JP4765650B2 - 静電荷像現像用トナー、その製造方法、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents

静電荷像現像用トナー、その製造方法、画像形成方法及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は静電荷像現像用トナーに関し、特にコア.シェル構造を有する静電荷像現像用トナー、その製造方法、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
近年、複写機やプリンタなどの電子写真方式による画像形成技術の分野においても、デジタル技術が導入され、高画質化が進む中で、1200dpi(dpiとは、2.54cmあたりのドット数)レベルの微小なドット画像を、正確に画像再現する技術が必要になってきた。
このような微小画像を正確に再現する有力手段としてトナーの小粒径化が検討され、製造工程において物性を制御することが可能な、いわゆる重合トナーが注目されてきている。又、近年の地球環境への配慮という観点から、画像形成装置の電力消費量を低減させる技術が検討され、この課題を解消する手段としても重合トナーが注目されている。その一例として、低融点のワックスを含有させた重合トナーにより、従来よりも低い温度で定着画像を形成することが可能な技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
一方、低温定着が可能なトナーは熱的安定性に難点を有する傾向があり、保管時や輸送時にトナー同士がくっついてしまうブロック化などの現象を発生することがあった。また、安定した画像形成を行う上で、着色剤やワックスなどの成分がトナー表面より露出しないようにトナーを設計する必要もあった。
このようなニーズから、着色剤、ワックスを低軟化点の樹脂中に含有させてなるコア粒子表面に樹脂を被覆した、いわゆるコア・シェル構造のトナーが提案されるようになった(例えば、特許文献2参照)。
さらに、コア・シェル構造のトナーを作製する技術としては、上記の改良技術が種々開発され、又、粒子の作製方法として、例えば、樹脂微粒子と着色剤とを会合融着して作製したコア粒子の表面に樹脂粒子を融着させてコア・シェル構造を形成する技術も開発されている(例えば、特許文献3〜5参照)。
特開2001−42564号公報 特開2002−116574号公報 国際公開第98/25185号パンフレット 特開2004−191618号公報 特開2004−271638号公報
ところで、コア・シェル構造のトナーを安定に保管、輸送するには、高温環境におかれても軟化点の低いコアが外に流出しないように、シェルを設計する必要がある。具体的には、シェルをある程度厚くすることになるが、シェルが厚い分、定着時におけるコアの流出性が阻害され、低温での定着が困難になる傾向があった。
また、シェルに厚みムラのある従来のトナーでは、帯電立ち上がり不良に起因すると推測されるトナー飛散やプリント画像上での画像カスレが見られ、安定した画像形成を阻害させていた。
このように、コア・シェル構造のトナーにおいては、そのシェルの厚みおよび厚みの均一性を制御しながらトナー設計を行う技術が求められていた。さらに、作製したトナーのシェルの厚みを実際に確認する技術があれば、これらの課題も解消できるものと思われるが、シェルの厚みを実際に測定し、測定結果を反映させながらコア・シェル構造のトナーを設計する技術もこれまで存在していなかった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、低温定着性と耐熱保存性とを両立するとともに、安定した帯電性を有するコア・シェル構造のトナーを提供することを目的とする。
本発明の発明者は、鋭意検討した結果、少なくとも樹脂および着色剤を含有してなるコア粒子表面に、シェル粒子を付着させたコア・シェル構造を有するトナーにおいて、薄くかつ膜厚ムラのない均一なシェル層を形成することにより、低Tgのコア粒子であっても低温定着性と耐熱保存性の両立が成されるばかりでなく、帯電安定性を確保できることを見いだし、さらに検討を進めた結果、本発明の構成に至った。
即ち、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
1.
水系媒体中で作製した少なくとも樹脂と着色剤を含有するコア粒子の分散液中に、シェル用樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用樹脂粒子を凝集、融着させ熱エネルギーにより熟成する静電荷像現像用トナーの製造方法において、
シェルの8点平均膜厚が100nm乃至300nmであり、かつ、該シェルの最大膜厚をHmax、最小膜厚をHminとしたときに、Hmaxは190〜280nm、Hminは130〜230nmであり、Hmax/Hminが1.50未満とし、かつ、下記(1)〜(3)の要件を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
(1)前記コア粒子を構成する樹脂のガラス転移温度をTg1、前記シェルを構成する樹脂のガラス転移温度をTg2とする時に、
Tg2−Tg1≧20℃、10℃≦Tg1≦30℃
(2)前記コア粒子を構成する樹脂の溶解度パラメータをSP1、前記シェルを構成する樹脂の溶解度パラメータをSP2としたときに、
SP1とSP2の差が0.2乃至1.0
(3)円形度が0.900以上のコア粒子を作製する工程と、該コア粒子表面に樹脂微粒子を添加して、シェルを形成する工程を経て、コア・シェル構造のトナーとする。

前記Hmax/Hminが1.05〜1.40であることを特徴とする前記に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。

前記1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法を用いて作製したことを特徴とする静電荷像現像用トナー。

前記に記載の静電荷像現像用トナーを用い、プリント速度が400mm/sec以上であることを特徴とする画像形成方法。

前記に記載の静電荷像現像用トナーを用い、感光体と、少なくとも帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、及び、感光体クリーニング手段を有することを特徴とする画像形成装置。
なお本発明でいうトナーのシェルとは、コアの外側に存在し、コア粒子の表面の9割以上を被覆している部分をいう。(シェル中には結着樹脂の他に必要に応じ各種添加剤を含むことはあっても、着色剤(離型剤)は含有していない層を指す。)
尚、本発明に係るトナーの体積基準平均メディアン径は2.5〜7.0μmを有するものが好ましい。
本発明において均一なシェル層を形成し、本発明の構成を達成する手段としては、詳しくは後述するが下記のごときものがある。
(1) コアとシェルのTg差およびSP値差を広げる
(2) コア粒子の円形性(後段では円形度として表示)を高めた後シェル化する
(3) シェル化温度の適正化(コアTg+20℃<シェル化温度<コアTsp)を行う(Tspとは軟化点である)。
尚、上記手段により、薄くかつ均一なシェル層を形成できる理由は明らかではないが、おそらく(1)については、コアとシェルが相溶しにくく相分離しているためと推測される。また、(2)については高円形度ではコア粒子の比表面積は小さく、かつ、表面性が均一であり、従って、シェルを形成する樹脂微粒子がコア表面に均一に付着し、結果的に少量のシェルにより効率的にコア表面の被覆ができるためだと推測される。また、(3)についてはコア粒子表面にシェルを付着させる温度がコアのTspよりも高いと、シェル層形成中にコア成分が表層に流出しやすくなるためシェル層を形成しにくくなるためであり、逆にコアTg+20℃よりも低い温度ではシェル粒子のコア表面への付着が起こらないためだと推測される。
本発明により、低温定着性と耐熱保存性の両立を果たすと共に、安定した帯電性を確保することが出来る静電荷像現像用トナーとその製造方法、及び画像形成方法並びに画像形成装置を提供することができる。
〔本発明の技術思想〕
本発明は、少なくとも樹脂と着色剤を含有するコアの表面にシェルを有するコア・シェル構造のトナーに関し、コア・シェル構造のシェル層を薄く、かつ、均一に形成することにより、低温定着性と耐熱保存性を両立し、さらに、安定した帯電性を有するトナーを提供することを可能にしている。
すなわち、シェルの平均膜厚を100〜300nmとするとともに、シェルの最大膜厚と最小膜厚の比(Hmax/Hmin)を1.50未満とすることにより、本発明の効果を奏するコア・シェル構造のトナーが得られることを見出したのである。さらに、本発明では、シェルの膜厚を実際に測定して特定することを可能にしたものである。このように、シェル層の厚みを実際に測定することにより、均一な膜厚のシェルを有するトナーを見出したのは本発明が初めてであると言える。
