JP4746477B2 - 水酸化コバルト粒子および酸化コバルト粒子 - Google Patents

水酸化コバルト粒子および酸化コバルト粒子 Download PDF

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Description

本発明は、水酸化コバルト粒子に関し、更に詳しくは、板状を呈する特定の粒度、あるいは粒度分布を示すことを特徴とする、特にブラックマトリックス用着色組成物、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等の黒色電極、遮光層形成用等に用いられる、黒色度に優れ、かつ高電気抵抗の酸化コバルト粒子を得る原料として好適な水酸化コバルト粒子に関する。また、その水酸化コバルト粒子により得られる酸化コバルト粒子に関する。
塗料用、インキ用、トナー用、ゴム・プラスチック用等に用いられる黒色顔料は、黒色度、色相、着色力、隠ぺい力等の特性に優れ、かつ安価であることが求められており、カーボンブラックやマグネタイトをはじめとする酸化鉄系顔料、その他複合酸化物顔料が用途に応じて利用されている。
さらに、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等のブラックマトリックスオンアレイ型高遮光性膜形成においては、特許文献1に開示されているように、電極間の導通防止の為、高電気抵抗であることが要求されており、必然的に用いられる黒色顔料も高電気抵抗であることが好ましいのは言うまでもない。
上記用途に対し、金属酸化物を主成分とする黒色顔料の代表例としては、酸化マンガン、酸化銅といった単独組成の金属酸化物粒子や、それら金属元素の複合酸化物粒子が挙げられる。上記金属酸化物粒子の内、酸化コバルトは、黒色度に優れるものとして注目されており、酸化コバルト粒子を得る手段としては、水溶性コバルト塩水溶液を水酸化アルカリで中和して、水酸化コバルト粒子を液中で湿式酸化させるか、もしくは水酸化コバルト粒子をろ過、洗浄、乾燥の後、熱処理を加えることにより製造する方法が一般的であり、この酸化コバルト粒子の出発原料である水酸化コバルト粒子については、特許文献1および2に代表されるような技術の開示がある。
特開平11−292549号公報 特表2003−503300号公報
上述の中和法による水酸化コバルト粒子については、アンモニウム化合物を用いて、コバルト塩を錯化させる製造方法により得られるが、いずれも条件によって、得られる酸化コバルト粒子の特徴が大きく変動するものである。
しかし、水酸化コバルト粒子に関する従来技術においては、粒度およびその分布、特に粒子の凝集度合いについて言及されたものがなく、そのため、酸化コバルト粒子に要求される各種特性、特に黒色度や電気抵抗等も満足のゆくものが得られなかった。
従って本発明は、酸化コバルト粒子の優れた特性を引き出す水酸化コバルト粒子を提供することを目的とする。
また、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等の黒色電極、遮光層形成用の黒色顔料粉として好適な黒色度と高電気抵抗とを兼ね備えた酸化コバルト粒子を提供するものである。
本発明者等は鋭意検討の結果、特定の粒度やその分布、プロフィールを特定する水酸化物粒子とすることにより、得られる酸化コバルト粒子の黒色度をはじめとする、各種特性に優れるものであることを知見した。
すなわち、本発明の水酸化コバルト粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD50が0.1μm〜1μmであり、D 90 が0.2μm〜2μmであり、SEM観察による一次粒子面方向平均径が0.05μm〜0.7μmである板状のものであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD 50 /一次粒子面方向平均径の比が1〜2であることを特徴とする。
本発明の水酸化コバルト粒子は、粒度、あるいはその分布、粒子の凝集度合いを特定したことに起因して、これを原料として得られる酸化コバルト粒子は、黒色度に優れ、かつ高電気抵抗を有するため、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等の黒色電極、遮光層形成用の黒色顔料粉等の用途に好適である。
以下、本発明を、その好ましい形態に基づき説明する。
