図1は本発明の本実施例にかかるインクジェット記録装100を示す全体図である。インクジェット記録装置100には、外部には操作表示部3が備えられた本体1と印字ヘッド2が備えられており、本体1と印字ヘッド2は導管4で接続されている。
図3はインクジェット記録装置100の実使用状態の一例を示すものである。インクジェット記録装置100は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられ、本体1は使用者が操作できる位置に設置され、印字ヘッド2はベルトコンベア15などの生産ライン上を搬送される印字対象物13に近接できる位置に設置される。
ベルトコンベア15などの生産ライン上には搬送速度に係わらず同じ幅で印字するために、搬送速度に応じた信号をインクジェット記録装置100に出力するエンコーダ16や、印字対象物13を検出してインクジェット記録装置100に印字を指示する信号を出力する印字センサ17が設置されていて、それぞれは本体1内の図示しない制御部200に接続されている。
エンコーダ16や印字センサ17からの信号に応じて制御部200がノズル8から吐出されるインク粒子10への帯電量や帯電タイミングを制御し、印字対象物13が印字ヘッド2近傍を通過する間に帯電、偏向されたインク粒子10を印字対象物13へ付着させて印字を行うようになっている。
図4は、インクジェット記録装置100の全体的な経路構成を示す図である。本体1には、循環するインクを保持する主インク容器18が備えられており、主インク容器18には、主インク容器18内の液体が内部に保持されるのに適正な量であることを意味する基準液面レベルに達しているか否かを検知する液面センサ38が備えられている。主インク容器18には、インクを循環させるための経路101を介してインクの粘度を計測するための落下式粘度計である粘度計測器21に接続されている。
粘度計測器21は経路102を介して経路の開閉を行う電磁弁22に接続されており、電磁弁22は経路103を介してインクや溶剤の吸引、圧送に供されるポンプ25に接続されている。そして、ポンプ25は経路104を介してインク中に混入している異物を除去するフィルタ28に接続されている。
フィルタ28は、経路105を介してポンプ25から圧送されたインクを印字するために適正な圧力に調整する減圧弁30に接続されており、減圧弁30は、経路106を介してインクの圧力を検出するための圧力計31に接続されている。
圧力計31は、導管4内をとおる経路107を介して印字ヘッド2内に備えられたインクを吐出する吐出口を供えたノズル8に接続されている。
ノズル8のインク吐出方向には、ノズル8から吐出されたインク粒子10に印字する文字情報に応じた電荷量を粒子に帯電させる帯電電極11が配置されている。帯電電極11により帯電させられたインク粒子10の飛翔方向には、帯電されたインク粒子10を偏向させる電界を発生させる偏向電極12が配置されている。
偏向電極12のインク飛翔方向側には、印字に使用されないために帯電、偏向されずに直線的に飛翔するインク粒子10を捕捉するガター14が配置されている。
ガター14は、導管4内をとおる経路108を介して本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去するフィルタ28と接続されており、フィルタ28は、経路109を介してガター14により補足されたインク粒子10を吸引するポンプ26と接続されている。そして、ポンプ26は、経路110を介して吸引したインク粒子10を主インク容器18に圧送するようになっている。
本体1には、排気口32が設けられており、排気口32は経路150を介して主インク容器18と接続されており、インク中の揮発した溶剤成分が経路150を介して、本体1の外部に排気されるようになっている。
また、本体1には、ノズル8におけるインクによる汚染及びインクの濃度を調整する溶剤容器20が備えられており、溶剤容器20は、経路111を介して溶剤の吸引、圧送を行なうポンプ27に接続されている。また、ポンプ27は、経路112を介して経路の開閉を行う電磁弁24に接続されており、電磁弁24は、経路113を介して主インク容器18に接続されている。
さらに、本体1には、補充用のインクを保持する補助インク容器19が備えられており、補助インク容器19は、経路120を介して経路の開閉を行う電磁弁23に接続されている。そして、電磁弁23は経路121を介して経路104に接続されている。
ここで、インクジェット記録装置100の動作原理について説明する。なお、図2に示すインクジェット記録装置100は、図1に示すインクジェット記録装置100と同一のものであるが、動作原理を説明するのに必要な部分のみを挙げて説明するものとする。