たとえば、前述の特許文献3には、具体的なシェルの膜厚値が開示されているが、これはトナー作製時に添加されたシェル成分の質量から計算されたものである。そして、この文献は、シェルの膜厚を具体的な手段で測定することも、均一な厚みを有するシェルを形成することを示唆する記載の見られないものであった。
〔均一なシェル層の形成方法〕
均一なシェルを形成する具体的な方法、すなわち、シェルの形成を制御する因子としては、以下のものが挙げられる。これらの因子については後で詳細に説明する。すなわち、
(1)コア及びシェルを構成する樹脂のガラス転移温度と溶解度パラメータ
(2)コア粒子の円形度
(3)シェル化を行う温度条件に着目する
このうち、コア及びシェルを構成する樹脂のガラス転移温度と溶解度パラメータについては、本発明に係るトナーでは、コアとシェルがお互いに相溶しにくい構造を形成することが好ましい。すなわち、コア領域を形成する樹脂とシェル領域を形成する樹脂を選択することにより、コア領域とシェル領域とが相分離した構造を有するトナーが得られ、シェルの膜厚が薄くてもコア領域がトナー表面に露出することのない耐熱保存性に優れたトナーの作製が可能になる。
また、コア粒子の円形度については、例えば、コア粒子が高円形度を有するものであれば、比表面積が小さく、かつ、表面性が均一になるので、シェルを構成する樹脂微粒子をコア表面に均一に付着させ易くなり、均一な厚みを有するトナーを作製し易くなる。
さらに、シェル化を行う温度条件については、例えば、シェル化実施の温度環境をコア粒子を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1よりも高く、かつ、コア粒子を構成する樹脂の軟化点Tspよりも低く設定して、シェル用樹脂微粒子をコア表面に確実に付着させる。すなわち、コア表面へのシェル用樹脂微粒子の付着が確実に行える温度環境にすることにより、コア表面において樹脂微粒子が均一に付着、堆積し、所望の厚みを有するシェル層がコア表面に均一に形成される。
尚、上記国際公開第98/25185号パンフレットには、シエルの膜厚を0.001〜1.0μm(1〜1000nm)にするとの記載はあるものの、実施例を参照する限り31μm以上のもののみであり、シェル膜厚についてはその質量から算出しており、膜厚の均一性に関しては全く不明であり、注目もしていない。
本発明の目的を達成するには、薄くかつ膜厚ムラのない均一なシェル層を形成することが重要であり、特に帯電安定性を確保するためには、全く均一な膜厚を有する層を形成するのが好ましいと考えられる。しかし、これを達成することは極めて困難であり、特に工業的に発明を実施する場合に問題が大きい。
この度の発明者の詳細な検討により、まずシェルの膜厚は、低Tgという特性を持ったコア粒子の耐熱依存性と低温定着性の両面の観点より、100〜300nmとする必要があり、本発明の如く平均膜厚100〜300nmという薄膜なシェルを有するトナーにおいて、シェルの最大膜厚Hmaxと最小膜厚Hminの比(Hmax/Hmin)が、1.50以上では帯電安定性の低下が著しいが、1.50未満にすれば帯電安定性は非常に改善し、本発明の目的を達成できることがわかった。
〔帯電安定性が確保できる理由について〕
本発明に係るトナーは、低温定着性と耐熱保存性とを両立するとともに、安定した帯電性を確保することも可能にしている。すなわち、本発明に係るトナーを用いて画像形成を行ったときに、機内でのトナー飛散やプリント画像上での画像カスレの発生が解消され、良好な帯電立ち上がり性能が発現されることを見出した。このように安定した帯電性が発現されるようになった理由は、おそらく、コア・シェル構造におけるシェルの厚みを本発明で特定するレベルに揃えることで、シェルの厚みにムラがなくなりコアへの帯電性の寄与が均一化されたため、トナー粒子表面における電荷分布が均一化して帯電性が確保されるようになったものと推測される。
以下、本発明における物性値の定義、測定方法について記載し、トナーの作製方法、使用されるトナー用素材、及び作製されたトナーを用いた画像形成方法、画像形成装置等について更に説明する。
〔シェルの8点平均膜厚の測定方法〕
本発明トナーにおけるシェルの膜厚は、トナーの断面層を透過型電子顕微鏡により撮影した写真より計測されるものである。透過型電子顕微鏡としては、通常当業者の間でよく知られた機種で十分観察され、例えば、LEM−2000型(トプコン社製)、JEM−2000FX(日本電子社製)等が用いられる。
具体的には、まずトナー粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分分散させた後、包埋し、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後加圧成形する。必要により得られたブロックを四三酸化ルテニウム、または、四三酸化オスミウムを併用し染色を施した後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出し透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、トナー1個の断面が視野に入る倍率(約10000倍)にて写真撮影する。
次に、上記写真において、着色剤やワックス等の存在領域を目視観察により確認しつつ、コア粒子とシェルとの界面となる境界線を明らかにする。
次に、図1に示す如く、トナー粒子の重心Cから45°間隔で表面に向かって直線を引き、各直線がコア粒子表面と交わる点をA、シェル層表面と交わる点をBとし、AB間の距離(即ち、シェルの厚さ)を8点測定し、その8点の平均値をトナー粒子1個のシェルの膜厚とする。
また、トナー粒子1個中の最大シェル膜厚(Hmax)と、最小シェル膜厚(Hmin)を抽出し、(Hmax/Hmin)を算出する。本発明における(Hmax/Hmin)とは、トナー粒子100個における(Hmax/Hmin)の平均値である。
本発明の8点平均膜厚とは、トナー粒子100個について8点平均膜厚の平均値として示されるものである。
なお、シェル層の最小厚さが限りなく0に近い場合には、その膜厚を10nmとして測定した。
また、トナー粒子100個において80個数%以上のトナー粒子の(Hmax/Hmin)が1.50未満であるが、好ましくは1.05〜1.50、より好ましくは1.05〜1.40である。
〔均一な層厚のシェルを形成する方法〕
前記した如く、低Tgコアに対し均一なシェル層を形成するためには以下の3手段が挙げられる。以下、コアを構成する樹脂を単にコアという如く「を構成する樹脂」を略す。
(1)コアとシェルのTg差およびSP値差を広げる
コアのガラス転移温度をTg1、シェルのガラス転移温度をTg2とするとき、Tg2−Tg1≧20℃の範囲とすることが好ましい、さらに好ましいくはTg2−Tg1≧30℃であるのがよい。
又、コアの溶解性パラメーターの値をSP1、シェルの溶解性パラメーターの値をSP2とするとき、SP1とSP2との差(ΔSP)が0.2〜1.0が好ましい、さらに好ましくは0.25〜0.95がよい。
(2)コア粒子の円形性を高めた後シェル化する
コア粒子の円形度を0.900以上に高めた後シェル化を開始する。
(3)シェル化温度の適正化を図る
コアTg+20℃<シェル化温度<コアTspの範囲内でシェル化を実施することが好ましい。
以下、上記(1)〜(3)についてより詳しく説明する。
〔ガラス転移温度Tg〕
本発明のトナーにおいて、樹脂Aのガラス転移温度をTg1、樹脂Bのガラス転移温度をTg2とするとき、Tg2−Tg1≧20℃、10℃≦Tg1≦30℃の条件になっていることが好ましい。
コア部を形成する樹脂A及びシェル層を形成する樹脂Bのガラス転移温度は、共重合体を形成する重合性単量体の種類、量及び分子量を適宜選択することにより、コントロールすることが可能である。ガラス転移温度を調整する方法は、例えばシェル層を構成する樹脂Bとコア部を構成する樹脂Aの重合単量体の種類を後述する化合物から選定し、両者のガラス転移温度を上記の範囲になるように比率と分子量を調整することで可能となる。但し、例示化合物は、達成手段を明らかに示すものであって、これらに限定されるものではない。
ガラス転移温度の算出方法として、本発明では以下のような理論ガラス転移温度を算出してもよい。ここで理論ガラス転移温度とは、共重合体樹脂を構成するそれぞれの成分が、ホモポリマーを形成した場合のガラス転移温度にそれぞれの組成質量分率を乗じ、即ち加重平均して算出したものである。即ち、理論ガラス転移温度Tg(絶対温度Tg’とする)は共重合体樹脂を構成する成分のホモポリマーのガラス転移温度を用いて下記式(1)から算出される。
式(1)
1/Tg’=W1/T1+W2/T2+・・・+Wn/Tn
(式中、W1、W2、・・・Wnは共重合体樹脂を構成する全重合性単量体に対する各重合性単量体の質量分率、T1、T2、・・・Tnは各重合性単量体を用いて形成されるホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)を示す。)
ガラス転移温度は、DSC−7示差走査カロリーメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いて行うことが出来る。
