JP4418268B2 - 再生ポリエステル繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、使用後回収されたポリエステル(以下、リサイクルポリエステルという)を解重合し、再重合してなるポリエステルを含有する再生ポリエステル繊維に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)を始めとするポリエステルは、高融点で耐薬品性があり、また、低コストであるために、繊維はもちろんのこと、フィルム成型品等に幅広く用いられている。
これらのポリエステル製品は使用後に廃棄処分されているが、燃焼させる場合には高熱が発生し、焼却炉の傷みが大きく、焼却炉の寿命が短くなるという問題がある。また、焼却しない場合は腐敗分解しないため半永久的に残ることになり、環境の面からも問題となっている。
資源の再利用、環境問題等の面から、様々の分野や素材でリサイクルの試みが行われている。使用量が多く、今後も使用量の大幅な増加が予想されるポリエステルにおいても、液体飲用品用PETボトル等に一度成形使用されたポリエステルを回収し、再度使用することは、資源の再利用に貢献するものであり、地球環境にやさしい企業活動の一環として重要である。そして、このようなリサイクルポリエステルを使用した製品の一つとして、ポリエステルフィラメントがあり、これらのフィラメントは衣料用途あるいは産業資材用途に使用される。
リサイクルポリエステルは、様々な製品に加工され、使用された後に回収されたものであるため、リサイクルポリエステルから得られた再生ポリエステル繊維は、着色や変色が生じやすい。また、リサイクルポリエステルは、溶融粘度、分子量、結晶化度等の物性に大きなバラツキを有しており、ロット間の物性もあまり安定したものではないことにより、得られたフィラメントの性能も均一性に劣るものであり、フィラメント及びこのフィラメントより得られた布帛に染色を行った場合、製品内で色斑を生じたり、梱包単位間で色差を生じるという問題がある。
そこで、リサイクルポリエステルのみではなく、通常の重合法により得られた未使用のポリエステル(以下、バージンポリエステルという)とリサイクルポリエステルを併用することが提案されている。
そのひとつとして、両ポリエステルを混合して得られたフィラメントがある。例えば、溶融前のチップの段階でバージンポリエステルとリサイクルポリエステルを混合して、溶融紡糸したり、各々別々に溶融押し出しされたバージンポリエステルとリサイクルポリエステルをノズルパック内で混練する方法により得られた混合フィラメントが提案されている。
しかし、この混合フィラメントでは、リサイクルポリエステルの特性は変化していないため、リサイクルポリエステル部分の品質が変動したり、染色斑等の色斑が発生するという問題は十分に解決できなかった。そこで、特許文献1に記載されているような芯鞘構造とし、リサイクルポリエステルを繊維表面に露出させないようにすることで、着色や色斑の問題の解決を図ることも行われているが、リサイクルポリエステルを繊維表面に配して使用できないため、繊維の形態が限定され、リサイクルポリエステルの割合を多くすることもできなかった。
また、特許文献2、3に記載されているように、リサイクルポリエステルを解重合した後、種々の処理や反応を行うケミカルリサイクルにより、原料であるテレフタル酸やビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレートとして回収する方法が提案されている。この方法によると高純度の原料が得られるので、この原料を用いて通常の重合法を行って得られるポリエステルも品位、物性値ともに優れたものとなる。しかしながら、非常にコストがかかるという問題があった。
特開2000-328369号公報 特開2002-060369号公報 特開2002-060543号公報
本発明は、上記のような問題点を解決し、安価な手段で得ることができ、リサイクルポリエステルを使用していても白度に優れ、物性値のバラツキが少なく、布帛とし、染色を行った際にも染色斑が生じにくく、衣料用途としても好適に使用することができる再生ポリエステル繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、リサイクルポリエステルを解重合して低分子量体とし、この低分子量体を再重合することにより、リサイクルポリエステルの着色や性能のバラツキを減少させることが可能となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)リサイクルポリエステルを解重合して得た、分子量(数平均分子量)が1000〜4000の低分子量体を用いて再重合してなるポリエステルを含有する再生ポリエステルからなる繊維であって、リサイクルポリエステル由来の成分の含有量が繊維全体の30〜90質量%であり、繊維の色調を示すL値が85以上、b値が5.0以下であることを特徴とする再生ポリエステル繊維。
