JP5644975B2 - Pzt強誘電体薄膜の製造方法 - Google Patents

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本発明は、(100)面に優先的に結晶配向が制御されたPZT強誘電体薄膜を簡便に製造する方法に関する。
近年、電子デバイスサイズの更なる縮小化の要求から、強誘電体薄膜をキャパシタや圧電素子として用いた開発が盛んである。
ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)はペロブスカイト構造を有し、優れた誘電特性を示す強誘電体である。このPZTを誘電体薄膜材料とした薄膜キャパシタを得るためには、成膜プロセスが安価であり、基板面内で均一な膜組成が得られるため、ゾルゲル液を用いたCSD(chemical solution deposition)法が注目されている。
このような強誘電体薄膜をゾルゲル液を用いたCSD法により成膜するにあたって、基板上に、結晶面が(111)軸方向に配向した白金やイリジウムを下部電極として形成し、この下部電極の上に強誘電体薄膜を形成することで、下部電極の(111)軸方向に依存して、(111)面を優先的に結晶配向させた強誘電体薄膜を得ることが可能であった。このような(111)面を優先的に結晶配向させた強誘電体薄膜は、高い絶縁耐圧と高い寿命信頼性を保有するため、IPD(Integrated Passive Device)や不揮発性メモリ等の用途に適する。
また、(111)軸方向に配向した下部電極の上に、(100)面や(110)面を優先的に結晶配向させるためには、強誘電体薄膜とは異なる物質をシード層として用いたり、強誘電体薄膜とは異なる物質を下部電極の影響を受け難くするバッファ層として導入したりすることが知られている。(100)面を優先的に結晶配向させた強誘電体薄膜は、大きなe31圧電定数を保有するため、アクチュエータ等の用途に適する。更に(110)面を優先的に結晶配向させた強誘電体薄膜は、大きな誘電率を保有するため、キャパシタ等の用途に適する。
バッファ層を導入する技術として、強誘電体膜の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この強誘電体膜の製造方法は、基板上に所定の結晶面に配向した下地膜を形成する工程と、下地膜上に炭素膜を形成する工程と、炭素膜上に強誘電体材料を含むアモルファス薄膜を形成する工程と、アモルファス薄膜を加熱して結晶化することにより、下地膜上に強誘電体膜を形成する工程と、を具備する。この方法により製造された強誘電体膜は、所定の結晶面と異なる結晶面に配向され、強誘電体材料は、ペロブスカイト及びビスマス層状構造酸化物、超伝導酸化物、タングステンブロンズ構造酸化物、CaO、BaO、PbO、ZnO、MgO、B23、Al23、Y23、La23、Cr23、Bi23、Ga23、ZrO2、TiO2、HfO2、NbO2、MoO3、WO3及びV25からなる群から選択される少なくとも1種の材料、少なくとも1種の材料にSiO2を含む材料、及び、少なくとも1種の材料にSiO2及びGeO2を含む材料の少なくとも1つからなる。上記特許文献1では、バッファ層として形成された炭素膜の膜厚を調整することで、この炭素膜の上に形成する強誘電体膜の結晶配向性を制御している。具体的には、炭素膜であるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜の膜厚xが0nm<x<10nmのとき、PZTの配向性が(111)面+(001)面配向、DLC膜の膜厚xがx=10nmのとき、PZTの配向性が(001)面配向、DLC膜の膜厚xが10nm<x<100nmのとき、PZTの配向性が(001)面+(110)面配向、DLC膜の膜厚xがx=100nmのとき、PZTの配向性が(110)面配向、及びDLC膜の膜厚xが100nm<xのとき、PZTの配向性が弱い(110)面配向と、その結晶配向性を制御していることが示されている。
また、上記特許文献1には、(111)配向させた下地電極の上に、(001)方向に強く自己配向するLaNiO3を積層したものをバッファ層として用いることで、その上部に(001)配向したPZT膜を得ることができると記載されている。
しかしながら、上記特許文献1に示される方法では、シード層やバッファ層を導入するなど、複雑な工程を踏まなければならず、また、このようなシード層やバッファ層が含まれることで、強誘電体薄膜の特性を劣化させたり、汚染等を生じるおそれがあった。
また、強誘電体薄膜の結晶配向性を制御する方法として、結晶面が(111)軸方向に配向した白金基板上にPZT又はPLZTの前駆体溶液を塗布し、加熱して強誘電体薄膜を形成する方法において、該前駆体溶液を基板上に塗布した後、まず所望の結晶配向をもたらす150〜550℃の温度範囲で熱処理を行い、その後550〜800℃で焼成して結晶化させることにより、薄膜の結晶面を熱処理温度に従った特定軸方向に優先的に配向させることを特徴とする強誘電体薄膜の結晶配向性制御方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2では、仮焼成に相当する熱処理の温度範囲によって、強誘電体薄膜の結晶配向性を制御し、下部電極上に結晶配向性を制御した強誘電体薄膜をシード層やバッファ層を導入することなく、直接形成している。具体的には、150〜250℃の熱処理で(111)面が優先的に配向、250〜350℃の熱処理で(111)面と(100)面が優先的に配向、及び450〜550℃の熱処理で(100)面と(200)面が優先的に配向と、その結晶配向性を制御していることが示されている。
また、Pb含有ペロブスカイト型強誘電体薄膜の膜厚が薄い場合、結晶核の発生密度が少なくなって、結晶が異常粒成長する場合があり、結晶粒径を制御することは困難であった。このように異常粒成長した強誘電体薄膜は絶縁特性に劣る場合があり、その品質に問題があった。
特開2011−29399号公報(請求項7、段落[0003]、[0022]〜[0026]、[0039]、図1) 特開平6−116095号公報(請求項1〜4、段落[0005]、[0006]、図1)
しかし、上記特許文献2に示される方法では、得られる優先配向が、(111)面及び(100)面、或いは(100)面及び(200)面と、優先配向が複数の配向面となるため、その用途が限られる、或いは、特定用途に用いたとしてもその性能を十分に発揮することができていなかった。
