本発明は、女性がストッキングに求める大きなニーズである素肌感を達成するために、従来にない高い透明性を発現するストッキングに関するものである。
ストッキングの使用糸として、弾性糸を芯糸にしてポリアミドマルチフィラメントを巻き付けたカバリング糸は、フィット感に優れ、耐久性に優れていることから現在広く使用されている。しかしながらカバリング糸は弾性糸にポリアミドマルチフィラメントを巻付けカバリングした構造であるので太繊度となり易く、仮撚り加工糸や複合繊維からなる従来のストッキングと比較して透明性に劣り、むれやすく、生地厚となるのが問題であった。ストッキングの中でも特にパンティーストッキングのユーザーニーズとしては、透明感、素肌感があり、そのニーズを満たすためにポリマーの透明性を上げたり、使用糸のトータル繊度を細くするなどの技術が従来から提案されている。
さらに、透明性を低下させる原因の一つとして、繊維表面で空気とマルチフィラメントを構成しているポリマーとの屈折率差により反射光が生じることが挙げられる。この対策として、マルチフィラメントの構成フィラメント数(以後フィラメント数と表記)を少なくすることにより、空気との界面を減らすことが提案されている。たとえば、特許文献1および2のようにレッグ部に既存のカバリング糸とともにモノフィラメントのストレートヤーンを交互に編成した交編編を有するパンティーストッキングが提案されている。交編糸をモノフィラメントとすることにより、交編部での透明性は向上している。しかしながら、カバリング糸側は既存の技術であり、一般に交編糸で構成された部分とカバリング糸で構成された部分を比較すると交編糸で構成された部分の方が透明である。その差による横縞解消がユーザーの希望であるにも関わらず、交編糸をモノフィラメントにすることにより、その差が顕著となるとともに透明性の低下を引き起こしているカバリング糸側のには透明性を向上させる方法は提案されていない。
一方カバリング糸に用いる被覆糸はフィラメント数3本以上で構成されているのが実状である。それは、2本以下であるとき弾性糸に対する被覆性が低下するために、強度や耐久性が低い弾性糸を十分に保護することができないためである。
また、ストッキングの透明性を向上させる方法として、特許文献3のように糸条繊度5〜15デニール、フィラメント数2〜7フィラメント数で、2.0〜6.0の偏平な繊維横断面形状を有する長繊維から構成されるカバリング用糸を巻付けてなる複合弾性糸を用いたストッキングが提案されており、丸断面に比べて透明性の向上が認められる。しかしながら、実施例で具体的に開示されたものは被覆糸が全て11デシテックス(10デニール)、5フィラメントであるため、それから得られるストッキングは、ある程度の破裂強度を有するものの、その割には透明度が低く、未だ満足できるものではなかった。
特開平5−148701号公報([0009]〜[0011])
特開平5−3311501号公報([0010]〜[0012])
特開平7−157902号公報([0031]、[0039]〜 [0040])
そこで、本発明は、かかる従来の問題を解決し、これまでにない透明性を有しながらストッキングを提供することを課題とするものである。また、本発明の好ましい態様においてはサラッとした触感で粗硬感がなく、耐久性に優れたストッキングを提供することを課題とするものである。
この課題を解決するために、本発明は、次の構成を採用する。すなわち、
(1)扁平度2.5〜6である扁平断面を有し、かつ構成フィラメント数が1本または2本であり、トータル繊度が6〜14デシテックスであり、初期引張抵抗度が10〜40cN/デシテックスであるポリアミドフィラメントを被覆糸として弾性糸に1重に巻き付けられているカバリング糸のみにより、少なくともレッグ部を編成したストッキングであり、該レッグ部の破裂強さX(N)と透明度Y(%)がY≧−0.075X+83.75、Y≦−0.075X+86、X≧30、Y≧80.0の関係を満足することを特徴とするストッキング。
(2)前記被覆糸として、構成フィラメント数が2本、トータル繊度が8〜12デシテックスのものを用い、針本数400〜474本の編機で編成されたものであることを特徴とする(1)記載のストッキングである。
本発明は、上記の構成を採用することにより、従来到達し得なかった透明性を有する、ストッキングを得ることができる。
また本発明の好ましい態様においては上記効果に加え、さらにサラッとした触感で粗硬感のない、耐久性に優れたストッキングを得るこことができる。
本発明によれば素肌感に優れたストッキングを求める女性のニーズに応えるだけではなく、表面感がフラットで艶があるため素肌がきれいに見え、さらに清涼感を有しているため、着用快適性に優れたストッキングとすることが可能である。
本発明のストッキングは、ポリアミドフィラメントを被覆糸として弾性糸に1重に巻き付けられているカバリング糸のみにより少なくともレッグ部を編成したストッキングであり、図1に示すように該レッグ部の破裂強さX(N)と透明度Y(%)がY≧−0.075X+83.75、Y≦−0.075X+86、X≧30、Y≧80.0の関係を満足するものである。図1は破裂強さと透明度の関係を示すグラフであるが、グラフ中上記関係式を満足する領域は、破線(Y=−0.075X+83.75、Y=−0.075X+86、X=30、Y=80.0)で囲まれる部分である。図1のグラフ中の○および×で示される点は後述する実施例で得られた値であり、横に付された数字は実験ナンバーを示す。
