以下、本発明の吸着ノズルの照合方法を用いた部品実装システム及び部品実装機の実施の形態について図面を参照しながら説明を行う。
図1は、実施の形態における部品実装システムの構成を示す構成図である。
図1に示す部品実装システムは、上流から下流に向けて回路基板(以下、単に「基板」という。)を送りながら電子部品(以下、単に「部品」という。)を実装していくシステムである。
実施の形態の部品実装システムは、図1に示すように、生産ラインを構成する2台の部品実装機100、200と、ノズル照合装置800とを備える。
なお、部品実装機100および部品実装機200は、ともに同様の構成であり同様の機能を有する部品実装機である。そのため、部品実装機200の構成および動作についての説明、並びに部品実装機200とノズル照合装置800との間に情報のやり取りについての説明は省略する。
部品実装機100は、同時かつ独立して、部品実装を行う2つのサブ設備(前サブ設備110及び後サブ設備120)を備える。
前サブ設備110および後サブ設備120はそれぞれ、直交ロボット型装着ステージであり、部品供給部115a及び115bと、マルチ装着ヘッド112(以下、単に「装着ヘッド112」という。)と、XYロボット113と、部品認識カメラ116と、トレイ供給部117と、RW(Read and Write)部701等を備える。
部品供給部115a及び115bはそれぞれ、部品テープを収納する最大48個の部品カセット114の配列からなる。
装着ヘッド112は、それぞれ1つの吸着ノズル301が着脱可能に取り付けられた10個のヘッドを有することで、10個の吸着ノズル301を備えている。
なお、このような装着ヘッド112は、10ノズルヘッドとも呼ばれる。また、装着ヘッド112自体が単にヘッドと呼ばれることもある。
装着ヘッド112は、これら10個の吸着ノズル301を用いて、上述の部品カセット114から最大10個の部品を吸着して基板20に装着することができる。
XYロボット113は、装着ヘッド112を移動させる構成部である。部品認識カメラ116は、装着ヘッド112に吸着された部品の吸着状態を2次元又は3次元的に検査する構成部である。
トレイ供給部117は、トレイ部品を供給する構成部である。ICタグ500は、本発明の照合方法における記憶手段の一例であり、いわゆるRFID(Radio Frequency Identification)技術を利用して非接触で通信を行うデバイスである。また、本実施の形態においては、各吸着ノズル301に取り付けられている。
つまり、10個のICタグ500が10個の吸着ノズル301のそれぞれに1つずつ配置されている。
また、本実施の形態において、それぞれのICタグ500には、自身が配置されている吸着ノズル301に関するデータであるノズルデータが記憶されている。ノズルデータについては、図6を用いて後述する。
RW部701は、ICタグ500に格納された情報の読み出し、およびICタグへの情報の書き込みを行う構成部である。
ICタグ500は、RW部701との通信により受け取った情報を記憶することおよび、記憶している情報をRW部701に送信することができる。
以上のように構成され向かい合って存在する前サブ設備110と後サブ設備120とは、それぞれ相互に独立してかつ並行してそれぞれの担当する基板への部品実装を実行する。
なお、部品実装機100は、ノズル照合装置800からの情報の受信およびノズル照合装置800への情報の送信を行うための通信機能を有している。
また、このように構成された部品実装機100において、RW部701によるノズルデータのICタグ500からの読み出し、およびノズル照合装置800との情報のやり取り等の動作、およびこれら動作の制御は、CPU、記憶装置、および通信インタフェース等を備えるコンピュータによる情報処理により実現される。
ノズル照合装置800は、部品実装機100の装着ヘッド112に取り付けられた吸着ノズル301の適否を判断する装置である。
より詳しくは、装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301が、その吸着ノズル301が吸着し基板へ装着することが予定されている部品に適しているか否かを判断する装置である。
このノズル照合装置800は、データベース部807を備えており、データベース部807には上記判断を行うための情報を含む部品ライブラリが格納されている。部品ライブラリについては図10を用いて後述する。
なお、本実施の形態では、図1に示すように、ノズル照合装置800は部品実装機100とは別のハードウェアである。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、部品実装機100がノズル照合装置800備える構成であってもよい。
また、本図に示す部品実装機100は、具体的には高速装着機と呼ばれる部品実装機と多機能装着機と呼ばれる部品実装機のそれぞれの機能を併せ持つ実装機である。
高速装着機とは、主として、10mm角以下の部品を1点当たり0.1秒程度のスピードで装着する高い生産性を特徴とする設備である。
多機能装着機とは、10mm角以上の大型部品やスイッチ・コネクタ等の異型部品、QFP(Quad Flat Package)、BGA(Ball Grid Array)等のIC部品を装着する設備である。
即ち、この部品実装機100では、ほぼ全ての種類の部品(装着対象となる部品として、0.4mm×0.2mmのチップ抵抗から200mmのコネクタまで)を装着できるように設計されており、この部品実装機100を必要台数だけ並べることで、基板20の生産ラインを構成することができる。
図2は、部品実装機100の主要な内部構成を示す平面図である。
図2に示すシャトルコンベヤ118は、トレイ供給部117から取り出された部品を載せて、装着ヘッド112による吸着可能な所定位置まで運搬するための移動テーブル(移動コンベア)である。
ノズルステーション119は、各種の部品に対応する交換用の吸着ノズル301が置かれるテーブルである。
前サブ設備110(後サブ設備120)を構成する2つの部品供給部115aおよび115bは、それぞれ、部品認識カメラ116を挟んで左右に配置されている。したがって、部品供給部115aまたは115bにおいて部品を吸着した装着ヘッド112は、部品認識カメラ116上を通過した後に、基板20の実装点に移動し、吸着した全ての部品を順次装着していく。また、このような一連の吸着および装着動作を1回以上繰り返すことで、1枚の基板20への部品実装を完了する。
なお、各サブ設備に向かって左側の部品供給部115aを「左ブロック」、右側の部品供給部115bを「右ブロック」とも呼ぶ。
また、装着ヘッド112による部品の吸着、移動、および吸着した部品の基板への装着という一連の動作の繰り返しにおける1回分の動作(吸着・移動・装着)、または、そのような1回分の動作によって実装される部品群を「タスク」と呼ぶ。
例えば、部品実装機100が備える装着ヘッド112により、1回のタスクによって実装される部品の最大数は10となる。
なお、ここでいう「吸着」には、ヘッドが部品を吸着し始めてから移動するまでの全ての吸着動作が含まれ、例えば、1回の吸着動作(装着ヘッド112の上下動作)で10個の部品を同時に吸着する場合だけでなく、複数回の吸着動作によって10個の部品を吸着する場合も含まれる。
図3は、装着ヘッド112の外観図である。図に示す装着ヘッド112は、「ギャングピックアップ方式」と呼ばれる作業ヘッドであり、独立して部品の吸着・装着を行う最大10個の吸着ノズル301が着脱可能である。
なお、図3において、10個の吸着ノズル301を、吸着ノズル301a〜301bと表現しており、これら吸着ノズル301a〜301bは、全て同じ種類の場合もあり、また、それぞれ別の種類の場合もある。
これら10個の吸着ノズル301a〜301bにより最大10個の部品カセット114それぞれから部品を同時に(装着ヘッド112の1回の上下動作で)吸着することができる。
具体的には、装着ヘッド112は、部品供給部115aおよび115bに移動し、部品を吸着する。このとき、例えば、一度に10個の部品を同時に吸着できないときは、吸着位置を移動させながら複数回、吸着上下動作を行うことで、最大10個の部品を吸着することができる。
図4は、部品実装機100の装着ヘッド112に取り付けられる吸着ノズル301のレイアウトを示すための図であり、10個の吸着ノズル301が直線状に配置されることを示している。なお、装着ヘッド112の先端部に取り付けられる吸着ノズル301は、装着される部品の種類等に応じて変更されるものである。
図5は、実施の形態の部品実装機100におけるICタグ500の配置例を示す図である。
図5(a)および図5(b)に示すように、ICタグ500は、例えば、吸着ノズル301を構成するフランジ301cの端面や側面に配置される。
また、例えば、図5(c)〜図5(e)に示すように、吸着ノズル301の先端部のいずれかの場所に配置される。
