JP4744776B2 - 熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄鋼、非鉄鋼等の熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延プラントにおいて、加熱炉からの抽出ピッチは、設備の能力を最大に使用することをベースに加熱炉に装入された圧延材の焼上げピッチと圧延ライン側の制約による最小ピッチの大きい方のピッチを通常使用して決めている。
【0003】
または、加熱炉に装入される上流からのピッチと加熱炉の焼き上げ能力と圧延側の圧延製造能力から決まる抽出ピッチをもとに、エネルギーコストを最小にするピッチを抽出ピッチとするやり方もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2635548号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、今まで、熱間圧延プラント全体を消費する電力量から見て、ピッチを修正することは上記「設備の能力を最大に使用することをベースに」している為、通常行っていない。
【0006】
一般に、圧延ラインでの製造間隔(ピッチ)を大きくすれば、単位時間当りの電力量は少なくなる。また、投入材料(材質、損度、サイズ等)と目標仕上製品(温度、サイズ等)の関係から消費電力量も変わってくる。
【0007】
特に、現状の設備の中で新しい種類の材料や、材料の新処理方法や、新しいサイズの製品を作ることになった時、当初の想定していた電力量をオーバーすることが生じる。このような場合、予め電力量上限を設定しそれに収まる様にしようとすれば、時々刻々変わる電力量と次の材料のスケジュールなどを見てオペレータが介入する必要があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、抽出時刻間近における電力需要を予測し、電力制限値が設定されている圧延ラインにおいてその値を守る様に自動的に被圧延材の抽出ピッチを制御できる熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法は、熱間圧延プラントにおける被圧延材のサイズと圧延スケジュールから加熱炉及び圧延ラインでの搬送スケジュールを予測する予測ステップと、前記搬送スケジュールにおける演算時点での総電力量である電力量実績を取り込む電力量実績取り込みステップと、前記搬送スケジュールにおける前記電力量実績の取り込み後の更なる将来分の電力量予測値を求める電力量予測ステップと、前記電力量実績と前記電力量予測値とを加算して熱間圧延プラント全体が消費する電力需要を予測する電力需要予測ステップと、前記電力需要予測ステップにより予測される電力需要予測値と予め設定された電力制限値とを比較する比較ステップと、所定時間毎に電力需要を順に予測してゆき、最初に前記電力需要予測値が前記電力制限値を超える時点が、加熱炉及び機械制約から算出される加熱炉抽出ピッチであって、前記加熱炉に装入された被圧延材の前後材料の焼上げ予測時間から導かれるピッチとそれらが熱間圧延装置に投入された場合の圧延処理能力から決まる投入ピッチとの比較によって決まる該加熱炉抽出ピッチに対応する時刻より小さければ前記被圧延材の抽出ピッチを遅らせるように制御することで、再度、前記電力需要予測値を予測し、予測された電力需要予測値が前記電力制限値を超えない範囲に入るならば、新たな抽出ピッチとする制御ステップとを備えたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法を説明するためのフローチャートである。図1に示すように、ステップS1では、熱間圧延プラントの燃焼スケジュールによって予測される搬送スケジュールに基づいて電力予測が行われる。また、ステップS2では、熱間圧延プラントの圧延スケジュールによって予測される搬送スケジュールに基づいて電力予測が行われる。さらに、ステップS3では、熱間圧延プラントにおける電力計算に係る実績収集に基づいて実電力値を計算する。
【0011】
そして、ステップS4では、ステップS1-S3により求められた電力予測値と熱間圧延プラントの実電力値に基づいて熱間圧延プラント全体が消費する電力需要を予測する。予測された電力需要は、各時間毎に記憶部に蓄えられると共に、ステップS5において、予め設定された電力制限値と比較される。ステップS6では、比較ステップによる比較結果に基づいて電力需要予測値が電力制限値を超える場合にその時刻が次の抽出時刻より前の場合に被圧延材の抽出ピッチを修正制御する。
【0012】
図2と図3は、上述した熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法を説明するための、熱間圧延プラントにおける連続式加熱炉と熱間圧延装置からなる熱間圧延工程と、圧延ライン側の搬送スケジューラとを示すものである。図2に示すように、この発明では、連続式加熱炉1と熱間圧延装置2のそれぞれの最大能力に基づいて、加熱炉1での焼き上げスケジュールと熱間圧延装置2での圧延スケジュールが決定され、加熱炉1に装入された被圧延材3の前後材料の焼上げ予測時間から導かれるピッチとそれらが熱間圧延装置2に投入された場合の圧延処理能力から決まる投入ピッチを比較することによって決まる加熱炉抽出ピッチをピッチとして採用している。