図1に示すように従来のストッキング(例えばNo.15(13デシテックス、5フィラメント、丸断面の被覆糸使用)、No.19(11デシテックス、5フィラメント、扁平度2.8の扁平断面の被覆糸使用))は、本発明の範囲内に入らず、同じ破裂強さの時には本発明範囲より透明性が低いものであった。これは、例えばNo.15については図2に示す断面図のごとく、弾性糸bを被覆すべきポリアミドフィラメントaの断面形状が丸断面であるため曲げ方向に方向性がなく(どの方向にも曲がりやすい)、かつフィラメント数が多いため、、ポリアミドフィラメントa間で集束しやすい。その結果、カバリング糸cの見かけ太さLが太くなり、編み地の空隙が狭くなり、透明性が落ちるためであった。
さらに従来技術にて記載のごとく、No.19のように扁平断面のフィラメントを用いても、フィラメント数が多い場合には、フィラメント表面からの反射光が増える(目には白色光となって入る)ために透明性を低下させていた。
本発明の範囲としてY≧−0.075X+83.75、Y≦−0.075X+86としたのは、これまでにない透明性を実現しながら商品としての耐久性(破裂強さ)とのバランスを考慮した結果である。また、本発明のストッキングは少なくともレッグ部は、カバリング糸のみから構成される編み地であり、ストッキングの着圧は弾性糸によって発現している。適度な繊度を有した弾性糸を用いてカバリング糸とした場合、上記範囲となる。一方、カバリング数を極端に下げたり、弾性糸の繊度を下げることによりY>−0.075X+86の範囲とすることも可能であるが、ヒキツレを生じたり、皺が寄ったり、耐久性に乏しい商品にしかなりえない。
本発明の範囲の中でもY≧−0.075X+84.25、Y≦−0.075X+85の範囲の場合、透明性と耐久性のバランスに優れており、より好ましい。
なお、上記式は種々の実験結果により導き出したものである。
本発明の範囲としてX≧30としているのは、破裂強さXが30未満では、特にストッキングを着用するため、引き上げる際に破損するいわゆる初期破損が多発しやすくなり好ましくないためである。
一方、Y≧80.0としている理由としては、透明感を実感できるためには透明度が絶対値として80.0以上であることが必要であるためである。すなわち、使用するナイロンの繊度を太くしていくと耐久性は向上するものの透明性は低下する傾向にあり、透明性が高いことをユーザーが明確に認識できるようにするためには、透明度を80.0以上とするものである。
ここで、被覆糸としてポリアミドフィラメントを用いる理由としては、耐摩耗性を中心とした機械強度、発色性、吸湿性、肌触りからである。
本発明において透明性は大腿部の編み地を着用状態まで広げて黒板と白板の上に乗せてL値を測定することを趣旨として、具体的には後述する実施例に示す方法により評価される値とするものであり、破裂強さは同じく大腿部の編み地を着用状態まで広げて、定速伸長形法により測定することを趣旨として、具体的には後述する実施例に示す方法により評価される値とするものである。
本発明でいうポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドである。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではポリカプロアミドを構成するカプロアミド単位とし、ポリヘキサメチレンアジパミドではポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンアジパミド単位として80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。
本発明でいうポリアミドの重合度は、必要とする糸強度、初期引張抵抗度等を考慮して適宜選択して良いが、具体的は後述する実施例に示す方法により評価される98%硫酸相対粘度で2.0〜3.3の範囲が好ましい。
さらに必要に応じて光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、末端基調節剤、染色性向上剤等が添加されていてもよい。また、紫外線吸収や接触冷感の付与のため、無機粒子の添加を行うことはできるが、透明性を阻害しないように、添加する無機粒子の屈折率をポリアミドポリマーと近づけ、好ましくは屈折率差として0.1以内とする。糸中の平均粒子径を1μm以下、好ましくは0.5μm以下とすることが適切であり、透明性を阻害するような無機粒子は添加しないことがさらに好ましい。
本発明のストッキングのレッグ部に用いる糸を弾性糸に被覆糸を1重に巻き付けたカバリング糸とする理由は、透明性を向上させるとともに風合いをソフトにするためである。また、このカバリング糸は伸縮性も高いため、フィット性に優れている。
