JP4409893B2 - 微生物を用いた水素製造方法 - Google Patents
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Description
一方、微生物による生物的水素製造方法は常温常圧の反応条件であること、そして発生するガスにはCOが含まれないためその除去も不要である。
このような観点から、微生物による生物的水素製造は燃料電池用燃料供給方法としてより好ましい方法となる。
生物的水素製造方法には大別して光合成微生物を使用する方法と非光合成微生物(主に嫌気性微生物)を使用する方法に分けられる。前者の方法は水素発生に光エネルギーを用いるため、その低い光エネルギー利用効率により広大な集光面積を要する水素発生装置の価格問題や維持管理の難しさ等解決しなければならない課題が多く実用的なレベルではない。
この点に関して、本発明者らによる前記提案技術(特願2003−046095)は従来の嫌気性微生物による水素製造方法の課題を解決する有力な方法であるが、本発明は水素発生機能を有する嫌気性微生物をさらに効率的に獲得できる方法を
提案するものである。
好気的条件下で蟻酸類含有培養液中で培養し、その後、さらに付加的に嫌気的条件下で蟻酸類含有培養液中で培養すれば、水素発生能力が、一段と向上させることも可能である。
すなわち、本発明は
(1)蟻酸脱水素酵素遺伝子およびヒドロゲナーゼ遺伝子を有する微生物を、好気的条件下の蟻酸類含有培養液中で培養後、還元状態にある水素発生用溶液に加え、該溶液に有機性基質を供給することを特徴とする生物的水素製造方法、
(2)微生物が、好気的条件下で培養後、さらに嫌気的条件で蟻酸類含有培養液中で培養され、還元状態にある水素発生用溶液に加えられることを特徴とする上記(1)に記載の生物的水素製造方法、
(3)上記(1)、(2)のいずれかに記載の方法で製造される水素の燃料電池用燃料ガスとしての使用、
に関する。
好気的な菌体の培養方法としては、炭素源、窒素源、ミネラル源等を含む通常の栄養培地を用いて行うことが出来る。炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、廃糖蜜等を、窒素源としては、無機態窒素源では、例えばアンモニア、アンモニウム塩、硝酸塩等、有機態窒素源では、例えば尿素、アミノ酸類、タンパク質等をそれぞれ単独もしくは混合して用いることができる。無機態、有機態ともに同様に利用することが可能である。またミネラル源として、おもにK、P、Mg、Sなどを含む、例えばリン酸一水素カリウム、硫酸マグネシウム等を用いることができる。この他にも必要に応じて、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、ビオチン、チアミン等各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することもできる。
好気的条件で培養された菌体をそのまま還元状態下の水素発生反応に供することも出来るが、好気的培養された菌体を一度分離し、還元状態の水素発生溶液に菌体を移すことが好ましい。分離の方法としては、遠心分離や膜分離等の方法を用いることができる。
付加的に実施される嫌気的条件下の培養液中には蟻酸類が存在していることが好ましいが限界的ではない。蟻酸類を使用する場合には、前記の好気的培養時に使用されるものと同様のものが使用される。嫌気的条件の培養液中に存在する蟻酸類の濃度は1〜100mMが好ましい。1mMより低い濃度では蟻酸類の存在効果が現れなく、100mMより高い濃度ではそれ以上の高濃度で実施することの効果が認められない。
菌体の水素生成能力を向上するために実施される嫌気条件下の培養時には微生物の分裂増殖が起こるが、好ましい分裂増殖の細胞数変化は適宜定めることが出来る。長時間の分裂増殖は水素生成機能を有する菌体の獲得に効率的ではなく、また短すぎる分裂増殖では効果がない。その時間はおよそ0.5時間〜6時間である。そのときの細胞数変化は菌体光学密度測定などにより容易に知ることができる。
微生物の菌体細胞が分裂増殖するには、炭素源も必要である。これにはグルコース等の糖類、有機酸、アルコール類等の通常の炭素源が用いられる。
ここで云う還元状態とは、水素発生用溶液の酸化還元電位が−100mV(ミリボルト)〜−500mV(ミリボルト)で規定されるものであり、好ましくは−200mV〜−500mVで規定される還元状態である。本発明の還元状態を実現する方法としては、加熱処理や減圧処理することにより溶存ガスを除去する方法があげられる。具体的には水素発生溶液中の溶存ガス、特に溶存酸素の除去を行う方法として、約13.33×102Pa以下、好ましくは約6.67×102Pa以下、より好ましくは約4.00×102Pa以下の減圧下で約1〜60分間、好ましくは5〜60分間程度、処理することにより、還元条件の水素発生溶液を得ることができる。また、必要に応じて還元剤を水溶液に添加して還元状態の水溶液を調整することができる。用いる還元剤としては、チオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メルカプト酢酸、チオール酢酸、グルタチオンそして硫化ソーダ等が挙げられる。これらの一種、あるいは数種類を組み合わせて用いることも可能である、
