JP2022073521A - 芯鞘複合マルチフィラメント糸、異形断面マルチフィラメント糸、織編物、および衣料 - Google Patents

芯鞘複合マルチフィラメント糸、異形断面マルチフィラメント糸、織編物、および衣料 Download PDF

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泰弘 冨路本
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Abstract

【課題】リサイクルポリエステル原料を高比率で含有するポリエステル樹脂を原料として用いていながら、異形断面マルチフィラメント糸を紡糸性よく得ることができる、芯鞘複合マルチフィラメント糸、および異形断面マルチフィラメント糸を提供する。【解決手段】難溶性ポリエステル樹脂3が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂2が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維1を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸である。前記難溶性ポリエステル樹脂が、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下である再生ポリエステル樹脂である。前記単繊維の繊維軸方向に垂直な断面における、前記芯部の形状が突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である。【選択図】図1

Description

本発明は、使用済ポリエステル製品やポリエステル樹脂および製品を製造する工程で発生する屑などに由来するリサイクルポリエステル原料を用いた再生ポリエステル樹脂からなる芯鞘複合マルチフィラメント糸、および異形断面マルチフィラメント糸に関する。さらに本発明は、当該異形断面マルチフィラメント糸を含む織編物、および当該織編物を一部に用いてなる衣料に関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストであるため、繊維やフィルム、ペットボトル等の成型品等に幅広く用いられている。これらのポリエステル製品は、製造段階や加工段階で屑の発生が避けられず、また使用後に廃棄処分される場合が多いが、焼却する場合には高熱が発生するため焼却炉の傷みが大きく、寿命が短くなるという問題がある。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないため半永久的に残ることになる。
近年、一度使用されたポリエステル製品のうち、ゴミとして捨てられたプラスチック容器などが河川を経由して海洋へ流出、波や潮流の作用で細かく破砕されたマイクロプラスチックが海洋生物の体内に蓄積、食物連鎖で濃縮され海洋生物の生態系に悪影響が出ていること、プラスチックが海洋汚染の一大原因となっていることが問題視され、使用量の削減や生分解性プラスチックに切り替える動きが全世界的に起きている。
このようなプラスチック製品の使用量を削減する観点や、環境問題の観点から、資源を再利用するリサイクルが様々な方法で行われている。ポリエステル製品に関しては、その製造工程で発生したポリエステル屑をリサイクルする方法や一度市場に出回り廃棄された製品を回収、原料として再使用する方法が検討されている。特に近年、繊維製品については、一定のリサイクル率を達成することで認定されるエコマークを付与した製品が普及している。
リサイクルポリエステル原料として、製造工程で発生したポリエステル屑や使用済の製品を回収したものを用いてリサイクルする方法としては、各種の方法が提案されている。例えば、PET屑にメタノールを添加してジメチレンテレフタレート(以下DMT表記する)とエチレングリコール(以下、EGと表記する)に分解する方法(特許文献1参照)、PET屑にEGを添加して解重合した後、メタノールを添加してDMTを回収する方法(特許文献2参照)が提案されている。
しかしながら、これらの方法では回収装置の設置、運転、維持に多額のコストがかかり、実用的ではなかった。
さらに、PET屑をEGで解重合してオリゴマーとし、これを重縮合反応に用いる方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、このような方法で得られたPETは、PET屑に由来する異物を多く含むために、紡糸や製膜工程における濾過フィルターの昇圧速度が速く、長期の連続運転ができず、加工操業性が非常に悪いという問題があった。
また、一旦製品となったPETボトルなどを再生する際に問題になるものとしては、ポリエステル樹脂中に添加した添加剤やボトル本体に付属するものとして、キャップ(アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン)、中栓やライナー(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ラベル(紙、ポリスチレン等の樹脂、インク)、接着剤、印字用インクなどがある。再生工程の前処理としては、まず、回収されたPETボトルを振動ふるいにかけて砂や金属などを除去する。その後、PETボトルを洗浄し、着色ボトルを分離した上で、荒い粉砕を行う。そして、風力分離によりラベルなどを取り除く。さらにキャップなどに由来するアルミ片を除いて、PETボトル片を細かく粉砕する。高温アルカリ洗浄により接着剤、蛋白質やかびなどの成分を除き、比重によりポリプロピレンやポリエチレンなどの異種成分を分離することを行う。
しかしながら、これらの工程を経たとしても、特に、前記したようなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の非ポリエステル樹脂をPET樹脂から分離することは困難であった。このため、上記したような特許文献1~3に記載のリサイクル方法で再生ポリエステル樹脂を得たとしても、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものではなく、バージンポリエステル樹脂同様の品質を有する製品を得ることはできなかった。
特許文献4記載の発明には、ポリエステル屑をエチレングリコールで解重合した後に、平均目開きが10~50μmのフィルターでろ過した後、再重合反応を行う方法が記載されている。そして、得られた再生ポリエステル樹脂は、濾過圧力の昇圧速度が低いものである、つまり異物の混入量が少ないものであることが示されている。しかしながら、この方法においても、上記のような非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものではなかった。このように、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えており、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の製品を得ることが可能で、かつ品質の高い製品を得ることができる再生ポリエステル樹脂は未だに得られていない。
また、繊維表面で光を散乱させて濃染性を発現させ得る、異形断面形状を有する繊維が知られているが、ポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、こうした繊維を得る際には、再生ポリエステル樹脂中に異物の含有量が多かったり、熱安定性に劣る場合、紡糸性が悪化し、異形断面形状を発現し難くなり、繊維表面における光の散乱が不十分となり、濃染性にも劣るものとなってしまう。そのため、リサイクルポリエステル原料を用いた再生ポリエステル樹脂が用いられた場合であっても、紡糸性よく異形断面繊維を安定して製造できる技術は確立されていない。
特公昭42-8855号公報 特開昭48-62732号公報 特開昭60-248646号公報 特開2005-171138号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、使用済ポリエステル製品やポリエステル樹脂および製品を製造する工程で発生する屑などに由来するリサイクルポリエステル原料を高比率で含有するポリエステル樹脂を原料として用いていながら、異形断面マルチフィラメント糸を紡糸性よく得ることができる、芯鞘複合マルチフィラメント糸、および異形断面マルチフィラメント糸を提供しようとするものである。
