JP4766786B2 - 薬液含浸清拭シート包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエットティッシュ等のように薬液を含浸した清拭シートを複数枚重ねた状態で収容してなる包装体に関する。より詳細には、容器内に収容した薬液含浸清拭シートを一枚若しくは数枚ずつ取り出して使用する形態の薬液含浸清拭シート包装体において、内部に収容された清拭シートを最後の一枚まで乾燥させることなく適度に所望の湿潤状態に維持できる包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬液を含浸させた清拭シートは、従来より大人や赤ん坊の手、顔及び局部等の皮膚を清浄し清潔にする目的で広く使用されている。かかる薬液含浸清拭シートは、適当な大きさのシートが複数枚、巻物状態若しくは積重状態で、開閉自在の取り出し口を有する容器に収容されており、使用する際に該容器の取り出し口を開けて一枚若しくは数枚ずつ取り出して使用されるのが普通である。
【0003】
このように使用毎に容器の取り出し口を開けて取り出し使用される態様においては、使用するたびに容器内部から薬液が揮発放散するため、清拭シートに含浸された薬液量が早期に低下し、最後あたりの清拭シートでは十分な清拭性能を得ることができないという不都合が生じる。
【0004】
このような不都合さを回避するために、製造に際して薬液を増量して充填することも考えられるが、薬液過多のために使用時に液だれを生じたり、また清拭した対象物がいつまでも濡れた状態となり速乾性に欠けるなど、使用感に劣るという問題がある。このため、実際には薬液含浸清拭シートの収容容器として不透液性の容器を採用し、該容器の取り出し口を密着度の大きい開閉自在の蓋で覆うようにして、できるだけ気密性を確保するように工夫された包装体が用いられているのが現状である(例えば、実開平6-353号公報等)。しかしかかる包装体であっても、多数枚の薬液含浸清拭シートを収容した場合には、その分使用に際して取り出し口を開ける回数が増すため、最後に近づくにつれて清拭シートが乾燥しがちになるという不都合さは避けがたい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、複数枚の薬液含浸清拭シートを収容してなる包装体に関する上記従来の問題を解決することを目的とするものである。具体的には、本発明の目的は、容器の取り出し口をくり返し開閉して使用しても、内部に収容された薬液含浸清拭シートが最初から最後まで所望の清拭性能を発揮するように、薬液含浸清拭シートを適度に湿潤した状態で保持することのできる薬液含浸清拭シート包装体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねていたところ、薬液含浸清拭シートを収容した容器に、該清拭シートとともに、同様に薬液を含浸させた調湿用パットを収容しておくことで、さらに好ましくは特定の構成からなる調湿用パットを収容しておくことで、清拭シートの早すぎる乾燥と薬液の望ましくない濡れを防止することができ、該収容容器を複数回くり返して開閉使用した場合でも、内部の清拭シートが最後まで所望の湿潤性を維持して所期の清拭性能を備えていることを見出した。また、本発明者はかかる調湿用パットを容器内に収容しておくことによって、多数枚の薬液含浸清拭シートを一つの容器に収容した所謂、大容量の薬液含浸清拭シート包装体においても最後まで所望の湿潤性と清拭性能を有する清拭シートが得ることができること、すなわち、収容する清拭シートが乾燥して清拭性能が低下するという問題、並びに収容する清拭シートが薬液過多による望ましくない濡れによって清拭後の速乾性に不具合を生じるという問題を伴うことなく、薬液含浸清拭シート包装体の大容量化が可能となることを見出した。
【0007】
本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものである。すなわち、本発明は下記に掲げる薬液含浸清拭シート包装体である。
(1)開閉自在の開口部を有する非透液性容器内に、薬液を含浸した清拭シートの重ね物を収容した包装体であって、該容器内部に上記清拭シートとともに、上記と同一の薬液を含浸した吸液性部材を調湿用パットとして収容してなることを特徴とする薬液含浸清拭シート包装体。
(2)開閉自在の開口部を有する非透液性容器内に、薬液を含浸した清拭シートの重ね物を収容した包装体であって、該容器内部に上記清拭シートとともに、表面層が高揮発性部材からなり中間層が高吸液性部材からなる上記と同一の薬液を含浸した積層物を調湿用パットとして収容してなることを特徴とする薬液含浸清拭シート包装体。
