JP4746558B2 - 水素生産能力に関する遺伝子を改良された微生物、及びその微生物を用いた水素の製造方法 - Google Patents

水素生産能力に関する遺伝子を改良された微生物、及びその微生物を用いた水素の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、蟻酸脱水素酵素遺伝子及びヒドロゲナーゼ遺伝子を有し、外来の蟻酸ヒドロゲンリアーゼシステム(以下、FHLシステムと略記する。)の転写アクティベーター遺伝子(以下、fhlA遺伝子と略記する。)を含有し、該遺伝子を微生物内で高発現する微生物に関する。さらに、本発明は、前記微生物にさらにFHLシステムの形成を抑制する遺伝子(以下、hycA遺伝子と略記する。)が不活性化され、FHLシステムがさらに増強された微生物に関する。また本発明は、前記微生物を用いた水素の製造方法に関する。
水素は化石燃料と異なり、燃焼しても炭酸ガスや硫黄酸化物等の環境問題が懸念される物質を発生しない究極のクリーンエネルギー源として注目され、単位質量当たりの熱量は石油の約3倍以上あり、燃料電池に供給すれば電気エネルギー及び熱エネルギーに高い効率で変換できる。
水素の生産のために、従来化学的製法として、例えば天然ガスやナフサの熱分解水蒸気改質法等の技術が提案されている。これらの方法は高温高圧の反応条件を必要とし、そしてこれらの方法により製造される合成ガスにはCO(一酸化炭素)が含まれるため燃料電池用燃料として使用する場合には燃料電池電極触媒劣化の問題があり、このためCOを除去する必要がある。しかしながら、CO除去は、技術的に困難性が伴い、容易ではない。
一方、微生物による生物的水素生産方法は常温常圧の反応条件であること、そして発生するガスにはCOが含まれないためその除去も不要である。
このような観点から、微生物による生物的水素生産は燃料電池用燃料供給のより好ましい方法として、注目されている。
生物的水素生産方法には大別して光合成微生物を使用する方法と非光合成微生物(主に嫌気性微生物)を使用する方法に分けられる。前者の方法は水素発生に光エネルギーが用いられるが、低い光エネルギー利用効率のため、広大な集光面積を要し、水素発生装置の価格問題や維持管理の難しさ等、解決しなければならない課題が多く未だ実用的なレベルにはなっていない。
後者の方法では、嫌気性微生物における水素発生に関する代謝経路が種々知られている。該代謝経路としては、例えば、グルコースのピルビン酸への分解経路において水素が発生する経路;ピルビン酸からアセチルCoAを経て酢酸が生成する過程において水素が発生する経路;又はピルビン酸由来の蟻酸より直接水素が発生する経路等が挙げられる。
このうち、ピルビン酸由来の蟻酸より直接水素が発生する経路は、FHLシステムとして、多くの微生物が有している。
FHLシステムに関して、エシェリキア・コリでの報告がある。しかしながら、エシェリキア・コリにおけるFHLシステムに関して、非常に複雑な多数の酵素蛋白の複合体であることを示すモデル構造体が提示されているものの、水素の生成に関連する酵素蛋白をコードする遺伝子群の全容は明らかにされてはいない(非特許文献1)。
また、FHLシステムの機能に関して、fhlA遺伝子がFHLシステム複合体を構成する一部の酵素蛋白をコードする遺伝子への転写アクティベーター遺伝子であることが解析されている(非特許文献2)。
本発明は、hycA遺伝子を不活性化する技術にも関する。非特許文献3には、hycA遺伝子が欠損したエシェリキア・コリ株はその野生株に比して、グルコース等の糖類からの水素生産能力が優れていることが示されている。しかしながら、非特許文献3にはfhlA遺伝子に関しては全く言及されておらず、複雑な酵素蛋白複合体であるFHLシステムの形成に関与する遺伝子群の中より、本発明で特定されたfhlA遺伝子及びhycA遺伝子の両遺伝子に関して形質転換されたFHLシステムを有する微生物が、顕著に向上した蟻酸から水素を発生させる機能を獲得することについては今まで全く知られていない。
サウター・エム(Sauter,M.)ら、モレキュラー・ミクロバイオロジー(Molecular microbiology)、1992年、第6巻、p.1523−1532 シュレンソグ・ブイ(Schlensog,V.)ら、モレキュラー・ミクロバイオロジー(Molecular microbiology)、1990年、第4巻、p.1319−1327 ペンホールド・ディー・ダブル(Penfold, D.W.)ら、エンザイム・アンド・ミクロバイアル・テクノロジー(Enzyme and microbial technology)、2003年、第33巻、p.185−189
従来、有機性基質からの微生物を用いた水素の製造方法として、水素生産能を有する嫌気性微生物を嫌気条件下で培養する方法が主として提案されている。すなわち、嫌気性微生物の増殖により水素を製造する方法である。しかしながら、この手法では反応単位容積あたりの水素生産速度が遅く、十分な生産速度を得るためには菌体あたりの水素生産性の向上が必要であった。
そこで、本発明では、使用する微生物内のFHLシステムの機能として、fhlA遺伝子を高発現させることにより菌体内における蟻酸からの水素生成に関与する酵素の生成を強化し、さらに、hycA遺伝子を不活性化することにより、菌体あたりの水素生産性のさらなる向上を図ろうとするものである。
すなわち、本発明は蟻酸からの水素生産能を大きく向上させた微生物の創製と、この微生物を用いた水素の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は上記の課題を解決することを目的として、鋭意検討を行った結果、蟻酸脱水素酵素遺伝子及びヒドロゲナーゼ遺伝子を有する微生物のfhlA遺伝子を高発現させる微生物を創製した。そしてその創製した微生物が、水素を生産し、かつその水素生産速度が従来の微生物の水素生産速度と比較して、一段と優れていることを見出した。本発明者らはさらに研究をすすめ本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 蟻酸脱水素酵素遺伝子及びヒドロゲナーゼ遺伝子を有し、蟻酸ヒドロゲンリアーゼシステムの転写アクティベーター外来遺伝子を含有する微生物であって、蟻酸ヒドロゲンリアーゼシステムの転写アクティベーターが高発現されており、蟻酸から水素を生産させることの機能が向上していることを特徴とする微生物、
(2) さらに、蟻酸ヒドロゲンリアーゼシステムの形成を抑制する遺伝子が不活性化されていることを特徴とする前記(1)に記載の微生物、
(3) エシェリキア・コリの形質転換体であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の微生物、
(4) エシェリキア・コリがエシェリキア・コリW3110株(ATCC 27325)であることを特徴とする前記(3)に記載の微生物、
(5) エシェリキア・コリW3110/fhlA−pMW118株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10444)、