本発明で言う水酸化コバルト粒子とは、少なくともその主成分がコバルトであり、黒色度を更に改善する等、必要な特性向上のため、Si、Al、Mn、Ni、Zn、Cu、Mg、Ti、Zr、W、Mo、P等を少なくとも1種以上選択し、含有させても良い。
本発明の水酸化コバルト粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD50が0.1μm〜1μmであることを特徴とする。
本発明の水酸化コバルト粒子は、凝集度が低い特徴を有していることから、上記粒度分布測定により捉えられる凝集粒子径の代表値D50は小さいレベルになる。
このD50が0.1μm未満の場合、一次粒子が相当微細なことから、酸化コバルト粒子に加工され、その後、ペースト化した際の隠ぺい力に劣る。D50が1μmを超える場合、凝集度合いが大きすぎ、酸化コバルト粒子に加工した際に粗大粒子となるおそれがある。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるDMAXが4μm以下であると好ましい。
本発明の水酸化コバルト粒子は、凝集した粗大粒子が少ない。従って、上記粒度分布測定により捉えられる粗大凝集粒子径の代表値DMAXは小さいレベルになる。
このDMAXが4μmを超える場合、酸化コバルト粒子に加工した際にそのまま粗大粒子が残留し、ペースト化して用いた際の塗膜平滑化を阻害する。このDMAXについて下限を設けていないが、実質一次粒子の下限から見て0.1μm以下とすることは困難と考えられる。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD90が0.2μm〜2μmである。
このD90もD50と同様、粒子の凝集度合いをみる代表値であり、本発明の水酸化コバルト粒子においては、小さいレベルになる。
このD90が0.2μm未満の場合、一次粒子が相当微細なことから、酸化コバルト粒子に加工され、その後、ペースト化した際の隠ぺい力に劣る。D90が2μmを超える場合、凝集度合いが大きすぎ、酸化コバルト粒子に加工した際に粗大粒子となるおそれがある。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、D50/一次粒子面方向平均径の比が1〜2である。このような範囲の数値を示す水酸化コバルト粒子であれば、凝集度合いが小さいながらも、加工した際に隠ぺい性も確保できた酸化コバルト粒子を得ることができ、好適である。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、SEM観察による一次粒子面方向平均径が0.05μm〜0.7μmであり、かつ粒子形状が板状である。
製造方法に起因すると推測されるが、従来技術における水酸化コバルト粒子は、総じて粒度が大きい。
上記一次粒子面方向平均径が0.05μm未満の場合、粒子が微細すぎて酸化コバルト粒子に加工した際に、凝集粒子となりやすいのみならず、その後、ペースト化した際の隠ぺい力に劣る。0.7μmを超える場合、粒子が粗大なことに起因して、その結果、酸化コバルト粒子も粗大になる。
また、粒子の形状は、酸化コバルト粒子の粒度が微細かつ凝集の少ない粒子を得ようとする場合、板状の水酸化コバルト粒子である方が好適なことが知見された。
上記板状粒子の好ましい特徴としては、一次粒子の平均厚みが0.01μm〜0.06μmである。
上記平均厚みが0.02μm未満の場合、粒子が薄すぎることに起因して、酸化コバルト粒子に加工した際に、凝集粒子となりやすい。0.06μmを超える場合、粒子が粗大なことに起因して、その結果、酸化コバルト粒子も粗大になる。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、一次粒子面方向径/厚みの比が5〜20であると好ましい。
この比はアスペクト比として捉えられるもので、この値が5未満の場合、粒子の面方向径が厚みに比して小さいので、板状の度合いが低く、粒度にバラツキが生じ易い。また、この値が20を超える場合、粒子は略フレーク状となり、粒子の凝集が著しくなる。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、かさ密度が0.1g/cm〜0.3g/cmであることが好ましい。
このかさ密度が0.1g/cm未満の場合、嵩高いため保管するのに大きな容器を必要とするため好ましくない。0.3g/cmを超える場合、酸化コバルト粒子に加工した際に凝集粒子となりやすい。
また、本発明の水酸化コバルト粒子は、粒子中の全コバルトに対し、2価のコバルトの比率が80%以上であると好ましい。
