JP4743651B2 - 剥離紙用アンダーコート剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、剥離紙用アンダーコート剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、粘着ラベルやシール等に用いられる剥離紙としては紙や板紙等の基紙表面にポリエチレン等のフィルムをラミネートし、その上にシリコーン樹脂等の離型剤層を設けたものが使用されている。この方法によれば光沢に優れた剥離紙が得られ、また、離型剤が基紙内部へ浸透しない為塗工量を任意に調整することができ、一定の厚みを有する離型剤層を得ることができる。しかし、ラミネート処理を施した剥離紙はリサイクルが困難であるので、パルプとして再使用可能な剥離紙の開発が望まれている。
【0003】
リサイクルが容易な剥離紙としては、アンダーコート剤としてポリビニルアルコール等の水溶性重合体を使用した剥離紙が知られている。このような水溶性高分子を用い均一な厚みを有するアンダーコート層を得るには高濃度で基紙の上に塗工する必要があるが、一般にこれら水溶性重合体は粘度が高く、高速塗工が困難である。また、ピンホール等の欠陥を生じ易く、得られるアンダーコート層は目止め効果(バリア性)が十分ではない。一方、低濃度で塗工すると作業性は向上するが乾燥工程に時間がかかるので生産性が低下し、また、アンダーコート剤が基紙内部へ浸透してしまうので均一な厚みのアンダーコート層を得がたくなり、アンダーコート層表面の光沢や平滑性も低下する。その結果として離型剤塗工後の剥離紙表面の光沢まで低下するという問題が生ずる。
【0004】
高濃度での高速塗工が容易なアンダーコート剤としては、高濃度でも比較的低粘度であるエマルジョン型のアンダーコート剤が知られている。しかしかかるアンダーコート剤は作業性には優れるが、基紙内部へ浸透しやすいので均一な厚みを有するアンダーコート層を得るのが困難である。また、アンダーコート層の目止め効果や表面光沢、平滑性も依然満足できる水準にない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、剥離紙のリサイクルを容易とし、高濃度での塗工性に優れ、また、基紙内部への浸透が少なく、さらには目止め効果や表面光沢、平滑性等に優れるアンダーコート層を容易に形成し得る新規なエマルジョン型剥離紙用アンダーコート剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく、基紙表面のパルプ繊維がマイナスに帯電していることに注目し、アンダーコート剤にカチオン性の官能基を導入すれば基紙表面において該アンダーコート剤とパルプ繊維との間に相互作用が生起し、紙内部への浸透防止性や目止め性に優れたアンダーコート層が得られるという観点に立ち、カチオン性不飽和単量体を必須構成成分とするエマルジョン型アンダーコート剤について鋭意検討を行った。この結果、特定のカチオン性不飽和単量体および非イオン性不飽和単量体を共重合させてなる共重合体、ならびに特定の水溶性重合体を含有してなる共重合体エマルジョンからなるアンダーコート剤が前記課題を悉く解決すること見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は分子内に第三級アミノ基またはそれらの塩、もしくは第四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性不飽和単量体(A)および非イオン性不飽和単量体(B)を共重合させてなる共重合体、ならびに乳化分散能を有する水溶性重合体(C)を含有してなる共重合体エマルジョンからなる剥離紙用アンダーコート剤に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、本発明である剥離紙用アンダーコート剤を構成するカチオン性不飽和単量体(A)および非イオン性不飽和単量体(B)からなる共重合体(以下、単に「共重合体」という)と乳化分散能を有する水溶性重合体(C)(以下、単に「水溶性重合体(C)」という)について説明する。
【0009】
本明細書において、カチオン性不飽和単量体(A)とは分子中に分子内に第三級アミノ 基またはそれらの塩、もしくは第四級アンモニウム塩基といったカチオン性の官能基を含有する不飽和単量体のことをいい、該不飽和単量体を本発明の剥離紙用アンダーコート剤の必須構成成分とすることで、該剥離紙用アンダーコート剤は基紙表面のパルプ繊維に定着し、基紙内部に浸透し難くなり、その結果均一な厚みと優れた目止め効果を有するアンダーコート層を形成し得る。カチオン性不飽和単量体(A)の使用割合は、前記共重合体の総重量和に対して通常1〜30重量%程度、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは2〜15重量%である。かかるカチオン性不飽和単量体(A)の使用量が上記数値範囲より小さいと得られる剥離紙用アンダーコート剤が基紙内部へ浸透し易くなり、均一な厚みと優れた目止め効果を有するアンダーコート層を得るのが困難となる。また、大きい場合は、本発明の剥離紙用アンダーコート剤の貯蔵安定性や、アンダーコート層の表面光沢や平滑性、また耐溶剤性が低下する傾向にある。
【0010】