【0008】
なお、本発明の薬液含浸清拭シート包装体の具体的な態様には下記に掲げるものを含むことができる。
(i) 調湿用パットの表面が清拭シートの少なくとも一部と接触した状態で非透液性容器内で収容されてなることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の薬液含浸清拭シート包装体。
(ii) 調湿用パットが非透液性容器の内側底部に配置され、清拭シートの重ね物が当該調湿用パットの上に収容されてなる、上記(1)または(2)に記載の薬液含浸清拭シート包装体。
(iii) 調湿用パットが、清拭シートの重ね物の底部の大きさと略同一の平面大きさを有するものである、上記(1)または(2)に記載の薬液含浸清拭シート包装体。
(iv) 薬液を含浸した清拭シートを少なくとも30枚、重ねて収容してなる上記(1)または(2)に記載の薬液含浸清拭シート包装体。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の薬液含浸清拭シート包装体は、開閉自在の開口部を有する非透液性容器内に、薬液を含浸した清拭シートの重ね物が同薬液を含浸してなる調湿用パットとともに収容されてなることを特徴とするものである。
【0010】
ここで非透液性容器とは、少なくとも本発明において用いられる薬液を容器外部に溶出、漏出もしくは滲出しない性質を有する材質からなる容器であればよく、一般に水分及び油分を透過させにくい合成樹脂製の中から適宜選択して使用することができる。かかる合成樹脂として、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリエステルなどを例示することができる。なお、これらの合成樹脂は1種または2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。またかかる容器は単層のフィルム(またはシート)から構成されるものであってもいいし、また2層若しくは複層のラミネートフィルム(シート)からなるものであってもよい。後者の場合、内層にアルミニウム箔やその他の防水性・耐水性の材質を用いることによって、外層に用いる材質に関わらず、非透液性を確保することができる。また、外層に非透液性の材質を、また内層に熱溶着可能な材料を用いることによって熱溶着によって容器を組み立て調製することができる。かかる外層材質としては、例えば普通セロハン、防湿セロハン、蒸着2軸延伸ポリプロピレン、ポリエステル、蒸着ポリエステル、2軸延伸ナイロン、エチレンビニルアルコールなどが例示され、また内層材質としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、未延伸ポリプロピレン、蒸着未延伸ポリプロピレン、アイオノマー樹脂などが例示される。
【0011】
なお、容器の形状は特に制限されず、清拭シートをロール状に巻き重ねて収容するのに好適な形状としては円筒状、円柱状、直方体状、立方体状等が、また清拭シートを折り畳んで複数枚積み重ねた状態で収容するのに好適な形状としては箱形(平面断面形状が矩形、正方形、台形、菱形など)、ピロータイプ袋体形、ガゼット袋体形等を例示することができる。
【0012】
かかる容器はその一部、好ましくは上面部に、内部に収容した清拭シートを取り出すための開口部を有している。当該開口部は、容器に単に切り込みを入れた形態のものであってもよいし、また清拭シートを取り出しやすくするために、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、菱形、トラック形、ループ形などの任意の形状を有するものであってもよい。また、当該開口部はさらに開閉自在な蓋部を備えることにより開口部自体を開閉自在とすることができる。なお、蓋部は開口部に固着しても脱着可能な状態で設けてもよい。当該蓋部は、清拭シートを取り出さない非使用時には開口部をできるだけ気密状態(密封状態)に覆い、また清拭シートを取り出す使用時にはかかる覆い部を手で簡単に外して開口部を開放できるようなものであることが好ましい。さらには、蓋部を開口部を覆うように脱着可能に接着することによって、くり返して開放・密封できるようにされたものが好ましい。
【0013】