本発明者らは、難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸において、難溶性ポリエステル樹脂として特定物性を有する再生ポリエステル樹脂を採用することで、複雑な断面形状であっても、紡糸性よく得るマルチフィラメントを得ることができることを見出した。これにより、アルカリ減量処理を行った後の濃染性および染色堅牢度に優れる異形断面マルチフィラメント糸であって、再生ポリエステル樹脂からなるものが得られることを知見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)~(7)を要旨とする。
(1)難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸であって、前記難溶性ポリエステル樹脂が、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下である再生ポリエステル樹脂であり、前記単繊維の繊維軸方向に垂直な断面における、前記芯部の形状が突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である、芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(2)前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数が、15~35である、(1)の芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(3)繊維表面に突起部と細溝とが交互に、かつ略一様に配された異形断面形状を有する単繊維から構成された異形断面マルチフィラメント糸であって、前記単繊維はポリエステル樹脂により形成されてなり、前記ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下である再生ポリエステル樹脂である、異形断面マルチフィラメント糸。(4)前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数および寸法が、下記(I)~(III)式を満足する、(3)の異形断面マルチフィラメント糸。
10≦N≦35 (I)
0.3≦W≦3.0 (II)
0.5W≦H≦3.0W (III)
ただしNは突起部の数、Wは突起部の幅(μm)、Hは突起部の高さ(μm)である。
(5)筒編地とし、黒色染色加工を施したときのL*値が12以下である、(3)または(4)の異形断面マルチフィラメント糸。
(6)(3)~(5)の何れかに記載の異形断面マルチフィラメント糸を含む、織編物。
(7)(6)の織編物を一部に用いてなる、衣料。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸は、再生ポリエステル樹脂を用いていながら、紡糸性よく、特殊な異形断面形状を発現させたものとすることができる。そして、上記の芯鞘複合マルチフィラメント糸にアルカリ減量処理を施して得られる、本発明の異形断面マルチフィラメント糸は、特殊な異形断面形状が良好に発現したものとなるため、繊維表面における光の散乱が生じるとともに、濃染性に優れ、高級感を有する織編物を得ることができる。こうした異形断面マルチフィラメント糸を含む本発明の織編物は、衣料(特に、ブラックフォーマル)、水着、スポーツインナー、ランジェリー、またはファンデーションのような濃染性が必要とされる繊維製品に好適に用いられる。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を構成する単繊維である、芯鞘複合繊維の断面の一実施態様を示す横断面模式図である。 本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維の異形断面の一実施態様を示す断面模式図である。 本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維の異形断面の一実施態様における部分拡大模式図である。 本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を製造する装置の一実施態様を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(芯鞘複合マルチフィラメント糸)
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸は、難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む。単繊維の繊維軸方向に垂直な断面における、前記芯部の形状は、突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を構成する単繊維としての芯鞘複合繊維において、芯部と鞘部との複合比率(質量比)は特に限定されるものではないが、例えば、強力、アルカリ減量処理のし易さなどとの兼ね合いから、鞘部:芯部=5:95~40:60の範囲であることが好ましい。
難溶性ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下、かつ昇圧試験機により測定した平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である再生ポリエステル樹脂である。
芯鞘複合マルチフィラメント糸の好ましい態様としては、前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数が、15~35であるものが挙げられる。
図1に示すように、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸の単繊維である芯鞘複合繊維1は、難溶性ポリエステル樹脂3が芯部に配され、易溶性ポリエステル樹脂2が鞘部に配されてなるものである。そして、単繊維の繊維軸方向の垂直な断面における芯部の形状が、突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状であることが好ましい。細溝は、隣接する突起部の間に突起部の数と同数個で存在する。
本発明において、難溶性とは、塩基性化合物(アルカリ)による溶出が困難であることをいう。また、易溶性とは塩基性化合物(アルカリ)による溶出が容易であることをいう。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸の単繊維において、芯部の形状は、後述するような、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維の断面形状と、実質的に同一である。なぜなら、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸の鞘部を塩基性化合物により溶出することで、後述する本発明の異形断面マルチフィラメント糸を得るためである。
易溶性ポリエステル樹脂2は、難溶性ポリエステル樹脂3よりもアルカリ等の溶剤に対する溶解速度が5倍以上速いものであることが好ましい。そのため、易溶性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分のうち1~3モル%がスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分であり、平均分子量が1000~10000のポリアルキレングリコールを5~15質量%含有することが好ましい。
スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分としては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、5-ホスホニウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、ジカルボン酸成分の1モル%以上であると、アルカリに対する溶解速度が十分に速くなる。3モル%以下であると、高速時においても製糸性がより良好であり糸切れ等のトラブル発生を抑制できる。