カチオン性不飽和単量体(A)としては、たとえばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリルとは、アクリル基またはメタクリル基のことをいう、以下、(メタ)とは同様の意味である)、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン、もしくはトリアリルアミンなどの第三級アミノ基を含有する不飽和単量体またはそれらの塩酸、硫酸などの無機酸、もしくは酢酸などの有機酸の塩類;前記第三級アミノ基を含有する不飽和単量体とメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリンなどの四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩基を含有する不飽和単量体等があげられる。上記具体例のうち、得られる剥離紙用アンダーコート剤の貯蔵安定性や、コストの面からジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートを使用するのが特に好ましい。これらは1種または2種以上を併用することが出来る。
【0011】
次に、本明細書において、非イオン性不飽和単量体(B)とは分子中にイオン性の官能基を含有しない不飽和単量体のことをいい、かかる非イオン性不飽和単量体(B)を本発明の剥離紙用アンダーコート剤の必須構成成分とすることで、該アンダーコート剤の塗工適性やアンダーコート層の光沢や平滑性を向上させることができる。非イオン性不飽和単量体(B)の使用割合は、前記共重合体の総重量和に対して通常70〜99重量%、好ましくは80〜99重量%、特に好ましくは85〜99重量%である。当該数値範囲より小さい場合、アンダーコート剤の塗工性やアンダーコート層表面の光沢や平滑性が劣る傾向にある。また大きい場合はアンダーコート層の耐溶剤性が劣る傾向にあり、特に溶剤型シリコーン樹脂等を離型剤層としてアンダーコート層の上に設けた場合、溶剤によりアンダーコート層が侵され易くなる傾向にある。
【0012】
非イオン性不飽和単量体(B)としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系化合物;分子内にn−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、パルミチル基、ステアリル基等の、直鎖、分岐鎖または環状であってよい、炭素数6〜22からなるアルキル基を有するα−オレフィン類;分子内にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、パルミチル基、ステアリル基等の、直鎖、分岐鎖または環状であってよい、炭素数1〜18からなるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;炭素数1〜22からなるアルキルビニルエーテル類;2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の、分子内に水酸基を含有するエステル置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ベンジル(メタ)アクリレート等、分子内にベンジル基を含有するエステル置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用することができる。これらのうち、スチレン系化合物および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用した場合、本発明である剥離紙用アンダーコート剤の塗工適性や、得られるアンダーコート層の耐溶剤性が向上する傾向にあり好ましい。特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの分子内のアルキル基を構成する炭素の数が1〜12の場合、上記効果に加え剥離紙用アンダーコート剤の貯蔵安定性や、アンダーコート層の目止め効果が向上する利点がある。また、水酸基を含有するエステル置換基を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステル類を使用した場合、得られるアンダーコート層の耐溶剤性が向上するだけでなく、アンダーコート層の上にシリコーン樹脂からなる離型剤層を設けた場合に両者の密着性が向上するという優れた効果を奏する。
【0013】
また、共重合体の構成成分として上記各不飽和単量体以外にさらに各種公知の不飽和単量体(以下、「その他の不飽和単量体」という)を本発明の目的を逸脱しない範囲において適宜に使用することができる。その他の不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸半エステル、イタコン酸、イタコン酸半エステル、シトラコン酸、フマル酸、ムコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基含有不飽和単量体;およびこれら各不飽和単量体のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機塩基類の塩等の分子内にアニオン性の官能基を含有する不飽和単量体を使用できる。かかる不飽和単量体を使用すると、アンダーコート層に耐溶剤性を付与することができ、特に上記各不飽和単量体のうちでもカルボキシル基を含有するものを使用すると同効果が優れる傾向にある。なかでも、(メタ)アクリル酸を使用すると同効果に加え、剥離紙用アンダーコート剤の貯蔵安定性や塗工適性が向上するという点で好ましい。
【0014】