本発明の目的は、配向制御層の結晶の異常粒成長を抑制することにより、微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向した配向制御層を有するPZT強誘電体薄膜の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜の膜厚をその用途に合わせて任意に調整することが可能な、PZT強誘電体薄膜の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記従来の優先配向させた強誘電体薄膜について鋭意検討し、強誘電体薄膜をゾルゲル法を用いて形成する際、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極を有する基板の下部電極上に、強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、乾燥・仮焼成して得られたゲル膜を本焼成して結晶化させた層厚を、ある特定の範囲内にすることで、シード層やバッファ層を設けることなく、下部電極の(111)軸方向に依存しない、(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜を簡便に得ることができること、また、上記得られた(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜を下地層として用い、この下地層の上に更に強誘電体薄膜を形成すると、膜厚に関わらず、下地層の結晶配向と同じ結晶配向を有する強誘電体薄膜を得ることができること、更に、(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜を形成する前に、核の発生密度を高める層として、結晶粒径制御層を導入することで、結晶の異常粒成長を抑制し、微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜を得ることができること、をそれぞれ見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の観点は、図2に示すように、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11を有する基板10の下部電極11上に、Pb化合物及びTi化合物を含む第1強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼して層厚が1nm〜10nmの結晶粒径制御層12を形成し、この結晶粒径制御層12の上にPb化合物、Zr化合物及びTi化合物を含む第2強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して配向制御層13を形成することにより、結晶粒径制御層12と配向制御層13とからなるPZT強誘電体薄膜を製造し、第2強誘電体薄膜形成用組成物の塗布量を配向制御層13の結晶化後の層厚が45nm〜150nmの範囲内になるように設定して配向制御層13の優先的な結晶配向を(100)面にし、かつ配向制御層13における平均粒子径を0.14以下の範囲にすることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、また本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって、結晶粒径制御層12を形成するための仮焼温度が175℃〜315℃の範囲内にあることをそれぞれ特徴とする。
本発明の第の観点は、図2に示すように、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11を有する基板10の下部電極11上に、Pb化合物及びTi化合物を含む第1強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼して層厚が1nm〜10nmの結晶粒径制御層12を形成し、この結晶粒径制御層12の上にPb化合物、Zr化合物及びTi化合物を含む第2強誘電体薄膜形成用組成物の一部を塗布し、仮焼した後、焼成して配向制御層13を形成した後に、第2強誘電体薄膜形成用組成物の残部を配向制御層13上に塗布、仮焼、焼成して配向制御層13の結晶配向と同じ結晶配向を有する膜厚調整層14を形成することにより、結晶粒径制御層12と配向制御層13と膜厚調整層14とからなるPZT強誘電体薄膜を製造し、第2強誘電体薄膜形成用組成物の塗布量を配向制御層13の結晶化後の層厚が45nm〜150nmの範囲内になるように設定して配向制御層13の優先的な結晶配向を(100)面にし、かつ膜厚調整層14における平均粒子径を0.14以下の範囲にすることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第3の観点に基づく発明であって、第2強誘電体薄膜形成用組成物の残部を塗布した後の膜厚調整層14を形成するための仮焼温度が200℃〜450℃の範囲内にあることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第1の観点ないし第の観点のいずれか1つの観点に基づく発明であって、更に強誘電体薄膜がPb含有ペロブスカイト型酸化物であり、強誘電体薄膜形成用組成物がβ−ジケトン類及び多価アルコール類を含んでいることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第の観点に基づく発明であって、β−ジケトン類がアセチルアセトンであり、多価アルコール類がプロピレングリコールであることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第1の観点ないし第の観点のいずれか1つの観点に基づく方法により製造された(100)面に優先的に結晶配向した強誘電体薄膜である。
本発明の第の観点は、第の観点に基づく強誘電体薄膜を有する薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品である。