また、ポリアルキレングリコールは、平均分子量が1000~10000のものが好ましい。平均分子量が1000以上であると、易溶性ポリエステル樹脂のガラス転移点が低下することがなく、紡糸工程で融着が発生し難くなる。10000以下であると、相溶性が良好となり均一に含有させ易くなる。
ポリアルキレングリコール含有量が5質量%以上であると、アルカリに対する溶解速度が十分に速くなる。15質量%以下であると、溶解速度を十分に速いものに維持しつつ、製糸性が良好となり、紡糸工程で糸切れ等のトラブルを抑制することができる。
難溶性ポリエステル樹脂について、以下に述べる。難溶性ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有する再生ポリエステル樹脂であり、中でも50質量%以上含有することが好ましい。リサイクルポリエステル原料の含有量が40質量%未満であると、環境問題に配慮するという目的を果たすことができないものとなる。リサイクルポリエステル原料の含有量の上限については、特に限定するものではない。
また、再生ポリエステル樹脂は、PETを主体とするものであることが好ましく、再生ポリエステル樹脂中のPETの含有量は70質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上であることが好ましく、さらには90質量%以上であることが好ましい。
つまり、再生ポリエステル樹脂の製造において、エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるPETを用いることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、PET以外のポリエステル樹脂が重縮合反応により得られる場合がある。したがって、本発明に用いられる再生ポリエステル樹脂としては、主体となるPET以外に、酸成分やグリコール成分として以下に示す成分が共重合されたPETが含有されていてもよい。酸成分としては、例えば、イソフタル酸やフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、グリコール成分としては、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ブチルエチルプロパンジオール、(2-メチル1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等を挙げることができる。また、これらの成分は2種類以上含まれていてもよい。
本発明における、再生ポリエステル樹脂に用いるリサイクルポリエステル原料とは、使用済ポリエステル製品やポリエステル樹脂および製品を製造する工程で発生する屑などに由来するポリエステル原料をいう。使用済ポリエステル製品に由来するポリエステル原料としては、一度市場に出回り回収されたPETボトルを粉砕または再溶融してペレット化したリサイクルポリエステルを用いてもよい。
ポリエステル樹脂および製品を製造する工程で発生する屑などに由来するポリエステル原料としては、銘柄変更時に発生する移行品や製品に成形されない屑状のものなどをカッターで切断してペレット状にカットされたポリエステル樹脂が挙げられる。
リサイクルポリエステル原料としては、乾燥などの熱処理を行っていない未結晶のポリエステル屑のペレットや乾燥などの熱処理を施した結晶ペレット、または結晶、未結晶ペレットの混合品などを使用することができるが、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶化ペレットを用いることがより好ましい。
本発明における再生ポリエステル樹脂は、下記(1)、(2)に示す特性値を有するものであり、(3)に示す特性値を有することが好ましい。
(1)カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下
(2)ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下
(3)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度が0.6MPa/h以下
これらの特性値を有する再生ポリエステル樹脂は、例えば、後述する製造方法により得ることができる。
まず、再生ポリエステル樹脂は(1)の特性値として、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であり、中でも25当量/t以下であることが好ましく、さらには20当量/t以下であることが好ましい。再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であることにより、粘度が安定するために、繊維の紡糸性に優れ、特に複合繊維または異形断面繊維を得る場合に、その形状を発現し易くなる。そのため、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸にアルカリ減量処理を施した際に、後述のような異形断面形状を発現し易くなり、突起部の幅に対して高さを十分に保つことができ、異形断面形状による細溝内に入射した光が、両脇の突起部間を多重散乱し易くなるために、濃染性に優れるものとなる。
再生ポリエステル樹脂は(2)の特性値として、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、中でも3モル%以下であることが好ましい。本発明における再生ポリエステル樹脂は、副生により生じるジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であることにより、非結晶部が少なくなり、熱安定性にすぐれた性能を有しているため、紡糸性に優れるものとなり、複合形態または異形断面形状を有する繊維であっても、生産性よく繊維形態とすることができる。さらに染色堅牢度に優れるために、染色した場合に、染色堅牢性に優れるものとなり濃染性に優れるものとなる。
本発明における再生ポリエステル樹脂は(3)の特性値として、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることが好ましい。なお、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度は以下のようにして算出するものである。
エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
本発明における再生ポリエステル樹脂は、例えば、後述する製造方法を採用することにより、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量を低減することができるため、(3)の特性値である、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度を0.6MPa/h以下にすることが可能である。中でも(3)の特性値である、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度は、0.5MPa/h以下であることが好ましく、中でも0.4MPa/h以下であることが好ましい。再生ポリエステル樹脂は(3)の特性値を有することにより、異物の含有量が少ないことから、バージンポリエステル樹脂と同様に溶融紡糸を行うことができ、複合形態または異形断面形状を有する単繊維からなるマルチフィラメント糸を操業性よく製造することが可能となる。
(異形断面マルチフィラメント糸)
本発明の異形断面マルチフィラメントは、上記の本発明の異形断面マルチフィラメント糸の芯部で形成されるものである。つまり、発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸において、塩基性化合物によりアルカリ減量処理が施されて鞘部が溶出することにより芯部の形状が発現し、表面に突起部と細溝とが交互に、かつ略一様に分布した異形断面繊維を単繊維として構成される、本発明の異形断面マルチフィラメント糸とすることができる。上記の突起部と細溝の断面形状は長方形または略台形状であることが好ましく、何れもそれぞれ繊維軸方向に連続していることが好ましい。