また、その他の不飽和単量体として他にもポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、繰り返し単位が2〜10程度のオキシアルキレン基を分子中に有する不飽和単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、およびこれらの炭素数1〜4のアルキルエステルなどの、分子内にN−置換アミド基等の連鎖移動性置換基を有する不飽和単量体を使用することができる。
【0015】
さらに、その他の不飽和単量体として分子内にビニル基やエポキシ基等の反応性官能基を2個以上有する架橋性不飽和単量体を使用することが出来る。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、ジビニルベンゼン等の2官能性ビニルモノマー;1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルアミン、N,N−ジアリルアクリルアミド等の3官能性モノマー;テトラメチロールメタンテトラアクリレート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩等の4官能性ビニルモノマー等の架橋性不飽和単量体等を挙げることが出来る。かかる架橋性不飽和単量体のなかでも本発明である剥離紙用アンダーコート剤を製造する際の反応制御が容易となる点において、反応性を有する官能基がすべてビニル系2重結合のものが好ましい。
【0016】
また、本明細書において水溶性重合体(C)とは、前記共重合体を乳化、分散させ、安定化する保護コロイド的な役割を果たす、各種公知の水溶性の共重合体のことをいう。当該水溶性重合体(C)を本発明である剥離紙用コーティング剤の必須構成成分とすることでアンダーコート層に光沢や耐溶剤性が付与され、該アンダーコート層の上に溶剤型シリコーン樹脂等の溶剤型離型剤を好適に適用できるようになる。
【0017】
水溶性重合体(C)としては、例えば、各種公知のアニオン性ビニルモノマーおよび非イオン性ビニルモノマーを共重合させてなるポリカルボン酸共重合体(特開平9−241542号公報)の中和物やポリビニルアルコール等を挙げることができる。かかるポリカルボン酸共重合体前記を構成する前記アニオン性ビニルモノマーとは、分子内にカルボキシル基またはスルホン酸基を含有するビニルモノマーのことをいい、たとえば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸や、これらの塩などを挙げることが出来る。また、前記ノニオン性ビニルモノマーとは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ンiso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を分子内に含有する(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル等の(メタ)アクリル酸アルキル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ウレタンアクリレート類、ジフェニルー2(メタ)アクリロイルオキシホスフェート等各種公知のモノマーをいう。本発明でいうポリカルボン酸共重合体の中和物とは、上記説明したアニオン性モノマーと非イオン性モノマーを共重合させたものを塩基等で中和したものを使用する。また、ポリビニルアルコールは、水溶性である限り特に制限されないが、通常、重合度は200〜2500程度、鹸化度は65〜99.9%程度のものを使用する。但し水溶性重合体(C)として鹸化度が98.0〜99.9%程度の、いわゆる完全鹸化型のポリビニルアルコールを単独使用した場合、乳化性能は満足出来るものではなく、得られる共重合体得エマルジョンの安定性が低下する傾向にある。このような場合は、部分鹸化ポリビニルアルコールを適宜併用したり、後述する各種公知の単量体の乳化剤を併用するなどの手段を講ずることが望ましい。
【0018】
なお、水溶性重合体(C)としては、得られる共重合体エマルジョンの経時安定性や、塗工適性の点からポリカルボン酸共重合体の中和物が好ましい。水溶性重合体(C)の使用量は、前記共重合体に対して1〜100重量%、好ましくは10〜80重量%である。該数値範囲より小さいと得られる共重合体エマルジョンの安定性ならびにアンダーコート層の耐溶剤性が低下し、また、大きいとアンダーコート剤の粘度が上昇し、作業性が低下する傾向にある。
【0019】
また、本発明では水溶性重合体(C)と併用して、必要に応じて各種公知の単量体の乳化剤を併用することができる。具体的には、長鎖α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性乳化剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等の反応性乳化剤等が使用できる。これら単量体の乳化剤の使用量は特に制限されず、本発明の目的を逸脱しない範囲において適宜に使用することができる。
【0020】
次に、本発明で使用する重合性開始剤について説明する。かかる重合性開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素や水性のアゾ系開始剤等の重合性開始剤;前記過硫酸塩等と亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤とを組み合わせた形のレドックス系重合性開始剤等が挙げられる。前記開始剤の使用量は特に制限されないが、共重合体の総重量和に対して通常0.5〜5重量%程度である。なお必要に応じて、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン、アルファ−メチルスチレンダイマー等のような連鎖移動剤を用いることもできる。
