JP4766084B2 - ワークの曲げ加工方法および装置 - Google Patents
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Description
自動車用部材としてプレス成形された鋼板は、基本的に複数の曲げ箇所が形成されるいわゆる箱型またはハット型の断面形状を備えており、プレス成形品の寸法精度を確保するために曲げ箇所のスプリングバック量を制御することが重要であるが、高い材料強度を有する高強度鋼板(例えば材料強度が590MPa程度)はプレス成形後のスプリングバックが大きいため、そのままでは寸法精度を確保することが難しい。
さらに、高強度鋼板の材料強度が高くなると、ワーク毎の材料強度などの特性のばらつきが大きくなり、前述のように成形金型に見込みを加えた場合でもプレス成形後の曲げ角度が一定でなく、曲げ角度精度を確保することが困難となっている。
即ち、請求項1記載の如く、対向配置される固定型と可動型とを用いて板状のワークを曲げ加工することにより、曲げ箇所を境界として天板および側板の連続する2つの面を有する最終成形品を成形するワークの曲げ加工方法であって、
前記最終成形品における曲げ箇所の形状を、隣接する第一曲げ部と第二曲げ部、および前記第一曲げ部と第二曲げ部とに挟まれた平面部からなり、前記第一曲げ部と第二曲げ部とは、曲げ方向が同じである形状とし、前記第一曲げ部を、前記天板と前記曲げ箇所の平面部との間に配置するとともに、前記第二曲げ部を、前記曲げ箇所の平面部と前記側板との間に配置し、
前記固定型に、前記天板を成形する天板成形部と前記側板を成形する側板成形部、および前記曲げ箇所の平面部を成形する平面部成形部を設けるとともに、前記可動型に、前記側板を成形する側板成形部、および前記曲げ箇所の平面部を成形する平面成形部を設け、
前記板状のワークとして、前記第一曲げ部および第二曲げ部と同じ曲げ方向に屈曲された予備曲げ部が予め形成され、前記曲げ箇所の平面部に対応する箇所に前記予備曲げ部を含むワークを用意し、
前記固定型の天板成形部と該固定型の天板成形部に対向配置される押え部材とで、用意したワークを、該ワークの予備曲げ部が前記固定型の平面部成形部の範囲内に配置される状態で、前記ワークの前記天板に対応する箇所を挟持して片持ち支持し、
次いで、前記可動型を固定型側へ移動して、
片持ち支持したワークの自由側端を前記可動型により固定型側へ押圧することにより、前記ワークの前記曲げ箇所の平面部に対応する箇所を湾曲させ、
その後、前記可動型と固定型とで前記ワークを挟圧する前に、前記ワークを前記固定型の側板成形部と平面部成形部との間の角部に押し当てて、前記ワークの前記側板に対応する箇所に曲げ癖部を形成し、
前記曲げ癖部を形成した後に、前記ワークを前記可動型の平面部成形部と前記固定型の平面部成形部、および前記可動型の側板成形部と前記固定型の側板成形部とによりそれぞれ挟圧することで、前記第一曲げ部および第二曲げ部を形成するとともに、前記ワークの前記予備曲げ部を含む前記曲げ箇所の平面部に対応する箇所および前記曲げ癖部を曲げ戻して平坦化する。
また、前記曲げ癖部に生じるスプリングゴーをも利用して、さらに確実に最終成形品の曲げ部に発生するスプリングバックを低減して、最終成形品の曲げ部における曲げ角度の寸法精度向上を図ることが可能となる。
なお、本例のワークの曲げ加工方法および装置に適用されるワーク50を構成する高強度鋼板の材料強度は特に限定するものではなく、980MPa以上の材料強度を有する高強度鋼板についても有効に適用することが可能である。
つまり、最終成形品5は、前記天板51の両側部に、第一の曲げ箇所5aおよび第二の曲げ箇所5bを介して同じ方向に屈曲された、第一側板52および第二側板53をそれぞれ配置することにより、ハット型の断面形状に成形されている。
つまり、第一の曲げ箇所5aの形状は、隣接する第一曲げ部54aと第二曲げ部54b、および第一曲げ部54aと第二曲げ部54bとに挟まれた平面部54からなる形状とされている。
第一曲げ部54aは天板51と平面部54との間に配置される屈曲部であり、第二曲げ部54bは第一側板52と平面部54との間に配置される屈曲部である。
