JP4744410B2 - 屋内外広告物のリサイクル方法 - Google Patents
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Description
ポリエチレンテレフタレートは、その化学的安定性が優れていることから、繊維、フィルム、樹脂などの生活関連資材、飲料水、炭酸飲料用ボトル等の食品分野などで大量に使用されている。使用量の増大に伴って大量に発生する使用済みポリエチレンテレフタレート、あるいはポリエチレンテレフタレート製造段階で発生する品質不適格品の処理は、大きな社会問題となっている。
例えば、自然に商品イメージを認知、または情報伝達、販促効果を狙ったポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物も使用量の増大に伴い使用後の処分に困っているもののひとつである。
しかしながら、のぼり製品には顔料以外にリン、ハロゲン化合物からなる防炎剤やバインダーとしてアクリル樹脂が使用されていることから、のぼり製品を大量に処理しようとした場合、解重合反応、精製が困難でケミカルリサイクルできないという問題がある。
従って、現状では、防炎剤やアクリル樹脂を含有した屋内外広告物をまとめて処理し、同じものをつくるシステムは資源の再利用に貢献するものであり、地球環境にやさしい企業活動の一環として重要であるものの簡単にできるものでないのが実態である。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をケミカルリサイクル処理するリサイクル方法であって、防炎剤及び/又はアクリル樹脂を含有している屋内外広告物を含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて前処理した後、解重合反応してポリエステル原料を得ることを特徴とするリサイクル方法。
(2)ポリエステル製の袋にポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を入れて、含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて防炎剤、アクリル樹脂を除去してリサイクル原料を得ることを特徴とする上記(1)に記載のリサイクル方法。
本発明におけるポリエステル繊維とは、主としてポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートであって、共重合ポリエステルが50%以下の範囲で含有されていてもよい。その他、染色及び着色剤等を含有していてよい。
本発明におけるポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物とは、のぼり、旗、幕
(懸垂幕、垂れ幕、腰幕、横幕など)、バナー、タペストリー等をいい、ポンジ、スエード、トロピカル、サテン、トロマットなどの織物からなるものである。織物への彩色、加工は通常実施されている方法であればいずれでもよく、例えば、顔料等にて自動スクリーンによる捺染やインクジェットによる捺染されたものであり、この際、バインダーに使用されたアクリル樹脂の中に防炎剤や撥水剤等が混用されているものである。
本発明における前処理では、含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて処理することにより、解重合時に悪影響を及ぼす防炎剤やアクリル樹脂を簡単に除去することが可能である。また、顔料等の着色剤も同時に容易に除去が可能である。
還元剤としては、染色工業で使用されている還元剤であればいずれでもよいが、屋内外広告物に残存する防炎剤、アクリル樹脂さらには顔料等の着色剤、撥水剤までを含めた残存加工薬剤を効率よく除去するためには、80℃以上のアルカリ溶液下での還元電位が−800mV以上の高い還元電位を発揮するものが好ましく、例えば、ハイドロサルファイトナトリウムや二酸化チオ尿素が挙げられ、中でも二酸化チオ尿素が除去性、処理液の排水負荷面より好ましく使用できる。この際に併用するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基のものが還元電位を高める上で好ましく使用できる。
還元剤の使用量は、好ましくは2〜20g/リットルで、さらに好ましくは3〜10g/リットルであり、2g/リットル未満では除去効率が不十分であり、20g/リットルを越えても除去効率は向上せずコスト面で不経済となる。
アルカリ剤の使用量は、好ましくは2〜30g/リットルであり、さらに好ましくは4〜20g/リットルであり、2g/リットル未満では除去効率が不十分であり、30g/リットルを越えても除去効率の向上は期待できない。
本発明の前処理においては、ポリエステル製の袋に屋内外広告物を入れ処理するものであり、袋に入れることで取り扱いの作業性や生産効率の上で好ましく、特に処理後の解重合工程にもそのまま投入でき分別作業の手間が入らず作業性が向上する。袋は、メッシュ調の編物を使用するので除去効率を高める上で好ましい。
