近年、半導体デバイスの分野において、所望の組成を持った薄膜を形成する成膜処理技術に対する要求がますます高まってきている。その中で特に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相蒸着)法は、光デバイスや高速デバイス等に有用な化合物半導体の薄膜を形成する成膜処理技術として注目されている。
このMOCVD法に用いられる基板回転機構を備えた成膜装置では、反応性を有する原料ガスを基板表面に導入して所定の化学反応を生じさせて所望の薄膜を均一に形成する技術が重要である。
ここで、MOCVD法を実行するための従来の気相成長装置100を、図14に基づいて説明する。
図14に示すように、従来の気相成長装置100においては、チャンバ111を貫通する流路構成部材112が設置されている。流路構成部材112の一方端には、ガス供給口114が設けられている。流路構成部材112の他方端には、ガス排出口115が設けられている。
また、流路構成部材112の底板部の略中央には、円形の開口部116が設けられている。開口部116内には、被処理基板101を保持する基板保持部材120と、基板保持部材120を支持する均熱部材130とが設けられている。流路構成部材112の底板部の下表面と基板保持部材120の上表面とは略同一平面内に位置している。また、均熱部材130の下側には、被処理基板101を所定温度に加熱する基板ヒータ104が設置されている。上記基板ヒータ104は、均熱部材130と同じ大きさを有していることが、熱効率の観点から好ましい。
また、原料ガスGは、外部からガス供給口114を介して流路構成部材112へ導入される。その原料ガスGは、流路構成部材112内において、被処理基板101の主表面に接触する。それによって、被処理基板101の主表面上に薄膜が形成される。その後、原料ガスGは、流路構成部材112からガス排出口115を介して外部へ排出される。
また、均熱部材130の中央部が、回転軸105によって支持されている。したがって、被処理基板101は、均熱部材130及び基板保持部材120と共に回転軸105の回転によって回転されられる。
MOCVD法によって所望の薄膜を形成する際、反応性を有する原料ガスによって基板表面で生起される表面反応は、極めて複雑なメカニズムを有することが知られている。すなわち、基板の温度、原料ガスの温度、流速、圧力、原料ガスに含まれる活性化学種の種類、及び反応系における残留ガス成分等の多数のパラメータが、前記表面反応に寄与するため、MOCVD法でこれらのパラメータを制御して所望の薄膜を形成させることは極めて難しいとされる。
このようなMOCVD法で品質の良い優れた結晶成長を実現するためには、被処理基板101の面内温度差を低減しなければならない。そのため、様々な方式が提案されている。
例えば特許文献1及び特許文献2には、被処理基板の面内温度差を低減するための技術が開示されている。
特許文献1に開示された気相成長装置200では、図17(a)に示すように、チャンバ211内に原料ガスを送り込んで、半導体又は絶縁体の被処理基板201上に、エピタキシャル成長により薄膜結晶を成長させるようになっている。上記気相成長装置200では、サセプタ220の中央部近傍と周辺近傍とで加熱出力割合を異ならせた加熱手段204a・204bを設けることによって、被処理基板201の面内温度差を低減することができる。
また、特許文献2に開示された気相成長装置300では、図18に示すように、チャンバ311内に原料ガスGを送り込んで半導体又は絶縁体の被処理基板301上にエピタキシャル成長により薄膜結晶を成長させるようになっている。
上記気相成長装置300では、円筒状の凹部330aと凹部周囲の環状の凸部330bとを有する均熱部材330を介して被処理基板301に基板加熱ヒータ304の輻射熱を与えることによって、被処理基板301が加熱される。より詳細には、被処理基板301の中心に向けた熱(熱量)は円筒状の凹部330aを通して与えられ、被処理基板301の周囲に向けた熱(熱量)は環状の凸部330bを通して与えられる。
上記構成を採ることによって、被処理基板301に与えられる加熱源の熱量が被処理基板301の中心よりも被処理基板301の周囲の方が大きくなるように傾斜を持たせて被処理基板301を加熱することができる。これにより、被処理基板301の中心の温度と被処理基板301の周辺の温度とが同一に保持されるようになる。
特開平2−262331号公報(1990年10月25日公開)
特開2001−2494号公報(2001年1月9日公開)
特表2005−526394号公報(2005年9月2日公表)
特開平11−111707号公報(1999年4月23日公開)
特開2004−55716号公報(2004年2月19日公開)
特開平8−148437号公報(1996年6月7日公開)
特開平4−211117号公報(1992年8月2日公開)
特開2001−126995号公報(2001年5月11日公開)
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載の気相成長装置200のように、サセプタ220の中央部近傍と周辺近傍とで加熱出力割合を異ならせた加熱手段204a・204bを設けた場合、その中央近傍と周辺近傍とを加熱する領域の設定によっては、被処理基板201の面内温度差を低減することができなくなる場合がある。例えば、特許文献1には、図17(b)において実線で示すように、被処理基板201の温度分布が絶対温度を記載することなく図示されているが、中央近傍の加熱領域の温度と周辺近傍の加熱領域の温度とが合っておらず、一部に温度の低い領域が現れている。