【0013】
図3では、ある非圧延材3が圧延ラインに投入され搬送された時の被圧延材3の先端と尾端の軌跡を、縦軸に時間、横軸に位置をとり示したものである。また同時に、各機器により圧延の進捗(時間)に従い消費される電力量を示している。
【0014】
以下、この発明の実施の形態1に係る熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法をこれら図に基づいて説明する。被圧延材3のサイズと圧延スケジュールから、加熱炉及び圧延ラインでの搬送スケジュールを予測する。演算する時点(図3のtx)での総電力量の部分である各機械の電力量実績を取り込み、それぞれPM1、PM2、・・・、PMNとし、その他、水、油用ポンプなど他のドライブ用電力量実績も取り込み、それらをPU1、PU2、・・・、PUNとすると、時点txでの総和(電力量は−tpからtxの間を対象とする)は、次式に示すものとなる。
Ptx−tp=PM1+PM2+・・・+PMN+PU1+PU2+・・・+PUN
【0015】
また、更なる将来分の電力量予測値は、t=tf1で(tf1、tf2・・・と小刻みにとる)、各機械毎の電力量を、Pf1M1、Pf1M2、・・・、Pf1MN、Pf1U1、Pf1U2、・・・、Pf1UNとすれば、その総和は、次式に示すものとなる。
Pf1=Pf1M1+Pf1M2+・・・+Pf1MN+Pf1U1+Pf1U2+・・・+Pf1UN
【0016】
電力量を計算する時間スパンを一定に取るため、過去の分はtf1分短くして計算する。Ptx−tp−tf1による電力量の予測PE1は、次式に示すものとなる。
PE1=Ptx−tp−tf1+Pf1
【0017】
同様にして、t=tf2、t=tf3、・・・、t=tfn時点での電力量PE2、PE3、・・・、PEnの予測を行う。このとき、同様にして、過去の分も基準時点からtf2、tf3、・・・、t=tfn分短くして演算する。その実績をPtx−tp−tf1とする。即ち、
PEi=Ptx−tfi+Pfi
となる。この予測値PEiと基準値PBとを比較し、iを順に大きくしてゆき、最初にPBを超える時点が、加熱炉及び機械制約から算出していたピッチTpitchxより小さければ抽出ピッチを遅らせる。
【0018】
その時、Δtずつ小刻みに抽出ピッチを遅らせ再度電力量を予測する。k×Δt後に電力量が基準値に入るならば、即ち、
TPITCH=TPITCH十k×Δt
が新たな抽出ピッチとなる。
【0019】
従って、実施の形態1によれば、抽出時刻間近における電力需要を予測し、電力需要予測値が電力制限値を越えないように被圧延材の抽出ピッチを制御することにより、電力需要を電力制限値に制御できる。
【0020】
実施の形態2.
この実施の形態2では、上述した図1に示すステップS5−S6でなる抽出ピッチの制御ステップにおいて、電力需要予測値が電力制限値を、所定時間後越えると予測される場合に外部に報知するようにする。
【0021】
すなわち、図4に示すように、ステップS41では、熱延ライン電力制御装置において、PEi=Ptx−tfi+Pfiを求め、基準値PBと比較してiを順に大きくしてゆき、最初に基準値PBを越える時点がn分となったとき、n分を伝送する。ステップS42では、受信装置において、伝送されたn分を受信して表示部に表示すると共に、ブザーを鳴動させる。同様に、ステップS43において、遠方受信装置は、受信装置を介して伝送されるn分を受信して表示部に表示する。
【0022】
従って、実施の形態2によれば、電力量需要予測値が設定した電力制限値をn分後近辺でオーバーすると予測されれば、警報を鳴らしオペレータに注意をうながすことができると共に、遠く離れた事務所にも情報を伝送して監視することができる。
【0023】
実施の形態3.
この実施の形態3では、複数の熱間圧延プラントが並行に運転される場合に適用したもので、熱間圧延プラント毎に、上述した図1のステップS1−S6の予測及び制御を行い、これらの結果を上位で監視し、これら複数の熱間圧延プラントのプラントにおける電力需要予測値の総量が電力総量制限値を超え、かついずれかの熱間圧延プラントにおける電力需要予測値が電力制限値を、所定時間後越えると予測される場合に、当該熱間圧延プラントに報知する報知するようにする。
【0024】
すなわち、図5に示すように、ステップS51において、全体ライン電力量制御装置では、熱延ライン電力量制御装置及び複数のライン電力量制御装置からのN分後の電力量P1,P2,・・・,Piを入力し、これら電力需要予測値の総量P=P1+P2+,・・・,+Piを演算し、例えば、熱延ライン電力量制御装置がN分後基準値(電力制限値)を超え、しかも、電力需要予測値の総量Pがその基準値(電力総量制限値)を超える場合に、警報を出すようにしている。
【0025】
従って、実施の形態3によれば、複数のプラントが並行に運転していて、上位で監視をしている場合に、総量の規制がある時、ある1つのプラントの電力量需要予測値が設定した電力制限値を、n分後にオーバーすると予測され、電力需要予測値の総量全体が電力総量制限値を越えれば、これを報知することで、予め決めたルールに従ってプラントの運転を変更して電力総量制限値を越えないようにすることができる。
【0026】
実施の形態4.
