JP2009054934A - 圧電体素子 - Google Patents

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俊成 野田
Kazuki Komaki
一樹 小牧
Hisao Suzuki
久男 鈴木
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尚樹 脇谷
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Abstract

【課題】液相成長法による優れた圧電特性を有する圧電薄膜からなる圧電体素子を提供すること。
【解決手段】本発明の圧電体素子は、基板1と、その基板1の上に形成した下部電極層2と、その下部電極層2の上に液相成長法により形成した圧電体層3と、その圧電体層3の上に形成した上部電極層4とを有する。圧電体層3をチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とするペロブスカイト型酸化物強誘電体材料とし、ジルコンとチタンのモル比を(54/46)<(Zr/Ti)<(57/43)とすることによって、優れた圧電特性を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気機械変換機能を有する圧電体素子に関する。
ペロブスカイト型構造を有する酸化物誘電体薄膜は一般式ABO3で表され、優れた強誘電性、圧電性、焦電性および電気光学特性を示し、各種センサやアクチュエータなど幅広いデバイスに有効な材料として注目されており、今後その利用範囲は拡大していくものと思われる。
このペロブスカイト型酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(一般式Pb(ZrxTi1-x)O3(0<x<1)。以下、PZTと略す。)系薄膜は、高い圧電性を有することから、圧電センサや圧電アクチュエータなどの圧電素子に利用されている。圧電センサは、強誘電性の圧電効果を利用したものである。強誘電体は内部に自発分極を有しており、その表面に正および負電荷を発生させる。大気中における定常状態では大気中の分子が持つ電荷と結合して中性状態になっている。この圧電体に外圧がかかると圧電体から圧力量に応じた電気信号を取り出すことができる。また、圧電アクチュエータも同様の原理を用いたもので、圧電体に電圧を印加するとその電圧に応じて圧電体が伸縮し、伸縮方向あるいはその方向に直交する方向に変位を生じさせることができる。
PZT系薄膜の形成方法は、蒸着法、スパッタリング法(以下、スパッタ法と略す。)、Chemical Vapor Deposition法(以下、CVD法と略す。)等に代表される気相成長法による形成方法が主流であり、最近では液相成長法を用いて作製が試みられている。この中で、Chemical Solution Deposition法(以下、CSD法と略す。)は組成制御が容易で、再現性良く薄膜を作製しやすい、また製造設備に必要なコストが安く大量生産が可能という特徴がある(例えば、特許文献1)。
特開平11−220185号公報
しかしながら、従来、液相成長法、例えばCSD法により作製したPZT系薄膜を用いた圧電体素子は、その圧電特性が不十分であるという問題があった。すなわち、結晶配向性が高く、かつ残留分極値等の圧電特性が良好なPZT系薄膜が得られていなかった。
そこで、本発明は上記の問題点を解決し、結晶配向性が高くかつ圧電特性の良好なPZT系薄膜を液相成長法により作製し、生産性に優れかつ高い圧電性を有する圧電体素子を提供することを目的とした。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明の圧電体素子は、基板と、前記基板の上に形成された下部電極層と、前記下部電極層の上に形成された圧電体層と、前記圧電体層の上に形成された上部電極層とを備えた圧電体素子であって、前記下部電極層がニッケル酸ランタンを主成分とする導電性酸化物からなり、前記圧電体層が液相成長法により形成された、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とするペロブスカイト型酸化物強誘電体材料からなり、ジルコンとチタンのモル比が(54/46)<(Zr/Ti)<(57/43)であることを特徴とする。
また、本発明においては、導電性酸化物に、液相成長法により形成された、ニッケル酸ランタンを主成分とする擬立方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物を用いることができる。
また、本発明においては、下部電極層の厚みを100〜500nmとすることができる。
また、本発明においては、圧電体層の厚みをtとし、下部電極層の厚みをtとしたとき、
(t/t)<2の範囲において、(Zr/Ti)=(56/44)、