一般的に、被処理基板201の面内温度差を低減する場合には、サセプタ220の周辺近傍を加熱する加熱手段204aを被処理基板201の外周よりも大きく構成して被処理基板201の外側から加熱することによって、被処理基板201の面内温度差をより低減ことができる(特許文献1、特許文献4〜6等)。
しかし、このように加熱手段204aを大きくすることは、被処理基板201の面内温度差を低減するには有効であるが、同時に、被処理基板201以外の領域も加熱してしまうことになる。この被処理基板201以外の加熱領域の大きさ(以下、「ホットゾーン」と呼ぶ)は、原料ガスの熱分解に大きく寄与し、特に、被処理基板201の上流側での気相温度がエピタキシャル成長には非常に重要である。例えば、ホットゾーンが大きくなると、原料ガスが被処理基板201上に到達する前に原料ガスの分解反応が進み、被処理基板201上に所定の膜が形成されないといった課題が生じる。また、その分解反応を制御するためには、原料ガスの供給量を増加させる手法が取られるが、その場合、原料ガスによって奪われる熱量が増加するため、加熱手段204a・204bに供給する熱量が増加し、加熱手段204a・204bの寿命を短くするといった課題が生じる。
次に、特許文献2に記載の気相成長装置300では、被処理基板301に与えられる加熱源の熱量が被処理基板301の中心よりも被処理基板301の周囲が大きくなるように傾斜を持たせて被処理基板301を加熱することができ、被処理基板301の中心の温度と被処理基板301の周辺の温度とは同一に保持されるようになる。しかし、化合物半導体の薄膜を形成する場合には、多くは、成長温度域の異なる多層膜を形成する。したがって、ある特定の成長温度域で被処理基板301の面内温度差が低減されるよう設定された場合、その他の成長温度域では、被処理基板301における面内温度差が大きくなってしまうといった課題が生じる。また、ホットゾーンについては、何ら考慮されておらず、原料ガスGが被処理基板301上に到達する前に分解反応が進み、所定の膜が形成されないといった課題が生じる。すなわち、特許文献2に記載の気相成長装置300では、円筒状の凹部330aと凹部周囲の環状の凸部330bとを有する均熱部材330となっている。したがって、均熱部材330の環状の凸部330bが、被処理基板301の外周に沿って設けられているため、ホットゾーン増大については何ら考慮されていない。
なお、例えば、上記特許文献1と特許文献2とを組み合せた構成も可能である。この場合、加熱手段の加熱出力割合を変更することによって、成長温度域の異なる多層膜をエピタキシャル成長させる場合においても、被処理基板の面内温度差を低減することが可能となる。しかしながら、ホットゾーン増大は避けられず、特許文献1によって生じる課題は避けることができない。
さらに、均熱部材を設けた他の従来技術として特許文献4〜6が開示されているが、いずれもホットゾーン増大を解決するものはない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ホットゾーンを低減させることのできる気相成長装置及び気相成長方法を提供することにある。
本発明の気相成長装置は、上記課題を解決するために、反応炉内に配設され被処理基板を保持する基板保持部材と、上記被処理基板を加熱する基板加熱ヒータと、上記基板保持部材と基板加熱ヒータとの間に配設された熱伝導部材からなる均熱部材とを備えていると共に、上記均熱部材における基板保持部材対向面には、該均熱部材の外周部よりも内側領域に該基板保持部材に向けて突出する凸部が設けられていることを特徴としている。
また、本発明の気相成長装置は、上記課題を解決するために、反応炉内に配設され被処理基板を保持する基板保持部材と、上記被処理基板を加熱する基板加熱ヒータと、上記基板保持部材と基板加熱ヒータとの間に配設された熱伝導部材からなる均熱部材とを備えていると共に、上記均熱部材の基板保持部材対向面における外周縁部には、面取り部が該外周縁部に沿って設けられていることを特徴としている。なお、均熱部材は、被処理基板の面内温度差を低減するものである。
上記の発明によれば、均熱部材の被処理基板面側の凸部における、被処理基板を保持する基板保持部材に占める面積が小さくなることによって、基板保持部材に伝わる熱量を被処理基板に集めることができ、基板保持部材の高温部分の面積も小さくすることができる。この結果、基板保持部材からの原料ガスへの放熱も小さくなり、ホットゾーンを低減することができる。したがって、原料ガスが被処理基板上に到達する前に、分解反応が進み所定の膜が形成されないといった課題を生じることが無くなる。
すなわち、基板加熱ヒータは被処理基板の例えば1.5倍程の大きさが好ましく、かつ均熱部材は基板加熱ヒータと略同じ大きさが好ましいので、従来では、必然的に、ホットゾーンが大きいものとなっていた。
この点、本発明では、熱部材の外周部よりも内側領域に該基板保持部材に向けて突出する凸部が設けられている。換言すれば、均熱部材の基板保持部材対向面における外周縁部には、面取り部が該外周縁部に沿って設けられている。
したがって、例えば、基板加熱ヒータを被処理基板よりも例えば1.5倍程大きく形成し、かつ均熱部材を基板加熱ヒータと略同じ大きさに形成したとしても、凸部の対向面積を均熱部材の全面積に対して小さくできる。そして、均熱部材の基板保持部材対向面における均熱部材の基板保持部材対向面における外周縁部は、面取り部となっているので、この均熱部材の外周部では、均熱部材と基板保持部材との距離が大きくなっている。また、面取り部においては、均熱部材が基板保持部材と非接触となるため、均熱部材と基板保持部材の間に存在する空間を介して熱移動が行われる。このため、均熱部材の外周部における基板保持部材への伝熱効率は、均熱部材の凸部よりも悪くなる。この結果、被処理基板の周囲では温度が下がるので、ホットゾーンを低減することができる。
