JP4747396B2 - 接着剤組成物、それを用いた回路端子の接続方法及び回路端子の接続構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤組成物、それを用いた回路端子の接続方法及び回路端子の接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、精密電子機器の分野では生産性の向上の点から、回路間の接続を行う工程における接続時間が短くなってきている。このため、回路接続部材は十分な接続時間が得られないため、電気的な接続信頼性を確保できない恐れがある。この問題を解決するため、低温速硬化性に優れ且つ、可使時間を有する電気・電子用の接着剤組成物が開発されている(例えば特開平11−97825号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記回路接続部材は温度サイクルや高温放置により接続部分の電気抵抗値が上昇し、接続信頼性が低下するという問題があった。特に、回路端子を支持する基板がガラスの場合、または回路部材表面が窒化シリコン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂でコーティング、もしくはこれらの樹脂が回路部材表面に付着していた場合、著しく接続信頼性が低下する問題があった。
本発明は、回路端子を支持する基板が有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種からなる回路部材及び表面が窒化シリコン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着した回路部材に対して、特に温度サイクルや高温放置後も低抵抗の電気接続が得られる電気・電子用の接着剤組成物、それを用いた回路端子の接続方法及び回路端子の接続構造を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の接着剤組成物は、相対峙する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する接着剤組成物であって、(1)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、(2)ラジカル重合性物質、(3)フィルム形成材を必須成分として含有する接着剤組成物であり、フィルム形成材のガラス転移温度が80〜200℃であるのが好ましく、100℃〜180℃であるがより好ましい。
フィルム形成材のガラス転移温度が80℃未満の場合、回路電極間を接続後、温度サイクル試験や高温放置試験を行うと接続部分の電気抵抗値が上昇してしまうので好ましくなく、また200℃を超えて高い場合、回路電極間を接続する際、接着剤の流動性が低下し電気抵抗値が上昇するので好ましくない。
さらに、本発明に用いられるフィルム形成材は、フェノキシ樹脂であると好ましい。
本発明では、(1)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、(2)ラジカル重合性物質、(3)フィルム形成材に導電性粒子を含有すると好ましい接着剤組成物である。導電性粒子として、表面が、金、銀、白金属の金属から選ばれる少なくとも一種で構成されるものを使用することが好ましい。
本発明の回路端子の接続方法は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に上記の接着剤組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させるものである。
接続端子の少なくとも一方の表面が金、銀、錫、白金族の金属、インジユウム−錫酸化物(IT0)から選ばれる少なくとも一種で構成させることができる。
回路端子を支持する基板を有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種で構成させることができる。
少なくとも一方の回路部材表面が窒化シリコン、シリコーン化合物、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着していることができる。
本発明の回路端子の接続構造は、上記した第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に上記の接着剤組成物が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子が電気的に接続されているものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するフィルム形成材としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が拳げられる。フィルム形成材とは、液状物を固形化し、構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いが容易で、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性等を付与するものであり、通常の状態でフィルムとしての取扱いができるものである。このフィルム形成材のガラス転移温度は、接続信頼性の点から80〜200℃であるのが好ましく、さらに好ましくは100〜180℃である。
ここで規定したガラス転移温度とは、フィルム形成材を示差走査熱量計(DSC)により測定したガラス転移温度である。
フィルム形成材の中でも接着性、相溶性、耐熱性、機械強度に優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
フェノキシ樹脂は2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られる樹脂である。具体的には、2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015とをアルカリ金属水酸化物の存在下で非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
また、樹脂の機械的特性や熱的特性の点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類の配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1としアルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下で沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で反応固形分が50重量部以下で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などがある。2官能フェノール類は2個のフェノール性水酸基を持つもので、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフエノール類などが挙げられる。フェノキシ樹脂はラジカル重合性の官能基により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0006】
本発明で使用する加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物などの加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定されるが、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。接続時間を10秒以下とした場合、硬化剤の配合量は十分な反応率を得るためにラジカル重合性物質とフィルム形成材の合計100重量部に対して、0.1〜30重量部とするのが好ましく1〜20重量部がより好ましい。硬化剤の配合量が0.1重量部未満では、十分な反応率を得ることができず良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。配合量が30重量部を超えると、接着剤組成物の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤組成物のホットライフが短くなる傾向にある。