さらにレッグ部を弾性糸に被覆糸を1重に巻き付けたカバリング糸のみにより編成することが必要であるが、これはたとえば、カバリング糸と生糸を交互に編成する交編とすると緯縞が発生するため、好ましくないからである。本発明においてはカバリング糸のみから編成されたいわゆるゾッキ編みとすることが好ましい。特に透明性と伸縮性が必要とされるレッグ部は、ゾッキ編みとするものである。
編組織としては平編、ゴム編、パール編およびこれらの変化編組織により作られたものが挙げられる。中でも本発明の特徴である透明性の高い編地とするためには特にレッグ部を平編とすることが好ましい。また、このレッグ部編地には、他素材からなる編込み模様やワンポイントのような装飾が施されていてもよいが、本発明の趣旨は装飾部のない地の部分における透明度を問題にしているものであるので、透明度を測定する際には極力装飾部を避けて測定するものとする。
ストッキングとして本発明の透明性と破裂強さの範囲とするための手段は、本発明で規定する要件を満足する限り限定されるものではないが、透明性を向上させるために、用いる被覆糸のトータル繊度を小さくすること、表面積を少なくすること、カバリング糸の見かけ太さを細くするなどの手段が挙げられる。
ここで、トータル繊度を細くすることは、透明性に有効であるが、透明性を向上させるためにトータル繊度を単に細くするのみではストッキングとして一定の強度、耐久性を維持することが困難となる。そのため被覆糸の繊度として6デシテックス以上が求められる。一方、透明性を維持するために14デシテックス以下であることが求められる。さらに同様の理由のため、8デシテックス以上13デシテックス以下であることがさらに好ましい。
一方、表面積を少なくすることによっても透明性が向上する。これは、表面積が増えることによって反射光(白色光)が増し、白っぽく見えることを抑制する効果があるためである。これを実現するには2つの方法があり、1つは断面形状を円形に近い形状とすることにより、表面積を減らすこと、もう1つはフィラメント数を減らすことが挙げられる。本発明においては丸断面、もしくは比較的円形に近い扁平断面でもフィラメント数を2本以下とし、透明性を損なわない程度の繊度にすることにより、後述する本発明の実施例No.14の例のように、本発明で規定する透明性と破裂強さの関係を満足させることが可能である。しかしながらその場合、若干粗硬感のある風合いとなりやすい。これは、丸断面はいずれの方向にも曲げモーメントが等しいのであるが、直径の4乗に比例して曲げモーメントが高くなるので、粗硬化しやすいためである。
また、本発明で規定する透明性と破裂強さの関係を満たしながらさらに耐久性、肌触りを維持し、サラッとした風合いを付与しながら透明性を向上させるための手段として扁平度2.5〜6である扁平断面を有し、かつ構成フィラメント数が2本以下であり、トータル繊度が6〜14デシテックスであり、初期引張抵抗度が10〜40cN/デシテックスである被覆糸を用いる手段が挙げられる。
ここで被覆糸として扁平度を2.5〜6の扁平断面とし、かつ構成フィラメント数を2本以下とするのは、カバリング糸の透明性をこれまでにないレベルに上げ、かつ被覆性を向上させて、着用時の耐久性と生地のフラット感、触感性を優れたものとし、さらに着用時のつや感を発現させるためである。
そして上記のような扁平断面とすることにより、トータル繊度を小さく、表面積を少なくしつつ、図4、5の断面図で示すようにカバリング糸cの見かけ太さLを細くすることが可能となり、結果として透明性を向上させることができるのである。
被覆糸の繊度としては前述したように透明性と破裂強度、耐久性のバランスから6デシテックス以上、14デシテックス以下であることが求められ、8デシテックス以上13デシテックス以下であることがさらに好ましい。
本発明では後で詳細に述べるように耐久性や肌触りを維持しながら透明性を向上させるためには、断面を上記のような扁平断面として、フィラメント数を減らすことが有効であるのである。ストッキング用途、特に被覆糸に用いるフィラメント数は従来、3本以上であった。これは、カバリングした際、弾性糸を被覆して耐久性を向上させるためであり、従来採用されていた被覆糸ではフィラメント数を2本以下とすると風合いが硬くなり、着用感が悪いため、実現し得なかったためである。
またストッキングは伸縮性を得るために編物から構成されており、編物は構成する糸のループ間に空隙を有している。特に透明性を重視するストッキングにおいては着用時ループ間の空隙が大きく、ループの空隙を大きくすることにより透明性を向上させることができる。ループ長を長くすることも一つの手段であるが、風合い、耐久性、目ずれなどを考慮すると適正なループ長の範囲は用途、糸使い等により限定される。そこで、カバリング糸の見かけの太さを細くすることにより、適正なループ長を維持しながらループ間の空隙を広げて透明性を上げるというものである。カバリング糸の見かけの太さとは、編み地から見たカバリング糸の太さを意味している。上述のように被覆糸の断面を扁平度2.5〜6の扁平断面とすることにより、図4〜5の断面図に示すように被覆糸であるポリアミドフィラメントaは弾性糸b全体を覆うように被覆するため、カバリング糸cの見かけの太さLが細くなり、透明性が向上するものである。ここで、扁平度を2.5未満とすると構成フィラメント本数が2本以下と少ない中で弾性糸を被覆する際、被覆性が低下して弾性糸が露出し、摩擦等により切れやすく耐久性が低下すること、また曲げ柔らかさが低下するために風合いが硬くなること、さらに編み地から見たカバリング糸の太さが太くなること、さらに被覆糸のフィラメント同士が重なり合いやすいために、見かけ太さが十分には細くならず優れた透明性が得られにくくなる傾向にある。一方、扁平度を6を越える値とすると透明性および被覆性は向上するものの糸物性が急激に低下するため、耐久性を維持するためにトータル繊度を上げざるを得なくなり、結果的に透明性が向上しにくくなる。