本発明の第1の観点では、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極を有する基板の下部電極上に、Pb化合物及びTi化合物を含む第1強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼して層厚が1nm〜10nmの結晶粒径制御層を形成し、前記結晶粒径制御層の上にPb化合物、Zr化合物及びTi化合物を含む第2強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して配向制御層を形成し、第2強誘電体薄膜形成用組成物の塗布量を前記配向制御層の結晶化後の層厚が45nm〜150nmの範囲内になるように設定して前記配向制御層の優先的な結晶配向を(100)面にし、かつ前記配向制御層における平均粒子径を0.14以下の範囲にする。このように、結晶粒径制御層を形成した後で、この結晶粒径制御層の上に配向制御層を設けることにより、配向制御層の結晶の異常粒成長が抑制でき、この結果、配向制御層を微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向させることができる。
本発明の第2の観点及び第4の観点では、結晶粒径制御層を形成するための仮焼温度が175℃〜315℃の範囲内にあるようにすることで、175℃〜315℃の間で(100)配向をした初期核を生成させることができる。
本発明の第3の観点では、配向制御層を形成した後で、配向制御層の結晶配向と同じ結晶配向を有する膜厚調整層を形成することで、この膜厚調整層における平均粒子径を0.14以下の範囲にして、(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜の膜厚をその用途に合わせて任意に調整することができる。
本発明の参考の実施形態である基板上に形成した強誘電体薄膜の断面図である。 本発明の実施形態である基板上に形成した強誘電体薄膜の断面図である。 実施例1、2、5、11、12、13、15、16、19、20のXRDパターンを示す図である。なお、実施例1、2、5、6、9、11は実施例でなく、参考実施例である。 比較例1、2、3のXRDパターンを示す図である。なお、比較例2、3は参考比較例である。 参考実施例9の表面SEM像(倍率10000倍)である。 実施例13の表面SEM像(倍率50000倍)である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、図2に示すように、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11を有する基板10の下部電極11上に、強強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、加熱して結晶化させることにより下部電極11上にPZT強誘電体薄膜(以下、単に「強誘電体薄膜」という。)13を製造する方法の改良である。
本発明の特徴ある構成は、Pb化合物及びTi化合物を含む第1強誘電体薄膜形成用組成物を下部電極11上に塗布し、仮焼して層厚が1nm〜10nmの結晶粒径制御層12を形成し、この結晶粒径制御層12の上にPb化合物、Zr化合物及びTi化合物を含む第2強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して配向制御層を形成し、第2強誘電体薄膜形成用組成物の塗布量を配向制御層13の結晶化後の層厚が45nm〜150nmの範囲内になるように設定して配向制御層13の優先的な結晶配向を(100)面にし、かつ配向制御層13における平均粒子径を0.14以下の範囲にするところにある。このように、形成する配向制御層13の結晶化後の層厚を45nm〜150nmの範囲内にすることで、(100)面に優先的に結晶配向が制御されたPZT強誘電体薄膜をシード層やバッファ層を設けることなく、簡便に得ることができる。このように、結晶化後の層厚を上記範囲内にすることで、得られる配向制御層13を(100)面に優先的に結晶配向させることができるのは、表面エネルギーが最小になるように自己配向することによるものと推察される。配向制御層13の結晶化後の層厚は45nm〜150nmである。45nm未満では(110)配向などの他の配向となるため好ましくなく、150nmを超えると同様に他の配向となるため好ましくないからである。更に好ましくは45nm〜90nmである。この好ましい範囲の理由は、45nm未満では仮焼条件の最適な温度幅が狭く安定して(100)配向を得るのが困難であるからであり、90nmを超えると同様に仮焼の最適温度が狭くなるためであるからである。また結晶粒径制御層12を形成した後で、この結晶粒径制御層12の上に配向制御層を設けることによって、核の発生密度が高められるので、配向制御層13の結晶の異常粒成長が抑制することができ、結果として、微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向した配向制御層13を得ることができる。
なお、図1は本発明の特徴ある結晶粒径制御層を有しない参考の実施形態である基板上に形成した強誘電体薄膜を示す断面図である。
強誘電体薄膜を製造する基板10としては、シリコン基板やサファイア基板などの耐熱性基板が用いられる。また、この基板10上に形成する結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11としては、PtやIr、Ruなどの導電性を有し、強誘電体薄膜と反応しない材料が用いられる。製造する強誘電体薄膜はPb含有ペロブスカイト型酸化物であるPZTである
強誘電体薄膜形成用組成物は、複合金属酸化物を構成するための原料が所望の金属原子比を与えるような割合となるように、有機溶媒中に溶解している有機金属化合物溶液からなる。
複合金属酸化物原料は、Pb、Zr及びTiの各金属元素に、有機基がその酸素又は窒素原子を介して結合している化合物が好適である。例えば、金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上が例示される。特に好適な化合物は、金属アルコキシド、その部分加水分解物、有機酸塩である。このうち、Pb化合物としては、酢酸塩(酢酸鉛:Pb(OAc 2 )、鉛ジイソプロポキシド:Pb(OiPr 2 どが挙げられる。Ti化合物としては、チタンテトラエトキシド:Ti(OEt)4、チタンテトライソプロポキシド:Ti(OiPr)4、チタンテトラn−ブトキシド:Ti(OiBu)4、チタンテトライソブトキシド:Ti(OiBu)4、チタンテトラt−ブトキシド:Ti(OtBu)4、チタンジメトキシジイソプロポキシド:Ti(OMe)2(OiPr)2などのアルコキシドが挙げられる。Zr化合物としては、上記Ti化合物と同様なアルコキシド類が好ましい。金属アルコキシドはそのまま使用しても良いが、分解を促進させるためにその部分加水分解物を使用しても良い。