水素の発生反応の反応温度は、用いる微生物種にもよるが、20℃〜45℃の条件が好ましく、さらに好ましくは30℃〜40℃の範囲である。
菌体濃度は、0.1%(w/w)〜80%(w/w)(湿潤状態菌体質量基準)濃度範囲で実施される。水素発生溶液の粘性が高くなるという観点から、菌体濃度は0.1%(w/w)〜70%(w/w)(湿潤状態菌体質量基準)が好ましい。さらに好ましくは、菌体濃度は10%(w/w)〜70%(w/w)(湿潤状態菌体質量基準)である。
本発明では水素発生速度が高いので、水素発生の際には、反応溶液中に消泡剤を加えることが好ましい。消泡剤については、公知なものが用いられる。具体的にはシリコーン系、ポリエーテル系の消泡剤が用いられる。
本発明で製造される水素は燃料電池用燃料ガスとして使用される。
エシェリキア コリ株(Escherichia coli W strain;ATCC9637)による生物的水素製造方法。
本菌株を下表1で示される組成の培養液500ml(ミリリットル)に加え、好気的条件下、37℃で一晩振盪培養(前培)を行った。
本菌体を遠心分離により分離後、下表3の組成で示される還元状態下の水素発生用溶液100mlに懸濁調製した(菌体濃度約40% 湿潤状態菌体質量基準)。
10M(モル)/L(リットル)濃度の蟻酸水溶液をマイクロポンプを用いて25ml/hrのフィード速度で連続的に反応容器に供給して発生するガス量を測定した。
蟻酸の供給と同時にガス発生が起こり、蟻酸の連続的供給の間(実験時間約6時間の間)ガス発生が継続した。捕集されたガスをガスクロマトグラフィーにより分析したところ、発生ガス中には50%の水素と残余の炭酸ガスを含んでいた。ガス流量計より測定された水素発生速度は実験時間の間、ほぼ一定の45L(H2)/hr/L(反応容積)であった。
実施例1における好気的培養培地に蟻酸ナトリウムが含まれていない(表2)ことを除いて、実施例1と同様の方法、条件により実験を行なったところ、水素発生溶液からはガスの発生は殆ど認められなかった。
実施例1、比較例1の結果により、好気的条件下で蟻酸類を含む培養液中培養することが水素生成機能を発現できる微生物の獲得に必須であることが明白である。
実施例1と同様の条件、方法による好気的条件下での培養後、菌体を遠心分離機にかけ(5000回転、15分)、上澄み液を除去し、菌体を得た。この菌体を前記表2で示される実施例1で使用されたものと同一組成の嫌気的条件下にある誘導培地に懸濁した。
誘導培地溶液は、予め、120℃で10分間加熱後、直ちに減圧条件(〜約4.00×102Pa)にて20分間溶解している酸素の除去を行い、窒素雰囲気下にある攪拌装置、温度維持装置および酸化還元電位測定装置を備えた内容積10L(リットル)のガラス製容器に導入されている。
上記の分離した菌体の菌体濃度が2%(湿潤状態菌体質量基準)になるように懸濁調製を行い、6時間の嫌気条件下の誘導培養を行った(本発明の付加的な蟻酸類存在下の嫌気条件での水素発生機能発現の向上化)。培養後、遠心分離機にかけ(5000回転、15分)、上澄み液を除去し、菌体を得た。得られた水素発生機能を有する菌体を水素発生溶液に導入して実施例1と同様の条件、方法により水素発生機能を調べた。
実施例1と同様にして水素発生速度を測定したところ、55L(H2)/hr/L(反応容積)であった。
実施例1と実施例2の結果により、好気的条件下で培養した後に、さらに嫌気的条件下での誘導培養を行うことにより、微生物の水素生成機能の発現が向上し、反応容積あたりの水素発生速度が増大することが明らかとなった。
エシェリキア コリ株(Escherichia coli W strain;ATCC9637)による生物的水素製造方法。
好気的条件下で培養を行う培地の蟻酸ナトリウムの濃度が、それぞれ0.5mM(実施例3)、1mM(実施例4)、100mM(実施例5)、300mM(実施例6)、500mM(実施例7)であること以外は、実施例2と同様の方法、条件により水素発生速度の測定を行った。これらの結果を図1に示した。
図1は、蟻酸類存在下の好気的水素生成機能発現方法に関して、蟻酸類濃度と水素発生速度の相関を示している。
蟻酸類濃度が1mM以上の濃度の好気的条件下で培養することで、水素発生速度が大きく向上することが明らかである。
また、蟻酸類濃度が高すぎても、濃度に比例した水素生成機能の発現効果が認められなくなることも示している。
Claims (2)
- 蟻酸脱水素酵素遺伝子およびヒドロゲナーゼ遺伝子を有する微生物を、好気的条件下の蟻酸類含有培養液中で培養後、還元状態にある水素発生用溶液に加え、該溶液に有機性基質を供給することを特徴とする生物的水素製造方法。
- 微生物が、好気的条件下で培養後、さらに嫌気的条件で蟻酸類含有培養液中で培養され、還元状態にある水素発生用溶液に加えられることを特徴とする請求項1に記載の生物的水素製造方法。
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