図2に示すように、インク容器18内のインクはポンプ25に吸引、加圧されてインク柱7となってノズル8から吐出される。ノズル8には、電歪素子9が備えられており、インクに所定の周波数で振動を加えてノズル8から吐出されるインク柱7を粒子化するようになっている。これにより生成されるインク粒子10の数は,電歪素子9に印加する励振電圧の周波数により決定され、その周波数と同数となる。インク粒子10は、印字情報に対応した大きさの電圧を帯電電極11にて印加することで電荷を与えられるようになっている。帯電電極11で帯電させられたインク粒子10は、偏向電極12間の電界中を飛翔している間、帯電量に比例した力を受けて偏向し、印字対象物13へ向かって飛翔して着弾する。その際、インク粒子10は帯電量に応じて偏向方向の着弾位置は変化し、さらに偏向方向と直行する方向に生産ラインが印字対象物13を移動させることで、偏向方向と直行した方向にも粒子を着弾させることが可能となり、複数の着弾粒子によって文字を構成することとなる。
印字に使用しなかったインク粒子10は偏向電極12間を直線的に飛翔して、ガター14により補足された後に経路を経由して、主インク容器18に回収されるようになっている。
次に、図13にインクジェット記録装置100の機能ブロック図を示す。インクジェット記録装置100には、例えばMPUを備える制御部200が備えられており、制御部200はバスライン201を介して、操作表示部3、ノズル8、帯電電極11、偏向電極12、エンコーダ16、印字センサ17、粘度測定器21、電磁弁22,23,24、ポンプ25,26,27、減圧弁30、液面センサ38及び記録部202等の各部を制御するようになっている。
制御部200は、印字の際にポンプ25により主インク容器18からインクを吸引するにあたっては、電磁弁22を開放し、電磁弁23を閉鎖するようになっている。また、制御部200は、インク粘度測定器21によりインクの粘度を測定するために、所定期間毎に電磁弁22を閉鎖し、電磁弁23を開放するようになっており、「所定期間」は、操作表示部3を操作することにより任意に設定することができる。インクの粘度について測定を行う際には、補助インク容器19からインクを吸引して印字を行う。
記録部202には、インクジェット記録装置100を制御するためのプログラムが格納されており、制御部200はかかるプログラムに基づいてインクジェット記録装置100を構成する各部位を制御するようになっている。
記録部202には、印字を行うためのインクの適正な粘度範囲が記録されている。即ち、印字を行うにあたっての上限値(ηmax)及び下限値(ηmin)が記録されている。
インクジェット記録装置においては、ノズルから吐出するインクの粘度を印字を適正に行うことができる範囲内に制御することは必要があり、かかる適正な範囲から外れたインク粘度になると、適正な印字結果を得ることができない。
ノズルから吐出したインクが粒子化する位置が変化したり、インク粒子が均一な形状に粒子化しないなどの現象が発生して、インク粒子に所望の帯電量を与えることができず、適正な印字結果が得られないこととなる。
インクの粘度が適正範囲より高くなり過ぎる理由は以下のとおりである。印字に使用されなかったインク粒子10は、ガター14に捕捉されることとなるが、ノズル8とガター14間を飛翔している間にインク粒子10から溶剤成分が揮発する。さらにインク粒子10がガター14で捕捉される際は、ポンプ26によって発生する吸引力によってガター14周囲の空気と一緒に吸引されるので、主インク容器18に移送されるまでにインク中の溶剤成分が揮発して空気と共に排気口32から本体1外に排出される。このように、インクジェット記録装置100の稼動中にインク中の溶剤成分の揮発が進むので、印字に使用した量と同量のインクを補充するだけでは、主インク容器18内のインク量は次第に減少していき、インク粘度は高くなっていく。
一方、インクの粘度が適正範囲より薄くなりすぎる理由は以下のとおりである。インクジェット記録装置においては、印字動作を終了する際には、ノズル部8や経路内に残留したインクか硬化して印字の妨げとなることを防止するために、印字終了時や印字開始時においては、溶剤容器20内の溶液を装置内を循環させて経路及びノズル8等の洗浄をおこなう。この際に用いた溶液は、ノズル8より噴出された後にガター14に回収され、ガター14に回収された溶液は主インク容器18内に搬送されることになる。そのため、主インク容器18内のインクの濃度が適正範囲より低くなるという状態が生じ得ることとなる。
そこで、かかる現象の発生を避けるため、インクジェット記録装置においては、インク粘度を測定する手段と、測定したインク粘度測定値に応じてインク粘度を調整する手段が必要となる。