上記の容器の内部に収容する清拭シートとしては、吸液性を有し、また含浸させる薬液に耐性を有し、かつ薬液を含浸した状態での清拭操作に耐えられる程度の耐久性(強度)を有するシート状物であれば、その材質等を特に制限するものではない。例えば、紙やパルプなどのセルロース製品;天然繊維、人造繊維又はそれらの混合繊維からなる不織布若しくは編織物;または発泡ウレタンなどの合成樹脂からなるスポンジ状材料等を挙げることができる。好ましくは経済性、強度及び拭き取り性の観点から不織布を挙げることができる。
【0014】
不織布は、上記性質を有する限りにおいてその素材並びに製法によって特に制限されず、綿や麻などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維,ポリエステルやアクリルなどの合成繊維もしくはアセテートなどの半合成繊維等の人造繊維またはそれらの混合繊維から、乾式法または湿式法を用いて製造されるものがいずれも包含される。好ましくは、汚れの拭き取り効果に優れ、繊維の脱落が少なく、薬液を吸収・保持できるものである。このようなものとしては、例えばアクリル繊維から調製される不織布、または少なくともアクリル繊維を含む混合繊維(複合繊維を含む)、パルプ・レーヨン混合繊維から調製される不織布を挙げることができる。好ましくはパルプ・レーヨン混合繊維から調製される不織布である。なお、かかる不織布には、弾力性を持たせて使いやすくし、また汚れの拭き取り効果を高めるために、エンボス加工またはクレープ加工が施されていてもよい。
【0015】
なお、清拭シートの大きさは特に制限されず、一辺が5〜30cmである正方形もしくは長方形のシートであることができる。好ましくは拭き取り作業がしやすいように、手のひらサイズの1枚形状物、もしくは2〜複数折りして手のひらサイズになるような大きさを挙げることができる。
【0016】
かかる清拭シートに含浸させる薬液としては、清浄性、速乾性等の効果を有するものであれば特に制限されないが、好ましくはアルコール類、水またはこれらの混合物を挙げることができる。なお、アルコール類としては、エタノールやイソプロピルアルコールなどの低級アルコールを例示することができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。ここでアルコール類の割合は、特に制限されないが、水100重量部に対して通常10〜200重量部、好ましくは50〜150重量部の範囲を挙げることができる。
【0017】
これらの薬液には、他の任意成分として香料、抗菌剤、消臭剤、界面活性剤、防腐剤、色素、消泡剤、酸化防止剤、清澄剤、可溶化剤、pH調整剤等を配合することができる。
【0018】
清拭シートの薬液の含浸量は、所望の清拭性能を備える程度に湿潤した状態を保つ量であれば特に制限されない。使用する清拭シートの吸水性能(含水性能)によっても異なるが、好ましくは10〜30g/m2の範囲から適宜調整することができる。
【0019】
かかる薬液を含浸した清拭シートは、清拭シートの単体を連続してロール状に巻重することにより、または単層若しくは折り畳んだ状態の清拭シートの単体を積み重ねることにより形成される、いわゆる重ね物の状態で容器に収容される。好ましくは、折り畳んだ状態の清拭シート単体を複数枚積重してなる重ね物の状態である。容器に収容する清拭シート単体の枚数としては、使用に伴って容器内に残った最後の一枚まで、適度な湿潤をもって薬液が保持されることを限度として特に制限されないが、好ましくは最大枚数として100枚、より好ましくは30枚を挙げることができる。なお、勿論、本発明は上記最大枚数未満の枚数の清拭シートを収容してなる薬液含浸清拭シート包装体をも対象とするものである。
【0020】
本発明の特徴は、容器内部に上記清拭シートとともに調湿用パットが収容されてなることである。
【0021】
当該調湿用パットは、吸液性部材、好ましくは高吸液性部材から構成することができる。
【0022】
ここで吸液性とは、清拭シートに含浸させる薬液と同一の薬液に対して吸液性であることを意味し、具体的には一定容量の部材に含浸できる薬液の飽和含浸量で評価することができる。具体的には、飽和含浸量(部材が薬液を飽和するまで含浸できる量(部材自体の重さを除く))が該部材の自重に対して4倍以上、好ましくは8倍以上である場合を高吸液性と評価することができる。高吸液性部材として好ましくは、薬液の該部材の飽和含浸量が該部材の自重に対して8〜12倍であるものである。例えば、薬液としてアルコール、水、香料及び界面活性剤を用いた場合に高吸液性と評価される材質として、パルプを好適に例示することができる。吸液性部材として好適には多孔性シートを用いることが好ましく、このような部材としては、例えば目付として200〜1000g/m2、好ましくは500〜600g/m2のものを使用することが好ましい。
【0023】