この2価のコバルトの比率は、高く確保されるほど、加工後の酸化コバルト粒子の黒色度が確保できる。この2価のコバルトの比率について上限を設けていないが、95%以上の比率とすることは困難とみられる。
また、本発明の酸化コバルト粒子は、上述した水酸化コバルトを加熱、酸化して得られるものである。本発明においては、上述したように、粒度、あるいはその分布、粒子の凝集度合いを特定した水酸化コバルト粒子の特徴を反映して、得られる酸化コバルト粒子も、凝集度合いが小さく、黒色度や高電気抵抗性に優れている。
また、本発明の酸化コバルト粒子は、全コバルト含有量に占める2価コバルトの比率が40〜70%であると好ましい。
全コバルト含有量に占める2価コバルトの比率とは粒子全体に含有される2価のコバルト含有量を粒子全体に含有される全コバルト含有量で除した値に100を乗じた値である。酸化コバルトの一般的な形態としては四酸化三コバルト(Co)、酸化コバルト(CoOやCo)がある。Coは全コバルト中における2価のコバルトが占める割合は33%である。またCoOは全コバルト全てが2価のコバルトであり、Coは全コバルトが全てが3価である。
そのような酸化コバルトに対して本発明の酸化コバルト粒子は全コバルト中に占める2価コバルトの割合が異なり、その元素構成により本発明の効果である黒色性、高電気抵抗性の両立が達成される。
全コバルト中の2価のコバルトが占める割合が40%未満の場合、黒色度が不十分となり、また、70%超の場合黒色顔料ではなく青緑色を呈した顔料となってしまい本発明の効果を発揮できない。上記2価コバルトの割合については、更に好ましくは40〜60%である。
また、本発明の酸化コバルト粒子はその粒子形状が粒状であると好ましい。板状等の形状を呈した粒子は分散性、流動性の点で劣るのみならず、板状粒子の場合はその厚み方向の粒子サイズが数十nm程度となり、光の吸収波長に偏りが生じ、黒色顔料としての色相が悪化してしまい、黒色度を重要視するプラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等の黒色電極、遮光層形成用途として不十分である。ここで言う粒状とは球状、紡錘状などを意味し、板状粒子等は除外される。
また、本発明の酸化コバルト粒子は、粒子全体に対する全コバルト含有量が60〜80質量%であり、かつ、粒子全体に対する2価のコバルト含有量は25〜50質量%であることが好ましい。
粒子全体に対する全コバルト含有量については、理論上60質量%未満となることはなく、またコバルト以外の他元素を大量に含ませた場合、黒色度や抵抗への悪影響が懸念され、好ましくない。また、80質量%超の場合、コバルトと酸素の電荷バランスがとりにくくなり、生産物の安定性に欠け、好ましくない。
また、粒子全体に対する2価のコバルト含有量が20質量%未満の場合黒色度が不十分となり、また、50質量%超の場合においても同様に黒色度が不十分となり好ましくない。上記全コバルト含有量と2価のコバルト含有量については、全コバルト含有量は65〜75質量%であり、かつ、粒子全体に対する2価のコバルト含有量は30〜45質量%であると更に好ましい。
また、本発明の酸化コバルト粒子は一次粒子径が0.02〜0.6μmである方が好ましい。一次粒子径が0.02μm未満の場合、その色味が赤みを呈したり、分散性に問題が生じたりして、好ましくない。また、逆に0.6μm超の場合、色味は十分なものの、着色力が不足したりする等の問題が生じやすい。上記一次粒子径は、0.05〜0.3μmであると色相、着色力のバランスがとりやすく、更に好ましい。
また、本発明の酸化コバルト粒子は着色性評価時のL値が38以下、b値が0以下であることが好ましい。着色性の評価方法は、黒色粒子0.5gと酸化チタン(石原産業社製R800)1.5gにヒマシ油1.3ccを加え、フーバー式マーラーで練り込む。この練り込んだサンプル2.0gにラッカー4.5gを加え、さらに練り込んだ後、これをミラーコート紙上に4milのアプリケータを用いて塗布し、乾燥後、色差計(東京電色社製カラーアナライザーTC−1800型)にて黒色度(L値)及び色相(a値、b値)を測定することにより得られる。L値が37よりも高い場合、十分な着色性とは言えず、また、b値が0よりも高い場合、色相が黄色みを呈していることとなり好ましくない。上記黒色度及び色相については、更に好ましくはL値が36以下、b値が−0.5以下である。
