JP4761275B2 - 装飾的に陽極処理可能でよく変形可能で機械的に高負荷可能なアルミニウム合金、その製造方法及びこの合金から成るアルミニウム製品 - Google Patents

Description

本発明は、装飾的に陽極処理可能でよく変形可能で機械的に高負荷可能なＡｌＭｇＳｉ形式のアルミニウム合金、この合金からなる帯、板又は押出し成形異形材の形の半製品、及び半製品から製造され特に変形されて装飾的に陽極処理される部材に関する。このようなアルミニウム合金の製造方法も本発明の範囲内にある。

アルミニウム板から成り装飾的に陽極処理される部材を製造するため、一般に合金化されないアルミニウム（１ｘｘｘ合金）、ＡｌＭｇ合金（５ｘｘｘ合金）又は８ｘｘｘ合金形式の合わせシステム、合金化されないアルミニウム（１ｘｘｘ合金）の被せ金が使用される。これらすべての材料クラスは硬化可能ではなく、即ち強度の増大は冷間硬化によってのみ行われ、低下は続いて軟化焼鈍によって行われる。すべてのシステムに共通なことは、その変形能力及び強度状態が、例えば圧延により硬化されるか又は続く焼鈍により軟化される半製品供給状態によって規定されていることである。こうして良好な変形可能性のために、これらのシステムを最大軟化の状態で使用し、それから変形することが可能である。しかし変形プロセス後、使用特性を改善するための硬化はもはや行われていない。良好な使用特性のため、システムは高い強度の状態で使用可能であるが、成形段階における変形能力は、供給状態の高い初期強度によって著しく制限される。

良好な変形可能性を持つ熱間効果可能なＡｌＭｇＳｉ合金（６ｘｘｘ）は、例えば欧州特許第０７１４９９３号又は第０８１１７００号明細書から公知である。開示されているＡｌＭｇＳｉ合金は、帯又は板の製造のためにも使用される。よい深絞り可能性のため、これは自動車工業用の車体板の製造に適している。そこに開示されている合金組成により、良好な強度と良好な変形特性との間で最適条件が得られる。しかしこれらの合金は装飾的でなく、特に高度な光沢がなく、陽極処理可能ではない。なぜならば、欧州特許第０８１１７００号明細書に開示されれ入る０．２５〜０．５５重量％の鉄含有量は高すぎ、陽極処理層の曇りを生じるからである。鉄により形成される金属間四元ＦｅＳｉＭｇＭｎ相が陽極処理層に組込まれることは公知である。この粗い粒子は陽極処理層において光の散乱を生じ、これが見る人に曇りと思われる。欧州特許第０７１４９９３号明細書にあげられている０．０５〜０．４重量％のバナジウム含有量でも、充分透明な陽極処理層は得られない。高い含有量のバナジウムは、更に溶湯に溶解し難い。ジルコニウム又はクロムのような他の再結晶抑制材によるバナジウムの代用も、所望の結果を生じない。クロム及びジルコニウムは、研摩又は艶出し陽極処理の際黄ばむように作用する陽極処理層を生じる。

装飾的な部材用に出願人により使用される押出し成形異形材用の公知のＡｌ９９．９ＭｇＳｉ合金（６４０１特殊）は、従ってジルコニウム、バナジウム又はクロムを含んでいない。同様に鉄を含むＡｌＭｇＳｉ合金の不純物は０，０４重量％に制限される。それにより前記の陽極処理欠陥が回避され、研摩されかつ陽極処理される部材の高い光沢度が得られる。しかしこのような合金は、再結晶抑制材（Ｆｅ，Ｚｒ，Ｃｒ，Ｖ）がないため、最適な変形能力を示さない。なぜならば、比較的粗い粒子のため、早く収縮しかつみかん肌を生じるからである。

その結果、押出し成形製品又は圧延製品用の合金組成の選択により、変形能力、装飾的外観、及び最終強度、延性及び靱性で表わされる機械的荷重負担能力に関して妥協が行われる。

