JP4742787B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板 - Google Patents

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略すことがある。)素子は、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能であるため、画像表示装置への応用が期待され、盛んに研究が行われている。特に有機EL素子は、自己発色により視認性が高いこと、液晶ディスプレイとは異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れること、温度変化の影響が少ないこと、および、視野角が大きいこと等の利点を有することから、近年、画像表示装置における発光素子としての実用化が進んでいる。
有機EL素子を画像表示装置における発光素子として実用化する上で重要なことは、有機EL素子が精細な表示機能を有することとともに、長期安定性を有することである。しかしながら、有機EL素子の中には、一定期間駆動すると、電流−輝度特性等の発光特性が著しく低下するという欠点を有するものがある。
この発光特性の低下原因の代表的なものは、ダークスポットと呼ばれる発光欠陥点の成長である。このダークスポットは、有機EL素子中の酸素あるいは水分による、有機EL素子を構成する各層の構成材料の酸化あるいは凝集に起因するものと考えられている。ダークスポットの成長は、通電中(駆動中)はもちろん、保存中にも進行し、極端な場合には発光面全体に広がる。その成長は、特に、(1)有機EL素子の周囲に存在する酸素あるいは水分により加速され、(2)各層中に吸着物として存在する酸素あるいは水分に影響され、および(3)有機EL素子の作製時に用いる部品に吸着している水分、もしくは製造時等における水分の浸入にも影響されると考えられている。
また、有機EL素子作製時の加熱の際に、有機EL素子を構成する着色層や色変換層等に含まれる色素等の分解によって発生するガスも、ダークスポットの原因となる。
この水分や酸素およびガスの有機EL層への侵入を防止する手法として、透明無機膜や樹脂膜等の透明バリア層を設ける方法が提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
しかしながら、透明無機膜は一般にスパッタリング法や真空蒸着法等により成膜されるものであり、このような方法によってパーティクル等の異物やピンホールのない透明無機膜を得ることは技術的に困難である。このため、透明無機膜では有機EL素子の劣化を防ぐ防湿性、バリア性が不十分である。そこで、透明無機膜を厚膜にすることによってバリア性を高める方法が採用されているが、非常にコストが高くなるという問題がある。
また、透明バリア層として樹脂膜を用いた場合、ピンホールによるダークスポットの発生を防ぐことはできるが、樹脂膜は熱膨張などにより伸び縮みが起きるため、透明電極層形成時や着色層形成時に位置ずれが生じ、透明電極層端部から画素縮小が生じるという問題がある。
特開2002−100469号公報 特開2002−117976号公報 特開2002−134268号公報 特開2002−175880号公報 特開2002−184578号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ダークスポット等の欠陥のない良好な画像表示が可能な有機EL素子用バリア性基板および有機EL表示装置を提供することを主目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、基板と、上記基板上に形成され、蒸着膜である第1無機絶縁層と、上記第1無機絶縁層上に形成され、超微粒子で形成された膜である第2無機絶縁層とを有することを特徴とする有機EL素子用バリア性基板を提供する。
本発明によれば、第2無機絶縁層が超微粒子で形成された膜であるので、蒸着膜である第1無機絶縁層にピンホール等の欠陥が存在する場合でも、超微粒子によりピンホール等の欠陥を塞ぐことができる。このため、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥から水蒸気や酸素等が浸入するのを防ぐことができる。したがって、本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合には、ダークスポットの発生を抑制することが可能である。また、蒸着膜には、ピンホールや異物等の表面欠陥の他に構造欠陥もあり、そのような欠陥部分は構造的に弱い部分となるが、超微粒子のサイズ効果により超微粒子が構造的に弱い部分に入り込むので、蒸着膜の充填密度を向上させバリア性を向上させることができる。
また、第1無機絶縁層上に第2無機絶縁層を設けることにより、上述したように水蒸気や酸素の侵入を防ぐことができるので、バリア性を得るためにスパッタリング法や真空蒸着法により厚膜の透明バリア層を設ける必要がなく、製造コストを削減することができる。
さらに、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機絶縁層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を通常の焼結温度よりも低くすることができ、例えば着色層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。
また本発明においては、上記第1無機絶縁層が、複数の蒸着膜からなるものであってもよい。複数の蒸着膜(第1無機絶縁層)と超微粒子で形成された膜(第2無機絶縁層)とが積層されることにより、バリア性をさらに向上させることができるからである。
さらに本発明においては、上記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機絶縁層を形成する場合には、より低い温度で焼成できるからである。
また、上記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることが好ましい。これらの超微粒子を用いることにより、絶縁性を高めることができるからである。
さらに、上記超微粒子が、表面が酸化された状態である、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることも好ましい。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
さらに、上記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎる超微粒子は製造が難しく、超微粒子の平均粒径が大きすぎると第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となる場合があるからである。
また本発明においては、上記基板と上記第1無機絶縁層との間に、着色層が形成されていてもよい。さらに、上記基板と上記第1無機絶縁層との間に、色変換層が形成されていてもよい。さらには、上記基板と上記第1無機絶縁層との間に、凹凸形状を有する透明保護層が形成されていてもよい。本発明によれば、第1無機絶縁層と第2無機絶縁層とを積層することによりバリア性が発現するので、着色層、色変換層、透明保護層からガスが発生したとしても、ガスの流出を防止することができる。