【0007】
硬化剤は、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどから選定できる。また、回路部材の接続端子の腐食を押さえるために、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。具体的には、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドから選定され、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。上記硬化剤は、適宜混合して用いることができる。
【0008】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0009】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0010】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が拳げられる。
【0011】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オタタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0012】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0013】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0014】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0015】
これらの加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0016】
本発明で使用するラジカル重合性物質としては、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等が挙げられる。ラジカル重合性物質はモノマー、オリゴマーいずれの状態で用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。
アクリレート(これに対応したメタクリレートも挙げられる)の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができ、必要によってはハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。また、ジシクロペンテニル基及び/又はトリシクロデカニル基および/またはトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。
【0017】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフエニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3’3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4、4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が拳げられる。これらは単独でもまた組み合わせても使用できる。
【0018】
本発明の接着剤組成物には、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体を使用することができ、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムを併用した場合、応力緩和に優れるので好ましい。これらアクリルゴムの分子量(重量平均)は接着剤の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0019】
本発明の接着剤組成物には、さらに、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
充填剤を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填剤の最大径が導電粒子の粒径未満であれば使用でき、5〜60体積部(接着剤樹脂成分100体積部に対して)の範囲が好ましい。60体積部を超えると信頼性向上の効果が飽和することがあり、5体積部未満では添加の効果が少ない。
【0020】
カップリング剤としてはケチミン、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から好ましい。具体的には、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が拳げられる。ケチミンを有するシランカップリング剤として、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物を反応させて得られたものが挙げられる。
【0021】
本発明の接着剤組成物は導電性粒子が無くても、接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続が得られるが、導電粒子を含有した場合、より安定した接続が得られる。
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなくAu、Ag、白金属の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成し最外層を貴金属類とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。貴金属類の被覆層の厚みは良好な抵抗を得るためには、100オングストローム以上が好ましい。しかし、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の層をもうける場合では、貴金属類層の欠損や導電粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損等により生じる酸化還元作用で遊離ラジカルが発生し保存性低下を引き起こすため、300オングストローム以上が好ましい。そして、厚くなるとそれらの効果が飽和してくるので最大1μmにするのが望ましいが制限するものではない。導電性粒子は、接着剤樹脂成分100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0022】
本発明の接着剤組成物をフィルムに成形し、接着剤組成物を2層以上に分割し、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層に分割した場合、ポットライフの向上が得られる。
本発明の接着剤組成物は、ICチップとチップ搭載基板との接着や電気回路相互の接着用のフィルム状接着剤として使用することもできる。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の接着剤組成物(フィルム状接着剤)を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることができる。
このような回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板等が用いられる。
これらの回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられており、前記回路部材の少なくとも1組をそれらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に本発明の接着剤を介在させ、加熱加圧して対向配置した接続端子同士を電気的に接続して回路板とする。
回路部材の少なくともl組を加熱加圧することにより、対向配置した接続端子同士は、直接接触により又は接着剤組成物中の導電性粒子を介して電気的に接続することができる。