強誘電体薄膜形成用組成物を調製するには、これらの原料を所望の強誘電体薄膜組成に相当する比率で適当な溶媒に溶解して、塗布に適した濃度に調製する。
この調整は、典型的には、以下のような液合成フローによって、前駆溶液となる強誘電体薄膜形成用組成物を得ることができる。反応容器に、Zr源(例えばZrテトラn−ブトキシド)と、Ti源(例えばTiイソプロポキシド)と、安定化剤(例えばアセチルアセトン)を入れて、窒素雰囲気中で還流する。その次に還流後の化合物にPb源(例えば酢酸鉛三水和物)とを添加するとともに、溶剤(例えばプロピレングリコール)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後、この溶液に更にプロイソグリコールを添加して濃度を調節し、更に、この溶液にn−ブタノールを添加する。この結果、当該強誘電体薄膜形成用組成物を得る。
ここで用いる強誘電体薄膜形成用組成物の溶媒は、使用する原料に応じて適宜決定されるが、一般的には、カルボン酸、アルコール(例えば、多価アルコールであるプロピレングリコール)、エステル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル)、シクロアルカン類(例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノール)、芳香族系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、その他テトラヒドロフランなど、或いはこれらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
カルボン酸としては、具体的には、n−酪酸、α−メチル酪酸、i−吉草酸、2−エチル酪酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸,3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸を用いるのが好ましい。
また、エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸sec−アミル、酢酸tert−アミル、酢酸イソアミルを用いるのが好ましく、アルコールとしては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソ−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノールを用いるのが好適である。
なお、強誘電体薄膜形成用組成物の有機金属化合物溶液中の有機金属化合物の合計濃度は、金属酸化物換算量で0.1〜20質量%程度とすることが好ましい。
この有機金属化合物溶液中には、必要に応じて安定化剤として、β−ジケトン類(例えば、アセチルアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等)、β−ケトン酸類(例えば、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等)、β−ケトエステル類(例えば、上記ケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類)、オキシ酸類(例えば、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等)、上記オキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類(例えば、ジアセトンアルコール、アセトイン等)、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン)、多価アミン等を、(安定化剤分子数)/(金属原子数)で0.2〜3程度添加しても良い。
強誘電体薄膜形成用組成物はβ−ジケトン類及び多価アルコール類を含んでいることが好適である。このうち、β−ジケトン類としてはアセチルアセトンが、多価アルコール類としてはプロピレングリコールが特に好ましい。
上記調製された有機金属化合物溶液を濾過処理等によって、パーティクルを除去して、粒径0.5μm以上(特に0.3μm以上とりわけ0.2μm以上)のパーティクルの個数を溶液1mL当り50個以下(50個/mL以下)とするのが好ましい。有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数が50個/mLを超えると、長期保存安定性が劣るものとなる。この有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数は少ない程好ましく、特に30個/mL以下であることが好ましい。
上記パーティクル個数となるように、調製後の有機金属化合物溶液を処理する方法は特に限定されるものではないが、例えば、次のような方法が挙げられる。第1の方法としては、市販の0.2μm孔径のメンブランフィルターを使用し、シリンジで圧送する濾過法である。第2の方法としては、市販の0.05μm孔径のメンブランフィルターと加圧タンクを組み合せた加圧濾過法である。第3の方法としては、上記第2の方法で使用したフィルターと溶液循環槽を組み合せた循環濾過法である。
いずれの方法においても、溶液圧送圧力によって、フィルターによるパーティクル捕捉率が異なる。圧力が低いほど捕捉率が高くなることは一般的に知られており、特に、第1の方法、第2の方法について、粒径0.5μm以上のパーティクルの個数を50個以下とする条件を実現するためには、溶液を低圧で非常にゆっくりとフィルターに通すのが好ましい。
強誘電体薄膜形成用組成物を用いて強誘電体薄膜を形成するには、(111)軸方向に配向した下部電極の上に、上記組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法を用いて塗布し、ホットプレートなどを用いて乾燥・仮焼成を行い、塗布から乾燥・仮焼成までの工程を繰り返して、所望の範囲内の層厚のゲル膜を形成してから、一括で本焼成することにより得られる。