本発明は、また、基板上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する第1無機絶縁層形成工程と、上記第1無機絶縁層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する第2無機絶縁層形成工程とを有することを特徴とする有機EL素子用バリア性基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、蒸着膜である第1無機絶縁層にピンホール等の欠陥が存在する場合でも、その上に超微粒子分散液を塗布することにより第2無機絶縁層を形成するので、超微粒子によりピンホール等の欠陥を塞ぐことができる。そのため、バリア性に優れる有機EL素子用バリア性基板を得ることができる。また、従来のようにスパッタリング法や真空蒸着法により厚膜の透明バリア層を設ける必要がなく、製造コストを削減することができ、歩留まりを向上させることができる。
さらに本発明によれば、第2無機絶縁層形成工程にて、超微粒子特有のサイズ効果により、通常の温度よりも低温で焼結することができる。これにより、例えば着色層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。
上記発明においては、上記第2無機絶縁層形成工程にて、上記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することが好ましい。これにより、超微粒子の焼結を十分に進行させ、緻密な膜を形成できるからである。
また本発明においては、上記第1無機絶縁層形成工程にて、基板上に下層の蒸着膜を形成し、上記下層の蒸着膜表面を研磨した後に、上記下層の蒸着膜上に上層の蒸着膜を形成することができる。例えば下層の蒸着膜表面に異物が存在する場合、研磨により異物を除去することができ、その上にさらに蒸着膜を形成することにより異物があった部分のバリア性を補強することができるからである。
さらに本発明においては、上記溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましい。溶剤の沸点が比較的高ければ、超微粒子分散液塗布後の乾燥時にて溶剤が一気に蒸発するのを防ぐことができ、これにより超微粒子が凝集して膜の平坦性が損なわれるのを回避することができるからである。
また本発明は、上述した有機EL素子用バリア性基板と、上記有機EL素子用バリア性基板の第2無機絶縁層上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とする有機EL表示装置を提供する。
本発明の有機EL表示装置は、上述した有機EL素子用バリア性基板を用いるので、ダークスポット等の欠陥の発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能である。また、従来のようにスパッタリング法や真空蒸着法により厚膜の透明バリア層を設ける必要がないため、安価に有機EL表示装置を提供できる。
本発明によれば、蒸着膜である第1無機絶縁層上に超微粒子で形成された膜である第2無機絶縁層が形成されているので、超微粒子によって第1無機絶縁層に存在するピンホール等の欠陥を塞ぐことができ、着色層等から発生するガスの流出および水蒸気や酸素等の浸入を防ぐことができるという効果を奏する。したがって、本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合には、ダークスポットの発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能となる。
以下、本発明の有機EL素子用バリア性基板およびその製造方法、ならびに有機EL表示装置について詳細に説明する。
A.有機EL素子用バリア性基板
まず、本発明の有機EL素子用バリア性基板について説明する。
本発明の有機EL素子用バリア性基板は、基板と、上記基板上に形成され、蒸着膜である第1無機絶縁層と、上記第1無機絶縁層上に形成され、超微粒子で形成された膜である第2無機絶縁層とを有することを特徴とするものである。
本発明の有機EL素子用バリア性基板について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子用バリア性基板の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の有機EL素子用バリア性基板10は、基板1上に第1無機絶縁層2および第2無機絶縁層3が順次積層されたものである。
第1無機絶縁層は蒸着膜であり、第2無機絶縁層は超微粒子で形成された膜である。一般にスパッタリング法や真空蒸着法などの蒸着法により形成された蒸着膜はパーティクル等の異物やピンホールが存在する場合が多いが、本発明においては、蒸着膜である第1無機絶縁層上に超微粒子で形成された膜である第2無機絶縁層を積層するので、蒸着膜の製造面での欠陥やミクロ的な構造欠陥等を超微粒子で塞ぐことができ、水蒸気や酸素に対してバリア性を得ることができる。
また、蒸着膜には、ピンホールや異物等の表面欠陥の他に構造欠陥もあり、そのような欠陥部分は構造的に弱い部分となる。また、蒸着膜の異物を研磨により除去し、さらにその上に蒸着膜を成膜した場合には、ピンホールのない層とすることができるが、研磨より異物が除去された部分は、上層の蒸着膜で覆われているとしても構造的に弱い。これに対し、本発明によれば、超微粒子のサイズ効果により超微粒子が構造的に弱い部分に入り込むので、蒸着膜の充填密度を向上させバリア性を向上させることができる。
本発明においては、基板と第1無機絶縁層との間に有機材料で形成された層が形成されていることが好ましい。有機材料で形成された層が高温に曝されると有機材料の分解等によってガスが発生する場合があり、ダークスポットの原因となるが、第1無機絶縁層および第2無機絶縁層が積層されていることにより、このようなガスに対してもバリア性が発揮されるからである。有機材料で形成された層としては、例えば着色層、色変換層、遮光部、平坦化層、透明保護層などが挙げられる。本発明の有機EL素子用バリア性基板は、着色層等から発生するガスに対しても優れたバリア性を有するのである。
したがって、本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合、ダークスポットのない良好な画像表示が可能となる。
また、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機絶縁層を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により、焼結温度を、通常の焼結温度と比較して低くすることができ、例えば着色層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。これにより、有機材料で形成された層、例えば着色層、色変換層、遮光部、平坦化層、透明保護層等に悪影響を与えることなく、またこれらの層に用いられる材料の選択肢を狭めることなく、バリア性を向上させることができる。