それゆえ、ホットゾーンを低減させることのできる気相成長装置を提供することができる。
なお、本発明では、凸部は中実であり凸部表面には窪みはない。また、被処理基板を保持する基板保持部材と基板加熱ヒータとの間に均熱部材が介在している。これにより、特許文献7の構成とは異なる。
また、特許文献8は、被処理基板と均熱部材との間に、基板保持部材が介在しない点で、本発明とは異なる。
また、本発明の気相成長装置では、前記均熱部材の凸部表面は、前記基板保持部材と接触していることが好ましい。
これにより、被処理基板を保持する基板保持部材は、均熱部材の凸部表面と接触することによって、均熱部材からの熱量は、均熱部材の凸部から接触熱伝導により、基板保持部材に移動する。この結果、基板保持部材の限られた部分を加熱することができ、基板加熱ヒータの熱量を効率的に被処理基板へ伝えることができ、基板加熱ヒータの供給熱量を抑えることができ、基板加熱ヒータの寿命を長くすることができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記均熱部材の凸部の外形寸法は、前記被処理基板の外形寸法よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。
これにより、被処理基板の外側温度低下を効果的に防止することができ、被処理基板の面内温度差を低減させることができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記均熱部材における前記凸部以外の外形寸法は、前記基板加熱ヒータの外形寸法と同等となるよう構成されていることが好ましい。
これにより、基板加熱ヒータからの放射熱量を均熱部材の裏面で受け取ることができ、基板加熱ヒータの熱量を効率的に被処理基板へ伝えることができる。その結果、基板加熱ヒータの供給熱量を抑えることができ、基板加熱ヒータの寿命を長くすることができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記基板保持部材は、前記均熱部材との対向面に、均熱部材と接触しない非接触部を有していることが好ましい。
これにより、均熱部材における外周部からの熱量が、基板保持部材に伝わり難くなり、基板保持部材の非接触部の温度を低下させることができる。この結果、基板保持部材からの原料ガスへの放熱も小さくなり、ホットゾーンを低減することができるので、原料ガスが被処理基板上に到達する前に、分解反応が進み所定の膜が形成されないといった課題を生じることが無くなる。
また、本発明の気相成長装置では、前記均熱部材における前記基板加熱ヒータと対向する面には、中央部に凹部が形成されていることが好ましい。
これにより、均熱部材の中央部と外周部とで、基板加熱ヒータと均熱部材との距離を変えることができ、基板加熱ヒータからの均熱部材へ伝わる熱量に差をつけることが可能となる。また、均熱部材内での熱伝導経路を狭め、均熱部材の中央部と外周部との間での熱移動を抑えることができるので、均熱部材の温度分布が作り易くなり、被処理基板の面内温度差を低減させることができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記基板保持部材が、石英で構成されていることが好ましい。
これにより、均熱部材から基板保持部材へ伝わった熱量は、熱伝導率の低い石英によって、基板保持部材の周辺部へ移動し難くなるので、被処理基板の面内温度差を低減させることができる。
また、基板保持部材を石英とすることによって、基板保持部材の周辺部へ熱が移動し難くなり、均熱部材から基板保持部材に伝わった熱量は、基板保持部材周辺部へ拡散せずに被処理基板へ移動する。したがって、均熱部材から伝わった熱量を効率的に被処理基板へ伝えることができるので、基板加熱ヒータの供給熱量を抑えることができ、基板加熱ヒータの寿命を長くすることができる。
さらに、石英は、赤外線透過性であり、均熱部材からの輻射熱を透過させるので、均熱部材からの輻射熱が基板保持部材に蓄積されず、その結果、基板保持部材の非接触部の温度を低下させることができる。したがって、基板保持部材からの原料ガスへの放熱も小さくなり、ホットゾーンを低減することができるので、原料ガスが被処理基板上に到達する前に、分解反応が進み所定の膜が形成されないといった課題を生じることが無くなる。
また、石英は、エッチングにより洗浄可能であるため、基板保持部材は繰り返し使用が可能である。この結果、基板保持部材のランニングコストを低下させることも可能となる。
また、本発明の気相成長装置では、前記基板加熱ヒータは、独立に温度制御される複数の加熱領域を備えていることが好ましい。
これにより、成長温度域の異なる多層膜をエピタキシャル成長させる場合においても、被処理基板の面内温度差を低減することが可能となる。
また、本発明の気相成長装置では、前記基板加熱ヒータは、独立に温度制御される少なくとも外側部加熱領域と内側部加熱領域とを備えていることが好ましい。
これにより、被処理基板の外側部と内側部とに対応するように温度制御できるので、被処理基板の面内温度差の低減が容易に図れる。
また、本発明の気相成長装置では、前記基板保持部材は、被処理基板に対向して面状に設けられていることが好ましい。
