JP4766052B2 - 電気音響変換器 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばスピーカなどの発音体として用いられる電気音響変換器に関し、より詳細には、圧電素子を一端で支持してなる片持ち構造の支持構造を有する電気音響変換器に関する。
従来、スピーカやブザーなどに圧電効果を利用した電気音響変換器が広く用いられている。例えば、下記の特許文献1には、図11に正面断面図で示す発音体101が開示されている。発音体101は、箱体102を有する。箱体102の内壁に、圧電振動素子103の一端が連結されている。圧電振動素子103は、圧電セラミック板の両面に電極103a,103bを形成した構造を有する。また、電極103a,103bから交番電界を印加することにより、振動し得るように圧電セラミック板が分極されている。
発音体101では、圧電振動素子103が、一方端で支持されており、他方端が自由端とされている。すなわち、圧電振動素子103は、片持ち支持されているため、自由端側において大きく変位することができる。よって、大きな音圧を得ることができるとされている。
他方、下記の特許文献2には、図12に示す圧電セラミックスピーカが開示されている。圧電セラミックスピーカ111では、枠材112に、圧電振動素子113の一端が連結されている。圧電振動素子113は、その一端が自由端とされており、片持ち支持されている。そして、この自由端側において、圧電振動素子113に、コーン状振動板114の中央部が固定されている。従って、圧電振動素子113が屈曲振動した場合、圧電振動素子113の先端に連結されたコーン状振動板114が振動し、大きな音圧が得られるとされている。
実開昭63−191800号公報 実用新案登録第3068450号公報
発音体101では、圧電振動素子103が箱体102に連結されている部分以外の周縁部は、箱体102内において露出している。そのため、圧電振動素子103が振動した場合、圧電振動素子103の一方面側に存在する空気の圧力と、他方面側に存在する空気の圧力とが打ち消し合うことになり、低周波数域における音が出なくなるという問題があった。すなわち、広い周波数範囲にわたり大きな音圧を得ることができなかった。
他方、特許文献2に記載の圧電セラミックスピーカ111では、音波を発生させるのは、空気に直接作用するコーン状振動板114である。そのため、圧電振動素子113以外に大きなコーン状振動板114を必要とし、大型にならざるを得ず、薄型化を図ることが困難であった。加えて、部品点数が増大し、製造工程が複数化するため、コストが高くついていた。
また、コーン状振動板114の固有面内振動が生じ、それによって周波数特性が悪化するという問題もあった。加えて、圧電振動素子113は片持ち支持されているが、自由端側がコーン振動板114に連結されている。そのため、圧電振動素子113の自由端側がほとんど変位しない振動モードが存在し、結果的に、周波数特性上において大きなディップが生じることがあった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、比較的広い周波数範囲にわたり大きな音圧を確実に得ることを可能とし、しかも部品点数の増大及び製造工程の煩雑化を招かず、さらに小型化、特に薄型化を進めることが可能な電気音響変換器を提供することにある。
本発明によれば、開口部を有するフレームと、前記フレームの開口部内に配置されており、かつ一方端部が前記フレームに連結されている複数枚の圧電素子と、前記フレームの開口部において、前記フレームと前記複数の圧電素子との間の隙間を少なくとも覆うように前記フレーム及び複数の圧電素子に貼り付けられた可撓性薄膜とを備え、前記複数の圧電素子の一方端部とは反対側の端部が自由端とされており、複数の圧電素子の自由端が前記フレームの開口部内においてギャップを隔てて対向配置されていることを特徴とする、電気音響変換器が提供される。
本発明に係る電気音響変換器のある特定の局面では、前記可撓性薄膜が、前記フレームの開口部の全領域を覆うように配置されており、複数の圧電素子が、各圧電素子の一方主面の全領域において可撓性薄膜に接着されている。
本発明に係る電気音響変換器の他の特定の局面では、前記複数の圧電素子が、上底と下底とを有する略台形の形状を有し、前記フレームに連結されている一方端部が下底である。
