0(%)以上に制御され、引張強さが1600N/mm2を超え、引張破断絞りが30%以上、線径がφ4.5mm〜φ20mmであることを特徴とするばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
    M値(%)=Ni+0.12Mn+0.44Cu+18N+30C−1.2Cr−1.8Si−1.7Mo+13 −−(A)
    式中の元素名はその元素の含有量(%)を表す。
  2. さらに、質量%で、Co:0.2〜2.5%を含有することを特徴とする請求項1記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  3. さらに、質量%で、Mo:0.2〜3.0%,Cu:0.2〜3.0%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  4. さらに、質量%で、Al:0.01〜1.5%,Nb:0.05〜1.0%,V:0.05〜1.0%,Ti:0.05〜1.0%,W:0.05〜1.0%,Ta:0.05〜1.0%,Zr:0.05〜1.0%の1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  5. さらに、B:0.0005〜0.015%を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  6. さらに、Ca:0.0005〜0.01%,Mg:0.0005〜0.01%,REM:0.0005〜0.003%の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  7. さらに、Hが1ppm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  8. さらに、鋼線表面にNiめっきが施されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線。
  9. 鋼線の焼入れ処理が、900〜1200℃のAr雰囲気のストランド焼鈍により施されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のばね冷間成形性に優れる太径の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼線の製造方法。
  10. 引張強さが1000N/mm2以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高強度鋼線用のステンレス鋼線材。
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