JP4744170B2 - 水溶性ビニルアミン重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
一般に水溶性ポリビニルアミンは、N−ビニルカルボン酸アミドの重合体や該アミドと共重合し得る他の水溶性ビニル化合物との共重合体[以下、両者をまとめて(共)重合体と表記する場合がある]のアミド基を、酸またはアルカリの存在下に、全部または一部を加水分解することによって得られている。しかしながら、加水分解工程においてアルデヒド類が存在している場合、このアルデヒド類がポリビニルアミン中のアミノ基と反応して架橋が生じ、水不溶性のゲルを生成し、品質を低下させることがある。問題となるアルデヒド類は主として、重合工程において残存した未反応のN−ビニルカルボン酸アミドから、加水分解によって生じたアセトアルデヒドである。
例えば、特許文献1(特開平5−117313)には、油中水型乳化重合によって得られたN−ビニルホルムアミド重合体の逆相エマルションに、酸化剤等の不溶化防止剤を添加する方法が提案されており、特許文献2(特開平5−125109)には、シクロヘキサン等の有機溶媒中でN−ビニルホルムアミドの逆相懸濁重合を行った後、加水分解反応前、その間又は直後に酸性pH範囲でアルデヒド補足剤を添加する方法が提案されている。
しかし、酸性で加水分解する場合には、製造、輸送、貯蔵、使用に関わる装置配管類すべてに耐蝕性が要求されるため、工業的に実施する上では困難な問題があった。
更に、本発明方法で得られる加水分解後のポリビニルアミン含有ゲルは高濃度であるためそのまま輸送する際は輸送費が低廉であり、また保存安定性も良い。
本発明は、N−ビニルカルボン酸アミド単量体、又はN−ビニルカルボン酸アミド単量体と該アミドと共重合し得る他の水溶性ビニル化合物とを含む単量体混合物を重合して得られた重合体又は共重合体を加水分解して水溶性ビニルアミン重合体を製造する。
本発明のこれら重合体や共重合体の製造に用いられるN−ビニルカルボン酸アミドは、下記一般式で示される。
CH2=CH−NHCOR
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)
具体的には、N−ビニルホルムアミド(R=H)やN−ビニルアセトアミド(R=CH3)、その他N−ビニルプロピオン酸アミド、N−ビニル酪酸アミド等が例示されるが、ポリビニルアミンへの誘導のし易さからN−ビニルホルムアミドが好ましい。
重合開始温度は、通常0℃以上40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。
光重合の場合は、光開始剤を加えた単量体水溶液をベルト上に薄く流延し、光照射により重合させる方法が行われる。また、断熱重合の場合は、重合槽に単量体水溶液を入れ、ラジカル重合開始剤を添加して重合を行う。
重合開始剤の使用量は、通常、単量体に対し5〜10000ppm、好ましくは10〜5000ppmである。
なお、単量体の残存量が多い場合は、適切な溶媒等で抽出除去することも可能であるが、操作が煩雑であり、歩留の点から必ずしも有効な方法ではない。
ミートチョッパーを用いる場合は、ミートチョッパーのダイスの穴径を所望の粒径となるように選択し、上記の平均粒径の細粒物を得るには、穴径をそれぞれ5cm以下、好ましくは2cm以下、さらに好ましくは1cm以下にする。細粒物の粒径は小さい方が、その後の加水分解反応等の観点から好ましいが、粒径が小さすぎると押し出し時に力がかかりすぎるので、現実的には1mm以上である。
塊状の水性ゲルを、細分化して細粒物とする際に粒子同士の付着を抑えるために助剤を用いてもよい。助剤としては、通常ポリアルキレングリコール類やシリコンオイル等の各種オイル類、界面活性剤等が使用できる。
本発明方法では、加水分解をアルカリ条件下で行い、かつ(共)重合体は重合後の高濃度ゲルのまま行うので、未反応単量体に由来するアルデヒド等の架橋性物質が存在すると不溶化物を生成し易い。これは、従来から行われている塩酸等による酸性条件下の加水分解では、加水分解により生じるアミノ基は塩酸塩型になっているが、これに対しアルカリ性条件下の加水分解ではアミノ型になっており、このアミノ型がアルデヒド等との反応性が高く架橋し易いためである。さらに高濃度ゲルのまま加水分解する方が効率的ではあるが副反応も引き起こしやすい。したがって、高濃度ゲルをアルカリ加水分解する本発明方法では、有効な不溶化防止処理を行うことが特に必要なのである。
不溶化防止剤は、固相状態の(共)重合体塊状ゲルの細粒物と十分に混合するため水溶液もしくはメタノール、エタノール等のアルコール溶液で添加される。
混合は、通常温度20℃〜80℃で行われる。