(2)繊維中に酸化チタンを1.5〜10質量%含有する(1)記載の再生ポリエステル繊維。
(3)繊維中に有機蛍光増白顔料を0.02〜2.0質量%含有する(1)〜(2)のいずれかに記載の再生ポリエステル繊維。
本発明の再生ポリエステル繊維は、リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体を用いて再重合してなるポリエステルを使用しているので、白度に優れ、物性値のバラツキが少なく、布帛とし、染色を行った際にも染色斑が生じにくく、衣料用途をはじめとして各種用途に好適に使用することが可能となる。
本発明の再生ポリエステル繊維において酸化チタンを含有するものは、得られる布帛の隠蔽性が良好となり、より白度を向上させることができる。
さらに、本発明の再生ポリエステル繊維において有機蛍光増白顔料を含有するものは、耐汚染性に優れるものとなり、得られる布帛は耐汚染性が要求される用途においても好適に使用することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の再生ポリエステル繊維は、原料としてリサイクルポリエステルを使用するものであり、リサイクルポリエステルとしては、液体飲食品用PETボトルやフィルム、繊維などのペレット以外の形に成形された後、低分子に戻されずに再び成形するために回収された樹脂のことをいう。中でもPETボトルを回収したものが比較的品質がよいため好ましい。
そして、本発明の繊維は、リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体を用いて再重合してなるポリエステルを含有する再生ポリエステルからなる繊維である。つまり、リサイクルポリエステルを解重合して低分子量化するが、単量体になるまで解重合することなく、低分子量体化したものを続いて再重合してなるポリエステルを含有することが好ましい。本発明を構成するこのようなポリエステルについて説明する。
まず、解重合の際には、リサイクルポリエステルにグリコール成分を添加することにより重合体を低分子量化し、得られた低分子量体を低分子量体の状態で続いて再重合を行う。再重合としては、通常の重合方法と同様に、溶融重合や固相重合する方法等が挙げられ、解重合したポリエステルの低分子量体を再重合することにより重合体(ポリエステル)とする。
このように、リサイクルポリエステルを解重合により一旦低分子量体に分解し、この低分子量体を再重合したポリエステルを用いているため、従来のように、リサイクルポリエステルを溶融のみ行って再利用していたポリエステル繊維と異なり、溶融粘度、分子量、結晶化度等の物性値が均一化、安定化し、色調も向上する。
また、ケミカルリサイクルのように、解重合して得られた低分子量体をさらに単量体として一旦精製して回収することもないので、コスト的にも有利である。
本発明における解重合して低分子量化した低分子量体としては、分子量(数平均分子量)が1000〜4000程度のものとすることが好ましい。分子量が4000を超えるものであると解重合が十分でないため、上記のような物性値の均一化、安定化、色調の向上の効果が不十分となる。一方、分子量を1000未満とするにはコスト的に不利となる。なお、前記したような分子量の低分子量体とするには、リサイクルポリエステルに対するグリコール成分の添加量、反応温度、圧力等を調整することによって可能である。
そして、本発明の再生ポリエステル繊維は、リサイクルポリエステル由来の成分の含有量が繊維全体の30質量%以上のものである。つまり、本発明においては、リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体を用いて再重合してなるポリエステルを使用するものであるが、このようにして用いるリサイクルポリエステルの量を繊維全体の30質量%以上とする。
本発明の再生ポリエステル繊維においては、地球環境保全に貢献する観点から、リサイクルポリエステルをできるだけ多く含むことが好ましいため、リサイクルポリエステル由来の成分の含有量を30質量%以上とし、中でも40質量%、さらには60質量%以上とすることが好ましい。なお、リサイクルポリエステルの由来の成分の含有量は90質量%以下とすることが好ましい。90質量%を超えると得られる繊維の物性値の均一性や色調が低下しやすくなる。
リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体のみを用いて再重合すると、リサイクルポリエステル由来の成分100%のポリエステル(以下、ポリエステルMとする)を得ることができる。リサイクルポリエステル由来の成分の含有量を30〜90質量%とするには、一旦、リサイクルポリエステルのみを解重合、再重合したリサイクルポリエステル由来の成分100%ポリエステル(ポリエステルM)を得、これとバージンポリエステルをブレンドしたポリエステルとしてもよいが、リサイクルポリエステルを解重合した後、再重合時にバージンポリエステルのオリゴマーを添加し、リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体とバージンポリエステルの単量体とを再重合させたポリエステル(以下、ポリエステルNとする)としてもよい。ポリエステルの各種の物性値をより均一化、安定化させるためには、後者の再重合時に添加、再重合させて得られたポリエステル(ポリエステルN)とすることが好ましい。
つまり、本発明の繊維を構成する再生ポリエステルは、リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体を用いて再重合してなるポリエステルを含有するものであるが、以下に示すような態様のものが挙げられる。
(a)ポリエステルMのみからなる再生ポリエステル。
(b)ポリエステルMにバージンポリエステルをブレンドした再生ポリエステル。
(c)ポリエステルNのみからなる再生ポリエステル。
(d)ポリエステルNとバージンポリエステルをブレンドした再生ポリエステル。
そして、本発明の再生ポリエステル繊維においては、(a)〜(d)の再生ポリエステルの態様のいずれにおいても、上記したようにリサイクルポリエステル由来の成分の含有量を30質量%以上となるようにする。
そして、本発明の再生ポリエステル繊維が色調に優れている指標として、繊維の色調を示すL値が85以上、b値が5.0以下であることが好ましく、中でもL値が94以上、b値が3.5以下であることが好ましい。
L値は色の白度を示す指標となり、b値は色の黄度を示す指標となるものであり、L値が85未満であると黒味がかった色となり、b値は低いほど青味がかった色となり、5.0を超えると黄味色が強くなりすぎる。したがって、L値が85未満であったり、b値が5.0を超えると、フィラメント糸を原糸の状態、あるいは布帛として使用した場合ともに、外観的な色調が悪く、品位の悪いものとなる。
なお、本発明におけるL値、b値は、得られた繊維を筒編したもの(染色せず)を重ねて、MINOLTA社製色彩色差計 CR-300にてL値及びb値を測定したものである。
本発明の再生ポリエステル繊維においては、リサイクルポリエステル、バージンポリエステルともに種々のポリエステルを用いることが可能であるが、両者は同種のものとすることが好ましく、リサイクルポリエステルは上記したようにPETボトル由来のものが好ましいため、バージンポリエステルもPETとすることが好ましい。
また、本発明の再生ポリエステル繊維中には、本発明の効果を損なわない範囲であれば共重合成分が含有されていてもよい。共重合成分としては、3 ,3'-ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、1 ,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂肪族、脂環式ジオール、P-ヒドロキシ安息香酸などがあげられる。これらはリサイクルポリエステル、バージンポリエステルのいずれに含有されていてもよいし、再重合時に添加されてもよい。
さらに、本発明の再生ポリエステル繊維は、酸化チタンを1.5〜10質量%含有することが好ましい。酸化チタンを含有することにより、布帛にした際の隠蔽性、すなわち白度を向上させることができる。酸化チタンの含有量が1.5質量%未満であると白度の向上効果が不十分となる。酸化チタンの含有量が10質量%を超えると、紡糸時のフィルター昇圧やガイドの摩耗等の問題が生じて操業性が悪化しやすくなる。
また、本発明の再生ポリエステル繊維は、耐汚染性を付与するために、有機蛍光増白顔料を0.02〜2.0質量%含有していることが好ましい。有機蛍光増白顔料としては、ピレン系、オキサゾール系、クマリン系、チアゾール系、イミダゾール系、イミダゾロン系、ピラゾール系、ジアミノカルパゾール系、ナフタール系、ジアミノスチルベンジスルホン酸系蛍光増白顔料等が好ましく、中でも耐熱性に優れているオキサゾール系蛍光増白顔料が好ましい。