さらに本発明においては、第1無機絶縁層および第2無機絶縁層を設けることにより、水蒸気や酸素、および着色層等から発生するガスに対するバリア性を得ることができるので、従来のようにスパッタリング法や真空蒸着法により厚膜の透明バリア層を設ける必要がないため、低コスト化および歩留まり向上が図れる。
以下、このような有機EL素子用バリア性基板の各構成について説明する。
1.第2無機絶縁層
本発明に用いられる第2無機絶縁層は、後述する第1無機絶縁層上に形成され、超微粒子で形成された膜である。
ここで、「超微粒子で形成された膜」とは、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより得られる膜をいう。超微粒子で形成された膜であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(倍率:5万倍以上)により確認することができる。図2(a),(b)に超微粒子で形成された膜の断面および上面のSEM写真の一例をそれぞれ示す。また比較として、図3にスパッタリング法で形成された蒸着膜の断面のSEM写真の一例を示す。図3に例示するように、蒸着膜では断面にて柱状の粒子が確認できる。一方、図2に例示するように、超微粒子で形成された膜では、上面および断面のいずれにおいても柱状の粒子を確認できない。したがって、第2無機絶縁層の断面のSEM写真において、柱状の粒子を確認できない場合には、第2無機絶縁層は超微粒子で形成された膜であるということができる。
蒸着膜上に超微粒子で形成された膜が形成されている場合、蒸着膜と超微粒子で形成された膜とは、上記観察写真にて判別することができるが、次のように判別することもできる。超微粒子で形成された膜は塗膜であるので、例えば着色層等による段差がある場合には、段差部分には液溜りが出来るため塗膜が厚くなる。それに対して、蒸着膜は段差部分で厚くなることはないので、第2無機絶縁層が超微粒子で形成された塗膜であることの判断はできる。
また、ゾルゲル法により形成される膜も、柱状の粒子を確認できないものではあるが、ゾルゲル法では分子レベルで液体である塗工液を塗布し硬化させて成膜するのに対し、本発明においては超微粒子を焼結させて成膜するため、ゾルゲル法により形成される膜と、超微粒子で形成された膜とでは、構造的に異なるものとなる。なお、膜の構造が異なることは、高倍率のSEM観察により確認することができる。
また、「超微粒子」とは、平均粒径が100nm以下の無機材料からなる微粒子であり、分散媒中で個々に独立して均一に分散する微粒子をいう。なお、このような超微粒子については、特開2002−121437公報や特開2005−81501公報等を参照することができる。
本発明に用いられる超微粒子は、絶縁性を有するものであればよいが、さらに透明性を有することが好ましい。本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合には、基板側から光が取り出されるからである。このような超微粒子としては、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機酸化物および無機窒化物の混合系であってもよい。
これらの中でも、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。これらの超微粒子を用いることにより、絶縁性を高めることができるからである。また、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより第2無機絶縁層を形成する場合には、酸化インジウムの超微粒子を用いることにより、焼結温度をより低温にすることができるからである。また、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素の超微粒子で形成された膜は、第1無機絶縁層等との密着性が良好であるからである。
また、上記超微粒子としては、表面が酸化された状態である金属の超微粒子を用いることもできる。具体的に、金属としては、In、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等が挙げられる。これらの中でも、In(インジウム)、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
また、上記超微粒子は、焼結温度が350℃以下であることが好ましい。ここで、焼結とは、超微粒子の集合体を高温に加熱した場合に、焼き固まって緻密な多結晶体となる現象をいう。超微粒子は、熱力学的に非平衡な状態にあり、表面積を減少する方向に物質移動が起こり、その結果、粒子と粒子の間に結合が生じて緻密化する。つまり、焼結の駆動力は、系の表面エネルギーを最小にしようとする力である。また、焼結温度とは、超微粒子の溶融点以下の温度で超微粒子の集合体を加熱したときに、超微粒子同士が緻密化して焼き固まる温度をいう。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、第2無機絶縁層形成時の焼成温度をより低温にできる。また、超微粒子の焼結温度は低ければ低いほどよいが、通常は下限が180℃程度である。金属の中には融点が180℃未満であるものもあり、そのような金属を含む超微粒子の焼結温度は通常180℃未満となるが、融点が180℃未満である金属は、非常に酸化しやすく、焼結温度の上昇につながるため、焼結温度の下限は上記範囲とする。
ここで、上記焼結温度は、示差熱分析(DTA:differential thermal analysis)により測定することができる。DTAでは、試料と基準物質(一般的にはアルミナ)との温度差を測定して、転移温度を求めることができるものであり、試料および基準物質に熱を加えたときに生じる温度差(試料と基準物質との温度差で判断する)により、焼結温度を求めることができる。すなわち、試料および基準物質を同一雰囲気にて加熱した場合に、基準物質の温度が上昇しているのに対して、試料の温度が上昇していない場合には、超微粒子の焼結に熱が費やされており、吸熱現象が起きているということができる。したがって、吸熱現象が見られる温度、すなわちDTA曲線における吸熱開始温度を、本発明でいう焼結温度とする。
なお、上記焼結温度の測定には、リガク製のTG−DTA装置(TG 8120)を用いることとする。
さらに、上記超微粒子は、融点がおおよそ700℃以下である金属を含むことが好ましい。金属単体としての融点が上記範囲のように比較的低ければ、超微粒子の焼結温度も比較的低くなると予想されるからである。このような金属としては、例えばAl(660℃)、In(156.4℃)、Mg(651℃)、Sn(231.85℃)、Zn(419.43℃)、Pb(327.5℃)、Na(97.5℃)、Li(186℃)、K(62.3℃)等が挙げられる。なお、括弧内の数字は融点である。
上記超微粒子は、後述する第1無機絶縁層に用いられる材料と同一の材質であってもよく異なる材質であってもよいが、同一の材質であることが好ましい。同一の材質であれば、膜応力を低減することができるとともに、密着性が良好であるからである。