本発明の基礎になっている課題は、良好な変形能力を持ち、使用状態において充分な強度及び延性を持ち、装飾的に陽極処理可能な部材用のアルミニウム合金を利用可能にすることである。

この課題は、請求項１にあげた組成及びそこに述べた特徴を持つアルミニウム合金によって解決される。機械的強度及び変形特性に関する最適な特性は、０．３〜０．９重量％の珪素及び０．１〜０．５重量％のマグネシウムの割合により得られ、マグネシウムに対して珪素が過剰で、特に珪素とマグネシウムの重量比が１．８〜３．３が存在するように、これら両方の成分の重量比が設定される。混晶硬化を行う０．１〜０．４重量％の銅の割合によって、強度が更に助長される。良好な変形能力は、再結晶抑制材（鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム）の割合によって保証される。鉄は原合金中にしばしば不純物として存在する。しかし鉄は０．２重量％の割合まで合金添加可能である。ジルコニウム、クロム及びバナジウムは、単独で又は一緒に０．２２重量％の割合まで合金中に含まれていてもよい。前記の再結晶抑制材が存在するにもかかわらず、本発明による合金は装飾的に陽極処理可能であり、黄ばむか又は曇った陽極処理層を示さない。これは０．００５〜０．１重量％のストロンチウムの割合によって行われる。ストロンチウムが、鉄、ジルコニウム、クロム及び／又はバナジウムを含む相を変化し、特にこれらの相が陽極処理層に組込まれていても目に見える曇りを生じない程度に、改良していることが想定される。驚くべきことに、鉄とストロンチウムの重量比３：１〜５：１が特に有利であることがわかった。

このような合金は、９９．８５重量％より多いアルミニウムを含むアルミニウム母材から製造される。溶湯に次のような合金成分が添加される。即ち０．３〜０．９重量％の珪素、０．１〜０．５重量％のマグネシウム、ここで珪素とマグネシウムの重量比は１．８：１〜３．３：１である。アルミニウム母材中に不純物として存在していてもよい鉄含有量の決定後、必要な場合更に鉄が添加されるので、製造すべき合金は０．２重量％までの鉄を含んでいる。更に０．００５〜０．１重量％のストロンチウムが添加され、鉄とストロンチウムの重量比は３：１〜５：１に設定される。０．００８〜０．００７重量％のストロンチウムの添加が好ましい。それ以外の合金成分として、０．１〜０．４重量％の銅、０．０３〜０．２重量％マンガン、０．０１重量％のチタン、ジルコニウム及び／又はクロム及び／又はバナジウムが全体で０．０８〜０．２２重量％添加される。合金は、最大０．０４重量％の亜鉛、最大０．０２重量％の不可避な不純物を単独で、又は全部で最大０．１５重量％含むようにする。更に合金を特徴づけるため、特定の割合即ち０．０００５〜０．００５重量％の銀を添加することができる。

こうして製造される溶湯は、連続鋳造法で圧延インゴット又は連続鋳造棒に鋳造され、続いて均質化される（少なくとも５００℃で少なくとも２時間の焼鈍）。アルミニウム母材として、不純物の割合を制限するため（不可避な不純物の全体で最大０．１５重量％の含有量を超過しないようにする）、少なくとも９９．８５重量％のアルミニウムを含むなるべく純アルミニウムが使用される。合金成分は純金属又は母合金の形で添加することができる。ストロンチウムは、なるべくアルミニウム−ストロンチウム母合金の形で、特にＡｌＳｒ３．５母合金、ＡｌＳｒ５母合金又はＡｌＳｒ１０母合金により添加される。

本発明によるアルミニウム合金の均質化された連続鋳造棒から、押出し成形により開いているか又は中空室連続異形材が得られ、一般に延伸され、鋸引きにより裁断される。所望の長さにされた異形材片から、次の変形特に例えば圧延、曲げ、深絞り又は作用媒体に基く板変形又は管変形のような冷間変形により、三次元に成形される原部材が製造される。変形が曲げプロセスであるか、又は作用媒体に基く変形であるか、又は深絞りであるかには関係なく、生じる部材は、非常に僅かなみかん色の表皮形成で、僅かな戻り弾性により、良好な輪郭精度を示す。合金の硬化可能性により、変形に続いて、強度及び延性が設定可能である。硬化後、場合によっては部材の機械加工のほかに、特に化学的及び電解処理が続く。このような化学的及び電解陽極処理は、部材の研摩、艶出し、陽極処理、場合によっては着色及び最後の圧縮を含んでいる。装飾的に陽極処理されるアルミニウム部材の生じる陽極処理層は非常に満足できるものであり、透明で即ち曇っておらず、黄ばんでもいない。