ICタグ500は、複数の吸着ノズル301のそれぞれに1つずつ配置されており、それぞれのICタグ500は、上述のように、自身が配置された吸着ノズル301に関するノズルデータを記憶している。また、それぞれ、そのノズルデータをRW部701に送信することができる。
なお、図5(a)〜図5(e)の各図は、ICタグ500の配置の例を示す図であり、RW部701が、吸着ノズル301毎に配置されたICタグ500からの情報の取得ができる範囲内であれば、その範囲内のいずれかの箇所にICタグ500が配置されていればよい。
図6は、実施の形態におけるICタグ500に記憶されているノズルデータのデータ構成例を示す図である。
図6に示すように、ノズルデータは、データ項目として、吸着ノズル301毎の識別番号である“ノズルID”、吸着ノズル301の名称を示す“ノズル名称”、吸着ノズル301の各種の寸法を示す“ノズル径・寸法”、吸着対象となる部品名を示す“対象部品”、吸着ノズル301を使用可能な設備名を示す“使用可能設備”、使用可能なノズルステーション名を示す“使用可能ノズルステーション”、吸着ノズル301が取り付け可能な装着ヘッドの名称を示す“使用可能ヘッド”等の各種の属性を示す情報を有している。
図6に示す例では、ノズルIDとして“0205”、ノズル名称として“SXノズル”、ノズル径・寸法として“0.6mm・0.6×0.35mm”、対象部品として“部品A、部品C”、使用可能設備として“M01”が記憶されている。
この対象部品は、吸着ノズル301のノズル径等に応じたサイズおよび形状等の部品であり、予め決定されているものである。例えば、“SXノズル”という名称の吸着ノズル301が、装着ヘッド112に2つ取り付けられている場合、それぞれのノズルデータにおいてノズルIDは互いに異なるが、同じ部品名が記憶されている。
なお、これらノズルデータを構成する各種の情報は、全てがICタグ500に記憶されていなくてもよく、ICタグ500には少なくともノズルIDが記憶されていればよい。
この場合、その他の特性情報等は、例えば、ノズル照合装置800のデータベース部807にそれぞれのノズルIDと対応付けられて格納されていればよい。つまり、この場合、データベース部807は本発明の照合方法における他の記憶手段として機能する。
このような構成であっても、ノズル照合装置800は、ノズルIDから、そのノズルIDの吸着ノズル301についての情報を特定することができる。
また、部品実装中において、あるいは、部品実装後において、RW部701によってICタグ500の使用履歴に関する情報が更新される。
使用履歴に関する情報として記憶される項目としては、図6の例に示すように、吸着ノズル301の使用回数、使用時間、次のメンテナンスの時期を示す次メンテナンス時期、および、直前のメンテナンスの時期を示すメンテナンス履歴がある。
なお、このICタグ500に使用履歴情報を書き込むタイミングは、個々の部品を実装する度、1枚の基板の実装を終える度、あるいは、部品実装機の運転が停止される直前ごと等である。
さらに、ノズルデータは、吸着ノズル301の特性を示す特性情報を有している。具体的には、図6に示すように、“改善設計”、“製造工程”、“ノズル素材”、“鉛フリー部品”、“通常部品”、“メンテナンス済内容”を示す情報を有している。
“改善設計”は、吸着ノズル301または吸着ノズル301が吸着等する部品に発生した不具合を解消するための改善措置として変更された設計により製造されたこと、その改善措置により解消される不具合の内容、および、その改善措置による効果の程度等を示すデータ項目である。
例えば、図6に示す“ノズル欠け1”は、“ノズル欠け”の部分が吸着ノズル301の製造時に欠けに対する耐性を高める改善措置が施されていることを示している。つまり、“欠けにくい”という吸着ノズル301の特性を示す情報でもある。また、“1”の部分が、当該措置の効果である耐性の程度を示している。
なお、欠けに対する耐性を高める改善措置とは、例えば、焼結温度または方法の変更等の設計変更である。
“製造工程”は、設計変更ではない改善措置、具体的には、製造工程における改善措置が施されていることを示す情報である。言い換えると、物づくりの上でなんらかの工夫がなされていること、その工夫の目的または内容等を示す情報である。
例えば、図6に示す“熱処理1”は、吸着ノズル301の製造工程における改善措置として、熱処理を行う炉の変更または炉における配置位置の変更等が行われたことを指す。
なお、熱処理を行う炉の変更または炉における配置位置の変更等の改善措置により、例えば、吸着ノズル301の製造完了後のノズル先端面の表面粗さが改善され、部品の吸着の際にエアーのリークが起こりにくい等の効果を得ることができる。
このように、“改善設計”および“製造工程”として記憶されている各種の情報は、吸着ノズル301の製造時に所定の改善措置が施されていることを示す情報である。
また、“改善設計”および“製造工程”として記憶されている各情報の末尾の数字は、上述の“ノズル欠け1”の説明でも述べたように、それぞれの情報が示す改善措置の効果の程度を示す数字である。
例えば、ある吸着ノズル301のノズルデータに“ノズル欠け2”が記録されている場合を想定する。この場合、その吸着ノズル301は、ノズル欠けの発生を防ぐための改善措置が施されていることにより、欠けに対する耐性が高められており、かつ、その耐性は“ノズル欠け1”が記録されているノズルデータを有する吸着ノズル301よりも高いこと意味する。
つまり、前者の吸着ノズル301の方が、後者の吸着ノズル301よりも欠けにくいことを意味している。
なお、「ノズルが有するノズルデータ」という場合、具体的には、当該ノズルに取り付けられたICタグに記憶されているノズルデータのことを意味する。
また、特性情報の一種である“ノズル素材”は、吸着ノズル301の素材を示す情報であり、素材の名称または組成等を示す情報である。
なお、吸着ノズル301の素材は、当該吸着ノズル301が吸着等する部品との相性の良し悪しを決定する変数の一つである。例えば、金属を素材とする吸着ノズル301は、ある種の部品を吸着した場合、当該部品と固着しやすい等の特性を有している。
“鉛フリー部品”は、鉛フリー部品を吸着および装着する際の推奨または必須の速度等を示す情報である。“通常部品”も同様に、鉛フリー部品以外の通常部品を吸着および装着する際の推奨または必須の速度等を示す情報である。
なお、“鉛フリー部品”および“通常部品”として記録されている“吸着速度”および“装着速度”の末尾の数字は、それぞれの速度の速さを分類する数字である。
具体的には、“吸着速度1”が最も速く、“吸着速度2”、“吸着速度3”の順に遅くなる。“装着速度”についても同様である。
“メンテナンス済内容”は、過去のメンテナンスの内容を示す情報である。図6に示す例では、当該吸着ノズル301に取り付けられているフィルタが、“フィルタ1”に交換されていることを示している。
例えば、“フィルタ1”が、エアーのフィルタリング機能の高いフィルタであれば、当該吸着ノズル301はつまりにくいこと、および、部品の正常な吸着のためにある程高い吸着圧が必要であることが分かる。
このように、特性情報は、吸着ノズル301が、どのような特性を有しているかを示す情報である。具体的には、「欠けにくい」、「つまりにくい」、「部品と固着しにくい」等の特性を示す情報である。
これら特性は、見た目には判別することが困難または不可能なものであり、全く同じ種類の吸着ノズル301であっても、異なる特性を有している場合がある。
例えば、図6に示す“SXノズル”という名称の吸着ノズル301がノズルステーション119に2つ(これらをノズルaおよびノズルbとする。)存在し、ノズルaのみが“ノズル欠け1”が施されているものである場合を想定する。なお、このように、「“ノズル欠け1”が施されたノズル」という場合、“ノズル欠け1”に対応する改善措置が施されたノズルを意味するものとする。他の種類の特性情報についても同様である。
この場合、ノズルaとノズルbとは、例えば焼結温度が異なるだけであり、見た目でaとbのどちらが欠けにくいノズルであるかを判別することはほぼ不可能である。
また、予め各ノズルのノズルデータを確認し、例えば、ノズルaに“ノズル欠け1”が施されたノズルであることを示す色や刻印等を付しておく方法も考えられる。しかし、これら色や刻印等は、使用による磨耗等により消去しやすく、すぐに判別不可能な状態になる。そのため、この方法を現実の部品実装基板の生産に用いてもその効果を期待することはできない。
そこで、本実施の形態の部品実装機100では、各吸着ノズル301のノズルデータを、それぞれのICタグ500に記憶しておく。さらに、RW部701がそれらICタグ500からノズルデータを読み出す。これにより、部品実装機100およびノズル照合装置800は、各吸着ノズル301がどのような特性を有しているかを取得することができる。
図7は、ICタグ500に記憶される特性情報の各種の例を示す図である。
図7に示すように、“改善設計”としては、上述の“ノズル欠け”等があり、それぞれ末尾に1または2が付されている。