また、本発明の酸化コバルト粒子は電気抵抗が高いことが特徴である。具体的には電気抵抗値が1×10Ωcm以上であることが好ましい。電気抵抗が1×10Ωcmよりも低い場合、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等のブラックマトリックスオンアレイ型高遮光性膜形成の材料としてはその機能を十分に高めることができなくなり好ましくない。更に好ましくは5×10Ωcm以上、より更に好ましくは1×10Ωcmである。
次に、本発明の水酸化コバルト粒子の好ましい製造方法について説明する。
本発明の水酸化コバルト粒子は、コバルト(2価)塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを、pH10〜13にて混合中和し、混合中和開始以降、あるいは混合中和終了以降、反応スラリーの温度を10℃〜40℃に維持しながら、酸素濃度5体積%以上、
18体積%以下の不活性ガス富化空気を連続的にバブリングすることにより製造できる。
この製造方法において、まず、コバルト(2価)塩水溶液とアルカリ溶液とを混合中和する際のpHを10〜13にて行うことが重要である。この中和時のpHは、得られる水酸化コバルト粒子中のコバルトの形態をほぼ2価とすることができる。
上記中和pHが10よりも低い場合、中和の際、3価のコバルト水酸化物を生じ易く、水酸化物コバルト粒子生成に障害をきたすのみならず、水酸化コバルト粒子の粒度が微細となり、ろ過性が悪化したり、後述する焼成を行う際に粒子同士の焼結が起こりやすい等の不具合が生じるため好ましくない。
逆にpHが13よりも高い場合は、コバルト(2価)塩が過度の酸化を受けやすく、3価のコバルト水酸化物を生成するおそれがあり、好ましくない。このような水酸化コバルト粒子を用いて、次工程以降の処理を行うと、均整な形状や酸化の制御が困難であり、2価のコバルト含有量の高い酸化コバルト粒子が得られない。水酸化コバルト粒子のより安定的な生成を考慮すると、中和時のpHは11〜12であると、さらに好ましい。
また、コバルト(2価)塩水溶液とアルカリ溶液との混合中和開始以降、あるいは混合中和終了以降、反応スラリーを温度10℃〜40℃を維持しながら、酸素濃度5体積%以上、18体積%以下の不活性ガス富化空気を連続的にバブリングすることも重要である。
殊に、前述のpHを10〜13に制御し、かつ反応スラリーの温度を10℃〜40℃に維持することが、好適な水酸化コバルト粒子を得る上で重要である。この温度が40℃を超える場合、酸素含有ガスを連続的にバブリングしていることもあいまって、水酸化コバルト(2価)の酸化が進み、3価のオキシ水酸化コバルト(3価)が析出しやすいばかりか、特許文献1に開示されているように、この時点で四酸化三コバルトが生成することもあり得るため、本発明が目的するところの、2価のコバルト含有比率の高く、かつ均整な酸化コバルト粒子を得るための、安定した水酸化コバルト粒子が得られない。逆に、温度が10℃未満の場合は、水酸化コバルト生成の妨げとなるし、液温を下げることによる効果は何らなく、実用的でもない。
また、上記混合中和開始以降、あるいは混合中和終了以降、反応スラリー中に酸素濃度5体積%以上、18体積%以下の不活性ガス富化空気を連続的にバブリングする必要がある。この操作を行わない場合、得られる生成物である水酸化コバルト粒子が凝集しやすく、微粒かつ粒度が揃ったものとならない。
この理由は十分究明されていないが、低温度域で酸素含有ガスを連続的にバブリングすることにより、反応スラリー中のコバルト(2価)塩から2価の水酸化コバルト前駆体を生成させる際に、バブリング酸素含有ガスが、凝集しようとする粒子間に入り込み、薄層の酸化膜が粒子間に形成され、粒子の凝集を妨げる役割を果たしているものとみられる。この効果は単なる機械攪拌では得られない。
なお、バブリング酸素含有ガスに空気を用いると、中和温度は10℃〜40℃と低く、急激な酸化は抑制されているものの、凝集の抑制と酸化速度の調整をバランス良く制御することが難しい。
すなわち、低温でも酸化反応が進んでオキシ水酸化コバルト粒子が成長したり、粒子間の酸化反応が進み易いことから、粗大凝集粒子を形成したりするおそれがある。
逆に、バブリング酸素含有ガスの酸素濃度が低い場合、粒子表面に薄層の酸化被膜が形成されにくいので、凝集を抑制できないものとみられる。