再生ポリエステル樹脂の組成と濃染性との関係性について以下に述べる。
本発明らが鋭意検討した結果、再生ポリエステル樹脂におけるジエチレングリコールの含有量を低減させることで、より濃染性に優れるマルチフィラメント糸が得られる。つまり、ジエチレングリコールの含有量を低い範囲とすることで熱安定性に優れるものとなり、ポリエステル樹脂の染色堅牢度の低下が抑制される。そして、カルボキシル末端基濃度が低いものであるために、ポリエステル樹脂の粘度の低減が抑制されるために、異形断面を良好に発現させることができる。そして、異形断面形状による細溝内に入射した光が両脇の突起部間を多重散乱し易くなるために、エチレングリコールによる熱安定性と相俟って、より一層濃染性に優れるものとなる。
さらに、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維は、以下のような断面形状であることが好ましい。すなわち、当該単繊維は、突起部および細溝がそれぞれ繊維軸方向に連続しており、突起部の数または寸法が、下記 (I)~(III)を満足することが好ましい。
10<N<35 (I)
0.3≦W≦3.0 (II)
0.5W≦H≦3.0W (III)
ただしNは突起部の個数、Wは突起部の幅(μm)、Hは突起部の高さ(μm)である。
上記のような断面形状であると、細溝内に入射した光が多重散乱し易くなり、より一層濃染性に優れるものとなる。
図2を用いて、異形断面マルチフィラメント糸の単繊維について、好ましい断面形状を以下に述べる。図2にて示すように、異形断面マルチフィラメント糸の単繊維Aは、突起部Bと細溝Cとを有している。アルカリ減量処理後の突起部Bの数(N)は、繊維の周上に10~35個であることが好ましく、15~30個存在することがより好ましく、18~25個存在することがさらに好ましい。突起部の数が10個未満であると多重散乱を発生させる細溝の存在が不十分となり、濃染性に劣る場合がある。35個を超えると、フィブリル化し易くなり、濃染性に劣る場合がある。
突起部の幅Wと高さHとの関係について、以下に述べる。図3は、本発明の異形断面マルチフィラメント糸における、突起部と細溝との部分拡大断面図である。図3において、突起部側面の線を延長し突起部の頂点の外接円の交点を、それぞれ4、5とする。そして、細溝の最深部の内接円の交点をそれぞれ4’、5’とする。また、線分4-5および線分4’-5’の中点を、それぞれ6、6’とする。そして線分4-5の長さを突起部の幅Wとする。線分6-6’の長さを突起部の高さHとする。
突起部の幅Wは、0.3~3.0μmであることが好ましく、0.4~2.0μmであることがより好ましく、0.6~1.5μmであることがさらに好ましい。突起部の幅Wが0.3μm未満であると、突起部の数を過多にした場合と同様にフィブリル化し易くなり、濃染性に劣る場合がある。また、3.0μmを超えると突起部の幅が過度に広くなり、細溝への入射光を十分に確保できないために、濃染性に劣る場合がある。
突起部の高さHは、突起部の幅Wと密接に関連して設定する。詳しくは、突起部の幅Wの0.5~3.0倍の範囲であることが好ましく、0.7~2.5倍であることがより好ましく、1.5~2.0倍の範囲であることがさらに好ましい。突起部の高さHが幅Wの0.5倍未満であると、細溝の深さが浅すぎて、多重散乱の発生が不十分になり濃染性に劣る場合がある。また、3.0倍を超えるとであると、突起部が過度に大きくなって、フィブリル化が発生し易くなり、濃染性に劣る場合がある。
本発明の異形断面マルチフィラメント糸は濃染性に優れるために、筒編地として黒色染色加工を施したときのL*値が12.0以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましい。L*値の測定方法の詳細は、実施例において後述する。
本発明の異形断面マルチフィラメント糸の単繊維繊度は、より細いものであると風合いに優れるものであるために好ましく、例えば、0.3dtex以上5dtex以下であることが好ましい。
次に、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸及び異形断面マルチフィラメント糸の製造方法の一例について、以下に述べる。
すなわち、再生ポリエステル樹脂を得る工程(イ)と、再生ポリエステル樹脂を芯部に配し、易溶性ポリエステル樹脂を鞘部に配するように複合紡糸し、単繊維の繊維方向に垂直な断面における、芯部の形状が突起部および細溝を有する異形断面形状である、芯鞘複合マルチフィラメント糸を得る工程(ロ)と、前記芯鞘複合マルチフィラメント糸をアルカリ減量処理に付する工程(ハ)と、を含むことが好ましい。
<工程(イ)>
工程(イ)は再生ポリエステル樹脂を得る工程である。本発明における再生ポリエステル樹脂は、バージンポリエステル樹脂と同等の特性値を有するものであるが、このような特性値を有する樹脂は、以下のような工程(1)~(5)を行うことにより、得ることが可能となったものである。
工程(イ)においては、(1)~(5)に示す工程を順に行う。
(1)エチレングリコールとテレフタル酸のスラリーを添加し、エチレンテレフタレートオリゴマーを得る。
(2)(1)で得られたオリゴマーに対して、エチレングリコールを添加する。
(3)(2)で得られたエチレングリコールを添加したオリゴマー中に、常圧下、撹拌しながらリサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように投入し、200~270℃の熱処理条件下で解重合を行う。
(4)(3)で得られた解重合体を濾過粒度25μm以下の金属製のフィルターを通過させて異物を濾過する。
(5)(4)で得られた異物濾過後の解重合体に、重合触媒を添加し、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
まず、(1)の工程においては、リサイクルポリエステル原料を解重合する前段階として、エチレングリコールとテレフタル酸のスラリーを添加し、エステル化反応物(エチレンテレフタレートオリゴマー)を得る。エチレンテレフタレートオリゴマーの量は、最終的に得られる全ポリエステル100質量%中の0.20~0.80質量%とすることが好ましく、0.40~0.60質量%とすることがより好ましい。
エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記より少ない場合(3)の工程においてリサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料同士がブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるため好ましくない。一方、エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記範囲より多い場合は解重合反応に特に問題は起きないが、最終的に得られる再生ポリエステル樹脂のリサイクル率が低くなり好ましくない。
(2)の工程においては、(1)で得られたオリゴマーに対して、エチレングリコールを添加する。このときのエチレングリコールの添加量は、(3)の工程における解重合反応を十分に進行させるため、エチレンテレフタレートオリゴマーの投入量に対して5~15質量%とすることが好ましく、中でも10~15質量%とすることがより好ましい。エチレングリコールの添加量が15質量%を超えると、反応器内でエチレンテレフタレートオリゴマーが固化しやすくなり、以後の反応が継続できなくなる場合があり、好ましくない。
エチレンテレフタレートオリゴマー中にエチレングリコールを投入する際は、オリゴマーの固化を防ぐ目的で、攪拌機を回しながら内容物の温度を均一にし、投入することが好ましい。
(3)の工程においては、(2)で得られたエチレングリコールを添加したオリゴマー中に、撹拌しながらリサイクルポリエステル原料を投入する。このとき、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように投入し、200~270℃の熱処理条件下で解重合を行うことが好ましい。再生ポリエステル樹脂を得る工程においては、この工程が重要である。つまり、リサイクルポリエステル原料を利用した従来の方法においては、リサイクルポリエステル原料のみを用いて解重合を行っているが、本発明においては、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行い、かつオリゴマー、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるようにしてリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合を行うものである。
