JP4758038B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体を圧縮するのに用いるスクロール圧縮機に関し、例えば都市ガス配管等に接続して気体の圧力を昇圧するブースタ等に用いて好適なスクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スクロール圧縮機は、ケーシングと、該ケーシング内に設けられ、鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、前記ケーシングに回転可能に設けられた駆動軸と、該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ、鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成する渦巻状のラップ部が立設され、吸込口から吐出口に向けて圧縮気体を移送する旋回スクロールとによって構成されている。
【0003】
この種の従来技術によるスクロール圧縮機では、外部から駆動軸を回転駆動して旋回スクロールを固定スクロールに対して一定の偏心寸法をもって旋回運動させる。これにより、固定スクロールの外周側に設けた吸込口から気体を吸込みつつ、この気体を固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部との間の各圧縮室内で順次圧縮し、固定スクロールの中心部に設けた吐出口から圧縮気体を外部に向けて吐出するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術によるスクロール圧縮機のうち、空調、冷媒用等の冷媒を圧縮する冷媒圧縮機は、吸込口側の冷媒(気体)の圧力が大気圧よりも高いので、吸込口側の冷媒が固定スクロールの外周側と旋回スクロールの外周側との間を介して外部に漏洩することがある。このため、従来技術による冷媒圧縮機では、駆動軸を回転駆動する電動機と共に圧縮機全体を密閉容器内に収納した密閉型圧縮機が広く用いられていた。
【0005】
しかし、密閉型圧縮機の場合、密閉容器内を外気と遮断する構成となっていたから、圧縮動作時に加熱する圧縮機を冷却するためには、冷媒自体を用いた冷却方法か、別途潤滑油を用いた冷却方法を用いなければならなかった。
【0006】
この場合、スクロール圧縮機を冷媒圧縮機に用いるときには問題は生じないものの、都市ガス等のように熱容量の小さい気体の圧縮に用いるときには、気体による冷却能力が不足し、圧縮機を十分に冷却することができないという問題があった。
【0007】
一方、潤滑油を用いて圧縮機を冷却したときには、潤滑油と圧縮気体との分離が難しく、例えば都市ガスのブースタ等のように圧縮気体自体を使用する用途には適用が難しかった。また、潤滑油を用いない無給油式の圧縮機では、潤滑油を用いた冷却方法は適用できないという問題があった。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、大気圧よりも高圧な気体を圧縮するときでも、気体の漏洩を防止できるようにしたスクロール圧縮機を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明によるスクロール圧縮機は、ケーシングと該ケーシングに設けられ鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールとからなる固定側部材と、前記ケーシングに回転可能に設けられた駆動軸と、該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ、鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成する渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとを備えている。
【0010】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記旋回スクロールの外周側には、固定スクロールとの対向面側に開口する環状のシール部材取付溝を設け、該シール部材取付溝内には、前記固定側部材との間で前記圧縮室を外気に対して遮断するため、前記シール部材取付溝の底面に面接触した固定側の環状板部と、前記シール部材取付溝の開口側に設けられた摺動側の環状板部と、前記固定側の環状板部と前記摺動側の環状板部とを連結する連結筒部と、前記摺動側の環状板部の前記連結筒部よりも内径側に設けられ、前記固定スクロールと摺動する摺動リップ部と、前記連結筒部よりも外径側に環状の補助シール取付溝とを有しているシール部材を設け、前記補助シール取付溝内には前記シール部材取付溝との間に締代をもって接触する補助シールを設ける構成としたことにある。
【0011】
このように構成したことにより、固定側の環状板部、摺動側の環状板部、連結筒部、摺動リップ部および環状の補助シール取付溝とを有したシール部材の摺動リップ部を固定スクロールに弾性的に当接させ、固定スクロールと旋回スクロールとの間を気密にシールすることができる。また、シール部材の補助シール取付溝内にはシール部材取付溝との間に締代をもって接触する補助シールを設けているから、シール部材とシール部材取付溝との間を補助シールにより気密にシールすることができる。これにより、圧縮室内で圧縮された気体がシール部材を介して外部に漏洩するのを防止することができる。