本発明に係る電気音響変換器のさらに他の特定の局面では、前記複数の圧電素子が前記フレームに連結されている前記一方端部側において、該圧電素子がフレームに連結されている部分の長さが、前記複数の圧電素子が対向しているギャップにおいて、前記開口部の前記長さと同じ方向の前記開口部寸法よりも小さくされている。
本発明に係る電気音響変換器のさらに別の特定の局面では、前記複数の圧電素子が対向しているギャップにおいて、前記可撓性薄膜に貼り合わされており、かつ可撓性薄膜よりも剛性が高い剛体板がさらに備えられている。
本発明に係る電気音響変換器のさらに別の特定の局面によれば、前記複数枚の圧電素子において、少なくとも1枚の圧電素子の基本モードの共振周波数が、他の圧電素子の基本モードの共振周波数と異なっている。
本発明に係る電気音響変換器のさらに他の特定の局面では、少なくとも1枚の前記圧電素子の平面形状が、残りの圧電素子の平面形状と異なっている。
本発明に係る電気音響変換器のさらに他の特定の局面によれば、少なくとも1枚の圧電素子の厚みが、残りの圧電素子の厚みと異なっている。
本発明に係る電気音響変換器のさらに別の特定の局面では、前記フレーム及び複数枚の圧電素子が、1枚の圧電セラミック板を用いて一体的に構成されている。
(発明の効果)
本発明に係る電気音響変換器では、複数の圧電素子が、各々の一方端部においてフレームに連結され、他方端が自由端とされている。従って、複数の圧電素子は、片持ち支持されているため、自由端が大きく変位し得る。そして、複数の圧電素子とフレームとの間の隙間を少なくとも埋めるように、フレーム及び複数の圧電素子に可撓性薄膜が貼り付けられている。よって、大きく変位する圧電素子に貼り付けられた可撓性薄膜も同様に大きく変位する。従って、非常に大きな音圧を得ることができる。
しかも、圧電素子及び可撓性薄膜をフレームに取り付けるだけでよいため、電気音響変換器の小型化、特に薄型化を容易に図ることができる。さらに、部品点数の増大も招かず、かつ組立ても容易であるため、コストも低減することが可能となる。
上記可撓性薄膜がフレームの全領域を覆うように配置されており、複数の圧電素子が、各圧電素子の一方主面の全領域において該可撓性薄膜に接着されている場合には、可撓性薄膜のフレームの開口部の全領域を覆うようにフレームに貼り付けることができ、かつ複数の圧電素子についても、可撓性薄膜に容易に接着することができる。従って、より一層容易に製造でき、より安価な電気音響変換器を提供することができる。
複数の圧電素子が、上底と下底とを有する略台形の形状を有し、フレームに連結されている一方端部が下底である場合には、上底に相当する自由端側がより一層容易に変位する。従って、より大きな音圧を得ることができる。
複数の圧電素子がフレームに連結されている一方端部側において圧電素子がフレームに連結されている部分の長さが、複数の圧電素子が対向しているギャップにおいて、上記長さと同じ方向の開口部寸法よりも小さくされている場合には、複数の圧電素子が対向しているギャップ側において、圧電素子が容易に変位し得るため、より大きな音圧を得ることができる。
上記複数の圧電素子が対向しているギャップにおいて、上記可撓性薄膜に剛体板が貼り合わされている場合、ギャップにおいて剛体板が設けられている部分が変位することによって、より大きな音圧を得ることができる。
複数の圧電素子において、少なくとも1枚の圧電素子の基本モードの共振周波数が他の圧電素子の基本モードの共振周波数と異なっている場合には、より広い周波数範囲にわたり大きな音圧を得ることができる。少なくとも1枚の圧電素子の平面形状が、残りの圧電素子の平面形状と異なっている場合には、少なくとも1枚の圧電素子の基本モードの共振周波数を、他の圧電素子の基本モードの共振周波数と容易に異ならせることができる。同様に、少なくとも1枚の圧電素子の厚みが、残りの圧電素子の厚みと異なっている場合にも、少なくとも1枚の圧電素子の共振周波数を、他の圧電素子の基本モードの共振周波数と容易に異ならせることができる。
上記フレーム及び複数の圧電素子が1枚の圧電セラミック板を用いて一体的に構成されている場合には、部品点数の低減を図ることができるとともに、小型化の容易な電気音響変換器を提供することが可能となる。