この方法により、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、(4)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができる。そして、(5)の工程の重縮合反応において、本発明の特性値として、ジエチレングリコールの含有量(共重合量)やカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ異物の混入量が少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
なお、本発明の製造方法においては、上記の解重合反応により、リサイクルポリエステル原料をモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。このように制御することにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われる結果、より多くの異物を取り除くことが可能となる。
再生ポリエステル樹脂を得る工程で用いる反応器は、容量や攪拌翼の形状は、一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造となっていることが好ましい。リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。
(3)の工程で行う解重合時の反応温度は、反応器の内温を200~270℃に設定して行うことが好ましく、中でも内温210~270℃で行うことがより好ましい。また、解重合の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、4時間以内が好ましく、ジエチレングリコールの副性量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑える観点から、2時間以内とすることがより好ましい。
(4)の工程においては、(3)の工程で解重合反応を行った解重合体を、濾過粒度25μm以下の金属製のフィルターを通過させて異物を濾過する。上記したように、(3)の工程の条件で解重合反応を行うことにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、濾過粒度25μm以下の金属製のフィルターを通過させることにより、析出した異物を濾過し、異物の混入量の少ない解重合体を得ることができる。濾過粒度が25μmより大きい金属製のフィルターを使用すると、ポリマー中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧や切糸が生じる。なお、濾過粒度は15μm以上であることが好ましく、濾過粒度が10μmよりも小さい金属フィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となる。
また、(4)の工程で使用できる金属製のフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、スクリーンチェンジャー式のフィルターやリーフディスクフィルターやキャンドル型焼結フィルターなどが挙げられる。
そして、(5)の工程では、上記の工程(4)を経て得られた異物濾過後の解重合体に、重合触媒を添加し、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
重合触媒としては、例えば、ゲルマニウム、アンチモン、チタンおよびコバルト化合物などの1種以上を用いることができるが、好ましくはゲルマニウムまたはアンチモン化合物を使用する。さらに、得られる再生ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。ゲルマニウムまたはアンチモンの化合物としては、それらの酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物などが例示される。これらの重縮合触媒は、生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対し5×10-5モル/unit以上とすることが好ましいが、中でも6×10-5モル/unit以上とすることがより好ましい。
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒も重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、(4)の工程で重合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒の量や種類を考慮することが好ましい。
また、重縮合反応時には、上記の重合触媒と併せて、脂肪酸エステルやヒンダードフェノール系抗酸化剤やリン化合物を添加して、重縮合反応を行うこともできる。脂肪酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。
リン化合物としては、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。
そして、重縮合反応槽において、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。重縮合反応温度が260℃未満であったり、重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えたりすると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなる。重縮合反応温度は、中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化すること、同じく熱分解により末端基量(COOH)が高くなるため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、285℃以下とすることが好ましい。
上記の重縮合反応により得られる本発明の再生ポリエステル樹脂の極限粘度は、0.44~0.80であることが好ましい。
再生ポリエステル樹脂中には、その効果を損なわない範囲であれば、上記したような重合触媒、抗酸化剤、リン化合物等の添加剤以外の各種の添加剤を含有していてもよい。各種の添加剤としては、着色防止剤として、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート等のリン化合物を用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用しても2種以上使用してもよい。また、ポリエステル樹脂の熱分解による着色を抑制するために酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、アントラキノン系染料化合物、銅フタロシアニン系化合物等の添加剤が含有されていてもよい。
<工程(ロ)>
公知の複合紡糸方法(例えば、溶融紡糸法)を採用し、好ましい紡糸ノズルを選定し、工程(イ)で得られた再生ポリエステル樹脂が芯部に配されるとともに、易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されるように、複合紡糸することで、芯鞘複合マルチフィラメント糸を得る。なお、複合紡糸は、芯部が10~35個の突起部および細溝を有する異形断面形状となるように行うことが好ましい。これを公知の方法で未延伸糸として巻き取った後に延伸を行ってもよいし、吐出後一旦巻き取ることなく延伸した後、巻き取ってもよい。また、3000~9000m/分の速度で巻き取った上で、別途延伸せずにそのままの状態で糸加工、または製織編に使用してもよい。