圧延インゴットから熱間圧延により薄板素材が得られ、この薄板素材は冷間圧延及び中間焼鈍により更に加工可能である。表面の意匠化及び艶出し又は粗面化を含む深絞り、作用媒体に基く板変形のような別の変形段階（場合によっては再結晶焼鈍及び／又は軟化焼鈍）、再度の軟化焼鈍及び場合によっては機械加工により、同様に続いて化学的又は電解処理により装飾的な陽極処理層を設けることができる原部材が形成される。この製造プロセスにおいても、アルミニウム合金が僅かなみかん色の表皮形成で室温における良好ないし非常に良好な変形特性を持ち、安定な変形特性を持ち、部材の良好な輪郭精度を生じることが証明される。母材として少なくとも９９．９重量％のアルミニウムを含む純アルミニウムが使用されると、陽極処理層は欠陥を持たず、逆に光沢のある表面が実現可能である。

以下３つの表に、本発明によるアルミニウム合金の実施例が示されている。表１は高強度のＡｌＭｇＳｉ合金を示し、表２は中間強度のＡｌＭｇＳｉ合金を示し、表３は低強度のＡｌＭｇＳｉ合金を示している。表４には、公知の比較合金特に出願人の合金ＡＡ６４０１特殊、今まで装飾的な使用のために使用されたが最適な変形特性を示さない中間強度のＡｌＭｇＳｉ合金が示されている。別の比較合金は、強度及び変形特性の最適値を示すが、装飾的陽極処理可能ではない。

装飾的に陽極処理されて変形されるアルミニウム部材を製造する種々の方法の一覧表が次の概略図に示されている。

この方法により、アルミニウム部材が、本発明による合金から、連続鋳造、均質化、押出し成形、延伸、裁断、深絞り、研摩、艶出し、陽極処理により製造された。比較のため同じ方法により、同じに成形される部材が６４０１合金及び６０１６合金から製造された。部材の特性が表５に示されている。表面特性に対して、完成した部材の種々の表面範囲における写像鮮明度が測定された。高い写像鮮明度は、写像の高い光沢及び高い精度、即ち線がまっすぐに示されるか歪んで示されるかの表明である。変形能力は比較変形度として示された。そのため種々の合金の平らな押出し成形異形材片へ最初に塗布された測定格子を利用して、深絞りに類似のプロセス後に、変化した線格子から変形度が求められた。単一の部材としての本発明による部材が良好な変形能力（４０％）で高い写像鮮明度（８０％）を示すことが明らかである。

Claims (17)