(t/t)≧2の範囲において、(Zr/Ti)=(55/45)、とすることができる。
本発明によれば、下部電極層にニッケル酸ランタンを主成分とする導電性酸化物を用い、圧電体層には液相成長法により形成された、ジルコンとチタンのモル比が(54/46)<(Zr/Ti)<(57/43)であるPZT系薄膜を用いることにより、その高い結晶配向性と良好な圧電特性により、液相成長法により作製したPZT系薄膜を用いた場合であっても、優れた圧電特性を有する圧電体素子を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に係る圧電体素子について、図面を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る圧電体素子の構造の一例を示す模式断面図である。圧電体素子は、基板1と、この基板1の上に形成された下部電極層2と、この下部電極層2の上に液相成長法により形成された圧電体層3と、この圧電体層3の上に形成された上部電極層4とから構成されている。
基板1には、品質安定性に優れ低コストである、(100)面に配向したシリコンの単結晶基板を用いることができるが、シリコン基板に限定されず、SiOを始め、金属、合金等、作製するデバイスに応じた様々な基板を用いることができる。
下部電極層2には、ニッケル酸ランタン(化学式LaNiO。以下、LNOと略す。)を主成分とする導電性酸化物を用いることができる。さらに、この導電性酸化物には、擬立方晶系で(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物を用いることができる。擬立方晶系で(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物を用いることにより、下部電極層2は、電極としての役割を有するだけでなく、圧電体層3を(100)面又は(001)面に優先配向させる配向制御層としての役割を兼ねることができるからである。ここで、LNOを主成分とする導電性酸化物には、LNOと、ニッケルの一部を他の金属で置換した材料、例えば、鉄で置換したLaNiO−LaFeO系材料、アルミニウムで置換したLaNiO−LaAlO系材料、マンガンで置換したLaNiO−LaMnO系材料、コバルトで置換したLaNiO−LaCoO系材料とが含まれるが、LNOを用いることが好ましい。また、導電性酸化物の厚さは、100〜500nmであることが好ましい。100nmを下回るとLNOの結晶性が低くなり、500nmよりも厚くなると生産性が低下するからである。
また、後で説明するように、LNOは結晶成長の核形成サイトとしての役割を果たすため、従来750℃以上の高温が必要であったPZTの結晶化温度を500℃まで低温化することが可能になる。これにより、PZTの結晶化時にPbが蒸発することによるPZTの結晶性低下や、基板1と圧電体層3間の相互拡散を抑制することができ、圧電特性の劣化を防止する効果も有する。
なお、ニッケル酸ランタン(以下、LNOという)は、R−3cの空間群を持ち、菱面体に歪んだペロブスカイト型構造(菱面体晶系:a0=5.461Å(a0=ap)、α=60°、擬立方晶系:a0=3.84Å)を有し、抵抗率が1×10−3(Ω・cm、300K)で、金属的電気伝導性を有する酸化物であって、温度を変化させても金属−絶縁体転移が起こらない材料である。
圧電体層3には、液相成長法により形成させた菱面体晶系または正方晶系の(001)面又は(100)面方向に配向したPZT系薄膜を用いることができる。以後、(001)面または(001)面配向に配向しているPZT系薄膜を、PZT(001)/(100)と標記する。液相成長法によって形成させたPZTの組成は、ジルコンとチタンのモル比を(54/46)<(Zr/Ti)<(57/43)とすることによって優れた圧電特性を示す。一方、スパッタ法等の気相プロセスで作製した従来のPZT系薄膜では、優れた圧電特性を示す組成としては、正方晶系と菱面体晶系との境界(モルフォトロピック相境界)付近の組成(Zr/Ti=53/47)近傍の組成で、優れた圧電特性を示すことが知られている。すなわち、従来のPZT系薄膜では、高い圧電定数を実現するためには、本実施の形態の場合と異なり、Zr/Tiの比率を53/47としておくことが一般的である。
また、圧電体層3の構成材料は、PZTを主成分とする圧電材料であれば良く、Sr、Nb、Al等を含有していても良い。また、圧電体層3の膜厚は、0.5〜5.0μmであれば良い。
なお、圧電体層3は液相成長法を用いて作製するが、液相成長法には、CSD法、水熱合成法、そして酸化熱分解法等を用いることができる。
また、本実施の形態によれば、LNOからなる下部電極層2の上にPZTからなる圧電体層3を形成しているので、従来の圧電素子のようにPtからなる下部電極層2の上に形成した場合と比較して、格段に高い結晶配向性を得ることができる。ここで、(001)/(100)面の配向度(α(001)/(100))を、以下の式(I)の通り定義すると、