ここで、扁平断面とは、凸状円弧部分と実質的な直線部分もしくは凸状円弧部分よりも曲率半径の大きな凸状円弧部分とにより形成され、実質的な凹部を有さない偏平形状であることが、表面積を減らして、透明性を向上させ、耐久性と風合いのソフト化に優れたストッキングを得るために好ましい。ただし、扁平度の高い糸を紡糸する際、扁平面の表裏で冷却が不均一となる場合三日月状に湾曲することがある。この場合、図8に示すとおり凹部の角度R(断面中心Cと両端(扁平断面端部E)を結ぶ線の角度)は160°以上であれば実質的に直線と同様の挙動を示すことから問題ない。なお図4、図5において被覆糸であるポリアミドフィラメントaの断面が湾曲しているが、これはカバリング糸の断面を切断しているためである。
また、扁平度とは、フィラメントを繊維軸方向と垂直に切断した時の長径Lと短径Sとの比(L/S)を意味しており、具体的には被覆糸の横断面方向に薄切片を切り出し、透過顕微鏡を用いて撮影される5枚の繊維横断面から、外接円直径Rと内接円直径rの比=R/rを算出し、5つの値の平均値から扁平度を求めるものとする。
偏平度(L/S)が2.0〜6.0の偏平形の繊維横断面形状は、紡糸口金の吐出孔形状をスリット状にし、その長さ/幅の比を10以上、好ましくは4〜20のように大きくすることにより得ることができる。
本発明で用いる被覆糸として好ましい条件は、上述のとおりストッキングとしたときに透明性を向上させるためにフィラメント数を2本以下とすると共に、断面形状、繊度を特定範囲とするが、同時に着用時の風合いが粗硬とならないよう、さらっとした風合いとするために初期引張抵抗度も特定範囲とすることが好ましい。初期引張抵抗度が高くなるほど、曲げ応力が高くなるため、風合いは硬くなる。特に肌に直接触れるストッキングは風合い差を感じやすく、本発明に用いる被覆糸のように構成フィラメント数が2本以下と少なく、硬くなりやすい場合、大きく影響するため、初期引張抵抗度は、低い方が好ましい。一方で、低すぎると形態安定性が維持できないためこれも好ましくない。したがって、10〜40cN/デシテックスが好ましく、また10〜30cN/デシテックスがさらに好ましい。
ここで、初期引張抵抗度を上記範囲内とする方法としては、ポリアミドの重合度を下記のごとく、適切な範囲にするとともに、伸度を35〜50%(延伸倍率により調整できるものであり、延伸倍率を上げることにより伸度は低くなり、延伸倍率を下げることにより伸度は高くなる)、紡糸速度400〜600m/minとすることにより、可能となる。伸度を35%未満としたときには、初期引張抵抗度が高くなりやすく、50%を越える値としたときには、長手方向にムラが生じやすく、染めムラが生じやすくなり、好ましくない。紡糸速度を600m/minを越える速度とすると、初期引張抵抗度は高くなりやすく、400m/minを下回る速度で行うと生産性が低下するため、好ましくない。
また、未延伸糸を一旦巻き取ることなく製造する方法として、同様に口金から溶融ポリマーを吐出させ、冷却、給油後、1500〜2500m/min程度で引取、次の加熱ローラーとの間で1.3〜2.5倍程度の延伸を行った後で、加熱ローラーを用いて熱処理を行い、熱セットした後、巻き取ることができる。しかしながら、フィラメント数が1または2本と少なく、断面形状が高異型の扁平形状であるため、加熱ローラーに糸が取られやすい。したがって、加熱ローラーの表面に例えば溝を設けたり、梨地とすることで糸離れしやすくすることが好ましい。
本発明のストッキングは透明性が高く、単糸繊度が比較的太いために肌離れがよく、夏用のストッキングに最適である。特に近年、つま先のファッションをストッキングを履いたときにも楽しみたいという要求が高まり、それに対応するため透明性が高く、ストッキングのつま先に切り替えがない商品のニーズが急速に増加している。その場合、つま先までレッグ部のカバリング糸を用い、つま先が見えるよう、つま先の切り替えをなくすことが求められる。その場合、指先および爪によりカバリング糸が局部的に伸ばされ、弾性糸(スパンデックス)が露出しやすい状態で爪等により擦過されて芯糸である弾性糸が切れる現象(コア切れ)が極めて生じやすく、消費者クレームにつながるという問題がある。したがって、この種の商品における被覆糸の被覆性は、つま先に切り替えがある商品よりも重要視されるようになる。それを解決するための具体的な対応としては、被覆糸としては、構成フィラメント数が2本、扁平度2.5〜6である扁平断面を有し、トータル繊度が8〜12デシテックスのものを用い、針本数400〜474本の編機で編成することが好ましい。さらにカバリング数としては、後述する範囲に設定することで問題ないが、ビリ込みが入らない程度にカバリング数を上げることがさらに好ましい。これにより、透明性を向上させながら、被覆性を上げることにより、つま先の切り替えがない商品としたときでも、爪との摩擦によるコア切れを防ぎ、耐久性を維持することができるのである。