また“製造工程”として、図6に示した“熱処理”の他に、“コストダウン”がある。“コストダウン”は、製造コストの削減を目的とした改善措置が取られていることを示す情報であり、末尾の数字が大きいほど、より製造コストが削減されていることを意味する。
また、“ノズル素材”としては、“金属A”および“セラミックα”等の吸着ノズル301の各種素材を示す情報がある。
その他、“鉛フリー部品”および“通常部品”としては、上述のように、吸着時および装着時の推奨または必須速度を示す情報がある。
また、“メンテナンス済内容”としては、“フィルタ1に交換”等のメンテナンス内容を示す情報がある。
ここで、“メンテナンス済内容”は、図6に示す“使用回数”等の使用履歴情報と同じく、部品実装機100においてRW部701によって更新される情報である。
また、“メンテナンス済内容”以外の特性情報は、例えば、それぞれの吸着ノズル301の製造メーカ(以下、「ノズルメーカ」という。)によって、吸着ノズル301に取り付けられたICタグ500に書き込まれる。
つまり、“メンテナンス済内容”以外の特性情報は、吸着ノズル301とともに、吸着ノズル301を使用して部品実装基板を生産するメーカ(以下、「実装メーカ」という。)に取得される。
なお、吸着ノズル301を使用して部品実装を行うまでに、使用される吸着ノズル301に対応する特性情報が当該吸着ノズル301に取り付けられたICタグ500に記憶されていればよい。例えば、実装メーカが、吸着ノズル301とは別途に特性情報をノズルメーカから取得し、実装メーカでICタグに記憶させてもよい。
このように、各種の情報を含むノズルデータが吸着ノズル301ごとのICタグに記憶されており、部品実装機100内に配置されたRW部701によって読み取られる。また、RW部701によって各ICタグに記憶された情報の一部が更新される。
図8は、実施の形態におけるRW部701配置例を示す図である。
RW部701は、上述のように、ICタグ500から情報を読み出すことができる。具体的には、読み出しコマンドを含む所定周波数の電波をICタグ500に送信し、ICタグ500に記憶されている情報を含む所定周波数の電波をICタグ500から受信することができる。また、RW部701は、複数のICタグ500と通信可能な位置に配置される。
例えば、RW部701は、図8(a)に示すように、フライングヘッド部に設けられ、このフライングヘッド部が移動しながらRW部701が各ICタグ500に記憶されている情報を読みだす、または各ICタグ500に情報を書き込む。
または、RW部701は、図8(b)に示すように、各吸着ノズル301が取り付けられる装着ヘッドにそれぞれ設けられていてもよい。
また、図8(c)に示すように、吸着ノズル301が取り付けられる装着ヘッド側の両端部に設けられていてもよい。この場合、1つのICタグ500が発信する電波は、2つのRW部701が受信することができる。そのため、2つのRW部701のそれぞれが電波を受信する方向から、電波の発信元のICタグ500の位置を特定することができる。
また、RW部701は、図8(a)〜図8(c)に示すように、装着ヘッドまたは装着ヘッドの近傍に設置されなくてもよく、例えば、図8(d)に示すように、ノズルステーションに設けられていてもよい。
図8(d)に示す例では、ノズルステーションにおいて、各吸着ノズル301が保持される位置の近傍に、RW部701がそれぞれ配置されている。
なお、部品実装機100は、ノズルステーションのどの位置の吸着ノズル301が、装着ヘッド112のどの位置に取り付けられたかを示す情報を有している。そのため、部品実装機100は、装着ヘッド112に取り付けられた複数の吸着ノズル301の中から、あるRW部701が取得した情報に対応する吸着ノズル301を特定することができる。
また、RW部701を、上述の部品認識カメラ116と同様に、装着ヘッド112が通過する空間の下に固定的に配置してもよい。
この場合、複数の吸着ノズル301が取り付けられた装着ヘッド112がRW部701上を通過する際に、それぞれの吸着ノズル301に取り付けられたICタグ500から情報を読み取ること、および、それらICタグ500に情報を書き込むことができる。
このように、RW部701が各吸着ノズル301のICタグ500に格納された情報、具体的には、図6に示すような内容のノズルデータを読み出すことにより、どの位置にいかなる種類の吸着ノズル301が取り付けられているかという情報(ノズル配列)および、それら吸着ノズル301が有する特性を示す情報等がRW部701によって読み出される。
これら読み出された各種の情報は、部品実装機100と通信するノズル照合装置800に取得され利用される。
なお、ICタグ500が受信する伝送媒体としては、電波だけに限られず、電磁波、赤外線(光通信)やその他の媒体であってもよい。
図9は、実施の形態におけるノズル照合装置800の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
ノズル照合装置800は、上述のように、装着ヘッド112に取り付けられた吸着ノズル301が、基板への実装の対象となる部品に適しているか否かを判断する装置である。
ノズル照合装置800は、図9に示すように、演算制御部801、表示部802、入力部803、メモリ804、ノズル情報格納部805、通信I/F部806、データベース部807、および判断部808を備えている。
演算制御部801は、ノズル照合装置800を操作する操作者からの指示等に従って、メモリ804に必要なプログラムをダウンロードして実行し、その実行結果に従って各構成要素を制御する構成部である。具体的には、CPUや数値プロセッサ等により実現される。
表示部802は、情報を表示する構成部であり、CRT(Cathode−Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等により実現される。
入力部803は、操作者がノズル照合装置800に指示等を入力するための構成部であり、キーボードやマウス等により実現される。つまり、表示部802と入力部803とにより、部品実装機100と操作者とが演算制御部801による制御の下で対話することができる。
メモリ804は、演算制御部801による作業領域を提供する構成部であり、RAM(Random Access Memory)等により実現される。
ノズル情報格納部805には、部品実装機100が有する全吸着ノズル301(装着ヘッド112に取り付けられておらず、ノズルステーション119に保持されている吸着ノズル301も含む)についてのノズルデータが格納されている。これらノズルデータは、例えば、予め上記の全吸着ノズル301のICタグ500からそれぞれが読み出され、ノズル情報格納部805に格納される。
なお、装着ヘッド112に取り付けられた吸着ノズル301についてのノズルデータは、図11を用いて説明する照合処理の際に取得できるため、この照合処理の際に取得したノズルデータをノズル情報格納部805に蓄積していくようにしてもよい。
通信I/F部806は、本発明のノズル照合装置における特性情報取得手段の一例であり、ICタグ500から読み出されたノズルデータに含まれる各種情報を取得するなど、部品実装機100との通信を行うための構成部である。具体的には、LAN(Local Area Network)アダプタ等により実現される。
データベース部807は、ノズル照合装置800による吸着ノズル301の照合処理に用いられる各種データ(実装点データ807a、部品ライブラリ807b、及び実装機情報807c等)を記憶する記憶装置である。具体的にはハードディスク等により実現される。
実装点データ807aは、部品実装機100において基板に実装される部品ごとの、部品名、実装位置、および、装着ヘッド112のどの位置の吸着ノズル301で吸着し基板に装着されるかを示す情報等が記録されたデータである。
なお、この吸着ノズル301の位置と部品との対応は、図6に示す“対象部品”に示される情報に基づいて予め決定されるものである。また、この実装点データ807aに基づき、ある部品実装基板を生産する際のタスクごとの部品群の構成が特定される。
部品ライブラリ807bは、部品実装機100において基板に実装される部品の名称、サイズ、および、部品ごとの適性情報等が記録されたデータである。部品ライブラリ807bおよび適性情報については図10を用いて後述する。
実装機情報807cは、部品実装機100の部品カセット114の並び順など、ノズル照合装置800と通信する部品実装機に関する情報が記録されたデータである。
なお、データベース部807には、どの部品が、装着ヘッド112のどの取り付け位置の吸着ノズル301に吸着されることが予定されているか等の、ノズル照合に係る処理に必要な情報が格納されていればよく、判断部808が、必要なときにこれら情報を読み出すことができればよい。
つまり、複数種のデータが1ファイルであるか、個別のファイルであるか等のデータの持ち方はどのようなものであってもよい。