(6) エシェリキア・コリW3110 △hycA/fhlA−pMW118株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10443)、
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載の微生物を、好気的条件で培養後、さらに、嫌気的条件で培養し、次いで有機性基質を供給下、前記の培養した微生物を水素発生用溶液中で培養することを特徴とする水素の製造方法、
(8) 嫌気的条件下での培養時に、グルコースより代謝の遅い炭素源を用いることを特徴とする前記(7)に記載の水素の製造方法、及び
(9) グルコースより代謝の遅い炭素源が、ガラクトース、又はアラビノースであることを特徴とする前記(8)に記載の水素の製造方法、
に関する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において記載した△hycAは、
Figure 0004746558
を意味するものとする。
本発明により、水素生産能力が向上した微生物を得ることができる。
本発明により、微生物を用いる有機性基質からの水素生産が実用的レベルで実施できるようになる。本発明の水素の製造方法により製造される水素は、化学的水素の製造方法により製造される場合とは異なり、製造される水素ガス中にCO(一酸化炭素)を含まないので、燃料電池の電極触媒の劣化の原因となるCOを除去する手段を講じることなく、燃料電池用燃料として好適に利用できる。
また、本発明の水素の製造方法は常温で実施可能なため、高温が必要な化学的水素の製造方法と異なり、昇温や冷却に要する時間が不要であるため、必要なときに直ちに水素発生の開始と停止が可能となる。また、前記昇温や冷却に必要な外部エネルギーが不要であるので、クリーンでかつ低コストで水素を製造できる。
実施例1および実施例5で得られた微生物の水素生産能力を示す図である。 実施例2および実施例6の増殖曲線を示す図である。 実施例1のベクターfhlA−pMW118の構造を示す図である。 実施例5のベクター △hycA−sacB−pTH18ks1の構造を示す図である。 実施例9、10および11における炭素源の濃度変化を示す図である。 実施例9、10および11における微生物の水素生産能力を示す図である。
本発明の水素の製造に使用される微生物は、好ましくは蟻酸脱水素酵素遺伝子及びヒドロゲナーゼ遺伝子を有し、かつ外来のfhlA遺伝子を含有し、該遺伝子を微生物内で高発現する微生物であるか、又は当該外来遺伝子を有する微生物であって、さらにFHLシステムの形成を抑制する遺伝子が不活性化され、さらにFHLシステムが増強された微生物である。このような微生物を有機性基質の供給下に水素発生用溶液中で培養することにより、工業的に有利に水素を製造することができる。以下、本発明につき詳細に説明する。
なお、上記「高発現」とは、目的遺伝子(例えば、fhlA遺伝子)の発現量が増加されていることを意味し、目的遺伝子を2ケ以上有する場合や、目的遺伝子が一つであってもプロモーターの改変等により発現量が増加されている場合等も含む。
また、「FHLシステムの形成を抑制する」とは、ピルビン酸由来の蟻酸からの水素を生成する経路であるFHLシステムの形成が阻害又は抑制されることをいう。なお、前記FHLシステムの形成の阻害又は抑制には、前記経路の一部阻害又は抑制をも包含する。「FHLシステムの形成を抑制する遺伝子」とは、前記FHLシステムの形成の阻害又は抑制に関連するすべての遺伝子をいう。
また、「外来遺伝子」とは、遺伝子そのものは同種、異種いずれの微生物由来のものであっても、ベクター等を用いる方法により、新たに宿主微生物に導入される遺伝子をいう。「不活性化」とは、目的遺伝子の発現が阻害または抑制されることをいう。該不活性化には、例えば、目的遺伝子が破壊等により欠失または欠損し、目的遺伝子の発現が認められない場合も含む。なお、本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する意味で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列(例えば、配列番号:13又は14)で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体等)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される。かかる同族体、変異体または誘導体をコードする「遺伝子」または「DNA」としては、具体的には、後述に記載のストリンジェントな条件下で、前記の特定の塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列からなる「遺伝子」または「DNA」を挙げることができる。また、遺伝子またはDNAは、例えば発現制御領域またはイントロンを含むことができる。
本発明の微生物の構築に用いる親株としては、蟻酸脱水素酵素遺伝子〔F. Zinoni, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 83, pp4650-4654, July 1986 Biochemistry)及びヒドロゲナーゼ遺伝子(R. Boehm, et al., Molecular Microbiology, 4(2), 231-243(1990))を有する微生物が好ましい。前記親株として使用される微生物は、嫌気性微生物が好ましい。嫌気性微生物としては、偏性嫌気性微生物または通性嫌気性微生物が挙げられる。嫌気性微生物としては、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli ATCC9637、ATCC11775、ATCC4157、ATCC27325等)などのエシェリキア(Escherichia)属微生物;例えばクレブシェラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae ATCC13883、ATCC8044等)などのクレブシェラ(Klebsiella)属微生物;例えばエンテロバクター・アエロギネス(Enterobacter aerogenes ATCC13048、ATCC29007等)などのエンテロバクター(Enterobacter)属微生物;又は例えばクロストリジウム・ベイエリンキイ(Clostridium beijerinckii ATCC25752、ATCC17795等)などのクロストリジウム(Clostridium)属微生物等が挙げられる。嫌気性微生物としては、偏性嫌気性微生物よりも通性嫌気性微生物が好ましい。上記微生物の内ではエシェリキア コリ(Escherichia coli)又はエンテロバクター アエロギネス(Enterobacter aerogenes)等がより好ましい。