図1(a)及び(b)は、本実施形態の第1の実施形態に係る電気音響変換器の正面断面図及び平面図である。 図2(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例及び他の変形例に係る各電気音響変換器を示す平面図である。 図3は、本発明の第2の実施形態に係る電気音響変換器を説明するための平面図である。 図4は、本発明の第3の実施形態に係る電気音響変換器を説明するための平面図である。 図5(a)及び(b)は、本発明の第4の実施形態に係る電気音響変換器を説明するための正面断面図及び平面図である。 図6は、第4の実施形態に係る電気音響変換器における周波数特性を模式的に示す図である。 図7は、第1の実施形態に係る電気音響変換器における周波数特性を模式的に示す図である。 図8は、本発明の第5の実施形態に係る電気音響変換器を説明するための正面断面図である。 図9は、本発明の第1の実施形態の電気音響変換器の製造方法の一例を説明するための模式的平面図である。 図10(a)及び(b)は、第1の実施形態のさらに他の変形例に係る電気音響変換器を説明するための平面図及び平面断面図である。 図11は、従来の電気音響変換器としての発音体を説明するための正面断面図である。 図12は、従来の電気音響変換器としての圧電スピーカを説明するための正面断面図である。
符号の説明
1…電気音響変換器
2…枠状部材
3…枠状部材
4…フレーム
4a…開口部
5…可撓性薄膜
6…第1の圧電素子
6A,7A…圧電素子
6a,7a…端部
6b,7b…先端
7…第2の圧電素子
8,9…電極膜
8a,9a…切欠
10,11…端子電極
12…電気音響変換器
13…電気音響変換器
21…電気音響変換器
22…剛体板
31…電気音響変換器
32〜35…第1〜第4の圧電素子
36…剛体板
41…電気音響変換器
42,43…圧電素子
51…電気音響変換器
52,53…第1,第2の圧電素子
71…圧電セラミック板
71a…切欠
71b,71c…側面
72…第1の圧電素子
73…第2の圧電素子
74…電極膜
75…内部電極
A…ギャップ
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る電気音響変換器を示す正面断面図及び平面図である。
電気音響変換器1は、圧電スピーカとして好適に用いられる。電気音響変換器1は、第1,第2の枠状部材2,3を貼り合わされてなるフレーム4を有する。枠状部材2,3は、金属あるいはセラミックスなどの適宜の剛性材料により構成され得る。本実施形態では、枠状部材2,3は、金属により構成されている。
フレーム4は、開口部4aを有する。開口部4a内においては、可撓性薄膜5が開口部4aの全領域を覆うようにフレーム4に貼り付けられている。より具体的には、枠状部材2,3間に、可撓性薄膜5の周縁部が挟持され、可撓性薄膜5が開口部4aの全領域を覆うように固定されている。
可撓性薄膜5は、可撓性を有する薄膜により構成されており、このような可撓性薄膜を構成する材料は、特に限定されないが、内部損失が大きく、弾性変形し易く、弾性復元性に優れており、耐環境特性に優れた材料が好ましい。このような材料としては、ゴム弾性を有する合成ゴム、天然ゴムあるいはエラストマーなどが用いられる。このような合成ゴムの例としては、エチレンブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムなどを挙げることができる。
可撓性薄膜5の厚みは、特に限定されないが、本実施形態では、30〜100μm程度とされている。可撓性薄膜5には、後述する圧電素子の屈曲振動による変位を妨げない程度の可撓性を有することが求められる。
可撓性薄膜5の上面には、第1,第2の圧電素子6,7が貼り合わされている。本実施形態では、圧電素子6,7は、一層の内部電極を全面に有し、内部電極の両側にチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなる圧電セラミック層が積層されている積層型の圧電素子が用いられている。この積層型の圧電素子は、両主面にも電極膜を有する(図1(a)では省略)。このような積層型圧電素子は、内部電極−セラミックス一体焼成技術により得ることができ、従来より、圧電スピーカや圧電ブザーなどにおいて広く用いられている。