乾燥・仮焼成は、溶媒を除去するとともに有機金属化合物を熱分解又は加水分解して複合酸化物に転化させるために行うことから、空気中、酸化雰囲気中、又は含水蒸気雰囲気中で行う。空気中での加熱でも、加水分解に必要な水分は空気中の湿気により十分に確保される。この加熱は、溶媒の除去のための低温加熱と、有機金属化合物の分解のための高温加熱の2段階で実施しても良い。
本焼成は、乾燥・仮焼成で得られた薄膜を結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させるための工程であり、これにより強誘電体薄膜が得られる。この結晶化工程の焼成雰囲気はO2、N2、Ar、N2O又はH2等或いはこれらの混合ガス等が好適である。
乾燥・仮焼成は、150〜550℃、1〜10分間程度行われる。ここで、上記の温度範囲に関し、上記結晶粒径制御層を強誘電体薄膜中に導入しない参考の実施形態の場合は、150℃〜200℃又は285℃〜315℃の範囲内とすることが望ましい。これは、250℃前後の温度では膜の加熱温度が適当でなく、基板と膜の界面に(100)配向である初期核が生成されないからである。一方、本実施の形態である結晶粒径制御層を強誘電体薄膜中に導入する場合は、175℃〜315℃の範囲内とすることが望ましい。これは、結晶化温度の低い結晶粒径制御層を導入したことにより175℃〜315℃の間で(100)配向した初期核が生成されるからである。
本焼成は450〜800℃で1〜60分間程度行われる。本焼成は、急速加熱処理(RTA処理)で行っても良い。RTA処理で本焼成する場合、その昇温速度を10〜100℃/秒とすることが好ましい。
結晶粒径制御層12としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコン酸鉛等が挙げられる。また、結晶粒径制御層12の層厚は1nm〜10nmが好ましい。結晶粒径制御層12の層厚を上記範囲内としたのは、10nmを超えると、核の発生密度の向上効果が得られず、結果として微細な結晶組織が得られないためである。
結晶粒径制御層12は、上述した配向制御層13を形成するのと同様に、(111)軸方向に配向した下部電極の上に、結晶粒径制御層用組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法を用いて塗布し、ホットプレートなどを用いて大気雰囲気中、150〜550℃、1〜10分間乾燥・仮焼成を行い、塗布から乾燥・仮焼成までの工程を繰り返して、所望の範囲内の層厚のゲル膜を形成することにより得られる。この結晶粒径制御層12を設ける場合には、配向制御層13は結晶粒径制御層12の上に形成される。
また、配向制御層13を形成した後に、この配向制御層13を下地層として、下地層の上に更に下地層の結晶配向と同じ結晶配向を有する膜厚調整層14を形成することが好適である。下地層の上に膜厚調整層14を形成することで、配向制御層13の優先配向面に倣って、配向制御層13と同じ傾向の結晶配向面が形成されるため、この膜厚調整層14によって、配向制御層により(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜の膜厚をその用途に合わせて任意に調整することが可能となる。
膜厚調整層14は、配向制御層13と同種のPb含有ペロブスカイト型強誘電体膜である。膜厚調整層14の層厚は5000nm未満が好ましい。膜厚調整層14の層厚を上記範囲内としたのは、5000nm以上ではプロセス時間が長くなることと、配向制御層13の優先配向面に倣う傾向が小さくなり、結果として、(100)面の配向度が小さくなるためである。
膜厚調整層14は、上述した配向制御層13を形成するのと同様に、配向制御層13の上に、膜厚調整層用組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法を用いて塗布し、ホットプレートなどを用いて大気雰囲気中、150〜550℃、1〜10分間乾燥・仮焼成を行い、塗布から乾燥・仮焼成までの工程を繰り返して、所望の範囲内の膜厚のゲル膜を形成してから、酸素雰囲気中、450〜800℃、1〜60分間本焼成することにより得られる。
このようにして製造された本発明の強誘電体薄膜は、(100)面に優先的に結晶配向が制御されたものとなり、大きなe31圧電定数をもつ。
また、本発明の強誘電体薄膜は、薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品における構成材料として使用することができる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。以下に示す実施例1〜11は実施例ではなく参考実施例であり、比較例2、3は参考比較例である。
<結晶粒径制御層用組成物、配向制御層用組成物及び膜厚調整層用組成物の調製>
これらの組成物の液合成フローは、典型的には以下のプロセスに従った。
まず、反応容器にジルコニウムテトラn−ブトキシド(Zr源)及び/又はチタニウムテトライソプロポキシド(Ti源)と、アセチルアセトン(安定化剤)とを入れて、窒素雰囲気中で還流した。次いでこの化合物に酢酸鉛3水和物(Pb源)とを添加するとともに、プロピレングリコール(溶剤)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後に、この溶液に更にプロピレングリコールを添加して濃度を調節し、更にこの溶液にn-ブタノールを添加することで、前駆溶液となる上記組成物を得た。
また、組成物の液合成フローは、具体的には以下のプロセスに従った。
まず、反応容器にTiイソプロポキシド(Ti源)と、アセチルアセトン(安定化剤)を入れて、窒素雰囲気中で還流した。次いでこの化合物に酢酸鉛3水和物(Pb源)とを添加するとともに、プロピレングリコール(溶剤)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後に、この溶液に更にプロピレングリコールを添加して濃度を調節し、更に、希釈アルコールを添加することで、以下の表1、表2に示す各濃度に調整された、酸化物換算で各金属比がPb/Ti=125/100の金属化合物を含有する結晶粒径制御層用組成物を得た。