つまり、第二の曲げ箇所5bの形状は、隣接する第一曲げ部55aと第二曲げ部55b、および第一曲げ部55aと第二曲げ部55bとに挟まれた平面部55からなる形状とされている。
第一曲げ部55aは天板51と平面部55との間に配置される屈曲部であり、第二曲げ部55bは第二側板53と平面部55との間に配置される屈曲部である。
同様に、第二の曲げ箇所5bは、天板51および第二側板53を互いに交差するまで延長した場合の形状(図2における2点鎖線で示す形状)を、所定の幅寸法Wおよび高さ寸法Hにて斜めに削ぎ落とした面削ぎ形状に成形されており、前記平面部55は天板51および第二側板53のそれぞれに対して傾斜している。
なお、第一の曲げ箇所5aの成形方法と第二の曲げ箇所5bの曲げ加工方法とは同様であるため、以下の説明では第一の曲げ箇所5aの曲げ加工方法について説明を行い、第二の曲げ箇所5bの曲げ加工方法については省略する。
前記ダイス2および押え部材3は、パンチ1に対して近接離間する方向(図3における状下方向)へ移動可能に構成されており、押え部材3とパンチ1とでワーク50を挟持することで、該ワーク50支持可能としている。
そして、ダイス2をパンチ1側へ移動して近接させることにより、押え部材3とパンチ1とに挟持されたワーク50をダイス2とパンチ1とで挟み込みながら圧力を加える(挟圧する)ことにより、該ワーク50を屈曲して最終成形品5を成形することが可能となっている。
また、ダイス2をパンチ1側へ移動して近接させる過程で、押え部材3とパンチ1とに挟持されたワーク50をダイス2により押圧することによっても、ワーク50を屈曲することが可能となっている。
まず、ワーク50を曲げ加工するにあたって、図4に示すように、パンチ1とダイス2とが離間して開いた状態で、前記ワーク50を押え部材3とパンチ1とで挟持して支持する、ワーク保持工程が実施される。
この場合、天板51から第一側板52までの範囲の部分に相当するワーク50は、その一端部(図4における左端部、成形後に天板51となる側の部分)が押え部材3とパンチ1とにより片持ち支持されており、ワーク50の他端部(図4における右端部、成形後に第一側板52となる側の部分)は拘束されていない自由端となっている。
つまり、本例の加工装置により曲げ加工されるワーク50には、予め前工程にて前記第一曲げ部54aおよび第二曲げ部54bと同じ方向の予備曲げ部50pが形成されており、前記予備曲げ部50pが、前記パンチ1における平面部54を成形する部分に相当する平面部成形部1dに対応する箇所に位置した状態で、前記押え部材3とパンチ1とにより片持ち支持されている。
図5に示すように、成形工程においてダイス2をパンチ1側へ移動すると、まずダイス2の下端部がワーク50に当接する。
また、ワーク50がダイス2によりパンチ1側へ押圧されることで、該ワーク50の前記平面部成形部1dに対応する箇所は湾曲して、前記予備曲げ部50pと同じ側に撓むこととなる。
なお、このワーク50が前記角部1qに当接した時点においては、前記予備曲げ部50pなどの平面部成形部1dの範囲内に位置するワーク50はダイス2の平面部成形部2dに接触していない。つまり、この時点では、ワーク50はまだダイス2とパンチ1とに狭圧されていない。
前記曲げ癖部50qの曲げ方向は、後に行われるワーク50の第一曲げ部54aおよび第二曲げ部54bの曲げ方向と同じ方向となっている。
また、前記曲げ癖部50qにおけるワーク50は塑性変形しており、ダイス2による押圧状態が解除されたとしても、屈曲状態が曲げ癖として維持される。
また、前記ワーク50の曲げ癖部50q、および湾曲した平面部成形部1dの範囲に位置する部分のワーク50は塑性変形しており、ダイス2による押圧状態が解除されたとしても、屈曲状態および湾曲状態が曲げ癖として維持される。
その後、図9に示すように、ワーク50がダイス2によりさらにパンチ1側へ押圧されて、ワーク50がパンチ1とダイス2とにより狭圧されることとなる。
なお、パンチ1とダイス2とでワーク50を狭圧している状態がダイス2の下死点(パンチ1とダイス2とが最も近接する位置)となる。