本発明に用いる被覆糸として好ましい条件は、構成フィラメント数が2本以下であり、1本の時には集束させることは必要でなく、2本のときには3本以上の被覆糸で行われているような交絡による集束は効果がない。一方、集束のために多くの実撚を入れた上でカバリングすると、扁平断面が捩れて光沢が変わるため、撚数20t/m以下の低撚の糸条であることがより好ましい。一方、2本の時の集束手段としては、油剤による集束が有効である。1本のときも含めて、一般に被覆糸に用いられる油剤を付与して、延伸糸として0.8〜1.5%程度の付着量となるように油剤濃度や付与量をコントロールすることが好ましい。その際、フィラメント数が2本以下と少なく、扁平断面であるため、扁平断面の両面に油剤が付着していることが好ましい。片側のみに付着している場合には、例えば編成工程において長手方向にカバリング糸の摩擦係数が変わってしまい、給糸張力が変化して編地にムラを生じるため、好ましくない。扁平断面の両面に油剤を付着させる手段としては、特に限定されるものではないが、油剤付着時の油膜厚みを適正化したり、複数の給油ガイドを対面させる方向で配置し、糸の前後から給油したり、一旦片面に付与させた後、前後の糸同士を接触させることにより付与面から非付与面に油剤を移行させることが挙げられる。
一方、 カバリング糸の芯糸をなす弾性糸としては、ポリウレタン系弾性繊維、ポリアミド系エラストマ弾性繊維、ポリエステル系エラストマ弾性繊維、天然ゴム系繊維、合成ゴム系繊維、ブタジエン系繊維等が用いられ、弾性特性や熱セット性、耐久性等により適宜選択すればよい。中でも上記特性から好ましいのは、ポリウレタン系弾性繊維及びポリアミド系エラストマ弾性繊維である。弾性糸の太さは、靴下の用途、締め付け圧の設定により異なるが、耐久性と透明性を両立させるためには、一般に8〜30デシテックス程度であればよい。なかでも好ましいのは14〜25デシテックスである。8デシテックス未満では、糸強力が不足するのでカバリング時及び編立て時に芯糸切れ等のトラブルを生じ易く、靴下としての伸縮性、耐久性が不十分となり易いので好ましくない。逆に、30デシテックスを越えると締付け力が強くなり過ぎて粗硬感が強くなり、好ましく、透明性も低下しやすいため、好ましくない。
カバリング撚数としては被覆糸の繊度、収縮率や製品風合い、透明性、耐久性を考慮して設計すればよい。カバリング撚数を上げると見かけ太さが細くなるため、透明性が向上する方向にあるが、上げすぎると弾性糸を締め付けすぎて耐久性が落ちたり、カバリング工程の生産性が低下するため、好ましくない。また、カバリング撚数が低すぎると被覆性が低下して耐久性と透明性が低下するため、好ましくない。したがって例えば、11デシテックスの被覆糸をシングルカバリングする時には1800〜2400T/mを目安に設計することが好ましい。また、ドラフト倍率も狙いとする着圧に合わせて設計すればよく、例えば、2.5〜3.5倍に設定することが好ましい。
なお、カバリング糸(カバリングヤーン)を製造する場合の製造方法に特に制限はなく、常法のカバリング加工を実施すればよい。例えば、「繊維の百科事典」(丸善株式会社、平成14年3月25日発行、p439)に記載の加工を実施すればよい。すなわち一例を挙げると弾性糸を定速で引きだし、2つのローラー間で一定のドラフトをかけた状態で、予めHボビンに巻き付けた被覆糸を弾性糸に一定のカバリング撚数にて巻き付け、得られたカバリング糸をチーズに巻き取るものである。
本発明の対象とするストッキングとは、パンティストッキング、ロングストッキング、ショートストッキングで代表されるストッキング製品が挙げられる。
また、編機として、通常の靴下編み機を用いることができ、制限はなく、2口あるいは4口給糸の編機を用い、本発明のカバリング糸を供給して編成するという通常の方法で編成すればよい。シングルカバリング糸の場合は、S方向カバリングのシングルカバリング糸とZ方向カバリングのシングルカバリング糸とを交互に編む方法が好適である。さらに編機の針本数としてはおおむね360〜474本が用いられ、針本数が少ないほど、透明性は高くなるが、破裂強さは劣り、針本数が多くなるほど破裂強さは向上するが、透明性は低下する傾向にある。したがって、使用する被覆糸、弾性糸の繊度と狙いとする耐久性、透明性に合わせて選択することができる。一例として被覆糸13デシテックスにて針本数360〜400本、同様に11デシテックスの時針本数380〜440本、特に針本数400〜440本、8デシテックスの時440〜474本とすることが好ましい。