また、これらの塩基は、予め溶解して溶液として加水分解反応に供するのが好ましい。その場合、塩基の濃度は高い方が反応操作上好ましい、例えばアルカリ金属水酸化物の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上であり、通常飽和濃度以下、好ましくは48重量%以下である。
混合方法としては、特に制限されず、前記の溶化防止処理における混合方法と同様の方法が適宜用いられる。具体的には、袋に入れ振り混ぜ混合する方法、円筒、二重円錐、Y型などの容器が回転する回転容器型混合機、リボン混合機、スクリュー混合機、円盤回転型等の羽根回転型の混合機等のブレンダーを用いて回分操作で混合する方法、スクリューコンベヤーを用いて移送中の途中で塩基薬剤を添加し連続的に移送しつつ混合する方法等の混合方法が例示される。これらのなかでも、本発明方法では、流動又は移動中の固相状態の塊状ゲル細粒物に、塩基溶液を散布する様式が好ましい。
反応時間は温度によって異なるが、通常1分から1週間である。反応物の撹拌は反応中続ける必要はなく、塩基溶液が塊状ゲル細粒物に吸収されれば後は放置しておいてもよい。放置し得る時間は長くても24時間である。
上記の如き本発明方法で得られたポリビニルアミンは、高濃度の細粒化されたゲル状物である。得られたゲル状細粒化物は、そのまま輸送して使用現場で溶解することも可能であり、また取得後すぐに希釈溶解しても良い。更に、要すれば加水分解反応終了後、乾燥して粉末化しても良い。
本発明方法で得られるポリビニルアミンは、高分子量で不溶化物もなく高品質である。従って、特に高分子量のポリビニルアミンが有効であるとされている、製紙工業での抄紙薬剤、廃水処理での凝集剤などとして極めて有用である。このような用途に適したポリビニルアミンの分子量は、1規定の食塩水中、25℃における0.1g/dl水溶液(塩酸塩として)の還元粘度(以下ηsp/Cと記載する)の値を指標とした場合、ηsp/Cは3以上が望ましく、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。
なお、実施例及び比較例において重合体の物性は、以下の方法により測定した。
重合体サンプルを1規定の食塩水中に、純分0.1g/dlの濃度に溶解し、25℃において、オストワルド粘度計を用いて流下時間を測定した。同様に、1規定食塩水の流下時間を測定し、次式によって還元粘度を求めた。
(数1)
還元粘度(ηsp/C)=<(t−t0)/t0>/0.1[dl/g]
t:サンプル溶液の流下時間(秒)
t0:1規定食塩水の流下時間(秒)
重合体粉末サンプルをメタノール水で抽出し、液体クロマトグラフィーを用いて分析した。主たる不純物として、N−ビニルカルボン酸アミドと、N−ビニルカルボン酸アミドの水付加体が検出され、これらの合計をN−ビニルカルボン酸アミド換算で求めて残存モノマー量とし、別途求めた揮発分量を補正して転化率を算出した。
重合体粉末サンプルを105℃で90分加熱し、減少分量を重量法で求めた。
ポリビニルアミンサンプルを脱塩水に溶解し、pH=2.5において、トルイジンブルーを指示薬として、1/400規定のPVSK(ポリビニル硫酸カリウム)水溶液により滴定した。
脱イオン水70重量部に対し酢酸ナトリウム0.1重量部、ポリエチレングリコール0.3重量部を溶解し、ついでN−ビニルカルボン酸アミド30重量部を混合する。混合したモノマー水溶液をリン酸によりpH=6.0となるよう調整し、モノマー調整液を得た。
このモノマー調整液を5℃まで冷却した後、温度計を取り付けた断熱反応容器に入れ、15分間窒素曝気を行った。その後に2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(商品名:V−50)75ppmとt−ブチルハイドロパーオキサイド40ppmを10%水溶液として添加し、次いで亜硫酸水素ナトリウム40ppmを10%水溶液として添加することにより重合を開始した。
重合体Aは、含水ゲル状の塊状物であった。
下記の実施例1において重合体Aを切断し、更にミートチョッパーで小粒化したものを、80℃で2時間乾燥を行い、次いでその乾燥重合体Aをウィレータイプの粉砕機により粉末化して得られた重合体A(ポリN−ビニルカルボン酸アミド)粉末について物性を測定した。その結果は以下の通りであった。
重合転化率 :98.2%
揮発分量 :5.5%
カチオン当量:0.0meq/g
(実施例1)
反応容器から取り出したゲル状の重合体Aをカッターで5cm角に切断し、切断した塊状物ゲルを精肉用ミートチョッパー(ダイス穴径:3mm)により解砕して粒状物とする。得られた粒状物の最長径は、凡そ5mmであった。この時ゲルの温度は80℃であった。このゲル状粒状物100gをビニール製袋内に取り、これに水素化ホウ素ナトリウム0.3g(対重合体A:1%)を2.5%水酸化ナトリウム水溶液3.38g(対重合体A:水酸化ナトリウム0.5mol%)に溶解した不溶化防止剤Bを添加してよく振り混ぜ、2分間不溶化防止処理を行う。この後に47%水酸化ナトリウム水溶液14.32g(対重合体A:水酸化ナトリウム39.5mol%)を加水分解用アルカリ溶液Cとして添加しよく振り混ぜた後に室温で3日間放置することによりビニルアミン重合体−1を得た。