これにより、基板保持部材は、被処理基板の次に設けられていることになる。したがって、基板保持部材は、被処理基板を直接保持すると共に、面状となっているので、
被処理基板を撓ませることなく安定して保持することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記面取り部は、縦断面形状方形に面取りされていることが可能である。
これにより、例えば、均熱部材の基板加熱ヒータ側面を基板加熱ヒータと同じ大きさに保ちつつ、均熱部材の外周部では、均熱部材と基板保持部材との距離を大きくすることができる。また、面取り部においては、均熱部材は基板保持部材と非接触となるため、均熱部材と基板保持部材の間に存在する空間を介して熱移動が行われる。このため、均熱部材の外周部における基板保持部材への伝熱効率は、均熱部材の凸部よりも悪くなる。この結果、被処理基板の周囲では温度が下がるので、ホットゾーンを低減することができる。
また、本発明の気相成長装置では、前記面取り部は、縦断面形状三角形に面取りされていることが可能である。
この構成においても、例えば、均熱部材の基板加熱ヒータ側面を基板加熱ヒータと同じ大きさに保ちつつ、均熱部材の外周部では、均熱部材と基板保持部材との距離を徐々に大きくすることができる。また、面取り部においては、均熱部材は基板保持部材と非接触となるため、均熱部材と基板保持部材の間に存在する空間を介して熱移動が行われる。このため、均熱部材の外周部における基板保持部材への伝熱効率は、均熱部材の凸部よりも悪くなる。この結果、被処理基板の周囲では温度が下がるので、ホットゾーンを低減することができる。
また、本発明の気相成長方法は、上記課題を解決するために、上記記載の気相成長装置を用いることを特徴としている。
上記の発明によれば、前述の気相成長装置を用いることによって、成長温度域の異なる多層膜をエピタキシャル成長させる際においても、被処理基板以外の加熱領域の大きさを小さくすることができ、ホットゾーンを低減することができる。その結果、原料ガスが被処理基板上に到達する前に、分解反応が進み所定の膜が形成されないといった問題を生じず、品質の良い優れた結晶成長を様々な薄膜成長において実現することができる。また、基板加熱ヒータの超寿命化、ランニングコストの低減を図ることができる。
本発明の気相成長装置は、以上のように、均熱部材における基板保持部材対向面には、該均熱部材の外周部よりも内側領域に該基板保持部材に向けて突出する凸部が設けられているものである。
また、本本発明の気相成長方法は、以上のように、上記記載の気相成長装置を用いる方法である。
それゆえ、ホットゾーンを低減させることのできる気相成長装置及び気相成長方法を提供するという効果を奏する。
本発明の一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
本実施の形態では、本発明の気相成長装置の一例として、横型のフェースアップ型気相成長装置について説明する。図1は、本実施の形態の気相成長装置の基本構成を示す模式断面図である。図2は、図1における被処理基板周辺の拡大図である。図3は、図1における被処理基板周辺の分解斜視図であり、分かりやすいように一部をカットして示す。
本実施の形態の気相成長装置10は、図1に示すように、反応炉としてのチャンバ11内で、被処理基板1に成膜処理を施し、被処理基板1に薄膜を形成するものである。気相成長装置10は、チャンバ11内に、被処理基板1を保持する基板保持部材20と、被処理基板1の面内温度差を低減するための均熱部材30と、被処理基板1を加熱するための基板加熱部としての基板加熱ヒータ4と、薄膜形成のための原料ガスの流路となる筒状の流路構成部材12とを備えている。以下では、便宜上、流路構成部材12側を上側、基板加熱ヒータ4側を下側として説明する。
上記チャンバ1は、チャンバ1内部を大気側と隔離し、気密状態を保持するようになっている。
流路構成部材12には、薄膜形成のための原料ガスGが供給され、この内部で気相成長が行われる。つまり、流路構成部材12は、反応室13を構成する。
流路構成部材12は、原料ガスGの供給方向に基づき、上流側流路構成部材12a、中流側流路構成部材12b及び下流側流路構成部材12cから構成される。中流側流路構成部材12bの一端は上流側流路構成部材12aに、他端は下流側流路構成部材12cに、それぞれ連通されている。上流側流路構成部材12aの端部は、ガス供給口14を構成しており、下流側流路構成部材12cの端部は、ガス排出口15を構成している。中流側流路構成部材12bの下側(基板加熱ヒータ4側)には、円形の開口部16が形成されている。開口部16の内部には、被処理基板1を載置する基板保持部材20が設置されている。
上記均熱部材30は、回転軸5によって、自転可能に保持され、基板加熱ヒータ4からの熱を、被処理基板1に供給する。均熱部材30は、被処理基板1の面内温度差を低減する部材であり、均熱部材30の材料としては、熱伝導率の高い材料であることが好ましい。つまり、均熱部材30は、熱伝導部材からなっていることが好ましい。均熱部材30としては、例えば、グラファイト、SiCコートを施したグラファイト、SiC、モリブデン、タングステン、タンタル等のメタル材料等を用いることができる。均熱部材30を熱伝導率の高い材料から構成すれば、被処理基板1への熱伝導効率が高まり、効率的な加熱が可能となる。なお、均熱部材30の材料は、熱伝導率が高いことに加えて、例えば、原料ガスG(反応ガス)への耐食性、又は高温耐性(耐熱性)等も有することが好ましい。均熱部材30の詳細は、後述する。