Figure 2009054934
この圧電体層3の(001)/(100)面配向度α(001)/(100)は約98%であった。ここで、式(I)において、ΣI(hkl)は、X線回折法において、Cu−Kα線を用いたときの2θが10〜70°でのペロブスカイト型結晶構造のPZTにおける各結晶面からの回折ピーク強度の総和である。なお、(002)面及び(200)面は(001)面および(100)面と等価な面であるため、ΣI(hkl)には含めない。
高い面配向度が得られるのは、LNOは電極としての役割を有するだけでなくPZTとの格子マッチングが良好だからである。格子マッチングとは、PZTの単位格子とLNOの表面の単位格子との格子整合性のことをいう。一般的に、ある種の結晶面が表面に露出している場合、その結晶格子と、その上に成膜する膜の結晶格子とをマッチングさせる力が働き、基板と膜界面とでエピタキシャルな結晶核を形成しやすいことが報告されている。このことから(100)面配向したLNOの表面(格子定数:3.84Å)と格子マッチングのよいPZT(格子定数:a=4.036、c=4.146Å)のPZT(001)面及び(100)面が選択的に生成するものである。
一方、従来の圧電体素子では、Ptからなる下部電極の上にCSD法によりPZTからなる圧電薄膜を形成していたので、結晶化のためのアニールを行う際に、700℃と非常に高温にする必要があり、アニール中の膜組成のPb、Tiの拡散、Pb−Pt化合物の形成等により所望の圧電体組成が得られず、圧電薄膜を形成するPZT層の結晶配向性が低くなっていた。例えば、従来の圧電薄膜では、(100)面の配向度(α(100))が88%程度と低い値になっていた。そのため、圧電特性が低い圧電体素子となり、例えばアクチュエータとして用いた場合には変位量が不十分であるとともに、印加電圧に対する変位量の変化が非線形になってしまうものである。これに対して、本実施の形態に係るPZT系薄膜層は(001)/(100)面方向だけに配向していた。
本実施の形態に係る圧電体素子は圧電定数が高く、膜表面にクラックがないため、光スイッチ、レーザビームスキャナ等に用いる圧電アクチュエータや、角速度センサ等の各種センサ用途として好適である。また、下部電極層2及び圧電体層3を液相成長法により作製するため、スパッタ法等の気相成長法で必要となる真空プロセスが不要であり、製造コストを低減できる。また、下部電極層2に用いるLNOは(100)面方向に配向しやすく、その下部となる基板1の材料には依存しにくいため、基板1としてSi、SiOを始め、金属、合金等、作製するデバイスに応じた様々な材料を選択できる。
次に、本実施の形態に係る圧電体素子の一例として、シリコン基板1と、そのシリコン基板1の上にCSD法により形成されたLNOからなる下部電極層2と、その下部電極層2の上にCSD法により形成されたPZT系薄膜からなる圧電体層3と、その圧電体層3の上に形成されたAuからなる上部電極層4を備えた圧電体素子の製造方法について説明する。
(基板の準備)
まず、所定の形状のシリコン基板1を準備した。
(下部電極層の作製)
次に、以下の手順により、シリコン基板1の上にLNOを主成分とする下部電極層2を形成する。シリコン基板1の上にLNO前駆体溶液をスピンコート法により塗布した。スピンコートの条件としては、回転数3500rpmで30秒とした。
LNO前駆体溶液の出発原料としては、硝酸ランタン六水和物、酢酸ニッケル四水和物を用い、溶媒として2−メトキシエタノールと2−アミノエタノールを用いた。2−メトキシエタノールはわずかに水分を含んでいるため、あらかじめモレキュラーシーブ0.3nmを用いて水分を除去したものを使用した。
次に、硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)を所定のビーカーに採り、水和物の除去のため150℃で1時間以上乾燥させた。その後、室温まで冷却した後、2−メトキシエタノールを加えて、室温で3時間攪拌することで、硝酸ランタンを溶解させて溶液Aを調製した。
一方、酢酸ニッケル四水和物((CHCOO)Ni・4HO)を別のセパラブルフラスコに採り、水和物の除去のため150℃で1時間乾燥の後、200℃で1時間、計2時間乾燥させた。次に、2−メトキシエタノールおよび2−アミノエタノールを加え、110℃で30分間攪拌して溶液Bを調製した。
溶液Bを室温まで冷却した後、溶液Aを溶液Bが入っているセパラブルフラスコに投入し、室温で3時間攪拌することにより、LNO前駆体溶液を作製した。