まず、反応容器にZrテトラn−ブトキシド(Z源)と、Tiイソプロポキシド(Ti源)と、アセチルアセトン(安定化剤)とを入れて、窒素雰囲気中で還流した。次いでこの化合物に酢酸鉛3水和物(Pb源)とを添加するとともに、プロピレングリコール(溶剤)を添加し、窒素雰囲気下で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後に、この溶液に更にプロピレングリコールを添加して濃度を調節し、更に、希釈アルコールを添加することで、以下の表1、表2に示す所望の濃度に調整された、酸化物換算で各金属比がPb/Zr/Ti=110/52/48の金属化合物を含有する配向制御層用組成物、膜厚調整用組成物を得た。上記結晶粒径制御層用組成物、配向制御層用組成物及び膜厚調整用組成物を構成する各有機金属化合物溶液は、市販の0.2μm孔径のメンブランフィルターを使用し、シリンジで圧送して濾過することにより粒径0.5μm以上の個数がそれぞれ溶液1mL当たり1個、2個及び1個であった。
<実施例1>
基板として、表面にスパッタリング法にてPt下部電極膜を形成した6インチシリコン基板を用意した。この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3500rpmで15秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を1回行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚35nmの配向制御層を得た。これを実施例1の強誘電体薄膜とした。
<実施例2>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、150℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物を、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚60nmの配向制御層を得た。これを実施例2の強誘電体薄膜とした。
<実施例3>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、150℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を1回行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。これを実施例3の強誘電体薄膜とした。
<実施例4>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、175℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を2回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚90nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、175℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの膜厚調整層を得た。これを実施例4の強誘電体薄膜とした。
<実施例5>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで15秒間の条件で、上記調製した5質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、175℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成の工程を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの膜厚調整層を得た。これを実施例5の強誘電体薄膜とした。
<実施例6>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで15秒間の条件で、上記調製した5質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を3回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚60nmの配向制御層を得た。これを実施例6の強誘電体薄膜とした。
<実施例7>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。これを実施例7の強誘電体薄膜とした。
<実施例8>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した5質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚20nmの膜厚調整層を得た。これを実施例8の強誘電体薄膜とした。
<実施例9>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚300nmの膜厚調整層を得た。これを実施例9の強誘電体薄膜とした。
<実施例10>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、315℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの膜厚調整層を得た。これを実施例10の強誘電体薄膜とした。
<実施例11>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、175℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚60nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの膜厚調整層を得た。これを実施例11の強誘電体薄膜とした。
<実施例12>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、175℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、175℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚60nmの配向制御層を得た。これを実施例12の強誘電体薄膜とした。
<実施例13>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚300nmの膜厚調整層を得た。これを実施例13の強誘電体薄膜とした。
