JP2023026193A - 芯鞘複合マルチフィラメント糸、異形断面マルチフィラメント糸、織編物、および衣料 - Google Patents

芯鞘複合マルチフィラメント糸、異形断面マルチフィラメント糸、織編物、および衣料 Download PDF

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Abstract

【課題】リサイクルポリエステル原料を高比率で含有するポリエステル樹脂を原料として用いていながら、異形断面マルチフィラメント糸を紡糸性よく得ることができる、芯鞘複合マルチフィラメント糸、および異形断面マルチフィラメント糸を提供する。【解決手段】難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸である。前記難溶性ポリエステル樹脂が、リサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下である再生ポリエステル樹脂である。前記単繊維の繊維軸方向に垂直な断面における、前記芯部の形状が突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である。【選択図】図1

Description

本発明は、使用済ポリエステル製品やポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂を含むリサイクルポリエステル原料に由来する成分を用いた再生ポリエステル樹脂からなる芯鞘複合マルチフィラメント糸、および異形断面マルチフィラメント糸に関する。さらに本発明は、当該異形断面マルチフィラメント糸を含む織編物、および当該織編物を一部に用いてなる衣料に関する。
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストなため、繊維やフィルム、ペットボトル等の成形品等に幅広く用いられている。
これらのポリエステル製品は、製造段階や加工段階で屑の発生が避けられず、また使用後に廃棄処分される場合が多いが、焼却する場合には高熱が発生するため焼却炉の傷みが大きく、寿命が短くなるという問題がある。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないため半永久的に残ることになる。
近年、ゴミとして捨てられたプラスチック容器などが河川を経由して海洋へ流出し、波や潮流の作用で細かく破砕されたマイクロプラスチックが海洋生物の体内に蓄積、食物連鎖で濃縮され海洋生物の生態系に悪影響が出ていること、プラスチックが海洋汚染の一大原因となっていることが問題視され、使用量の削減や生分解性プラスチックに切り替える動きが全世界的に起きている。
このようなプラスチック製品の使用量を削減する観点や、環境問題の観点から、資源を再利用するリサイクルが様々な方法で行われている。ポリエステル製品に関しても、その製造工程で発生したポリエステル屑をリサイクルする方法や一度市場に出回り廃棄された製品を回収、原料として再使用する方法が検討されている。
特に近年、繊維製品については、一定のリサイクル率を達成することで認定されるエコマークを付与した製品が普及している。
リサイクルポリエステル原料をリサイクルする方法としては、各種の方法が提案されている。例えば、PET屑にメタノールを添加してジメチレンテレフタレート(以下「DMT」と表記することがある。)とエチレングリコール(以下「EG」と表記することがある。)に分解する方法(特許文献1)、PET屑にEGを添加して解重合した後、メタノールを添加してDMTを回収する方法(特許文献2)、PET屑をEGで解重合してオリゴマーとし、これを重縮合反応に用いる方法(特許文献3)等が提案されている。
また、一旦製品となったPETボトルなどを再生する際に問題になるものとしては、ポリエステル樹脂中に添加した添加剤やボトル本体に付属するものとして、キャップ(アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン)、中栓やライナー(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ラベル(紙、ポリスチレン等の樹脂、インク)、接着剤、印字用インクなどがある。
再生工程の前処理としては、まず、回収されたPETボトルを振動ふるいにかけて砂や金属などを除去する。その後、PETボトルを洗浄し、着色ボトルを分離した上で、荒い粉砕を行う。そして、風力分離によりラベルなどを取り除く。さらにキャップなどに由来するアルミ片を除いて、PETボトル片を細かく粉砕する。高温アルカリ洗浄により接着剤、蛋白質やかびなどの成分を除き、比重によりポリプロピレンやポリエチレンなどの異種成分を分離することを行う。
しかしながら、これらの工程を経たとしても、特に、前記したようなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の非ポリエステル樹脂を完全に分離することは困難であった。このため、上記したような特許文献1~3に記載のリサイクル方法で再生ポリエステル樹脂を得たとしても、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものではなく、バージンポリエステル樹脂同等の品質を有する製品を得ることはできなかった。しかも、特許文献1~3のような方法では、回収装置の設置、運転、維持等に多額のコストもかかり、実用性という点でも改善の余地がある。
また、特許文献4記載の発明には、ポリエステル屑をエチレングリコールで解重合した後に、平均目開きが10~50μmのフィルターでろ過した後、再重合反応を行う方法が記載されている。そして、得られた再生ポリエステル樹脂は、異物の混入量が少なく、加工時の操業性に優れるものであることが示されている。しかしながら、この方法においても、上記のような非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えておらず、異物の混入量が十分に低減できたものではなかった。
このように、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えており、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の製品を得ることが可能で、かつ品質の高い製品を得ることができる再生ポリエステル樹脂は未だに得られていない。
中でもポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を得る際には、異物の混入量や熱安定性が生産性に大きく影響を及ぼす。繊維の形状を複雑にしたり、細繊度化するほど、これらの影響を大きく受けることとなり、生産が困難となったり、得られる繊維の機械的特性値が劣るものになるという問題点がある。
衣料用のポリエステル繊維に再生ポリエステル樹脂を使用するにあたっては、様々な複合繊維などへの使用も試みられているが、バージンポリエステル樹脂を用いる場合と比べて、色調や複合繊維特有の特性値が発現できないという問題があった。
繊維表面で光を散乱させて濃染性を発現させ得る、異形断面形状を有する繊維については、ポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を得る際に、再生ポリエステル樹脂中に異物の含有量が多かったり、熱安定性に劣る場合、紡糸性が悪化し、異形断面形状を発現し難くなり、繊維表面における光の散乱が不十分となり、濃染性にも劣るものとなってしまう。そのため、リサイクルポリエステル原料を用いた再生ポリエステル樹脂が用いられた場合において、紡糸性よく異形断面繊維を安定して製造できる技術は未だ確立されていない。
さらに、環境問題への意識の高まりから、リサイクル原料の使用率を高くした再生ポリエステル樹脂への需要が高まっている。リサイクル原料の使用率を80%以上、さらにはリサイクル原料の使用率を100%とした再生ポリエステル樹脂においては、前記したような異物混入の問題が顕著になり、また、熱安定性にも劣るものとなり、当然のことながら、溶融紡糸を行い、異形断面形状を有する繊維を得ることはより困難であった。
特公昭42-8855号公報 特開昭48-62732号公報 特開昭60-248646号公報 特開2005-171138号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む再生ポリエステル樹脂を原料として用いていながら、異形断面マルチフィラメント糸を紡糸性よく得ることができる、芯鞘複合マルチフィラメント糸、および異形断面マルチフィラメント糸を提供しようとするものである。
本発明者らは、難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸において、難溶性ポリエステル樹脂として特定物性を有する再生ポリエステル樹脂を採用することで、複雑な断面形状であっても、紡糸性よく得るマルチフィラメントを得ることができることを見出した。これにより、アルカリ減量処理を行った後の濃染性および染色堅牢度に優れる異形断面マルチフィラメント糸であって、再生ポリエステル樹脂からなるものが得られることを知見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)~(7)を要旨とする。
