JP4766299B2 - (111)配向pzt系誘電体膜形成用基板、この基板を用いて形成されてなる(111)配向pzt系誘電体膜 - Google Patents
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このような界面反応層の形成はPZT系誘電体膜の組成ずれを起こすためPZT系誘電体膜の強誘電特性、圧電特性を低下させる。また、電気回路的にはPZT系誘電体膜と界面反応層を直列接続した形になるため、見かけの強誘電特性、圧電特性を低下させる。製造技術的な観点からは、配向制御層として異なる材料を導入することは、その形成過程の分だけ工程が増えてしまうことが問題になる。
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
(1)シリコン基体上に順次、チタン膜と白金膜を設けた基板材料を加熱処理することにより得られ、該白金膜上に酸化チタンを含む配向制御層が形成されていることを特徴とする(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板。
(2)シリコン基体上に順次、酸化シリコン膜、チタン膜および白金膜を設けた基板材料を加熱処理することにより得られ、該白金膜上に酸化チタンを含む配向制御層が形成されていることを特徴とする(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板。
(3)上記(1)または(2)に記載の(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板を用いて形成されてなる、(111)配向PZT系誘電体膜。
(4)PZT系誘電体が、PZTまたはPLZTであることを特徴とする上記(3)に記載の(111)配向PZT系誘電体膜。
(5)上記(1)または(2)に記載の(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板の配向制御層にPZT系誘電体前駆体溶液を塗布し、ついで結晶化することを特徴とする上記(3)または(4)に記載の(111)配向PZT系誘電体膜の製造方法。
異なる材料を用いなくてよいので、界面反応層が形成することがなく、そのような層が存在した場合に起こる、強誘電特性、圧電特性の低下が起こらない。
(2)本発明の基板を用いて形成した(111)PZT系誘電体膜は、特許文献3にみられるような従来品と異なり、(111)方向に完全に配向したものであり、より優れた強誘電、圧電、光起電力特性を示す。
(3)本発明の配向性PZT系誘電体膜形成用基板を用いる(111)PZT系誘電体膜の製造方法は、その熱分解熱処理温度を従来方法に比べ大幅に下げることができ、その結果、与えるエネルギーの総量が著しく低減することができる。特に(111)配向性PZT系誘電体膜を1μm以上の膜にする場合は、前駆体溶液の塗布、乾燥、熱分解熱処理を繰り返すことになるが、本発明方法ではその処理温度が従来法に比べ著しく低いので、熱的な損傷が抑制され、高純度の(111)配向PZT系誘電体膜を得ることができる。
この基板を用いることで、公知の方法のようにPZT系誘電体膜と異なる材料を用いずに、また膜形成過程において組成ずれを起こすことなく、(111)配向性PZT系誘電体膜を形成することができる。
本発明の(111)配向PZT系誘電体膜形成用基体の代表例の模式図を図1に示す。
1は下地となる基板であり、シリコンが用いられる。基体の厚さに特に制限はないが、通常100-2000μmである。
2は酸化シリコン膜であり、熱酸化法、蒸着法、スパッタリング法、化学気相法、化学溶液法等により形成される。なお、この酸化シリコン膜は必ずしも必要ではない。厚さは通常0-10μmである。
3はチタン膜であり、蒸着法、スパッタリング法、めっき法等により形成される。このチタン膜は次に形成する白金膜4とシリコン基板1、あるいは酸化シリコン膜2との密着性向上層として機能すると同時に、後述の熱処理において、白金表面にチタンを供給する機能を有する。チタン膜の厚さに制限はないが、通常0.01-1μmである。
4は白金膜であり、蒸着法、スパッタリング法、めっき法等により形成される。この白金膜はPZT系誘電体膜を実際に使用するときに必要となる下部電極として機能する。厚さは通常0.05-1μmである。
上述のシリコン基板1に酸化シリコン膜2、チタン膜3、白金膜4を種々の方法にて順次形成した後、これを熱処理することで、白金表面に配向制御層5が形成される。この配向制御層5はチタン膜3が熱処理によって白金膜4の表面上に析出し、これと酸素が化学反応して形成された酸化チタン膜である。