また、超微粒子の平均粒径としては、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが可能であればよく、具体的には0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜50nm、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。平均粒径が小さすぎるものは製造が難しく、一方、平均粒径が大きすぎると、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となる場合があり、また超微粒子特有のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
なお、上記平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(高倍率)により確認することができる。
また、本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合には、基板側から光が取り出されるため、第2無機絶縁層は透明性を有することが好ましい。具体的には、第2無機絶縁層の可視光領域における透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。
なお、上記透過率は、波長380nm〜800nmの範囲内において、島津製作所(株)社製 UV−3100を用いて測定した値の平均値である。
上記第2無機絶縁層の膜厚としては、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことができ、上記の透明性を満たすような厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には5nm〜2000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは50nm〜500nmの範囲内である。第2無機絶縁層の膜厚が厚すぎると、透過率が低下したり、また第1無機絶縁層からの剥離が生じたりする可能性があるからである。一方、第2無機絶縁層の膜厚が薄すぎると、第1無機絶縁層に存在するピンホール等を塞ぐことが困難となるからである。
本発明においては、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することによって第2無機絶縁層を形成することが好ましい。すなわち、第2無機絶縁層は、超微粒子で形成された塗膜であることが好ましい。このような方法で第2無機絶縁層を形成することにより、超微粒子で効果的にピンホールを塞ぐことができるとともに、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を例えば着色層の耐熱温度以下まで低くすることができる。
なお、第2無機絶縁層の形成方法については、後述する「B.有機EL素子用バリア性基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
2.第1無機絶縁層
本発明に用いられる第1無機絶縁層は、蒸着膜である。
第1無機絶縁層の形成方法としては、蒸着法であれば特に限定されるものではない。なお、第1無機絶縁層の形成方法については、後述する「B.有機EL素子用バリア性基板の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
上記第1無機絶縁層は、絶縁性を有していればよいが、さらに透明性を有することが好ましい。このような第1無機絶縁層に用いられる材料としては、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの材料は、基板や第2無機絶縁層等との密着性が良好であるからである。
また、第1無機絶縁層は、単層の蒸着膜であってもよく、複数の蒸着膜が積層されたものであってもよい。図4に、二層の蒸着膜12aおよび12bが積層された第1無機絶縁層2を有する有機EL素子用バリア性基板10の例を示す。図4に例示するように下層の蒸着膜12aにピンホールP1が存在する場合、図示しないが例えば蒸着膜12a上に直接第2無機絶縁層を形成すると、ピンホールP1部分のバリア性が低下する可能性がある。一方、図4に例示するように二層の蒸着膜12aおよび12bが積層されていると、下層の蒸着膜12aのピンホールP1部分には上層の蒸着膜12bが形成され、さらにその上に第2無機絶縁層3が形成されているので、ピンホールP1部分のバリア性の低下を防ぐことができる。また、上層の蒸着膜12bにピンホールP2が存在しても、上層の蒸着膜12bのピンホールP2部分の下には下層の蒸着膜12aが形成され、上には第2無機絶縁層3が形成されているので、同様にピンホールP2部分のバリア性の低下を防ぐことができる。複数の蒸着膜を積層する場合、上下の蒸着膜で同一部分にピンホールが生じるのは極めて稀であると考えられるので、複数の蒸着膜からなる第1無機絶縁層と、第2無機絶縁層とを積層することにより、さらにバリア性を向上させることが可能である。蒸着膜は、異物等によるピンホールなどの表面欠陥の他に、構造欠陥などもあり、上層の蒸着膜を形成しても下層の蒸着膜のピンホール部分は、構造的に弱い部分となるが、そのような構造的に弱い部分に超微粒子が入り込むので、蒸着膜の充填密度が向上しバリア性が向上するのである。
第1無機絶縁層が複数の蒸着膜が積層されたものである場合、蒸着膜の積層数としては特に限定されるものではないが、通常は2層〜4層程度であり、好ましくは2層または3層である。積層数が多すぎると透過率が低下し、また高コストになるからである。この際、積層する蒸着膜の組み合わせとしては、同種、異種を問わない。
本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合には、基板側から光が取り出されるため、第1無機絶縁層は透明性を有することが好ましい。具体的には、第1無機絶縁層の可視光領域における透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。
なお、上記透過率の測定方法については、上記第2無機絶縁層の項に記載した方法と同様である。
上記第1無機絶縁層の膜厚は、上記の透明性を満たすような厚みであれば特に限定されるものではなく、上述した材料により適宜選択される。通常は5nm〜5000nmの範囲内であり、好ましくは5nm〜500nmの範囲内である。また、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を用いた場合は、10nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。第1無機絶縁層の膜厚が薄すぎると、バリア性が低下するおそれがあるからである。一方、第1無機絶縁層の膜厚が厚すぎると、第1無機絶縁層形成時にクラック等が生じる可能性があり、また透過率が低下する場合があるからである。
3.有機材料で形成された層
本発明においては、基板と第1無機絶縁層との間に有機材料で形成された層が形成されていることが好ましい。本発明の有機EL素子用バリア性基板は、有機材料で形成された層から発生するガスに対しても優れたバリア性を有するからである。有機材料で形成された層としては、例えば着色層、色変換層、遮光部、平坦化層、透明保護層などが挙げられる。以下、これらの層について説明する。
(1)着色層