(1)難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸であって、前記難溶性ポリエステル樹脂が、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有してなる再生ポリエステル樹脂であって、前記再生ポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下である再生ポリエステル樹脂であり、前記単繊維は、繊維軸方向に垂直な断面において、前記芯部の形状が突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である、芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(2)前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数が、15~35である、(1)の芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(3)繊維表面に突起部と細溝とが交互に、かつ略一様に配された異形断面形状を有する単繊維から構成される異形断面マルチフィラメント糸であって、前記単繊維はポリエステル樹脂により形成されてなり、前記ポリエステル樹脂は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有してなる再生ポリエステル樹脂であって、前記再生ポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下である再生ポリエステル樹脂である、異形断面マルチフィラメント糸。(4)前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数および寸法が、下記(I)~(III)式を満足する、(3)の異形断面マルチフィラメント糸。
10≦N≦35 (I)
0.3≦W≦3.0 (II)
0.5W≦H≦3.0W (III)
ただしNは突起部の数、Wは突起部の幅(μm)、Hは突起部の高さ(μm)である。
(5)筒編地とし、黒色染色加工を施したときのL*値が12以下である、(3)または(4)の異形断面マルチフィラメント糸。
(6)(3)~(5)の何れかに記載の異形断面マルチフィラメント糸を含む、織編物。
(7)(6)の織編物を一部に用いてなる、衣料。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸は、芯部の難溶性ポリエステル樹脂に用いる再生ポリエステル樹脂が、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有しながらも、紡糸性よく、特殊な異形断面形状を発現させたものとすることができる。そして、上記の芯鞘複合マルチフィラメント糸にアルカリ減量処理を施して得られる、本発明の異形断面マルチフィラメント糸は、特殊な異形断面形状が良好に発現したものとなるため、バージンポリエステル樹脂を用いたものと同様に繊維表面における光の散乱が生じるとともに、濃染性に優れ、高級感を有する織編物を得ることができる。こうした異形断面マルチフィラメント糸を含む本発明の織編物は、衣料(特に、ブラックフォーマル)、水着、スポーツインナー、ランジェリー、またはファンデーションのような濃染性が必要とされる繊維製品に好適に用いられる。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を構成する単繊維である、芯鞘複合繊維の断面の一実施態様を示す横断面模式図である。 本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維の異形断面の一実施態様を示す断面模式図である。 本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維の異形断面の一実施態様における部分拡大模式図である。 本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を製造する装置の一実施態様を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(芯鞘複合マルチフィラメント糸)
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸は、難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む。単繊維の繊維軸方向に垂直な断面における、前記芯部の形状は、突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を構成する単繊維としての芯鞘複合繊維において、芯部と鞘部との複合比率(質量比)は特に限定されるものではないが、例えば、強力、アルカリ減量処理のし易さなどとの兼ね合いから、鞘部:芯部=5:95~40:60の範囲であることが好ましい。
難溶性ポリエステル樹脂は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む再生ポリエステル樹脂である。
芯鞘複合マルチフィラメント糸の好ましい態様としては、前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数が、15~35であるものが挙げられる。
図1に示すように、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸の単繊維である芯鞘複合繊維1は、難溶性ポリエステル樹脂3が芯部に配され、易溶性ポリエステル樹脂2が鞘部に配されてなるものである。そして、単繊維の繊維軸方向の垂直な断面における芯部の形状が、突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状であることが好ましい。細溝は、隣接する突起部の間に突起部の数と同数個で存在する。
本発明において、難溶性とは、塩基性化合物(アルカリ)による溶出が困難であることをいう。また、易溶性とは塩基性化合物(アルカリ)による溶出が容易であることをいう。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸の単繊維において、芯部の形状は、後述するような、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維の断面形状と、実質的に同一である。なぜなら、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸の鞘部を塩基性化合物により溶出することで、後述する本発明の異形断面マルチフィラメント糸を得るためである。
易溶性ポリエステル樹脂2は、難溶性ポリエステル樹脂3よりもアルカリ等の溶剤に対する溶解速度が5倍以上速いものであることが好ましい。そのため、易溶性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分のうち1~3モル%がスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分であり、平均分子量が1000~10000のポリアルキレングリコールを5~15質量%含有することが好ましい。
スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分としては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、5-ホスホニウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、ジカルボン酸成分の1モル%以上であると、アルカリに対する溶解速度が十分に速くなる。3モル%以下であると、高速時においても製糸性がより良好であり糸切れ等のトラブル発生を抑制できる。
また、ポリアルキレングリコールは、平均分子量が1000~10000のものが好ましい。平均分子量が1000以上であると、易溶性ポリエステル樹脂のガラス転移点が低下することがなく、紡糸工程で融着が発生し難くなる。10000以下であると、相溶性が良好となり均一に含有させ易くなる。
ポリアルキレングリコール含有量が5質量%以上であると、アルカリに対する溶解速度が十分に速くなる。15質量%以下であると、溶解速度を十分に速いものに維持しつつ、製糸性が良好となり、紡糸工程で糸切れ等のトラブルを抑制することができる。
難溶性ポリエステル樹脂について、以下に述べる。難溶性ポリエステル樹脂は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む再生ポリエステル樹脂である。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を含む。
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていても良いし、あるいは溶融してペレット化されていても良い。
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであっても良い。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の性状としては、限定的ではなく、上記a)及びb)の形態のままでも良いし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、ポリエステル屑の溶融物を冷却及び切断して得られるペレット、PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体の形態であっても良い。これらの原料を用いてポリエステル製品を製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエステル原料の使用率が高い再生ポリエステル樹脂である。本発明における再生ポリエステル樹脂は、上記a)及びb)の少なくとも1種であるリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有するものであり、中でも85質量%以上含有することが好ましい。そして、本発明における再生ポリエステル樹脂は、後述する本発明の製造方法により得ることができるが、リサイクルポリエステル原料に由来する成分が100%、すなわち、リサイクル原料のみからなる再生ポリエステル樹脂も容易に得ることが可能である。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、下記に示す(a)、(b)の特性値を有し、(c)の特性値を有することが好ましいものである。