【0021】
本発明である、カチオン性不飽和単量体(A)、非イオン性不飽和単量体(B)からなる共重合体ならびに水溶性重合体(C)からなる共重合体エマルジョンを含有してなる剥離紙用アンダーコート剤の製造には通常の手段を採用できる。たとえば、所定の反応容器に水、開始重合剤、水溶性重合体(C)を仕込み、次いでカチオン性不飽和単量体(A)、非イオン性不飽和単量体(B)および必要に応じてその他の不飽和単量体を加え、攪拌下、加温することで目的とする剥離紙用アンダーコート剤を得ることができる。この際、各不飽和単量体の仕込み方法は同時重合、連続滴下重合等の従来公知の各種方法により行うことができる。重合時のpHは安全性、作業性の点から通常2〜9程度の範囲とするのがよい。反応温度はラジカル重合開始剤が活性化する温度範囲で適宜に設定できるが通常は40〜95℃程度であり、反応時間は通常1〜6時間程度である。また、反応系の共重合体エマルジョンの固形分濃度は通常20〜70重量%程度、粘度は5,000mPa・s(25℃)以下の性状である。
【0022】
また、本発明の剥離紙用アンダーコート剤はクレー等の顔料と使用することもできる。顔料の使用量は特に制限されないが、通常、該剥離紙用アンダーコート剤固形分100重量部に対し、顔料1000重量部以下で使用できる。また、かかる顔料としては、ポリビニルアルコール、澱粉等が予め配合されたものを使用してもよい。
【0023】
こうして得られた剥離紙用アンダーコート剤は、剥離紙を製造するための紙、板紙等の台紙表面に塗工して用いられる。台紙表面への塗工方法としては、各種の方式を採用できる。たとえば、ワイヤーバー、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等を用いて塗布する方法や、キャレンダー法を用いてもよい。また、剥離紙用アンダーコート剤の塗工量は通常1〜10g/m2(固形分)程度、好ましくは1〜5g/m2である。なお、塗工の際、グリオキザール、水溶性ジルコニウム化合物等の架橋剤を併用することで、高温高湿におけるシリコーン樹脂等からなる離型剤層とアンダーコート層との密着性をさらに向上させることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の剥離紙用アンダーコート剤は高濃度時の塗工適性に優れ、ピンホールの発生等が少なく目止め効果に優れたアンダーコート層を容易に形成し得る。また、かかるアンダーコート剤は基紙内部への浸透が少ないので均一な厚みを有し、光沢や平滑性に優れたアンダーコート層を形成し得る。また、かかるアンダーコート層は耐溶剤性に優れるので、その上に溶剤型離型剤からなる離型剤層を好適に設けることができる。また、かかるアンダーコート層はシリコーン樹脂からなる離型剤層との密着性に優れる。さらに、本発明の剥離紙用アンダーコート剤を用いて得られる剥離紙は、離型剤層にラベル、シール等を適用した場合、これらの解離性にも優れるという利点があり、工業的に大変有用である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中の部および%は特記しないかぎり重量基準である。
【0026】
実施例1
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、モノマー滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に水35部と、水溶性重合体(C)としてメタクリル酸メチル70部、アクリル酸n−ブチル15部、メタクリル酸メチル15部を共重合して得られるポリカルボン酸共重合体のアンモニウム塩の35重量%水溶液171部を仕込み、窒素気流下で70℃まで昇温した後、ラジカル重合性開始剤として過硫酸アンモニウム1部と、水3部からなる水溶液を該反応容器に加えた。続いてカチオン性不飽和単量体(A)としてジメチルアミノメタクリレート8部、非イオン性不飽和単量体(B)としてアクリル酸n−ブチル40部、スチレン40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部からなる混合物と、ラジカル重合性開始剤として過硫酸アンモニウム1部および水10部からなる水溶液を別々に、攪拌下に同時に滴下しながら重合を開始した。重合時の反応温度が80℃を超えないように2時間反応させた後水酸化ナトリウムで中和し、水で濃度調整を行い、固形分濃度50重量%、pH7.1、粘度700mPa・s(25℃)の共重合体エマルジョンを得た。これに水を加えて固形分20重量%、粘度25mPa・s(25℃)の試験用塗料を得た。得られた試験用塗料の性状を表1に示す。
【0027】
実施例1〜9、比較例1
剥離紙用アンダーコート剤の構成成分の組成、使用量を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にして製造を行い、各試験用塗料を得た。得られた各試験用塗料の性状を表1に示す。
【0028】
比較例2
水溶性重合体(C)の代わりにスルホコハク酸エステル塩(商品名AEROSOL501、三井サイテック(株)製)2部を使用した他は実施例1と同様にして製造を行ない、試験用塗料を得た。得られた試験用塗料の性状を表1に示す。