熱処理温度および熱処理時間は、チタン膜や白金膜の厚さなどによって異なるが、所望の配向制御層が得られるように設定すればよい。熱処理温度は、通常300〜600℃、好ましくは400〜500℃である、熱処理時間は、通常1〜60分、好ましくは5〜20分である。
(前駆体膜の形成)
つぎに、上記(111)配向性PZT誘電体膜形成用基板を用いた(111)配向性PZT系誘電体膜の製膜法について述べる。
まず、上述の(111)配向性PZT誘電体膜形成用基板の配向制御層の上に、PZT系誘電体の前駆体溶液を塗布し、これを乾燥した後、熱分解処理することにより前駆体膜を形成する。
ここで、PZT系誘電体とは、Pb、Zr、Ti、Oを主な構成元素とし、その組成がPb(ZrxTi1-x)O3である酸化物を意味する。ここでPbの一部が、その機能を阻害しない範囲でLaを始めとする希土類元素で置換されていてもよい。このような例としては、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)を挙げることができる。
また、その前駆体溶液とは、Pb、Zr、Tiの金属−有機化合物、ハロゲン化物などのPZT系誘電体の前駆体の溶媒溶液を意味する。溶媒としてはエタノールやプロパノールのアルコールや酢酸などのカルボン酸、アセトンなどのケトンなどを例示することができる。
塗布方法として、従来公知のスピンコート、ディップコート、スプレーコート、ドリップコートなどが用いられる。乾燥方法としては、従来公知の方法(オーブン、電気炉、ホットプレートを用いた方法)が使用される。熱分解処理は、(乾燥によっても完全に除去し切れない残留有機物を除去する)ことを目的とするものであり、そのような前駆体膜が形成できる条件を採用すればよい。熱分解温度は、通常100〜600℃、好ましくは200〜500℃である。熱分解時間は、通常1〜60分、好ましくは5〜20分である。
つぎに、上述の方法で得た前駆体膜を、加熱処理し結晶化させて、(111)配向性PZT誘電体膜を形成する。結晶化のための熱処理温度、熱処理時間は、対象とする前駆体膜により異なるが、通常熱処理温度は、通常500〜800℃、好ましくは550〜700℃である。熱処理時間は、通常1〜60分、好ましくは1.5〜10分である。
この結晶化熱処理時に配向制御層である酸化チタン膜と前駆体膜中の鉛が化学反応し、チタン酸鉛(PbTiO3)膜を形成する。このチタン酸鉛膜は自然に(111)配向する性質を備えており、この(111)配向に沿って結晶化熱処理時に(111)配向性PZT誘電体膜17が形成される。
したがって、本発明に係る(111)配向性PZT系誘電体膜は、コンデンサやメモリ等の電子デバイス、およびセンサやアクチュエ−タ等の駆動、検知デバイス、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems, 以下MEMS)、ナノ電気機械システム(Nano Electro Mechanical Systems, 以下NEMS)、ナノテクノロジーデバイス、電子電気機器、通信機器、ロボット等の構成部品に応用することができる。
[(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板の作成]
実施例1の(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板の作成例を図2のフローチャートにしたがって説明する。
シリコン基板6を1100℃で20時間熱酸化して厚さ約2μm酸化シリコン膜7を形成する。続いてスパッタリング法により厚さ約0.05μmのチタン膜8、厚さ約0.15μmの白金膜9を形成する。これを450℃で10分間加熱することで配向制御層10を形成する。この上にPZTの前駆体溶液(Pb:Zr:Ti=1.2:0.52:0.48の組成となるように調製された酢酸鉛、チタンイソプロポキシド及びジルコニウムイソプロポキシドからなるプロパノール溶液)をスピンコートし、120℃で前駆体溶液中の有機溶媒を蒸発させた後、これを250℃で熱分解熱処理して前駆体膜50を形成し、(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板を作成した。
[(111)配向性PZT誘電体膜の作成]
