図1はトラクタの全体的な構成を示す側面図である。
図2はブレーキペダルの取付部の構成を示す側面図、図3は同じく背面図である。
図4は変速ペダルの取付部の構成を示す側面図である。
図5は同じく平面図である。
図6はリンク機構の構成を示す一部拡大図である
図7は同じく平面図、図8は車速維持機構の構成を示す側面図である。
まず、作業車両をトラクタとしてその全体構成について説明する。
図1に示すように、トラクタ1は走行機体2を左右一対の前車輪3・3と、左右一対の後車輪4・4とで支持し、該走行機体2の前部に搭載したエンジン5で後車輪3・3と前車輪4・4とを駆動することにより、前進または後進走行可能に構成されている。走行機体2は、バンパ6および前車軸ケース7を備えたエンジンフレーム8と、クラッチ9を備えたクラッチハウジング10と、トランスミッションのミッションケース11と、クラッチハウジング10とミッションケース11とを連結するミッション前面ケース12と、左右一対のステップフレーム13・13とで構成されている。
走行機体2では、エンジンフレーム8の後側がエンジン5の左右両側面に固定され、該エンジン5の後側面にクラッチハウジング10の前端側が固定されている。クラッチハウジング10の後端側にはミッションケース11の前端側がミッション前面ケース12を介して連結されている。そして、クラッチハウジング10の左右両側面に、左右一対のステップフレーム13・13がそれぞれ走行機体2の左右側方に突出するように設けられている。
エンジンフレーム8上にはボンネット14が配設され、該ボンネット14によりエンジン5が覆われている。クラッチハウジング10上にはダッシュボード15が配設され、該ダッシュボート15の上方に前車輪3・3を操向するための操向ハンドル16が配設されている。操向ハンドル16の後方で、ミッションケース11上には座席17が配設されている。また、エンジンフレーム8にその前車軸ケース7を介して前車輪3・3が取り付けられ、ミッションケース11にその左右両側面に固設した図示せぬ後車軸ケースを介して後車輪4・4が取り付けられている。
また、ミッション前面ケース12の前面には静油圧式無段変速装置(HST)20が設けられ、これがクラッチハウジング10の後部内に配置されている。そして、無段変速装置20にエンジン5の回転がクラッチ9から後方に向かって突出する主動軸21を介して伝達され、次いでミッションケース11内の図示せぬ副変速ギヤ機構に伝達されて変速された後、その回転が後車輪4・4に伝達されるとともに、伝動軸22を介して前車輪3・3に伝達されて、後車輪4・4及び前車輪3・3が駆動されるように構成されている。
次に、トラクタ1の走行操作装置の構造について説明する。
左右の各ステップフレーム13・13上にはステップ30が設けられ、図2、図4に示すように、右側のステップ30の上方に図示せぬ左右の後車輪制動用ブレーキ装置を作動させるブレーキペダル31と、無段変速装置20の変速操作用トラニオン軸85をリンク機構を介して作動させて、無段変速装置20の変速出力を増減速操作する前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33とが配置されている。また、左右のステップフレーム13・13の間に配設されるダッシュボード15の座席17側に、前進側変速ペダル32を任意の操作位置に保持する車速維持機構(オートクルーズ機構)を入切操作するクルーズレバー34が配置されている。
図2、図3に示すように、前記ブレーキペダル31の取付部においては、右側のステップ30を支持するステップフレーム13が平面視略矩形の枠体から形成され、その内側に背面視略門字形のブレーキペダル31を支持するためのステー41が下方へ突出するように設けられている。そして、ステー41の左右の側板の間にブレーキペダル支持軸42が左右方向に横設され、該ブレーキペダル支持軸42にブレーキペダル31のペダルアーム31aの基端側に備えられたボス部31bが当該ブレーキペダル支持軸42に対して回転可能に嵌合されている。
ブレーキペダル31のペダルアーム31aはブレーキペダル支持軸42から斜め上方へ突出されて、前進側変速ペダル32および後進側変速ペダル33の前方に配置され、斜め前下方に向けて踏み込み操作される構成となっている。さらに、ブレーキペダル31のボス部31bには、第一ブレーキアーム43の基端部が固設されて、該第一ブレーキアーム43がブレーキペダル31の踏み込み操作時にそのペダルアーム31aとともにブレーキペダル支持軸42を中心として一体的に回動可能とされている。