本実施形態では、上記内部電極はAg−Pt合金からなり、両主面の電極膜はNi−Cu合金をスパッタリングすることにより形成されており、圧電素子6,7の端面で電気的に接続されている。また、図1(b)に示されているように、圧電素子6,7の上面に形成されている電極膜8,9には、1つのコーナ部近傍に切欠8a,9aが形成されている。この切欠8a,9a内に、端子電極10,11が設けられている。端子電極10,11は、圧電素子6,7の端面に連なっており、端面において、内部電極(図示せず)に電気的に接続されている。駆動に際しては端子電極10,11と、電極膜8,9との間に交流電圧を印加すればよい。なお、圧電素子6,7は、2層からなりそれぞれ互いに厚み方向に同じ向きに分極されている。
上記積層型の圧電素子6,7は、一方端部6a,7a側でフレーム4に固定され、支持されている。より具体的には、図1(a)で示されているように、圧電素子6,7の端部6a,7a近傍において、圧電素子6,7が、枠状部材2,3に挟持されて固定されている。従って、圧電素子6,7の端部6a,7aと反対側の端部である先端6b,7bは自由端とされており、言い換えれば、圧電素子6,7は、片持ち支持されている。従って、圧電素子6,7は、先端6b,7bが自由端であるため、先端6b,7bが大きく変位し得る。先端6bと先端7bとは、ギャップAを介して隔てられている。
なお、上記枠状部材2,3に挟持されている圧電素子6,7及び可撓性薄膜5は、公知の接着剤を用いて接着・固定されている。このような接着剤としては、特に限定されないが、本実施形態では、熱硬化型シリコン接着剤が用いられている。もっとも、エポキシ系接着剤などの他の接着剤を用いてもよく、また熱硬化型以外の硬化型接着剤を用いてもよい。
本実施形態の電気音響変換器1では、圧電素子6,7は同相で屈曲振動させて使用する。従って、使用に際しては、端子電極10,11を一方の電位に、電極膜8,9及び下面の電極膜を他方の電位に接続し、両者の間に交番電圧を印加すればよい。このようにして、圧電素子6,7が同相で屈曲振動し、可撓性薄膜5は、圧電素子6,7の振動に追随して振動することとなる。従って、可撓性薄膜5の上面と下面との空気の圧力差により発音することとなる。
上記のようにして、製造される電気音響変換器1では、可撓性薄膜5の上面側と下面側の空気が遮断されているため、両者の圧力差が打ち消されることがない。従って、低周波域から高周波域にわたり、大きな音圧を得ることができる。
しかも、圧電素子6,7は片持ち支持されており、先端6b,7bの変位が容易であるため、可撓性薄膜5はその中心すなわちギャップAが設けられている部分近傍で大きく変位する。よって、大きな音圧を得ることができる。
加えて、可撓性薄膜5及び圧電素子6,7からなる要部が可撓性薄膜5に圧電素子6,7を貼り合わせて得られるだけであるため、これらの構造がほぼ同一面内に存在するため、薄型化を進めることができる。さらに、圧電素子6,7にコーン状振動板などを連結する必要がないため、部品点数の低減及び製造工程の簡略化を図ることができ、電気音響変換器のコストを効果的に低減することが可能となる。
また、圧電素子6,7自体が振動板として作用するため、圧電素子6,7以外の固有振動を考慮する必要がほとんどない。加えて、片持ち支持されている圧電素子6,7の先端6b,7bだけでなく、圧電素子6,7の全面の変位が利用されることになるため、周波数特性上において大きなディップが生じ難い。よって、広い周波数範囲にわたり、より平坦な高音圧特性を得ることが可能となる。
なお、本実施形態では、可撓性薄膜5は、開口部4aの全領域を覆うように設けられていたが、可撓性薄膜5は、フレーム4の圧電素子6,7との間の隙間を少なくとも覆うように設けられればよい。すなわち、圧電素子6,7の周縁部が可撓性薄膜5に連結されていてもよく、圧電素子6,7の一方主面の全領域を上記実施形態のように可撓性薄膜5に貼り合わせる必要は必ずしもない。
また、圧電素子6,7は2層に限らず、3層、4層など多数の圧電層から構成されてもよい。
図2(a)は、本実施形態の電気音響変換器1の変形例を説明するための平面図である。この変形例の電気音響変換器12では、圧電素子6A,7Aが、上底と上底より辺が長い下底とを有する台形の圧電セラミック板を用いて構成されている。すなわち、下底側において、フレーム4に圧電素子6A,7Aが支持されており、上底側が先端部となる圧電素子6Aの上底と、圧電素子7Aの上底とがギャップAを隔てて対向されている。その他の点は、電気音響変換器12は、電気音響変換器1と同様に構成されている。