このようなことから、バブリング酸素含有ガスには、酸素濃度5体積%以上、18体積%以下の不活性ガス富化空気を使用する必要がある。この際、用いる不活性ガスは、実用上窒素が好ましい。この範囲で空気中の酸素を低減することにより、バブリングガス量やバブリング時間の精密な制御なしに、目的とする水酸化コバルト粒子を生成させることが容易となる。バブリングガス量は、反応スラリー量当たり0.02Nリットル/L・分〜0.6Nリットル/L・分で1時間〜3時間程度バブリングすれば良い。
なお、出発原料として用いられるコバルト(2価)塩としては硫酸コバルト(2価)、塩化コバルト(2価)、硝酸コバルト(2価)等、水に可溶な塩であることが好ましい。また、中和に用いられるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩を含む水酸化アルカリ水溶液が工業的に用いられる。アンモニアあるいはその化合物を用いると、錯塩が生じ、得られる粒子が粗大化したり、形状が非板状となるので避ける。
また、水酸化コバルト粒子を生成させる際に主成分がコバルト(2価)塩である水溶液とアルカリ溶液とを単に混合しただけでは、混合開始当初の混合液量が少ないときに十分な撹拌ができず、均一な水酸化コバルト粒子を得ることが難しい場合がある。このようなときには、撹拌するに十分な量のpH10〜13の範囲に調製したアルカリ溶液を準備しておき、そのアルカリ溶液に、コバルト(2価)塩水溶液を添加して水酸化コバルト粒子を生成させても良い。そのような場合であっても、更にアルカリ溶液を追加しながら、水酸化コバルト粒子スラリーのpHを10〜13に維持することが重要である。
このようにして得られた水酸化コバルト粒子スラリーは、ろ過、洗浄を行い、含有している水分を蒸発させ、水酸化コバルト粒子を得る。
このようにして得られた水酸化コバルト粒子から酸化コバルト粒子を得るには、密閉された大気中、あるいは若干酸素を窒素等不活性ガスで希釈した空気中で、500℃〜850℃にて0.5〜3時間焼成すれば良い。このような条件で処理することにより、粒子全体に対する2価のコバルト含有量の高い酸化コバルト粒子が得られる。
こうして得られた焼成品は、若干の凝集・固化状態を呈するので、常法の解砕処理を行うことにより、酸化コバルト粒子とすることができる。
以下、実施例等により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
pH12の水酸化ナトリウム水溶液80リットルを200リットルの反応容器に投入した。次いで1.2mol/リットルのコバルト(2価)を含有する硫酸コバルト(2価)水溶液60リットルを1リットル/分の速度で前記反応容器に連続投入し、同時に12mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液も連続的に添加した。水酸化ナトリウムの添加流速は反応容器中のスラリーpHを常時測定し、そのスラリーのpHが12となるように適宜調節した。その間、スラリー温度は35℃を維持し、常時、酸素濃度15体積%の窒素富化空気を10リットル/分の速度で吹き込み続けた。
混合終了後、更に30分間窒素富化空気のバブリングと撹拌を継続した。
得られた水酸化コバルト(2価)スラリーをろ過、洗浄し、得られた含水水酸化コバルト(2価)を80℃にて乾燥させた。更に、乾燥された水酸化コバルト(2価)をハンマーミルで解砕し水酸化コバルト粒子粉末を得た。
得られた水酸化コバルト粒子粉末は以下に示す方法で評価した。評価した結果を表2に示す。
〔評価方法〕
(a)レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD50、D90、DMAX
0.1%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100mlに試料0.1gを添加して、BRANSON2200(商品名)超音波バス浴中で3分間分散させた。その分散液をベックマンコールター社製LS-230(商品名)で測定した。
(b)SEM観察による粒子形状、一次粒子面方向平均径、平均厚み
走査型顕微鏡(倍率4万倍)により、粒子形状を観察した。同時に、任意に200個の粒子の面方向フェレ径と粒子厚みを計測し、それぞれの個数平均値を以って一次粒子面方向平均径、平均厚みとした。
(c)一次粒子面方向径/厚み
(b)の観察における200個の個別の一次粒子面方向径/厚み値より平均を求めた。
(d)粒子中の全コバルトに対する2価のコバルトの比率
コバルト含有粒状黒色顔料を酸に完全に溶解し、ICPにてコバルトの含有量を求め、粒子全体に対する全コバルト含有量を求めた。