(a)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下
(b)カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下
(c)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度が0.6MPa/h以下
これらの特性値を有する再生ポリエステル樹脂は、後述する再生ポリエステル樹脂の製造方法により得ることができる。
まず、本発明における再生ポリエステル樹脂は(a)の特性値として、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、中でも3.5モル%以下であることが好ましい。特に、本発明の製造方法により得られる再生ポリエステル樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いるが、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。再生ポリエステル樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量を4モル%以下とすることにより、非結晶部が少なくなり、熱安定性にすぐれた性能を有しているため、紡糸性に優れるものとなり、複合形態または異形断面形状を有する繊維であっても、生産性よく繊維形態とすることができる。さらに染色堅牢度に優れるために、染色した場合に、染色堅牢性に優れるものとなり濃染性に優れるものとなる。
なお、ジエチレングリコールの含有量の下限値は、例えば0.5モル%程度とすることができるが、これに限定されない。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、ポリエステルを構成する全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールは、全グリコール成分の80モル%以上であることが好ましく、中でも85モル%以上であることが好ましい。エチレングリコールの含有量が80モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなりやすい。
また、本発明における再生ポリエステル樹脂は、ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、80モル%以上がテレフタル酸であることが好ましい。つまり、酸成分としてテレフタル酸を主成分とするものである。酸成分中のテレフタル酸の割合は80モル%以上であり、中でもテレフタル酸の割合は90モル%であることが好ましい。テレフタル酸の割合が80モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し非晶性のものとなりやすいため好ましくない。
また、再生ポリエステル樹脂における、全グリコール成分中のエチレングリコール、ジエチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体等を用いることができる。
再生ポリエステル樹脂における、テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
本発明樹脂は、特に種類は限定されないが、その中でもポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とするものであることが好ましい。
特に、後記の再生ポリエステル樹脂の製造方法においては、通常はエチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるPETを得ることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、これらの成分が共重合されたポリエステル樹脂が重縮合反応により生成する場合もある。このため、再生ポリエステル樹脂としては、主体となるPET以外に、酸成分又はグリコール成分として、上記に示す成分が共重合されていても良い。これらの成分は2種以上含まれていても良い。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、(b)の特性値として、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であり、中でも30当量/t以下であることが好ましく、さらには25当量/t以下であることが好ましい。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることにより、粘度が安定するために、繊維の紡糸性に優れ、特に複合繊維または異形断面繊維を得る場合に、その形状を発現し易くなる。そのため、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸にアルカリ減量処理を施した際に、後述のような異形断面形状を発現し易くなり、突起部の幅に対して高さを十分に保つことができ、異形断面形状による細溝内に入射した光が、両脇の突起部間を多重散乱し易くなるために、濃染性に優れるものとなる。
本発明における再生ポリエステル樹脂の極限粘度は、特に限定されないが、通常は0.44~0.80程度であることが好ましい。なお、極限粘度(IV)は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
本発明における再生ポリエステル樹脂は(c)の特性値として、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることが好ましく、0.5MPa/h以下であることが好ましく、中でも0.4MPa/h以下であることが好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示すものである。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出するものである。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
本発明における再生ポリエステル樹脂は、後述する製造方法を採用することにより、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量を低減することができるため、(c)の特性値である、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度を0.6MPa/h以下にすることが可能である。そのため、溶融紡糸時の糸切れ回数を低減することができ、バージンポリエステル樹脂を用いたときと同様に溶融紡糸を行うことができ、複合形態または異形断面形状を有する単繊維からなるマルチフィラメント糸を操業性よく製造することが可能となる。また、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸が単糸繊度1.0デシテックス以下のものであっても、製造することが可能となる。
前記の測定で用いるエクストルーダー、フィルター等は、本発明の規定を満たす限りは、公知又は市販のものを適宜使用することもできる。
本発明では、必要に応じて、測定結果に実質的に影響を与えない範囲内において、フィルターに補強材を付加しても良い。上記の測定方法では、フィルターに極めて高い圧力が加わるため、フィルター単体ではフィルターが変形又は破損するおそれがある。そのような場合は、フィルターを補強材で支持することが好ましい。補強材としては、網目状の金属部材等を用いることができる。より具体的には、フィルターの変形を防止できる強度を有し、かつ、測定結果に実質的に影響を及ぼさない粗い網目を有する金属製フィルターを補強材として好適に用いることができる。そして、このような補強材を上記フィルターの下流側に積層することにより用いることができる。
本発明における再生ポリエステル樹脂中には、重縮合触媒や用途に応じて添加される各種添加剤が含まれていてもよい。
まず、重縮合触媒としては、限定的ではないが、例えばゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等の少なくとも1種を用いることができる。その中でも、特にゲルマニウム化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。得られる再生ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。上記の各化合物としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、コバルト等の酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物等を用いることができる。
重縮合触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して5×10-5モル/unit以上とすることが好ましく、その中でも6×10-5モル/unit以上とすることがより好ましい。上記使用量の上限は、例えば1×10-3モル/unit程度とすることができるが、これに限定されない。
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒も、重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、重縮合工程で重縮合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒の種類及びその含有量を考慮することが好ましい。