上記のように、圧電素子6A,7Aの先端側が、下底より幅方向寸法が小さい上底とされている。従って、圧電素子6A,7Aは、先端側である上底側がフレーム4とのギャップが広くなり自由にかつ大きく変位し得る。従って、電気音響変換器12は、電気音響変換器1よりも大きな音圧を容易に得ることができる。
図2(b)は、電気音響変換器1のさらに他の変形例を示す平面図である。この変形例の電気音響変換器13では、フレーム4に設けられている開口部4bの形状が、図1(b)に示した開口部4aと異なっていることを除いては、電気音響変換器1と同様に構成されている。開口部4bは、図2(b)に示されているように、圧電素子6,7の先端6b,7b側に至るにつれて、その幅方向寸法が大きくされている。ここで開口部4bの幅方向寸法とは、圧電素子6,7のフレーム4に支持されている部分の長さ方向寸法、すなわち図2(b)の矢印Xで示す方向の寸法をいうものとする。ギャップAが設けられている部分において、上記開口部4bの上記幅方向寸法が最も大きくされており、言い換えれば圧電素子6,7のフレーム4に支持されている側の端部から、先端6b,7b側にいくにつれて、開口部4bの幅方向寸法が大きくされている。よって、圧電素子6,7のフレーム4に連結されている部分の長さ、すなわち上記X方向に沿う幅方向寸法が、ギャップAにおける開口部4bの上記幅方向寸法よりも小さくされている。従って、圧電素子6,7の先端6b,7bが、上記電気音響変換器1の場合に比べて、より一層速やかに変位し得る。そのため、電気音響変換器12と同様に、電気音響変換器13においても、図1に示した電気音響変換器1よりも大きな音圧を容易に得ることができる。
大きな音圧を得ることができるという点において、電気音響変換器12,13は、第1の実施形態の電気音響変換器1よりも好ましい。しかしながら、製造工程の簡略化及びフレーム4の機械的強度等を考慮すると、電気音響変換器12,13に比べて、電気音響変換器1が望ましい。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電気音響変換器を示す平面図である。電気音響変換器21では、フレーム4の開口部4aにおいて、圧電素子6,7がギャップAを隔てて対向されている。そして、このギャップAにおいて、可撓性薄膜5よりも剛性が高い剛体板22が可撓性薄膜5に貼り合わされている。剛体板22を構成する材料については、可撓性薄膜5よりも剛性が高い適宜の材料を用いることができる。本実施形態では、上記剛体板22は、圧電素子6,7と同等の厚みの繊維強化プラスチックにより構成されている。なお、剛体板22の厚みは、圧電素子6,7と同等の厚みとする必要は必ずしもない。もっとも、剛体板22はできるだけ軽く、かつ剛性が高い材料で形成されていることが望ましい。
剛体板22も可撓性薄膜5に貼り合わされているので、圧電素子6,7が変位した際に、剛体板22は可撓性薄膜5のギャップAに位置されている部分において大きく移動されることになる。可撓性薄膜5のみがギャップAにおいて変位する場合に比べて、可撓性薄膜5上に剛体板22が貼り合わされているので、大きな音圧を得ることができる。これは、最大変位で振動する部分の面積が増加されることによる。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る電気音響変換器を示す平面図である。電気音響変換器31では、フレーム4の開口部4a内に、第1〜第4の圧電素子32〜35が配置されている。開口部4a内には、3個以上の圧電素子を配置してもよい。
上記圧電素子32〜35は、電気音響変換器12で用いられていた圧電素子6A,7Aと同様に略台形の形状を有している。そして、上底側が先端側とされており、下底側においてフレーム4に固定されている。本実施形態においても、開口部4aの全領域を覆うように可撓性薄膜5がフレーム4に固定されている。また、略台形形状の圧電素子32〜35の先端に設けられたギャップ領域Aにおいて、矩形の剛体板30が可撓性薄膜5に貼り合わされている。従って、本実施形態においても、剛体板30の存在により最大変位で振動する面積を増加させることができ、音圧を高めることができる。