また、データベース部807に格納されているこれら各種のデータは、必要なときに例えば部品実装機100から通信網経由で取得してもよい。
判断部808は、データベース部807に格納されている部品に関する情報を取得し、部品実装機100においてRW部701が読み出した情報と照合することで、吸着ノズル301が部品の吸着または基板への装着に適しているか否かを判断する処理部である。
具体的には、部品に関する情報として、データベース部807に格納されている部品ライブラリ807bに含まれる適性情報が判断部808により取得される。
また、判断部808は、ノズル情報格納部805及びデータベース部807に格納されている情報に基づいて、部品の装着時において吸着ノズル301が装着ヘッド112の正しい位置にセットされているか、セットされた各ノズルの使用可否(ノズルの使用回数・時間が使用可能回数・時間を越えていないか、ノズルのメンテナンス時期が到来していないか)等を判断することもできる。
図10は、実施の形態における部品ライブラリ807bのデータ構成例を示す図である。
図10に示すように、部品ライブラリ807bは、部品ごとの情報が記録されているデータである。また、データ項目として、部品名、サイズ、および重量等の基本的な項目の他に“適性情報”を有している。
“適性情報”は、本発明の照合方法における部品情報の一例であり、部品の吸着または装着に適した吸着ノズル301に施されているべき改善措置についての条件、もしくは部品の吸着または装着に適した吸着ノズル301の素材等についての条件を示す情報である。
図10に示す例では、例えば、部品Aの吸着等にはセラミック製の吸着ノズル301が適していることを示している。
これは、吸着ノズル301が部品Aを吸着または基板に装着する際、部品Aとその吸着ノズル301とが固着しないための条件として、吸着ノズル301の素材がセラミックであることが要求されていることを意味している。
また、部品Cの吸着等には“ノズル折れ1”以上の改善措置が施された吸着ノズル301が適していることを示している。
これは、吸着ノズル301が部品Cを吸着または基板に装着する際に、その吸着ノズル301が折れないための条件として、“ノズル折れ1”以上が要求されていることを意味している。
なお、“ノズル折れ1”以上とは、本実施の形態においては、“ノズル折れ1”または“ノズル折れ2”のことを意味している(図7参照)。
判断部808は、部品実装機100との通信によって得られる吸着ノズル301の特性情報を含むノズルデータと、この部品ごとの適性情報とを照合することにより、吸着ノズル301の適否を判断することができる。
図11は、実施の形態の部品実装システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図11を用いて、実施の形態の部品実装システムにおけるノズル照合に係る動作の流れについて説明する。
最初に、部品実装機100のRW部701は、装着ヘッド112に取り付けられている各吸着ノズル301のICタグ500をスキャンする(S1)。
これにより、RW部701は、各吸着ノズル301の特性情報を含むノズルデータをそれぞれのICタグ500から読み出す。また、RW部701は、吸着ノズル301の装着ヘッド112における取り付け位置を示す情報を取得する。
ノズル照合装置800の判断部808は、部品実装機100において次のタスク(実装開始時点であれば、最初のタスク。以下同じ。)で吸着され基板へ装着される1以上の部品を、実装点データ807a等から特定する。さらに特定した部品についての適性情報を部品ライブラリ807bから取得する(S2)。
また、判断部808は、通信I/F部806を介し、部品実装機100においてRW部701によって読み出された特性情報を含むノズルデータおよび各吸着ノズル301の取り付け位置を示す情報を取得する。
判断部808は、上記の特定した1以上の部品と、装着ヘッド112における吸着ノズル301の位置との対応関係を、実装点データ807aを参照することで特定する。つまり、次のタスクで実装される1以上の部品が、装着ヘッド112のどの位置に取り付けられている吸着ノズル301で吸着されることが予定されているかを特定する。
さらに、取得した吸着ノズル301の特性情報と部品の適性情報とを、部品ごとに照合する。これにより、吸着ノズル301と部品との全ての組み合わせにおいて、吸着ノズル301が部品の吸着または基板への装着に適しているか否かが判断される(S3)。
例えば、装着ヘッド112において左から1番目(図4参照)に取り付けられている吸着ノズル301の特性情報と、その位置の吸着ノズル301で吸着されることが予定されている部品の適正情報とを照合する。
つまり、現実に装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301と、データ上、その吸着ノズル301に吸着されることが予定されている部品との適合性を判断する。
判断部808は、この照合を、次のタスクにおける部品群のそれぞれの部品について行う。
この照合により、吸着ノズル301と部品との全ての組み合わせについて吸着ノズル301が部品の吸着または基板への装着に適していると判断された場合(S3でYes)、ノズル照合装置800は、その旨、または、次のタスクを実行する指示を部品実装機100に通知する。
部品実装機100は、上記指示等をノズル照合装置800から通知されると、吸着および装着動作を実行する(S4)。また、部品実装の対象となっている基板の全実装点について部品の装着が完了すると(S5でYes)、部品実装システムの動作は終了する。
また、全実装点について部品の装着が完了していない場合(S5でNo)、部品実装システムは、次のタスクについてのノズルデータのスキャン(S1)から、全実装点についての部品の装着の完了確認(S5)までを繰り返す。
また、上記の部品と吸着ノズル301との適合性判断(S3)において、適合しないと判断された吸着ノズル301と部品との組み合わせが存在した場合(S3でNo)、その旨および、適合しないと判断された吸着ノズル301を特定する情報(ノズルID、または、取り付け位置を示す情報等)を部品実装機100に通知する。
部品実装機100は、自身が備える表示装置等に、部品と適合しない吸着ノズル301が装着ヘッド112に取り付けられている旨等を示す警告画面を表示する(S6)。
さらに、警告画面の表示後に自動的に、または、部品実装機100の操作者の明示の指示により、実装条件を変更する(S7)。具体的には、以下の(1)〜(4)の動作を行う。
(1)部品実装機100は、警告対象の吸着ノズル301(以下、「対象ノズル」という。)を、対象ノズルが吸着することが予定されている部品(以下、「吸着予定部品」という。)の吸着および装着に適した吸着ノズル301に交換する。これにより、吸着予定部品を吸着し基板に装着する吸着ノズル301の種類が変更される。
なお、吸着予定部品の吸着等にどの吸着ノズル301が適しているかの判断は、ノズル照合装置800が行う。
具体的には、ノズル照合装置800は、ノズル情報格納部805に格納されているノズルデータの“対象部品”に吸着予定部品の名称を含む吸着ノズル301を特定する。
さらに、特定した中から、吸着予定部品の適性情報と、ノズルデータに含まれる特性情報とを照合することで、吸着予定部品に適した吸着ノズル301を特定する。その後、特定した吸着ノズル301のノズルID等を部品実装機100に通知する。
部品実装機100は、この通知を受け取ることで、対象ノズルを、吸着予定部品に適した吸着ノズル301と交換することができる。
(2)部品実装機100は、対象ノズルはそのままにしておき、タスク構成を変更する。例えば、対象ノズルの特性に適合する部品を対象ノズルが吸着等するように、そのタスクにおいて基板に実装される部品群の構成を変更する。
なお、対象ノズルにどの部品が適しているかの判断は、上記(1)の場合と同じく、ノズル照合装置800が行う。
具体的には、ノズル照合装置800は、対象ノズルのノズルデータと、部品ライブラリ807bに記録されている複数の部品についての適性情報とを照合することで、対象ノズルに適した部品を選択する。さらに選択した部品を特定する情報、例えば部品名を部品実装機100に通知する。
なお、この対象ノズルに適した部品を特定する情報、および上記(1)で述べた、吸着予定部品に適した吸着ノズル301のノズルID等は、ノズル照合装置800が、互いに不適合な部品と吸着ノズル301との組み合わせがある旨を部品実装機100に通知する際に、一緒に通知してもよい。
(3)部品実装機100は、(1)および(2)で説明した実装条件以外の実装条件を変更する。具体的には、対象ノズルが吸着予定部品を吸着する際の吸着圧、対象ノズルが吸着予定部品を基板に装着する際の加圧力、または対象ノズルが移動する際の速度等を変更する。
例えば、対象ノズルの特性情報が“ノズル欠け1”であり、吸着予定部品の適性情報が、“ノズル欠け2”以上を条件としていることを示す場合、対象ノズルの吸着速度および装着速度を規定値より所定の値だけ下げる。