用途に応じて添加される各種添加剤としては、溶融粘度を調整することができる脂肪酸エステル、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物、樹脂の外観を改良することができる色調調整剤、樹脂の白度を向上させるチタン化合物、樹脂の結晶性を向上させる結晶核剤等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
色調調整剤としては、酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、染料(青系、紫系、赤系)、銅フタロシアニン系化合物等の色調調整剤が挙げられる。中でも、重縮合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、酢酸コバルトや染料が好ましい。
また、青系染料および/または赤系染料、紫系染料を含有すると、色調が良好となり好ましい。
染料としては、COLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 122、SOLVENT BLUE 45等の青系の染料、SOLVENT RED 111、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、PIGMENT RED 263、VAT RED 41 等の赤系の染料、DESPERSE VIOLET 26、SOLVENT VIOLET 13、SOLVENT VIOLET 37、SOLVENT VIOLET 49等の紫系染料が挙げられる。中でも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での耐熱性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 45、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、SOLVENT VIOLET 49が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
チタン化合物としては、酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンは、ポリエステル樹脂の艶消し剤や白色顔料として一般的に使用されているが、再生ポリエステル樹脂に適量の酸化チタンが添加されていることにより、繊維とした際の白度が向上し、良好な色調の織編物を得ることが出来る点で好ましい。酸化チタンの添加量としては、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.05~5質量部であることが好ましい。
結晶核剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、合成ケイ酸及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素等;カルボキシル基の金属塩を有する低分子有機化合物、カルボキシル基の金属塩を有する高分子有機化合物、高分子有機化合物等が挙げられる。中でも、マイカ、タルク、高分子量有機化合物が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
(異形断面マルチフィラメント糸)
本発明の異形断面マルチフィラメントは、上記の本発明の異形断面マルチフィラメント糸の芯部で形成されるものである。つまり、発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸において、塩基性化合物によりアルカリ減量処理が施されて鞘部が溶出することにより芯部の形状が発現し、表面に突起部と細溝とが交互に、かつ略一様に分布した異形断面繊維を単繊維として構成される、本発明の異形断面マルチフィラメント糸とすることができる。上記の突起部と細溝の断面形状は長方形または略台形状であることが好ましく、何れもそれぞれ繊維軸方向に連続していることが好ましい。
再生ポリエステル樹脂の組成と濃染性との関係性について以下に述べる。
本発明者が鋭意検討した結果、再生ポリエステル樹脂におけるジエチレングリコールの含有量を低減させることで、より濃染性に優れるマルチフィラメント糸が得られる。つまり、ジエチレングリコールの含有量を低い範囲とすることで熱安定性に優れるものとなり、ポリエステル樹脂の染色堅牢度の低下が抑制される。そして、カルボキシル末端基濃度が低いものであるために、ポリエステル樹脂の粘度の低減が抑制されるために、異形断面を良好に発現させることができる。そして、異形断面形状による細溝内に入射した光が両脇の突起部間を多重散乱し易くなるために、エチレングリコールによる熱安定性と相俟って、より一層濃染性に優れるものとなる。
さらに、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維は、以下のような断面形状であることが好ましい。すなわち、当該単繊維は、突起部および細溝がそれぞれ繊維軸方向に連続しており、突起部の数または寸法が、下記 (I)~(III)を満足することが好ましい。
10<N<35 (I)
0.3≦W≦3.0 (II)
0.5W≦H≦3.0W (III)
ただしNは突起部の個数、Wは突起部の幅(μm)、Hは突起部の高さ(μm)である。
上記のような断面形状であると、細溝内に入射した光が多重散乱し易くなり、より一層濃染性に優れるものとなる。
図2を用いて、異形断面マルチフィラメント糸の単繊維について、好ましい断面形状を以下に述べる。図2にて示すように、異形断面マルチフィラメント糸の単繊維Aは、突起部Bと細溝Cとを有している。アルカリ減量処理後の突起部Bの数(N)は、繊維の周上に10~35個であることが好ましく、15~30個存在することがより好ましく、18~25個存在することがさらに好ましい。突起部の数が10個未満であると多重散乱を発生させる細溝の存在が不十分となり、濃染性に劣る場合がある。35個を超えると、フィブリル化し易くなり、濃染性に劣る場合がある。
突起部の幅Wと高さHとの関係について、以下に述べる。図3は、本発明の異形断面マルチフィラメント糸における、突起部と細溝との部分拡大断面図である。図3において、突起部側面の線を延長し突起部の頂点の外接円の交点を、それぞれ4、5とする。そして、細溝の最深部の内接円の交点をそれぞれ4’、5’とする。また、線分4-5および線分4’-5’の中点を、それぞれ6、6’とする。そして線分4-5の長さを突起部の幅Wとする。線分6-6’の長さを突起部の高さHとする。
突起部の幅Wは、0.3~3.0μmであることが好ましく、0.4~2.0μmであることがより好ましく、0.6~1.5μmであることがさらに好ましい。突起部の幅Wが0.3μm未満であると、突起部の数を過多にした場合と同様にフィブリル化し易くなり、濃染性に劣る場合がある。また、3.0μmを超えると突起部の幅が過度に広くなり、細溝への入射光を十分に確保できないために、濃染性に劣る場合がある。
突起部の高さHは、突起部の幅Wと密接に関連して設定する。詳しくは、突起部の幅Wの0.5~3.0倍の範囲であることが好ましく、0.7~2.5倍であることがより好ましく、1.5~2.0倍の範囲であることがさらに好ましい。突起部の高さHが幅Wの0.5倍未満であると、細溝の深さが浅すぎて、多重散乱の発生が不十分になり濃染性に劣る場合がある。また、3.0倍を超えるとであると、突起部が過度に大きくなって、フィブリル化が発生し易くなり、濃染性に劣る場合がある。
本発明の異形断面マルチフィラメント糸は濃染性に優れるために、筒編地として黒色染色加工を施したときのL*値が12.0以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましい。L*値の測定方法の詳細は、実施例において後述する。
本発明の異形断面マルチフィラメント糸の単繊維繊度は、より細いものであると風合いに優れるものであるために好ましく、例えば、0.3dtex以上5dtex以下であることが好ましい。
次に、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸及び異形断面マルチフィラメント糸の製造方法の一例について、以下に述べる。
すなわち、再生ポリエステル樹脂を得る工程(イ)と、再生ポリエステル樹脂を芯部に配し、易溶性ポリエステル樹脂を鞘部に配するように複合紡糸し、単繊維の繊維方向に垂直な断面における、芯部の形状が突起部および細溝を有する異形断面形状である、芯鞘複合マルチフィラメント糸を得る工程(ロ)と、前記芯鞘複合マルチフィラメント糸をアルカリ減量処理に付する工程(ハ)と、を含むことが好ましい。
<工程(イ)>
工程(イ)は再生ポリエステル樹脂を得る工程である。本発明における再生ポリエステル樹脂は、バージンポリエステル樹脂と同等の特性値を有するものであるが、本発明の製造方法においては、(1)~(4)に示す工程を順に行うことが重要である。
工程(イ)においては、(1)~(4)に示す工程を順に行う。
(1)前記原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る工程、
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程、
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
まず、(1)の解重合工程では、リサイクルポリエステル原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る。
なお、本発明における再生ポリエステル樹脂の製造方法において、解重合体の溶融粘度は、解重合時の熱処理温度で測定した値であり、ブルックフィールド社製VISCO METER DV2T型溶融粘度計を用いて測定するものである。