本発明に使用される、fhlA遺伝子としては、例えばfhlA遺伝子に関する文献調査、もしくは公知の分子生物学的実験等により得られるfhlA遺伝子又はURLに記載のデータベース、例えばDNA Data Bank of Japan(DDBJ;http://gib.genes.nig.ac.jp/)又はGenomic Analysis of E.coli in JapanのGenoBase(http://ecoli.aist-nara.ac.jp/GB5/index.html)等を用いる検索により見出すことができる遺伝子等が挙げられる。また、fhlA遺伝子には、前記で得られた遺伝子の塩基配列と約80%以上の相同性を有する塩基配列を有する遺伝子であって、FHLシステムの転写アクティベーター活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。fhlA遺伝子の塩基配列と相同性の高い配列は、URLに記載のデータベース、例えばDDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp/search/blast-j.html)等による相同性検索により見出すことができる。
fhlA遺伝子の具体例としては、エシェリキア・コリK−12 W3110株のfhlA遺伝子が好ましく挙げられる。エシェリキア・コリK−12 W3110株のfhlA遺伝子の塩基配列は、GenBankに登録されている。GenBankに登録されているエシェリキア・コリK−12 W3110株のfhlA遺伝子の塩基配列を、配列番号13に示す。
fhlA遺伝子の取得は、例えばFHLシステムの転写アクティベーター活性を有する微生物の染色体DNAを鋳型とし、通常の遺伝子のクローニング法と同様にして取得することができる。例えば、エシェリキア・コリK−12 W3110株の染色体DNAを鋳型とし、例えば配列番号1及び配列番号2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)等によって、fhlA遺伝子を取得することができる。遺伝子のクローニングに用いるゲノムDNAライブラリーの作製、ハイブリダイゼーション、PCR、ベクターの調製、DNAの切断及び連結、形質転換等の方法は、例えばSambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1.21(1989)等に記載されている。また、fhlA遺伝子は、上記で得られるfhlA遺伝子の塩基配列から、DNAシンセサイザー等によって合成することもできる。
本発明において、取得したfhlA遺伝子を上記親株である嫌気性微生物に導入する方法としては、例えばfhlA遺伝子(DNA)、もしくは該DNAの上流にネイティブプロモータあるいはT7、lac、tac又はtrc等の外来プロモータ等を有したDNAを、プラスミド又はコスミド等のベクターに挿入し、前記DNAが挿入されたベクターを親株である微生物(以下、宿主ということもある。)へ導入する方法等が挙げられる。前記ベクターは、必要によりリボソーム結合部位、開始コドン、終止コドン又はターミネーター等を含んでもいてもよい。また、その他の方法としては、トランスポゾンにfhlA遺伝子を挿入し、前記トランスポゾンを宿主の染色体上へ挿入する方法等が挙げられる。上記fhlA遺伝子(DNA)としては、該fhlA遺伝子(DNA)と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFHLシステムの転写アクティベーター活性を有するタンパク質をコードするDNAが含まれる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば前記DNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、約0.7〜1.0M程度の塩化ナトリウム存在下、約65℃程度でハイブリダイゼーションを行った後、約0.1〜2倍程度の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムよりなる。)を用い、約65℃程度の条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
上記ベクターとしては、プラスミドを用いることが好ましい。プラスミドを用いることにより、上記嫌気性微生物において、より容易にfhlA遺伝子を高発現し得る。用いるプラスミドの種類には特に制限はなく、例えばエシェリキア・コリ内で自律複製可能なプラスミドであればいずれも好ましく用いることができる。該プラスミドとしては、具体的には、例えばpUC19、pUC18(以上、タカラバイオ社製)、pHSG298、pHSG299、pHSG398、pHSG399(以上、タカラバイオ社製)、低コピープラスミドpMW219、pMW218、pMW119、pMW118(以上、ニッポンジーン社製)、trcプロモータを有するpTrc99A(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)等が好ましく挙げられる。
前記DNAのベクター(プラスミド)への挿入は、自体公知の方法で行なうことができるが、市販のライゲーションキット等を用いるのが簡便で好ましい。ライゲーションキットとしては、例えばDNA ligation Kit ver 1(タカラバイオ社製)、DNA ligation Kit ver 2.1(タカラバイオ社製)、Fast-Link(登録商標) DNA Ligation Kit(AR BROWN CO., LTD製)、Ligation-Convenience Kit(ニッポンジーン社製)又はラピッドDNAライゲーションキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)等が挙げられる。
上記のようにして得られるベクターを宿主に導入する方法は、自体公知の方法を用いることができる。該方法としては、例えば、コンピテント細胞を塩化カルシウムで処理する方法(Mandel,M. and Higa,A.,J. Mol.,Biol.,53,159(1970))や、細胞をプロトプラスト又はスフェロプラストの状態にして導入する方法(Chang,S. and Choen,S.N.,Molec. Gen.,Genet.,168,111(1979); Bibb,M.J.,Ward,J.M. and Hopwood, O.A.,Nature,274,398(1978); Hinnen,A.,Hicks,J.B. and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75,1929(1978))、エレクトロポレーション法(Canadian Journal of Microbiology,43,197(1997))等が挙げられる。
fhlA遺伝子を導入された微生物は、例えば、X−galによる青白コロニーや薬剤耐性マーカー(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)などに従って、公知の選択方法により容易に選択することが出来る。
fhlA遺伝子の高発現は、親株である微生物の染色体DNA上にfhlA遺伝子を多コピー存在させることによっても達成できる。また、fhlA遺伝子を高発現させる他の方法としては、hycA遺伝子を不活性化させる方法等も好ましい。