上記被処理基板1は、成膜処理を施す基板であり、本実施の形態では、被処理基板1として、単結晶サファイアからなる2インチ(=2×25.4mm)基板を用いている。
上記基板保持部材20は、均熱部材30に回転可能に保持され、基板保持部材20の上部には、基板載置ザグリ部21が設けられ、被処理基板1が設置される。すなわち、基板保持部材20は、被処理基板1に対向して該被処理基板1の次に面状に設けられている。したがって、基板保持部材20は、被処理基板1を直接保持すると共に、面状となっているので、被処理基板1を撓ませることなく安定して保持することができる。
さらに、本実施の形態では、基板保持部材20は、均熱部材30の基板加熱ヒータ4側の最外周31に拘束されるための位置拘束部22を有している。位置拘束部22は、均熱部材30と基板保持部材20とが使用される最高温度において熱膨張した場合でも、干渉しない寸法に(つまり、最小のクリアランスを有するように)設定されている。基板保持部材20に設けられた、均熱部材30の外周側に拘束されるための位置拘束部22は、基板保持部材20を設置する際の、基板保持部材20と均熱部材30との相対位置ずれ、基板保持部材20の回転、及び搬送動作による均熱部材30の移動等を防止することが可能となる。このため、均熱部材30と基板保持部材20との位置ずれに起因する均熱部材30から基板保持部材20への熱移動の不均一を低減することができる。これにより、被処理基板1の面内温度差が低減し、理基板1の温度均一性が向上する。また、均熱部材30と位置拘束部22との一部が接触することにより均熱部材30の温度分布に変化が生じたとしても、その接触部は、均熱部材30の基板加熱ヒータ4側の最外周31であり、被処理基板1から最も離れた位置である。このため、被処理基板1の面内温度分布に与える影響を最小とすることができる。
気相成長装置10を用いて、被処理基板1の被処理面(主表面)に薄膜を形成するときは、原料ガスGをガス供給口14から流路構成部材12で形成された反応室13へ導入する。このとき、基板加熱ヒータ4により均熱部材30を介して被処理基板1が加熱され、被処理基板1上での成膜化学反応が促進される。これにより、被処理基板1の被処理面上に薄膜が形成される。被処理基板1上を通過した原料ガスGは、ガス排出口15より排出される。
次に、本実施の形態の気相成長装置10の特徴的構成について説明する。
本実施の形態では、図2(a)(b)、図3に示すように、均熱部材30は、被処理基板1側の面と基板加熱ヒータ4側の面とが同心円の形状(円盤状)であり、被処理基板1側の面に凸部32を有している。なお、逆説的に述べると、均熱部材30の基板保持部材20の対向面における外周部には、面取り部33が該外周部に沿って設けられている。また、本実施の形態では、被処理基板1が円盤状であるので均熱部材30も同心円の形状となっているが、被処理基板1が例えば方形である場合には、同心の方形に形成される。さらに、本発明では、凸部32は、均熱部材30に別途の部材を積層したものから構成したものであってもよい。また、凸部32は、均熱部材30と一体物として形成されているが、必ずしもこれに限らず、均熱部材30とは別体の凸部32を接合して形成されていてもよい。
この結果、凸部32の先端面(被処理基板1との対向面)は、均熱部材30の基板加熱ヒータ4との対向面よりも面積が狭くなっている。つまり、均熱部材30の基板保持部材対向面における外周部は、縦断面形状方形に面取りされており、均熱部材30の断面形状がハット状になっている。これにより、基板保持部材20における均熱部材30に保持される均熱部材側接触面23に、均熱部材30の形成されない非接触部としての露出部23aが形成される。
すなわち、本実施の形態では、均熱部材30の被処理基板1側に、基板加熱ヒータ4側寸法よりも小さな寸法の凸部32を有している。このことは、均熱部材30の被処理基板1側の面は、基板保持部材20における凸部32に接触する面を除いて露出するような形状であるともいえる。また、この露出部23aは、均熱部材30の基板保持部材20を保持する側の面における、基板保持部材20が保持されない領域ともいえる。
本実施の形態の気相成長装置10は、基板保持部材20が、上記均熱部材30の凸部32表面と接触して保持されること、つまり、基板保持部材20の均熱部材30に保持される均熱部材側接触面23に、均熱部材30の形成されない露出部23aが形成されることを特徴としている。なお、本発明においては、基板保持部材20は上記均熱部材30の凸部32表面とは必ずしも接触している必要はなく、離れていてもよい。
上記構成によれば、均熱部材30の被処理基板1面側の凸部32と被処理基板1を保持する基板保持部材20との接触面積が小さくなることによって、基板保持部材20に熱伝導によって伝わる熱量を被処理基板1に集めることができ、また、基板保持部材20の高温部分の面積(ホットゾーンHZ)も小さくすることができ、基板保持部材20からの原料ガスGへの放熱も小さくなり、原料ガスGが被処理基板1上に到達する前に、化学気相成長による原料ガスGの分解反応が進み所定の膜が被処理基板1上に形成されないといった課題を生じることが無くなる。
また、被処理基板1を保持する基板保持部材20が上記均熱部材30の凸部32表面と接触して保持されることによって、均熱部材30からの熱量は、均熱部材30の凸部32から接触熱伝導により基板保持部材20に移動する。このため、基板保持部材20の限られた部分を加熱することができ、基板加熱ヒータ4の熱量を効率的に被処理基板1へ伝えることができ、基板加熱ヒータ4の供給熱量を抑えることができ、基板加熱ヒータ4の寿命を長くすることができる。