【0012】
また、請求項2の発明は、シール部材は、摺動リップ部が固定スクロールを押圧するスラスト方向と、補助シールが補助シール取付溝を押圧するラジアル方向とのなす角度がほぼ90度となるように構成している。このように構成したことにより、補助シールが補助シール取付溝を押圧するラジアル方向の力が、摺動リップ部を固定スクロールに押圧するスラスト方向の力に加わることを防止でき、摺動リップ部を固定スクロールに押圧するスラスト方向の力が増大するのを抑えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるスクロール圧縮機として都市ガス(気体)のガス配管に接続されるスクロールガス圧縮機を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
ここで、図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示し、1はスクロールガス圧縮機の外枠を形成するケーシングで、該ケーシング1は、後述の固定スクロール2と共に固定側部材を構成し、大径部1Aと小径部1Bとからなる段付き筒状に形成されている。
【0015】
2はケーシング1の大径部1Aに固着された固定スクロールで、該固定スクロール2は、その中心が後述する駆動軸3の軸線と一致するように配設された円板状の鏡板2Aと、該鏡板2Aの表面に立設された渦巻状のラップ部2Bと、該ラップ部2Bを外側から取囲むように鏡板2Aの径方向外側に設けられた外縁部2Cと、該外縁部2Cから中心側に向けて板状に折曲って形成されたリング受け2Dとによって大略構成され、鏡板2Aの背面には多数の放熱フィン2Eが設けられている。そして、固定スクロール2は、外縁部2Cがケーシング1の大径部1A先端側に一体に取付けられている。
【0016】
3は先端側にクランク3Aが突設された駆動軸で、該駆動軸3は、ケーシング1の小径部1B内に軸受3B,3Cを介して回転可能に軸支されている。また、駆動軸3は、その基端側に後述のプーリ21が設けられ、軸線を中心に回転駆動する。一方、クランク3Aの軸線は、駆動軸3の軸線に対して所定寸法だけ偏心している。
【0017】
4は駆動軸3の先端側に固着されたバランスウエイトで、該バランスウエイト4は、後述する旋回スクロール5の旋回動作に対して駆動軸3全体の回転バランスをとるものである。
【0018】
5は固定スクロール2と対向してケーシング1内に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール5は、旋回スクロール本体6と背面プレート7とから構成され、該旋回スクロール5は後述の旋回軸受9を用いてクランク3Aに旋回可能に支持されている。
【0019】
ここで、旋回スクロール本体6は、固定スクロール2と同様に鏡板6Aと渦巻状のラップ部6Bとによって大略構成され、鏡板6Aには多数の放熱フィン6Cが設けられている。また、この旋回スクロール本体6の鏡板6A外周側には後述のシール取付部材15が取付けられる環状段部6Dが設けられている。そして、旋回スクロール5は、ラップ部6Bが固定スクロール2のラップ部2Bと所定角度(例えば180度)だけずらして重なり合うように配設され、両者のラップ部2B,6B間には複数の圧縮室8,8,…が画成されている。
【0020】
また、背面プレート7は、旋回スクロール本体6の各放熱フィン6C先端に固着され、その中央部には、ボス部7Aが一体形成されている。
【0021】
9は背面プレート7のボス部7A内に設けられた旋回軸受で、該旋回軸受9は、その内周側に駆動軸3のクランク3Aが挿入されている。そして、旋回軸受9は、駆動軸3のクランク3Aに対して旋回スクロール5を旋回可能に支持する構成となっている。
【0022】
10,10,…はケーシング1と旋回スクロール5の背面プレート7との間に複数配設された自転防止機構としての補助クランク(1個のみ図示)で、該各補助クランク10は、旋回スクロール5の旋回動作時に該旋回スクロール5の自転を防止するものである。
【0023】
11,11は固定スクロール2の外縁側に2箇所形成された吸込口で、該各吸込口11は、固定スクロール2の外縁側に画成された吸込室12内に開口すると共に、後述の流入配管14が接続されている。また、吸込室12は、複数の圧縮室8のうち最外周側の圧縮室8に連通している。これにより、圧縮運転時に流入配管14から供給されたガスは、吸込口11、吸込室12を通過して最外周側の圧縮室8に流入する。
【0024】
13は固定スクロール2の鏡板2A中心部に穿設された吐出口で、該吐出口13は、最内周側の圧縮室8内に開口し、圧縮したガスを外部に吐出するものである。
【0025】
14はU字状ないしコ字状をなした流入配管で、該流入配管14は、中央部分に流入口14Aを有すると共に、該流入口14Aから分岐した2つの流出口14B,14Bを有し、該各流出口14Bの先端は固定スクロール2の各吸込口11に接続されるフランジ14C,14Cとなっている。そして、流入配管14は、流入口14Aから流入したガスを各吸込口11を通じて吸込室12内に供給するものである。