測定手順として、トナー4.5〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。
リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0〜
200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−Cool−Heatの温度制御で行い、その2nd Heatにおけるデータをもとに解析を行った。
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点として示す。
〔溶解性パラメーター値〕
本発明では、トナー中のシェル層を形成する樹脂は、コア部の樹脂と相溶せず、しかも、シェル層を形成する樹脂はコア部と十分な接着性を有している。
シェル層を形成する樹脂がコア部との間で非相溶性を発現させるには、シェル層を形成する樹脂の溶解性パラメーター値(以下、SP値という)とコア部を形成する樹脂の溶解度パラメーターの値の差を適切な範囲にすることで実現される。
溶解度パラメーター値(SP値)は物質の凝集エネルギーの大きさを表す数値で、Ferorsによって提案された方法「Polym.Eng.Sci.,Vol14,P147(1974)」にしたがって、原子または原子団の蒸発エネルギー及びモル体積をそれぞれΔer、Δviとすると、結着樹脂の溶解度パラメータσは、下記式(2)により算出される。
式(2)
σ=(ΣΔer/ΣΔvi)1/2
又、各ビニル系共重合体の溶解度パラメーター値は、各成分の溶解度パラメーター値とモル比の積により算出されるものである。例えば、共重合体樹脂をX,Yの2種類の単量体より構成されるものと仮定したとき、各単量体の質量組成比をx,y(質量%)、分子量をMx、My、溶解度パラメーター値をSPx、SPyとすると、各単量体比はX/Mx(モル%)、y/My(モル%)となる。ここで、共重合体樹脂のモル比をCとすると、C=x/Mx+y/Myと表され、この共重合体樹脂の溶解度パラメーター値SPは下記式(3)のようになる。
式(3)
SP=〔(x×SPx/Mx)+(y×Spy/My)〕×1/C
尚、溶解度パラメーター値は、ビニル系共重合体を構成する単量体の組成比を変えることにより制御することが可能であり、例えばスチレンとメタクリル酸メチルを用いて形成された共重合体樹脂では、スチレンの組成比を減少させ、メタクリル酸メチルの組成比を増大させることにより溶解度パラメーターの値が低下する傾向を有していることが確認されている。
又、高分子材料の溶解度パラメータ−の概要については、独立行政法人「物質・材料研究機構」提供のデーターベースPolyInfo(http://polymer.nims.go.jp)に記載の溶解度パラメーターの項目(http://polymer.nims.go.jp/guide/guide/p5110.html)を参照するとよい。
本発明では、コア部と前記シェル層に含有される樹脂の溶解度パラメーター値は、シェル層とコア部との差が0.1以上であるときに安定した非相溶性が発現され、好ましくは0.2〜0.8の範囲がより好ましい。
〔トナー用コア粒子の円形度の測定方法〕
本発明の円形度は「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用いて測定した値である。具体的には、コア粒子を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散を1分行い分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式にて定義された値である。
円形度=(粒子投影像と同じ面積を有する円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
又、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、全粒子数でわり算して算出した値である。
本発明では、コア粒子形成後の円形度は高いほど好ましく、0.900以上がよい。円形度が0.900以上にするとそれ未満のものより、シェル膜厚の均一性が高いものを造り易くなる。しかし、円形度を極めて高くすると工業生産性等は低下するので、他の条件を勘案すれば、コア粒子形成後の円形度が0.900〜0.930の範囲がより好ましい。
本発明は、シェル層の厚さによって生じる離型剤の溶出性の違いをなくすというものであるが、円形度を0.900〜0.930の範囲とすることにより、従来よりも低い温度で定着を行ったときでも耐オフセット性がよく、巻き付きの発生を回避することが可能である。さらに、コア中の離型剤をムラなく溶出させることができるので、安定した定着処理を実現させている。
〔軟化点Tsp〕
本発明のトナーの軟化点の測定方法について説明する。
20±1℃、50±5%RH環境下において、トナー1.1gをシャーレに入れて平らにならし、12時間以上放置した後、成型器SSP−A(島津製作所製)にて3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円中型の成型サンプルを作製する。
24±5℃、50±20%RH環境下において、フローテスタCFT−500D(島津製作所製)により、上記成型サンプルを荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの孔に(1mm×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、トナーの軟化点とした。
〔本発明で用いられるトナー素材等〕
(1)結着樹脂
コア部を形成する樹脂Aおよびシェル層を形成する樹脂Bは、スチレンーアクリル系共重合樹脂が好ましい。また、コア部を形成する樹脂を作製する単量体には、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の共重合体のガラス転移温度(Tg)を引き下げる重合性単量体を共重合することが好ましい。また、シェル層を形成する樹脂を作製するための単量体には、スチレン、メチルメタクリレート、メタクリル酸等の共重合体のガラス転移温度(Tg)を引き上げる重合性単量体を共重合することが好ましい。
本発明に係るトナーを構成する樹脂についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るトナーのコアやシェルの構成に各々用いられる樹脂としては、下記に記載のような重合性単量体を重合して得られた重合体を用いることが出来る。
本発明に係る樹脂は少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られた重合体を構成成分として含むものであるが、前記重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
(2)着色剤
本発明のトナーに使用する着色剤としてはカーボンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理する事により強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等を用いる事ができる。
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同93、同94、同138、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等を用いる事ができ、これらの混合物も用いる事ができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
着色剤の添加方法としては、樹脂微粒子を凝集剤の添加にて凝集させる段階で添加し重合体を着色する。なお、着色剤は表面をカップリング剤等で処理して使用することができる。
(3)ワックス(離型剤)
本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、従来公知のものが挙げられる。具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
上記トナーの製造方法で使用可能な重合開始剤、連鎖移動剤及び界面活性剤について説明する。
(4)本発明に使用可能なラジカル重合開始剤
本発明に係るトナーを構成するコアやシェルを構成する樹脂は、前述の重合性単量体を重合して生成されるが、本発明に使用可能なラジカル重合開始剤には以下のものがある。具体的には、油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
複合樹脂粒子を構成する樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素およびα−メチルスチレンダイマー等が使用される。
(5)分散安定剤
又、反応系中に重合性単量体等を適度に分散させておくために分散安定剤を使用することも可能である。分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
本発明に用いられる界面活性剤について説明する。