さらに編成後の染色やそれに続く後加工、ファイナルセット条件についても公知の方法に従い行えばよく、染料として酸性染料、反応染料を用いることやもちろん色なども限定されるものではない。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例および比較例における各測定値は、次の方法で得たものである。
A.扁平度
被覆糸に用いる繊維の任意の位置にて横断面方向に薄切片を切り出し、透過顕微鏡で繊維横断面を5枚撮影し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて外接円直径Rと内接円直径rの比=R/rを算出し、5つの値の平均値から扁平度を求めた。
B.初期引張抵抗度H
被覆糸に用いる繊維である測定サンプルを引張試験機((株)オリエンテック型式RTC−1210)の上部チャックにセットし、サンプル長50cm、初期荷重0.088cN/デシテックスにて下部チャックをセットする。引っ張り試験を行い、伸度と応力のチャートを書かせる際に、伸度1〜2%での傾きができるだけ45度となるようにチャートスピードを設定し、伸度1〜2%までの初期の傾きを引き、伸度10%の線と交わる応力値Pを求め、同様に5回測定を行い、P1〜P5を求める。
初期引張抵抗度H(cN/デシテックス)=(P1+P2+P3+P4+P5)×50/(5×5×D)(D:サンプルの繊度(デシテックス))
C.伸度測定
JIS L1013−1992 7.5引張強さ及び伸び率に準じて測定を行った。試験条件としては、試験機の種類としては定速緊張形、つかみ間隔50cmにて行った。
D.破裂強さ
ストッキング製品を足形に履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部を合わせた上で、踵から大腿部方向に52.5cmの位置を中心として、足形の大腿部裏側に測定枠の大きさに合わせて円形の印を付けておく。測定枠に製品を固定する際には先につけた円形の印に合わせて固定することで、着用状態と同じ状態で破裂強さを測定するものである。破裂強さは、JIS L1018−1999 8.17.2 B法(定速伸長形法)に従い測定した。
なお、足形は人間の足に似せて作成しており、つま先から踵までの長さが23.5cm、つま先から足の裏方向に13.5cm離れた土踏まず部分の周長が22.5cm、踵から大腿部方向に8cmの足首部の周長が22cm、踵から大腿部方向に25cmのふくらはぎ部の周長が34.5cm、踵から大腿部方向に43cmの膝裏部の周長が37cm、踵から大腿部方向に50cmの大腿部の周長が39.5cm、踵から大腿部方向に60cmの大腿部の周長が48cmとなっている。
E.透明度
測定に用いるストッキング製品は、染色の色による影響を取り除くため、油剤や汚れを取り除く精練工程(60℃×30min)までは後述する実施例1と同様に行うものの、その後染色工程(98℃×20min)や固着剤付与(70℃×20min)、柔軟剤付与工程(40℃×20min)については、熱処理だけを行い、染料や固着剤、柔軟剤を付与しない白生地の状態で最終セット(スチームセット105℃×60sec)を通したものを用いる。ストッキング製品を破裂強さで用いた足形に表を外側にして履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部つま先側境界線を合わせた上で、その部分の着用状態を固定するために刺繍枠(内枠外径が15cm、枠の厚み1cm)で固定した。すなわち、にて着用状態を固定するために刺繍枠の上下位置が踵からの位置として60および45cmとなるように刺繍枠の内枠を入れ、外枠を被せることで固定した。刺繍枠に固定した状態で製品の表を測定装置側にして刺繍枠の中心を測定位置に合わせ、上から(製品の裏側から)カラースタンダード白板(L値88.29)を置いた時の編地のL値(Lw)、およびカラースタンダード黒板(L値7.74)を置いたときの編地のL値(Lb)を、色差計Σ80(日本電色工業(株)製)により測定する。そして、それらL値から、次の算式により、透明度を求める。この値が高い程、透明性は優れている。透明度=(Lw−Lb)/(W−B)(ここで、Wはカラースタンダード白板のL値、Bはカラースタンダード黒板のL値である。)
F.触感性:ストッキング製品を人体足型に履かせ、熟練開発担当者からなる検査者(5人)の触感によって風合いのソフト感、清涼感、滑り感を評価したものである。
G.ストッキング置き寸
ストッキング製品を1昼夜25℃、60%の温湿度下において緊張を与えない広げた状態で吊り下げておく。机の上に皺を伸ばして緊張を与えない状態でおき、図6の概略説明図に示す位置の長さをmm単位まで測定する。A:サイ長(ガータ部つま先側端からつま先方向に10cm下がった位置の幅)、B:ボディー長(ガーター部つま先側端の中央部からつま先までの長さ)である。
H.ストッキング伸び寸