【0026】
15は旋回スクロール5の外周側に設けられたシール取付部材で、該シール取付部材15は、金属材料を用いて断面コ字状をなす環状体として形成され、旋回スクロール5の環状段部6Dに圧入等により嵌合して取付けられている。そして、シール取付部材15には、固定スクロール2のリング受け2Dとの対向面側に位置してシール部材取付溝15Aが開口して設けられている。
【0027】
16はシール取付部材15のシール部材取付溝15A内に設けられたシール部材で、該シール部材16は、固定スクロール2と旋回スクロール5との間を気密にシールするため、周方向に継ぎ目がないリング状に形成されている。そして、シール部材16は、樹脂材料を用いることにより内径側が開口した断面略コ字状の弾性体からなるシールリング17および後述のばね部材18によって構成されている。
【0028】
ここで、シールリング17は、シール取付部材15のシール部材取付溝15A底面に衝合状態で面接触した平坦面17A1を有する固定側の環状板部17Aと、シール部材取付溝15Aの開口側に設けられた摺動側の環状板部17Bと、環状板部17Aと環状板部17Bとの間を連結した連結筒部17Cと、該連結筒部17Cの外径側に設けられた環状凹溝からなる補助シール取付溝17Dとにより構成されている。
【0029】
また、シールリング17の環状板部17Bには、その内径端側に位置して摺動リップ部17B1が突設されている。そして、この摺動リップ部17B1は、シール部材取付溝15Aから突出して固定スクロール2に設けられた後述の摺接リング20に摺動するものである。
【0030】
18はシールリング17の内周側に設けられたばね部材で、該ばね部材18は、断面コ字状の金属材料(例えば、ステンレス材料)からなり、環状板部17A,17B間に嵌着して取付けられている。そして、ばね部材18は、環状板部17A,17Bを拡開させるように、平坦面17A1、摺動リップ部17B1をそれぞれシール部材取付溝15A、摺接リング20に弾性的に押圧している。
【0031】
19はシールリング17の補助シール取付溝17D内に設けられた補助シールで、該補助シール19は例えばOリングからなり、補助シール取付溝17D内に弾性変形した状態で嵌合している。そして、この補助シール19は、シール部材取付溝15Aの周壁面に締代をもって接触し、シールリング17とシール部材取付溝15Aとの間を気密にシールしている。
【0032】
ここで、補助シール19がシールリング17の補助シール取付溝17Dを押圧するラジアル方向(図2中の矢示A方向)と摺動リップ部17B1が固定スクロール2に設けられた後述の摺接リング20を押圧するスラスト方向(図2中の矢示B方向)とのなす角度はほぼ90度になっている。
【0033】
20は固定スクロール2のリング受け2Dに設けられた摺接リングで、該摺接リング20は、ステンレス等の金属材料によって平板なリング状に形成され、旋回スクロール5の鏡板6Aとの間に配設され、シール部材16の摺動リップ部17B1が摺接している。
【0034】
なお、21は駆動軸3の基端側にボルト22等によって一体に取付けられたプーリ、23は該プーリ21に設けられた遠心ファンで、該遠心ファン23は、ケーシング1の小径部1Bに取付けたファンケーシング24内に収容されている。
【0035】
本実施の形態によるスクロールガス圧縮機は上述したような構成を有するもので、次に、このスクロールガス圧縮機の動作について説明する。
【0036】
まず、電動モータ(図示せず)により駆動軸3を回転させると、旋回スクロール5は駆動軸3を中心として所定寸法の旋回半径をもった旋回運動を行い、固定スクロール2のラップ部2Bと旋回スクロール5のラップ部6B間に画成された複数の圧縮室8が連続的に縮小する。これにより、固定スクール2の吸込口11から吸込んだガスを該各圧縮室8で順次圧縮しつつ、この圧縮ガスを固定スクロール2の吐出口13から外部に向けて吐出する。
【0037】
ここで、本実施の形態では、旋回スクロール5の外周側に設けられたシール部材取付溝15A内にはシール部材16を装着し、該シール部材16のシールリング17は、環状板部17Aの平坦面17A1をシール部材取付溝15Aの底面に面接触させ、環状板部17Bの摺動リップ部17B1を摺接リング20に摺接させると共に、補助シール取付溝17D内には補助シール19を設ける構成としている。
【0038】
このため、仮に圧縮室8内のガスが図2中の矢示C方向へとシールリング17の平坦面17A1側から廻り込んだとしても、補助シール19によりこの廻り込んだガスが外部に漏洩するのを遮断することができる。
【0039】
また、シールリング17は、摺動リップ部17B1を摺接リング20に締代をもって摺接できることにより、圧縮室8内のガスが摺動リップ部17B1側から外部に漏洩するのを防止することができる。
【0040】
かくして、本実施の形態では、シール部材16によりガスの漏洩を防止でき、従来技術のように圧縮機全体を密閉容器内に収容する必要がない。このため、部品点数を削減し、製造コストを低減できると共に、各種の冷却手段を用いて圧縮機を容易に冷却することができる。
【0041】