前述のラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
〔静電荷像現像用トナーの製造方法〕
次に、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
本発明に係るトナーは、たとえば、以下のような工程を経て作製されるものである。
(1)離型剤をラジカル重合性単量体に溶解或いは分散する溶解/分散工程
(2)樹脂微粒子の分散液を調製するための重合工程
(3)水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を凝集、融着させてコア粒子(会合粒子)を得る凝集・融着工程
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成して形状を調整する第1の熟成工程
(5)コア粒子分散液中に、シェル用の樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造の着色粒子を形成するシェル化工程
(6)コア・シェル構造の着色粒子を熱エネルギーにより熟成して、コア・シェル構造の着色粒子の形状を調整する第2の熟成工程
(7)冷却された着色粒子分散液から着色粒子を固液分離し、当該着色粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(8)洗浄処理された着色粒子を乾燥する乾燥工程
また、必要に応じて乾燥工程の後に、
(9)乾燥処理された着色粒子に外添剤を添加する工程
を有する場合もある。上記工程については、後で詳述する。
本発明に係るトナーを製造する場合、先ず、樹脂粒子と着色剤粒子とを会合融着させてコアとなる粒子(以下コア粒子という)を作製する。次に、コア粒子分散液中に樹脂粒子を添加して、コア粒子表面にこの樹脂粒子を凝集、融着させることによりコア粒子表面を被覆してコア・シェル構造を有する着色粒子を作製する。このように、本発明に係るトナーは、各種製法で作製されたコア粒子の分散液中に、樹脂粒子を添加してコア粒子に融着させてコア・シェル構造のトナーを作製するものである。
本発明に係るトナーは前述してきたようにシェルの厚みが極めて薄くかつ膜厚が一定していることが特徴であり、シェル形成後は粒径の一定した小粒径で形状の揃ったトナーが好ましい。このような構造と形状を有するトナーを作製するためには、コア粒子は極めて粒径の揃った、均一な形状にしておき、そこにシェル用の樹脂粒子を添加してシェル化を行うことになる。そして、シェル化を行う時に最終的にトナーの形状制御を行って適切な形状を付与させるものであるが、それには粒径が揃った均一な形状を有するコア粒子を作製するのが最も重要である。この様なコア粒子であれば、その表面にシェルを形成する樹脂微粒子が均一に付着し、結果として極めて均一な膜厚を有するトナー粒子を作製することが出来る。
本発明に係るトナーを構成するコア粒子は、樹脂微粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させる製法により作製される。コア粒子の形状は、たとえば、凝集・融着工程の加熱温度、第1の熟成工程の加熱温度と時間を制御することにより制御される。
この中で、第1の熟成工程における時間制御が最も効果的である。熟成工程は、会合粒子の円形度を調整することを目的としていることから、この時間を制御することにより、目的の円形度に到達する。
本発明に係るトナーを構成するコア部は、例えば、樹脂(A)を形成する重合性単量体に離型剤成分を溶解或いは分散させた後、水系媒体中に機械的に微粒分散させ、ミニエマルジョン重合法により重合性単量体を重合させる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを後述する塩析/融着させる方法が好ましく用いられる。重合性単量体中に離型剤成分を溶かすときは、離型剤成分を溶解させて溶かしても溶融して溶かしてもよい。
以下、本発明に係わるトナーの各製造工程について説明する。
(1)溶解/分散工程
この工程では、ラジカル重合性単量体に離型剤化合物を溶解させて、離型剤化合物を混合したラジカル重合性単量体溶液を調製する工程である。
(2)重合工程
この重合工程の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、ワックスを溶解或いは分散含有したラジカル重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性のラジカル重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。尚、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。このような重合工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この重合工程により、ワックスと結着樹脂とを含有する樹脂微粒子が得られる。かかる樹脂微粒子は、着色された微粒子であってもよく、着色されていない微粒子であってもよい。着色された樹脂微粒子は、着色剤を含有する単量体組成物を重合処理することにより得られる。又、着色されていない樹脂微粒子を使用する場合には、後述する凝集・融着工程において、樹脂微粒子の分散液に、着色剤微粒子の分散液を添加し、樹脂微粒子と着色剤微粒子とを融着させることで着色粒子とすることができる。
(3)凝集・融着工程
前記融着工程における凝集、融着の方法としては、重合工程により得られた樹脂微粒子(着色又は非着色の樹脂微粒子)を用いた塩析/融着法が好ましい。また、当該凝集・融着工程においては、樹脂微粒子や着色剤微粒子とともに、離型剤微粒子や荷電制御剤などの内添剤微粒子を凝集、融着させることができる。
なお、ここでいう「塩析/融着」とは、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱を継続して行うことをいう。
前記凝集・融着工程における「水系媒体」とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
着色剤微粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。又、使用される界面活性剤としては、前述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。尚、着色剤(微粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分散液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
好ましい凝集、融着方法である塩析/融着法は、樹脂微粒子と着色剤微粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩及び3価の塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、且つ前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。
凝集、融着を塩析/融着で行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由として明確では無いが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。また、塩析剤を添加する温度としては少なくとも樹脂微粒子のガラス転移温度以下であることが必要である。この理由としては、塩析剤を添加する温度が樹脂微粒子のガラス転移温度以上であると樹脂微粒子の塩析/融着は速やかに進行するものの、粒径の制御を行うことができず、大粒径の粒子が発生したりする問題が発生する。この添加温度の範囲としては樹脂のガラス転移温度以下であればよいが、一般的には5〜55℃、好ましくは10〜45℃である。
また、塩析剤を樹脂微粒子のガラス転移温度以下で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、樹脂微粒子のガラス転移温度以上であって、かつ、前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱する。この昇温までの時間としては1時間未満が好ましい。更に、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、0.25℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確では無いが、瞬時に温度を上げると塩析が急激に進行するため、粒径制御がやりにくいという問題があり、5℃/分以下が好ましい。この融着工程により、樹脂微粒子及び任意の微粒子が塩析/融着されてなる会合粒子(コア粒子)の分散液が得られる。
(4)第1の熟成工程