図6に示すように粘度測定器21は、インクが充填された円筒状のシリンダー33の内部に、円柱状のプランジャー34を備えられている。シリンダー33の外周にはプランジャー34を上限位置まで引き上げるためのコイル35を備えられている。また、粘度測定器21には、インク温度を測定するサーミスタ36が備えられていると共に、シリンダー33の下端部付近には、プランジャー34が最下限位置まで落下したことを検知する落下検知センサ37が備えられている。
A方向側には、主インク容器18が配置されており、インクはシリンダー33の下方向から上方向へ流れて、インク粘度測定前に測定対象のインクをシリンダー33内部へ導き、コイル35に通電してプランジャー34を上限位置まで引き上げるようになっている。インクの粘度の測定時には電磁弁22が閉鎖され、シリンダー33内のインクの流れを停止し、シリンダー33内においてインクの流れが停止した状態において、コイル35への通電を停止させてプランジャー34を落下させる。
落下検知センサ37は、プランジャー34が落下してシリンダー34の下端に接触したことを検出するとともに、コイル35通電停止時からプランジャー34が落下してシリンダー34の下端に接触するまでの時間を測定する。そして、サーミスタ36によってプランジャー34落下時間測定時のインク温度も検出するようにする。
記憶部202には、例えば所定のインク粘度におけるプランジャー34の落下時間とインク温度の相関関係を示すテーブルを格納されており、制御部200は、粘度測定器21の測定結果を記憶部202に格納されているプランジャー34落下時間とインク温度の相関とを比較することで、インク粘度を導くことができるようになっている。
インクの粘度は温度によって変化するものであるため、Aという温度の場合においてプランジャー34の落下時間がT秒であれば、インクの粘度ηxというように、インクの温度にプランジャー34の落下時間の関係からインクの粘度を導き出せるようなテーブルが記憶部202に格納されており、サーミスタ36と落下検知センサ37の計測結果に基づいてインクの粘度が導き出せるようになっている。
また、記憶部202には、印字を行うに当たってのインクの粘度の適正範囲が記憶されている。印字を行うにあたり、インクの粘度が高すぎると、ノズルから吐出したインクを印字するためのインク粒子に適した形状にすることができなくなり、インクの粘度が低すぎると印字対象物に付着した後に硬化するまでに時間がかかり、インク流れてしまう等の不都合が生じる。
そのため、印字に用いるインクを印字するのに用いるにあたっての適正粘度情報、即ち、印字を行うのに適正な粘度の範囲として、そのインクの粘度(η)の上限値(ηmax)及び下限値(ηmin)が記憶されている。インクはその種類によって印字を行うのに適した粘度が異なっているので、記憶部202には、インクの種類に応じた粘度の適正な範囲が記憶されている。また、同じ種類のインクであっても、その温度によって印字を行うのに適正な粘度が異なるので、適正粘度情報は、そのインクの温度毎に記憶部202に備えられている。
なお、適正粘度範囲を決めるための印字に用いるインクの種類については初期設定がされていることとしてもよい。また、操作表示部3を操作して印字に用いるインクの種類を選択することとしてもよい。
操作表示部3により印字に用いるインクの選択を行うと、制御部200は、操作表示部3からの入力信号に応じて、印字に使用されるインクの種類を設定するようになっている。
制御部200は、粘度計測器21に備えられたサーミスタ36により計測されたインクの温度に応じてインクの適正粘度範囲を設定し、その後、落下検知センサ37の計測結果に基づいて導き出されたインクの粘度(η)が適正粘度範囲内に含まれるか否かについて判断するようになっている。
即ち、制御部200は、粘度測定器21により測定したインクの粘度が適正範囲内か否かを判断し、その結果、インクの粘度が印字を行うにあたって粘度が適正範囲より高いと判断した場合は、溶剤容器20から主インク容器18に溶剤を補充してインク濃度を印字を行うに当たっての適正な濃度になるように調整を行うようになっている。
また、インクの粘度が印字を行なうにあたって適正範囲より低いと判断した場合は、補助インク容器19より主インク容器18にインクを補充することを行なう。そのため、制御部200は、主インク容器18にインクの補充を行うために、電磁弁22を閉鎖するとともに、電磁弁23を開放することにより、ポンプ25が補助インク容器19内のインクを吸引して印字ヘッド2に送るようにし、印字に使用しなかったインクが主インク容器18に回収させることで、主インク容器18にインクの補充を行うようになっている。
インクの補充量は、インクの粘度をある測定と次の測定を行なう間に印字に使用されたインクの量である。なお、印字に用いられるインクは、帯電電極11で帯電されるので、帯電電極11で帯電されるインクの量をカウントし、予め設定されているインク粒子を形成するインク量をそれに積算することで、印字に使用したインクの量を算出することが可能である。