次に、硫酸アンモニウム鉄(2価)溶液へコバルト含有粒状黒色顔料を加え酸で完全に溶解し、溶液中の2価の鉄イオン濃度をジフェニルアミンスルフォン酸ナトリウムを指示薬として二クロム酸カリウム標準液を用いた滴定により求めた。
次に、あらかじめ添加した2価の鉄イオン濃度と、滴定によって求められた2価の鉄イオン濃度の差を計算によって求め、3価の鉄イオン濃度を求めた。
3価の鉄イオンは以下の化学反応によって生成するため、この濃度を試料に含有されていた3価のコバルトイオン濃度とした。
Co3+ + Fe2+ → Co2+ + Fe3+
これより粒子全体に対する3価のコバルト含有量を求め、全コバルト含有量から3価のコバルト含有量を差し引いて、2価のコバルト含有量を求めた。
そして、(2価のコバルト含有量)/(全コバルト含有量)×100にて粒子中の全コバルトに対する2価のコバルトの比率を求めた。
(e)かさ密度
試料をふるい等を使用せず、そのまま内容量100cm3 の容器に投入し、重量を測定し単位体積当たりの重量を求めた。
〔実施例2〜4、比較例1〜
表1に記載した条件変更以外は実施例1と同様に行い、水酸化コバルト粒子粉末を得た。得られたものを実施例1と同様の方法で評価した。評価した結果を表2に示す。
表2からも明らかなように、実施例1から4の水酸化コバルト粒子は一次粒子の粒度が微細、かつ粒度分布特性値が小さいことから、凝集度合いが小さく、粗粒が少ないことがうかがえる。また、粒子中の全コバルトに対し、2価のコバルトの比率が高い。このような水酸化コバルト粒子を加工して酸化コバルト粒子を得ると、黒色度に優れ、かつ高電気抵抗を示し、ブラックマトリックス用着色組成物、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶等の黒色電極、遮光層形成用等の材料として優れたものとなる。
実施例1の水酸化コバルト粒子粉末を密閉された大気中で700℃にて2時間焼成して得られた酸化コバルト粒子粉末は、JIS K5101−1991に準拠して測定した黒色度L値が35.0で、58.9MPaの圧力を加えて25mmφの錠剤型に成形後、14.7MPaの加圧状態で測定した圧粉電気抵抗が5.4×10Ω・cmと、黒色度、高電気抵抗性に優れるものであった。
それに対して、比較例の水酸化コバルト粒子粉末は、いずれも粒度分布特性値が大きく、粒度と凝集度合いの面で劣るものであった。
凝集度合いが不良であった。
また、粒子中の全コバルトに対し、2価のコバルトの比率が低いものもあり、加工して酸化コバルト粒子とした際に、黒色度の面でも劣るものと考えられる。

Claims (6)

  1. レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD50が0.1μm〜1μmであり、D 90 が0.2μm〜2μmであり、SEM観察による一次粒子面方向平均径が0.05μm〜0.7μmである板状のものであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD 50 /一次粒子面方向平均径の比が1〜2であることを特徴とする水酸化コバルト粒子。
  2. レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるDMAXが4μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化コバルト粒子。
  3. 2価のコバルト塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを、pH10〜13にて混合中和し、混合中和開始以降、あるいは混合中和終了以降、反応スラリーの温度を10℃〜40℃に維持しながら、酸素濃度5体積%以上、18体積%以下の不活性ガス富化空気を連続的にバブリングすることにより製造されたものである請求項1又は2に記載の水酸化コバルト粒子。
  4. 黒色顔料として用いられる酸化コバルト粒子を製造するために用いられる請求項1〜3いずれかに記載の水酸化コバルト粒子。
  5. 一次粒子の平均厚みが0.01μm〜0.06μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の水酸化コバルト粒子。
  6. 粒子中の全コバルトに対し、2価のコバルトの比率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の水酸化コバルト粒子。
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