JP4766416B2 - マスキング機構及びそれを備えた成膜装置 - Google Patents
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このようにして、ターゲットの材料の蒸発流が、マスキング支持板53のマスク孔53aを介して基板55の表面に蒸着される。その際、所定位置に隣接して配置されたマスク孔53aが円周方向に移動することによって、基板55の表面の各所におけるマスク孔53aを通過する蒸発流に曝される時間が、マスク孔53aの形状に基づいて制御され、基板55の表面に成膜される膜厚が制御されることになる。かくして、各マスク孔53aを適宜の形状に形成することにより、所謂三元組成傾斜膜が形成される。
しかしながら、マスク支持板53が駆動軸54により回転駆動されることによって、各マスク孔53aが円形の軌道上を移動することになるため、マスク支持板53の回転速度の制御による膜厚傾斜の線形性が低下してしまうという課題がある。
さらに、このようなマスキング機構は、コンビナトリアル成膜装置だけでなく、広く気相成長法による成膜装置においても使用されており、同様の課題がある。
これにより、マスク部の各マスク支持板に取り付けられたマスクのうち、選択した一つのマスクが所定位置に持ち来たされる。そして、真空チャンバー内にて所定位置の下方に配置されたターゲットに対してアブレーション・レーザ光等を照射して、ターゲットの材料を蒸発させると、真空チャンバー内にて、所定位置の上方に配置された基板に向かってターゲット材料の蒸気が流れて、この基板表面に蒸着し、このターゲット材料の薄膜が成膜される。
このため、互いに異なる方向の濃度勾配を与えるようなマスク形状のマスクを組み合わせて、駆動軸の回転駆動によるマスク部を回動させ、順次にこれらのマスクを選択して、各マスクについて駆動軸の軸方向の直線運動によりマスク移動をさせて、互いに異なる方向の濃度勾配を有する複数の薄膜を形成することができる。
これにより、三元組成傾斜膜が容易に形成され得る。この際、マスク部の直線運動速度の制御によって、基板上に成膜される薄膜の膜厚傾斜の線形性が良好に保持されることになり、例えば三元組成勾配膜が容易に且つ正確に形成される。
また、各マスクが、多角柱状に配置されたマスク支持板に取り付けられ、駆動軸の回転駆動によって、各マスクが順次に所定位置に持ち来たされ得るので、比較的小型に構成することで、多数のマスクがマスク部に装着でき、多彩なマスキングが可能となる。
上記構成によれば、簡単な構成により、容易に小型化に対応することができるようにした、マスキング機構を備えた成膜装置を提供することができる。
最初に、本発明の第一の実施形態による成膜装置に用いるマスキング機構について説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る成膜装置に用いるマスキング機構の構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1のマスキング機構の要部の詳細な構成を示す部分拡大断面図である。図1において、マスキング機構10は、成膜装置用のマスキング機構であって、真空フランジ11と、駆動軸12と、マスク部13と、を含んでいる。
図2に示すように、真空フランジ11が真空チャンバー14の側壁の開口部に取り付けられたとき、外端が真空フランジ11の外側に突出するようになっている。そして、駆動軸12の外端が駆動源(図示せず)に連結されることにより、駆動軸12が回転駆動され、また軸方向に往復移動される。
これにより、三元組成傾斜膜が容易に形成される。この際、マスク部の直線運動速度の制御によって、基板上に成膜される薄膜の膜厚傾斜の線形性が良好に保持されることになり、例えば三元組成勾配薄膜が容易に且つ正確に形成される。
また、各マスクが、多角柱状に配置されたマスク支持板に取り付けられ、駆動軸の回転駆動によって、各マスクが順次に所定位置に持ち来たされるので、比較的小型の構成によって、多数のマスクがマスク部に装着され、多彩なマスキングが可能となる。
図5は、本発明の第二の実施形態によるマスキング機構を備えた成膜装置20を示す概略斜視図である。図5に示すように、本発明のマスキング機構を備えた成膜装置20は、真空チャンバー14と、成膜用材料の供給源となるターゲット機構15と、基板ステージ16と、真空チャンバー14に取り付けられるマスキング機構10と、を含んで構成されている。図示しないが、真空チャンバー14を真空にするための真空ポンプやその制御装置をさらに備えている。また、基板17に成膜される膜の厚さを測定するための膜厚モニタなどを備えていてもよい。成膜材料を供給するターゲット機構15は、レーザーアブレーション法(以下、適宜、PLD法とよぶ)に用いるターゲット機構15を用いることができる。