本発明の接着剤組成物は、接続時に接着剤が溶融流動し相対向する回路電極の接続を得た後、硬化して接続を保持するものであり、接着剤の流動性は重要な因子である。厚み0.7mm、15mm×15mmのガラスを用いて、厚み35μm、5mm×5mmの回路接続用樹脂組成物からなる回路用接続材料をこのガラスに挟み、150℃、2MPa、10秒で加熱加圧を行った場合、初期の面積(A)と加熱加圧後の面積(B)を用いて表される流動性(B)/(A)の値は1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。1.3未満では流動性が悪く、良好な接続が得られない場合があり、3.0を超える場合は、気泡が発生しやすく信頼性に劣る場合がある。
【0023】
本発明の接着剤組成物は、示差走査熱量計(DSC)を用いた10℃/minの昇温速度における測定において、発熱量の立ち上がり温度(Ta)が70℃〜110℃の範囲内で、ピーク温度(Tp)がTa+5〜30℃であり、かつ終了温度(Te)が160℃以下であることが好ましい。
本発明の回路端子の接続方法は、ラジカル重合による硬化性を有する接着剤組成物を接続端子の表面が、金、銀、銅、白金族の金属、インジユウム−錫酸化物(IT0)から選ばれる少なくとも一種から構成される接続端子(電極回路)に形成した後、もう一方の接続端子(回路電極)を位置合わせし加熱、加圧して接続することができる。
本発明においては、接続端子を支持する基板がポリイミド樹脂等の有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種からなる回路部材及び表面が窒化シリコン、シリコーン化合物、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着した回路部材に対して特に良好な接着強度が得られる電気・電子用の接着剤組成物の提供が可能となる。
【0024】
【実施例】
(参考例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAからガラス転移温度が80℃のフェノキシ樹脂を合成した。この樹脂50gを、重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40重量%の溶液とした。固形重量比でフェノキシ樹脂50g、ジシクロペンテニルジアルコールジアクリレート49g、リン酸エステル型アクリレート1g、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート5gとなるように配合し、導電性粒子を5体積%配合分散させ、厚み80μmの片面を表面処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤組成物を得た。
【0025】
(実施例1)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAからガラス転移温度が110℃のフェノキシ樹脂を合成したほかは参考例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物を得た。
【0026】
(実施例2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールSからガラス転移温度が130℃のフェノキシ樹脂を合成したほかは参考例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物を得た。
【0027】
(実施例3)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂と臭素化ビスフェノールSからガラス転移温度が160℃のフェノキシ樹脂を合成したほかは参考例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物を得た。
【0028】
(比較例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂とビスフェノールAからガラス転移温度が60℃のフェノキシ樹脂を合成したほかは参考例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物を得た。
【0029】
(比較例2)
分子内に複素環を有するエポキシ樹脂と臭素化ビスフェノールAからガラス転移温度が205℃のフェノキシ樹脂を合成したほかは参考例1と同様にしてフィルム状接着剤組成物を得た。
【0030】
(回路の接続)
バンプ面積50μm×50μm、ピッチ100μm、高さ20μmの金バンプを配置したICチップと厚み1.1mmのガラス上にインジユウム−錫酸化物(ITO)を蒸着により形成したITO基板(表面抵抗<20Ω/□)とを、上記接着剤組成物を用い160℃、100MPa(バンプ面積当たり)で10秒間加熱加圧して接続した。このとき、液状の接着剤組成物はITO基板上に塗布し、フィルム状接着剤組成物はあらかじめlTO基板上に、接着剤組成物の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離してICチップと接続した。
【0031】
(接続抵抗の測定)
回路の接続後上記接続部の電気抵抗値を、初期と、−40℃/30minと100/30minの温度サイクル槽中に500サイクル保持した後に2端子測定法を用いマルチメータで測定した。その測定結果を表1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1よりフィルム形成剤のガラス転移温度(Tg)が80〜200℃である参考例1、実施例1〜3は、Tgが60℃の比較例1とTgが205℃の比較例2に比べ接続抵抗値の温度サイクル後の接続抵抗値が低く優れた電気接続を示す。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、接続端子を支持する基板がポリイミド樹脂等の有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種からなる回路部材及び表面がシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着した回路部材に対して良好な接着強度が得られる電気・電子用の接着剤組成物の提供が可能となる。
Claims (7)
- (1)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、(2)ラジカル重合性物質、(3)2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られるフェノキシ樹脂を必須成分として含有する接着剤組成物であって、
フェノキシ樹脂のガラス転移温度が、110〜180℃である接着剤組成物。 - 導電性粒子をさらに含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
- 第一の接続端子と該接続端子を支持する第一の基板とからなる第一の回路部材と、第二の接続端子と該接続端子を支持する第二の基板とからなる第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1または請求項2に記載の接着剤組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路端子の接続方法。
- 少なくとも一方の接続端子の表面が金、銀、錫、白金族の金属、インジユウム−錫酸化物(lT0)から選ばれる少なくとも一種で構成される請求項3に記載の回路端子の接続方法。
- 少なくとも一方の接続端子を支持する基板が有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種で構成される請求項3または請求項4に記載の回路端子の接続方法。
- 少なくとも一方の回路部材表面が窒化シリコン、シリコーン化合物、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種の化合物でコーティングされている、もしくは該化合物が少なくとも一方の回路部材表面に付着している請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の回路端子の接続方法。
- 請求項3ないし請求項6のいずれか一項に記載の回路端子の接続方法で得られる回路端子の接続構造。
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