<実施例14>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した2質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚5nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚300nmの膜厚調整層を得た。これを実施例14の強誘電体薄膜とした。
<実施例15>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を2回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚150nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚300nmの膜厚調整層を得た。これを実施例15の強誘電体薄膜とした。
<実施例16>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚75nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させた。上記膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、一度本焼成を行い、この工程を10回繰り返し、層厚3000nmの膜厚調整層を得た。これを実施例16の強誘電体薄膜とした。
<実施例17>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚45nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの膜厚調整層を得た。これを実施例17の強誘電体薄膜とした。
<実施例18>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を2回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚90nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの膜厚調整層を得た。これを実施例18の強誘電体薄膜とした。
<実施例19>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、250℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、250℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚60nmの配向制御層を得た。これを実施例19の強誘電体薄膜とした。
<実施例20>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで15秒間の条件で、上記調製した1質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚60nmの配向制御層を得た。これを実施例20の強誘電体薄膜とした。
<比較例1>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した5質量%濃度の結晶粒径制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行い、層厚2nmの結晶粒径制御層を得た。次いで、結晶粒径制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した5質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を2回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚20nmの配向制御層を得た。次に、配向制御層上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後2000rpmで20秒間の条件で、上記調製した12質量%濃度の膜厚調整層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、300℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この膜厚調整層用組成物の塗布、仮焼成の工程を4回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚300nmの膜厚調整層を得た。これを比較例1の強誘電体薄膜とした。
<比較例2>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した11質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を3回行った後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚170nmの配向制御層を得た。この配向制御層上には膜厚調整層を形成しなかった。これを比較例2の強誘電体薄膜とした。
<比較例3>
実施例1と同様の基板を用意し、この基板のPt下部電極膜上に、スピンコート法により、500rpmで3秒間、その後3000rpmで20秒間の条件で、上記調製した10質量%濃度の配向制御層用組成物を塗布した。続いて、ホットプレートを用い、大気雰囲気中、200℃で5分間加熱して乾燥・仮焼成を行った。この配向制御層用組成物の塗布、仮焼成の工程を6回繰り返した後、昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間加熱する本焼成を行って結晶化させ、層厚270nmの配向制御層を得た。この配向制御層上には膜厚調整層を形成しなかった。これを比較例3の強誘電体薄膜とした。
<比較試験>
実施例1〜20及び比較例1〜3で得られた強誘電体薄膜について、以下の手法により、各層の層厚、優先配向面、配向度、平均粒子径を求めた。その結果を表3、4にそれぞれ示す。また、実施例1、2、5、11、12、13、15、16、19、20のXRDパターンを図3に、比較例1〜3のXRDパターンを図4に、実施例5の表面SEM像(倍率10000倍)を図5に、実施例6の表面SEM像(倍率50000倍)を図6にそれぞれ示す。
(1) 層厚(膜厚)測定:各層の層厚は、強誘電体薄膜を分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製:M−2000)により測定して、「結晶粒径制御層と配向制御層の合算の層厚」、「配向制御層の層厚」及び「膜厚調整層の層厚」をそれぞれ求めた。また「結晶粒径制御層の層厚」は、「結晶粒径制御層と配向制御層の合算の層厚」から「配向制御層の層厚」を減することにより算出した。