調湿用パットは、上記の吸液性部材を中間層として、その表面の片面若しくは両面が高揮発性部材で積層されてなる積層構造を有していてもよい。
【0024】
ここで高揮発性とは、清拭シートに含浸させる薬液を揮発させやすい性質を意味し、薬液を飽和まで含浸させた単位シートを無風恒温恒湿条件下(25℃、30%湿度)に放置した場合の重量変化を追跡することによって評価することができる。かかる評価において、揮発率(単位時間あたりの重量減少度)が2.5%以上である場合を高揮発性と評価することができる。より好ましくは揮発率3〜4%程度を有するものである。例えば、薬液としてアルコール、水、香料及び界面活性剤を用いた場合に高揮発性と評価される材質としては、レーヨン、アセテート、ポリエステル、好ましくはレーヨンを挙げることができる。なお、これらの材質は1種単独で使用しても、2以上を任意に組み合わせて使用することもできる。当該高揮発性部材として好適には多孔性シートを用いることが好ましく、このような部材としては、例えば目付として10〜50g/m2、好ましくは20〜40g/m2のものを使用することが好ましい。
【0025】
本発明の調湿用マットとして、上述するように中間層に吸液性部材からなる多孔性シートを用い、その両面、すなわち表面側と裏面側の2面に、表面層として上記高揮発性部材からなる多孔性シートを備える積層体を採用する場合、当該表面層は表面側と裏面側と同一のものでも、相互に異なるものを採用してもよい。
【0026】
なお、上記各部材から構成される多孔性シートとしては、天然また合成繊維のシート状集束物(繊維束)、織物、織布、不織布、合成樹脂粉末のシート状集合物またはシート状焼結体、シート状の合成樹脂発泡体等を例示することができる。
【0027】
上記表面層と中間層の積層方法(固着方法)は、特に制限されることなく、使用される材質に応じて当業界で採用される任意を方法を用いることができる。好ましくは、例えば使用する中間層と表面層が有する薬液の吸液性と揮散性を妨げない積層方法(固着方法)であり、かかる方法としては、糊剤を圧着若しくは熱溶着する方法、熱融着する方法等を挙げることができる。
【0028】
なお、上記高揮発性部材から表面層と高吸液性部材からなる中間層との割合は、制限されないが、表面層/中間層/表面層とした場合に0〜25:50〜100:0〜25(重量比)の範囲から適宜選択することができる。
【0029】
調湿用パットは、その表面が清拭シートの一部に接触する態様で容器に収容される。調湿用パットの容器内の配置態様の一例を図1〜4に示す。図1〜図4は薬液含浸清拭シート包装体の断面図である。
【0030】
調湿用パットと清拭シートとの接触態様としては特に制限されず、例えば図1または図2に示すように清拭シートの重ね物の平面部が調湿用パットの表面に接触する態様、図3に示すように清拭シートの重ね物の側面部が調湿用パットの表面に接触する態様、図4に示すように清拭シートの重ね物の平面部と側面部の両方が調湿用パットの表面に接触する態様を例示することができる。なお、接触部は例えば図1に示すように清拭シートの平面部の全面に亘って接触してもいいし、また図2に示すように清拭シートの一部と接触する態様でもよい。好ましくは包装体の使用形態(横置き、縦置き等の配置態様)に応じて、少なくとも清拭シートの重ね物の底面部(平面部、側面部)に接触する形態を有することが好ましい。この場合、包装体が図1又は2に示すように横置使用タイプのものである場合は、調湿用パットをその包装体の底部(平面部)の一部または全部に、また図3又は4に示すように縦置使用タイプのものである場合は、調湿用パットをその包装体の底部(側面部)の一部または全部に接触するように配置することができる。
【0031】
調湿用パットをかかる態様で配置することによって、清拭シートに薬液を過量に担持させた場合でも重力による液切り効果によって、使用時の液垂れを防止し、また清拭対象物を過度に濡らすことなく速乾性ある清拭処理を行うことができる。また、調湿用パットから清拭シートの重層物に毛細管現象によって効率よく薬液を補充・供給することができるため、清拭シートを最後まで適度に湿潤した清拭性能を保持した状態で使用することが可能となる。
【0032】
かかる調湿用パットは、好適には清拭シートの重ね物の底部大きさ(平面部、側面部)と略同一の平面大きさを有していることが望ましい。この場合、容器が例えばピロー袋体形等の軟質の材料からなる袋状物である場合には底部の強度補強材として機能することができる。
【0033】
