JP4764715B2 - 連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
この鋳型80の短辺部材81、82と長辺部材83、84は、溶鋼接触面側に短辺銅板87、88と長辺銅板89、90をそれぞれ有し、この短辺銅板87、88と長辺銅板89、90とで形成される空間91内に、溶鋼を流し込み、短辺銅板87、88及び長辺銅板89、90に接触する側に凝固シェルを形成しながら凝固させることで、鋳片を製造している。
そこで、例えば、特許文献1〜3には、一対の短辺銅板87、88の対向面、及び一対の長辺銅板89、90の対向面が、溶鋼の凝固収縮量に対応して鋳型の上端から下端へかけて対称に狭くなるテーパ形状(以下、単にテーパ形状ともいう)を備える鋳型が開示されている。
これにより、短辺銅板及び長辺銅板と凝固シェルとの隙間をなくし、溶鋼の冷却効率を高め、安定した品質の鋳片を製造している。なお、鋳型のテーパ形状は、例えば、特定の鋼種の溶鋼の凝固収縮量を基準として形成されている。
なお、このような問題を解消するため、鋼種ごとにその凝固収縮量に対応したテーパ形状を備える鋳型を製造し使用することもできるが、この場合、複数の鋳型を準備する必要があるため経済的でなく、また、鋼種が変わるごとに鋳型を交換しなければならず現実的でない。
前記連続鋳造用鋳型の振動周期及び振動距離のいずれか1又は2を、鋳造する鋼種ごとに変動させ、溶鋼から前記冷却部材への熱の移動量を制御して、異なる鋼種の凝固シェル収縮量を実質的に同一にし、しかも、前記連続鋳造用鋳型の前記冷却部材の空間の形状を、凝固収縮量が最も小さい鋼種の凝固シェル収縮量に合わせる。
前記連続鋳造用鋳型の振動周期及び振動距離のいずれか1又は2を、鋳造する鋼種ごとに変動させ、溶鋼から前記冷却部材への熱の移動量を制御して、異なる鋼種の凝固シェル収縮量を実質的に同一にし、しかも、溶鋼に含まれる炭素量が0.1質量%以上0.5質量%以下の範囲内にある鋼の鋳造では、溶鋼に含まれる炭素量が多い程、前記連続鋳造用鋳型の往復振動時における下降時間を長くし、凝固シェルの表層部に発生する波状のしわの深さを深くして、該凝固シェルから前記冷却部材への熱移動を抑制する。
前記連続鋳造用鋳型の振動周期及び振動距離のいずれか1又は2を、鋳造する鋼種ごとに変動させ、溶鋼から前記冷却部材への熱の移動量を制御して、異なる鋼種の凝固シェル収縮量を実質的に同一にし、しかも、溶鋼に含まれる炭素量が0.1質量%未満の鋼の鋳造では、溶鋼に含まれる炭素量が少ない程、前記連続鋳造用鋳型の往復振動時における下降時間を長くし、凝固シェルの表層部に発生する波状のしわの深さを深くして、該凝固シェルから前記冷却部材への熱移動を抑制する。
請求項2、3記載の連続鋳造方法は、溶鋼中に含まれる炭素量に応じて、凝固シェルから冷却部材への熱移動量を調整するので、異なる鋼種の溶鋼の凝固シェル収縮量を実質的に同一にできる。これにより、例えば、高炭素鋼を鋳造する場合でも、凝固シェルを冷却部材に接触させることができる。
ここで、図1(A)、(B)はそれぞれオシレーションマーク生成機構のポジティブストリップ期の説明図、ネガティブストリップ期の説明図、図2はオシレーションマーク深さに及ぼす溶鋼中の炭素量の影響を示す説明図、図3は鋳型による抜熱に及ぼす溶鋼中の炭素量の影響を示す説明図、図4はビレット鋳片の凝固収縮の数値解析結果を示す説明図、図5は鋳型オシレーションの概念図、図6は鋳型振動数とオシレーションマーク深さとの関係を示す説明図である。なお、図2、図3、図6は、「わが国における鋼の連続鋳造技術史」(社団法人日本鉄鋼協会、1996年)から引用した図面である。