以下において、本実施例にかかる発明の作用について説明する。
本体1に備えられた操作表示部3より印字を開始する旨の信号が入力されると、インク容器18内のインクはポンプ25により吸引、加圧された後にノズル8からインク柱7となって吐出される。吐出される際にインク柱7は、ノズル8に備えられた電歪素子9により所定の周波数で振動を加えられるため、吐出後に粒子化してインク粒子10となる。インク粒子10は、帯電電極11は印字情報に対応した大きさの電圧を印加されることにより電荷を与えられ、偏向電極12間の電界中を飛翔している間、帯電量に比例した力を受けて偏向し、印字対象物13へ向かって飛翔して着弾する。
印字に使用されなかったインク粒子10は、ガター14に捕捉されるが、ノズル8とガター14間を飛翔している間にインク粒子10から溶剤成分が揮発する。
制御部200は、主インク容器18からインクを吸引して印字を行っている最中には、電磁弁22を開放し、電磁弁23を閉鎖している。そのため、主インク容器18からインクを吸引している間は、粘度測定器21のシリンダー33内には常にインク粘度測定対象である主インク容器18内のインクが流れている。
以下においては、図7のフローチャートを用いて説明する。
制御部200は、一定時間毎にインクの濃度を計測を粘度計測器21に行わせるために、インクジェット記録装置100の印字開始時または前回の計測時から一定時間が経過したかの計測を行う(ステップS1)。
次に制御部200は、「X<t×f」となるか否かの判断を行う(ステップS2)。ここで、「X」とは、粘度測定器21によりインクの粘度を測定する間隔と同一の期間に印字に使用されたインクの量を意味する。なお、Xについては、任意に設定することも可能である。例えば、操作表示部3を操作して、粘度測定器21によりインクを測定する間隔の半分の期間または倍の期間に設定することとしてもよい。また、「t」は、インク粘度測定に要する想定される最長時間である[s]を、「f」は電歪素子9の振動数であるf[1/s]を表す。そして、「t」と「f」を積算することにより、インク粘度測定中ノズル8から吐出されたインク粒子10の数を求めることができる。
「X<t×f」か否かの判断を行うのは、印字に使用したインク以上の量のインクを補充すると、主インク容器18内のインク量が増加し、主インク容器18で保持できないインク量が供給される危険を回避するためである。そのため、印字に使用したインク量がt[s]間インク補充するインク量を超えた場合にインク粘度測定を実行することとしたものである。そのため、印字に使用した粒子数Xをカウントしておき、X<t×fとなった場合にインク粘度測定を実施することとしたものである。
ステップS2において、「X<t×f」ではないと判断した場合(No)には、電磁弁22を閉鎖して電磁弁23を開放し、主インク容器18内の基準液面レベルになるまでインクが補給されるように補助インク容器19からインクを吸引して印字を行う(ステップS12)。その後、制御部200は前回の計測時から一定時間が経過したかの計測を行う(ステップS1)。
ステップS2において、「X<t×f」であると判断した場合(Yes)には、制御部200は、粘度計測器21内のコイル35に通電させて、プランジャー34を引き上げる(ステップS3)。そして、引き上げたプランジャー34がシリンダー33内において安定するまで待機し(ステップS4)、プランジャー34がシリンダー33内において安定したら、コイル35への通電をやめ(ステップS5)、落下検知センサ37によりプランジャー34がシリンダー33の下端部に落下するまでの時間を計測するともに、サーミスタ36により粘度計測器21内のインクの温度を計測する(ステップS6)。
次いで、制御部200は、粘度計測器21によるインクの粘度(η)と記録部202より印字を行うに当たってのインクの粘度の上限値(ηmax)を読み出し、粘度計測器21によるインクの粘度(η)がインクの粘度の上限値(ηmax)と「η≦ηmax」の関係にあるか否かの判断を行う(ステップS7)。
ここで、「η≦ηmax」の関係を満たすと判断した場合(Yes)には、制御部200は、記録部202より印字を行うに当たってのインクの粘度の下限値(ηmin)を読み出し、粘度計測器21によるインクの粘度(η)がインクの粘度の下限値(ηmin)と「η≧ηmin」との関係にあるか否かの判断を行う(ステップS8)。