加えて、本実施形態では、圧電素子32〜35が設けられており、圧電素子の数が増加されているので、大きく、あるいはより重い剛体板を配置することがでる。従って、それによって、より一層音圧を高めることが可能となる。
図4では、略台形の圧電素子32〜35を配置したが、3以上の圧電素子を配置するにあたり、その平面形状は台形に限らず、矩形、三角形等の様々な形状とすることができる。
図5(a)及び(b)は、本発明に係る第4の実施形態に係る電気音響変換器を説明するための正面断面図及び平面図である。
本実施形態の電気音響変換器41では、平面形状が矩形の第1,第2の圧電素子42,43が用いられている。圧電素子42,43は、一方端部42a,43aにおいて、フレーム4に固定されており、先端42b,43bがギャップAを介して対向配置されている。すなわち、圧電素子42,43も、片持ち支持されている。
第1,第2の圧電素子42,43は、平面積が異なっており、圧電素子42の面積が、圧電素子43の面積よりも大きくされている。その他の点については、電気音響変換器41は、電気音響変換器1と同様に構成されている。
圧電素子42の面積が、圧電素子43の面積よりも大きいため、圧電素子42による基本波の共振周波数と、圧電素子43の振動に際しての基本波の共振周波数と異なっている。従って、本実施形態では、広い周波数範囲にわたり、大きな音圧を得ることが可能とされている。
本実施形態において、第1の圧電素子42と第2の圧電素子43の共振周波数が異なるため、広い周波数範囲にわたり大きな音圧が得られるのは、以下の理由による。
図6は、電気音響変換器41のように第1,第2の圧電素子42,43の共振点が異なる場合の音圧−周波数特性を示し、図7は、第1の実施形態のように、第1,第2の圧電素子6,7の共振点が一致している場合の音圧−周波数特性を示す。
図6と図7は、いずれもシミュレーションの結果であり、損失を考慮していないため、共振点におけるピークが鋭く示されているが、実際には、共振点においては、もっと丸みを帯びた波形となる。
いずれにしても、図6では、図7の場合に比べて、矢印Y,Zで示すように、多くの共振点が現れ、それによって、広い周波数範囲にわたり大きな音圧を得られることがわかる。すなわち、電気音響変換器では、共振点付近の音圧が高くなるため、共振点が異なっており、かつ連続していると、広い周波数範囲にわたり、大きな音圧を得ることができる。
なお、図5(a),(b)に示した電気音響変換器41では、第1,第2の圧電素子42,43の面積が異ならされていた。これに対し、図8に示す電気音響変換器51では、圧電素子52と、第2の圧電素子53の厚みが異ならされている。すなわち、図8に断面図で示されているように、第1の圧電素子52を構成している圧電セラミック板の厚みが、第2の圧電素子53を構成している圧電セラミック板の厚みよりも厚くされている。従って、電気音響変換器41の場合と同様に、電気音響変換器51においても、第1の圧電素子52の振動の基本波の共振周波数と、第2の圧電素子53の振動に際しての基本波の共振周波数とが異なっている。よって、電気音響変換器51においても、より広い周波数範囲にわたり、大きな音圧を得ることができる。
また、上記電気音響変換器1,21,31,41,51を製造する方法は特に限定されないが、好ましくは、1枚の圧電素子に固定した後、該圧電素子を切断する方法が好適に用いられる。すなわち、図9に平面図で示すように、矩形の圧電素子61をフレーム4に固定した後、圧電素子61を破線B,Cの部分でレーザー等により切断することにより、あるいはダイサーなどを用いて機械的に切断することにより、図1に示した圧電素子6,7を形成することができる。この場合、可撓性薄膜5は、初めフレーム4に固定されている。従って、上記切断は、可撓性薄膜5を切断しないように行えばよい。
上記のように、1枚の圧電素子61を固定した後に切断する方法では、組み立てに際し、1個の電気音響変換器1を得るにあたり、1枚の圧電素子のみを用意すればよい。従って、工程の簡略化を図ることができる。また、フレーム4に固定した後に圧電素子をカットする場合、2枚の圧電素子を最初から用意する場合に比べて、圧電素子6,7間のずれが生じ難い。従って、複数枚の圧電素子を有する電気音響変換器の精度を高めることが可能となる。