この吸着予定部品の適性情報は、部品実装機100が有する部品ライブラリから読み出せばよい。または、ノズル照合装置800から通信により取得すればよい。または、このような判断自体をノズル照合装置800が行い、部品実装機100に判断結果を通知してもよい。
これにより、吸着予定部品についての実装速度は幾分下がることになるが、対象ノズルに欠けが発生しないようにすることができる。なお、上記の所定の値は、実験等から予め欠け等が発生しないための値を決定しておき、部品実装機100またはノズル照合装置800に記憶させておけばよい。
(4)部品実装機100は、以上述べた(1)〜(3)のうちの複数の動作を同時または順次行う。
部品実装機100は、以上のように、今から実行しようとしているタスクにおける全部品について、適切な吸着ノズル301で吸着等されるように、実装条件を変更する。
また、対象ノズルの交換およびタスク構成の変更を行った場合は、その変更内容をノズル照合装置800に通知する。
ノズル照合装置800は、実装条件が変更された後の、装着ヘッド112に取り付けられている各吸着ノズル301と、その時点で、部品実装機100が実行しようとしているタスクにおける全部品との適合性を判断する(S8)。
また、吸着ノズル301が交換され、交換後の吸着ノズル301のノズルデータが、ノズル情報格納部805に格納されていない場合は、部品実装機100に指示し、交換後の吸着ノズル301のICタグからノズルデータを読み出させる。
このようにして、全部品について吸着ノズル301が適切であると判断した場合(S8でYes)、ノズル照合装置800は、その旨、または、部品実装機100がその時点で実行しようとしているタスクを実行する指示を部品実装機100に通知する。
その後、部品実装システムにおける動作の流れは、部品実装機100が吸着および装着動作を実行するステップ(S4)に移行する。
また、上記の部品と吸着ノズル301との適合性判断(S8)において、適合しないと判断された吸着ノズル301と部品との組み合わせが存在した場合(S8でNo)、ノズル照合装置800は、その旨、または、適合しないと判断された吸着ノズル301を特定する情報を部品実装機100に通知する。
部品実装機100は、表示装置等に、部品と適合しない吸着ノズル301が装着ヘッド112に取り付けられている旨等を示す警告画面を表示する。または警告画面を表示して稼動を停止する(S9)。
例えば、部品実装機100が、吸着予定部品の吸着等に適した吸着ノズル301を有していない場合、つまり、装着ヘッド112およびノズルステーションにそのような吸着ノズル301が存在しない場合を想定する。
この場合、操作者が、吸着予定部品の吸着等に適した吸着ノズル301を手作業で部品実装機100に補充することでこの問題は解決する。
このようにして操作者による手作業を必要とする処理が行われた後に、その旨がノズル照合装置800に通知される。
ノズル照合装置800は、その時点で、装着ヘッド112に取り付けられている各吸着ノズル301と、部品実装機100が実行しようとしているタスクにおける部品群との適合性を判断する(S10)。
全ての部品について吸着ノズル301と適合している場合(S10でYes)、ノズル照合装置800は、その旨、または、当該タスクを実行する指示を部品実装機100に通知する。
その後、部品実装システムにおける動作の流れは、部品実装機100が吸着および装着動作を実行するステップ(S4)に移行する。
また、上記の部品と吸着ノズル301との適合性判断(S10)において、不適合のままの吸着ノズル301と部品との組み合わせが依然として存在する場合(S10でNo)、再度警告を行い(S9)、その後、不適合が解決するまで(S10でYes)警告(S9)を繰り返す。または、操作者による終了指示により、部品実装システムの動作は終了する。
次に、このような動作を行う部品実装システムにおいて、ある適性情報を有する部品を基板に装着する場合を想定し、その際の動作の流れを部品と吸着ノズル301との照合に係る部分を中心に説明する。
図12は、部品実装システムの動作の流れの具体例を示すフローチャートである。
具体的には、部品実装機100において、部品Aおよび部品C(図10参照)を基板に装着する際の部品実装システムの動作の流れを示している。
なお、図12に示す動作の流れにおける各ステップについて、図11に示す動作に対応するステップには同じ符号を付している。
図10に示すように、部品Aの適性情報は、“素材:セラミック”である。つまり、部品Aを吸着し基板に装着する吸着ノズル301の条件として素材がセラミックであることが要求されている。
また、部品Cの適性情報は、“改善設計:ノズル折れ1以上”である。つまり、部品C吸着し基板に装着する吸着ノズル301の条件として、吸着ノズル301の製造時に“ノズル折れ1”または“ノズル折れ2”の改善措置が施されたものであることが要求されている。
部品実装機100のRW部701は、各吸着ノズル301のICタグ500をスキャンし(S1)各吸着ノズル301のノズルデータを読み出す。また、各吸着ノズル301の取り付け位置を示す情報を取得する。
ノズル照合装置800の判断部808は、読み出されたノズルデータ等を部品実装機100から取得し、部品Aおよび部品Cについて、それぞれを吸着する吸着ノズル301との適合性の判断を行う(S3a、S3b)。
具体的には、判断部808は、実装点データ807aを参照し、部品Aおよび部品Cを吸着することが予定されている吸着ノズル301の取り付け位置をそれぞれ特定する。また、部品Aおよび部品Cの適性情報を部品ライブラリ807bからそれぞれ取得する。
さらに、部品Aの適性情報と、部品Aに対応する取り付け位置に現実に取り付けられている吸着ノズル301のノズルデータとが照合され、部品Aに対応する吸着ノズル301の素材がセラミックであれば(S3aでYes)、部品Cの適性情報と、部品Cに対応する吸着ノズル301の特性情報とが照合される。
また、部品Cに対応する吸着ノズル301が“ノズル折れ1”または“ノズル折れ2”の改善措置が施されたものであれば(S3bでYes)、部品Aおよび部品Cともに適切な吸着ノズル301と組み合わされていると判断される。従って、部品実装機100は、この判断結果を受信すると、部品Aおよび部品Cの基板への実装を実行する(S4)。
ここで、部品Aおよび部品Cを吸着することが予定されている吸着ノズル301の種類が、ともに、図6に示すノズルデータを有するSXノズルであると想定する。また、装着ヘッド112には、部品Aを吸着するSXノズルと、部品Cを吸着するSXノズルとが異なる位置に取り付けられていると想定する。
SXノズルは、図6に示すように、対象部品が“部品A、部品C”である。従って、特性情報を考慮しない場合は、SXノズルは部品Aおよび部品Cに適合する吸着ノズルである。
しかし、図6に示すように、SXノズルのノズル素材は“金属A”である。従って、部品Aの条件である“セラミック”を満たさない(S3aでNo)。
そのため、ノズル照合装置800からの指示等により、部品実装機100で警告が発せられる(S6)。
部品実装機100は、警告を発した後に自動的に、または、操作者の明示の指示により、実装条件を変更する(S7)。
例えば、ノズルステーション119に、ノズルデータの対象部品の中に部品Aを含み、かつ、素材がセラミックである吸着ノズル301がある場合、その時点で部品Aを吸着することが予定されている吸着ノズル301が、ノズルステーション119に保持されているそのセラミック製の吸着ノズル301に交換される。
その後、この交換内容がノズル照合装置800に通知され、ノズル照合装置800は、部品Aおよび部品Cについて、それぞれに対応する吸着ノズル301の適合性を判断する(S8)。
本例の場合、適切な吸着ノズル301に交換されており、交換後の吸着ノズル301は部品Aに適合するノズルであると判断される。
また、図6に示すように、SXノズルは特性情報として“ノズル折れ2”を有しており、部品Cの適性情報に示される条件を満たす。結果として、両部品についてノズルが適切であると判断される(S8でYes)。
部品実装機100は、この判断結果を受けて部品Aおよび部品Cを基板に実装する(S4)。
以上説明したように、実施の形態のノズル照合装置800は、予め決定されているタスクごとに、現実に装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301と部品との適合性を判断する。
また、この判断は、個々の吸着ノズル301の特性情報が、それらが吸着することが予定されている部品の適性情報に示される条件を満たすか否かを判断することで行われる。
特性情報は、図6および図7を用いて説明したように、吸着ノズルの、欠けにくい、折れにくい、または部品と固着しにくい等の特性を示す情報であり、通常、吸着ノズルの1つ1つで異なり、かつ、外見で判断が困難な情報である。
つまり、ノズル照合装置800は、部品および吸着ノズル301の外見からは判断が困難な、個々の吸着ノズル301と個々の部品との相性の良し悪しをも考慮した上で、吸着ノズル301の適否を判断することができる。