ここで、「η≧ηmin」との関係を満たすと判断した場合(Yes)には、制御部200は、電磁弁22を閉鎖するとともに、電磁弁23を開放して(ステップS9)、Xと同量のインクが主インク容器18に溜められるまで補助インク容器19から吸引したインクにより印字を行う(ステップS10)。その後、電磁弁23を閉鎖して(ステップS11)、電磁弁24を開放するとともにポンプ27を駆動させて、主インク容器18の主インク容器18内の液体が基準液面レベルに達するまで溶剤を供給する(ステップS12)。その後、電磁弁22を開放するとともに、電磁弁24を閉鎖して、前回の計測時から一定時間が経過したかの計測を行う(ステップS1)。
ステップS7において、「η≦ηmax」の関係を満たさないと判断した場合(No)には、制御部200は、一定期間内に印字に使用したインク粒子数「X」から電歪素子9の振動数であるf[1/s]に60を積算して求められた数(60f)を減算したインク量Yを求める(ステップS13)。
その後、制御部200は、電磁弁22に閉鎖し、電磁弁23を開放し(ステップS14)、Yと同量のインクが主インク容器18に溜められるまで補助インク容器19から吸引したインクにより印字を行う(ステップS15)。その後、電磁弁23を閉鎖するとともに、電磁弁24を開放し(ステップS16)、ポンプ27を駆動させて主インク容器18に主インク容器18内の液体が基準液面レベルに達するまで溶剤を供給する(ステップS17)。その後、電磁弁22を開放するとともに、電磁弁24を閉鎖して、前回の計測時から一定時間が経過したかの計測を行う(ステップS1)。
なお、ステップS15において、主インク容器18に補充するインクの量をXとせずにYとする理由は、ステップS7においてインクの濃度ηが印字を行うにあたって適正な濃度よりも高いと判断されているので、印字に使用した量と同量のインクを補充することとすると更にインクの濃度が高まってしまうためである。そのために、ステップS16において溶剤を入れてインクの濃度を低くする。
また、Yを求めるにあたってfに60を積算しているのは、印字ヘッド部2によって一分間にノズル8より吐出されるインクの量であるが、fは60に限られるものではなく、例えば、操作表示部3を操作することによって任意の数に設定することができる。
ステップS8において、「η≧ηmin」との関係を満たさないと判断した場合には、制御部200は、電磁弁22に閉鎖し、電磁弁23を開放し(ステップS18)、主インク容器18内のインクが基準液面レベル達するまで、補助インク容器19よりインクを吸引して印字を行い(ステップS19)、その後、電磁弁22を開放するとともに、電磁弁23を閉鎖して(ステップS20)、再度、前回の計測時から一定時間が経過したかの計測を行う(ステップS1)。
以上のように、本実施例にかかるインクジェット記録装置によれば、主インク容器18からノズル8へインクを供給する経路上に粘度測定器21を配置してインク粘度計測を行うことが可能となり、図5の従来インクジェット記録装置100の経路構成に示される、インク粘度測定を行うための独立した経路39およびポンプ40、電磁弁41などの構成部品を削減することができ、装置の小型化およびコスト低減を図ることができる。
以下において、実施例2に係る発明つき図面を用いて説明する。なお、実施例1と共通する部分についての説明は省略し、主に実施例1と異なる部分について説明を行う。
図8は、実施例2にかかるインクジェット記録装置300の全体的な経路構成を示す図であり、図14はその機能ブロック図である。経路101には、経路141の一端が接続されており、経路141の他端は電磁弁43に接続されている。また、電磁弁43は、経路142を介して経路103に接続されている。
このような経路構成をとるインクジェット記録装置300は、主インク容器18からインクを吸引して印字を行う場合には、電磁弁22を開き、電磁弁23、43を閉鎖する。この状態では、粘度測定器21のシリンダー33内のインクは主インク容器18から吸引されたインクに常時置換されている。
インク粘度の測定を行う際にはシリンダー33内のインクの流れを停止する必要があるので、電磁弁22を閉鎖する。この場合、補助インク容器19からインクを補充することなく、主インク容器18内のインクを継続して吸引するために、電磁弁43を開き電磁弁23は閉鎖状態を維持する。
補助インク容器19からインクを補充する際には、電磁弁22を閉鎖して電磁弁23を開くようにする。これら動作を行なうことにより、主インク容器18からノズル8へインクを供給する経路上に粘度測定器21を配置して、任意のタイミングにおいてインク粘度計測を行うことが可能となる。
以下において、本実施例にかかる発明の作用について、図16のフローチャートを用いて説明する。なお、図16のフローチャートは、インクジェット記録装置300で印字を行なっている最中にインクの濃度を計測する場合を表したものである。