図5に示すように、マスキング機構を備えた成膜装置20によれば、マスク部13の各マスク支持板13bに、それぞれ互いに異なる形状のマスク孔を備えたマスク13cを装着して、本マスキング機構10を真空チャンバー14の側壁に設けられた開口部から内部に導入し、真空フランジ11を開口部に装着することにより、この開口部を高真空に対して気密的に閉塞すると共に、マスキング機構10を真空チャンバー14に対して取り付ける。また、同様にしてターゲット15aを装着したターゲット機構15を真空チャンバー14内に装着すると共に、上記真空チャンバー14内に備えられた基板ステージ16に成膜すべき基板17を装着する。
これにより、適宜のマスク形状を備えたマスク13cを順次に使用して、マスキングを行ないながら、ターゲット機構15にて異なるターゲット15aの材料から成る薄膜を基板17の表面に形成することによって、所謂三元組成傾斜膜が形成される。
一般に、一側がマスク移動方向に対して垂直な辺を有する正三角形状の三元組成傾斜膜を形成するためには、それぞれ、各辺に対して垂直な方向の濃度勾配(膜厚傾斜)を備えていればよい。このような濃度勾配を生ぜしめるためのマスクエッジは、それぞれマスク移動方向Aに関して90度,30度及び−30度の方向に延びている必要がある。したがって、マスク13cは、三種類の形状のマスクを使用すればよい。
図6(B)に示すように、第2のマスク24のマスクエッジ24aによりマスキングして、基板17の正三角形の領域17aに対して、第2のターゲットの材料であるTbドープ緑色蛍光体から成る薄膜17cを形成する。薄膜17cの形成が済み次第、アブレーション・レーザ光によるターゲットへの照射を停止する。これにより、図6(B)の右端に示すように、基板17の正三角形の領域17aの右上角の頂点から対向する辺に向かって徐々に膜厚が減少する濃度勾配が得られる。
このようにして得られた三つの薄膜17b,17c,17dから成る三元組成傾斜膜は、正三角形の領域17aの各頂点から対向する辺に向かって、即ち互いに120度だけずれた方向に向かって、それぞれ濃度分布、即ち膜厚傾斜分布を有する。
使用の際には、真空チャンバー14内にセットされ、その所定位置の上方の基板ステージ16に基板17が配置されると共に、その所定位置の直下にて、外部から原料ガス導入管31を介して原料ガス32が導入される。これにより、複数個の中から選択されたマスク支持板13bに装着された一つのマスク13cが、基板17の直下に配置されると共に、その下方に原料ガス32が導入され、一つのマスク13cを介して基板17の表面に付着する。原料ガス32は成膜する膜に応じて、複数の原料ガス32やキャリアガスなどを用いてもよい。
使用の際には、真空チャンバー14内にセットされ、その所定位置の上方に基板ステージ16が配置されると共に、その所定位置の直下にスパッタターゲット41が配置されるようになっている。基板ステージ16に載置される基板17は、図示しない加熱源により加熱されてもよい。この場合、駆動軸12の回転駆動により複数個の中から選択されたマスク支持板13bに装着された一つのマスク13cが、基板17の直下に配置されると共に、その下方に位置するスパッタターゲット41に対して、高エネルギーの希ガスプラズマ42が照射される。これにより、当該スパッタターゲット41がスパッタされ、スパッタターゲット41の表面から脱離したその成分元素が、その上方に配置される基板17の表面に対して、一つのマスク13cを介して付着する。
本発明のマスキング機構を備えた成膜装置は、上記の成膜装置に限らず、マスクを移動させながら、基板上に成膜を形成する成膜装置であれば、その成膜方法としては、気相堆積法が好適である。気相堆積法としては、物理堆積法(PVD)や化学堆積法(CVD)に適用できる。物理堆積法としては、例えば、PLD法やスパッタ法以外には、抵抗加熱や電子ビームによる真空蒸着法、MBE法などが挙げられる。化学堆積法としては、熱CVD法以外には、プラズマCVD法、MOCVD法、触媒CVD法、基板などに紫外線を照射する光CVD法等でもよい。
また、気相堆積法により成膜した膜を、加熱により結晶、多結晶、アモルファス状態の膜を形成するような成膜方法及びその成膜装置にも適用できる。このような成膜方法としては、例えば、フラックスと成膜原料を最初に基板に堆積し、その後、加熱して、結晶成長を行う所謂フラックス法でもよい。本発明の気相堆積法としては、少なくとも気相堆積法により、基板などにフラックス法に用いる成膜を行う場合にも適用できる。
したがって、本発明のマスキング機構を備えた成膜装置に用いる成膜用材料の供給源15は、上記各種の成膜方法に合わせて、適宜に選定すればよい。このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、容易に小型化に対応することができるようにした、マスキング機構及びそれを成膜装置用マスキング機構を提供することができる。