また、ステップフレーム13の後下方で、クラッチハウジング10の底部に、ブレーキ操作軸受部10aが一体的に形成され、該ブレーキ操作軸受部10aに左右方向に配置されたブレーキ操作軸45が回動自在に支持されている。ブレーキ操作軸45の右端側には、第二ブレーキアーム46の基端部に備えられたアームボス部46aが被嵌されて、該ブレーキ操作軸45と第二ブレーキアーム46とが一体的に回動可能とされている。そして、前記第一ブレーキアーム43と第二ブレーキアーム46とがブレーキリンク47を介して連結されている。
アームボス部46aにはまたロッドアーム48の基端部が固設され、該ロッドアーム48の先端部後側に後車輪制動用ブレーキ装置のブレーキロッド49の一端側が連結されている。ロッドアーム48の先端部前側と、前進側変速ペダル32の前進側変速ペダル支持軸52および後進側変速ペダル33の後進側変速ペダル支持軸53を支持する支持フレーム51に固設され、ブレーキペダル支持軸42の下方に配置された後述するペダルストッパ取付ブラケット60の係止片60aとの間には、ブレーキ解除バネ50が介装されている。
こうして、ブレーキペダル31が操縦者の足で踏み込まれると、ブレーキペダル支持軸42に対してボス部31b上の第一ブレーキアーム43が回動されて、該第一ブレーキアーム43によりブレーキリンク47が上前方へ引かれ、次いでブレーキ操作軸45上のロッドアーム48が回動されて、該ロッドアーム48によりブレーキロッド49がブレーキ解除バネ50のバネ力に抗して後方へ押されて、後車輪制動用ブレーキ装置の制動動作が行われるようになっている。
一方、ブレーキペダル31から操縦者の足が離されると、ブレーキペダル31にブレーキ解除バネ50の付勢力が作用して、ロッドアーム48が前記とは逆方向に回動され、該ロッドアームの回動によりブレーキアームやブレーキリンクを介してブレーキペダル31が初期位置に戻されて維持され、後車輪制動用ブレーキ装置の制動動作がブレーキ解除バネ50によって解除された状態に保持されるようになっている。
そしてこのようなブレーキペダル31の取付部においては、ブレーキペダル31をブレーキペダル支持軸42を介して支持する回動支持部が、ステップフレーム13にステー41を介して支持されるだけでは強度上不利なことから、さらに前記支持フレーム51に固設されるペダルストッパ取付ブラケット60上に支持ステー59が固設され、該支持ステー59にステー41の下端部を載置するように構成されている。こうして、ブレーキペダル支持軸42を支持するステー41を支持フレーム51に突設したペダルストッパ取付ブラケット60で下方から支持することで、ブレーキペダル31の回動支持部における強度の向上が図られている。
図4、図5に示すように、前記前進側変速ペダル32および後進側変速ペダル33の取付部においては、ステップフレーム13の下方で、クラッチハウジング10の右側面に前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33とを支持する支持フレーム51が固設されている。支持フレーム51は、左右の縦側板51a・51bをクラッチハウジング10の右側面に沿って前後方向に延設し、両縦側板51a・51bの前端側と後端側との間にそれぞれ横側板51c・51dを横設して、平面視略矩形の枠体に構成され、そのうちの左縦側板51aでクラッチハウジング10にボルトで固定されている。前後の横側板51c・51dの間には、前進側変速ペダル支持軸52と後進側変速ペダル支持軸53とが平行に前後に並設されて、これらが左右の縦側板51a・51bに回動自在に支持されている。
前進側変速ペダル支持軸52と後進側変速ペダル支持軸53とは支持フレーム51の右縦側板51bから右側方へ突出されている。前進側変速ペダル支持軸52の突出端部には、前進側変速ペダル32のペダルアーム32aの基端側に備えられたボス部32bが被嵌されて、前進側変速ペダル32が前進側変速ペダル支持軸52を中心としてこれと一体的に回動可能とされている。後進側変速ペダル支持軸53の突出端部には、後進側変速ペダル33のペダルアーム33aの基端側に備えられたボス部32bが被嵌されて、後進側変速ペダル33が後進側変速ペダル支持軸53を中心としてこれと一体的に回動可能とされている。