また、袋に入れて前処理する際に、防炎剤やアクリル樹脂、顔料の除去効率を高めることやバッチ毎の除去レベルの向上や均一化を図るために、上記薬剤とともに浸透剤や湿潤剤や濡れ剤を併用使用してもかまわない。
前処理により防炎剤やアクリル酸を除去した袋入りの屋内外広告物を解重合反応させる際の方式は、回分式と連続式のどちらでもよく、解重合反応温度は90〜230℃、圧力0〜0.2MPa(ゲージ圧)程度であればよく、この範囲内では、エチレングリコールでの解重合反応が十分行われる。防炎剤やアクリル酸が含まれている場合は、解重合反応が進まず、未溶解物が残る。また解重合反応温度が90℃未満であると、解重合時間が非常に長くかかり効率的でない。一方、230℃を越えると高圧対応の反応器が必要となり、運転面や安全面で好ましくない。
ここで解重合触媒及び置換エステル化触媒は、既知の触媒のいずれも用いることができるが、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を用いることが触媒能の高さの面から好ましく、酢酸ナトリウムや炭酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
また、重合時には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、共重合成分が含有されていてもよい。さらに、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、その他顔料、添加剤等が配合されていてもよく、酸化チタンを0.3〜10質量%含有させてもよい。
重合によって得られたポリエステル繊維の形状は特に限定するものではなく、丸断面形状のもののみならず、多角形状や多葉形状のものであってもよく、また中空を有するものであってもよい。
得られた繊維は、例えば、0.3〜4dtexの単繊維繊度を有し、フィラメント数は20〜150であり、強度は2.0〜6.0cN/dtex、伸度は25〜40%の物性を保持している。
また繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。そして、繊維が加工される糸状の形態としては、紡績糸、マルチフィラメント糸(極細糸を含む)、甘撚糸乃至は強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等が挙げられる。
得られた織物は、通常実施されている糊抜き、精練、ヒートセットを行った後、オートスクリーンによる捺染やインクジェット方式による捺染を行うが、この際に、アクリル樹脂をバインダーとして用い、防炎剤や撥水剤を併用して加工すればよい。
バインダーとして用いるアクリル樹脂や、防炎剤、撥水剤は、通常、ポリエステル繊維に使用されているものであれば何でもよい。
またリサイクルポリエステルを溶融のみ行って再利用したポリエステル繊維と異なり、繊維の分子量、結晶化度、原糸物性値が安定しているので、オートスクリーン捺染において要求される高い捺染精度と高速印刷にも十分に追従し、高品質の捺染品が得られるという特徴も有している。
このようにして得られたポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物は、繊維物性、織物物性も優れたものであり、耐光性にも優れ、リサイクルされたポリエステル繊維を使用することから循環社会に適応したポリエステル繊維製品を得ることができる。
(1)固有粘度[η](dl/g)
固有粘度[η](dl/g)は次式の定義に基づいて求められた値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義式中、ηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリマーの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されるものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
オリエンテック社製、引張試験機を用い、糸長20cm、引張速度20cm/分の条件で測定した。
(3)色差
分光光度計(グレタグマクベス社製、形式CE−7000A)を使用し評価した。色差が55以上の場合は、処理前の色がほとんど残っていないレベルである。
(4)プリント品の発色性
プリント品の色調を目視で判定し、3段階で評価した。
○:色調が良好
△:色調がやや不良
×:色調が不良
(5)耐光堅牢度
プリント製品について、100日間天日暴露して評価した。試験サンプルの変褪色をJIS−L−0804のグレースケールと比較し判定し、等級が3級以上を良好、未満を不良と判定した。
石油スタンドで3ヶ月使用されたポリエステル繊維からなるポンジー製ののぼり(600×1800mm、チギレは上に3本、横に5本、チギレおよびチギレを縫いつける縫糸ともポリエステル繊維製、重量は93g/1枚)を25000枚回収し、500枚ごとにポリエステル製のメッシュ袋に入れ、下記の条件にて前処理を行った。