紡糸条件は特に限定されないが、例えば、紡糸温度が270~300℃であり、引き取り速度が1000~4000m/分で一旦巻き取った未延伸糸を、延伸温度が70~100℃であり、熱セット温度が120~190℃であり、延伸速度が200~1000m/分であり、延伸倍率が未延伸糸の最大延伸倍率の0.65~0.85倍程度で延伸するFDY法が挙げられる。最大延伸倍率とは、延伸温度80℃、熱セット温度145℃、および延伸速度600m/分の条件下で未延伸糸が切断されるまで延伸した時の倍率をいう。
なお、その他の紡糸および延伸の手法として、例えば、POY法(2000m/分以上の高速紡糸により、半未延伸糸として巻き取る方法)、HOY法(5000m/分以上の超高速紡糸により、高配向未延伸糸として巻き取る方法)またはスピンドロー法(1000m/分以上で紡糸し、一旦巻き取ることなく続けて延伸する方法)が挙げられる。
上記のようにして得られた高配向未延伸糸を用いて、延伸仮撚条件下で捲縮加工を施してもよい。この場合、例えば図4に示すような工程に従って捲縮加工糸を製造することができる。まず、供給糸条であるポリエステル高配向未延伸糸3に対しては、供給ローラ4と第1引取りローラ6との間に設置された熱処理ヒーター5によって熱処理がほどこされる。そして、第1引取りローラ6と、第2引取りローラ7との間において、好ましくは室温にて冷却される。引き続き連続して、第2引取りローラ7と第3引取りローラ10との間で、仮撚ヒーター8およびピンタイプ仮撚装置9を用いて、上記の特定の延伸仮撚条件下で捲縮加工がほどこされる。このように捲縮加工を施すことにより、潜在捲縮性能を有するマルチフィラメント糸が得られる。
本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸を含む織物としては、平組織、綾組織、朱子組織、あるいは、ドビーやジャガードによる変化組織などの織物などが挙げられ、編物としては、よこ編、トリコット編、ラッシェル編などの編物などが挙げられる。
また、本発明の芯鞘複合マルチフィラメント糸は、他の繊維と複合し、混繊糸としてもよい。この場合、他の繊維とエアー混繊、または合撚等任意の方法で合わせることができる。他の繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等が好ましい。特にポリエステル繊維が、染色加工条件面で好ましい。さらには、ポリエステル繊維としては、沸水収縮率が10%以上のものや、サイドバイサイド型の潜在捲縮糸が好ましく用いられる。ポリエステル繊維としては、本発明における再生ポリエステル樹脂を使用したものを用いると、リサイクル原料の使用率が高いものとなり、環境により配慮した混繊糸とすることができる。
そして、このような混繊糸を用いて、上記したような織編物を得た後、後述する工程(ハ)に供してもよい。
<工程(ハ)>
工程(ハ)においては、工程(ロ)で得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸の表面に塩基性化合物を接触させてアルカリ減量処理を施し、易溶性ポリエステル樹脂を溶出させる。これにより、本発明の異形断面マルチフィラメント糸が得られる。アルカリ減量処理により、突起部および細溝を有する異形断面形状を有する繊維とすることができる。異形断面形状と、再生ポリエステル樹脂におけるエチレングリコール成分に起因して、優れた濃染性が発現するという相乗効果が奏される。
この塩基性化合物との接触は、例えば塩基性化合物の水溶液で処理することにより行うことができる。塩基性化合物との接触は、必要に応じて芯鞘複合マルチフィラメント糸を延伸加熱処理または仮撚加工などの処理に供した後で行ってもよいし、芯鞘複合マルチフィラメント糸を織編物とした後に行ってもよい。
工程(ハ)で使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムなどが挙げられる。中でも水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムが好ましい。塩基性化合物水溶液の濃度は、塩基性化合物の種類またはアルカリ減量処理条件などによって異なるが、例えば0.1~30質量%の範囲である。処理温度は、例えば、常温~100℃の範囲である。アルカリ減量率は、例えば2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
本発明の異形断面マルチフィラメント糸は、紡糸性および染色堅牢度に優れるとともに、濃染性にも優れ高級感がある。こうした異形断面マルチフィラメント糸を含む本発明の織編物は、衣料(特に、ブラックフォーマル)、水着、スポーツインナー、ランジェリー、またはファンデーションのような濃染性が必要とされる繊維製品に好適に用いられる。本発明の織編物は、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を50質量%以上の混用率で含むことが好ましく、80質量%以上の混用率で含むことがより好ましく、100質量%の混用率で含むことが特に好ましい。
以下に実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。それぞれの物性の測定方法または評価方法は以下の通りである。
[極限粘度]
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
[ポリエステル樹脂の組成]
得られたポリエステル樹脂を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
[カルボキシル末端基濃度]
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
[昇圧試験機により測定した平均昇圧速度]
前記の方法により測定した。
[濃染性]
芯鞘複合マルチフィラメント糸を編機(小池機械製作所製、針本数:300本、釜径:3.5インチ)を用いて筒編地に編成し、後述の条件でアルカリ減量処理および染色を施して、異形断面マルチフィラメント糸を含む筒編地を得た。この筒編地を用い、色彩色差計(X-Rite社製の分光光度計「Color-Eye-3100」)を用いて、濃染性の指標であるL*値を測定した。なお、L*値はその値が小さいほど深みのある濃色であることを示す。
(アルカリ減量処理)
水酸化ナトリウム水溶液(40g/L)を用い、処理温度100℃、時間60分、および浴比1:30の条件でアルカリ減量処理を行った(減量率40%)。
(染色)
染料剤(Dystar社製、商品名「ダイアニックスブラック HG-FS conc18.」、分散染料)を7.5%omfの割合で用いた。浴比を1:50とし、温度135℃かつ時間30分間の条件で染色を行った。次いで、水酸化ナトリウム(0.2質量%)およびハイドロサルファイト(0.2質量%)を含む水溶液にて、80℃で20分間還元洗浄した。
[突起部の個数およびサイズ]
染色後の筒編地から異形断面マルチフィラメント糸の単繊維を1本採取し、その単繊維において、繊維軸方向(長手方向)に対して垂直に切断した。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真に撮り(倍率;10000倍)、写真上でカウント、または測定した。
[染色堅牢度(昇華堅牢度)]
JIS L-0854に従って、昇華堅牢度により染色堅牢度を評価した。
以下の基準で評価した。
○;染色堅牢度が4級である。
△;染色堅牢度が3~4級である。
×;染色堅牢度が3級である。
[紡糸性]
24時間継続して操業した際の、紡糸時の糸切れの回数に従って、下記の基準で評価し た。 ○:糸切れ回数が0~1回であった。
△:糸切れ回数が2~4回であった。
×:糸切れ回数が5回以上であった。
(実施例1)
まず、以下のようにして再生ポリエステル樹脂Aを作製した。
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をエステル化反応器に仕込み、続いて、エステル化反応器の撹拌機を回した状態で、エチレングリコールを10.0質量部投入した。エステル化反応器(以後ES缶と表記)の内温降下が底を打ったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(ポリエステル樹脂を製造する工程で発生するポリエステル屑のペレット状のもの)をロータリーバルブを介し約2hかけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下、G/Aと表記することがある)が1.20となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂A(極限粘度は0.64)を得た。