また、パンチ1とダイス2とによるワーク50の狭圧前に、ワーク50の前記角部1qの部分に形成された曲げ癖部50qは、前記予備曲げ部50pおよびワーク50の湾曲による撓みがパンチ1とダイス2とで狭圧されて曲げ戻され平坦化することにより、パンチ1における角部1qの部分から第一側板成形部1b側へ移動することとなる。
また、第一側板成形部1b側へ移動した曲げ癖部50qは、パンチ1の第一側板成形部1bとダイス2の第一側板成形部2bとに狭圧されて曲げ戻され、一旦平坦化する。
図10に示すように、ワーク50が離型されると、パンチ1とダイス2との狭圧により曲げ加工された第一曲げ部54aおよび第二曲げ部54bに、ワーク50の材料強度によるスプリングバックが生じる。
つまり、平坦であったワーク50をパンチ1およびダイス2により屈曲して形成した第一曲げ部54aおよび第二曲げ部54bが、離型後に平坦化する方向へ若干曲げ戻る現象である。
このワーク50に生じるスプリングバックにより、ワーク50の天板51と第一側板52とがなす角度θは大きくなる方向に変化する。
ここで、パンチ1とダイス2とに狭圧されて平坦化された予備曲げ部50pおよび平面部54に対応する箇所、ならびに曲げ癖部50qには曲げ癖が残留しており、パンチ1とダイス2とによる狭圧状態が解除されると残留していた曲げ癖が復元されて、前記ワーク50の予備曲げ部50pを含む前記第一の曲げ箇所5aの平面部54に対応する箇所および曲げ癖部50qが再度屈曲状態になるが、この現象をワーク50に発現するスプリングゴーという。
これにより、従来のように、パンチ1およびダイス2を備える成形金型にワーク50のスプリングバック量を見込む必要がなくなり、最終成形品5の部材寸法をそのまま前記成形金型の寸法として用いることが可能となる。
この場合、材料強度が980MPa以上の高い材料強度を有したワーク50についても、それ以下の材料強度を有するワーク50の場合と同様に、最終成形品5の寸法精度を確保することができる。
この場合は、図11に示すように、まずワーク保持工程において、前記パンチ1と該パンチ1に対向配置される押え部材3とで前記ワーク50の一端部を挟持して片持ち支持する。
その後、さらにダイス2をパンチ1側へ移動すると、図13に示すように、ワーク50がダイス2によりさらにパンチ1側へ押圧され、ワーク50がパンチ1における平面部成形部1dと第一側板成形部1bとの間の角部1qに当接して屈曲され、前記曲げ癖部50qが形成される。
その後、ワーク50がダイス2によりさらにパンチ1側へ押圧されて、ワーク50がパンチ1とダイス2とにより狭圧され、最終成形品5が成形されることとなる。
また、平面部成形部1dの範囲に位置するワーク50を湾曲するとともに、前記曲げ癖部50qを形成した後に、前記ダイス2とパンチ1とで前記ワーク50を挟圧する場合、湾曲して撓んだ平面部成形部1dのワーク50が曲げ戻されるため、最終成形品5を離型したときに、平面部成形部1dのワーク50に生じるスプリングゴーにより第一の曲げ箇所5aに生じるスプリングバックを減少して、寸法精度の高い最終成形品5を成形することが可能となっている。
なお、本実施例における前記曲げ角度θaおよび曲げ角度θbは、図14に示すように、パンチ1の天板成形部1aおよび第一側板成形部1bを仮想的に互いに交差するまで延長した場合の交点Aの位置に、ワーク50に形成された予備曲げ部50pを配置した状態で、最終成形品5を成形した場合に形成された角度である。
従って、前記高さ寸法Hおよび幅寸法Wを適宜選択することにより、前記曲げ角度θaおよび曲げ角度θbが狙い角度となるように制御することができる。
さらに、高さ寸法をHa、幅寸法をWbに設定した場合や、高さ寸法をHc、幅寸法をWbに設定した場合にも、曲げ角度θaをほぼ狙い角度に合わせることができる。
さらに、高さ寸法をHa、幅寸法をWbに設定した場合や、高さ寸法をHb、幅寸法をWbに設定した場合にも、曲げ角度θbをほぼ狙い角度に合わせることができる。
従って、前記高さ寸法Hおよび幅寸法Wを適宜選択することにより、曲げ角度θa・θbの変化度合いを小さくするように制御することができる。