置き寸を測定した後、ガータ部からつま先方向に10cm下がった位置(測定Gにおいてサイ長を測定した位置)のレッグ両側端部においてストッキング内側から外側へ向けて図7に示すフックをそれぞれ通す(フック部2の針先をストッキングの編目の間を抜けるように内側から外側へ向けて通し、フック1のショルダー部3で支えられるようにセットする)。フックの一方を吊り下げ、他方にフックと合わせて2.5kgとなる荷重を静かに懸垂する。60秒後のサイ長(測定Gにおけるサイ長に相当する部位の長さ)(A)をmm単位まで測定する。荷重とフックをはずした後、パンティー部を挟んで固定してつま先を吊り下げ、つま先部につま先部を挟んで2.5kgの荷重を静かに懸垂し、60秒後のボディー長(測定Gにおけるボディー長に相当する部位の長さ)(B)をmm単位まで測定した。
I.摩擦耐久性
普段ストッキングを着用している女性3名に実着用してもらい、1日着用毎に洗濯ネットに入れた上で洗濯機にて洗濯を行い、5日間着用して(1)2名以上が破損せず、(2)破損のなかったストッキングにおいてコア切れが観察されない水準は○、(1)は満たすものの(2)を満たさなかった水準は△、5日間以内に2名以上に破損が見られた水準は×とした。
J.98%硫酸相対粘度(ηr)
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(2)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}。
実施例1
98%硫酸相対粘度が2.7で酸化チタンを含まないポリカプロアミド(以下ナイロン6)チップ270℃で溶融し(紡糸温度270℃)、スリット幅と、スリット長を種々変えたスリット形状の吐出孔を有する紡糸口金から吐出させ、さらに単孔からの吐出量を変えることによって、フィラメント数の異なるフィラメントを500m/分で未延伸糸としてそれぞれ巻取った。その後、伸度が40〜45%となるように延伸機で未延伸糸を延伸して表1に示す偏平度を有する13デシテックスのナイロン6フィラメントを得た(No.1〜12)。また、比較として、丸孔を有する口金を用いて13デシテックスのナイロン6フィラメントを得た( No.13〜16)。その上記ナイロン6フィラメントの巻取の際、解除撚数として10T/m入るようにスピンドル撚数を設定した。また、ナイロン6フィラメントの油分は1.0%であった。
得られたフィラメントを被覆糸として、弾性糸としてはオペロン T−178C 20デシテックス(東レ・デュポン社製)を用いて、ドラフト倍率2.9倍、カバリング撚数2000T/mにてS撚、Z撚のカバリング糸を作成した。No.2のカバリング糸の断面図を図4に、No.6のカバリング糸の断面図を図5、No.15のカバリング糸の断面図を図2に示す。
カバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数400本)で、S方向シングルカバリング糸とZ方向シングルカバリング糸とを交互に編機の給糸口に供給し、レッグ部編地をカバリング糸のみで編成した。なお、つま先部は補強のため、仮撚加工糸(56デシテックス26フィラメント)により編成した。パンティストッキングとして、通常の方法である。精練・染色(98℃×20min)、仕上げ及び型板セット(スチームセット、105℃×60sec)してパンティストッキング製品とした。
仕上げたパンティーストッキングについて、置き寸、伸び寸、破裂強さ、透明度、摩擦耐久性、触感性について評価し、表4にまとめた。
実施例2
実施例1と同じポリマー、同じ溶融温度、紡糸温度にて、スリット幅と、スリット長を種々変えたスリット形状の吐出孔を有する紡糸口金から吐出させ、さらに単孔からの吐出量を変えることによって、フィラメント数の異なるフィラメントを800m/分で未延伸糸としてそれぞれ巻取った。その後、伸度が40〜45%となるように延伸機で未延伸糸を延伸して表2に示す偏平度を有する11デシテックスのナイロン6フィラメントを得た(No.17〜19)。その上記ナイロン6フィラメントの巻取の際、解除撚数として10T/m入るようにスピンドル撚数を設定した。また、ナイロン6フィラメントの油分は1.0%であった。
得られたフィラメントを用いて、実施例1と同様な方法でパンティーストッキングに仕上げ、評価を行い、表4にまとめた。また、No.19のカバリング糸の断面図を図3に示す。
実施例3
実施例1と同じポリマー、同じ溶融温度、紡糸温度にて、スリット幅と、スリット長を種々変えたスリット形状の吐出孔を有する紡糸口金から吐出させ、さらに単孔からの吐出量を変えながら、第1のゴデーローラーに引取り、一旦巻き取ることなく155℃に加熱している第2のゴデーローラーとの間で伸度44%となるように延伸倍率を調整し、2ゴデーローラーの速度を巻き取り張力を0.14g/デシテックスとなるようにワインダーに対して速く設定し、ワインダーには4000m/minにて巻き取り、繊度とフィラメント数の異なるナイロン6フィラメントを得た(No.20〜23)。得られたナイロン6フィラメントの油分は、1.0%であった。
得られたフィラメントを用いて、カバリング撚数以外は実施例1と同様な方法でパンティーストッキングに仕上げ、評価を行い、表4にまとめた。なお、カバリング撚数としては、5デシテックスの時3200T/m、7デシテックスの時2800T/m、11デシテックスの時2200T/m、15デシテックスの時1900T/mを採用した。