インクジェット記録装置300は、制御部200は、粘度計測器21によりインク濃度の計測を行わない場合においては、電磁弁22を開放し、電磁弁23及び電磁弁43を閉鎖させた状態で主インク容器18よりインクを吸引して印字を行う(ステップS31)。そして、制御部200は、インクの濃度を計測を粘度計測器21に行わせるタイミングが来たと判断すると電磁弁23は閉鎖したままにして、電磁弁43を開放し、電磁弁22閉鎖する(ステップS32)。
次いで、粘度計測器21内のコイル35に通電させて、プランジャー34を引き上げる(ステップS33)。そして、引き上げたプランジャー34がシリンダー33内において安定するまで待機し(ステップS34)、プランジャー34がシリンダー33内において安定したら、コイル35への通電を停止し(ステップS35)、落下検知センサ37によりプランジャー34がシリンダー33の下端部に落下するまでの時間を計測するともに、サーミスタ36により粘度計測器21内のインクの温度を計測する(ステップS36)。
そして、制御部200は、粘度計測器21によるインクの粘度(η)と記録部202より印字を行うに当たってのインクの粘度の上限値(ηmax)を読み出し、粘度計測器21によるインクの粘度(η)がインクの粘度の上限値(ηmax)と「η≦ηmax」の関係にあるか否かの判断を行う(ステップS37)。
「η≦ηmax」の関係を満たすと判断した場合(Yes)には、制御部200は、記録部202より印字を行うに当たってのインクの粘度の下限値(ηmin)を読み出し、粘度計測器21によるインクの粘度(η)がインクの粘度の下限値(ηmin)と「η≧ηmin」との関係にあるか否かの判断を行う(ステップS38)。
ステップS38において、「η≧ηmin」との関係を満たすと判断した場合(Yes)には、制御部200は、電磁弁22は閉鎖したままとし、電磁弁43を閉鎖し、電磁弁23を開放し(ステップS39)、Xと同量のインクが主インク容器18に溜められるまで補助インク容器19から吸引したインクにより印字を行う(ステップS41)。そして、Xと同量のインクが主インク容器18に溜まったら電磁弁23を閉鎖して電磁弁24を開放するとともに、ポンプ27を駆動させて、主インク容器18に溶剤を、主インク容器18の基準液面レベルまで供給する(ステップS42)。その後、電磁弁24を閉鎖し、電磁弁22を開放する(ステップS31)。
ステップS38において「η≦ηmax」の関係を満たさないと判断した場合(No)には、制御部200は、一定期間内に印字に使用したインク粒子数「X」から電歪素子9の振動数であるf[1/s]に60を積算して求められた数(60f)を減算してYを求める(ステップS43)。
その後、制御部200は、電磁弁22は閉鎖したまま、電磁弁43を閉鎖するとともに電磁弁23を開放し(ステップS44)、Yと同量のインクが主インク容器18に溜まるまで補助インク容器19から吸引したインクにより印字を行う(ステップS45)。
そして、Yと同量のインクが主インク容器18に溜まったら電磁弁23を閉鎖し(ステップS46)、電磁弁24を開放するとともにポンプ27を駆動させて、主インク容器18の基準液面レベルまで溶剤を供給する(ステップS47)。その後、制御部200は電磁弁24を閉鎖し、電磁弁22を開放する(ステップS31)。
ステップS39において、「η≧ηmin」の関係を満たさないと判断された場合(No)においては、制御部200は、電磁弁22は閉鎖したまま、電磁弁43を閉鎖し、電磁弁23を開放し(ステップS48)、主インク容器18内のインクが基準液面レベルまで供給する(ステップS49)。その後、電磁弁43を閉鎖したままで、電磁弁22を開放する(ステップS31)。
以上、本実施例にかかるインクジェット記録装置300によれば、図5に示す従来のインクジェット記録装置500と比較してインク粘度測定を行うための独立した経路39およびポンプ40などの構成部品を削減することができ、装置の小型化、およびコスト低減を図ることができる。
また、インクジェット記録装置300における経路構成をとることにより、補助インク容器19からインクを補充している間ではなくても、インクを補充することなくインク粘度測定が可能となる。
以下において、実施例3に係る発明つき図面を用いて説明する。なお、実施例1と共通する部分についての説明は省略し、実施例1と異なる部分について主に説明を行う。
図9は、実施例3に係るインクジェット記録装置400の全体的な経路構成を示す図であり、図15は、その機能ブロック図である。インクジェット記録装置400においては、ポンプ25と減圧弁30間の経路105に蓄圧器44が備えられている。蓄圧器44は図10、11に示すように、インクが流入する入口45、および出口46と、流入したインクを保持するインク室47を設けているハウジング48と、ハウジング48と対向する内部に後述する部品を収容する内部空間49と内部空間49を大気圧とするための連通孔50を有するハウジング51と、インク室47とハウジング内部空間49を隔絶するダイヤフラム52と、ダイヤフラム52がインク室47から受けた荷重を受けるバネ53と、ダイヤフラム52とバネ53の間に介在するバネ座54が備えられている。