さらに、高さ寸法をHa、幅寸法をWcに設定した場合や、高さ寸法をHa、幅寸法をWdに設定した場合にも、曲げ角度θa・θbの変化度合いを小さくすることができている。
本例では、第一の曲げ箇所5aおよび第二の曲げ箇所5bの面削ぎ形状(高さ寸法Hおよび幅寸法W)を所定の形状に設定した状態で、前記予備曲げ部50pの形成位置を調整することにより、曲げ角度θaおよび曲げ角度θbの大きさの制御を行う。
また、前記オフセット寸法Dは、予備曲げ部50pがパンチ1の平面成形部1dの範囲内に収まるように設定する必要があり、かつワークワーク保持工程の段階で、パンチ1の角部1qにワーク50が当接する範囲を限界として調整することが望ましい。
例えば、図18に示すように、オフセット寸法Dを平面成形部1dの範囲内のDaに設定した場合、予備曲げ部50pの曲げ角度θxは、ワークワーク保持工程の段階でパンチ1の角部1qにワーク50が当接する角度が最大となる。
図19においては、オフセット寸法Dが0からDcまでの範囲の角度変化量が示されており、オフセット寸法Dが0からDaとなるまで、さらにはDbとなるまではプラス側へ変化し、DbからDcに至るまでの間には若干マイナス側へ変化している。
また、前記成形金型にスプリングバック量を見込んでワーク50をオーバーベンドする場合には、そのオーバーベントする角度の大きさに応じて所望の角度変化量が得られるオフセット寸法を選択し、最終成形品5の成形を行うことで、狙い角度通りの最終成形品5を高精度で成形することが可能となる。
1a 天板成形部
1b 第一側板成形部
1c 平面部成形部
1p・1q 角部
2 ダイス
2b 第一側板成形部
2d 平面部成形部
3 押え部材
5 最終成形品
5a 第一曲げ箇所
5b 第二曲げ箇所
50 ワーク
51 天板
52 第一側板
53 第二側板
54・55 平面部
54a・55a 第一曲げ部
54b・55b 第二曲げ部
Claims (1)
- 対向配置される固定型と可動型とを用いて板状のワークを曲げ加工することにより、曲げ箇所を境界として天板および側板の連続する2つの面を有する最終成形品を成形するワークの曲げ加工方法であって、
前記最終成形品における曲げ箇所の形状を、隣接する第一曲げ部と第二曲げ部、および前記第一曲げ部と第二曲げ部とに挟まれた平面部からなり、前記第一曲げ部と第二曲げ部とは、曲げ方向が同じである形状とし、前記第一曲げ部を、前記天板と前記曲げ箇所の平面部との間に配置するとともに、前記第二曲げ部を、前記曲げ箇所の平面部と前記側板との間に配置し、
前記固定型に、前記天板を成形する天板成形部と前記側板を成形する側板成形部、および前記曲げ箇所の平面部を成形する平面部成形部を設けるとともに、前記可動型に、前記側板を成形する側板成形部、および前記曲げ箇所の平面部を成形する平面成形部を設け、
前記板状のワークとして、前記第一曲げ部および第二曲げ部と同じ曲げ方向に屈曲された予備曲げ部が予め形成され、前記曲げ箇所の平面部に対応する箇所に前記予備曲げ部を含むワークを用意し、
前記固定型の天板成形部と該固定型の天板成形部に対向配置される押え部材とで、用意したワークを、該ワークの予備曲げ部が前記固定型の平面部成形部の範囲内に配置される状態で、前記ワークの前記天板に対応する箇所を挟持して片持ち支持し、
次いで、前記可動型を固定型側へ移動して、
片持ち支持したワークの自由側端を前記可動型により固定型側へ押圧することにより、前記ワークの前記曲げ箇所の平面部に対応する箇所を湾曲させ、
その後、前記可動型と固定型とで前記ワークを挟圧する前に、前記ワークを前記固定型の側板成形部と平面部成形部との間の角部に押し当てて、前記ワークの前記側板に対応する箇所に曲げ癖部を形成し、
前記曲げ癖部を形成した後に、前記ワークを前記可動型の平面部成形部と前記固定型の平面部成形部、および前記可動型の側板成形部と前記固定型の側板成形部とによりそれぞれ挟圧することで、前記第一曲げ部および第二曲げ部を形成するとともに、前記ワークの前記予備曲げ部を含む前記曲げ箇所の平面部に対応する箇所および前記曲げ癖部を曲げ戻して平坦化する、
ことを特徴とするワークの曲げ加工方法。
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