また、シール部材16の環状板部17Aからリップ部を廃止し、シール部材取付溝15Aの底面に接触する環状板部17Aの接触面を平坦面17A1として形成したことにより、シール部材16全体の軸方向長さを大型化することなく、摺動リップ部17B1の摩耗代を増やすことができ、シールリング17の耐久性、寿命等を高めることができる。
【0042】
さらに、図2に示すように補助シール19がシールリング17の補助シール取付溝17Dを押圧するラジアル方向(矢示A方向)と摺動リップ部17B1が固定スクロール2に設けた摺接リング20を押圧するスラスト方向(矢示B方向)とのなす角度をほぼ90度にしたので、補助シール19による矢示A方向に向けた押圧力が摺動リップ部17B1による矢示B方向に向けた押圧力に加わることがなくなる。これにより、摺動リップ部17B1が摺接リング20を必要以上に強く押付けることがなくなり、摺動リップ部17B1の摩耗量を減らしてシール部材16の耐久性を高めることができる。
【0043】
次に、図3は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、接触シールを構成するシールリングの外周側角隅に面取り部を設け、シール取付溝には該面取り部と対応した位置に面取り部と衝合するテーパ面部を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0044】
31は旋回スクロール5の外周側に固定して設けられた本実施の形態に用いるシール取付部材で、該シール取付部材31は、第1の実施の形態で述べたシール取付部材15とほぼ同様に形成され、シール部材取付溝31Aを有している。そして、シール部材取付溝31Aは、外側の周壁面31A1、内側の周壁面31A2および底面31A3等により構成されている。
【0045】
しかし、このシール取付部材31のシール部材取付溝31Aは、周壁面31A1と底面31A3との角隅が全周に亘ってテーパ面部31Bとして斜めに傾斜して形成されている点で、第1の実施の形態のものとは異なっている。
【0046】
32はシール部材取付溝31A内に設けられた本実施の形態に用いるシール部材で、該シール部材32は、第1の実施の形態で述べたシール部材16とほぼ同様に、後述のシールリング33およびばね部材34により構成されている。
【0047】
33は本実施の形態に用いるシールリングで、該シールリング33は、第1の実施の形態で述べたシールリング17とほぼ同様に、平坦面33A1を有する環状板部33Aと、摺動リップ部33B1を有する環状板部33Bと、該環状板部33A,33B間を連結した連結筒部33Cと、該連結筒部33Cの外周側に設けられた補助シール取付溝33Dとによって構成されている。
【0048】
ここで、シールリング33には、環状板部33Aと連結筒部33Cとの間の角隅に亘って円錐面からなるテーパ状の面取り部33Eが形成されている点で、第1の実施の形態のものとは異なっている。
【0049】
34はシールリング33の内周側に設けられた本実施の形態に用いるばね部材で、該ばね部材34についても、第1の実施の形態で述べたばね部材18とほぼ同様に、断面コ字状の金属材料を用いて形成されるものである。
【0050】
35はシールリング33の補助シール取付溝33D内に設けられた補助シールで、該補助シール35についても、第1の実施の形態による補助シール19とほぼ同様にOリングを用いて形成され、シールリング33とシール部材取付溝31Aとの間をシールしている。
【0051】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
特に、本実施の形態では、シール部材取付溝31Aの周壁面31A1と底面31A3との角隅をテーパ面部31Bとして形成し、シールリング33にはテーパ面部31Bと対応した位置に面取り部33Eを設ける構成としたので、シール部材32の組付時にはシールリング33の面取り部33Eをシール取付部材31のテーパ面部31Bと衝合させて組付けることにより、シール部材32の誤組付を防止することができる。
【0053】
また、シールリング33には補助シール取付溝33Dを環状板部33B側に片寄せて配置したので、シールリング33には面取り部33Eを加工するための加工代を十分に確保することができる。
【0054】
なお、前記第1の実施の形態では、シール部材16のシールリング17に設けた補助シール取付溝17Dを断面略コ字状に形成するものとして述べたが、本発明はこれに限ることなく、例えば図4に示す変形例のように、シール部材16′のシールリング17′には断面略L字状の切欠溝からなる補助シール取付溝17D′を設ける構成としてもよい。
【0055】
ここで、シールリング17′は、第1の実施の形態によるシールリング17とほぼ同様に、平坦面17A1′を有する環状板部17A′、摺動リップ部17B1′を有する環状板部17B′、連結筒部17C′および補助シール取付溝17D′により構成されている。
【0056】