また、部品実装機100は、その情報を受け取り、吸着ノズル301の交換等を含む実装条件の変更を行うことで、精度よくかつ効率的に部品実装基板の生産を行うことができる。
なお、本実施の形態において、ノズル照合装置800は、タスクごとに吸着ノズル301と部品との適合性の判断および部品実装機100への判断結果の通知を行うとした。しかしながら、他の単位ごとにこれら判断等を行ってもよい。例えば、1つ1つの部品ごとに判断し、その結果を部品実装機100に通知してもよい。
また、吸着ノズル301の特性情報は、図6および図7に示す形式および内容でなくてもよい。例えば、“ノズル欠け1”の代わりに“焼結温度・・℃”でもよく、また“A01”等のコードでもよい。
これらの場合、例えば、“焼結温度・・℃”または“A01”等を“ノズル欠け1”に変換するテーブル等をノズル照合装置800が有していれば、部品の適性情報との照合は可能である。
さらには、このような変換テーブル等を有していなくても、部品の適性情報として、“焼結温度・・℃以上”または“A01以降”等の情報が部品ライブラリ807bに記録されていれば、吸着ノズル301と部品との適合性の判断は可能である。
つまり、特性情報は、吸着ノズルの特性を何らかの形で示すものであればよく、適性情報は、部品が自身を吸着等するノズルに要求する条件を示す情報であり、かつ、直接または間接にその特性情報と比較できる形式であればよい。
また、判断部808は、吸着ノズル301と部品との適合性を判断する際、判断基準の1つとしてノズルデータに含まれる対象部品を参照している。しかし、他の属性も判断基準に取り入れてもよい。
例えば、ノズルデータに含まれる“使用可能設備”および“使用可能ヘッド”を参照し、部品との適合性の判断対象となっている吸着ノズル301が、これらの条件を満たしているかについても確認し、満たしていない場合は、その旨の通知や警告の指示等を行ってもよい。
さらに、判断部808は、ノズルデータに含まれるメンテナンスに関する情報も参照し判断基準の一つとしてもよい。
この場合、例えば、判断対象の吸着ノズル301について、規定された使用可能回数・期限に達していないか否か、メンテナンス時期が到来していないか否か等の使用可否について判断し、判断対象の吸着ノズル301が使用不可である場合、その旨の通知や警告の指示等を行ってもよい。
このように、吸着ノズル301の様々な属性情報を利用して、吸着ノズル301の適否を判断することで、例えば、メンテナンスの必要な吸着ノズル301を使用することによる吸着ミス等の発生も抑制することができる。
さらに、例えば、ノズルデータに含まれる特性情報、および部品ライブラリ807bに含まれる適性情報のみで、吸着ノズル301と部品との適合性が判断できる場合、判断部808は、ノズルデータに含まれる対象部品を参照しなくてもよい。
例えば、ノズルステーション119に保持されているものも含め、部品実装機100が有する吸着ノズル301の全てが、現在、基板に実装しようとしているいずれの部品も吸着し、基板に装着可能である場合、ノズルデータに含まれる対象部品を参照しなくてもよい。
また、例えば、特性情報自体に、例えば“部品Aの吸着・装着に対応済み”等の、対象部品を示唆する情報が含まれている場合も、ノズルデータに含まれる対象部品を参照しなくてもよい。
また、このように、特性情報以外の様々な属性情報を利用する場合、またはしない場合であっても、判断部808は、吸着ノズル301の特性情報と、部品の適性情報とを用いた判断を行うため、上述のような、吸着ノズル301の欠け等の、吸着ノズル301と部品との相性の悪さを起因とする不具合の発生は抑制される。
また、実施の形態として部品実装機100が備える吸着ノズル301の適否を判断する構成および動作について説明を行った。しかし、本発明は、部品を保持するための吸着ノズル301以外の部材、例えば、部品を把持して基板上に装着、挿入するメカチャック等に適用することもできる。
また、ノズルデータを記憶する記憶手段としてICタグ500を用いて説明を行ったが、記憶手段は、ICタグ500以外にも、RW部701が読み出し(または、読み出し及び書き込み)可能な、例えば、2次元バーコード、メモリ等によっても実現可能である。
また、ノズルデータを記憶する記憶手段は、ICタグ500のようにRW部701との非接触通信が可能なものでなくてもよい。
例えば、吸着ノズル301にノズルデータが記憶されたメモリ等の記憶手段が備わっており、吸着ノズル301が装着ヘッド112に取り付けられることにより、RW部701側と当該記憶手段側の双方に設けられた接点が接続され、RW部701と当該記憶手段とが通信可能となる構成であってもよい。
このような構成であっても、RW部701は、メモリ等の記憶手段からのノズルデータの読み出し、または、読み出し及び書き込みをすることができる。
また、ノズル照合装置800による判断結果に基づく実装条件の変更の一例として、部品実装基板の生産開始後に、部品実装機100がタスク毎にノズル照合装置800から判断結果を受け取り、必要に応じて装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301を交換するとした(図11(S7)(1)参照)。
しかしながら、ノズル照合装置800は、このように部品実装基板の生産が開始された後に所定のタイミングごとに吸着ノズル301の適否の判断を行うのではなく、生産開始前に予め適切な吸着ノズル301を選択しておいてもよい。
例えば、生産開始前に、その時点で基板に実装しようとしている部品のそれぞれについて、ノズル照合装置800が特性情報と適性情報とを照合することにより適切な吸着ノズル301を選択しておく。部品実装機100は、その選択により決定された部品と吸着ノズル301との組合せを示す情報を受け取り、その組み合わせに従って、必要に応じて吸着ノズル301を交換しながら部品実装基板の生産を行う。
これにより、例えば、生産開始前に、その生産に必要な全ての吸着ノズル301を用意し、ノズルステーション119に保持させておくことができる。そのため生産途中に吸着ノズル301を補充するような手間が発生することがない。
また、このような構成であっても、適合性ありと判断された吸着ノズル301と部品との組み合わせで部品が吸着され基板に装着されることになる。つまり、当然に、吸着ノズル301と部品との相性の悪さを起因とする不具合の発生は抑制される。
また、吸着ノズル301の各部位(ノズル部、反射板など)ごとにICタグ500を配置し、それぞれに、ノズルデータや、その配置された部位に関する情報等を記憶させておいてもよい。
これにより、ノズル照合装置800は、例えば、各部位の組み合わせが吸着対象の部品に適合しているかを判断することができる。
また、本実施の形態の部品実装機100は、図2等に示すように、2つの装着ヘッド112を備え、各装着ヘッド112が、それぞれの基板に対し部品を実装するものである。
しかし、他の構成の部品実装機であってもよく、例えば、2つの装着ヘッドで1枚の基板に対し交互に部品を実装する部品実装機であってもよい。
また、本実施の形態において、吸着ノズル301は、図4に示すように1列に配置されているとした。しかし、他の形態で配置されていてもよい。例えば、複数の吸着ノズルが2列以上に並べられて配置されていてもよく、回転式のヘッドの円周上に吸着ノズルが配置されていてもよい。
つまり、部品実装機の構成や、吸着ノズルの配列の形態がどのようなものであっても、ノズル照合装置800が、ノズルの適否判断に必要な特性情報等を取得し、適否判断を行う機能が滅せられることはない。
また、部品実装機100で、部品の吸着エラーまたは認識エラー等の異常が発生した時に、その部品を吸着している吸着ノズル301が、その部品と適合しているのかを判断してもよい。
また、吸着ノズル301の異常が検出された場合、例えば、吸着ノズル301の先端を部品認識カメラ116で撮像した結果、先端が汚れていることが検出された場合、吸着ノズル301と、その吸着ノズル301がその前に吸着した部品とが適合していたのかを判断してもよい。
このようにノズル先端が汚れている場合、その前に吸着ノズル301が吸着した部品と、その吸着ノズル301とが固着を起こしており、その結果、ノズル先端が汚れたことが考えられるからである。
また、ノズル照合装置800が通信を行う部品実装機において、吸着ノズルにICタグ500等の記憶手段が配置されていない場合を想定する。この場合、例えば、当該部品実装機で部品実装に使用される吸着ノズルのノズルIDを、予めノズル照合装置800に入力しておく。また、それらノズルIDに対応する吸着ノズルそれぞれの特性情報をデータベース部807に記憶させておく。
これにより、判断部808は、入力されたノズルIDに対応する特性情報、つまり、当該部品実装機で使用される吸着ノズルの特性情報をデータベース部807から取得することができ、それら吸着ノズルの適否判断を行うことができる。