本発明においては、図5に例示するように基板1と第1無機絶縁層2との間に着色層4が形成されていてもよい。
着色層は、本発明の有機EL素子用バリア性基板を用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL表示装置の発光層から発せられた光の色調を変化させる層、または後述する色変換層を透過した光の色調をさらに調整する層である。図5に例示するように、一般に、着色層4は赤色着色パターン4R、緑色着色パターン4Gおよび青色着色パターン4Bから構成される。色変換層が設けられている場合には、色変換層の各色変換パターンと対応した位置に、それぞれ各着色パターンが形成される。このような着色層が形成されることにより、本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合、高純度な発色とすることができ、色再現性の高いものとすることができる。
着色層は、層に含まれる色素等が分解してガスが発生することがあり、ダークスポットの要因となるが、本発明においては着色層上に第1無機絶縁層および第2無機絶縁層が設けられていることにより、着色層から発生したガスに対してもバリア性が得られる。
着色層の形成材料としては、一般的にカラーフィルタに用いることが可能な顔料やバインダー樹脂を用いることができる。
赤色着色パターンに用いられる顔料としては、例えばペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色パターンに用いられる顔料としては、例えばハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色パターンに用いられる顔料としては、例えば銅フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記顔料は、各着色パターン中にそれぞれ通常5〜50重量%の範囲内で含有される。
また、着色層に用いられるバインダー樹脂としては、可視光透過率が50%以上の透明樹脂であることが好ましい。透明樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。また、フォトリソグラフィー法を用いて着色層を形成する場合には、透明樹脂として感光性樹脂が用いられ、例えばアクリレート系、メタクリレート系、ポリケイ皮酸ビニル系、環状ゴム系等の反応性ビニル基を有する電離放射線硬化性樹脂(電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂)が用いられる。
着色層の形成方法としては、一般的なカラーフィルタの形成方法、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法等を用いることができる。
(2)色変換層
本発明においては、基板と第1無機絶縁層との間に色変換層が形成されていてもよい。図6に例示するように、上記着色層4が形成されている場合には、着色層4と第1無機絶縁層2との間に色変換層5(赤色変換パターン5R、緑色変換パターン5G、青色変換パターン5B)が形成される。
色変換層は、上記着色層と同様に、色変換層に含まれる色素等が分解してガスが発生することがあり、ダークスポットの要因となるが、本発明においては色変換層上に第1無機絶縁層および第2無機絶縁層が設けられていることにより、着色層から発生したガスだけでなく、色変換層から発生したガスに対してもバリア性を得ることができる。
本発明に用いられる色変換層は、本発明の有機EL素子用バリア性基板を用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL素子の発光層から発せられる光を吸収し、可視光領域蛍光を発光する蛍光材料を含有する層であり、発光層からの光を赤色、緑色、青色とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。色変換層は、例えば赤、緑、青の3色の蛍光をそれぞれ発光する色変換パターンから構成されていてもよく、また青色発光層を用いた場合には、青色変換パターンの代わりに透明樹脂パターンが形成されていてもよい。
色変換層は、通常、発光層からの光を吸収し、蛍光を発光する有機蛍光色素とバインダー樹脂とを含有するものである。
色変換層に用いられる蛍光色素は、発光層から発せられる近紫外領域または可視領域の光、特に青色または青緑色領域の光を吸収して異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。通常、発光層として青色発光層が用いられることから、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の1種類以上を用いることが好ましく、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の1種類以上と組み合わせることが好ましい。
すなわち、光源として青色ないし青緑色領域の光を発光する発光層を用いる場合、発光層からの光を単なる赤色の着色層に通して赤色領域の光を得ようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないために極めて暗い光になってしまう。したがって、発光層からの青色ないし青緑色領域の光を、蛍光色素によって赤色領域の光に変換することにより、十分な強度を有する赤色領域の光の出力が可能となるからである。
一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、発光層からの光を別の蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力してもよい。また、発光層の発光が緑色領域の光を十分に含む場合には、発光層からの光を単に緑色の着色層を通して出力してもよい。
さらに、青色領域の光に関しては、発光層の光を蛍光色素を用いて変換させて出力させてもよいが、発光層の光を単なる青色の着色層に通して出力させることが好ましい。
発光層から発する青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジニウム パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
また、発光層から発する青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えば3−(2´−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2´−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2´−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
なお、蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、蛍光顔料としてもよい。また、これらの蛍光色素や蛍光顔料(以下、上記2つを合わせて蛍光色素と総称する。)は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記蛍光色素は、各色変換パターンに対して、その色変換パターンの重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%含有される。蛍光色素の含有量が少なすぎると十分な波長変換を行うことができず、一方、蛍光色素の含有量が多すぎると、濃度消光等の効果により色変換効率が低下する可能性があるからである。