なお、上記の説明では、均熱部材30の面取り部33は、縦断面形状方形に面取りされているとしたが、必ずしもこれに限らない。例えば、面取り部33を、縦断面形状三角形に面取りされているとすることができる。また、必ずしもこれに限らず、湾曲に面取りされていてもよい。これら構成においても略同様の効果を奏する。
また、本実施の形態では、均熱部材30の凸部32は、被処理基板1外径よりも大きくなるように構成されている。すなわち、均熱部材30は、被処理基板1を覆っている。そして、凸部32の凸面の直径φdpは、基板加熱ヒータ4側の面の直径φDPよりも小さく、かつ、被処理基板1の直径よりも大きく、基板保持部材20の基板載置ザグリ部21の直径よりも大きくなっている。
なお、基板保持部材20の厚みをdとすると、凸部32の凸面の直径φdpは被処理基板1の直径+2×d(mm)よりも大きいことが好ましい。また、凸部32の直径φDPと凸面の直径φdpとの差は、2×d(mm)よりも大きいことが好ましい。
これにより、被処理基板1の外側温度低下を効果的に防止することができ、ホットゾーンを低減させ、被処理基板1の面内温度差を低減させることができる。
また、均熱部材30の凸部32以外の寸法、すなわち、均熱部材30の基板加熱ヒータ4との対向面の直径φDPは、基板加熱ヒータ寸法φDHと同等の寸法となるよう構成されている。これは、基板加熱ヒータ4からの放射熱量を効率良く均熱部材30が受けるように、基板加熱ヒータ4と均熱部材30との形態係数を1に近づけるためである。なお、基板加熱ヒータ寸法φDHは、被処理基板1の外径が例えば直径2インチ(2×25.4mm)であれば、例えばその1.5倍程度の長さを有していることが好ましい。
このような構成とすることにより、基板加熱ヒータ4からの放射熱量を均熱部材30の裏面で受け取ることができ、基板加熱ヒータ4の熱量を効率的に被処理基板1へ伝えることができ、基板加熱ヒータ4の供給熱量を抑えることができ、基板加熱ヒータ4の寿命を長くすることができる。
また、基板保持部材20における均熱部材30と対向する面側には、均熱部材30に保持される均熱部材側接触面23に均熱部材30の形成されない露出部23aが形成されている。これにより、均熱部材30からの熱量が露出部23aを介することによって基板保持部材20に伝わり難くなり、基板保持部材20の露出部23a近傍の温度を低下させることができ、基板保持部材20からの原料ガスGへの放熱も小さくなり、ホットゾーンHZを低減することができる。この結果、原料ガスGが被処理基板1上に到達する前に、化学気相成長による原料ガスGの分解反応が進み所定の膜が被処理基板1上に形成されないといった課題を生じることが無くなる。
また、本実施の形態では、図2(a)(b)に示すように、発熱体である基板加熱ヒータ4として、略環状の外周発熱領域4aと略環状の内周発熱領域4bとを有するマルチゾーン加熱ヒータを用いている。このマルチゾーン加熱ヒータの外周発熱領域4a及び略環状の内周発熱領域4bは、それぞれ独立に制御されるようになっている。なお、本発明では、加熱領域は2つに限らず、より多くの複数であってもよい。
一般的に、被処理基板1の温度は、被処理基板1の外周側での温度が低下(中心部の温度が上昇)する傾向がある。例えば、均一温度の円形発熱体が存在する場合に、発熱体の対向面に置かれた被加熱物体を加熱すると、発熱体からの輻射熱により被加熱物体が加熱されると、輻射エネルギーは、被加熱体の中心部が最も高くなる。一方、発熱体と被加熱物体の間に存在する気体の熱伝導によって被加熱物体が加熱されると、加熱領域外の低温部の影響を外周側が最も受け、被加熱物体の中心部の温度が高くなる。このようなことからも、被処理基板1の温度は、被処理基板1の外周側での温度が低下することを説明できる。
そこで、本実施の形態では、被処理基板1の面内温度差を低減するために、被処理基板1の外周側へ与える熱量を増加させる方法が用いている。すなわち、基板加熱ヒータ4としてマルチゾーン加熱ヒータを用いることによって、被処理基板1への供給熱量を可変させている。これにより、被処理基板1の面内温度差を低減することが可能となる。
本実施の形態では、基板加熱ヒータ4の外周発熱領域4aの内径は、被処理基板1の外径と略同等となっている。また、内周発熱領域4bの外径φdhは、外周発熱領域4aの内径よりも、やや小さくなっている。本実施の形態では、このように基板加熱ヒータ4の発熱領域を設定しているが、発熱領域は、上記の範囲に限定される訳ではなく、被処理基板1のサイズ、均熱部材30のサイズ及び材質、基板保持部材20のサイズ及び材質等により、適宜最適に設計されるものである。
また、化合物半導体の薄膜をMOCVD法により形成する場合、多くは、成長温度域の異なる多層膜を形成する。例えば、被処理基板1上に窒化物半導体層を形成して半導体レーザ素子を作成する場合には、基板温度1100℃でGaN層、基板温度1050℃でAlGaN層、基板温度800℃で、量子井戸構造(Well構造)のInGaN層を形成する。このような場合、ある特定の成長温度域で、被処理基板1の面内温度差が低減するよう基板加熱ヒータ4や均熱部材30を形成していても、成長温度域が異なる層では、被処理基板1の温度均一性は悪化してしまう。しかし、本実施の形態のように、基板加熱ヒータ4が複数の加熱領域を備え、これら各加熱領域を互いに独立に制御することによって、成長温度域の異なる多層膜をエピタキシャル成長させる場合においても、被処理基板1の面内温度差を低減することが可能となる。