そして、本発明では、凝集・融着工程の加熱温度や特に第1の熟成工程の加熱温度と時間の制御することにより、粒径が一定で分布が狭く形成したコア粒子表面が平滑だが均一な形状を有するものになるように制御する。具体的には、凝集・融着工程で加熱温度を低めにして樹脂粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、第1の熟成工程で加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてコア粒子の表面が均一な形状のものに制御する。
(5)シェル化工程
シェル化工程では、コア粒子分散液中にシェル用の樹脂粒子分散液を添加してコア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を凝集、融着させ、コア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を被覆させて着色粒子を形成する。
具体的には、コア粒子分散液は上記凝集・融着工程及び第1の熟成工程での温度を維持した状態でシェル用樹脂粒子の分散液を添加し、加熱撹拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル用樹脂粒子をコア粒子表面に被覆させて着色粒子を形成する。加熱撹拌時間は、1時間〜7時間が好ましく、3時間〜5時間が特に好ましい。
(6)第2の熟成工程
シェル化により着色粒子が所定の粒径になった段階で塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後もコア粒子に付着させたシェル用樹脂粒子を融着させるために数時間加熱撹拌を継続する。そして、シェル化工程ではコア粒子表面に厚さが100〜300nmのシェルを形成する。このようにして、コア粒子表面に樹脂粒子を固着させてシェルを形成し、丸みを帯び、しかも形状の揃った着色粒子が形成される。
本発明では、第2の熟成工程の時間を長めに設定したり、熟成温度を高めに設定することで着色粒子の形状を真球方向に制御することが可能である。
(7)冷却工程・固液分離・洗浄工程
この工程は、前記着色粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
この固液分離・洗浄工程では、上記の工程で所定温度まで冷却された着色粒子の分散液から当該着色粒子を固液分離する固液分離処理と、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にある着色粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
(8)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたケーキを乾燥処理し、乾燥された着色粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥された着色粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。尚、乾燥処理された着色粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(9)外添処理工程
この工程は、乾燥された着色粒子に必要に応じ外添剤を混合し、トナーを作製する工程である。
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
複合樹脂粒子の重量平均粒径(分散粒子径)は、10〜1000nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは30〜300nmの範囲とされる。
この重量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定された値である。
〔本発明に係わる画像形成方法及び画像形成装置〕
本発明に係るトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよいが、二成分現像剤として特に好ましく用いられる。
次に、本発明に係るトナーが使用可能な画像形成方法について説明する。本発明に係るトナーは、たとえば、プリント速度が400mm/sec(A4用紙に換算して85枚/分の出力性能)レベルの高速の画像形成装置に使用される。具体的には、短時間で大量の文書をオンデマンドに作成ことが可能なプリンタなどが挙げられる。また、本発明では、定着ローラの温度を150℃以下、好ましくは130℃以下の温度にする画像形成方法に適用することも可能である。
これは、本発明に係るトナーがその表面を覆うシェルがうすいものでありながら十分な耐久性を有していることと、シェルがうすい分短時間で定着が行えるようになっていることによるとおもわれる。
図2は、本発明に係るトナーを使用することが可能な画像形成装置の一例で、その断面図を示すものである。
図2の画像形成装置は、転写工程後に感光体上に残存したトナーをクリーニング手段により回収し、回収したトナーを現像装置に再度供給してリサイクル使用するトナーリサイクル手段に相当する回収トナー搬送路を有する画像形成装置である。
図2中、10は静電潜像担持体である感光体ドラムで、例えば、有機感光体(OPC感光体)を導電性のドラム上に塗布したもので接地されて時計方向に駆動回転する。11はコロナ放電によって感光体ドラム10周面に負の一様な帯電を行いVHの電位を与えるスコロトロン帯電器である。スコロトロン帯電器11による帯電を行う前に、前プリントまでの感光体の履歴を除去するために感光体周面を除電する必要があり、帯電前露光手段に該当するPCL11Aで感光体周面を露光、除電する。
スコロトロン帯電器11による感光体ドラム10への一様帯電ののち、像露光手段に該当するレーザ書込み装置12により画像信号に基づいた像露光が行われる。この像露光はコンピュータ、または画像読取り装置から入力される画像信号を画像信号処理部によって処理を行ったのちレーザ書込み装置12に入力して像露光を行い、感光体ドラム10上に静電潜像を形成する。
レーザ書込み装置12は、図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転多面鏡12a、fθレンズ12b等を経て複数の反射鏡12dにより主走査を行うもので、感光体ドラム10の回転により副走査が行われて静電潜像が形成される。本実施例では、画像部に対して上記画像信号に基づいて露光を行い、露光部が電位の絶対値が低いVLになる反転潜像を形成する。
感光体ドラム10周縁には、負に帯電した導電性の本発明に係るトナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を内蔵した現像手段に該当する現像装置14が設けられる。現像装置14では、内蔵された磁石体により現像剤が保持され、回転する現像スリーブにより反転現像が行われ、感光体ドラム10上にトナー画像が形成される。さらに、感光体ドラム10上に形成されたトナー画像は、転写手段に該当する転写ローラ16aにより、転写材P上に転写される。
次いで、トナー画像が転写された転写材Pは、わずかの間隙をもって配置された尖頭電極16cにより除電され、感光体ドラム10周面より分離して、定着手段に該当する定着装置17に搬送される。定着装置17では、加熱ローラ17aと加圧ローラ17bの加熱・加圧によりトナー像が溶融して転写材P上に固定された後、排出ローラによりトレイ部54に排出される。
なお、転写ローラ16aは転写材Pの通過後より次のトナー像転写時までの間、感光体ドラム10周面より退避離間している。
一方、転写材Pにトナー像を転写した感光体ドラム10は、交流コロナ放電器を用いた除電器19により除電を受けたのち、感光体クリーニング手段に該当するクリーニング装置20で残留トナーの除去が行われる。すなわち、感光体ドラム10に当接したゴム材からなるクリーニングブレード20aにより、周面上の残留トナーはクリーニング装置20内に掻き落とされ、掻き落とされた回収トナーはスクリュー等を内蔵した回収トナー搬送路21により現像装置14に送られる。
クリーニング装置20により残留トナーが除去された感光体ドラム10は、PCL11Aで露光を受けたのち帯電器11により一様帯電を受け、次の画像形成サイクルに入る。
図3は、図2の画像形成装置に使用可能な定着装置17の一例を示す断面図であり、加熱ローラ17aとこれに当接する加圧ローラ17bとを備えている。なお、図3において、Tは転写紙(画像形成支持体)P上に形成されたトナー像である。
加熱ローラ17aは、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層171が芯金172の表面に形成され、線状ヒーターよりなる加熱部材173を内包している。
芯金172は、金属から構成され、その内径は10mm〜70mmとされる。芯金172を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
芯金172の肉厚は0.1mm〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
被覆層171を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。