また、前記第1の実施の形態では、補助シール19をOリングを用いて形成した場合を例示したが、本発明はこれに限ることなく、例えば補助シールを角リングを用いて形成してもよいし、Xリング、Yリング等の各種のシール部材を用いて形成してもよい。このことは第2の実施の形態についても同様である。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、旋回スクロールの外周側には、固定スクロールとの対向面側に開口する環状のシール部材取付溝を設け、該シール部材取付溝内には、該シール部材取付溝の底面に面接触した固定側の環状板部と、前記シール部材取付溝の開口側に設けられた摺動側の環状板部と、前記固定側の環状板部と前記摺動側の環状板部とを連結する連結筒部と、前記摺動側の環状板部の前記連結筒部よりも内径側に設けられ、前記固定スクロールと摺動する摺動リップ部と、前記連結筒部よりも外径側に環状の補助シール取付溝とを有するシール部材を設け、前記補助シール取付溝内には前記シール部材取付溝との間に締代をもって接触する補助シールを設ける構成としたので、シール部材の摺動リップ部と補助シールとにより圧縮室内の気体が外部に漏洩するのを阻止することができる。
【0058】
このため、従来技術のように圧縮機全体を密閉容器内に収容する必要がないから、部品点数を削減し、製造コストを低減できると共に、各種の冷却手段を用いて圧縮機を容易に冷却することができる。また、補助シールによりシール部材にはシール部材取付溝に接触するリップ部を廃止でき、これによりシール部材を大型化することなく、摺動リップ部の摩耗代を増やすことができ、摺動リップ部の耐久性を高めて、その寿命を延ばすことができる。また、シール部材の全体形状を簡略化でき、シール部材の製作時の作業性を高めることができる。
【0059】
また、請求項2の発明によれば、前記シール部材は、摺動リップ部が固定スクロールを押圧するスラスト方向と、補助シールが補助シール取付溝を押圧するラジアル方向とのなす角度がほぼ90度となるように構成したので、補助シールが補助シール取付溝を押圧するラジアル方向の力が摺動リップ部が固定スクロールを押圧するスラスト方向の力に加わるのを防止でき、摺動リップ部が固定スクロールを押圧するスラスト方向の力が増大するのを抑えることができる。これにより摺動リップ部の摩耗量を小さく抑え、シール部材の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスクロールガス圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】図1中のa部を拡大して示す要部拡大縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態によるスクロールガス圧縮機のシール部材等を示す図2と同様の要部断面図である。
【図4】本発明の変形例によるスクロールガス圧縮機のシール部材等を示す図2と同様の要部断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング(固定側部材)
2 固定スクロール(固定側部材)
2A,6A 鏡板
2B,6B ラップ部
3 駆動軸
5 旋回スクロール
8 圧縮室
15,31 シール取付部材
15A,31A シール部材取付溝
16,16′,32 シール部材
17,17′,33 シールリング
17B1,17B1′,33B1 摺動リップ部
17D,17D′,33D 補助シール取付溝
18,34 ばね部材
19,35 補助シール
Claims (2)
- ケーシングと該ケーシングに設けられ鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールとからなる固定側部材と、前記ケーシングに回転可能に設けられた駆動軸と、該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ、鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成する渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとを備えてなるスクロール圧縮機において、
前記旋回スクロールの外周側には、前記固定スクロールとの対向面側に開口する環状のシール部材取付溝を設け、
該シール部材取付溝内には、前記固定側部材との間で前記圧縮室を外気に対して遮断するため、前記シール部材取付溝の底面に面接触した固定側の環状板部と、前記シール部材取付溝の開口側に設けられた摺動側の環状板部と、前記固定側の環状板部と前記摺動側の環状板部とを連結する連結筒部と、前記摺動側の環状板部の前記連結筒部よりも内径側に設けられ、前記固定スクロールと摺動する摺動リップ部と、前記連結筒部よりも外径側に環状の補助シール取付溝とを有しているシール部材を設け、
前記補助シール取付溝内には前記シール部材取付溝との間に締代をもって接触する補助シールを設ける構成としたことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記シール部材は、前記摺動リップ部が固定スクロールを押圧するスラスト方向と、補助シールが補助シール取付溝を押圧するラジアル方向とのなす角度がほぼ90度となるように構成してなる請求項1に記載のスクロール圧縮機。
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