また、色変換層に用いられるバインダー樹脂としては、可視光透過率が50%以上の透明樹脂であることが好ましい。透明樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。また、フォトリソグラフィー法を用いて色変換層を形成する場合には、透明樹脂として感光性樹脂が用いられ、例えばアクリレート系、メタクリレート系、ポリケイ皮酸ビニル系、環状ゴム系等の反応性ビニル基を有する電離放射線硬化性樹脂(電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂)が用いられる。
色変換層の形成方法としては、一般的なカラーフィルタの形成方法、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法等を用いることができる。
(3)遮光部
本発明においては、着色層を構成する各着色パターン間に遮光部が形成されていてもよい。ブラックマトリクス等の遮光部を設けることにより、本発明の有機EL素子用バリア性基板を用いて有機EL表示装置とした際に、コントラストを向上させることが可能となるからである。
遮光部の形成材料としては、例えばカーボンブラックやチタンブラック等の黒色着色剤を含有する樹脂等が挙げられる。
また、遮光部の形成方法としては、例えばフォトリソグラフィー法等を用いることができる。
上記遮光部の厚みとしては、0.5μm〜2μm程度であることが好ましい。
ここで、上記遮光部に用いられる黒色着色剤を含有する樹脂は、遮光性を有するものであればよいので、着色層とは異なり十分な熱処理を行うことができる。このため、遮光部形成時に脱ガス成分を除去することができる。
また、遮光部は、有機材料で形成されていなくてもよく、例えばクロム、酸化クロム、窒化クロム等を用いて形成することもできる。
このような遮光部の形成方法としては、例えばスパッタリング法や真空蒸着法等により薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法を利用してパターン状に形成することができる。また、無電界メッキ法や印刷法等を用いて形成することもできる。
クロム等を用いた遮光部の厚みとしては、0.2μm〜0.4μm程度であることが好ましい。
(4)平坦化層
本発明においては、着色層や色変換層上に平坦化層が形成されていてもよい。平坦化層は、着色層や色変換層を保護する目的、および、着色層や色変換層の表面の凹凸を平坦にする目的等で設けられる。
平坦化層は、上記の着色層や色変換層と同様に、平坦化層に含まれる有機成分等が分解してガスが発生することがあり、ダークスポットの要因となるが、本発明においては平坦化層上に第1無機絶縁層および第2無機絶縁層が設けられていることにより、着色層や色変換層から発生したガスだけでなく、平坦化層から発生したガスに対してもバリア性を得ることができる。
本発明に用いられる平坦化層は、透明樹脂を用いて形成することができる。透明樹脂としては、上記の着色層や色変換層のバインダー樹脂として使用されるものが好ましいものとして挙げられる。
平坦化層の膜厚としては、着色層表面を平坦化することが可能であればよく、具体的には1μm〜10μmの範囲内で設定することができ、好ましくは2μm〜4μmの範囲内である。また、色変換層が形成されている場合は、色変換層の膜厚が比較的厚いので、平坦化層の膜厚は3μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5μm〜10μmの範囲内である。
平坦化層の形成方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、バーコート法、キャスト法、インクジェット法等が挙げられる。
(5)透明保護層
本発明においては、図7に例示するように基板1と第1無機絶縁層2との間に、凹凸形状を有する透明保護層6が形成されていてもよい。本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いる場合、第2無機絶縁層上に透明電極層や発光層等が形成されるが、透明保護層が凹凸形状であるので、発光層等にも凹凸形状が反映されることになり、発光面積を増加させることができる。これにより輝度を高めることができる。
また、上記の着色層や色変換層が形成されている場合には、着色層や色変換層と第1無機絶縁層との間に透明保護層が形成される。
透明保護層の形成材料としては、可視光透過率が50%以上の透明樹脂を用いることが好ましく、例えばアクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などを挙げることができる。また、上記透明樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
透明保護層の凹凸形状としては、発光面積を増大させることができ、厚みムラがないように発光層を形成できるような形状であれば特に限定されるものではないが、特にレンズ形状であることが好ましい。発光面積を増加させる効果に加えて、集光効果が得られるからである。
レンズ形状としては、例えば凸レンズ形状であっても凹レンズ形状であってもよく、また他のレンズ形状であってもよい。また、凸レンズ形状の場合は、球面平凸レンズのような形状であっても円筒面平凸レンズのような形状であってもよい。凹レンズ形状の場合も、球面平凹レンズのような形状であっても円筒面平凹レンズのような形状であってもよい。
また、透明保護層は、上記の着色層や色変換層が形成されている場合、各着色パターンや各色変換パターン毎に凹凸、中でもレンズが配置されたものであることが好ましい。この場合、特に凸レンズ形状であることが好ましい。本発明の有機EL素子用バリア性基板を有機EL表示装置に用いた場合には、発光層から全方位に出射される光を対応する着色パターンや色変換パターンに集光することができ、光の利用効率を向上させ輝度をより高めることができるからである。さらに、対応する着色パターンや色変換パターンに集光することができるので、混色を防ぐことができ、色純度を向上させることが可能となる。
凹凸の厚みとしては、各着色パターンや各色変換パターンの大きさ、使用する樹脂材料の屈折率等を考慮して適宜調整されるものであり、具体的には1μm〜20μm程度とすることができる。凹凸の厚みが大きすぎると、発光層に厚みムラが発生して安定した発光が得られない場合があるからである。
また、凹凸のピッチとしては、各着色パターンや各色変換パターンの大きさ、使用する樹脂材料の屈折率等を考慮して適宜設定されるものであり、具体的に隣接する凹凸の中心部間の距離が0.1μm〜5μm程度である。ピッチが小さすぎると凹凸の形成が困難となり、またピッチが大きすぎると発光面積を増加させる効果が十分に得られない場合があるからである。