次に、シリコン基板1の上に塗布したLNO前駆体溶液を150℃で10分間加熱して乾燥を行い、その後350℃で10分間加熱して、残留有機成分の熱分解を行った。この乾燥工程は前駆体溶液中の物理吸着水分の除去を目的としたものであり、温度は100℃を超えて200℃未満であることが望ましい。これは、200℃以上では前駆体溶液中の残留有機成分の分解が開始するためであり、作製した膜中への水分の残留を防止するためである。また、熱分解工程の温度は200℃以上500℃未満であることが好ましい。これは、500℃以上では乾燥した前駆体溶液の結晶化が大きく進行するためであり、作製した膜中への有機成分の残留を防止するためである。
その後、このLNO前駆体溶液を基板1の上に塗布する工程から熱分解を行うまでの工程を複数回繰り返し、所望の膜厚になった時点で、急速加熱炉(Rapid Thermal Annealing。RTAと略す。)を用いて急速加熱し、結晶化を行った。結晶化の条件は700℃で5分とし、昇温速度は200℃/minとした。結晶化温度は500℃以上750℃以下が望ましい。以上の工程を経ることにより、(100)面方向に高配向したLNOからなる厚さ200nmの下部電極層2が得られた。
(圧電体層の作製)
下部電極層2の上に、圧電体層3を形成するためのPZT前駆体溶液をスピンコート法により塗布した。このPZT前駆体溶液の調製方法を以下に示す。この溶液に用いるエタノールは、含有水分による金属アルコキシドの加水分解を防止するため、予め脱水処理を行った無水エタノールを用いた。
Pb前駆体溶液の出発原料として、酢酸鉛(II)三水和物(Pb(OCOCH32・3H2O)を用いた。これをセパラブルフラスコに採り、水和物の除去のため150℃で2時間以上乾燥させた。次に無水エタノールを加えて溶解し、78℃で4時間還流させ、Pb前駆体溶液を作製した。Ti−Zr前駆体溶液の出発原料としては、チタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH324)ジルコンノルマルプロポキシド(Zr(OCH2CH2CH34)を用いた。これを別のセパラブルフラスコに採り、無水エタノールを加えて溶解し、78℃で4時間還流することで、Ti−Zr前駆体溶液を作製した。Zr/Ti比はmol比で表1に示した組成比となるように秤量した。このTi−Zr前駆体溶液をPb前駆体溶液に混合した。このとき、Pb成分を化学量論組成(Pb(ZrTi)O3)に対し20mol%過剰とした。これは、アニール時の鉛成分の揮発による不足分を補うためである。この混合溶液を78℃で4時間還流し、安定化剤としてアセチルアセトンを金属陽イオンの総量に対して0.5mol等量加え、さらに78℃で1時間還流することでPZT前駆体溶液を作製した。このPZT前駆体溶液を下部電極層2の上にスピンコートを行う条件としては、回転数2500rpmで30秒とした。
次に、下部電極層2の上に塗布したPZT前駆体溶液を115℃で10分間加熱して乾燥し、その後350℃で10分間加熱して、残留有機成分の熱分解を行った。乾燥工程は前駆体溶液中の物理吸着水分の除去を目的としたものであり、温度は100℃を超えて200℃未満であることが望ましい。これは、200℃以上では前駆体溶液中の残留有機成分の分解が開始するためであり、作製した膜中への水分の残留を防止するためである。そして、熱分解工程の温度は200℃以上500℃未満であることが好ましい。これは、500℃以上では乾燥した前駆体溶液の結晶化が大きく進行するためであり、作製した膜中への有機成分の残留を防止するためである。
その後、このPZT前駆体溶液を下部電極層2の上に塗布する工程から熱分解を行うまでの工程を複数回繰り返し、所望の膜厚になった時点で、急速加熱炉を用いて結晶化を行った。結晶化の条件は550℃で5分とし、昇温速度は200℃/minとした。このときの結晶化温度は500℃以上750℃以下が望ましい。従来、白金からなる下部電極層2の上にCSD法によりPZT系薄膜を作製する場合、ペロブスカイト単相化のためには600℃以上の高温を必要としていた。しかし、本実施の形態においては、下部電極層2を構成するLNOが結晶成長の核形成サイトとしての役割を果たしPZTの結晶化を促進するため、結晶化温度を500℃と低温化することが可能になる。また、750℃よりも高くすると、成膜時に、膜中に含まれるPbが蒸発することにより不足して結晶性が低下するので、好ましくない。以上の工程により、(001)面方向に高配向のPZT系薄膜からなる圧電体層3が得られた。
(上部電極層の作製)
圧電体層3の上にイオンビーム蒸着法により、Auからなる上部電極層4を形成する。上部電極層4の形成方法については、イオンビーム蒸着法に限るものではなく、抵抗加熱蒸着法、スパッタ法等を用いても良い。
なお、本実施の形態では圧電体層3の形成において、所望の膜厚を得るために複数回塗布〜熱分解を繰り返した後に結晶化を行ったが、毎回塗布〜結晶化までの工程を繰り返しても良い。
以上の製造方法によって、表1に示したZr/Tiのモル比からなる材料組成の圧電薄膜を作製し、残留分極(Pr)を測定して圧電特性(残留分極)を評価した。以下、その結果について説明する。