なお、図2に示す配置態様によれば、取り出す清拭シートが調湿用パットに接触しているため、使用する都度に高湿潤のシートを得ることができる。図3に示す配置態様によれば、側面部に調湿用パットを配置するため清拭シート全部と接触させることができ、シート一枚毎、含浸させる薬液量を均一にすることができる。また図4に示す配置態様によれば、容器開口部と反対側に位置する容器の内部底面部に調湿用パットを配置することにより、清拭シートが密に押圧されて、シート一枚毎の含浸薬液量を均一にすることができ、また少量枚数になった場合も、調湿パットの倒れ込みによって上記効果を得やすいという効果がある。
【0034】
【実施例】
以下、実施例及び実験例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はかかる実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1
本発明の薬液含浸清拭シート包装体の一例を図1に示す。図1は薬液含浸清拭シート包装体の断面図である。
【0035】
当該包装体1は、図1に示すように、開閉自在の蓋部22を備えた開口部21を有する容器(包材)2内に、薬液を含浸してなる清拭シート3と調湿用パット4を収容してなる。清拭シート3は折り畳んだ単シートを複数枚重ねた重ね物として、容器2の内側底部に置かれた調湿用パット1の上に積み重ねた状態で、容器2内に収容される。
【0036】
容器2はここでは内側から2軸延伸ポリプロピレン20μm/アルミニウム箔7μm/直鎖状低密度ポリエチレン50μmの3層フィルムからなる袋状容器が使用されている。蓋部22は上部表面から2軸延伸ポリプロピレン40μm/ポリエチレン50μmの2層フィルムからなり、容器2と重なる部分には、蓋を閉じた際に容器の気密性を確保しまた手の力で簡単にくり返し開閉ができるように、脱着自在の接着剤が積層されてなる。さらに、図1に示すように、容器2の上面部をさらにポリエチレン製フィルム等の補強材23で積層することによって、容器の硬度が高まって蓋部の開閉がより容易になり、また蓋部のくり返し開閉動作に対して容器に耐久性を付与することができる。また、図1に示すように、蓋部22の一部を上記補強材と容器との間に挿入し固着することにによっって蓋部を容器に固定することができる。
【0037】
ここでは調湿用パットとして、上方面からレーヨン(高揮発性部材)からなる多孔性シート41/パルプ(高吸液性部材)からなる多孔性シート42/レーヨン(高吸液性部材)からなる多孔性シート41の3層構造(パルプ:レーヨン=90:10(重量比))を有するものが使用されている。また、レーヨンからなる多孔性シートとして目付30g/m2のシート状不織布が、パルプからなる多孔性シートとして目付540g/m2のシート状不織布が使用される(パットの目付:600±60g/m2)。なお、これらの3層の各層間の固定は、熱溶融性の糊剤を用いて熱融着することで行われている。
【0038】
清拭シート3は、予め蓋部を付けた開口部を有する一枚の矩形フィルムを、その一辺及びその対辺が他の2辺の長手方向略中央部分で突き合わされるように、かつ上記開口部が形成した容器(包材)の上面中央にくるように、2箇所で折り曲げて袋体を形成し、さらに該袋体の周縁のうち開口する側辺部分(2箇所)と、前記突き合わせた中央部分の合計3箇所をヒートシールして、中央合掌シール形として調製される。なお、3箇所のシール部のうちの何れか一つは、容器(包材)内に薬液を含浸してなる清拭シートの重ね物及び調湿用パットとの積層物を挿入した後、シールする。
【0039】
なお、本実施の形態においては、前述のように、容器(袋)2を中央合掌シール形としたが、当然ながら、側面シール形や2方シール形等の種々のシール形態を用いることができる。また、シール方法自体も、ヒートシールに代えて、接着剤によるシール等、種々の方法を用いることができる。
【0040】
このように構成された本発明の薬液含浸清拭シート包装体1は、使用時に蓋部を図1に示すように開けて、該開口部から容器内部にある清拭シートを必要枚数取り出し、また使用後には蓋部を閉じて容器内部から薬液が揮散しないように気密状態におかれる。なお、調湿用パットの上方面を着色しておくと、清拭シートの残数が少なくなったことを目視で判断することができる。
【0041】
実験例1 調湿用パットの選択
1.部材の吸液性の評価
目付が400〜1000g/m2の範囲にあるアセテート、レーヨン、ポリエステル、アクリル-レーヨン(70:30)、パルプ、ポリエチレンをそれぞれ素材とするシート状基材(不織布または繊維、平面大きさ50mm×50mm)について、香料2%、可溶化剤2%、界面活性剤2.5%及び水93.5%からなる薬液に対する吸液性を評価した。