その後、これを10℃/minの昇温が可能な急速加熱炉中700℃で2分間結晶加熱処理した。この結晶化熱処理時に配向制御層10である酸化チタン膜と前駆体膜50中の鉛が化学反応し、チタン酸鉛(PbTiO3)膜11を形成する。このチタン酸鉛膜11は自然に(111)配向する性質を備えており、この(111)配向に沿って結晶化熱処理時に(111)配向性PZT誘電体膜12が形成される。図5のX線回折図形から、PZT誘電体膜がほぼ完全に(111)配向していることが確認された。
比較例1の(111)配向PZT系誘電体膜の作成例を図3のフローチャートにしたがって説明する。
実施例1において、配向制御層を設けず、白金膜9の上に直接PZTの前駆体溶液をスピンコートし、120℃で前駆体溶液中の有機溶媒を蒸発させた後、これを450℃で熱分解熱処理して前駆体膜50を形成した。その後、これを10℃/minの昇温が可能な急速加熱炉中700℃で2分間結晶加熱処理した。熱分解熱処理時に配向制御層10が形成され、結晶化熱処理時に配向制御層と前駆体膜50中の鉛が化学反応し、チタン酸鉛膜11が形成される。上述のようにチタン酸鉛は(111)配向性であり、この(111)配向に沿って(111)配向性PZT誘電体膜12が形成される。ただし、図5のX線回折図形から、この方法により形成した(111)配向性PZT誘電体膜は、(100)配向した部分もわずかに含んでいることが分かる。これは、配向制御層の形成において白金膜9上にすでにPZT誘電体膜の前駆体溶液が成膜された状態にあり、チタン膜8から白金膜表面に供給されたチタンが十分に酸化されず、本発明の基板を用いた場合に比べて
(111)配向性チタン酸鉛が形成されにくくなったためと思われる。
比較例2の(111)配向PZT系誘電体膜の作成例を図4のフローチャートにしたがって説明する。
実施例1において、配向制御層を設けず、白金膜9の上にPZTの前駆体溶液をスピンコートし、120℃で前駆体溶液中の有機溶媒を蒸発させた後、これを250℃で熱分解熱処理して前駆体膜50を形成した。その後、これを10℃/minの昇温が可能な急速加熱炉中700℃で2分間結晶加熱処理してPZT膜を形成した。この方法により形成したPZT膜は本発明の基板を用いた場合と異なって、配向制御層が存在しないため、最も界面エネルギーの高い(100)面が配向した(100)配向性PZT誘電体膜13が形成される。図5からほぼ完全に(100)配向したPZT形誘電体膜が形成されていることが確認された。
実施例1において、PZTの前駆体溶液に代えてPLZT前駆体溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、(111)配向性PLZT誘電体膜を形成した。
このものと特許文献3に準じて形成した(111)配向性PLZT誘電体膜(比較例3)の光起電力効果を比較した。その結果を図6と表1に示す。図6において、横軸は印可電圧を、縦軸は発生する光起電流を示す。グラフと縦軸の交点が光起電流の発生量、グラフと横軸の交点が発生している電圧値を示す。図6でも示したように、本発明の基板を用いて形成した(111)配向性PLZT誘電体膜の方が、配向性の完全度が高いため、光起電流、光起電力双方の点で比較例3の(111)配向性PLZT誘電体膜より優れていることがわかる。
Claims (3)
- シリコン基体上に順次、チタン膜と白金膜を設けた基板材料を300〜600℃で1〜60分加熱処理することにより得られ、該白金膜上に酸化チタンを含む配向制御層が形成されている(111)配向PZT系誘電体膜形成用基板の配向制御層にPZT系誘電体前駆体溶液を塗布し、ついで結晶化する(111)配向PZT系誘電体膜の製造方法であって、PZT系誘電体前駆体溶液の塗布後、結晶化前に、塗布されたPZT系誘電体前駆体溶液の乾燥と、100〜600℃の温度での熱分解熱処理とを行うことを特徴とする(111)配向PZT系誘電体膜の製造方法。
- シリコン基体上に順次、酸化シリコン膜、チタン膜および白金膜を設けた基板材料を300〜600℃で1〜60分加熱処理することにより得られ、該白金膜上に酸化チタンを含む配向制御層が形成されている (111)配向PZT系誘電体膜形成用基板の配向制御層にPZT系誘電体前駆体溶液を塗布し、ついで結晶化する(111)配向PZT系誘電体膜の製造方法であって、PZT系誘電体前駆体溶液の塗布後、結晶化前に、塗布されたPZT系誘電体前駆体溶液の乾燥と、100〜600℃の温度での熱分解熱処理とを行うことを特徴とする(111)配向PZT系誘電体膜の製造方法。
- 熱分解熱処理の温度が100〜250℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の(111)配向PZT系誘電体膜の製造方法。
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