第二の実施形態で説明したマスキング機構を備えたPLD成膜装置20を用いて、Y2 O3 に三種類の希土類元素Mを添加した、M0.01Y1.99O3 (ここで、Mは、Eu、Tb、Tmの何れかである希土類元素)三元組成傾斜膜を成膜した。ターゲットとしては、Eu0.01Y1.99O3 ,Tb0.01Y1.99O3 ,Tm0.01Y1.99Oを使用した。
成膜条件としては、ガラス基板17は室温に保持し、真空チャンバー14内に、圧力が1.3×10-3Paの酸素を導入した。アブレーション・ レーザ光としては、パルスのKrFレーザを使用し、2J/cm2 、10Hzの照射を12.5時間行うことによって、M0.01Y1.99O3 による三元組成傾斜膜を300nmの厚さに堆積できた。
これにより、M0.01Y1.99O3 薄膜において、希土類元素Mを、Eu、Tb、Tmと変えた三元組成傾斜膜を、本発明のマスキング機構を備えた成膜装置により、効率よく成膜することができる。
11:真空フランジ
12:駆動軸
13:マスク部
13a:マスク支持円板
13b:マスク支持板
13c:マスク
14:真空チャンバー
14a:開口部
15:成膜用材料の供給源(ターゲット機構)
15a:ターゲット
16:基板ステージ
17:基板
17a:正三角形の領域
17b,17c,17d:薄膜
20,30,40:マスキング機構を備えた成膜装置
22:第1のマスク
22a,24a,26a:マスクエッジ
24:第2のマスク
26:第3のマスク
31:原料ガス導入管
32:原料ガス
41:スパッタターゲット
42:希ガスプラズマ
Claims (8)
- 真空チャンバーの開口部を密閉するように取り付けられる真空フランジと、
上記真空フランジを貫通して外部に延びると共に、この真空フランジに対して回転可能にそして軸方向に移動可能に支持され、その外端に回転運動及び直線運動が加えられる駆動軸と、
上記駆動軸の内端に取り付けられたマスク部と、を備えており、
上記マスク部が、
上記駆動軸に対して垂直に固定保持された円板状のマスク支持円板と、
このマスク支持円板の外周縁に沿って軸方向内側に延びるように、全体としてほぼ多角柱状に配置された複数個のマスク支持板と、
各マスク支持板に取り付けられた所定形状のマスク孔を備えたマスクと、
を含んでいることを特徴とする、マスキング機構。 - 前記各マスクは、互いに形状の異なるマスク孔を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のマスキング機構。
- 前記駆動軸を回転駆動したとき、前記マスク部が駆動軸と共に回転することにより、前記マスク支持板に取り付けられた前記マスクが順次に所定位置に持ち来たされ、所望のマスクが選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマスキング機構。
- 前記駆動軸が軸方向に直線駆動されたとき、前記マスク部が駆動軸と共に軸方向に移動して、前記所定位置に位置するマスク支持板に取り付けられた前記マスクのマスク孔がマスキングのために所定速度で軸方向に移動することを特徴とする、請求項3に記載のマスキング機構。
- 前記各マスクが、それぞれ互いに異なる方向の濃度勾配を与えるように、互いに異なる方向に延びるマスクエッジを備えていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のマスキング機構。
- 請求項1〜5に記載のマスキング機構を備えた成膜装置であって、前記真空チャンバー内に配設される成膜用材料の供給源と、基板ステージと、を含み構成されることを特徴とする、マスキング機構を備えた成膜装置。
- 真空チャンバーと、該真空チャンバー内に配設される成膜用材料の供給源と、基板ステージとマスキング機構とを有するマスキング機構を備えた成膜装置であって、
上記マスキング機構が、
真空チャンバーの開口部を密閉するように取り付けられる真空フランジと、
上記真空フランジを貫通して外部に延びると共に、この真空フランジに対して回転可能にそして軸方向に移動可能に支持され、その外端に回転運動及び直線運動が加えられる駆動軸と、
上記駆動軸の内端に取り付けられたマスク部と、を備えており、
上記マスク部が、
上記駆動軸に対して垂直に固定保持された円板状のマスク支持円板と、
このマスク支持円板の外周縁に沿って軸方向内側に延びるように、全体としてほぼ多角柱状に配置された複数個のマスク支持板と、
各マスク支持板に取り付けられた所定形状のマスク孔を備えたマスクと、を含んでいることを特徴とする、マスキング機構を備えた成膜装置。 - 前記成膜用材料の供給源は、少なくとも、前記成膜用材料を気相状態で供給する供給源であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のマスキング機構を備えた成膜装置。
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