hycA遺伝子を不活性化する方法としては、例えば変異原を用いた突然変異による非遺伝子工学的手法や、先述した制限酵素・リガーゼ等を用い、任意に遺伝子配列の操作を行う遺伝子工学的手法を施した遺伝子を宿主に導入する方法等が挙げられる。宿主において、hycA遺伝子を確実に不活性化するためには遺伝子工学的手法によりhycA遺伝子を不活性化することが好ましい。遺伝子工学的手法によりhycA遺伝子を不活性化する方法としては、目的遺伝子をあらかじめクローニングしておき、該遺伝子の特定部位に非遺伝子工学的手法もしくは遺伝子工学的手法により突然変異を起こす方法、あるいは遺伝子工学的手法により特定の長さの欠損部位を設ける方法、さらには外来性遺伝子、例えば薬剤耐性マーカー等を導入することにより、目的とする遺伝子の不活性化のためのDNAを準備し、この変異遺伝子を含むDNAを宿主に導入し、相同組み換えを起こさせることにより目的の遺伝子を不活性化させる方法等が挙げられる。
hycA遺伝子としては、上記fhlA遺伝子と同様、文献調査、もしくは公知の分子生物学的実験等により得られるhycA遺伝子又はURLに記載のデータベース、例えばDDBJ又はGenomic Analysis of E.coli in JapanのGenoBase等を用いる検索により見出すことができるhycA遺伝子等が挙げられる。また、hycA遺伝子には、前記で得られた遺伝子の塩基配列と約80%以上の相同性を有する塩基配列を有する遺伝子であって、FHLシステムの形成を抑制するタンパク質をコードするDNAも含まれる。
本発明に用いるhycA遺伝子の具体例として、エシェリキア・コリK−12 W3110株のhycA遺伝子が好ましく挙げられる。エシェリキア・コリK−12 W3110株のhycA遺伝子の塩基配列は、GenBankに登録されている。GenBankに登録されているエシェリキア・コリK−12 W3110株のfhlA遺伝子の塩基配列を、配列番号14に示す。
hycA遺伝子の取得は、例えばFHLシステムを有する微生物の染色体DNAを鋳型とし、通常の遺伝子のクローニング法と同様にして取得することができる。例えば、エシェリキア・コリK−12 W3110株の染色体DNAを鋳型とし、例えば配列番号5及び配列番号6に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR等によって、hycA遺伝子を取得することができる。遺伝子のクローニングに用いるゲノムDNAライブラリーの作製、ハイブリダイゼーション、PCR、ベクターの調製、DNAの切断及び連結、形質転換等の方法は、fhlA遺伝子で記載した方法と同様である。また、hycA遺伝子は、上記で得られるhycA遺伝子の塩基配列から、DNAシンセサイザー等によって合成することもできる。
また、hycA遺伝子(DNA)としては、該hycA遺伝子(DNA)と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFHLシステムの形成を抑制するタンパク質をコードするDNAが含まれる。ストリンジェントな条件は、前記fhlA遺伝子(DNA)における条件と同様である。
本発明において、上記親株である微生物内でのhycA遺伝子を不活性化する方法としては、例えば、外来遺伝子、例えば薬剤耐性マーカー遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子等)を、hycA遺伝子の塩基配列内に挿入したDNA(以下、hycA/addと略記する。)を、プラスミド又はコスミド等のベクターに挿入する。次いで該hycA/addが挿入されたベクターを宿主(上記親株である嫌気性微生物又はfhlA遺伝子が導入された形質転換微生物等)へ導入する方法等が挙げられる。前記hycA/addのベクターへの挿入、該ベクターの宿主への導入等は、上記fhlA遺伝子を高発現させる方法と同様に行なうことができる。
hycA/addにより形質転換された宿主の選択は、通常は、hycA遺伝子の塩基配列の塩基配列内に挿入された薬剤耐性マーカー遺伝子を指標とすることができる。具体的には、例えば、薬剤(例えばアンピシリン、ストレプトマイシン等)を含む培地にて培養することにより、hycA/addにより形質転換された宿主を選択することができる。ところが、場合により薬剤耐性マーカー遺伝子等の外来遺伝子が、外来遺伝子が挿入されたhycA遺伝子の周辺の遺伝子に影響を及ぼし、hycA/addで微生物を形質転換できない場合がある。その場合には、特定の長さの欠損部位を設けた薬剤耐性マーカー遺伝子を挿入することが望ましい。しかし、欠損部位を設けた薬剤耐性マーカー遺伝子が挿入された遺伝子が発現し、タンパクが製造されたとしても、薬剤耐性機能を失い、薬剤を含む培地で生存できないので、欠損部位を設けた薬剤耐性マーカー遺伝子は、マーカーとしての機能を有さない。この場合には、欠損部位を設けた薬剤耐性マーカー遺伝子と同時に致死遺伝子等を細胞内に導入し、相同組み換えを行うことが好ましい。致死遺伝子としては、例えば、エシェリキア・コリ内では致死に働くバチルス・サブチリス由来のsacB遺伝子等が挙げられる。前記相同組換えを行なう方法は以下のように行なうことが好ましい。まず、hycA遺伝子を不活性化させる外来遺伝子(例えば、薬剤耐性マーカー遺伝子)に特定長の欠損領域のあるDNAとsacBを含むベクターを準備する。このベクターを、組み換えを行う宿主内に導入し、宿主内で相同組み換えを行う。相同組み換えを効率よく行うためには、温度感受性のベクターを用いることがより好ましい。温度感受性ベクターとしては、例えば温度感受性レプリコンpSC101tsを持つ、例えばpMA2、pLOI2226、pTH18ks1又はpTH18ks5等が挙げられる。一度相同組み換えを行った宿主内には、hycA遺伝子が不活性化された遺伝子と元来より存在するhycA遺伝子(不活性化されていないhycA遺伝子)が存在するが、次に致死遺伝子を誘発する条件下で培養することにより、致死遺伝子領域と不活性されていないFHLシステムの形成を抑制する遺伝子領域が二度目の相同組み換えにより欠落し、hycA遺伝子は不活性化され、目的とするfhlA遺伝子を高発現する遺伝子組み換え株を得ることができる。
次に、上記の方法により得られた微生物による水素の製造方法について示す。
本発明による水素の製造方法は、本発明により得られる微生物を嫌気条件下に、有機性基質を供給する事により実施することが出来るが、3段階で構成する方法にて行うことが好ましい。
1段階目は、好気条件下にて微生物を培養する段階であることが好ましい。この段階においては、水素生産能を有していない微生物が得られる。2段階目は、1段階目で得られた水素生産能を有していない微生物を、水素生産能を有する微生物へと変換する段階であることが好ましい。3段階目は、2段階目で得られた水素生産能を有する微生物を用いて、水素製造を行う段階であることが好ましい。
本発明の微生物は、遺伝子工学的な処理を行っていない微生物よりも菌体あたりの水素生産能力が大きく向上し得る。