【0029】
比較例3
市販のポリビニルアルコール(ゴーセノールT−330:日本合成化学社製)の10重量%(固形分)粘度800mPa・s(25℃)溶液を試験用塗料とした。表1に性状を示す。
【0030】
比較例4
市販のポリビニルアルコール(ゴーセノールT−330:日本合成化学社製)の4重量%(固形分)、粘度25mPa・s(25℃)溶液を試験用塗料とした。
表1に性状を示す。
【0031】
尚、表1中、カチオン性不飽和単量体(A)のDMはジメチルアミノメタクリレート、DMLはジメチルアミノエチルメタクリレートの第四級アンモニウム塩を示す。また、非イオン性不飽和単量体(B)のStはスチレン、BAはアクリル酸−n−ブチル、PAはアクリル酸パルミチル、ANはアクリロニトリル、2HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレートを示す。その他の不飽和単量体のMAAはメタクリル酸、DMAAはN,N−ジメチルアクリルアミドを表す。また、水溶性重合体(C)のE1はアクリル酸メチル70部、アクリル酸n−ブチル15部、メタクリル酸メチル15部を共重合してなるポリカルボン酸共重合物のアンモニウム塩の35%水溶液、E2はポリビニルアルコールとしてエアボル103(商品名、鹸化度98.0〜98.8%、エアープロダクツ社製)、E3はポリビニルアルコールとしてR210(商品名、鹸化度87.0〜89%、クラレ株式会社製)を示す。
【0032】
(試験用試料の作成)
実施例1〜9及び比較例1〜4で得た各試験用塗料をアンダーコート剤として、各々を塗工量が2g(固形分)/m2 となるようにメイヤーバー塗工機(PI−1210 FILMCOATER:テスター産業株式会社製)を用いてPPC用紙に一定速度で塗工し、1分間放置した。次いで、105℃で2分間乾燥させ、各試験用試料を得た。得られた各試験用試料を以下の項目について評価した。評価結果を表2に示す。
【0033】
(塗工適性)
実施例1〜9および比較例1〜4の各組成物を塗工する際の状態、および得られた塗工面の平滑性を目視判断し、塗工適性を以下の基準で評価した。
○:バーがスムーズに移動する。塗工面は平滑である。
△:バーが少し引っ掛かる。塗工面の平滑性がやや劣る。
×:バーがほとんど引っ掛かり、塗工が極めて困難となるか、塗工不可能となる。
【0034】
(光沢)
各試験用試料の塗工面の光沢を、以下の基準に基づき目視評価した。光沢はアンダーコート層の平滑性の指標でもある。
○:優れた光沢が認められる。
△:やや光沢が劣る。
×:殆ど光沢がない。
【0035】
(耐溶剤性)各試験用試料の耐溶剤性を以下の方法で試験した。
「トルエン撥水油性」
各試験用試料のアンダーコート剤塗工面に染料(SudanII:和光純薬工業株式会社製)1重量%を含むトルエン染料溶液を12g/m2 となるように塗工した。塗工後5秒間放置した後トルエン溶液をガーゼで拭き取り、塗工面の着色を目視評価した。
○:塗工面が全く染まらない。
△:塗工面が少し染まる。
×:塗工面がほぼ染まる。
【0036】
「トルエンバリア性」
上記耐溶剤性を試験した後の各試験用試料の裏面への染料の染み出しを目視判断した。トルエンバリア性はアンダーコート層厚みの均一性、目止め効果、およびピンホール発生の指標でもある。
○:裏面が全く染まらない。
△:裏面が少し染まる。
×:裏面が全体的に染まる。
【0037】
(シリコーン密着性)
各試験用試料のアンダーコート層塗工面に、離型剤として溶剤型シリコーン(商品名シリコリースKF−100:荒川化学工業株式会社製)100gに硬化触媒(商品名Silcolease90B、ローヌプーラン社製)4gを添加し、トルエンで7重量%濃度に調製したものを1g/m2(固形分)となるように塗工して離型剤層を形成したのち、130℃で20秒間乾燥させた。後に各試料を20℃、湿度65%で1日放置した後、塗布面を指で10回擦り、離型剤層の剥離状態から離型剤層とアンダーコート層の密着性を以下の基準で評価した。この密着性は、アンダーコート層の平滑性の指標でもある。
○:全く剥離しない。
△:少し剥離する。
×:完全剥離する。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
Claims (4)
- 分子内に第三級アミノ基またはそれらの塩、もしくは第四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性不飽和単量体(A)および非イオン性不飽和単量体(B)を共重合させてなる共重合体、ならびに乳化分散能を有する水溶性重合体(C)を含有してなる共重合体エマルジョンからなる剥離紙用アンダーコート剤。
- 前記共重合体が、カチオン性不飽和単量体(A)1〜30重量%および非イオン性不飽和単量体(B)70〜99重量%を共重合したものである請求項1記載の剥離紙用アンダーコート剤。
- 非イオン性不飽和単量体(B)が、スチレン系化合物および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルである請求項1または2に記載の剥離紙用アンダーコート剤。
- 非イオン性不飽和単量体(B)が、水酸基を含有するエステル置換基を分子内に有する(メタ)アクリル酸エステルである請求項1または2に記載の剥離紙用アンダーコート剤。
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