そして、再生ポリエステル樹脂Aが芯部に配されるように、さらにアルカリに対して易溶性ポリエステル樹脂(スルホン酸ナトリウム2.0質量%およびポリエチレングリコール6.0質量%を共重合させた共重合ポリエステル、極限粘度は0.64)が鞘部に配されるように、常用の複合紡糸用の溶融紡糸機に投入し、20個の突起部と細溝とを有する芯部と、その周囲に配される鞘部からなる異形断面繊維を紡糸可能である、24個の紡糸孔が穿設されている口金から、紡出させた。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて油剤を付与した。この糸条を紡糸速度3500m/分にて引取った(84dtex/24f)。得られた糸条を常用の延伸機にて、85℃の熱ローラを介して1.5倍に延伸し、さらに170℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取り、延伸糸である芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た(56dtex/24f)。この芯鞘複合マルチフィラメント糸において、芯部と鞘部との複合比率(質量比)は、芯部:鞘部=81:19であった。
次いで、得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸を常用の撚糸機にて撚回数1500回/mで撚りを掛け、強撚糸とした(撚係数K;11,000)。次に、得られた芯鞘複合マルチフィラメント糸を、筒編機(小池機械製作所製、針本数:300本、釜径:3.5インチ)を用いて筒編地に編成し、40g/Lの割合で水酸化ナトリウムを含むアルカリ溶液(浴比1:30)を用い、処理温度100℃、時間60分間でアルカリ減量処理し(減量率40%)、本発明の異形断面マルチフィラメント糸を含む筒編地を得た。この筒編地を染料剤(Dystar社製、商品名「ダイアニックスブラック HG-FS conc18.」、分散染料)を7.5%omfの割合で用いた。浴比を1:50とし、温度135℃かつ時間30分間の条件で染色を行った。次いで、水酸化ナトリウム(0.2質量%)およびハイドロサルファイト(0.2質量%)を含む水溶液にて、80℃で20分間還元洗浄した。
(実施例2)
再生ポリエステル樹脂Aに代えて、表1に記載された組成および物性の再生ポリエステル樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様に、複合紡糸、加撚、製編、アルカリ減量処理、染色、および洗浄を行った。
なお、再生ポリエステル樹脂Bの作製は、以下のように行った。
すなわち、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いて、ES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が底を打ったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステル原料(再生ポリエステル樹脂Aと同様のもの)をロータリーバルブを介し約2hかけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.10となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unitとなるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.8hPa、温度275℃で5時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂B(極限粘度は、0.65)を得た。
(比較例1)
再生ポリエステル樹脂Aに代えて、表1に記載された組成および物性の再生ポリエステル樹脂をC用いた以外は、実施例1と同様に複合紡糸、加撚、製編、アルカリ減量処理、染色、および洗浄を行った。
なお、再生ポリエステル樹脂Cの作製は、以下のように行った。
すなわち、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いて、ES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール2.5質量部を投入した。ES缶の内温降下が底を打ったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介し約2hかけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料(再生ポリエステル樹脂Aと同様のもの)を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.06となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.4hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂C(極限粘度は、0.64)を得た。
(比較例2)
再生ポリエステル樹脂Aに代えて、表1に記載された組成および物性の再生ポリエステル樹脂Dを用いた以外は、実施例1と同様に複合紡糸、加撚、製編、アルカリ減量処理、染色、および洗浄を行った。
なお、再生ポリエステル樹脂Dの作製は、以下のように行った。
すなわち、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー50.0質量部をES缶に仕込み、続いて、ES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール19.0質量部を投入した。ES缶の内温降下が底を打ったところより、50.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介し約2hかけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(再生ポリエステル樹脂Aと同様のもの)を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.36となるように投入した。
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.4hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂D(極限粘度は、0.64)を得た。
再生ポリエステル樹脂A~Dについて、表1にまとめて示す。
Figure 2022073521000002
異形断面マルチフィラメント糸の突起部、および評価について、表2にまとめて示す。
Figure 2022073521000003
表1から明らかなように、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量、平均昇圧速度が本発明にて規定する範囲内である再生ポリエステル樹脂を用いた実施例1および2においては、紡糸性に優れるとともに、濃染性、染色堅牢度にも優れるものであった。
比較例1においては、カルボキシル基末端濃度が高く平均昇圧速度も高い再生ポリエステル樹脂を用いていたために、ポリエステル樹脂における加水分解が発生することにより、溶融押出時の熱分解により、極限粘度の低下が見られた。そのために異形断面マルチフィラメント糸を構成する単繊維表面の突起部を十分に発現することができず、突起部の高さと幅とのバランスが崩れたことからL*値が高くなり、すなわち濃染性に劣るものであった。
比較例2においては、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度の高い再生ポリエステル樹脂を用いていたために、染色堅牢度が悪くなり濃染性に劣るものとなった。
実施例3(セシェの織物)