また、リサイクルポリエステル原料に添加するエチレングリコールは、公知の方法で得られたものや市販のものを使用することができる。
エチレングリコールの添加量は、リサイクルポリエステル原料100質量%中の1~20質量%とすることが好ましく、2~10質量%とすることがより好ましい。
エチレングリコールの添加量が上記より少ない場合、リサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料同士がブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるため好ましくない。
(1)の工程において、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入する際には、撹拌しながら全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるようにして、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行い、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る。
本発明の製造方法においては、この工程が重要である。つまり、本発明においては、エチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行うが、このとき、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が、1.08~1.40となるようにしてエチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合を行うものである。
なお、本発明の製造方法により得られる再生ポリエステル樹脂のリサイクルポリエステル原料に由来する成分の含有量が100質量%未満であって、80質量%以上である場合は、(1)の工程において、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料に加えて、エチレンテレフタレートオリゴマーを添加して解重合を行ってもよい。エチレンテレフタレートオリゴマーを添加する際にも、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるようにすることが必要である。
エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
(1)の工程においては、上記解重合を行って得られる解重合体の溶融粘度を10~1500mPa・sとすることが重要である。
全グリコール成分/全酸成分のモル比を調整して解重合を行うこと、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得ることにより、リサイクルポリエステル原料に含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができる。
そして、重縮合触媒や用途に応じて添加される各種添加剤を加えて混練する(3)の工程において、重縮合触媒や各種添加剤を凝集させることなく、均一に混練することが可能となる。
その結果、(4)の工程である重縮合反応において、本発明の特性値として、ジエチレングリコールの含有量(共重合量)やカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ異物の混入量が少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
本発明の(1)の工程においては、上記した解重合反応により、リサイクルポリエステル原料はモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。
解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外であると、得られる再生ポリエステル樹脂は、本発明で規定する、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、また、平均昇圧速度が高いものとなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、リサイクルポリエステル原料中の各種の無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われないため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができず、(4)の工程の重縮合反応後に異物が析出し、その結果、平均昇圧速度が高い再生ポリエステル樹脂となる。
また、(1)の解融合反応工程において、得られる解重合体の溶融粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低くなりすぎて、異物のろ過時に配管とフィルター接合部分から液漏れが生じやすく、ろ過効率が悪く、異物を十分に濾過できず、生産性も悪化する。一方、解重合体の溶融粘度が1500mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎるため、解重合反応時の攪拌翼への負荷が大きくなり、さらに、異物のろ過時の昇圧も大きくなるため生産性が悪化する。
本発明の製造方法において、(1)の工程で用いる反応器は、容量や攪拌翼の形状は、一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造となっていることが好ましい。
リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。
また、エステル反応器を使用して解重合反応を行う際には、リサイクルポリエステル原料とエチレングリコールを添加して行う解重合反応を複数回に分けて行う方法や、エチレングリコール中にリサイクルポリエステル原料を少量ずつ添加する方法を採用することが好ましい。
解重合反応を行う際には、エステル反応器に代えて、溶融押出機を使用してもよい。溶融押出機を用いる方法では、押出機内でポリマーがシールされて押し出されるため、空気(特に酸素)と接触することがないためにポリマーの酸化分解が生じることなく、色調劣化、カルボキシル末端基の増加に伴う溶融ポリマーの粘度低下といった問題も発生しない。しかも、溶融押出機を用いると、常圧、加圧、減圧などのあらゆる圧力条件で反応させることができる。
溶融押出機としては、一軸の押出機、二軸の押出機のいずれであってもよいが、二軸押出機を利用する方が上記メリットが得られやすいため好ましい。
さらに、(1)の工程で溶融押出機を使用する際には、押出機内部にエチレングリコールを供給することで、押出機内部で解重合反応が進行する。リサイクルポリエステル原料を供給するとき、エチレングリコールを添加しつつ溶融押出機に通すことで低粘度化させやすく、先端ノズルからの吐出がスムーズとなる。また、圧力条件を変化させて低粘度化させることで溶融押出機の溶融温度(解重合反応の温度)を下げることもできる。
解重合体の溶融粘度を本発明の範囲内のものにするには、解重合時の熱処理温度、熱処理時間、圧力等を適宜調整することにより可能となる。
(1)の工程で行う解重合時の反応温度は、反応器や溶融押出機の内温を220~285℃の範囲に設定して行うことが好ましく、中でも内温を245~280℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が220℃未満の場合には、解重合体の溶融粘度を1500mPa・s以下にするには、長時間の熱処理が必要となり、操業性が悪くなるとともに得られる再生ポリエステル樹脂の色調が悪化したり、ジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなる。
一方、反応温度が285℃を超える場合は、解重合体の溶融粘度が低くなりすぎたり、得られる再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなる。
なお、解重合時の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、4時間以内が好ましく、ジエチレングリコールの副生量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑える観点から、2時間以内とすることがより好ましい。
(2)の工程においては、(1)の工程で解重合反応を行った解重合体を、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて異物を濾過する。上記したように、(1)の工程の条件で解重合反応を行い、特定範囲の溶融粘度の解重合体を得ることにより、リサイクルポリエステル原料の使用量が多い場合であっても、これらの原料中に多く含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われる。このため、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させることにより、これらの析出した異物をもれなくフィルターで捕捉し、異物の混入量の少ない濾液を得ることができる。
濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、解重合体中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧や切糸が生じる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となり、また、操業性も悪化する。