上記凹凸形状がレンズ形状である場合、レンズ形状の高さ(中心厚)としては、各着色パターンや各色変換パターンの大きさ、使用する樹脂材料の屈折率等を考慮して適宜調整される。例えば、発光層から全方位に出射される光が、対応する着色パターンや色変換パターンに集光されるように適宜設定することができる。なお、焦点位置については特に限定されるものではない。通常、レンズ形状の高さは1μm〜20μm程度である。レンズ形状の高さが大きすぎると、曲率が大きくなり、発光層に厚みムラが発生して安定した発光が得られない場合があるからである。
また、レンズ形状のピッチとしては、各着色パターンや各色変換パターンの大きさ、使用する樹脂材料の屈折率等を考慮して適宜設定され、通常は隣接するレンズ形状の頂点間の距離が0.1μm〜5μm程度である。レンズ形状のピッチが小さすぎるとレンズ形状の形成が困難となり、またレンズ形状のピッチが大きすぎるとレンズ形状を設ける効果が十分に得られない場合があるからである。
このようなレンズ形状を有する透明保護層は、例えばレンズ形状の金型を準備し、この金型に上記の樹脂材料を充填し、基板と接するように加圧し、樹脂材料を硬化させて形成することができる。また例えば、レンズ形状の金型を準備し、この金型に上記の樹脂材料を充填して硬化させることにより、レンズ形状を有する透明樹脂シートを作成し、この透明樹脂シートを基板上に直接、または粘着剤を介して貼着することにより、透明保護層を形成することができる。さらに、基板上に上記の樹脂材料を塗布し、その後、レンズ形状の金型を押圧してプレス加工することにより、透明保護層を形成することができる。
4.基板
本発明に用いられる基板は、本発明の有機EL素子用バリア性基板を用いて有機EL表示装置とした際に基板側から光を取り出すため、透明であることが好ましい。また、基板は、耐溶媒性、耐熱性を有し、寸法安定性に優れているものであることが好ましい。これにより、基板上に第1無機絶縁層および第2無機絶縁層等を形成する際にも安定なものとすることができるからである。
透明な基板としては、例えばガラス基板や、有機材料で形成されたフィルム状やシート状のもの等を用いることができる。
ガラス基板は、可視光に対して透過性の高いものであれば特に限定されるものではなく、例えば未加工のガラス基板であってもよく、また加工されたガラス基板等であってもよい。またガラス基板としては、アルカリガラスおよび無アルカリガラスのどちらも使用可能であるが、不純物が問題とされる場合には、例えばパイレックス(登録商標)ガラス等の無アルカリガラスを用いることが好ましい。加工されたガラス基板の種類は、本発明の有機EL素子用バリア性基板の用途に応じて適宜選択されるものであり、例えば透明なガラス基板に塗布加工をしたものや、段差加工を施したもの等が挙げられる。
上記ガラス基板の厚みは、20μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。中でも、フレキシブルな基板として使用する場合には20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、リジッドな基板として使用する場合には200μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
また、透明な基板に用いられる有機材料としては、例えばポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、UV硬化型メタクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
さらに、透明な基板としては、上述した有機材料と、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂等と2種以上併せて用いることができる。
上記のような有機材料を用いて透明な基板とする場合には、基板の厚みは、10μm〜500μmの範囲内、中でも50〜400μmの範囲内、特に100〜300μmの範囲内であることが好ましい。基板の厚みが厚すぎると、耐衝撃性に劣ることや、巻き取り時に巻き取りが困難となり、バリア性が劣化する可能性があるからである。また、基板の膜厚みが薄すぎると、機械適性が悪く、バリア性が低下する可能性があるからである。
また、本発明においては、基板を洗浄して用いることが好ましく、その洗浄方法としては、酸素、オゾン等による紫外光照射処理や、プラズマ処理、アルゴンスパッタ処理等を行うことが好ましい。これにより、水分や酸素の吸着のない状態とすることができ、ダークスポットの低減や有機EL素子の長寿命化を図ることが可能となるからである。
5.その他
本発明においては、第1無機絶縁層上に第2無機絶縁層を設けることにより、水蒸気や酸素、および着色層等から発生するガスに対するバリア性を得ることができる。本発明の有機EL素子用バリア性基板のバリア性としては、酸素ガス透過率が1cc/m/day/atm以下、中でも0.5cc/m/day/atm以下であることが好ましい。また、水蒸気透過率が、1g/m/day以下、中でも0.5g/m/day以下であることが好ましい。酸素ガス透過率および水蒸気透過率が上述した範囲であることにより、高いバリア性を実現することができ、本発明の有機EL素子用バリア性基板を、酸素や水蒸気、着色層等からのガスに弱い部材を有する有機EL素子に好適に用いることができるからである。
なお、上記酸素ガス透過率は、測定温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した値である。また、上記水蒸気透過率は、測定温度37.8℃、湿度100%Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31:商品名)を用いて測定した値である。
B.有機EL素子用バリア性基板の製造方法
次に、本発明の有機EL素子用バリア性基板の製造方法について説明する。
本発明の有機EL素子用バリア性基板の製造方法は、基板上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する第1無機絶縁層形成工程と、上記第1無機絶縁層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する第2無機絶縁層形成工程とを有することを特徴とするものである。
図8は、本発明の有機EL素子用バリア性基板の製造方法の一例を示す工程図である。本発明においては、まず基板1上に蒸着法により蒸着膜を形成して第1無機絶縁層2とする(第1無機絶縁層形成工程、図8(a))。次に、第1無機絶縁層2上に、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液23を塗布し、焼成して、第2無機絶縁層3を形成する(第2無機絶縁層形成工程、図8(b),(c))。
本発明によれば、蒸着膜である第1無機絶縁層にピンホール等の欠陥が存在する場合でも、第1無機絶縁層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布して第2無機絶縁層を形成するので、超微粒子により第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことができる。また、塗布によるレベリング性によっても第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を効果的に塞ぐことができるので、バリア性に優れる有機EL素子用バリア性基板を得ることができる。