前進側変速ペダル32のペダルアーム32aと、後進側変速ペダル33のペダルアーム33aとは、それぞれ前進側変速ペダル支持軸52と後進側変速ペダル支持軸53とから斜め上方へ突出されて、前進側変速ペダル32の斜め右後方に後進側変速ペダル33が位置するように配置されている。こうして、前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33とがともに斜め前下方に向けて踏み込み操作される構成とされている。
前進側変速ペダル支持軸52上のボス部32bと後進側変速ペダル支持軸53上のボス部33bとには、それぞれストップアーム55・56の基端部が固設されている。そして、各ストップアーム55・56の回動軌跡上に、一方のストップアーム55を当接させる前進ペダルストッパ57と、他方のストップアーム56を当接させる後進ペダルストッパ58とが配設されている。前進ペダルストッパ57と後進ペダルストッパ58とはボルト形とされ、支持フレーム51の右縦側板51bに固設されて、その右側方に突出するように配置された側面視略コ字形のペダルストッパ取付ブラケット60に、各ストップアーム55・56側への突出量を調整できるように螺着されている。
これにより、ストップアーム55・56がそれぞれ前進ペダルストッパ57と後進ペダルストッパ58に当接することで、前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33の増速方向の踏み込み操作を制限することが可能となり、各ペダルストッパ57・58の突出量を調整することにより前進側と後進側の最大速度を設定することができるようになっている。
支持フレーム51の内側では、図8にも示すように、前進側変速ペダル支持軸52に押圧アーム62の基端部が固設され、該押圧アーム62の先端部に当接ローラ63がローラ軸64を介して回転自在に支持されている。また、後進側変速ペダル支持軸53に揺動アーム65の基端部が固設され、該揺動アーム65の先端部前側に受圧片65aが形成され、先端部後側に係止片65bが一体的に形成されている。そして、前記押圧アーム62の当接ローラ63に揺動アーム65の受圧片65aが当接される一方、ローラ軸64と係止片65bとの間に引張バネ66が介装されて、該引張バネ66のバネ力により当接ローラ63と受圧片65aとが常に圧接された状態とされている。
前進側変速ペダル支持軸52には更に変速アーム71の基端部が固設され、該変速アーム71の先端部に連結ピン72を介して第一変速ロッド73の前端側が連結されている。第一変速ロッド73の後端側は、連結ピン74に外嵌されたカムローラ76を介して側面視略L字形の中立戻し用回動プレート80の下端側に連結されている。カムローラ76は弾性体で構成され、無段変速装置20の振動が第一変速ロッド73などを介して前進側変速ペダル31と後進側変速ペダル32とに伝わらないように構成されている。図6、図7に示すように、中立戻し用回動プレート80は、クラッチハウジング10とミッション前面ケース12の右側面に取り付けられた調整用ブラケット81の右側方に配置されて、これに中央部で支点軸82を介して回動自在に支持されている。
また、調整用ブラケット81の左側方となるクラッチハウジング10内では、図3に示すように、ミッション前面ケース12から突出される前車輪用駆動取出軸99を無段変速装置20の右下側方へ配置するために、該無段変速装置20が右側方に向けて傾斜した状態に配置されている。すなわち、無段変速装置20はクラッチハウジング10の右側壁に右側上部が接近し、右側下部が離れるように配設されている。そして、無段変速装置20のクラッチハウジング10の右側壁に接近した右側上部から突出されたトラニオン軸85に、該無段変速装置20を変速作動させるためのトラニオンアーム86が固設され、これが中立戻し用回動プレート80と第二変速ロッド87を介して連結されている。
ここで、前記トラニオンアーム86は中立戻し用回動プレート80に対して傾きを有することから、第二変速ロッド87の両端側に球形ジョイントを備えるロッドエンド87a・87bが備えられて三次元的に回動可能とされている。一方のロッドエンド87aと連結軸88とを介して第二変速ロッド87の前端側がトラニオンアーム86に連結されている。また、他方のロッドエンド87bと連結ピン89とを介して、第二変速ロッド87の後端側が中立戻し用回動プレート80の上端側に連結されている。こうして、中立戻し用回動プレート80の上端側に第二変速ロッド87を介してトラニオンアーム86が連結されるとともに、下端側に第一変速ロッドを介して前進ペダル支持軸52上の変速アーム71が連結されて、トラニオン軸85と前進側変速ペダル32および後進側変速ペダル33との間にリンク機構が構成されている。なお、上下に配置した前記連結ピン74と連結ピン89の間に支点軸82が配置されて、該支点軸82と各連結ピン74・89との間の距離はリンク比などに合わせて決定される。そして、支点軸82の前方に戻しローラ105を配置し、支点軸82を各連結ピン74・89の略中央に位置させることで、各連結ピン74・89にかかる力に対して偏ることなくバランス良く受けられるようになっている。