実施例1と同様にして、再生ポリエステル樹脂Aが芯部に配されるように、さらにアルカリに対して易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されるように、溶融紡糸を行い、高配向未延伸糸である芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た(90dtex/24f、伸度132%)。次に、図4に示す工程に従い、表3に示す条件で、芯鞘複合マルチフィラメント糸(60.8dtex/24フィラメント)を得た。
得られたマルチフィラメント糸に、S-1500T/MとZ-1500T/Mの追撚をほどこした。そして、このマルチフィラメント糸を、2:2の配列で経糸および緯糸に用い、平二重織物(経糸密度:190本/2.54cm、緯糸密度:140本/2.5m)を製織した。得られた織物を下記の方法により、精練、アルカリ減量処理、ブラック染色及び洗浄処理をおこなった。
精練剤(日華化学社製、「サンモールFL」)を2g/Lの濃度で水に溶解させた水溶液を用いて、80℃×20分の条件で精練をおこなった。その後、苛性ソーダ(10g/L)を用いて、98℃で30分間アルカリ減量処理をおこなった。次いで、分散染料(ダイスター社製、「ダイアニックスブラックHG-FS」(200%)、7.5%omf)、染色助剤(日華化学社製、「ニッカサンソルトSN-130」、0.5cc/L)および酢酸(0.2cc/L)を用い、135℃で30分間染色をおこなった。その際の浴比は1:50であった。その後、還元洗浄剤(一方社油脂工業社製、「ビスノールP-55」)(5g/L)を用い、80℃で20分間洗浄をおこなった。そして、洗浄後の布帛に対して、分光光度計(マクベス社製、「MS-CE3100型」)を用いて反射率を測定し、CIE Labの色差式からL値を求めた。なお、L値は、その値が小さい程深みのある色となる。
実施例3で得られた織物は、L値が11.5であり、得られた織物の表面を目視にて観察したところ、濃染性(深みのある色合い)を有しており、風合いも良好なものであった。
Figure 2022073521000004
実施例4
[仮撚加工マルチフィラメントの準備]
実施例3と同様の高配向未延伸糸である芯鞘複合マルチフィラメント糸(90dtex/24f、伸度132%)を用い、仮撚ヒーター及び仮撚ピン装置を通して、90tex/24フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸を得た。なお、仮撚ヒーターの温度は170℃とし、仮撚ピン装置としては内径2φの偏心ピンを具備したものを用い、仮撚数は850T/Mとした。
[サイドバイサイド型ポリエステルマルチフィラメント糸の準備]
高粘度側に実施例1で使用した再生ポリエステル樹脂Aを用い、低粘度側にバージンポリエステル樹脂(極限粘度0.46のポリエチレンテレフタレート)を用い、これらを複合紡糸型溶融押出機に等体積で供給した。紡糸温度285℃で溶融し、紡糸孔を24孔有する紡糸口金の背面で両成分を合流させ、横断面が半月状の再生ポリエステル樹脂Aと横断面が半月状のバージンポリエステルとの弦同士が貼り合わされて、横断面が円形となっているサイドバイサイド型ポリエステルフィラメントの複数本を集束した後、図2に示したヒーターに通して、延伸倍率1.56倍で延伸して、90dtex/24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステルマルチフィラメント糸を準備した。ヒーターの雰囲気温度は180℃とした。
[混繊交絡マルチフィラメント糸を得る工程]
上記で準備した仮撚加工マルチフィラメント糸とサイドバイサイド型ポリエステルマルチフィラメント糸とを、インターレースノズル(へパーライン社製、P2121/Lノズル)に糸長差をつけることなく導入し、エアー圧力0.2MPaで混繊交絡処理を施した。混繊交絡した後に、S方向に1500T/Mで追撚を施したものと、Z方向に1500T/Mで追撚を施したものと2種類製造し、各々、混繊交絡マルチフィラメント糸とした。この混繊交絡マルチフィラメント糸の残留トルク数は150T/Mであった。
[織物生地を得る工程]
S方向に追燃した混繊交絡マルチフィラメント糸2本と、Z方向に追燃した混繊交絡マルチフィラメント糸2本とを交互に配置して、2/2ツイル組織にて織物生地を製織した。この織物生地は、経糸密度92本/2.54cm、緯糸密度78本/2.54cmであった。
[異型断面フィラメントを得る工程]
織物生地を80℃×20分間の条件で精練した後、濃度10g/Lの苛性ソーダ水溶液(液温100℃)中に30分間浸漬し、混繊交絡マルチフィラメント糸を構成している一部アルカリ可溶性ポリエステルフィラメント中のアルカリ可溶性ポリエステルを溶出した。この結果、一部アルカリ可溶性ポリエステルフィラメントは、横断面が歯車状の異型断面フィラメントとなった。その後、190℃ラ30秒の条件で熱処理を行った。
[黒色織物を得る工程]
上記した熱処理の後、分散染料(商品名 ダイアニックスブラックHG-FS、三菱化学ヘキスト社製)を10%owfの割合で使用し、135℃の雰囲気に保持された染浴中で30分間処理することにより、染色加工を行った。その後、180℃×30秒の条件で熱処理を行い、黒色織物を得た。この黒色織物のL値は9.5であった。
実施例4で得られた織物は、L値が9.5であり、得られた織物の表面を目視にて観察したところ、濃染性(深みのある色合い)を有しており、風合いも良好なものであった。
1 芯鞘複合繊維
2 易溶性ポリエステル樹脂(鞘部)
3 難溶性ポリエステル樹脂(芯部)
A 異形断面マルチフィラメント糸の単繊維
B 突起部
C 細溝
4、5 突起部側面の線と突起部頂点の外接円との交点
4’、5’ 突起部側面の線と細溝の最深部の内接円との交点
6 線分4-5の中点
6‘ 線分4’-5’の終点

Claims (7)

  1. 難溶性ポリエステル樹脂が芯部に配され、かつ易溶性ポリエステル樹脂が鞘部に配されてなる芯鞘複合繊維を単繊維として含む芯鞘複合マルチフィラメント糸であって、
    前記難溶性ポリエステル樹脂が、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下である再生ポリエステル樹脂であり、
    前記単繊維の繊維軸方向に垂直な断面における、前記芯部の形状が突起部および細溝が交互に、かつ略一様に分布した異形断面形状である、芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  2. 前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数が、15~35である、請求項1に記載の芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  3. 繊維表面に突起部と細溝とが交互に、かつ略一様に配された異形断面形状を有する単繊維から構成された異形断面マルチフィラメント糸であって、 前記単繊維はポリエステル樹脂により形成されてなり、
    前記ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエステル原料を40質量%以上含有し、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下である再生ポリエステル樹脂である、異形断面マルチフィラメント糸。
  4. 前記突起部および前記細溝の断面形状が長方形または略台形状であり、それぞれ繊維軸方向に連続しており、前記突起部の数および寸法が、下記(I)~(III)式を満足する、請求項3に記載の異形断面マルチフィラメント糸。
    10≦N≦35 (I)
    0.3≦W≦3.0 (II)
    0.5W≦H≦3.0W (III)
    ただしNは突起部の数、Wは突起部の幅(μm)、Hは突起部の高さ(μm)である。
  5. 筒編地とし、黒色染色加工を施したときのL*値が12以下である、請求項3または4に記載の異形断面マルチフィラメント糸。
  6. 請求項3~5の何れか1項に記載の異形断面マルチフィラメント糸を含む、織編物。
  7. 請求項6の織編物を一部に用いてなる、衣料。
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