また、本発明の製造方法の(2)の工程で使用できるフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、スクリーンチェンジャー式のフィルターやリーフディスクフィルターやキャンドル型焼結フィルターなどが挙げられる。
そして、本発明の製造方法の(3)の工程においては、上記の工程(2)を経て得られた濾液に、前記したような重縮合触媒を添加し、混練し、反応生成物を得る。(3)の工程では、各種用途に応じて添加する添加剤も、重縮合触媒とともに添加し、混練することが好ましい。なお、各種用途に応じて添加する添加剤は、前記したものを用いることができる。
(3)の工程での混練を行う際の温度は、(4)の工程で重縮合反応を行う温度のプラスマイナス10℃の範囲内とすることが好ましい。
次に(4)の工程として、重縮合反応槽において、(3)の工程で得られた反応生成物に、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
重縮合反応温度が260℃未満であったり、重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなったり、重縮合反応が進まず、再生ポリエステル樹脂を得ることができない。
重縮合反応温度は、中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化したり、熱分解により末端基量(COOH)が高くなるため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、285℃以下とすることが好ましい。ここで得られる再生ポリエステル樹脂(プレポリマー)の極限粘度は0.44~0.80であることが好ましい。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、前記したように異物の含有量が比較的少なく、バージンポリエステル樹脂と同等の特性を有しているため、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいても糸切れのトラブルが生じにくく、生産性良く芯鞘複合マルチフィラメント糸を得ることができる。
<工程(ロ)>
公知の複合紡糸方法(例えば、溶融紡糸法)を採用し、好ましい紡糸ノズルを選定し、工程(イ)で得られた再生ポリエステル樹脂が芯部に配されるとともに、易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されるように、複合紡糸することで、芯鞘複合マルチフィラメント糸を得る。なお、複合紡糸は、芯部が10~35個の突起部および細溝を有する異形断面形状となるように行うことが好ましい。これを公知の方法で未延伸糸として巻き取った後に延伸を行ってもよいし、吐出後一旦巻き取ることなく延伸した後、巻き取ってもよい。また、3000~9000m/分の速度で巻き取った上で、別途延伸せずにそのままの状態で糸加工、または製織編に使用してもよい。
紡糸条件は特に限定されないが、例えば、紡糸温度が270~300℃であり、引き取り速度が1000~4000m/分で一旦巻き取った未延伸糸を、延伸温度が70~100℃であり、熱セット温度が120~190℃であり、延伸速度が200~1000m/分であり、延伸倍率が未延伸糸の最大延伸倍率の0.65~0.85倍程度で延伸するFDY法が挙げられる。最大延伸倍率とは、延伸温度80℃、熱セット温度145℃、および延伸速度600m/分の条件下で未延伸糸が切断されるまで延伸した時の倍率をいう。
なお、その他の紡糸および延伸の手法として、例えば、POY法(2000m/分以上の高速紡糸により、部分配向未延伸糸として巻き取る方法)、HOY法(5000m/分以上の超高速紡糸により、高配向糸として巻き取る方法)またはスピンドロー法(1000m/分以上で紡糸し、一旦巻き取ることなく続けて延伸する方法)が挙げられる。
上記のようにして得られた部分配向未延伸糸を用いて、延伸仮撚条件下で捲縮加工を施してもよい。この場合、例えば図4に示すような工程に従って捲縮加工糸を製造することができる。まず、供給糸条であるポリエステル部分配向未延伸糸3に対しては、供給ローラ4と第1引取りローラ6との間に設置された熱処理ヒーター5によって熱処理がほどこされる。そして、第1引取りローラ6と、第2引取りローラ7との間において、好ましくは室温にて冷却される。引き続き連続して、第2引取りローラ7と第3引取りローラ10との間で、仮撚ヒーター8およびピンタイプ仮撚装置9を用いて、上記の特定の延伸仮撚条件下で捲縮加工がほどこされる。このように捲縮加工を施すことにより、潜在捲縮性能を有するマルチフィラメント糸が得られる。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を含む織物としては、平組織、綾組織、朱子組織、あるいは、ドビーやジャガードによる変化組織などの織物などが挙げられ、編物としては、よこ編、トリコット編、ラッシェル編などの編物などが挙げられる。
また、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸は、他の繊維と複合し、混繊糸としてもよい。この場合、他の繊維とエアー混繊、または合撚等任意の方法で合わせることができる。他の繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等が好ましい。特にポリエステル繊維が、染色加工条件面で好ましい。さらには、ポリエステル繊維としては、沸水収縮率が10%以上のものや、サイドバイサイド型の潜在捲縮糸が好ましく用いられる。ポリエステル繊維としては、本発明における再生ポリエステル樹脂を使用したものを用いると、リサイクル原料の使用率が高いものとなり、環境により配慮した混繊糸とすることができる。
そして、このような混繊糸を用いて、上記したような織編物を得た後、後述する工程(ハ)に供してもよい。
<工程(ハ)>
工程(ハ)においては、工程(ロ)で得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸の表面に塩基性化合物を接触させてアルカリ減量処理を施し、易溶性ポリエステル樹脂を溶出させる。これにより、本発明の異形断面マルチフィラメント糸が得られる。アルカリ減量処理により、突起部および細溝を有する異形断面形状を有する繊維とすることができる。異形断面形状と、再生ポリエステル樹脂におけるエチレングリコール成分に起因して、優れた濃染性が発現するという相乗効果が奏される。
この塩基性化合物との接触は、例えば塩基性化合物の水溶液で処理することにより行うことができる。塩基性化合物との接触は、必要に応じて芯鞘複合マルチフィラメント糸を延伸加熱処理または仮撚加工などの処理に供した後で行ってもよいし、芯鞘複合マルチフィラメント糸を織編物とした後に行ってもよい。
工程(ハ)で使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムなどが挙げられる。中でも水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムが好ましい。塩基性化合物水溶液の濃度は、塩基性化合物の種類またはアルカリ減量処理条件などによって異なるが、例えば0.1~30質量%の範囲である。処理温度は、例えば、常温~100℃の範囲である。アルカリ減量率は、例えば2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
本発明の異形断面マルチフィラメント糸は、紡糸性および染色堅牢度に優れるとともに、濃染性にも優れ高級感がある。こうした異形断面マルチフィラメント糸を含む本発明の織編物は、衣料(特に、ブラックフォーマル)、水着、スポーツインナー、ランジェリー、またはファンデーションのような濃染性が必要とされる繊維製品に好適に用いられる。本発明の織編物は、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を50質量%以上の混用率で含むことが好ましく、80質量%以上の混用率で含むことがより好ましく、100質量%の混用率で含むことが特に好ましい。
以下に実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。それぞれの物性の測定方法または評価方法は以下の通りである。
(a)解重合体の溶融粘度
製造工程(1)で得られた解重合体を、ブルックフィールド社製VISCO METER DV2T型溶融粘度計を用い、粘度計内部のトルクセンサーが検出しているトルクが20±5%、そして、解重合時の処理温度と同じ温度で測定した。
(b)極限粘度
得られた再生ポリエステル樹脂を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
(c)ポリエステル樹脂の組成
得られた再生ポリエステル樹脂を、重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容量比が1/11の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製JNM-ECZ400R/S1型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
(d)カルボキシル末端基濃度
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(e)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度