有機蛍光増白顔料の添加量は、繊維質量対して0.02〜2.0質量%とすることが好ましく、繊維中の含有量が0.02質量%未満であると、耐汚染性付与の効果が乏しくなり、一方、2.0質量%を超えると、有機蛍光増白顔料による繊維の色調変化(黄変)等が生じることがあり、好ましくない。
そして、上記したような有機蛍光増白顔料は耐光性に劣るものが多いため、有機蛍光増白顔料と白色系無機顔料を併せて使用することが好ましい。これにより、耐光性の良好でない有機蛍光増白顔料の効力を長期に維持することが可能となる。
白色系無機顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム等の酸化物のセラミックスが好ましく、これらの白色系無機顔料は、平均一次粒子径0.4μ以下、中でも0.2〜0.05μのものが好ましい。また、白色系無機顔料の含有量は、繊維質量に対して0.3〜10.0質量%とすることが好ましい。なお、上記したように、本発明の繊維においては酸化チタンを含有することが好ましく、この場合は酸化チタンが白色系無機顔料として作用する。
白色系無機顔料の平均一次粒子径が0.4μを超えたり、含有量が10.0質量%を超えると、製糸上の問題(濾圧の早期上昇、糸切れ数の増加等)が発生し、好ましくない。一方、含有量が0.3質量%未満であったり、平均一次粒子径が0.05μ未満であると、紫外線に対するバリアー効果が乏しくなり、上記したような有機蛍光増白顔料の耐光性の改良効果が不十分となりやすく、さらには、顔料同士の2次凝集が発生し、紡糸時のフィルター昇圧の問題が生じて操業性が悪化する傾向がある。
また、本発明の再生ポリエステル繊維中には、上記のような添加物の他、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、その他顔料、添加剤等が配合されていてもよい。
本発明の再生ポリエステル繊維の形状は特に限定するものではなく、丸断面形状のもののみならず、多角形状や多葉形状のものであってもよく、また中空を有するものであってもよい。
次に、本発明の再生ポリエステル繊維の製造方法について一例を用いて説明する。リサイクルポリエステルとしてPETボトル由来のものを用いた場合、リサイクルポリエステル100質量部に対してエチレングリコールを5〜30質量部添加し、微加圧下で240〜260℃で解重合反応を行ない、低分子量化させる。そして、解重合後にはフィルターで異物を除去することが好ましい。これにより紡糸時の操業性も良好となるばかりでなく、品位も安定する。一方、バージンポリエステルとして、テレフタル酸とEGを常法によってエステル化し、バージンポリエステルのオリゴマーを得る。得られたオリゴマーを低分子量化させたリサイクルポリエステルに添加し、溶融重合(再重合)を行う。このとき、アンチモン化合物等の重縮合触媒を添加し、常法により重縮合反応を行なうことが好ましい。そして、ポリエステル中のリサイクルポリエステル由来の成分の量を所望の量とするために、バージンオリゴマーの添加量を調整する。
酸化チタン、有機蛍光増白顔料、白色系無機顔料等の添加剤を含有させる際には、上記のような再重合時に添加する方法でもよく、また、リサイクルポリエステル由来の成分のみからなるポリエステルとバージンポリエステルとをブレンドして用いる際には、両者の溶融混合時に添加したり、予めバージンポリエステルに高濃度に添加したマスターチップを用いる方法を採用することができる。
そして、得られたポリエステルを通常の溶融紡糸装置を用いて溶融紡糸を行う。このとき、2000m/min以上の高速紡糸により、半未延伸糸として巻き取るPOY法、あるいは一旦2000m/min以上の高速紡糸又は2000m/min未満の低速紡糸で溶融紡糸し、一旦巻き取った糸条を別工程で延伸熱処理する方法、さらには、一旦巻き取ることなく、紡糸に連続して延伸を行う紡糸延伸法のいずれの方法を採用してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例において各種の値の測定及び評価は次の通りに行った。
(1)極限粘度
フェノールと四塩化エタンの質量比1/1の混合物を溶媒とし、20℃で測定した。
(2)強度、伸度
JIS L−1013に従い、島津製作所製の引張試験機AG-100Gを使用し、つかみ間隔500mmとし、引張速度500mm/minとして、糸が切断した時の値を測定した。
(3)操業性
16錘で24時間紡糸を行った時の切糸回数で評価し、○と△を合格基準とした。
0回:○、1〜2回: △、3回以上:×
(4)繊維の色調
前記の方法で測定した。
(5)染色斑