トラニオンアーム86と第二変速ロッド87の前端側とを連結する連結軸88は、クラッチハウジング10の右側壁に形成された長孔10bに貫通されている。長孔10bはトラニオン軸85を中心とした円周方向に延びるように形成されている。こうして、連結軸88が長孔10b内を移動する範囲で、トラニオンアーム86がトラニオン軸85を中心として前進側または後進側に回動可能とされている。
また、調整用ブラケット81の前部と後部とにはそれぞれ長孔81a・81bが形成されている。長孔81a・81bにはボルト91・91が貫通されて、該ボルト91・91が長孔81a・81b内を移動する範囲で、調整用ブラケット81がシリンダハウジング10およびミッション前面ケース12の右側面に前後方向に位置調整可能に取り付けられている。さらに、調整用ブラケット81の前方にシリンダハウジング10の右側面に固設された支持ステー92が配置され、該支持ステー92と調整用ブラケット81の前部との間に調整ネジ、たとえばターンバックル93が配設されている。
そして、調整用ブラケット81をシリンダハウジング10およびミッション前面ケース12に固定したボルト91・19を緩めることで、該調整用ブラケット81をターンバックル93により長孔81a・81bに沿って前後方向に容易かつ正確に微調整できるように構成されている。これにより、調整用ブラケット81を移動させてその前後位置を調節することで、トラニオンアーム86の変速作動範囲、すなわち無段変速装置20の中立位置が調整可能とされている。なお、この調整時には、前進変速側または後進変速側のいずれか一方のトラニオンアーム86の変速作動範囲が拡大し、他方の変速作動範囲が縮小することになる。
また、調整用ブラケット81には、中立戻し用回動プレート80の回動軌跡上に、該中立戻し用回動プレート80の上部後側を当接させる前進側回動ストッパ95と、中立戻し用回動プレート80の下部後側を当接させる後進ストッパとが配設されている。前進側回動ストッパ95はボルト形とされ、中立戻し用回動プレート80の回動中心となる支点軸82の斜め後上方に配置され、調整用ブラケット81の後上部に固設されたステー97に中立戻し用回動プレート80側への突出量を調整可能に螺着されている。
一方、後進側回動ストッパ96は軸体とされ、支点軸82の斜め後下方に配置され、調整用ブラケット81の後下部からの右側方へ突設されている。こうして、支点軸82を中心として回動する際に、中立戻し用回動プレート80が前進側回動ストッパ95または後進側回動ストッパ96に当接することで、中立戻し用回動プレート80の回動範囲、つまりトラニオンアーム86の変速作動範囲を制限することが可能となり、特に前進側回動ストッパ95ではその突出量を調整することにより前進側の最大速度を設定することができるようになっている。
さらに、調整用ブラケット81には、前進側変速ペダル32および後進側変速ペダル33を初期位置に戻し、かつ無段変速装置20の変速出力を略零に維持するための中立戻し機構が、リターンアーム101と中立戻しバネ102とを備えて設けられている。リターンアーム101は略く字状に形成され、その中央の凹部101aを後方へ向けて上下方向に延出するように中立戻し用回動プレート80の前方に配置されている。そして、リターンアーム101の下端側が調整用ブラケット81の前下部に支持軸103を介して回動自在に支持されて、該リターンアーム101が支持軸103を中心として前後方向に回動可能とされている。一方、リターンアーム101の上端側は中立戻し用回動プレート80の上方に配置されて、調整用ブラケット81の後上部に配設された前記ステー97に中立戻しバネ102を介して連結されている。
そして、前記中立戻し用回動プレート80の支点軸82よりも前方となる前端側に、戻しローラ105がローラ軸106を介して回転自在に支持されて、該戻しローラ105とリターンアーム101の凹部101aとが当接可能とされている。ここでは、リターンアーム101が中立戻しバネ102のバネ力により支持軸103を中心として後方へ回動するように付勢されていることから、中立戻し用回動プレート80の戻しローラ105はリターンアーム101の凹部101a側に圧接された状態となっている。