また、本発明に係る電気音響変換器に関しては、フレームと圧電素子を、圧電セラミック板を用いて一体的に構成してもよい。図10(a)及び(b)は、このような一体化された構造における電極構造を示す平面図及び内部電極を示す平面断面図である。
図10(a)に示すように、1枚のセラミック板71には、H状の切欠71aが形成され、それによって、第1,第2の圧電素子部分72,73が設けられている。切欠71aの形成は、レーザー、あるいはダイシング等の適宜の方法により行われ得る。なお、上記切欠71aの形成に先立ち、セラミック板71の上面に、電極膜74を形成しておく。電極膜74は、圧電セラミック板71の一方の側面71b側の端縁から他方の側面71c側に向って延ばされているが、上記他方の側面71cには至っていない。
また、圧電セラミック板71の下面にも、電極膜74と同様に電極膜を形成しておけばよい。そして、圧電セラミック板71内には、図10(b)に示す内部電極75を予め形成しておく。内部電極75は、側面71cから他方の側面71b側に向って延ばされているが、側面71bには至っていない。
なお、外部との電気的接続に際しては、電極膜74と、下面に設けられた電極膜とを、側面71b側で電気的に接続し、該側面71b側で外部と接続すればよい。また、内部電極75については、他方の側面71c側に外部電極を形成し、上記外部電極を外部と接続すればよい。従って、例えば第1または第2の圧電素子の一方の圧電素子の支持部側において、外部との電気的接続部分を集約でき、リード線等の配置を簡略化することができる。
すなわち、電気音響変換器1では、第1,第2の圧電素子6,7のそれぞれの側において、外部と電気的に接続しなければならなかったのに対し、本実施形態によれば電気的接続構造の簡略化及び設計の自由度を高めることができる。

Claims (9)

  1. 開口部を有するフレームと、
    前記フレームの開口部内に配置されており、かつ一方端部が前記フレームに連結されている複数枚の圧電素子と、
    前記フレームの開口部において、前記フレームと前記複数の圧電素子との間の隙間を少なくとも覆うように前記フレーム及び複数の圧電素子に貼り付けられた可撓性薄膜とを備え、
    前記複数の圧電素子の一方端部とは反対側の端部が自由端とされており、複数の圧電素子の自由端が前記フレームの開口部内においてギャップを隔てて対向配置されていることを特徴とする、電気音響変換器。
  2. 前記可撓性薄膜が、前記フレームの開口部の全領域を覆うように配置されており、複数の圧電素子が、各圧電素子の一方主面の全領域において可撓性薄膜に接着されている、請求項1に記載の電気音響変換器。
  3. 前記複数の圧電素子が、上底と下底とを有する略台形の形状を有し、前記フレームに連結されている一方端部が下底である、請求項1または2に記載の電気音響変換器。
  4. 前記複数の圧電素子が前記フレームに連結されている前記一方端部側において、該圧電素子がフレームに連結されている部分の長さが、前記複数の圧電素子が対向しているギャップにおいて、前記開口部の前記長さと同じ方向の前記開口部寸法よりも小さくされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
  5. 前記複数の圧電素子が対向しているギャップにおいて、前記可撓性薄膜に貼り合わされており、かつ可撓性薄膜よりも剛性が高い剛体板をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
  6. 前記複数枚の圧電素子において、少なくとも1枚の圧電素子の基本モードの共振周波数が、他の圧電素子の基本モードの共振周波数と異なっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
  7. 少なくとも1枚の前記圧電素子の平面形状が、残りの圧電素子の平面形状と異なっている、請求項6に記載の電気音響変換器。
  8. 少なくとも1枚の圧電素子の厚みが、残りの圧電素子の厚みと異なっている、請求項6または7に記載の電気音響変換器。
  9. 前記フレーム及び複数枚の圧電素子が、1枚の圧電セラミック板を用いて一体的に構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気音響変換器。
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