1. ０．３〜０．９重量％の珪素、
   ０．１〜０．５重量％のマグネシウム、
   ０．２ 重量％までの鉄、
   ０．１〜０．４重量％の銅、
   ０．０３〜０．２重量％のマンガン、
   ０．０１重量％のチタン、
   全体で０．０８〜０．２２重量％のジルコニウム及び／又はクロム、
   ０．００５〜０．１重量％のストロンチウム、
   最大０．０４重量％の亜鉛、
   存在しないか又は最大０．００５重量％の銀
   単独で最大０．０２重量％の不可避な不純物、
   全体で最大０．１５重量％の不可避な不純物、
   残部アルミニウム
   の組成を持ち、
   珪素とマグネシウムの重量比が１．８：１〜３．３：１である
   ものにおいて、
   鉄とストロンチウムの重量比が３：１〜５：１である
   ことを特徴とする、装飾的に陽極処理可能でよく変形可能で機械的に高く負荷可能なアルミニウム合金。
2. ０．００８〜０．０７重量％ストロンチウムが含まれていることを特徴とする、請求項１に記載のアルミニウム合金。
3. 合金の特徴づけのため０．０００５〜０．００５重量％の銀が含まれていることを特徴とする、請求項１又は２に記載のアルミニウム合金。
4. 次の方法段階、即ち
   ９９．７重量％より多いアルミニウムを含みかつ合金成分を添加されるアルミニウム母材を溶融して、次の全体組成までの
   ０．３〜０．９重量％の珪素、
   ０．１〜０．５重量％のマグネシウム、
   ここで珪素とマグネシウムとの重量比は１．８：１〜３．３：１であり、
   ０．２ 重量％までの鉄、
   ０．００５〜０．１重量％のストロンチウム、
   ここで鉄とストロンチウムとの重量比は３：１〜５：１であり、
   ０．１〜０．４重量％の銅、
   ０．０３〜０．２重量％のマンガン、
   ０．０１重量％のチタン、
   全体で０．０８〜０．２２重量％のジルコニウム及び／又はクロム、
   最大０．０４重量％の亜鉛、
   単独で最大０．０２重量％の不可避な不純物、
   全体で最大０．１５重量％の不可避な不純物、
   残部アルミニウム
   アルミニウム溶湯にし、
   アルミニウム合金溶湯を鋳造して圧延インゴット又は連続鋳造棒にし、
   圧延インゴット又は連続鋳造棒を均質化し、
   変形された原部材となるように熱間加工を行うか又は熱間加工及び冷間加工を行い、
   変形された原部材を、陽極酸化を含めて化学的及び／又は電解表面処理することを特徴とする、装飾的に陽極処理されて成形される部材をアルミニウム合金から製造する方法。
5. 使用されるアルミニウム母材の鉄含有量が決定され、ストロンチウムの添加及び引続く鉄の添加により鉄とストロンチウムの所望の重量比が設定されることを特徴とする、請求項４に記載の方法。
6. アルミニウム母材が少なくとも９９．９重量％のアルミニウムを含む純アルミニウムであることを特徴とする、請求項４又は５に記載の方法。
7. ストロンチウムがアルミニウム−ストロンチウム母合金の形で添加されることを特徴とする、請求項４〜６の１つに記載の方法。
8. ストロンチウムがＡｌＳｒ５母合金又はＡｌＳｒ１０母合金又はＡｌＳｒ３．５母合金の形で添加されることを特徴とする、請求項７に記載の方法。
9. 均質化された圧延インゴットが熱間圧延により薄板素材に熱間加工されることを特徴とする、請求項４〜８の１つに記載の方法。
10. 薄板素材が場合によっては中間焼鈍されて所望の最終厚さに冷間圧延されて、場合によっては再結晶焼鈍及び／又は軟化焼鈍後、表面が意匠化されるか又は平滑にされるか又は粗面化され、再度軟化焼鈍され、続いて板片として所望の長さに切断されることを特徴とする、請求項９に記載の方法。
11. 均質化された連続鋳造棒が、押出し成形により開いているか又は空室の連続異形材に熱間変形され、延伸され、異形材片に裁断されることを特徴とする、請求項４〜８の１つに記載の方法。
12. 異形材片又は板片が、圧延又は曲げ又は深絞り又は作用媒体に基く管変形又は板変形により１つ又は複数の別の段階で冷間変形されることを特徴とする、請求項１０又は１１に記載の方法。
13. 変形された原部材が研摩され、艶出しされ、陽極酸化されかつ圧縮されることを特徴とする、請求項４〜１２の１つに記載の方法。
14. 更に電界着色が行われることを特徴とする、請求項１３に記載の方法。
15. 請求項１〜３の１つに記載の組成を持つアルミニウム合金から成るアルミニウム製品。
16. アルミニウム製品が帯、板、押出し成形異形材又は前記の半製品から変形された部材であることを特徴とする、請求項１５に記載のアルミニウム製品。
17. アルミニウム製品が装飾的に陽極処理されて変形された部材であることを特徴とする、請求項１６に記載のアルミニウム製品。