フッ素樹脂からなる被覆層171の厚みは10μm〜500μmとされ、好ましくは20μm〜400μmである。また、被覆層171を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどが挙げられる。被覆層171を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。また、弾性体からなる被覆層171の厚みは0.1mm〜30mmとされ、好ましくは0.1mm〜20mmとされる。
加熱部材173は、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラ17bは、弾性体からなる被覆層174が芯金175の表面に形成されてなる。被覆層174を構成する弾性体は特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げられ、被覆層174を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。被覆層174を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。また、被覆層220の厚みは0.1mm〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
芯金175を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
加熱ローラ17aと加圧ローラ17bとの当接荷重(総荷重)は、通常40N〜350Nとされ、好ましくは50N〜300N、さらに好ましくは50N〜250Nである。この当接荷重は、加熱ローラ17aの強度(芯金110の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラにあっては、250N以下とすることが好ましい。
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4mm〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
なお、本発明に係る画像形成装置は、加熱ロール方式の定着装置の代わりに誘導加熱方式の定着装置を使用することも可能である。
本発明に使用される転写材Pは、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材或いは転写紙と通常よばれるものである。具体的には薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
以下に実施例により本発明を説明するが、無論本発明はこれらの態様に限定されるものではない。なお、以下の「部」とは「質量部」を表す。
《コア部用樹脂粒子1の調製》
下記のように、第1段重合、第2段重合、次いで、第3段重合を行い、多層構造を有する「コア部用樹脂粒子1」を調製した。
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に下記で示されるアニオン系界面活性剤(構造式1)4部をイオン交換水3040部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
(構造式1) C1021(OCH2CH22SO3Na
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10部をイオン交換水400部に溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン532部、n−ブチルアクリレート200部、メタクリル酸68部、n−オクチルメルカプタン16.4部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い樹脂粒子を調製した。これを「樹脂粒子A1」とする。
第1段重合で調製した「樹脂粒子A1」の重量平均分子量(Mw)は16,500であった。
(2)第2段重合(中間層の形成)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン101.1部、n−ブチルアクリレート62.2部、メタクリル酸12.3部、n−オクチルメルカプタン1.75部からなる単量体混合液に、離型剤として、パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製)93.8部を添加し、90℃に加温して溶解させて単量体溶液を調製した。
一方、アニオン系界面活性剤(構造式1)3部をイオン交換水1560部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、樹脂粒子A1の分散液である「樹脂粒子A1」を固形分換算で32.8部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記ワックスの単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径340nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6部をイオン交換水200部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い樹脂粒子を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子A2」とする。第2段重合で調製した「樹脂粒子A2」のMwは23,000であった。
(3)第3段重合(外層の形成)
上記のようにして得られた「樹脂粒子A2」に、過硫酸カリウム5.45部をイオン交換水220部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン293.8部、n−ブチルアクリレート154.1部、n−オクチルメルカプタン7.08部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、「コア部用樹脂粒子1」を得た。第3段重合で調製した「樹脂粒子A3」のMwは26,800であった。
「コア部用樹脂粒子1」を構成する複合樹脂粒子(樹脂粒子)の質量平均粒径は125nmであった。又、この樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は28.1℃、溶解性パラメーターの値(SP値)は10.09であった。
《コア部用樹脂粒子2の調製》
「コア部用樹脂粒子1」の調製において、第3段重合(外層形成)に用いた、スチレンを271.7部、n−ブチルアクリレート173.8部、メタクリル酸3.5部、n−オクチルメルカプタン7.0部、過硫酸カリウム5.4部をイオン交換水210部に溶解した開始剤溶液に変更した以外は同様にして、「コア部用樹脂粒子2」を調製した。
《コア部用樹脂粒子3の調製》
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器において、スチレン90.8部、n−ブチルアクリレート72.7部、メタクリル酸12.3部の混合液に離型剤としてパラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製)を93.8部添加し、80℃に加温し溶解した。
一方、アニオン系界面活性剤(上記構造式1)2.9部をイオン交換水1340部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。
この界面活性剤溶液を80℃に加熱した後、循環経路を有する機械式分散「クレアミックス」(エムテクニック社製)により、上記重合性単量体溶液を2時間混合分散させ、分散粒子(245nm)を有する乳化粒子を含む乳化液を調製した。
次いで、イオン交換水1460部を添加した後、重合開始剤(過硫酸カリウム)6部をイオン交換水142部に溶解させた開始剤溶液と、n−オクチルメルカプタン1.5部とを添加し、温度を80℃とした後、この系を80℃にて3時間にわたり加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を調製した。これを「樹脂粒子C1」とする。第1段重合で調製した「樹脂粒子C1」のMwは19,600であった。
(2)第2段重合(外層の形成)
上記のようにして得られた「樹脂粒子C1」に、過硫酸カリウム3.8部をイオン交換水148部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300.9部、n−ブチルアクリレート146.9部、メタクリル酸3部、n−オクチルメルカプタン4.93部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより第2段重合(外層の形成)を行った後、28℃まで冷却し、「コア部用樹脂粒子3」を得た。
なお、第2段重合で外層形成に用いられた重合体のMwは34,800であった。「コア部用樹脂粒子3」を構成する複合樹脂粒子の質量平均粒径は137nmであった。また、この樹脂粒子のTgは25.1℃、SP値は10.12であった。