前処理条件
含窒素界面活性剤;マシンクリーナYK(一方社油脂工業株製)8g/リットル (塩化ドデシルトリメチルアンモニウムとポリオキシエチレンアルキルアミンから なる混合物)
還元剤 ; 二酸化チオ尿素 5g/リットル
アルカリ剤 ; 水酸化ナトリウム 8g/リットル
浴 比 ; 1:25
処理温度、時間 ; 110℃、30分
(尚、還元剤のみ105℃にて投入した。)
次に、前処理されたのぼりをメッシュ袋に入れたまま投入し(トータル2530kg)、さらにエチレングリコールを3500リットル、酢酸ナトリウムを投入し、210℃まで4時間かけて昇温し、40分保持し、解重合反応を行った。反応後、過剰のエチレングリコールを除去し、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を主成分とするオリゴマーを得た。得られたBHETをメタノール6000リットル、炭酸ナトリウムが仕込んである反応槽に入れ65℃で30分処理し、粗テレフタル酸ジメチル(粗DMT)を得た。得られた粗DMTを濾布のついた高速遠心分離機でメタノールを除去し、蒸留にて濃縮し、精製DMTを得た。
得られたチップ(固有粘度[η]が0.62(オルソクロロフェノール中、1重量%で測定))を295℃の押出機に供給し、紡糸装置に供給し、紡糸孔30個を有するノズルより、紡糸温度(スピンヘッド温度)295℃、紡糸速度2200m/分で押し出し、90℃の第1延伸ロールでフィラメントを加熱し、120℃の第2延伸ロールにて熱セットを行い、伸度が30〜35%となるように延伸を行い、単糸断面形状が丸型を有した84デシテックス/30フィラメントの延伸糸を得た。得られた原糸の強度は4.4cN/dtexで、伸度は32%であった。
次に、オートスクリーン捺染機にて顔料プリントを行った。この際、バインダーのアクリル樹脂に防炎剤、撥水剤を混ぜ込み、同時に加工を行い、仕上げた。このときのプリント性、色の発色性(色調)は良好であった。
得られたプリント製品をほつれのないようにのぼりのサイズ(600×1800mm)にヒートカットにて断裁し、ポールを通すためのチギレをポリエステル繊維からなるものを用い、上に3本、横に5本、それぞれポリエステル繊維からなるミシン糸にて縫い付けのぼり製品を完成した。得られたのぼり製品の耐光堅牢度性能は良好であった。
実施例1の回収したのぼりを前処理せずに、実施例1と同条件にて解重合反応を行ったところ未溶解残渣が多く、高速遠心分離機の濾布が目詰まりを起こし、粗DMTを得ることはできなかった。
[実施例2]
石油スタンドにて3ヶ月使用されたポリエステル繊維からなるトロピカル製からなるバナー(1200×3800mm、重量は680g/1枚)を1500枚回収し、50枚ごとにポリエステル製の袋に入れ、下記の条件にて前処理を行った。
前処理条件
含窒素界面活性剤;マシンクリーナYK 10g/リットル
還元剤 ; 二酸化チオ尿素 8g/リットル
アルカリ剤 ; 水酸化ナトリウム 15g/リットル
浴 比 ; 1:25
処理温度、時間 ; 110℃、30分
(尚、還元剤のみ105℃にて投入した。)
次に、前処理されたバナーを袋に入れたまま投入し(トータル1150kg)、実施例1と同様の方法にて過剰のエチレングリコールを投入し、酢酸ナトリウムを投入し、解重合反応を行ない、得られた精製DMTを用い、重縮合反応を行い、ポリエステルチップを得た。
得られた原糸を常法により1H加工機にて仮撚加工を行い加工糸を得た。得られた加工糸を経糸密度72本/インチ、緯糸密度60本/インチにてトロピカルを製織した(得られた生機の密度は110g/m2 であった)。得られた織物を糊抜き、精練を行い、190℃でセットを行った。
得られたプリント製品をバナーのサイズ(1200×3800mm)となるように断裁し、上下にポリエステル製のヒモを仕込みバナー製品を完成した。得られたバナー製品の耐光堅牢度性能は良好であった。
[比較例2]
実施例2の回収したバナーを前処理せずに、同条件にて解重合反応を行ったところ未溶解残渣が多く、高速遠心分離機の濾布が目詰まりを起こし、粗DMTを得ることはできなかった。
Claims (2)
- ポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物をケミカルリサイクル処理するリサイクル方法であって、防炎剤及び/又はアクリル樹脂を含有している屋内外広告物を含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤を用いて前処理した後、解重合反応してポリエステル原料を得ることを特徴とするリサイクル方法。
- ポリエステル製の袋にポリエステル繊維からなる布製の屋内外広告物を入れて含窒素界面活性剤と還元剤、アルカリ剤にて防炎剤、アクリル樹脂を除去してリサイクル原料を得ることを特徴とする請求項1に記載のリサイクル方法。
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