通常は電磁弁22を開いた状態で主インク容器18からインクをポンプ25で吸引して、加圧したインクを減圧弁30で所定の圧力に調圧してノズル8に圧送、吐出し、印字を行っている。その状態では、粘度測定器21のシリンダー33内のインクは主インク容器18から吸引されたインクに常時置換されていて、蓄圧器44は減圧弁30の1次側に配置されているので、減圧されていないポンプ2次圧力によってダイヤフラム52は加圧される。加圧されていない時は、ダイヤフラム52はバネ53の荷重によって図10に示すようにインク室47の容積を最小にする位置にある。ダイヤフラム52がインク圧力を受ける受圧面積をS、インク圧力をPとすると、印字を行っている際、すなわちダイヤフラム52がインクで加圧されている際は、P×Sの荷重がバネ53に加えられバネ53が撓み、バネ荷重WとP×Sが等しくなる位置までダイヤフラム52は変位し、その時インク室47の容積は最大となり図11に示す状態となる。これが通常印字を行っている時の状態であり、また蓄圧された状態でもある。
前記状態においては、粘度測定器21のシリンダー33内のインクは主インク容器18から吸引されたインクに常時置換されている。インク粘度の測定を行う際にはシリンダー33内のインクの流れを停止する必要があるので、電磁弁22を閉止する。電磁弁22を閉止した後、ポンプ25はインクを吸引できなくなるため、ポンプ2次側圧力、すなわち減圧弁30の1次圧は次第に低下し、前記1次圧が通常のインク吐出圧力を下回ると、インク吐出圧力も低下してしまい印字が継続できなくなるので、インク吐出圧力が低下し始める前に電磁弁22を開き、ポンプ2次側圧力を復帰させることが必要となる。蓄圧器44は電磁弁22を閉止した後のポンプ2次側圧力低下を緩やかにしてインク粘度測定時間を確保することができる。
図12のグラフはポンプ2次圧力とインク吐出圧力を表している。t1までは電磁弁22を開いて印字している状態であり、ポンプ2次圧力はP1を維持している。t1で電磁弁22を閉止するとポンプ2次圧力が低下してきて、蓄圧器44がない場合はt2でインク圧力が低下し始めるが、蓄圧器44を備えているとt3まで正常なインク圧力を維持することができ、t3に達する前に電磁弁22を開くことで、t3以降も一定なインク吐出圧力を維持することができる。
インク吐出圧力をP2とした時に、P2の圧力ではバネ53に撓みを生じないで図10の状態にあり、ポンプ2次圧力がP1に達した時にバネ53に最大撓みが生じるようにバネを設計し、ダイヤフラム52の面積をできるだけ大きく設計するほど蓄圧時間t3−t2を大きくすることができる。
これらにより、主インク容器18からノズル8へインクを供給する経路上に粘度測定器21を配置して、任意のタイミングにおいてインク粘度計測を行うことが可能となり、インク粘度測定を行うための独立した経路39およびポンプ40などの構成部品を削減することができ、装置の小型化、およびコスト低減を図ることができる。
以下において、本実施例にかかる発明の作用について、図17のフローチャートを用いて説明する。なお、図17のフローチャートは、インクジェット記録装置300で印字を行なっている最中にインクの濃度を計測する場合を表したものである。
粘度計測器21によりインク濃度の計測を行なわない場合、制御部200は、電磁弁22を開放し、電磁弁23を閉鎖して主インク容器18よりインクを吸引して印字を行う(ステップS61)。そして、制御部200は、インクの濃度を計測するタイミングがきたと判断すると、電磁弁23は閉鎖したままにして、電磁弁22も閉鎖する(ステップS62)。
次いで、粘度計測器21内のコイル35に通電させて、プランジャー34を引き上げ(ステップS63)、引き上げたプランジャー34がシリンダー33内において安定するまで待機する(ステップS64)。プランジャー34がシリンダー33内において安定したら、コイル35への通電を停止し(ステップS65)、下検知センサ37によりプランジャー34がシリンダー33の下端部に落下するまでの時間を計測するともに、サーミスタ36により粘度計測器21内のインクの温度を計測する(ステップS66)。
そして、制御部200は、粘度計測器21によるインクの粘度(η)と記録部202より印字を行うに当たってのインクの粘度の上限値(ηmax)を読み出し、粘度計測器21によるインクの粘度(η)がインクの粘度の上限値(ηmax)と「η≦ηmax」の関係にあるか否かの判断を行う(ステップS67)。
ステップS67において、「η≦ηmax」の関係を満たすと判断した場合(Yes)には、制御部200は、記録部202より印字を行うに当たってのインクの粘度の下限値(ηmin)を読み出し、粘度計測器21によるインクの粘度(η)がインクの粘度の下限値(ηmin)と「η≧ηmin」との関係にあるか否かの判断を行う(ステップS68)。