つまり、このような場合であっても、ノズル照合装置800は、基板へ装着しようとしている部品それぞれに適合する吸着ノズルを選択することができる。また、当該部品実装機は選択された吸着ノズルを用いて部品を基板へ装着することで、吸着ノズルと部品との相性の悪さに起因する不具合の発生を抑制することができる。
さらに、本実施の形態の部品実装機はモジュラー機であるとしたが、他の機種の部品実装機でもよい。例えば、回転機構を有する装着ヘッドを備え、部品を高速実装することが可能な部品実装機であるロータリー機におけるノズルの照合方法としても本発明を適用する事ができる。
(変形例1)
実施の形態の変形例1として、ノズル照合装置800が、上述のノズル照合に係る処理に加え、ノズル配列が適切であるか否かを判断する場合について述べる。
具体的には、本変形例におけるノズル照合装置800は、部品実装機100における現実のノズル配列が、正しいノズル配列であるか否かを判断する。
ここで、本変形例における「正しいノズル配列」とは、言い換えると、各吸着ノズル301の並び順であり、各吸着ノズル301の装着ヘッド112における適切な取り付け位置である。
この適切な取り付け位置は、例えば、あるタスクにおける部品群の構成と、部品実装機100における部品カセット114の並び順により決定することができる。
例えば、あるタスクにおける部品群の構成が、部品A、B、Cであり、装着ヘッド112にノズルa、b、cが取り付けられているとする。また、ノズル照合に係る処理の結果、ノズルa、b、cは、この順に、部品A、B、Cの吸着等に適していると判断された場合を想定する。
さらに、部品実装機100において、部品A、B、Cを部品実装機100に供給するそれぞれの部品カセット114が、“部品A、部品B、部品C”の順に並んでいると想定する。
この場合、ノズルa、b、cが装着ヘッド112においてどのような位置に取り付けられていても、各ノズルは、それぞれ適合する部品を吸着することは可能である。
しかし、この時点で、装着ヘッド112に“ノズルa、ノズルb、ノズルc”の順に隣接して取り付けられていれば、各ノズルは、装着ヘッド112の一回の上下動作で同時に部品を吸着することができる。
その一方で、このように取り付けられていなければ、各部品を各ノズルが吸着するためには、装着ヘッド112が上下動作を複数回行うことが必要となる。
つまり、このような想定において、装着ヘッド112における正しいノズル配列の1つは、最も効率よく各部品を吸着できる“ノズルa、ノズルb、ノズルc”である。
そこで、本変形例におけるノズル照合装置800は、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性を判断することに加え、ノズル配列が適切であるか否かを判断し、その判断結果を部品実装機100に通知する。これにより、部品実装機100に、さらに効率よく部品実装基板を生産させることができる。
なお、上記の正しいノズル配列の決定方法は一例であり、例えば、各吸着ノズル301が吸着した部品を効率よく基板に装着できることを基準に決定してもよい。つまり、部品実装を効率的に行うためのノズル配列であれば“正しいノズル配列”として決定してもよい。
このようなノズル配列の適切さを判断する際のノズル照合装置800の動作を、図13を用いて説明する。
図13は、ノズル照合装置800が、部品実装機100における現実のノズル配列が正しいノズル配列であるか否かの判断を行う場合の動作の流れを示すフローチャートである。
図13に示すように、ノズル照合装置800は、まず、図11および図12を用いて説明した、部品と吸着ノズル301との照合に係る処理(図11のS2、S3、S8、およびS10に相当)を実行する(S20)。
また部品実装機100は、必要に応じて実装条件の変更(図11のS7に相当)を行う。
その結果、部品実装機100は、あるタスクで基板に実装される部品のそれぞれについて、適切な吸着ノズル301で実装することができる状態となる。
さらに、ノズル照合装置800は、部品実装機100におけるその時点でのノズル配列が正しいノズル配列であるか否かを判断する。
具体的には、判断部808が、部品実装機100のRW部701にノズルデータをスキャンさせ、その時点での各吸着ノズル301の装着ヘッド112における位置を示す情報を取得する(S21)。
判断部808は、取得した、各吸着ノズル301の位置を示す情報から、現実のノズル配列を特定する(S22)。
なお、上述の取得動作(S21)は行わず、上述のノズル照合に係る動作(S20)を行った際に部品実装機100から取得済みの、各吸着ノズル301の装着ヘッド112における位置を示す情報から、現実のノズル配列を特定してもよい。
さらに、判断部808は、そのタスクにおける正しいノズル配列を示す情報を取得する(S23)。
この正しいノズル配列を示す情報は、実装点データ807aにより特定される、各タスクにおける部品群の構成に基づいて、上述のように、効率よく部品を吸着することを基準として予め決定しておき、例えば、データベース部807に記憶させておけばよい。
また、部品実装機100においてタスク構成の変更(図11のS7(2))がなされた場合は、その変更後のタスクにおける部品群の構成から、例えば判断部808が生成すればよい。
判断部808は、現実のノズル配列と、正しいノズル配列とを比較する(S24)。比較の結果、現実のノズル配列が正しいノズル配列であれば(S24でYes)、その旨、または、部品実装を実行する指示を部品実装機100に通知する。
部品実装機100は上記の指示等を受け取ると、部品を基板に実装する動作を開始する。
また、現実のノズル配列が正しいノズル配列でなければ(S24でNo)、その旨、警告を発する指示、正しいノズル配列を示す情報、およびノズル配列を変更する指示等を部品実装機100に通知する。
部品実装機100では、上記指示等を受け取ると、警告を発し、装着ヘッド112がノズルステーション119に移動するなどして、正しいノズル配列になるように、各吸着ノズル301の位置を変更する。
変更後、ノズル照合装置800により、再度、ノズル配列の確認(S21〜S24)が行われる。
このように、ノズル照合装置800は、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性を判断することに加え、ノズル配列が適切であるか否かを判断することができる。
これにより、さらに効率的な部品実装基板の生産を部品実装機に行わせることができる。
(変形例2)
実施の形態の変形例2として、ノズル照合装置800が、予め設定された条件に基づいてノズル照合を行う場合について説明する。
上述の実施の形態におけるノズル照合装置800は、吸着ノズル301のノズルデータを、部品ごとの適性情報と照合することで、吸着ノズル301の適否を判断していた(図11等参照)。
しかし、吸着ノズル301と部品との適合性を判断する以前に、予め設定された条件に応じて部品実装機において使用されるべき吸着ノズル301が決定できる場合がある。
例えば、部品実装機が、全体として高速に実装作業を行うモードである“高速運転モード”で稼動される場合がある。また、例えば、部品実装機において“高速運転1”、および“高速運転1”よりも高速な“高速運転2”という高速の度合いが異なる運転モードが用意されており、操作者が選択できる場合もある。
このように、部品実装機が、高速運転されることが予め分かっている場合、その高速運転中に不具合が発生しないように、その部品実装機で使用される吸着ノズルに求められる条件を決定することができる。
そこで部品実装機100において、高速運転モードが設定されている場合、つまり、予め、装着ヘッド112の移動速度が通常よりも速くなるなど、部品実装機100全体として、速い速度で運転されることが分かっている場合を想定する。
この場合、部品実装機100において装着ヘッド112に取り付けられている全ての吸着ノズル301には、その高速な運転速度に対応するために、例えば、欠けにくいもの、または折れにくいものなどの特性を有していることが要求される。
そのため、部品実装機100において、部品実装を開始する前に、ノズル照合装置800が、装着ヘッド112に取り付けられている全ての吸着ノズル301が、例えば欠けにくいもの、または折れにくいものであるか否かを判断する。
部品実装機100はこの判断結果に基づき、当該部品実装に適した吸着ノズル301に交換する。これにより、部品実装中に吸着ノズル301が欠けるなどの不具合の発生を抑制することができる。
図14は、ノズル照合装置800が、予め設定された条件に基づき吸着ノズル301の適否を判断する際の動作の流れを示すフローチャートである。
判断部808は、部品実装機100のRW部701にノズルデータをスキャンさせ、その時点で装着ヘッド112に取り付けられている各吸着ノズル301のノズルデータを取得する(S30)。
さらに、判断部808は、予め設定された条件を取得する(S31)。