これは、鋼種(主にC量)によって凝固シェルの表面性状が異なり、これに伴い、凝固シェル表面と鋳型内面との間の熱移動量(抜熱量)が大きく変化するためである。
なお、図2は、オシレーションマーク深さ(横軸)と形成された全てのしわに対する各オシレーションマーク深さが占める割合(縦軸)との関係を、炭素量が0.05質量%、0.12質量%、及び0.16質量%のそれぞれの溶鋼について調査した結果である。
また、C0.1%近傍(ここでは、0.12質量%)の包晶域では、その固相温度がδ→γ変態域に位置するため、大きな変態収縮の影響によって初期凝固挙動が不安定になり、デプレッション(表面の凹み)も発生し易く、表面性状が最も悪くなる。
図3に示すように、抜熱量はC0.1%近傍で最も低下しており、これより炭素量が高い高炭素鋼では、炭素量が多くなるに伴って抜熱量が上昇し、特に0.5%で略一定となり、凝固シェルの表面性状が良好になっている。また、炭素量がC0.1%より低い低炭素鋼では、炭素量が少なくなるに伴って抜熱量が上昇しているため、凝固シェルの表面性状がC0.1%よりも良好ではあるが、抜熱量が高炭素鋼よりも低いため、凝固シェルの表面性状が良好ではない。
なお、通常の金属接触面の熱伝達も、面粗さに大きく関係していることが確認されている。
この抜熱量の違いが鋳片収縮量に大きく関係するため、図4に示すように、低炭素鋼よりも高炭素鋼の収縮が大きくなる。
図4に示すように、高炭素鋼(0.46質量%)の収縮に際しては、周長収縮量が大きくなり、鋳型内面との隙間が大きくなって(不適テーパ形状)、コーナーギャップの発生に伴うコーナー部の凝固遅れにより、例えば、菱形に変形する鋳片の品質異常が発生し易くなる。このため、本来は、鋼種ごとに最適テーパ形状を設定した鋳型が必要になるが、これでは経済的でない。
図1(A)、(B)に示すように、鋳型10は前記した潤滑剤の流入性を良好にするため振動させている。このとき、オシレーションマークは、この振動による鋳型壁13内面と凝固シェル、特に湯面(メニスカス)近傍の強度が非常に弱い部分との摩擦により生成される。
図1(A)に示すように、鋳片の引抜き方向に対して鋳型10が反対方向に移動している場合(ポジティブストリップ期)は、その摩擦によって凝固シェルに伸び方向の力が働く。しかし、図1(B)に示すように、鋳片の引抜き方向に対して鋳型10が同一方向に移動し、かつ、その引抜き速度を上回る場合(ネガティブストリップ期)は、その摩擦によって凝固シェルに倒れが生じ、これがオシレーションマークとなる。
また、図6に、鋳型振動数とオシレーションマーク深さの関係を示す。鋳型振動数を上げることで、ネガティブストリップ期の時間が減少するが、これに対応してオシレーションマーク深さも減少していることが分かる。従って、鋳型のオシレーションサイクル及びオシレーションストロークのいずれか1又は2を制御することにより、オシレーションマーク深さの制御が可能である。
ここで、同一テーパ形状を備えた鋳型を使用し、異なる鋼種の溶鋼から、同一の収縮プロフィールを形成するための方法について説明する。
まず、鋳型として、例えば、鋳型の空間形状を、凝固収縮量が最も小さい鋼種の溶鋼の収縮プロフィールに合わせるため、図4に示すC0.11%鋼種の収縮プロフィールに沿ったマルチテーパモールド(溶鋼の凝固収縮に対応して、鋳型の上端から下端へかけて対称に狭くなるテーパ形状を備える鋳型)を製造し使用する。