まず、1段階目の好気条件での培養を行なう段階について示す。この段階においては、短時間で菌濃度を高濃度にまで培養することも出来る。培養するための手段としては公知の方法が用いられる。培養は、好気条件で、例えば、振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養もしくはタンク培養等の液体培養、又は固体培養が挙げられる。培養温度は、該形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約15〜40℃、好ましくは約30〜40℃である。培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1〜5日が好ましい。
次に、2段階目の水素生産能を有していない微生物を、水素生産能を有する微生物に変換する段階について示す。
水素生産能を有していない微生物の水素生産能を有する微生物への変換は、嫌気的条件下で培養することが好ましい。嫌気的条件下での培養は攪拌培養が好ましい。嫌気条件下での攪拌培養開始時の微生物濃度は、約0.01〜80質量%(湿潤状態菌体質量基準)が好ましい。この際、微生物が水素生産能を獲得するためには、嫌気条件下での培養中に分裂増殖することがより好ましいが、分裂増殖することは必ずしも必須ではなく、分裂増殖しない場合においても、本発明のFHLシステムにおいて水素の生成がなされればよい。
嫌気的条件下において、培養液中の酸化還元電位が約−100〜−500mV程度、好ましくは約−200〜−500mV程度であるのがよい。培地の嫌気状態を調整する方法としては、培地中の溶存酸素を除去する方法であれば、いずれも好ましく用いることができ、例えば培地の加熱処理や減圧処理あるいは培地中への窒素ガス等のバブリングにより溶存ガスを除去する方法等が挙げられる。培養液中の溶存酸素の除去を行う具体的な方法としては、約13.33×10Pa以下、好ましくは約6.67×10Pa以下、より好ましくは約4.00×10Pa以下の減圧下で約1〜60分間、好ましくは約5〜60分間程度、脱気処理することにより、嫌気条件下での培養に用いる培養液を得ることができる。また、還元剤を水溶液に添加して嫌気的条件の水溶液を調製することもできる。用いる還元剤としては、例えばチオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メルカプト酢酸、チオール酢酸、グルタチオン又は硫化ソーダ等が挙げられる。これら還元剤は、一種、あるいは数種類を組み合わせて用いることもできる。
嫌気的条件下で本発明の微生物に水素生産機能を付与するための培養は、炭素源、窒素源又はミネラル源等を含む通常の栄養培地を用いることが出来る。炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、アラビノース、キシロース、リボース、リビトール、アラビトール、ラムノース、フコース、セルロース、廃糖蜜又はグリセロール等が挙げられる。特に、グルコースより代謝の遅い炭素源を用いることが、効率的に微生物に水素生産能を付与させることが可能となり好ましい。グルコースより代謝の遅い炭素源としては、ラクトース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、リビトール、アラビトール、ラムノース、フコース等が好ましく挙げられる。その中でも、ガラクトース、アラビノースがより好ましい。窒素源としては、無機態窒素源(例えばアンモニア、アンモニウム塩又は硝酸塩等)又は有機態窒素源(例えば尿素、アミノ酸類又はタンパク質等)などが挙げられる。前記炭素源、窒素源は、それぞれ単独もしくは混合して用いることができる。また、無機態窒素源、有機態窒素源ともに同様に利用することが可能である。ミネラル源としては、おもにK、P、Mg又はS等を挙げることができる。ミネラル源は無機塩類を用いることが好ましく、例えばリン酸一水素カリウム又は硫酸マグネシウム等を好ましく用いることができる。また、培地には、必要に応じて、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー又はカザミノ酸、あるいはビオチン又はチアミン等の各種ビタミン等の栄養素を添加することもできる。また、培地は蟻酸脱水素酵素及びヒドロゲナーゼからなるFHLシステムにおける水素生成のために、微量金属成分を含むことが好ましい。必要な微量金属成分は培養する微生物種により異なるが、鉄、モリブデン、セレン又はニッケル等が挙げられる。なお、これらの微量金属成分は酵母エキス等の天然栄養源には相当程度含まれている。そのため、天然栄養源を含む培地においては、必ずしも微量金属成分の添加を必要とはしない。
微生物の濃度としては、約1〜50質量%(湿潤状態菌体質量基準)が好ましく用いることが出来る。特に菌体あたりの水素生産能力を高めるためには、約1〜30質量%(湿潤状態菌体質量基準)の範囲で、嫌気条件下で培養を行うことがさらに好ましい。
嫌気的条件下での攪拌培養の条件として、温度域としては、約20〜45℃、好ましくは約25〜40℃で培養を行うことが好ましい。pH域としては、pH約4.0〜10.0、好ましくは約5.0〜8.0の範囲で行うことが好ましい。同時にpHを制御することが好ましく、酸又はアルカリを用いてpHの調整を行うことも可能である。温度域、pH域ともに、上記の範囲内が本発明の微生物にとって最適である。通常、培養開始時の炭素源濃度は約0.1〜20%(W/V)が好ましく、さらに好ましくは約1〜5%(W/V)である。
次に、3段階目の水素製造を行う段階の詳細条件について示す。
上述の2段階目の水素生産機能を付与するための培養終了後、培地中にある水素生産能を有する微生物をそのまま使用することもできるし、一度微生物を分離したのちに、還元状態にある水素発生溶液に分離した微生物を加えて使用することもできる。いずれの場合であっても、培地又は水素発生溶液に有機性基質を供給することにより、微生物に水素を製造させることができる。
水素を製造させる方法としては、連続的にあるいは間欠的に例えば蟻酸類等の有機性基質を供給する方法(直接的供給方法)、あるいは微生物内代謝経路において蟻酸類に変換される糖類の化合物を供給する方法(間接的供給方法)等が挙げられる。上記直接的供給方法と間接的供給方法は、併用することも可能である。上記培地又は水素発生溶液に供給される有機性基質としては、蟻酸類等が好ましく挙げられる。
ここで蟻酸類とは、ヒドロカルボキシル基(化学構造式HCOO)を有する物質である。蟻酸類としては、具体的には、例えば蟻酸、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸カルシウム、蟻酸マンガン、蟻酸ニッケル、蟻酸セシウム、蟻酸バリウム又は蟻酸アンモニウム等が挙げられる。それらの中でも、水に対する溶解度の面から蟻酸、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸カルシウム又は蟻酸アンモニウムが好ましく、さらに、コストの面から蟻酸、蟻酸ナトリウム又は蟻酸アンモニウムが好ましい。有機性基質としての蟻酸類の濃度は、約20%(w/w)以上、好ましくは約30%(w/w)以上が好ましい。具体的には、例えば、有機性基質として蟻酸を用いた場合には、約30〜100%(w/w)が好ましく、さらに好ましくは約50〜100%(w/w)である。蟻酸類の濃度が低い場合、蟻酸類の供給に伴い、水素発生溶液の体積が増加するために、微生物濃度も希釈され、変化していくこと等の理由により好ましくない。また、有機性基質の供給速度としては、水素発生溶液のpHが約4.0〜9.0の範囲で制御される範囲であれば、特に制限はない。