(4)の測定の際に得た筒編地を染色し、染色斑を目視で判定し、3段階で評価した。
○:良好
△:やや斑がある
×:斑の発生大
染色条件は、Terasil Nevy Blue SGL (ハ゛イエル社製原糸用染料)の2.0%omf 浴比1:50の染液を用いて99℃で60分間、常法により染色した。
(6) 隠蔽性の評価
(4)の測定の際に得た筒編地(染色前)の隠蔽性を目視で判定し、3段階で評価した。
○:良好
△:やや透ける
×:透ける
(7)耐汚染性
(4)の測定と同様に、得られた繊維を筒編みし、これをトリポリリン酸ナトリウム0.3g、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3g、使用済エンジンオイル0.5g及び粘度0.5gを蒸留水1リットルに溶解した汚染液中に入れ、50℃で60分間撹拌しながら、汚染処理を行った。この編地を流水ですすぎ、風乾したあと、家庭用自動洗濯機を使用し、第一工業製薬社製モノゲンを3g/リットルとなるように添加した洗濯液で、40℃で10分間洗濯した。洗濯すすぎ後、編地を風乾し、目視にて次の3段階で耐汚染性の評価を行った。
○:良好
△:やや汚れがある
×:汚れの発生大
(8)耐光性
(4)の測定と同様に、得られた繊維を筒編みし、筒編地を冷暗所に100日間保存したサンプルと、紫外線透過率が98%のパイレックス(登録商標)ガラス板をカバーとした暴露容器で100日間天日暴露したサンプルのグレースケール差をJIS L−0801の変退色の判定基準に準じて判定し、等級が1.5級以内のものを良好、1.5級を超えるものを不良と判定した。
実施例1
リサイクルポリエステルとしてPETボトル屑(低分子に戻さずに再び成形するために回収した樹脂フレーク)を用い、エチレングリコール(EG)をリサイクルポリエステル100質量部に対して20質量部添加して、温度250℃で2時間、微加圧下で解重合反応を行った。そして、解重合後には目開き20μmのフィルターで異物の除去を行った。解重合により分子量(数平均分子量)が約2000の低分子量体とした。
別途、バージンポリエステルとして、テレフタル酸とEGのモル比を1:1.6として常法により温度250℃にてエステル化反応を行い、PETオリゴマーを得た。
そして得られたオリゴマー(バージンポリエステルオリゴマー)と上記の解重合により低分子量化したリサイクルポリエステルとを混合し、溶融重合(再重合)を行った。このとき、低分子量化したリサイクルポリエステルとPETオリゴマーとを質量比60:40の比率で重縮合反応釜に投入した後、三酸化アンチモンを重縮合触媒として285℃にて常法により重縮合反応を行なった。得られた再生ポリエステルは、リサイクルポリエステル由来の成分の割合が60質量%のものであり、この再生ポリエステルを常法により乾燥してチップ化した。
このチップ(極限粘度0.64)を295℃の押出機に供給し、紡糸装置に供給し、溶融紡糸を行った。紡糸口金としては孔径0.25mmの紡糸孔48個が穿設されたものを用いた。紡糸された糸条束を空気流により冷却し、オイリング装置を通過させて0.5質量%の付着量となるように油剤を付与し、集束ガイドで集束し、交絡付与後、紡糸速度3500m/minのローラで引き取り、捲取機にて巻き取った。
得られた繊維(半未延伸糸)は255dtex/48fであり、毛羽、単糸切れによる欠点はなかった。次にこれを通常の延伸装置を用い、700m/minの速度で倍率1.53倍、温度180℃で延伸し、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例2
再重合時の低分子量化したリサイクルポリエステルとバージンポリエステルオリゴマーの混合比を変更し、再生ポリエステル中のリサイクルポリエステル由来の成分の含有量を40質量%とした以外は実施例1と同様に行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例3〜4
再重合時に酸化チタン(平均一次粒子径が0.2μ)を添加(酸化チタンとエチレングリコールからなるスラリーとして添加)し、繊維中の酸化チタンの含有量が表1に示す値となるようにした以外は、実施例1と同様に行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例5〜6
再重合時に酸化チタン(平均一次粒子径が0.2μ)を添加(酸化チタンとエチレングリコールからなるスラリーとして添加)し、繊維中の酸化チタンの含有量が表1に示す値となるようにした以外は、実施例2と同様に行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例9