Figure 2009054934
残留分極(Remanent Polarization。以下、Prと略す。)の測定はソーヤ・タワー回路を用いて測定した。すなわち、圧電体素子に三角波電圧(V)を印加し、それによって生じる分極が更に表面電荷を発生させ、この表面電荷量(Q)を測定し、電極面積(S)で除することによって残留分極(Pr)を求めた。
表1に示す結果から、CSD法によって作製したPZT系薄膜のZr/Tiのモル比が(54/46)<(Zr/Ti)<(57/43)において優れたセンサ特性を示すことが分かった。Zr/Ti比が53/47では角速度センサのS/N比が十分ではなかった。また、Zr/Ti比が58/42では結晶化することができず、特性を評価できる角速度センサを作製することができなかった。
次に、作製した圧電体素子をダイシングにより20mm×2mmに切り出してカンチレバーを作製し、0.2μm厚の金(Au)からなる上部電極層4を形成して、圧電定数d31の測定を行ったところ、d31=−120pC/N程度と非常に高い値が得られた。この上部電極層4の材料はAuに限らず、導電性材料であればよく、膜厚は0.1〜0.4μmであればよい。
次に、シリコン基板1は同じ条件とし、圧電体層2の厚み(t)と下部電極層2の厚み(t)との比(t/t)を変化させたときの残留圧縮応力の評価を行った。残留圧縮応力の測定は、ラマン分光法を用いて行った。そのときのラマン光源はアルゴンイオンレーザー(波長;488nm)を用いた。このラマンスペクトルは応力によりシフトすることが知られているため、この特性を用いることで、薄膜に働く応力の状態を評価することができる。PZTの微粒子をストレスフリーの状態とし、それに一定の応力を印加した際に、ラマンスペクトルのピークシフト量を算出し、その結果をもとに圧電薄膜の残留応力を測定した。そのときの評価結果を図2に示す。また、Zr/Ti比と圧電特性(残留分極(Pr))の評価結果を図3に示す。
図2および図3の結果より、圧電体層3の残留圧縮応力をRsとしたとき、
Rs>0.5GPaの範囲において、(Zr/Ti)=(56/44)とすることによって、より圧電特性に優れた圧電薄膜を実現していることが分かった。このような構成の圧電薄膜からなる圧電体素子は、誘電率を高くしかつ残留分極を大きくすることができるため、各種センサまたは強誘電体メモリーなどの用途に適している。
また、0.5GPa≧Rs≧0.3GPaの範囲において、(Zr/Ti)=(55/45)とすることが好ましいことが分かった。このような構成の圧電体素子は、電気機械結合係数を高くすることができるため、耐電圧特性と長期信頼性が必要な各種アクチュエータ等の用途に適している。
以上のように、本発明の圧電体素子は、圧電特性に優れた圧電体層を容易に形成することができることから、各種電子機器に用いる角速度センサなどの各種センサ、圧電アクチュエータや超音波モータ等の各種アクチュエータおよび光スキャナや光スイッチ等の光学デバイス等の用途として有用である。
本発明の実施の形態1における圧電体素子の構造の一例を示す模式断面図である。 図1の圧電体素子における、圧電体層の膜み(t)と下部電極層の厚み(t)との比(t/t)と残留圧縮応力との関係を示す図である。 図1の圧電体素子における、種々の圧電体層の膜みにおける、Zrの割合と残留分極との関係を示す図である。
符号の説明
1 基板
2 下部電極層
3 圧電体層
4 上部電極層

Claims (4)

  1. 基板と、前記基板の上に形成された下部電極層と、前記下部電極層の上に形成された圧電体層と、前記圧電体層の上に形成された上部電極層とを備えた圧電体素子であって、
    前記下部電極層がニッケル酸ランタンを主成分とする導電性酸化物からなり
    前記圧電体層が液相成長法により形成された、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とするペロブスカイト型酸化物強誘電体材料からなり、ジルコンとチタンのモル比が(54/46)<(Zr/Ti)<(57/43)である圧電体素子。
  2. 前記導電性酸化物が、液相成長法により形成された、ニッケル酸ランタンを主成分とする擬立方晶系の(100)面に優先配向したペロブスカイト型酸化物である請求項1に記載の圧電体素子。
  3. 前記下部電極層の厚みが100〜500nmである請求項2に記載の圧電体素子。
  4. 前記圧電体層の厚みをtとし、前記下部電極層の厚みをtとしたとき、
    (t/t)<2の範囲において、(Zr/Ti)=(56/44)であり、
    (t/t)≧2の範囲において、(Zr/Ti)=(55/45)である請求項1に記載の圧電体素子。
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