具体的には、部品実装機100に設定された運転モードを取得し、例えば、図に示すように、運転モードが“高速運転1”であれば“ノズル欠け1以上”、および“高速運転2”であれば“ノズル欠け2以上”という条件を取得する。
このような吸着ノズル301についての条件の取得は、例えば、上記の対応関係が記録されたテーブルを判断部808が有していればよい。または、部品実装機100が、このようなテーブルを有しており、自機に設定された運転モードに応じた条件をノズル照合装置800に与えてもよい。
判断部808は、取得した各吸着ノズル301のノズルデータに含まれる特性情報が、取得した条件を満たすか否か判断する(S32)。
例えば、部品実装機100に設定されている運転モードが“高速運転1”であり、取得した条件が、“ノズル折れ1以上”である場合、全ての吸着ノズル301について、それぞれのノズルデータが特性情報として“ノズル折れ1”または“ノズル折れ2”を有しているか否かを判断する。
全てのノズルデータが特性情報として“ノズル折れ1”または“ノズル折れ2”を有している場合(S32でYes)、その旨を部品実装機100に通知して、ノズル照合に係る動作を終了する。
特性情報として“ノズル折れ1”および“ノズル折れ2”のいずれも有していないノズルデータがある場合、つまり、取得した条件を満たさない吸着ノズル301が存在する場合(S32でNo)、その旨、警告指示、または、警告対象の吸着ノズル301を、取得した条件を満す吸着ノズル301に交換する制御を、部品実装機100に対して行う。
その後、装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301が交換されると、判断部808は、全ての吸着ノズル301が条件を満たす(S32でYes)まで、上記のノズル照合の各種処理(S30〜S34)を繰り返す。
このように、ノズル照合装置800は、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性を判断するだけでなく、予め設定された条件を用いて、個々の吸着ノズル301の使用の可否を判断することができる。
これにより、例えば、部品実装機100に、自機に設定され運転モード等の動作態様に応じた、適切な吸着ノズル301を使用させることができ、所定の動作態様であること、または動作態様が変化したことを起因とする不具合の発生を抑制することができる。
なお、上述の、運転モードが“高速運転1”であれば“ノズル折れ1以上”等の対応関係は一例であり、他の対応関係であってもよい。
また、部品実装機100に設定された運転モードに基づくのではなく、部品実装機100が高速運転が可能であるか否か等の、部品実装機100がそもそも有している能力や機能等に応じて、部品実装機100で使用する吸着ノズル301を選択してもよい。
さらに、例えば、所定の改善措置が施されていない吸着ノズル301、言い換えると古い吸着ノズル301を部品実装機100で使用したくない場合等においては、単に、当該改善措置が施されていることを条件として、使用する吸着ノズル301を選択してもよい。
(変形例3)
実施の形態の変形例3として、ノズル照合装置800が、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性の判断を行わず、部品実装機100に設定されている実装条件を、現実に装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301の特性に適合する実装条件に変更させる場合について説明する。
上述の実施の形態におけるノズル照合装置800は、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性の判断結果を部品実装機100に通知していた。また、通知を受けた部品実装機100は、互いに不適合な部品と吸着ノズル301との組み合わせがある場合、実装条件を変更(図11のS7等)していた。
しかし、ノズル照合装置800は、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性の判断を行わず、現実に装着ヘッド112に取り付けられている吸着ノズル301に適した実装条件に変更するように部品実装機100を制御してもよい。
また、このような機能は、当然に部品実装機100が有していてもよく、部品実装機100が、現実に装着ヘッド112に取り付けられている各吸着ノズル301のノズルデータに基づき、それら吸着ノズル301に適した実装条件に変更してもよい。
このような動作によっても、仮に、ある部品が、その部品の吸着等に適しない吸着ノズル301に吸着されることが予定されていた場合であっても、吸着速度等の実装条件が変更されるため、吸着ノズル301と部品との相性の悪さを起因とする不具合の発生を抑制することができる。
図15は、ノズル照合装置800が、部品実装機100から取得したノズルデータに基づき、実装条件を変更させる際の動作の流れを示すフローチャートである。
判断部808は、部品実装機100のRW部701にノズルデータをスキャンさせ、その時点で装着ヘッド112に取り付けられている各吸着ノズル301のノズルデータを取得する(S40)。
さらに、判断部808は、各吸着ノズル301のノズルデータからそれぞれの特性情報を読み出し、それら特性情報に対応する実装条件を取得する(S41)。
具体的には、例えば、ある吸着ノズル301のノズルデータが“ノズル欠け1”を特性情報として有している場合、“吸着速度 2以上”という実装条件を取得する。
このような実装条件の取得は、例えば、図16に示すような、吸着ノズル301の特性と実装条件との対応関係が記録されたテーブルを判断部808が有していることで実現される。
図16は、吸着ノズル301のノズルデータに含まれ得る複数種の特性情報と、それら特性情報に対応する実装条件との対応関係の例を示す図である。
図16に示すように、例えば、“ノズル欠け1”には、実装条件として“吸着・装着 速度2以上”が対応する。
これは、ノズルデータに特性情報として“ノズル欠け1”を有する吸着ノズル301であれば、実装条件として“吸着・装着 速度2以上”であることが求められる、または許容されることを意味している。
具体的には、その吸着ノズル301がある程度の“欠けにくさ”を特性として有していることから、「吸着・装着の速度が2まで許容される」ことを意味している。
同様に、例えば、“金属A”には、実装条件として“吸着圧力 30mPa以下”が対応する。
これは、ノズルデータに特性情報として“金属A”を有する吸着ノズル301であれば、素材である金属Aの部品との固着性を考慮し、「吸着圧力が30mPa以下であることが求められる」ことを意味している。
このように、ノズルデータの各種の特性情報は、部品とノズルとの固着等の不具合が発生しないような安全な実装条件と対応付けられている。
判断部808は、このような対応関係が記録されているテーブルから、全ての吸着ノズル301について、それぞれの特性に対応する実装条件を取得する。
判断部808は、取得した実装条件に変更するように部品実装機100を制御する(S42)。または、取得した実装条件を部品実装機100に設定する。
以上の動作は、部品実装の対象となっている基板の全実装点について部品の装着が完了していなければ(S43でNo)、完了するまで(S43でYes)繰り返し行われる。
このように、ノズル照合装置800は、個々の部品と個々の吸着ノズル301との適合性を判断せずに、部品実装機100で現実に使用される吸着ノズル301の特性に基づいて、部品実装機100に設定されるべき実装条件を取得し、部品実装機100に設定することができる。
これにより、現実に使用される吸着ノズル301の特性に応じた、吸着速度、装着速度、または吸引圧等の実装条件で部品実装機100を動作させることができ、吸着ノズル301と部品との相性の悪さを起因とする不具合の発生を抑制することができる。
なお、1つのタスク内において、吸着ノズル301ごとに異なる値等を設定することができない実装条件については、最も安全な実装条件を部品実装機100に設定すればよい。または、全ての吸着ノズル301に共通する特性に基づいて決定した実装条件を部品実装機100に設定すればよい。
例えば、1つのタスク内において、各吸着ノズル301の吸着圧は同じ値しか設定できない場合を想定する。
また、10本の吸着ノズル301のうち、1本だけが素材が“金属A”であり、他の吸着ノズル301の素材は“セラミックα”である場合を想定する。
ここで、“金属A”は“セラミックα”より部品と固着し易い素材である。そのため、全ての吸着ノズル301について“金属A”に対応する吸着圧が設定されていれば、いずれの吸着ノズル301も、部品と固着することがない。
そのため、判断部808は、部品実装機100に設定する実装条件として、“金属A”に対応する“吸着圧力 30mPa以下”を取得し、部品実装機100に設定すればよい。
この場合、どの実装条件が個別に設定可能な実装条件であるかについての情報を、例えば判断部808が保持しておけばよい。または、必要なときに、例えば部品実装機100から取得すればよい。