《コア部用樹脂粒子4の調製》
「コア部用樹脂粒子3」の調製において、第2段重合(外層の形成)に用いた、スチレンを115.7部、n−ブチルアクリレート60.5部、n−オクチルメルカプタン7.0部、過硫酸カリウム5.4部をイオン交換水210部に溶解した開始剤溶液に変更した以外は同様にして、「コア部用樹脂粒子4」を調製した。
《コア部用樹脂粒子5の調製》
「コア部用樹脂粒子3」の調製において、第2段重合(外層の形成)に用いた、スチレンを274.1部、n−ブチルアクリレート168.6部、メタクリル酸5.2部、n−オクチルメルカプタン6.6部、過硫酸カリウム5.1部をイオン交換水197部に溶解した開始剤溶液に変更した以外は同様にして、「コア部用樹脂粒子5」を調製した。
《コア部用樹脂粒子6の調製》
「コア部用樹脂粒子3」の調製において、第2段重合(外層の形成)に用いた、スチレンを202.5部、n−ブチルアクリレート211.5部、メタクリル酸36部、n−オクチルメルカプタン5.2部、過硫酸カリウム5.1部をイオン交換水197部に溶解した開始剤溶液に変更した以外は同様にして、「コア部用樹脂粒子6」を調製した。
《コア部用樹脂粒子7の調製》
「コア部用樹脂粒子3」の調製において、第1段重合(内層の形成)に用いた、スチレンを115.9部、n−ブチルアクリレート47.4部、メタクリル酸12.3部、n−オクチルメルカプタン1.8部、過硫酸カリウム6.1部をイオン交換水237部に溶解した開始剤溶液に変更した以外は同様にして、「コア部用樹脂粒子7」を調製した。
《コア部用樹脂粒子8の調製》
「コア部用樹脂粒子3」の調製において、第2段重合(外層の形成)に用いた、スチレンを193.5部、n−ブチルアクリレート220.5部、メタクリル酸36.0部、n−オクチルメルカプタン5.8部、過硫酸カリウム5.1部をイオン交換水197部に溶解した開始剤溶液に変更した以外は同様にして、「コア部用樹脂粒子9」を調製した。
Figure 0004765650
《シェル層用樹脂粒子》
(シェル層用樹脂粒子1の調製)
上記の「コア部用樹脂粒子1」の第1段重合において、スチレンを624部、2−エチヘキシルアクリレートを120部、メタクリル酸を56部、n−オクチルメルカプタンを16.4部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子1」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子2の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを560部、2−エチヘキシルアクリレートを144部、メタクリル酸を96部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子2」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子3の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを548部、2−エチヘキシルアクリレートを156部、メタクリル酸を96部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子3」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子4の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを585.6部、2−エチヘキシルアクリレートを138.4部、メタクリル酸を56部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子4」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子5の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを140部、メタクリル酸メチルを400部、2−エチルヘキシルメタクリレートを240部、メタクリル酸を20部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子5」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子6の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを144部、メタクリル酸メチルを400部、2−エチルヘキシルメタクリレートを240部、メタクリル酸56部をイタコン酸16部、n−オクチルメルカプタンを8.0部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子6」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子7の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを528部、2−エチルヘキシルアクリレートを208部、メタクリル酸を64部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子7」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子8の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを666.4部、2−エチルヘキシルアクリレートを109.6部、メタクリル酸を24部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子8」を調製した。
(シェル層用樹脂粒子9の調製)
「シェル層用樹脂粒子1」の調製において、スチレンを436.8部、2−エチルヘキシルアクリレートを155.2部、メタクリル酸を208部、n−オクチルメルカプタンを16.5部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、「シェル層用樹脂粒子9」を調製した。
Figure 0004765650
《トナーの作製》
下記のようにして、トナー1〜19を作製した。
〈トナー1の作製〉
(着色剤粒子の分散液1の調製)
上記のアニオン系界面活性剤(1)90部をイオン交換水1600部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)400部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エムテクニック社製)を用いて分散処理を行い、「着色剤粒子分散液1」を調製した。
この「着色剤粒子分散液1」における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱計(ELS−800:大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
(塩析/融着(会合・融着)工程)(コア部の形成)
420.7部(固形分換算)の「コア部用樹脂粒子1」と、イオン交換水900部と、「着色剤粒子分散液1」200部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターカウンターTA−II」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、粒子のメディアン系(D50)が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、更に、熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、「コア部1」を形成した。
「コア部1」の円形度を「FPIA2000」(システックス社製)にて測定したところ0.912であった。
(シェル層の形成(シェリング操作))
次いで、65℃において「シェル層用樹脂粒子1」を96部添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、70℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、「コア部1」の表面に、「シェル層用樹脂粒子1」の粒子を融着させた後、75℃で20分熟成処理を行い、シェル層を形成させた。
ここで、塩化ナトリウム40.2部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェル層を有する「トナー1」を得た。