水素の発生反応の反応温度は、用いる微生物種にもよるが、一般的に常温微生物を用いた場合、約20〜45℃の条件が好ましく、さらに好ましくは約30〜40℃の範囲が微生物のライフの面からも好ましい。
水素発生溶液としては、還元状態下の水素発生用溶液を用いる必要がある。この溶液の嫌気的条件として、水素発生用溶液の酸化還元電位が約−100〜−500mVであることが好ましく、約−200〜−500mVであることがさらに好ましい。
水素発生用溶液の微生物濃度は、約0.1〜80質量%(湿潤状態菌体質量基準)、好ましくは約0.1〜70質量%(湿潤状態菌体質量基準)、さらに好ましくは、微生物濃度は約10〜70質量%(湿潤状態菌体質量基準)が好ましい。
水素発生用溶液には、気体の発生が激しいため、消泡剤を加えることが好ましい。消泡剤は、公知のものを用いることができ、具体的には、例えばシリコーン系〔例えば、SI(Silicone)等〕又はポリエーテル系〔例えばPE−H(Polyether−High),PE−M(Polyether−Medium),PE−L(Polyether−Low)等〕などが好ましい。
以下、本発明の水素の製造方法を用いた燃料電池システムについて示す。本発明の微生物を微生物燃料電池と呼ばれる装置に入れることにより、電流を作り出すことができる。
本発明の水素の製造方法においては、主に水素と二酸化炭素からなるガスが生成され、基本的には一酸化炭素は生成されない。一般的に、現在の固体高分子型燃料電池の燃料を用いる場合には、一酸化炭素を除去するシステム(CO変成器、CO除去器等)を用いて、COの濃度は約10ppm以下に維持する必要がある。しかし本発明の水素の製造方法を燃料電池の燃料として用いたシステムでは、COが生成されないのでCOを除去するシステムが不要であり、装置を簡易化することができる。
また、本発明の水素の製造方法においては、水素製造時の反応容器の温度制御が容易である。例えば、従来の天然ガスから水素を製造する場合では約600℃以上の温度条件が必要となり、メタノールを用いた場合でも数百℃の温度条件が必要となる。一方、本発明の水素の製造方法では、反応容器の温度条件は常温であることが好ましい。従って、本発明による水素製造に於いては、昇温や冷却に要する時間が不要となり、必要なときに直ちに水素の発生と停止を行なうことが出来る。
以下実施例により具体的に本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
エシェリキア・コリ株(FHLシステムの転写アクティベーター fhlAの高発現株)の作成
1) ゲノムDNAの抽出
エシェリキア・コリW3110株(ATCC27325)を、表1記載のLB培地(Luria-Bertani培地)10mLで37℃にて、一晩振盪培養を行い、GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit(Amersham Bioscience社製)にてゲノムDNAの抽出を行った。
Figure 0004746558
2) ベクターの作成
上記1)にて取得したゲノムDNAから、下記のプライマー:
GGGGTACCTAAAATTCTAAATCTCCTATATGTTAG(配列番号1)
CGGGATCCTGCGTCATCTCATCGATGACAA(配列番号2)
を用い、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(ABI社製)を使用してfhlA及びその上流のプロモータ領域を増幅した。増幅したDNA及びプラスミドpMW118(ニッポンジーン社製)をKpnI、BamHIにて制限酵素処理後、DNA ligation Kit ver 2.1(宝酒造(株)製)によりライゲーションを行い、ベクター fhlA−pMW118を得た。このベクターの構造図を図3に示す。
3) ベクターの導入及びfhlA高発現株の作製
上記2)で得られたベクター fhlA−pMW118をエシェリキア・コリW3110株にエレクトロポレーション法により導入し、表2記載の培養培地(アンピシリン含有LB寒天培地)で培養して目的とするfhlA高発現株のコロニーを取得した。
Figure 0004746558
4) fhlA高発現株の分子生物学的確認
上記の方法により得られたエシェリキア・コリW3110株のfhlAの高発現株の評価はリアルタイムRT−PCR法により行った。リアルタイムRT−PCR法は以下に記す方法に従った。まず、fhlAの高発現株及び野生株を、表1記載のLB培地にグルコース20mM(さらにfhlA高発現株についてはアンピシリン50mg/L)を添加した培地で、10時間嫌気培養した菌体から、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)にてトータルRNAを抽出した。トータルRNA、下記fhlAのプライマー:
Fwd : AGATCGTTTCTGTCGTCACCG(配列番号3)
Rev : CCGGCATAACAACTCATAGTCG(配列番号4)
及びQuantiTect SYBR Green RT-PCR(QIAGEN社製)を用い、下表3記載の混合液を作成し、ABI Prism 7000 sequence detection system(ABI社製)によって、50℃にて、30分で逆転写、95℃にて、15分で熱変性を行った後、95℃、15秒→57℃、20秒→60℃、1分の条件で40サイクルの熱サイクルでDNAを合成した。PCRによるDNA増幅を経時的にモニタリングし、各サイクルでの蛍光強度を検出することにより、DNAの増幅曲線から算出されるCT値の差よりfhlAの発現差を調べた。その結果、fhlA高発現株は野生株に比べfhlAについて2倍以上の発現量があることが確かめられた。
Figure 0004746558
上記の如くして、ベクターfhlA−pMW118 により形質転換されたエシェリキア・コリW3110株はエシェリキア・コリW3110/fhlA−pMW118と命名され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:FERM BP−10444)。
〔実施例2〜4〕
実施例1により得られたエシェリキア・コリW3110株(fhlA遺伝子の高発現株)による微生物を用いた水素生産方法。
1)好気条件下での培養
実施例1により得られたエシェリキア・コリW3110株(fhlA遺伝子の高発現株)を表1で示される組成の培養液10mL(実施例2)、200mL(実施例3)、2000mL(実施例4)にアンピシリン50mg/Lを各々添加し、好気的条件下、37℃で一晩振盪培養を行った。
2)嫌気条件下での水素生産機能を付与するための培養