この実施の形態4では、上述した図1に示すステップ2において、同一圧延スケジュール時の被圧延材の長さが異なる場合は、長さ補正による各機器の消費電力量を基に電力予測を行うようにしている。
【0027】
すなわち、図6に示すように、ステップS61において、各機器の電力量予測装置における圧延スケジュールを比較し、同一圧延スケジュール時被圧延材の長さが異なる場合は、長さ補正で各機器の実績電力量を比較し、適切な電力量予測ができるようにする。一例として、各機器の実績電力量がP1,P2,・・・,Pkで示される場合、予測値Pを、P=(P1+P2+・・・+Pk)/kとして電力予測を行う。
【0028】
従って、実施の形態4によれば、同一圧延スケジュールとみなされ、しかも予測した搬送スケジュールが実績の搬送と同じ範囲とみなされるのであれば、各機械の消費電力量を基に各機械の電力消費量予測式を学習し現状の電力消費量予測式に置き換えることができる。
【0029】
実施の形態5.
この実施の形態5では、機械やセンサーの変更に伴う搬送タイミングが変更となった場合に、図1に示すステップS1とS2により、搬送スケジュールを作成しなおし、作成しなおされた搬送スケジュールに基づいて電力予測するようにする。
【0030】
すなわち、図7に示すように、ステップS71において、各機械電力量予測装置における圧延スケジュールとセンサーの位置より搬送スケジュールを作成し直し、これを基に電力量予測を行う。
【0031】
従って、実施の形態5によれば、機械やセンサーの変更等が行われ、搬送の諸タイミングが変更となった場合に、自動的に電力需要予測を行うことができる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、電力需要を予測し、電力需要予測値が電力制限値を越えないように被圧延材の抽出ピッチを制御することにより、電力需要を電力制限値に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】 熱間圧延プラントにおける連続式加熱炉と熱間圧延装置からなる熱間圧延工程を説明する図である。
【図3】 熱間圧延プラントにおける圧延ライン側の搬送スケジューラを示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態2を説明するための図である。
【図5】 この発明の実施の形態3を説明するための図である。
【図6】 この発明の実施の形態4を説明するための図である。
【図7】 この発明の実施の形態5を説明するための図である。
【符号の説明】
1 連続式加熱炉、2 熱間圧延装置、3 被圧延材、S1 (第1の)電力予測ステップ、S2 (第2の)電力予測ステップ、S3 (熱間圧延プラントの実電力値計算)ステップ、S4 (電力需要予測)ステップ、S5 比較ステップ、S6 (制御)ステップ。
Claims (3)
- 熱間圧延プラントにおける被圧延材のサイズと圧延スケジュールから加熱炉及び圧延ラインでの搬送スケジュールを予測する予測ステップと、
前記搬送スケジュールにおける演算時点での総電力量である電力量実績を取り込む電力量実績取り込みステップと、
前記搬送スケジュールにおける前記電力量実績の取り込み後の更なる将来分の電力量予測値を求める電力量予測ステップと、
前記電力量実績と前記電力量予測値とを加算して熱間圧延プラント全体が消費する電力需要を予測する電力需要予測ステップと、
前記電力需要予測ステップにより予測される電力需要予測値と予め設定された電力制限値とを比較する比較ステップと、
所定時間毎に電力需要を順に予測してゆき、最初に前記電力需要予測値が前記電力制限値を超える時点が、加熱炉及び機械制約から算出される加熱炉抽出ピッチであって、前記加熱炉に装入された被圧延材の前後材料の焼上げ予測時間から導かれるピッチとそれらが熱間圧延装置に投入された場合の圧延処理能力から決まる投入ピッチとの比較によって決まる該加熱炉抽出ピッチに対応する時刻より小さければ前記被圧延材の抽出ピッチを遅らせるように制御することで、再度、前記電力需要予測値を予測し、予測された電力需要予測値が前記電力制限値を超えない範囲に入るならば、新たな抽出ピッチとする制御ステップと
を備えた熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法。 - 請求項1に記載の熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法において、
前記制御ステップは、前記演算時点を順に大きくしてゆき、最初に前記電力需要予測値が前記電力制限値を越える時点が所定時間となったときに当該所定時間を熱間圧延プラントとは離隔した遠方受信装置に報知する
ことを特徴とする熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法。 - 請求項1に記載の熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法において、
前記予測ステップ、前記電力量実績取り込みステップ、前記電力量予測ステップ、前記電力需要予測ステップ、前記比較ステップ及び前記制御ステップは、並行に運転される複数の熱間圧延プラントのプラント毎の予測及び制御を行い、
これら複数の熱間圧延プラントのプラント毎の電力需要予測値の総量が電力総量制限値を超え、かついずれかの熱間圧延プラントにおける電力需要予測値が電力制限値を、所定時間後越えると予測される場合に、当該予測されたいずれかの熱間圧延プラントに報知する報知する報知ステップをさらに備えた
ことを特徴とする熱間圧延プラントにおける抽出ピッチ制御方法。
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