戻しローラ105は、中立戻しバネ102のバネ力によりリターンアーム101の凹部101aと圧接されて、中立戻し用回動プレート80の回動位置を一定に保持するようになっており、前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33の踏み込み操作により、中立戻し用回動プレート80がリンク機構を介して回動されると、リターンアーム101の凹部101aから脱出して、中立戻しバネ102のバネ力に抗してリターンアーム101を回動させるように構成されている。
こうして、操縦者の足が前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33から離されると、リターンアーム101が後面中央部における凹部101aに戻しローラ105が戻るように、中立戻しバネ102のバネ力によって中立戻し用回動プレート80が回動されて、前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33が初期位置に戻され、トラニオンアーム86が中立位置に回動され、無段変速装置20の図示せぬ油圧ポンプの斜板角度が略零になり、無段変速装置20の変速出力を略零に維持することができるようになっている。
また、第一変速ロッド73の前端側に、リンクフレーム111の前端側が連結ピン112を介して連結され、該リンクフレーム111の後端側がダンパ連結アーム113の先端部前側に形成された複数の孔113a・113b・113cのいずれか一つに調整ピン114を介して連結されている。ダンパ連結アーム113の基端部は、後述するブレーキ操作軸に回動自在に嵌合された筒軸体116に固設されている。そして、ダンパ連結アーム113の先端部後側に緩衝装置であるダンパ117の前端側が連結ピン118を介して連結され、該ダンパ117の後端側が調整用ブラケット81のステー97に支持ピン119を介して支持されている。
ダンパ117は、前述の前進側変速ペダル32および後進側変速ペダル33をトラニオン軸と連結するリンク機構の最も外側に配置され、無段変速装置20の図示せぬ油圧ポンプの斜板特性に合わせて引っ張り方向の減衰力と圧縮方向の減衰力(抵抗力)とを設定して構成されている。つまり、引っ張り方向の減衰力と圧縮方向とに、例えば、バネ力の異なるバネをケース内に収納したり、オリフィスの口径を異なるようにしたりして、前進ペダル32を踏み込んだ時と後進ペダル33を踏み込んだ時の減衰力が異なるようにして、操作フィーリングの向上が図られている。
このように構成することにより、前進側変速ペダル32及び後進側変速ペダル33の踏み込み操作によって実行される無段変速装置20の変速操作時において、前進側変速ペダル32が操縦者の足で踏み込み操作されると、前進側変速ペダル支持軸52上の変速アーム71が回動され、該変速アーム71により第一変速ロッド73が前方へ引かれて、中立戻しバネ102のバネ力に抗して中立戻し用回動プレート80が回動される。そして、中立戻し用回動プレート80により第二変速ロッド87が前方へ引かれて、トラニオンアーム86及びトラニオン軸85が前方に回動され、これにより無段変速装置20が前進側に作動して、前車輸3および後車輪4が前進側に駆動され、走行機体2が前進方向に移動される。
このような前進ペダル32の踏み込み操作時には、走行機体2の移動速度は前進側変速ペダル32の踏込み量に比例して変更でき、ストップアーム55が前進ペダルストッパ57に当接するまで、または連結軸88が長孔10bの前端側に当接するまで、または中立戻し用回動プレート80が前進側回動ストッパ95に当接するまで、前進側変速ペダル32を踏み込んで前進側に増速できるようになっている。
一方、後進側変速ペダル33が操縦者の足で踏み込み操作されると、後進側変速ペダル支持軸53上の揺動アーム65が回動されて、その受圧片65aに圧接された当接ローラ63により押圧アーム62が前進側変速ペダル支持軸52を中心として回動される。押圧アーム62により前進側変速ペダル支持軸52上の変速アーム71が回動され、該変速アーム71により第一変速ロッド73が後方へ押されて、中立戻し用回動プレート80が中立戻しバネ102のバネ力に抗して回動される。そして、中立戻し用回動プレート80により第二変速ロッド87が後方へ押されて、トラニオンアーム86及びトラニオン軸85が後方に回動され、無段変速装置20が後進側に作動して、前車輸3および後車輪4が後進側に駆動され、走行機体2が後進方向に移動される。