得られた再生ポリエステル樹脂を、エクストルーダーにて300℃で溶融し、エクストルーダーの先端にフィルターとして、ステンレス鋼製綾畳織フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm、粘性抵抗係数(m-1):2.60×10、慣性抵抗係数:5.14×10、上條精機社製)をセットし、さらにその背面(下流側)に補強材(ステンレス製平織金網(呼び寸法メッシュ:40メッシュ、織り方:平織、線径:0.21mm(株)上條精機製)を積層した後、ポリマー吐出量を29.0g/分として、フィルター圧力を昇圧試験機;アサヒゲージ社製「MES-Y44D型」検出器を用いて測定する。前記の昇圧試験機を用いた昇圧試験を12時間連続して行い、昇圧試験を始める際の初期圧力値(MPa)(ポリエステル樹脂がフィルターを通り始めてから5~10分の間の圧力の最小値を初期圧力とする。)と、12時間経過時点の最終圧力値(MPa)の値から、下記計算式により平均昇圧速度を算出した。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12
(f)濃染性
芯鞘複合マルチフィラメント糸を編機(小池機械製作所製、針本数:300本、釜径:3.5インチ)を用いて筒編地に編成し、後述の条件でアルカリ減量処理および染色を施して、異形断面マルチフィラメント糸を含む筒編地を得た。この筒編地を用い、色彩色差計(X-Rite社製の分光光度計「Color-Eye-3100」)を用いて、濃染性の指標であるL*値を測定した。なお、L*値はその値が小さいほど深みのある濃色であることを示す。
(アルカリ減量処理)
水酸化ナトリウム水溶液(40g/L)を用い、処理温度100℃、時間60分、および浴比1:30の条件でアルカリ減量処理を行った(減量率40%)。
(染色)
染料剤(Dystar社製、商品名「ダイアニックスブラック HG-FS conc18.」、分散染料)を7.5%omfの割合で用いた。浴比を1:50とし、温度135℃かつ時間30分間の条件で染色を行った。次いで、水酸化ナトリウム(0.2質量%)およびハイドロサルファイト(0.2質量%)を含む水溶液にて、80℃で20分間還元洗浄した。
(g)突起部の個数およびサイズ
染色後の筒編地から異形断面マルチフィラメント糸の単繊維を1本採取し、その単繊維において、繊維軸方向(長手方向)に対して垂直に切断した。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真に撮り(倍率;10000倍)、写真上でカウント、または測定した。
(h)染色堅牢度(昇華堅牢度)
JIS L-0854に従って、昇華堅牢度により染色堅牢度を評価した。
以下の基準で評価した。
○;染色堅牢度が4級である。
△;染色堅牢度が3~4級である。
×;染色堅牢度が3級である。
(i)紡糸性
部分配向未延伸糸を得る際の、溶融紡糸時の糸切れの状況を、24時間連続して溶融紡糸を行った際の1錘あたりの糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
○・・糸切れ回数が0回であった。
△・・糸切れ回数が1~2回であった。
×・・糸切れ回数が3回以上であった。
(実施例1)
リサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)23.1質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを2.6質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、34.6質量部のリサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)を約30分かけて定量投入したのち、エチレングリコール3.9質量部を追加で投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.35となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行い、270℃での溶融粘度が60mPa・sの解重合体を得た。
そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターを通過させることにより濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、色調調整剤として酢酸コバルトを0.2×10-4mol/unit、二酸化チタン0.23質量部を加え、温度270℃で混練し、反応生成物を得た。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度280℃で2.0時間、重縮合反応を行い、再生ポリエステル樹脂A(極限粘度:0.69)を得た。
そして、再生ポリエステル樹脂Aが芯部に配されるように、さらにアルカリに対して易溶性ポリエステル樹脂(スルホン酸ナトリウム2.0質量%およびポリエチレングリコール6.0質量%を共重合させた共重合ポリエステル、極限粘度は0.64)が鞘部に配されるように、常用の複合紡糸用の溶融紡糸機に投入し、20個の突起部と細溝とを有する芯部と、その周囲に配される鞘部からなる異形断面繊維を紡糸可能である、24個の紡糸孔が穿設されている口金から、紡出させた。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて油剤を付与した。この糸条を紡糸速度3500m/分にて引取り、84dtex/24fの芯鞘複合マルチフィラメント糸(部分配向未延伸糸)を得た。次いで、得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸(部分配向未延伸糸)を常用の延伸機にて、85℃の熱ローラを介して1.5倍に延伸し、さらに170℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取り、延伸糸である芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た(56dtex/24f)。この芯鞘複合マルチフィラメント糸において、芯部と鞘部との複合比率(質量比)は、芯部:鞘部=81:19であった。
次いで、得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸を常用の撚糸機にて撚回数1500回/mで撚りを掛け、強撚糸とした(撚係数K;11,000)。次に、得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸を、筒編機(小池機械製作所製、針本数:300本、釜径:3.5インチ)を用いて筒編地に編成し、40g/Lの割合で水酸化ナトリウムを含むアルカリ溶液(浴比1:30)を用い、処理温度100℃、時間60分間でアルカリ減量処理し(減量率40%)、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を含む筒編地を得た。この筒編地を染料剤(Dystar社製、商品名「ダイアニックスブラック HG-FS conc18.」、分散染料)を7.5%omfの割合で用いた。浴比を1:50とし、温度135℃かつ時間30分間の条件で染色を行った。次いで、水酸化ナトリウム(0.2質量%)およびハイドロサルファイト(0.2質量%)を含む水溶液にて、80℃で20分間還元洗浄した。
(実施例2)
解重合反応時に添加する、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料、エチレンテレフタレートオリゴマーの添加量、G/A、解重合反応時の熱処理温度、溶融粘度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、解重合反応を行った。
また、濾液を回収する工程におけるフィルターの濾過粒度、重縮合反応工程における熱処理温度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして再生ポリエステル樹脂Bを製造した。
次いで、再生ポリエステル樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合紡糸、加撚、製編、アルカリ減量処理、染色、および洗浄を行った。
(比較例1)
解重合反応時に添加する、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料、エチレンテレフタレートオリゴマーの添加量、G/A、解重合反応時の熱処理温度、溶融粘度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、解重合反応を行った。
また、濾液を回収する工程におけるフィルターの濾過粒度、重縮合反応工程における熱処理温度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして再生ポリエステル樹脂Cを製造した。
次いで、再生ポリエステル樹脂をC用いた以外は、実施例1と同様にして、複合紡糸、加撚、製編、アルカリ減量処理、染色、および洗浄を行った。
(比較例2)
解重合反応時に添加する、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料、エチレンテレフタレートオリゴマーの添加量、G/A、解重合反応時の熱処理温度、溶融粘度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、解重合反応を行った。
また、濾液を回収する工程におけるフィルターの濾過粒度、重縮合反応工程における熱処理温度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして再生ポリエステル樹脂Dを製造した。
次いで、再生ポリエステル樹脂Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合紡糸、加撚、製編、アルカリ減量処理、染色、および洗浄を行った。
再生ポリエステル樹脂A~Dについて、表1にまとめて示す。
Figure 2023026193000002