不溶化防止剤Bを添加する温度を室温(25℃)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、ビニルアミン重合体―2を得た。
(実施例3)
不溶化防止剤Bを添加してから30秒後に加水分解用アルカリ溶液Cを添加した以外は実施例2と同様の操作を行い、ビニルアミン重合体―3を得た。
不溶化防止剤Bを添加してから10分後に加水分解用アルカリ溶液Cを添加した以外は実施例2と同様の操作を行い、ビニルアミン重合体―4を得た。
(実施例5)
実施例1において、不溶化防止剤B及び加水分解用アルカリ溶液Cの添加をビニール製袋内ではなく、バッチ式ブレンダーとした以外は同様の操作を行い、ビニルアミン重合体―5を得た。
実施例1において、不溶化防止剤B及び加水分解用アルカリ溶液Cの添加をビニール製袋内ではなく、スクリューコンベヤーで重合体Aを輸送しながら途中で所定の間隔をおいて添加した以外は同様の操作を行い、ビニルアミン重合体―6を得た。
(実施例7)
不溶化防止剤Bと加水分解用アルカリ溶液Cを同時に添加した以外は実施例1と同様の操作を行い、ビニルアミン重合体―7を得た。
不溶化防止剤Bを添加した後そのまま室温で7日放置し、その後に加水分解用アルカリ溶液Cを添加した以外は実施例1と同様の操作を行いビニルアミン重合体8を得た。
実施例1において、不溶化防止剤Bを添加せず、加水分解用アルカリ溶液Cのみをゲルと振り混ぜたこと以外は同様の操作を行うことによりビニルアミン重合体―9を得た。
上記実施例1〜8及び比較例1で得られた各重合体ゲルについて、下記の方法で溶解性試験を行い、その結果を表1に示す。
<溶解性試験方法>
各重合体ゲル中に含まれるビニルアミン重合体量が2.5gになるように重合体ゲル採取し、脱塩水で希釈し480gとした。この希釈溶液に食塩20gを加え、4%食塩水中0.5重量%のビニルアミン重合体水溶液を調製し、水溶液を60メッシュの金網を通して濾過し、金網状の残物を水道水で洗浄した。金網上の残物である不溶解ゲル分の重量を測定し、不溶解ゲル分の量で溶解性を比較した。
Claims (10)
- N−ビニルカルボン酸アミド単量体、又はN−ビニルカルボン酸アミド単量体と該アミドと共重合し得る他の水溶性ビニル化合物とを含む単量体混合物を含有する水溶液を静置重合し、得られた重合体の塊状ゲルを細分化して細粒物となし、該細粒物を固相状態で不溶化防止剤と混合した後、塩基溶液に溶解せず加水分解することを特徴とする水溶性ビニルアミン重合体のゲル状細粒化物の製造方法。
- 上記水溶液の静置重合が断熱重合であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 不溶化防止剤が、亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、ロンガリット、二酸化チオ尿素、及び水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 塊状ゲルの細粒物の大きさ(最長径)が5cm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 単量体濃度10重量%以上の水溶液を静置重合する事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 不溶化防止剤と混合した後、少なくとも30秒経過後に塩基水溶液を加え加水分解することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 加水分解により得られた水溶性ビニルアミン重合体は、ビニルアミン単位を10モル%以上含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 不溶化防止剤の添加量は、細粒物に対し0.1重量%〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 塩基はアルカリ金属の水酸化物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 加水分解は、濃度10重量%以上の塩基水溶液を細粒物に散布して行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法
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