次に、均熱部材30の変形例を図4に示す。同図に示すように、均熱部材30は、均熱部材30の基板加熱ヒータ4との対向面側における中央部に凹部としてのヒータ側凹部34を有していてもよい。均熱部材30の基板加熱ヒータ4と対向する面にヒータ側凹部34を設けることによって、均熱部材30の中央部と外周部とで、基板加熱ヒータ4と均熱部材30との距離を、均熱部材30の外周部では距離h、中央部では距離Hとなるように変えることができる。この結果、基板加熱ヒータ4からの均熱部材30へ伝わる熱量に差をつけることが可能となる。
また、このように、ヒータ側凹部34を設けることによって、均熱部材30中央部の厚みが薄くなる。均熱部材30内での熱伝導量は、均熱部材30の厚みによって決まるため、均熱部材30中央部の厚みが薄くなることによって、均熱部材30中央部と外周部間での熱移動を抑えられる。つまり、均熱部材30の温度分布が作り易くなり、被処理基板1の面内温度差を低減させることができる。
また、基板保持部材20の材料としては、熱伝導率が低く、かつ、原料ガスGに対する耐食性、高温耐性を有する材料が好ましく、例えば石英が最良である。基板保持部材20を石英で構成することによって、均熱部材30から基板保持部材20へ伝わった熱量は、石英の低い熱伝導率によって、基板保持部材20の周辺部へ移動し難くなるため、被処理基板1の面内温度差を低減させることができる。また、均熱部材30から伝わった熱量を効率的に被処理基板1へ伝えることができ、基板加熱ヒータ4の供給熱量を抑えることができ、基板加熱ヒータ4の寿命を長くすることができる。また、石英は、赤外線透過性であるため、均熱部材30からの輻射熱を透過させる。したがって、基板保持部材20の露出部23aの温度をさらに低下させることができ、基板保持部材20からの原料ガスGへの放熱も小さくなり、ホットゾーンHZを低減することができる。その結果、原料ガスGが被処理基板1上に到達する前に、化学気相成長による原料ガスGの分解反応が進み所定の膜が被処理基板1上に形成されないといった課題を生じることが無くなる。また、石英はエッチングにより洗浄可能であるため、基板保持部材20は繰り返し使用が可能であり、ランニングコストを低下させることも可能となる。
以下、本実施の形態の気相成長装置10により、被処理基板1を加熱したときの被処理基板1における成膜面側の温度分布の測定結果について、従来の気相成長装置100を用いた場合と比較して説明する。
図5は、基板保持部材20を成膜面側から見た温度測定範囲を示す図である。被処理基板1の温度は、放射温度計であるパイロメータを用いて、このパイロメータをガス供給口14側からガス排出口15側へ移動させ、2.5mmピッチにて測定した。なお、測定の際には、基板保持部材20を回転、つまり、被処理基板1を15rpmで自転させながら測定を実施した。また、パイロメータは、焦点における直径がφ6mmであるため、被処理基板1外周部においては基板保持部材20の影響を受ける。このため、被処理基板1の温度分布評価範囲は、被処理基板1中心から±20mmの領域とした。また、被処理基板1の加熱条件は、基板加熱ヒータ4の加熱領域を変化させ、被処理基板1の温度分布が最も小さくなる条件とした。
(1)凸部32の有無による測定結果
まず、図15(a)(b)は、従来の気相成長装置100における被処理基板101周辺の平面図及び断面図である。基板保持部材120の材料として石英を用い、均熱部材130は、SiC製の凸部32が存在しない平形円板を用いた。
図16は、このような気相成長装置100を用い、被処理基板101を加熱したときの、温度測定結果を示すグラフである。
従来の気相成長装置100を用いた場合において、被処理基板101の温度分布が最も小さくなったのは、図16に示すような温度分布であり、±20mm範囲における温度差は、10.1℃であった。
一方、図6は、本実施の形態の気相成長装置10を用いた場合における被処理基板1の温度測定結果を示すグラフである。基板保持部材20の材料は、前述の従来の気相成長装置100と同様の石英を用い、均熱部材30には、図1及び図2で示した凸部32を有するSiC製の均熱部材30を用いた。
その結果、図6に示すように、被処理基板1の温度分布は、全面に渡って均一となり、±20mm範囲における温度差は、1.4℃であった。
(2)被処理基板1以外の領域の温度測定結果
図7は、図14に示す従来の気相成長装置100及び本実施の形態の気相成長装置10を用いたときの、被処理基板中心から±35mm範囲の基板保持部材120及び基板保持部材20の表面温度を測定した結果を示したものである。
従来の気相成長装置100では、被処理基板101の外側領域において、温度が下がっているが、本実施の形態と比較すると、その温度低下はなだらかであり、両者の差は、被処理基板中心から−28mm位置で比較すると、108℃であった。つまり、基板保持部材20の表面温度は、本実施の形態を用いることにより、従来よりも大きく低下させることができ、基板保持部材20からの原料ガスGへの放熱も小さくなり、ホットゾーンHZを低減することができることが分かる。
(3)被処理基板1上に窒化物半導体層(基板温度1100℃でGaN層、基板温度1050℃でAlGaN層)を形成した場合のAlGaN層膜厚及び組成比の測定結果
図8(a)は、図14に示す従来の気相成長装置100及び本実施の形態の気相成長装置10を用いた場合の、被処理基板101・1上に窒化物半導体層(基板温度1100℃でGaN層、基板温度1050℃でAlGaN層)を形成したときのAlGaN層膜厚を測定した結果を示す。両者共に、同一条件にて成膜した結果(温度、原料ガス量等)である。