なお、表4に示すとおり、No.10、12については、延伸時糸切れが多発したため、紡糸困難として検討を中止した。また、No.9、13については、編立時にキンクが多発したため、評価不可能であった。
本発明を満たす水準については図1に示すように透明性と破裂強さ共に優れる。例えば従来技術である比較のNo.15、16では、透明性と破裂強さを同時には満たしていない。このように、本発明のストッキングは、透明性と破裂強さを同時に満たす優れたものであることが判る。
本発明の水準の中でもNo.14に関しては、透明度と破裂強さは満たすものの摩擦耐久性は悪く、触感性についても粗硬感がある風合いであるため、十分とは言えず、No.14のようにフィラメントの断面形状が丸断面であるよりも、例えばNo.2に示すように断面形状として扁平断面とすることが透明度、破裂強さを満たしながらさらに摩擦耐久性と触感性に優れたストッキングとなるため、より好ましい。
また、本発明の水準の中でもNo.17については、触感性としてやや粗硬感のある風合いに仕上がっている。これは初期引張抵抗度が44cN/デシテックスと他の本発明の水準に比べて高いことに起因しており、例えばNo.22においては粗硬感はなく、サラッとした風合いとなった。
さらに摩擦耐久性としてはNo.1は、やや低い値となった。これはフィラメント数が1本であり、さらに扁平度が2.7と比較的低いためである。No.21についても摩擦耐久性がやや低い値となったが、これは、繊度が7デシテックスと比較的低いためである。
一方、触感性は繊度が太くなるほど粗硬な傾向となり、例えばNo.23においては扁平断面としても繊度が15デシテックスであり、1フィラメントであるため粗硬感のある風合いとなっている。ただし、同じ繊度、同じフィラメント数であるならば、例えばNo.14とNo.5を比較して判るように丸断面より扁平断面の方が触感性に優れる。フィラメント数は多い方が触感性に優れるが、No.14〜16に示すように透明性は低下する。
No.20〜23に示すように繊度は細い方が透明性に優れるが、破裂強さは低下していく。また繊度が細いほど風合いは良好となるが、No.20に示すように細すぎると摩擦耐久性も低下する。
実施例4
実施例3と同じポリマー、同じ溶融温度、紡糸温度にて、スリット幅と、スリット長を種々変えたスリット形状の吐出孔を有する紡糸口金から吐出させ、さらに単孔からの吐出量を変えながら、第1のゴデーローラーに引取り、一旦巻き取ることなく155℃に加熱している第2のゴデーローラーとの間で伸度44%となるように延伸倍率を調整し、2ゴデーローラーの速度を巻き取り張力を0.14g/デシテックスとなるようにワインダーに対して速く設定し、ワインダーには4000m/minにて巻き取り、繊度の異なるナイロン6フィラメントを得た( No.24〜26)。得られたナイロン6フィラメントの油分は、1.0%であった。
得られたフィラメントを用いて、カバリング撚数以外は実施例1と同様な方法でカバリング糸を仕上げた。なお、カバリング撚数としては、9デシテックスの時2400T/m、11デシテックスの時2200T/m、を採用した。
No.24からのカバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4−II編機(針数440本)で、S方向シングルカバリング糸とZ方向シングルカバリング糸とを交互に編機の給糸口に供給し、レッグ部編地がカバリング糸のみで編成した。なお、つま先部もレッグ部と同じカバリング糸を用い編成している。また、No.25、26からのカバリング糸は実施例1と同じ永田精機(株)製のスーパー4編機(針数440本)で同様に編成しているが、No.24と同様つま先部もレッグ部と同じカバリング糸を用い編成している。
実施例1と同様な方法でパンティーストッキングに仕上げ、評価を行い、表6にまとめた。
本発明を満たすNo.24〜26の水準については図1に示すように透明性と破裂強さ共に優れる。また、これらの水準は、摩擦耐久性に優れており、表6に示すように3水準とも○となっていると共に、評価の期間中つま先部の破損、コア切れは見られなかった。これは、2フィラメントとなっているため、1フィラメントの水準に比べて被覆性がさらに優れているためである。また、触感としても優れており、透明性が高いということと合わせてサマー用のストッキングとして優れた特性を有している。
破裂強さと透明度の関係を示すグラフである。
No.15に用いたカバリング糸断面の一例を示す断面図である。
No.19に用いたカバリング糸断面の一例を示す断面図である。
No.2に用いたカバリング糸断面の一例を示す断面図である。
No.6に用いたカバリング糸断面の一例を示す断面図である。
ストッキングのサイ長とボディー長の測定位置を示す概略説明図である。
伸び寸測定に用いたフックの(a)正面概略図と(b)側面概略図である。
三日月状に湾曲した扁平糸の一例を示す断面図
符号の説明
a:ポリアミドフィラメント、b:弾性糸、c:カバリング糸、L:見かけ太さ、A:サイ長、B:ボディー長、1:フック、2:フック部、3:ショルダー部、C:断面中心、E:扁平断面端部、R:角度