(2) 優先配向面:誘電体結晶の優先配向面は、強誘電体薄膜をX線回折装置(XRD;Bruker社製:MXP18HF)により測定し、得られた回折結果のうち、最も強度の高い配向面を優先配向面とした。
(3) 配向度:誘電体結晶の(100)面における配向度は、上記(2)で得られた回折結果から、(100)面の強度/((100)面の強度+(110)面の強度+(111)面の強度)を計算することにより算出した。
(4) 平均粒子径:誘電体結晶の平均粒子径は、強誘電体薄膜表面を走査型電子顕微鏡(SEM;HITACHI社製:S−900)により撮影し、電子顕微鏡写真(表面像)に写っている、任意の結晶粒子30個に対して、結晶粒子の粒径(最長径と最短径)をノギスを用いて測定し、これらの測定結果から平均粒子径を算出した。
表3、表4及び図3、図4から明らかなように、配向制御層の厚さを30nm〜150nmの範囲内とした実施例1〜20では、0.78〜0.91と高い配向度で(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜を得ることができた。また、膜厚調整層を設けた実施例4、5、8〜11、13〜18でも、(100)面が優先的に結晶配向していることから、膜厚調整層は配向制御層の優先配向面と同じ結晶配向面が維持されていること、この膜厚調整層によって(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜の厚さを任意に調整することが可能であることが確認された。
一方、配向制御層の厚さが20nmの比較例1では(110)面が優先配向されてしまい、配向制御層の厚さが170nmの比較例2では(111)面が優先配向されてしまい、配向制御層の厚さが270nmの比較例3では(111)面が優先配向されていた。
また、図5、図6からも明らかなように、実施例1〜11の結晶粒径制御層を設けずに形成した強誘電体薄膜に比べて、実施例12〜20の結晶粒径制御層を設け、その上に形成した強誘電体薄膜は、最表層における平均粒子径が非常に微細な結晶組織になることが確認された。
本発明の製造方法では、(100)面に優先的に結晶配向した強誘電体薄膜をシード層やバッファ層を設けることなく、簡便に得ることができ、また得られた(100)面優先配向のPZT膜などのPb含有ペロブスカイト型強誘電体薄膜は、大きなe31圧電定数をもち、アクチュエータ、センサー、ジャイロ、インクジェットヘッド、オートフォーカスなどMEMSアプリケーションとして用いることができる。
10 基板
11 下部電極
12 結晶粒径制御層
13 配向制御層(下地層)
14 膜厚調整層

Claims (9)

  1. 結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極を有する基板の前記下部電極上に、Pb化合物及びTi化合物を含む第1強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼して層厚が1nm〜10nmの結晶粒径制御層を形成し、前記結晶粒径制御層の上にPb化合物、Zr化合物及びTi化合物を含む第2強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して配向制御層を形成することにより、前記結晶粒径制御層と前記配向制御層とからなるPZT強誘電体薄膜を製造し、
    前記第2強誘電体薄膜形成用組成物の塗布量を前記配向制御層の結晶化後の層厚が45nm〜150nmの範囲内になるように設定して前記配向制御層の優先的な結晶配向を(100)面にし、かつ前記配向制御層における平均粒子径を0.14以下の範囲にすることを特徴とするPZT強誘電体薄膜の製造方法。
  2. 前記結晶粒径制御層を形成するための仮焼温度が175℃〜315℃の範囲内にある請求項1記載の強誘電体薄膜の製造方法。
  3. 結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極を有する基板の前記下部電極上に、Pb化合物及びTi化合物を含む第1強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、仮焼して層厚が1nm〜10nmの結晶粒径制御層を形成し、前記結晶粒径制御層の上にPb化合物、Zr化合物及びTi化合物を含む第2強誘電体薄膜形成用組成物の一部を塗布し、仮焼した後、焼成して配向制御層を形成した後に、前記第2強誘電体薄膜形成用組成物の残部を前記配向制御層上に塗布、仮焼、焼成して前記配向制御層の結晶配向と同じ結晶配向を有する膜厚調整層を形成することにより、前記結晶粒径制御層と前記配向制御層と前記膜厚調整層とからなるPZT強誘電体薄膜を製造し、
    前記第2強誘電体薄膜形成用組成物の塗布量を前記配向制御層の結晶化後の層厚が45nm〜150nmの範囲内になるように設定して前記配向制御層の優先的な結晶配向を(100)面にし、かつ前記膜厚調整層における平均粒子径を0.14以下の範囲にすることを特徴とするPZT強誘電体薄膜の製造方法。
  4. 前記結晶粒径制御層を形成するための仮焼温度が175℃〜315℃の範囲内にある請求項3記載の強誘電体薄膜の製造方法。
  5. 前記第2強誘電体薄膜形成用組成物の残部を塗布した後の前記膜厚調整層を形成するための仮焼温度が200℃〜450℃の範囲内にある請求項3記載のPZT強誘電体薄膜の製造方法。
  6. 前記強誘電体薄膜がPb含有ペロブスカイト型酸化物であり、前記強誘電体薄膜形成用組成物がβ−ジケトン類及び多価アルコール類を含んでいる請求項1ないしいずれか1項に記載のPZT強誘電体薄膜の製造方法。
  7. 前記β−ジケトン類がアセチルアセトンであり、前記多価アルコール類がプロピレングリコールである請求項記載のPZT強誘電体薄膜の製造方法。
  8. 請求項1ないしいずれか1項に記載の方法により製造された(100)面に優先的に結晶配向したPZT強誘電体薄膜。
  9. 請求項記載のPZT強誘電体薄膜を有する薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品。
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