そして、図3、図4に示す結果に基づき、含まれる炭素量が0.1質量%以上0.5質量%以下(好ましくは、0.1質量%以上0.4質量%以下)の範囲内において、高炭素側の鋼種の溶鋼では、オシレーション条件を制御し、オシレーションマークを深めに生成させる。
このようにして、高炭素鋼でも、鋳片収縮は鋳型のテーパ形状にフィットし、コーナーギャップの減少により、凝固遅れのない高品質の鋳片が製造可能となる。
このように、含まれる炭素量が0.1質量%の鋼種を境として、高炭素側へ炭素量が増加すると共に、また低炭素側へ炭素量が減少すると共に、オシレーションマークを深めに生成させることで、複数鋼種の溶鋼の鋳造に対応できる。
このように、オシレーションサイクル又はオシレーションストロークを制御することで、複数鋼種の溶鋼の鋳造に対応でき、高品質の鋳片を製造できる。
また、前記実施の形態においては、オシレーションサイクル又はオシレーションストロークを、溶鋼中の炭素量に応じて調整した場合について説明したが、オシレーションサイクル及びオシレーションストロークを共に調整することも可能である。
なお、本発明は、一対の短辺部材と一対の長辺部材とを備える4つ組の連続鋳造用鋳型に適用してもよく、また他の全ての鋳型、例えば、チューブ型の連続鋳造用鋳型に適用してもよい。
Claims (3)
- 連続鋳造用鋳型を上下方向に往復振動させながら、該連続鋳造用鋳型の冷却部材の内側に形成される空間内に溶鋼を流し込み凝固させて鋳片を製造する連続鋳造方法において、
前記連続鋳造用鋳型の振動周期及び振動距離のいずれか1又は2を、鋳造する鋼種ごとに変動させ、溶鋼から前記冷却部材への熱の移動量を制御して、異なる鋼種の凝固シェル収縮量を実質的に同一にし、しかも、前記連続鋳造用鋳型の前記冷却部材の空間の形状を、凝固収縮量が最も小さい鋼種の凝固シェル収縮量に合わせることを特徴とする連続鋳造方法。 - 連続鋳造用鋳型を上下方向に往復振動させながら、該連続鋳造用鋳型の冷却部材の内側に形成される空間内に溶鋼を流し込み凝固させて鋳片を製造する連続鋳造方法において、
前記連続鋳造用鋳型の振動周期及び振動距離のいずれか1又は2を、鋳造する鋼種ごとに変動させ、溶鋼から前記冷却部材への熱の移動量を制御して、異なる鋼種の凝固シェル収縮量を実質的に同一にし、しかも、溶鋼に含まれる炭素量が0.1質量%以上0.5質量%以下の範囲内にある鋼の鋳造では、溶鋼に含まれる炭素量が多い程、前記連続鋳造用鋳型の往復振動時における下降時間を長くし、凝固シェルの表層部に発生する波状のしわの深さを深くして、該凝固シェルから前記冷却部材への熱移動を抑制することを特徴とする連続鋳造方法。 - 連続鋳造用鋳型を上下方向に往復振動させながら、該連続鋳造用鋳型の冷却部材の内側に形成される空間内に溶鋼を流し込み凝固させて鋳片を製造する連続鋳造方法において、
前記連続鋳造用鋳型の振動周期及び振動距離のいずれか1又は2を、鋳造する鋼種ごとに変動させ、溶鋼から前記冷却部材への熱の移動量を制御して、異なる鋼種の凝固シェル収縮量を実質的に同一にし、しかも、溶鋼に含まれる炭素量が0.1質量%未満の鋼の鋳造では、溶鋼に含まれる炭素量が少ない程、前記連続鋳造用鋳型の往復振動時における下降時間を長くし、凝固シェルの表層部に発生する波状のしわの深さを深くして、該凝固シェルから前記冷却部材への熱移動を抑制することを特徴とする連続鋳造方法。
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