このような後進ペダル33の踏み込み操作時には、走行機体2の移動速度は後進側変速ペダル33の踏込み量に比例して変更でき、ストップアーム56が後進ペダルストッパ58に当接するまで、または連結軸88が長孔10bの後端側に当接するまで、または中立戻し用回動プレート80が後進側回動ストッパ96に当接するまで、後進側変速ペダル33を踏込んで後進側に増速できるようになっている。
そして、前述のように前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33が操縦者の足で踏み込み操作される場合には、中立戻しバネ102の付勢力とダンパ117の抵抗力とが、ペダル踏み込み力の反力として、前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33に作用するようになっている。すなわち、中立戻しバネ102の付勢力とダンパ117の抵抗力が、前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33の踏込み負荷となり、その踏込み負荷に抗して操縦者が前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33を踏込むことになっている。よって、強く踏んでも所定の抵抗がかかるため急加速することを防止できるようになっている。
一方、前進側変速ペダル32または後進側変速ペダル33から足を離した場合には、前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33とには、中立戻しバネ102の付勢力が、ダンパ117によって緩やかにリンク機構を介して作用し、前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33とが初期位置(出力零位置)に緩やかに戻り、無段変速装置20の変速出力が略零に維持されるようになっている。
また、車速維持機構のクルーズレバー34の取付部においては、図8に示すように、前進側変速ペダル支持軸52の上方でクラッチハウジング10の右側面から右側方にクラッチ操作軸121の一端側が突出され、該クラッチ操作軸121の突出端部に側面視略L形の係止リンク122が中央部にて回動可能に支持さている。係止リンク122の上端側に手動操作手段となるクルーズレバー34の基端部が係止ピン123を介して連結され、該クルーズレバー34の先端側に形成された把持部34aがクラッチハウジング10上に配置されたダッシュボード15から座席17側に突出されている。係止リンク122の下端側には突起形の係止体124が一体的に形成されている。
係止リンク122の下方で、前進側変速ペダル支持軸52に側面視弓形の係止アーム126の基端部が連結され、該係止アーム126の先端部の外周縁に鋸歯状の複数の係止爪126a・126a・・・が連続的に形成されて、各係止爪126aに係止リンク122の係止体124が係合可能とされている。こうして、係止アーム126のいずれかの係止爪126aに係止体124が係合することで、前進側変速ペダル32が任意の踏込み位置に維持され、この状態で前進側変速ペダル32がさらに増速方向に踏み込まれると、係止体124に係合している係止爪126aに隣接した増速側の係止爪126aによって、係止体124が離脱方向に移動させられて、係止爪126aと係止体124との係合が解除されるように構成されている。
そして、係止アーム126は、中立戻しバネにより第一変速ロッド73や中立戻し用回動プレートを介して、係止爪126aに係止リンク122の係止体124を係合させる方向に回動されて、該係止リンク122に連結されたクルーズレバー34を入り位置に保持することができるようになっている。また、クルーズレバーの先端側とその下方に配置されるダッシュボード15の支持フレーム128との間に引張バネ129が介装され、該引張バネ129のバネ力によりクルーズレバー34が下方へ移動するように付勢されている。これにより、係止リンク122の係止体124が係止アーム126の係止爪126aから離脱させる方向に回動されて、クルーズレバー34を切り位置に保持することができるようになっている。