【0042】
<吸液性>
上記各素材からなるシート状基材(平面大きさ50mm×50mm)の初期重量を図り、次いで薬液に20秒間浸漬した後、ピンセットで端を摘んで薬液から上げて30秒間液を切る。これをシャーレに移して、薬液浸漬後の重量を測定して、浸漬前の重量測定値との差から各シート状基材について薬液の吸液量(単位重量あたり)を算出する。
【0043】
<結果>
その結果、目付400g/m2の各シート状基材について比較すると、吸液性の高い順はアクリル-レーヨン(70:30)、パルプ、レーヨン、ポリエステル、アセテートであった。すなわち、アクリル-レーヨン(70:30)及びパルプが吸液性の高い素材であることがわかった。
【0044】
2.部材の揮発性の評価
上記各シート状基材について、吸液性の評価に用いた薬液と同一の薬液(香料2%、可溶化剤2%、界面活性剤2.5%及び水93.5%)を用いて揮発性を評価した。
【0045】
<揮発性>
上記の実験において薬液を含浸させた各基材シートを、温度25℃、湿度 %の無風室内に静置し、12時間後に基材シートの重量を測定して、静置時の重量との差から各シート状基材について12時間後の揮発量を算出する。次いで、この揮発量を各基材シートの吸液量で割って(揮発量/吸液量)、その値を揮発度として評価する。
【0046】
<結果>
その結果、目付400g/m2の各基材シートについて比べると、揮発度が0.6以下の素材はアクリル-レーヨン(70:30)(0.41)とパルプ(0.58)であり、それ以外は全て0.6以上であった(アセテート:0.67、ポリエステル:0.70、レーヨン:0.75)。目付と揮発度との関連性は各素材によってまちまちであり素材共通の傾向は見られなかったが、レーヨンについては、目付が小さいほど揮発度が高まる傾向が顕著にみられた。すなわち、レーヨンは、薬液に対して揮発性が高い素材であるとともに、揮発性について目付量に対する依存性の高い素材であることがわかった。
【0047】
実験例2 薬液含浸清拭シート包装体の使用に伴う乾燥度の経時的変化
薬液含浸シート包装体(清拭シート30枚入り)について、使い初めから終わりにかけてシートの重量変動を調べることにより、使用に伴う容器収容シートの乾燥度の経時的変化をみた。
1.薬液含浸シート包装体
▲1▼ 容器(包材):実施例1のものを使用
▲2▼ 薬液 :イソプロピルアルコール50%及び水50%
▲3▼ 清拭シート :パルプ・レーヨン混合不織布35g/m2
150mm幅辺を両端が真ん中に合わさるように2箇所で折り曲げて(C折り)、幅75mm×ピッチ100mm平面大きさの単シートとし、これを30枚積層した
▲4▼ 調湿用パット:実施例1のものを使用(75mm×100mm)。
【0048】
上記の薬液10.5gを清拭シート30枚重ね物に含浸させて(1枚あたり0.35g:0.35g×30枚=10.5g)、それを同様に薬液を含浸させた調湿用パットの上に積層した。これを内容物として、実施例1に記載するように薬液含浸清拭シート包装体を作成した。調湿用パットに含浸させる薬液の量を単シート5枚分(0.35g×5枚=1.75g、実施例2)、10枚分(3.5g、実施例3)、15枚分(5.25g、実施例4)、20枚分(7.7g、実施例5)、40枚分(15.4g、実施例6)及び60枚分(23.1g、実施例7)に、それぞれ変えたものを作成し、これを被験物として下記の実験を行った。また、比較被験物として調湿用パットを使用しない包装体(比較例1)を同様にして作成した。
【0049】
2.実験方法
40℃恒温槽内で、1日朝昼夕の計3回、容器の蓋を開けて内部から一枚ずつ清拭シートを取り出して、該シートの重量を測定する。なお、容器の開放時間が6〜7秒の間に制限する。これを内部のシートがなくなるまで続ける。
【0050】
3.結果
結果を図5に示す。図5から、調湿用パットを使用しない包装体(比較例1)は、使用にともなって速やかに容器内のシートが乾燥していくことがわかった。なお、この清拭シートの場合、シートに含浸された薬液量が0.2g/枚を下回ると清拭性能が低下するが、比較例1は22枚使用したところで薬液含量が0.2g/枚以下に低下し、30枚の最後まで清拭性能を維持することができなかった。これに対して本発明の包装体(実施例2〜7)のように、調湿用パットを使用することで、比較例でみられたような薬液含量の急激な低下は抑制され、清拭性能を最後まで維持することができた。、