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計「DSC−200」(セイコー電子社製)を用い、測定する試料10mgを精密に秤量して、これをアルミニウムパンに入れ、リファレンスとしてアルミナをアルミニウムパンに入れたものを用い、昇温速度30℃/minで常温から200℃まで昇温させた後、これを冷却し、昇温速度10℃/minで10〜120℃の間で測定を行い、この昇温過程で20〜90℃の範囲におけるメイン吸熱ピークのショルダー値をガラス転移点とした。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「807−1T型」(日本分光工業社製)を用いて測定した。カラム温度を40℃に保ちながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを1kg/cm2で流し、測定する試料30mgをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、この溶液0.5mgを上記のキャリア溶媒とともに装置内に導入して、ポリスチレン換算により求めた。
〈トナー2〜19の作製〉
「トナー1」の作製において用いた「コア部用樹脂粒子1」、「シェル層用樹脂粒子1」を、表1に記載のコア部用樹脂粒子、表2に記載のシェル層用樹脂粒子に変更し、表3に記載のコア粒子円形度、シェル化温度に変更した以外は同様にして「トナー2〜19」を作製した。
Figure 0004765650
上記で得られた「トナー1〜19」の断面図をTEMにより観察し、1個のトナーを8つに均等割りし、各点におけるシェル層の厚みを計測し平均化した値Dave.を求め、かつ8点の中で最大膜厚Dmaxと最小膜厚Dminの点を抽出し、その比を計算した。以上の作業を100個のトナーにて実施する。
トナーの物性値を下記表4に示す。
Figure 0004765650
《外添処理工程》
上記で調製した「トナー1〜19」に疎水性シリカ(数平均一次粒径=12nm、疎水化度=68)を1質量%および疎水性酸化チタン(数平均一次粒径=20nm、疎水化度=63)を1.2質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して「トナー1〜19」を調製した。なお、得られたトナーの「トナー1〜9」を「実施例1〜9」、「トナー10〜16」を「参考例10〜16」、「トナー17〜19」を「比較例1〜3」とする。
《現像剤の調製》
次いで、上記調製した各トナーに対して、シリコン樹脂を被覆した体積平均粒径50μmのフェライトキャリアを混合し、それぞれトナー濃度が6%の「現像剤1〜19」を調製した。
《評価》
上記で作製した「実施例1〜9」と、「参考例10〜16」、「比較例1〜3」を用いて下記の評価を行った。なお、評価基準の◎と○を合格、×を不合格とする。
〈プリント画像の作成〉
プリント画像は、プリント画像電子写真方式を採用する市販の複合機「Sitios9331」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、線速を280mm(約50枚/分)に、現像ローラーを外径9mmに、定着機を図4の構成をとる定着装置(ベルト180と加熱ローラを用いたタイプ)に変更してプリントを行い、プリント画像を作成した。複合機の機内の状態、プリント画像を下記項目について評価を行った。
〈帯電速度〉
帯電速度は、トナーを現像装置に供給したときの帯電立ち上がり性能で評価した。具体的には、画素率が75%と画像部の多い原稿を用い、トナー消費量(供給量)が著しく多いプリントモードで1000枚のプリント打ち出しを行った後、帯電立ち上がり不良による機内のトナー飛散の状態と、プリント画像の画像カスレの程度を目視により評価した。
評価基準
◎:機内のトナー汚れ、プリント画像のカスレ共に全くない
○:機内のトナー汚れはないが、プリント画像の後端に軽微なカスレあり(実用可)
×:機内のトナー汚れ、プリント画像のカスレあり(実用上問題あり)
〈画像保持性〉
画像保持性は、高温高湿(30℃、90%RH)に72時間放置した現像剤を現像器に投入してプリントを行い、そのプリント画像を目視で評価した。なお、原稿としては、写真画像、文字およびハーフトーン画像を有するものを用いた。
評価基準
◎:階調性変動が目視で確認されない
○:淡色(ハーフトーン)、写真画像が暗く感じるが実用上問題なし
×:3ポイントの文字「e」の判別ができず、実用上問題
尚、本発明における帯電安定性の良否は、帯電速度と画像保持性の総合した特性と考えられる。
〈耐熱保管性〉
耐熱保管性は、上記で作製した各トナー100gを、55℃、90%RHの条件下に24時間放置した後、目開き45μmのフルイで篩い、フルイ上に残った凝集物の量(割合)で評価した。
評価基準
◎:フルイ上の量が、5%未満で凝集量が非常に少なく耐熱保管性優良(断熱梱包材が全くなしで夏場に輸送を行っても凝集物の発生なし)
○:フルイ上の量が、5〜30%で凝集量が少なく耐熱保管性良好(ダンボール梱包のみで夏場に輸送を行っても凝集物の発生なし)
×:フルイ上の量が、30%より多く、凝集量が多く実用上問題(保冷輸送を行う必要がある)。
〈最低定着温度〉
上記評価機の定着装置の加熱ローラー表面温度を、紙表面温度が80〜150℃の範囲内で10℃刻みで変化するように変更し、各変更温度でトナー画像を定着して定着画像を作製した。なお、プリント画像の作成に当たっては、A4版サイズの上質紙(80g/m2)を使用した。
定着して得られたプリント画像の定着強度を、「電子写真技術の基礎と応用:電子写真学会編」第9章1.4項に記載のメンディングテープ剥離法に準じた方法を用いて定着率により評価した。
具体的には、トナーの付着量が0.6mg/cm2である2.54cm角のベタ黒プリント画像を作製した後、「スコッチメンディングテープ」(住友3M社製)で剥離する前後の画像濃度を測定し、画像濃度の残存率を定着率として求めた。
定着率が95%以上得られた「転写材(紙)表面温度」を最低定着温度とする。なお、転写材(紙)表面温度は非接触温度計で測定した。なお、画像濃度は反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)で測定した。
評価基準
◎:最低定着温度100℃未満での定着が可能
○:最低定着温度100℃以上、130℃未満での定着が可能
×:最低定着温度130℃以上での定着が可能
Figure 0004765650
上記表5より明らかな如く、本発明内の実施例1〜はいずれもよい特性を示すが、本発明外の参考例10〜16は特性が劣り、比較例1〜3は少なくとも何れかの特性に問題があることがわかる。
さらに、プリント画像作成時のプリント速度を400mm/sec、490mm/sec、及び、600mm/secに変更して、同様の評価を行ったところ、実施例1〜ではいずれの評価項目に対して良好な結果が得られた。
コア・シェル構造を有するトナーの模式図である。 本発明に係るトナーが使用可能な画像形成装置の断面図である。 加熱ロール方式の定着装置の一例を示す断面図である。 ベルトと加熱ローラを用いたタイプの定着装置の一例を示す断面図である。
符号の説明
10 感光体ドラム
11 スコロトロン帯電器
11A 帯電前露光手段
12 レーザ書込み装置
T トナー
A コア
B シェル
C 着色剤
D ワックス

Claims (5)

  1. 水系媒体中で作製した少なくとも樹脂と着色剤を含有するコア粒子の分散液中に、シェル用樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用樹脂粒子を凝集、融着させ熱エネルギーにより熟成する静電荷像現像用トナーの製造方法において、
    シェルの8点平均膜厚が100nm乃至300nmであり、かつ、該シェルの最大膜厚をHmax、最小膜厚をHminとしたときに、Hmaxは190〜280nm、Hminは130〜230nmであり、Hmax/Hminが1.50未満とし、かつ、下記(1)〜(3)の要件を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
    (1)前記コア粒子を構成する樹脂のガラス転移温度をTg1、前記シェルを構成する樹脂のガラス転移温度をTg2とする時に、
    Tg2−Tg1≧20℃、10℃≦Tg1≦30℃
    (2)前記コア粒子を構成する樹脂の溶解度パラメータをSP1、前記シェルを構成する樹脂の溶解度パラメータをSP2としたときに、
    SP1とSP2の差が0.2乃至1.0
    (3)円形度が0.900以上のコア粒子を作製する工程と、該コア粒子表面に樹脂微粒子を添加して、シェルを形成する工程を経て、コア・シェル構造のトナーとする。
  2. 前記Hmax/Hminが1.05〜1.40であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法を用いて作製したことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  4. 請求項3に記載の静電荷像現像用トナーを用い、プリント速度が400mm/sec以上であることを特徴とする画像形成方法。
  5. 請求項3に記載の静電荷像現像用トナーを用い、感光体と、少なくとも帯電手段、像露光手段、現像手段、転写手段、定着手段、及び、感光体クリーニング手段を有することを特徴とする画像形成装置。
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