異形断面マルチフィラメント糸の突起部、および評価について、表2にまとめて示す。
Figure 2023026193000003
表1から明らかなように、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量が本発明にて規定する範囲内である再生ポリエステル樹脂を用いた実施例1および2においては、紡糸性に優れるとともに、濃染性、染色堅牢度にも優れるものであった。
比較例1においては、カルボキシル基末端濃度が高く平均昇圧速度も高い再生ポリエステル樹脂を用いていたために、ポリエステル樹脂における加水分解が発生することにより、溶融押出時の熱分解により、極限粘度の低下が見られた。そのために異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維表面の突起部を十分に発現することができず、突起部の高さと幅とのバランスが崩れたことからL*値が高くなり、すなわち濃染性に劣るものであった。
比較例2においては、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度の高い再生ポリエステル樹脂を用いていたために、染色堅牢度が悪くなり濃染性に劣るものとなった。
実施例3
実施例1と同様にして、再生ポリエステル樹脂Aが芯部に配されるように、さらにアルカリに対して易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されるように、溶融紡糸を行い、部分配向未延伸糸である芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た(90dtex/24f、伸度132%)。次に、図4に示す工程に従い、表3に示す条件で、芯鞘複合マルチフィラメント糸(60.8dtex/24フィラメント)を得た。
得られたマルチフィラメント糸に、S-1500T/MとZ-1500T/Mの追撚をほどこした。そして、このマルチフィラメント糸を、2:2の配列で経糸および緯糸に用い、平二重織物(経糸密度:190本/2.54cm、緯糸密度:140本/2.5m)を製織した。得られた織物を下記の方法により、精練、アルカリ減量処理、ブラック染色及び洗浄処理をおこなった。
精練剤(日華化学社製、「サンモールFL」)を2g/Lの濃度で水に溶解させた水溶液を用いて、80℃×20分の条件で精練をおこなった。その後、苛性ソーダ(10g/L)を用いて、98℃で30分間アルカリ減量処理をおこなった。次いで、分散染料(ダイスター社製、「ダイアニックスブラックHG-FS」(200%)、7.5%omf)、染色助剤(日華化学社製、「ニッカサンソルトSN-130」、0.5cc/L)および酢酸(0.2cc/L)を用い、135℃で30分間染色をおこなった。その際の浴比は1:50であった。その後、還元洗浄剤(一方社油脂工業社製、「ビスノールP-55」)(5g/L)を用い、80℃で20分間洗浄をおこなった。そして、洗浄後の布帛に対して、分光光度計(マクベス社製、「MS-CE3100型」)を用いて反射率を測定し、CIE Labの色差式からL値を求めた。なお、L値は、その値が小さい程深みのある色となる。
実施例3で得られた織物は、L値が11.5であり、得られた織物の表面を目視にて観察したところ、濃染性(深みのある色合い)を有しており、風合いも良好なものであった。
Figure 2023026193000004
実施例4
[仮撚加工マルチフィラメントの準備]
実施例3と同様の部分配向未延伸糸である芯鞘複合マルチフィラメント糸(90dtex/24f、伸度132%)を用い、仮撚ヒーター及び仮撚ピン装置を通して、90tex/24フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸を得た。なお、仮撚ヒーターの温度は170℃とし、仮撚ピン装置としては内径2φの偏心ピンを具備したものを用い、仮撚数は850T/Mとした。
[サイドバイサイド型ポリエステルマルチフィラメント糸の準備]
高粘度側に実施例1で使用した再生ポリエステル樹脂Aを用い、低粘度側にバージンポリエステル樹脂(極限粘度0.46のポリエチレンテレフタレート)を用い、これらを複合紡糸型溶融押出機に等体積で供給した。紡糸温度285℃で溶融し、紡糸孔を24孔有する紡糸口金の背面で両成分を合流させ、横断面が半月状の再生ポリエステル樹脂Aと横断面が半月状のバージンポリエステルとの弦同士が貼り合わされて、横断面が円形となっているサイドバイサイド型ポリエステルフィラメントの複数本を集束した後、図2に示したヒーターに通して、延伸倍率1.56倍で延伸して、90dtex/24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステルマルチフィラメント糸を準備した。ヒーターの雰囲気温度は180℃とした。
[混繊交絡マルチフィラメント糸を得る工程]
上記で準備した仮撚加工マルチフィラメント糸とサイドバイサイド型ポリエステルマルチフィラメント糸とを、インターレースノズル(へパーライン社製、P2121/Lノズル)に糸長差をつけることなく導入し、エアー圧力0.2MPaで混繊交絡処理を施した。混繊交絡した後に、S方向に1500T/Mで追撚を施したものと、Z方向に1500T/Mで追撚を施したものと2種類製造し、各々、混繊交絡マルチフィラメント糸とした。この混繊交絡マルチフィラメント糸の残留トルク数は150T/Mであった。
[織物生地を得る工程]
S方向に追燃した混繊交絡マルチフィラメント糸2本と、Z方向に追燃した混繊交絡マルチフィラメント糸2本とを交互に配置して、2/2ツイル組織にて織物生地を製織した。この織物生地は、経糸密度92本/2.54cm、緯糸密度78本/2.54cmであった。
[異型断面フィラメントを得る工程]
織物生地を80℃×20分間の条件で精練した後、濃度10g/Lの苛性ソーダ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、混繊交絡マルチフィラメント糸を構成している一部アルカリ可溶性ポリエステルフィラメント中のアルカリ可溶性ポリエステルを溶出した。この結果、一部アルカリ可溶性ポリエステルフィラメントは、横断面が歯車状の異型断面フィラメントとなった。その後、190℃ラ30秒の条件で熱処理を行った。
[黒色織物を得る工程]
上記した熱処理の後、分散染料(商品名 ダイアニックスブラックHG-FS、三菱化学ヘキスト社製)を10%owfの割合で使用し、135℃の雰囲気に保持された染浴中で30分間処理することにより、染色加工を行った。その後、180℃×30秒の条件で熱処理を行い、黒色織物を得た。この黒色織物のL値は9.5であった。
実施例4で得られた織物は、L値が9.5であり、得られた織物の表面を目視にて観察したところ、濃染性(深みのある色合い)を有しており、風合いも良好なものであった。
1 芯鞘複合繊維
2 易溶性ポリエステル樹脂(鞘部)
3 難溶性ポリエステル樹脂(芯部)
A 異形断面マルチフィラメント糸の単繊維
B 突起部
C 細溝
4、5 突起部側面の線と突起部頂点の外接円との交点
4’、5’ 突起部側面の線と細溝の最深部の内接円との交点
6 線分4-5の中点
6‘ 線分4’-5’の終点

Claims (7)

  1. 難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸であって、
    前記難溶性ポリエステル樹脂が、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有してなる再生ポリエステル樹脂であって、前記再生ポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下である再生ポリエステル樹脂であり、
    前記単繊維は、繊維軸方向に垂直な断面において、前記芯部の形状が突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である、芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  2. 前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数が、15~35である、請求項1に記載の芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  3. 繊維表面に突起部と細溝とが交互に、かつ略一様に配された異形断面形状を有する単繊維から構成される異形断面マルチフィラメント糸であって、 前記単繊維はポリエステル樹脂により形成されてなり、
    前記ポリエステル樹脂は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有してなる再生ポリエステル樹脂であって、前記再生ポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下である再生ポリエステル樹脂である、異形断面マルチフィラメント糸。
  4. 前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数および寸法が、下記(I)~(III)式を満足する、請求項3に記載の異形断面マルチフィラメント糸。
    10≦N≦35 (I)
    0.3≦W≦3.0 (II)
    0.5W≦H≦3.0W (III)
    ただしNは突起部の数、Wは突起部の幅(μm)、Hは突起部の高さ(μm)である。
  5. 筒編地とし、黒色染色加工を施したときのL*値が12以下である、請求項3または4に記載の異形断面マルチフィラメント糸。
  6. 請求項3~5の何れか1項に記載の異形断面マルチフィラメント糸を含む、織編物。
  7. 請求項6の織編物を一部に用いてなる、衣料。
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