ステップS68において、「η≧ηmin」との関係を満たすと判断した場合(Yes)には、制御部200は、電磁弁22を閉鎖するとともに、電磁弁23を開放し(ステップS69)、Xと同量のインクが主インク容器18に溜められるまで補助インク容器19から吸引したインクにより印字を行う(ステップS70)。そして、Xと同量のインクが主インク容器18に溜まったら電磁弁23を閉鎖して、電磁弁24を開放し(ステップS71)、ポンプ27を駆動させて、溶剤を主インク容器18の基準液面レベルまで供給する(ステップS72)。その後、電磁弁24を閉鎖し、電磁弁22を開放する(ステップS61)。
ステップS67において、粘度計測器21に計測されたインクの粘度ηが「η≦ηmax」の関係を満たさないと判断した場合(No)には、一定期間内に印字に使用したインク粒子数「X」から電歪素子9の振動数であるf[1/s]に60を積算して求められた数(60f)を減算してYを求める(ステップS73)。
その後、制御部200は、電磁弁22を閉鎖するとともに、電磁弁23を開放し(ステップS74)、Yと同量のインクが主インク容器18に溜められるまで補助インク容器19から吸引したインクにより印字を行う(ステップS75)。そして、制御部200は、電磁弁23を閉鎖すると共に電磁弁24を開放し(ステップS76)、するとともにポンプ27を駆動させて、主インク容器18に溶剤を、主インク容器18の基準液面レベルまで供給する(ステップS77)。その後、電磁弁24を閉鎖し、電磁弁22を開放する(ステップS61)。
ステップS68において、「η≧ηmin」の関係を満たさないと判断した場合(No)においては、制御部200は、電磁弁22は閉鎖したまま、電磁弁23を開放し(ステップS78)、主インク容器18内のインクが基準液面レベルまで供給する(ステップS79)。その後、電磁弁22を閉鎖して電磁弁22を開放する(ステップS61)。
なお、ステップS69において、電磁弁23を開放して補助インク容器19よりインクの吸引を行わないのは以下の理由による。
畜圧機44よりインクをノズル8に供給している間であっても、ポンプ25は吸引を続けている。電磁弁を開放した際には、電磁弁を開放したままインクの吸引を行っている場合に比較して、大きな吸引力でインクの吸引を行い、電磁弁を開放したままで吸引した場合よりも多くのインクを吸引することとなる。
そのため、電磁弁23を開放すると、電磁弁を開放したままの状態よりも多くのインクがノズル8に供給され、印字するのに必要以上のインクが吐出されることで印字が乱れたり、ガター14により回収されたインクが通常よりも多くなって、主インク容器18内の基準液面レベルを越えるような量のインクが主インク容器18に搬送されてしまう等の事態が生じてしまう。このような、事態が生じるのを回避するために、電磁弁22を開放して主インク容器18よりインクを吸引するものである。
本実施例にかかるインクジェット記録装置400によれば、図5に示す従来のインクジェット記録装置500と比較してインク粘度測定を行うための独立した経路39およびポンプ40などの構成部品を削減することができ、装置の小型化、およびコスト低減を図ることができる
1・・・本体部、2・・・印字ヘッド部、3・・・操作表示部、4・・・導管、7・・・インク柱、8・・・ノズル、9・・・電歪素子、10・・・インク粒子、11・・・帯電電極、12・・・偏向電極、13・・・印字対象物、14・・・ガター、15・・・ベルトコンベア、16・・・エンコーダ、17・・・印字センサ、18・・・主インク容器、19・・・補助インク容器、20・・・溶剤容器、21・・・粘度測定器、22・・・電磁弁、23・・・電磁弁、24・・・電磁弁、25・・・ポンプ(インク供給用)、26・・・ポンプ(インク回収用)、27・・・ポンプ(溶剤補充用)、28・・・フィルタ(供給用)、29・・・フィルタ(回収用)、30・・・減圧弁、31・・・圧力計、32・・・排気口、33・・・シリンダー、34・・・プランジャー、35・・・コイル、36・・・サーミスタ、37・・・落下検知センサ、38・・・液面センサ、39・・・経路、40・・・ポンプ(インク循環用)、41・・・電磁弁、42・・・短絡経路、43・・・電磁弁、44・・・蓄圧器、45・・・蓄圧器入口、46・・・蓄圧器出口、47・・・インク室、48・・・ハウジング、49・・・内部空間、50・・・連通孔、51・・・ハウジング、52・・・ダイヤフラム、53・・・バネ、54・・・バネ座、100・・・インクジェット記録装置、200・・・制御部、202・・・記録部、300・・・インクジェット記録装置、400・・・インクジェット記録装置