次に好気的条件下、一晩振盪培養を行った培養液を遠心分離機にかけ(5000回転、15分)、上澄み液を除去した後の微生物を用いて、水素生産機能を有する微生物を得るために下表4で示される組成の培養液200mLにて37℃で、24時間(実施例2)、12時間(実施例3、4)の培養を行った。この時、微生物濃度を湿潤状態微生物質量基準で0.04質量%(実施例2)、1質量%(実施例3)、10質量%(実施例4)に設定して、嫌気条件下での培養を開始した。なお、pHは6.0を保つように適時5N水酸化ナトリウムの添加を行った。
Figure 0004746558
3)水素生産能力の検討
上記2)の条件で培養した微生物を遠心分離により分離後、下表5記載の組成で示される水素発生用反応溶液50mLに懸濁した(微生物濃度約0.2質量% 湿潤状態菌体質量基準;以下、微生物懸濁水素発生溶液という。)。
Figure 0004746558
上記で作成した微生物懸濁水素発生溶液に、溶液の蟻酸ナトリウム濃度が100mMとなるように蟻酸ナトリウムを添加し、微生物の水素生産能力を測定した。
微生物の水素生産能力の測定方法としては、蟻酸ナトリウムを滴下した直後に、発生するガスを水上置換法により集める方法により測定を行った。今回、蟻酸ナトリウムの添加から30秒間に発生するガス量より、水素生成初速度を求めた。なお、発生ガスをガスクロマトグラフィー(島津製作所製)により分析したところ、発生ガス中には50容積%の水素と残余のガス(炭酸ガス)を含んでいた。
結果を図1に示した。
〔実施例5〕
エシェリキア・コリW3110株のfhlA遺伝子高発現かつhycA遺伝子破壊株の作成
1) ゲノムDNAの抽出
エシェリキア・コリW3110株(ATCC 27325)を、表1記載のLB培地10mLで37℃にて一晩振盪培養を行い、GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit(Amersham Bioscience社製)にてゲノムDNAの抽出を行った。
2) hycA破壊株作製用ベクターの作成
上記1)にて取得したゲノムDNAから、下記プライマー:
CTCTGGATCCATTTCATCTTCGGGCGTGC(配列番号5)
CTCTGAGCTCAAAGGTCACATTTGACGGCG(配列番号6)
を用い、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(ABI社製)を使用してhycA領域を増幅した。増幅したDNA及びプラスミドpHSG398(宝酒造(株)製)をBamHI、SacIで制限酵素処理後、DNA ligation Kit ver 2.1(宝酒造(株)製)によりライゲーションを行い、ベクター hycA−pHSG398を得た。さらに、得られたベクターをAvaII、XmnIで制限酵素処理後、DNA Blunting Kit(宝酒造(株)製)により平滑末端処理を行い、その後、8bpのEcoRIリンカーGGAATTCCと共にライゲーションし、△hycA−pHSG398を得た。
またpMV5 (Vertes,A.A. et al. Isolation and characterization of IS31831,a transposable element from Corynebacterium glutamicum. Mol. Microbiol. 11,739-746(1994))からPCRにて、下記プライマー:
CTCTGCATGCAACCCATCACATATACCTGC(配列番号7)
CTCTGCATGCATCGATCCTCTAGAGTATCG(配列番号8)
を用いて、sacB領域を増幅したもの及びプラスミドpTH18ks1(Hashimoto-Gotoh,T. et al. A set of temperature sensitive-replication /-segregation and temperature resistant plasmid vectors with different copy numbers and in an isogenic background (chloramphenicol,kanamycin,lacZ,repA,par,polA). Gene 241,185-191(2000))をBamHI、SphIで制限酵素処理したものを、ライゲーションにより連結し、ベクターsacB−pTH18ks1を得た。
得られたベクターsacB−pTH18ks1のBamHI、SacIサイトに△hycA−pHSG398の△hycA領域を挿入し、ベクター△hycA−sacB−pTH18ks1を得た。
このベクターの構造図を図4に示す。
3) ベクターの導入及びhycA破壊株の作製
上記の方法により得られたベクター△hycA−sacB−pTH18ks1をエシェリキア・コリW3110株にエレクトロポレーション法により導入した。下表6記載の培地にて43℃にて培養することで、相同組み換えが起こり、ベクターがエシェリキア・コリW3110株の染色体上に挿入された組み換え株を得た。
Figure 0004746558
上記表6記載の培地で培養後、さらに、得られた株を表7で示す培地にて30℃で培養することにより、エシェリキア・コリW3110株のhycA遺伝子の破壊株を得た。
Figure 0004746558
4) hycA遺伝子破壊株の分子生物学的確認
上記の方法により得られたエシェリキア・コリW3110株のhycA遺伝子の破壊株はシーケンサー Prism 3100 genetic analyzer(ABI社製)により、hycA領域の削除された株であることを確認した。
5)fhlA遺伝子高発現用ベクターの作製
上記1)にて取得したゲノムDNAから、下記プライマー:
GGGGTACCTAAAATTCTAAATCTCCTATATGTTAG(配列番号9)
CGGGATCCTGCGTCATCTCATCGATGACAA(配列番号10)
を用い、サーマルサイクラー GeneAmp PCR System 9700(ABI社製)を使用してfhlAをコードするDNA及びその上流のプロモータ領域を増幅した。増幅したDNA及びプラスミドpMW118(ニッポンジーン社製)をKpnI、BamHIにて制限酵素処理後、DNA ligation Kit ver 2.1(宝酒造(株)製)によりライゲーションを行い、ベクター fhlA−pMW118を得た。
6) ベクターの導入及びhycA遺伝子破壊かつfhlA遺伝子高発現株の作製
上記2)で得られたベクター fhlA−pMW118をhycA遺伝子破壊株にエレクトロポレーション法により導入し、表2の培地にて目的とするhycA遺伝子破壊かつfhlA遺伝子高発現株のコロニーを取得した。
7) fhlA遺伝子高発現の分子生物学的確認
上記の方法により得られたhycA遺伝子破壊かつfhlA遺伝子高発現株のfhlA遺伝子の高発現の評価はリアルタイムRT−PCR法により行った。リアルタイムRT−PCR法は以下に記す方法に従った。まず、fhlA遺伝子の高発現株及び野生株を、表1記載のLB培地にグルコース20mM(さらにfhlA遺伝子高発現株についてはアンピシリン50mg/L)を添加した培地で、10時間嫌気培養した菌体から、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)にてトータルRNAを抽出した。トータルRNA、下記fhlAのプライマー:
Fwd : AGATCGTTTCTGTCGTCACCG(配列番号11)
Rev : CCGGCATAACAACTCATAGTCG(配列番号12)
及びQuantiTect SYBR Green RT-PCR(QIAGEN社製)を用い、表4の混合液を作成し、ABI Prism 7000 sequence detection system(ABI社製)によって、50℃にて30分で逆転写、95℃にて15分で熱変性を行った後、95℃、15秒→57℃、20秒→60℃、1分の条件で40サイクルの熱サイクルでDNAを合成し、各サイクルでの蛍光強度を検出することにより、DNAの増幅曲線から算出されるCT値の差よりfhlAの発現差を調べた。その結果、hycA破壊かつfhlA高発現の株は、野生株に比べfhlAについて5倍以上の発現量があることが確かめられた。
上記の如くして、本実施例により形質転換されたエシェリキア・コリW3110株はエシェリキア・コリW3110 △hycA/fhlA−pMW118と命名され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号:FERM BP−10443)。
〔実施例6〜8〕
実施例5により得られたエシェリキア・コリW3110株(fhlA遺伝子高発現かつhycA遺伝子破壊株)を用いた水素生産方法。
1)好気条件下での培養
実施例5により得られたエシェリキア・コリW3110株(fhlA遺伝子高発現かつhycA遺伝子破壊株)を表1で示される組成の培養液10mL(実施例6)、200mL(実施例7)、2000mL(実施例8)にアンピシリンを各々50mg/L添加し、好気的条件下、37℃で一晩振盪培養を行った。
2)嫌気条件下での水素生産機能を付与するための培養
次に好気的条件下、一晩振盪培養を行った上記1)の培養液を遠心分離機にかけ(5000回転、15分)、上澄み液を除去した後の微生物を用いて、水素生産機能を有する微生物を得るために表4で示される組成の培養液200mLにて37℃で24時間(実施例6)、12時間(実施例7、8)の培養を行った。この時、微生物濃度を湿潤状態微生物質量基準で0.04質量%(実施例6)、1質量%(実施例7)、10質量%(実施例8)に設定して、嫌気条件下での培養を開始した。なお、pHは6.0を保つように適時5N水酸化ナトリウムの添加を行った。
3)水素生産能力の検討
上記2)の条件で培養した微生物を遠心分離により分離後、表5の組成で示される水素発生用反応溶液50mLに懸濁した〔微生物濃度約0.2質量%(湿潤状態菌体質量基準);以下、微生物懸濁水素発生溶液という〕。
上記で作成した微生物懸濁水素発生溶液に、溶液の蟻酸ナトリウム濃度が100mMとなるように蟻酸ナトリウムを添加し、微生物の水素生産能力を測定した。
水素生産能力の測定方法としては、蟻酸ナトリウムを滴下した直後に、発生するガスを水上置換法により集める方法により測定を行った。今回、蟻酸ナトリウムの添加から30秒間に発生するガス量より、水素生成初速度を求めた。なお、発生ガスをガスクロマトグラフィー(島津製作所製)により分析したところ、発生ガス中には50容積%の水素と残余のガス(炭酸ガス)を含んでいた。
これらの結果を図1に示す。
〔比較例1〜3〕
エシェリキア コリW3110株(ATCC 27325)を用いた水素生産方法。
野生株のエシェリキア・コリW3110(ATCC 27325)を用い、以下の実施例と対応する以下の条件、方法で好気培養、嫌気培養後の水素発生初速度を測定した。
比較例1は、実施例2及び実施例6と対応する同様の条件、方法
比較例2は、実施例3及び実施例7と対応する同様の条件、方法
比較例3は、実施例4及び実施例8と対応する同様の条件、方法
それらの結果を図1に併せ示した。
また、実施例2、実施例6、比較例1により得られたそれぞれの株での嫌気培養時における増殖曲線を図2に示した。
本発明によるfhlA遺伝子に係る高発現株(実施例2,3,4)は、野生株(比較例1,2,3)と比較して顕著に水素発生速度が向上していることが明確である。実施例6、7、8の株では、fhlA高発現とhycA破壊による相乗効果が見られ、野生株及びfhlA高発現株に比べ、一段と優れた水素発生機能の向上が認められる。
また、図2からは、本発明の組換え微生物は野生株に比べ、より効率的な、高い水素生産機能を有する微生物の取得(培養)が可能なことを示している。
〔実施例9〜11〕
実施例5により得られたエシェリキア・コリW3110株(fhlA遺伝子高発現かつhycA遺伝子破壊株)を用いて、嫌気条件下での水素生産能を付与するための培養をそれぞれ、表8で示される嫌気的培養液にて24時間の培養を行う以外は、実施例8と同様に培養を行い、水素生産能力の検討をいった。図5は、嫌気的条件下で使用した炭素源(グルコース、ガラクトース、アラビノース)の濃度変化を、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した結果を示したものである。図6は、それぞれの炭素源を用いた場合の水素発生初速度を示したものである。
図5から、ガラクトース、アラビノースがグルコースよりも代謝の遅い炭素源であることが確認できた。図6から、グルコースよりも代謝の遅い炭素源(ガラクトース、アラビノース)を用いることにより、より高い水素生産能を有する微生物の取得(培養)が可能となることが、明らかとなった。
Figure 0004746558
本発明の微生物を用いることにより、実用的レベルでの有機性基質から水素生産の実施が可能となる。本技術により得られる水素は燃料電池の電極触媒劣化の原因となる一酸化炭素を含まないので、燃料電池用燃料として有用である。

Claims (6)

  1. 蟻酸脱水素酵素遺伝子及びヒドロゲナーゼ遺伝子を有し、fhlA外来遺伝子を含有し、蟻酸ヒドロゲンリアーゼシステムの転写アクティベーターが高発現され、hycA遺伝子が不活性化している、蟻酸から水素を生産する機能が向上していることを特徴とするエシェリキア・コリ
  2. シェリキア・コリW3110株(ATCC 27325)を用いて作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載のエシェリキア・コリ
  3. エシェリキア・コリW3110△hycA/fhlA−pMW118株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−10443)。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエシェリキア・コリを、好気的条件で培養後、さらに、嫌気的条件で培養し、次いで有機性基質を供給下、前記の培養したエシェリキア・コリを水素発生用溶液中で培養することを特徴とする水素の製造方法。
  5. 嫌気的条件下での培養時に、グルコースより代謝の遅い炭素源を用いることを特徴とする請求項4に記載の水素の製造方法。
  6. グルコースより代謝の遅い炭素源が、ガラクトース、又はアラビノースであることを特徴とする請求項5に記載の水素の製造方法。
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