リサイクルポリエステルを解重合後、バージンオリゴマーを添加しないこと以外は実施例1と同様にして再重合を行い、リサイクルポリエステル由来の成分100%のポリエステルを得、チップ化した。バージンポリエステルとして極限粘度0.64のPETチップを用い、両者のチップを溶融前に混合(リサイクルポリエステル由来の成分の含有量が60質量%となるように混合)して溶融混練し、紡糸を行った。その後、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例10
リサイクルポリエステルを解重合後、再重合時に酸化チタン(平均一次粒子径が0.2μ)を添加し(酸化チタンとエチレングリコールからなるスラリーとして添加し)、繊維中の酸化チタンの含有量が表1に示す値となるようにした以外は、実施例9と同様に行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
比較例1
実施例1で用いたPETボトル屑のリサイクルポリエステルとバージンポリエステルとして極限粘度0.64のPETを、チップ段階で混合(リサイクルポリエステルが60質量%となるように混合)して溶融混練し、フィルターで異物を取り除いた後、紡糸を行った以外は実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
比較例2
リサイクルポリエステルを押出機Aに供給して溶融させ、フィルターで異物を取り除いた後、バージンポリエステルとして極限粘度0.64のPETを押出機Bに供給して溶融させ、両者をノズルパック内で混練(リサイクルポリエステルが60質量%となるように供給量を調整)して紡糸を行った以外は実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例1〜10、比較例1〜2で得られた繊維の強度、伸度、色調、染色斑、隠蔽性、操業性の測定値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6、9〜10で得られた再生ポリエステル繊維は、強度、伸度、色調に優れ、染色性、操業性も良好であった。中でも実施例3〜6、10の再生ポリエステル繊維は、隠蔽性も良好であった。
一方、比較例1、2の繊維は、リサイクルポリエステルとバージンポリエステルを単に溶融混合した繊維であったため、色調が悪く、染色斑が生じ、操業性も悪かった。
実施例11〜13
リサイクルポリエステルを解重合した低分子量体とPETオリゴマーの再重合時に酸化チタン(平均一次粒子径が0.2μ)を添加(酸化チタンとエチレングリコールからなるスラリーとして添加)し、繊維中の酸化チタンの含有量を表2に記載の値となるようにした以外は、実施例1と同様に行い、再生ポリエステルチップを得た。そして、有機蛍光増白顔料として、2,2’-(1,2-エテンジイル)ビス(4,1-フェニレン)ビスベンゾオキサゾールを用い、再生ポリエステルチップを押出機に供給する際に、表2に示す繊維中の含有量となるように種々変更してこれらを添加した以外は、実施例1と同様にして紡糸、延伸を行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
参考例
有機蛍光増白顔料を添加しなかった以外は、実施例11と同様にして紡糸、延伸を行い、167dtex/48fの再生ポリエステル繊維を得た。
実施例11〜13、参考例1で得られた繊維の強度、伸度、色調、染色斑、隠蔽性、耐汚染性、耐光性、操業性の測定値及び評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例11〜13で得られた再生ポリエステル繊維は、有機蛍光増白顔料と白色系無機顔料とを含有していたため、強度、伸度、色調に優れ、染色性、隠蔽性、操業性が良好であり、さらには耐汚染性、耐光性にも優れていた。

Claims (3)

  1. リサイクルポリエステルを解重合して得た、分子量(数平均分子量)が1000〜4000の低分子量体を用いて再重合してなるポリエステルを含有する再生ポリエステルからなる繊維であって、リサイクルポリエステル由来の成分の含有量が繊維全体の30〜90質量%であり、繊維の色調を示すL値が85以上、b値が5.0以下であることを特徴とする再生ポリエステル繊維。
  2. 繊維中に酸化チタンを1.5〜10質量%含有する請求項1記載の再生ポリエステル繊維。
  3. 繊維中に有機蛍光増白顔料を0.02〜2.0質量%含有する請求項1〜2のいずれかに記載の再生ポリエステル繊維。
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