図8(a)からも明らかなように、本実施の形態では、AlGaN層膜厚の均一性が向上していることが分かる。これは、被処理基板1の面内温度差が低減したことと、ホットゾーンHZが低減したことによるものである。
次に、図8(b)にAlGaN層中のAlの組成比を測定した結果を示す。従来の気相成長装置100では、Al平均組成が6.7%であったが、本実施の形態によると、Al平均組成は13.2%となり、明らかに、Alの組成比が上昇していることが分かる。AlGaN層の成長では、原料ガスGには、III族原料ガスGとして、TMAl(トリメチルアルミニウム)、V族原料ガスGとしてNH3ガスを用いているが、両者の化学気相反応は、比較的低温域(400℃程度)から発生する。そのため、ホットゾーンHZが大きくなると、被処理基板1に到達する以前に、化学気相反応によって、TMAlが消費されてしまい、被処理基板1上に成膜されるAl組成が低下してしまう。したがって、同一条件で成膜したAlGaN層のAl組成が、本実施の形態によって上昇したことは、ホットゾーンHZが低減できたことを示している。
以上の結果から、本実施の形態を用いることによって、原料ガスGが被処理基板1上に到達する前に、化学気相成長による原料ガスGの分解反応が進み所定の膜が被処理基板1上に形成されないといった課題を生じることが無くなる。
なお、本実施の形態では、凸部32の凸面が円状であり、被処理基板1の上面を覆うような構成であったが、凸部32は、必ずしもこれに限らない。例えば、図9(a)に示すように、環状(リング状)の凸部32aの構成としたり、図9(b)に示すように、環状の凸部の一部を分断した凸部32bの構成としたり、図9(c)に示すように、円周上に複数の凸部32c…を配置した構成であってもよい。
なお、本実施の形態では、横型のフェースアップ型単枚処理の気相成長装置10について説明したが、それに限定されるものではなく、種々の気相成長装置に適用することができる。
例えば、図10に示すように、横型のフェースアップ型多枚処理の気相成長装置10aにも適用することができる。図10は、横型のフェースアップ型多枚処理の気相成長装置10aの基本構成を示す、模式断面図である。図11(a)(b)は、図10における被処理基板1周辺の拡大図である。また、図12(a)は均熱部材50を示す斜視図である。
上記気相成長装置10aでは、図11(a)(b)に示すように、均熱部材50は、被処理基板1側の面及び基板加熱ヒータ4側の面が、同心円の形状(円盤状)であり、均熱部材50の被処理基板1側の面に、複数の凸部52…を有している。このため、凸部52の先端面(被処理基板1との対向面)は、均熱部材50の基板加熱ヒータ4との対向面よりも面積が狭くなっている。
これにより、基板保持部材40の均熱部材50に保持される均熱部材側接触面43に、均熱部材50の形成されない非接触部としての露出部43aが形成される。基板保持部材40は、上記均熱部材50の凸部52表面と接触して保持されること、つまり、基板保持部材40の均熱部材側接触面43に、均熱部材50の形成されない露出部43aが形成されている。
上記均熱部材50は、図12(a)に示すように、凸部52の凸面が円状であり、各被処理基板1の下面を覆うような構成である。ただし、必ずしもこれに限らず、例えば、図12(b)に示すように、環状(リング状)の凸部52aとすることもできる。すなわち、図12(b)に示す環状(リング状)の凸部52aの上側に、被処理基板1を複数設けた場合、基板保持部材40に対して凸部52aの外周側と内周側とに露出部43aが形成される。
また、例えば、図13に示すように、前記均熱部材50を分割し、ベース部61上に、個々の被処理基板1に対応する基板態様均熱部材60を配設することも可能である。このように、均熱部材50を分割して基板態様均熱部材60とすることによって、複数枚存在する各被処理基板1毎に基板態様均熱部材60の形状を微調整し、被処理基板1毎の温度分布ムラ、成膜結果ばらつきを調整することが可能となる。
また、複数の被処理基板1…は、基板保持部材40において、図11(a)に示すように、同一円周上に配置されてもよいし、又は基板保持部材40が被処理基板1毎に分離されて設けられ、かつ基板保持部材40と被処理基板1とが同心円状に配置されてもよい。
また、基板保持部材40が複数の被処理基板1…を保持する場合、基板保持部材40自体が、図示しない回転装置によって回転(公転)すると共に、各被処理基板1も、図示しない回転装置によって回転(自転)するように構成してもよい。
以上のように、本実施の形態では、横型のフェースアップ型多枚処理の気相成長装置10aに適用することとして記載しているが、中央放射型、又はシャワー型等様々の気相成長装置にも適用することができる。
また、本実施の形態の気相成長方法は、前述の気相成長装置10・10aを用いて所望の薄膜を形成するものであり、前述の気相成長装置10・10aを用いることによって、成長温度域の異なる多層膜をエピタキシャル成長させる際においても、被処理基板の面内温度差を低減させることができ、被処理基板以外の加熱領域の大きさを小さくすることができる。また、原料ガスGが被処理基板上に到達する前に、化学気相反応が進み所定の膜が形成されないといった問題を生じず、品質の良い優れた結晶成長を様々な薄膜成長において実現することができる。さらに、基板加熱ヒータ4の超寿命化、ランニングコストの低減を図ることができる。
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合せて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。