このように構成することにより、操縦者の足で前進側変速ペダル32が踏込まれた状態で、操縦者によりクルーズレバー34が引張バネ129に抗して引き上げられると、係止リンク122がクラッチ操作軸121を中心として下方へ回動され、係止アーム126の係止爪126aに係止体124が係合される。したがって、操縦者が前進側変速ペダル32から足を離しても、前進側変速ペダル32が任意の踏込み位置に維持されて、前車輪3及び後車輪4が略一定速度で駆動され、走行機体2が略一定速度で移動される。
一方、係止爪126aに係止体124が係合されている状態で、操縦者の足で前進側変速ペダル32が踏込まれると、もしくはクルーズレバー34が引き下げられると、係止体124がクラッチ操作軸121を中心として上方へ回動されて、係止アーム126の係止爪126aから離脱し、クルーズレバー34及び係止リンク122が初期位置に引張バネ129によって戻され、略一定速度で移動する車速保持動作(オートクルーズ動作)が解除される。
以上のように、エンジン5と、該エンジン5からの動力を変速する油圧式無段変速装置20と、該油圧式無段変速装置20の変速出力を操作する変速ペダル32・33とを備えた作業車両(トラクタ1)の走行操作装置において、前記変速ペダル32・33と油圧式無段変速装置20のトラニオン軸85とを連結するリンク機構をステップ30の下方に配置し、該トラニオン軸85をクラッチハウジング10から側方に突出し、該トラニオン軸85にトラニオンアーム86を固設し、該トラニオンアーム86と変速ペダル32・33の間にそれぞれとロッド87・73を介して連結する中立戻し用回動プレート80を配置し、該中立戻し用回動プレート80をミッション前面ケース12(ミッションケース11)の側面に位置調整可能に取り付けた調整用ブラケット81に取り付け、前記中立戻し用回動プレート80の回動中心よりも前方または後方に戻しローラ105を配置し、略く字状に構成したリターンアーム101を上下方向に配置して、その下側を前記調整用ブラケット81に前後方向に回動可能に支持し、前記戻しローラ105を前記リターンアーム101の凹部101aに当接配置したことにより、前記リターンアーム101などからなる中立戻し機構をコンパクトに構成して、ステップ30下方の小さな空間に配置することができる。
また、前記作業車両の走行操作装置において、前記前記調整用ブラケット81に長孔81a・81bを形成し、該長孔81a・81bにボルト91・91を挿入してクラッチハウジング10に対して位置調整可能とするとともに、該調整用ブラケット81とクラッチハウジング10との間に調整ネジ(ターンバックル93)を配置したことにより、前記調整ネジにより、中立位置の調整を長孔81a・81bに沿って容易かつ正確に行うことができる。
また、前記作業車両の走行操作装置において、前記中立戻し用回動プレート80の回動中心の斜め上方および下方の前記調整用ブラケット81上に、回動ストッパ95・96を設けたことにより、前記回動ストッパ95・96の調整を容易に行うことができる。また、回動ストッパ95・96の交換を容易に行うことができる。
また、前記作業車両の走行操作装置において、前記中立戻し用回動プレート80と変速ペダル32・33とを連結するロッド73の枢支部に弾性体で構成したカムローラ76を介装したことにより、前記油圧式無段変速装置20の振動がリンク機構を介して変速ペダル32・33に伝わることを防止できる。
また、前記作業車両の走行操作装置において、前記変速ペダル32・33と走行機体2の間にダンパ117を介装し、該ダンパ117の引っ張り方向と圧縮方向の減衰力をそれぞれ油圧式無段変速装置20の斜板特性に合わせて設定したことにより、前記前進側変速ペダル32と後進側変速ペダル33の操作フィーリングを一致させて、変速ペダル32・33の操作性を向上させることができる。
また、前記作業車両の走行操作装置において、前記ダンパ117を、変速ペダル32・33とトラニオン軸85を連結するリンク機構の最も外側に配置したことにより、前記ダンパ117の調整やメンテナンスを容易に行うことができる。
また、前記作業車両の走行操作装置において、ステップ30の下方で変速ペダル支持軸52・53を支持フレーム51で支持してクラッチハウジング10より側方に突出し、該ステップ30と変速ペダル支持軸52・53との間にブレーキペダル支持軸42を支持するステー41をステップフレーム13より下方へ延設し、前記支持フレーム51より側方に突設したペダルストッパ取付ブラケット60で前記ステー41を支持したことにより、前記ブレーキペダル31の回動支持部の強度を向上させることができる。