また、本実験例の場合、清拭シート単位あたりの薬液量を、最後まで所定の0.35g/枚あたりに維持するためには、調湿用パットに薬液を単シート10枚分(3.5g)含浸させたものを使用することで十分であることもわかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、包装体の内部に薬液を含浸させた清拭シートとともに、同薬液を含浸させた調湿用パットを収容することによって、使用時の容器開放に伴う薬液蒸発によるシートの薬液含浸量の低下を抑制することができる。その結果、本発明の包装体によれば、使い初めから使い終わりまで、所望の清拭性能を維持した清拭シートを提供することができる。
【0052】
また、清拭シートの薬液含浸保持量もしくは使用回数に伴う薬液含浸量の低下抑制は、調湿用パットに含浸させる薬液の量を調節することによって制御できる。従って、調湿用パットに含浸させる薬液の量を調節することによって、多容量の清拭シートを収容した包装体であっても、最後の一枚まで適度に湿潤して所望の清拭性能を維持した清拭シートを提供することができる。すなわち、本発明によれば、多容量の薬液含浸清拭シートを最後まで清拭性能がおちない状態で収容した包装体を提供することができる。
【0053】
調湿用パットが容器の内側底部に配置され、その上に清拭シートが積重されてなる本発明の包装体によると、シートに保持させるには多すぎる薬液は重力によって底部の調湿用パットに吸液され、また上記開口部の開放によって薬液含浸量が低下した上方部のシートに対しては、多孔質からなる清拭シートの連続層(重ね物)における毛細管現象によって底部の調湿用パットから順次補給することができる。すなわち、本発明の包装体は、容器内で薬液をうまく循環させることにより、内部の清拭シートの湿潤度を一定に保つことができるように工夫したものである。
【0054】
さらに、調湿用シートを清拭シートの重ね物の平面大きさと同じ平面大きさとすることで、包装体(容器)の形状を維持することができる。特にこの効果は、容器が軟質の包材で調製されている場合(袋体など)に有用に機能する。また使用に伴って内容物が減少してきた場合には、包装体(容器)の形状の維持だけでなく、中に収容された清拭シートの形状や収容状態(積重状態、容器中の収まり具合)を維持するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬液含浸清拭シート包装体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の薬液含浸清拭シート包装体の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の薬液含浸清拭シート包装体の一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の薬液含浸清拭シート包装体の一実施形態を示す断面図である。
【図5】実験例2において、本発明の薬液含浸清拭シート包装体(清拭シート30枚入り、調湿用パットあり)について、使用に伴ってシート一枚あたりの薬液含浸量(g/1枚)が低下する度合いをみた結果を、調湿用パットのない薬液含浸清拭シート包装体(清拭シート30枚入り)と比較した結果を示す図である。
【記号の説明】
1:薬液含浸清拭シート包装体
2:容器(包材)
21:容器の開口部
22:蓋部
23:補強材
3:清拭シート
4:調湿用パット
41:表面層(高揮発性部材)
42:中間層(吸液性部材)
Claims (2)
- 開閉自在の開口部を有する非透明性容器内に、薬液を含浸した清拭シートの重ね物を収容した包装体であって、該容器内部に上記清拭シートとともに、表面層が薬液を飽和まで含浸させて25℃、30%湿度の無風条件下に放置した場合の単位時間あたりの重量減少度(揮発率)が2.5%以上である高揮発性部材からなり、中間層が薬液の飽和含浸量が部材の自重に対して4倍以上である高吸液性部材からなる上記と同一の薬液を含浸した積層物を調湿用パットとして収容してなることを特徴とする薬液含浸清拭シート包装体。
- 開閉自在の開口部を有する非透明性容器内に、薬液を含浸した清拭シートの重ね物を収容した包装体であって、該容器内部に上記清拭シートとともに、表面層がレーヨン、アセテート、及びポリエステルからなる群から選択される少なくとも1種の高揮発性部材からなり、中間層がパルプからなる上記と同一の薬液を含浸した積層物を調湿用パットとして収容してなることを特徴とする薬液含浸清拭シート包装体。
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-
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