さらに、第2無機絶縁層を形成する際、超微粒子が、一般的な温度よりもはるかに低温で緻密に焼結するため、例えば着色層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。
以下、本発明の有機EL素子用バリア性基板の製造方法の各工程について説明する。
1.第1無機絶縁層形成工程
本発明における第1無機絶縁層形成工程は、基板上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する工程である。
第1無機絶縁層の形成方法としては、蒸着法であれば特に限定されるものではなく、PVD法(物理的蒸着法)およびCVD法(化学的蒸着法)のいずれであってもよいが、中でもPVD法が好ましく用いられる。PVD法で形成された蒸着膜は、CVD法に比べてピンホール等の欠陥が生じやすいが、本発明においては第2無機絶縁層中の超微粒子によりピンホール等の欠陥を塞ぐことができるので、本発明の効果が顕著に発揮されるからである。また、CVD法に比べてPVD法はコスト的に有利である。
PVD法としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの一般的な方法が用いられる。
また本工程においては、複数の蒸着膜を積層して第1無機絶縁層としてもよい。複数の蒸着膜を積層することにより、バリア性を高めることができるからである。なお、蒸着膜の積層数については、上記「A.有機EL素子用バリア性基板」の第1無機絶縁層の項に記載したものと同様である。
この際、ピンホールがないように蒸着膜を積層することが好ましい。具体的には、基板上に下層の蒸着膜を形成し、下層の蒸着膜表面を研磨した後に、その上に上層の蒸着膜を形成することが好ましい。例えば図9(a)に示すように基板1上に蒸着膜12aを形成したときに、この蒸着膜12a表面に異物31が存在する場合には、蒸着膜12表面をサンドペーパー32等を用いて研磨することによって、図9(b)に例示するように異物31を除去することができる。そして、図9(c)に例示するように蒸着膜12a上にさらに蒸着膜12bを積層することで、異物31が存在していた部分のバリア性を補強することができる。次いで、図9(d)に例示するように二層の蒸着膜12aおよび12bからなる第1無機絶縁層2上に第2無機絶縁層3を形成することによって、バリア性を得ることができる。
また、ピンホールがないように蒸着膜を積層するには、上述したように二層の蒸着膜を積層する以外にも、研磨した蒸着膜上にさらに複数層の蒸着膜を形成し、多層化してもよい。
研磨方法としては、例えば適当な砥粒をシート上に散布して接着したサンドペーパー等を用いて行なう方法や、化学的研摩法もしくは機械的研摩法、またはそれらを併用したケミカルメカニカルポリッシング(CMP)等を用いることができる。
化学的研摩法は、例えば布、不織布、もしくはポリウレタン樹脂等の発泡体からなる研摩部材に、研摩剤としてエッチング性の液体を供給して行うものである。
機械的研摩法は、例えば布、不織布、もしくはポリウレタン樹脂等の発泡体を研摩部材とし、コロイダルシリカもしくは酸化セリウムの微粉末を研摩剤として含浸させて用いるか、あるいは研摩剤としてコロイダルシリカもしくは酸化セリウムを分散させた分散液を供給して行なうものである。
上記いずれの方法においても、研磨は、対象物を回転させる等して対象物と研磨部材とを相対的に移動させつつ、蒸着膜表面に研摩部材を接触させ、必要に応じて研摩剤を供給しながら行なうことが好ましい。また、異物がすべて除去されるまで研磨を行なうことがより好ましい。
2.第2無機絶縁層形成工程
本発明における第2無機絶縁層形成工程は、上記第1無機絶縁層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する工程である。
本工程は、超微粒子の種類により2つの態様に分けることができる。第1態様は、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子を含有する超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する場合である。第2態様は、金属の超微粒子を含有する超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する場合であり、焼成時に酸化および焼結を進行させるものである。
以下、各態様に分けて説明する。
(1)第1態様
本態様においては、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子を溶剤に分散させた超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する。すなわち、本態様の第2無機絶縁層形成工程は、超微粒子分散液を調製する超微粒子分散液調製工程と、この超微粒子分散液を塗布する塗布工程と、この塗布工程で得られた塗膜を焼成する焼成工程とを有する。以下、各工程について説明する。
(i)超微粒子分散液調製工程
本態様に用いられる超微粒子分散液は、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子を溶剤に分散させることにより調製される。
なお、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子については、上記「A.有機EL素子用バリア性基板」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、超微粒子分散液に用いられる超微粒子の平均粒径は、レーザー法により測定した値とする。平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。なお、上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、湿式還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。
ガス中蒸発法では、ガス雰囲気中でかつ溶剤の蒸気の共存する気相中で金属もしくはケイ素等を蒸発させ、蒸発した金属もしくはケイ素等を反応ガス(酸素、窒素等)と接触させて、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物等を形成し、これらを均一な超微粒子に凝縮させて溶媒中に分散し、分散液を得る方法である。このガス中蒸発法では、粒度の揃った超微粒子を得ることができる。ガス中蒸発法により得られた超微粒子を原料として、超微粒子分散液を調製するには、超微粒子分散液に使用する溶剤で置換を行えばよい。また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。
また例えば、以下のようにして酸化インジウムの超微粒子を作製することもできる。
塩化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム、酢酸インジウム、シュウ酸インジウム等のインジウム塩の水溶液を所定の温度に保持し、この水溶液と所定温度に保持されたアンモニウム化合物やアルカリ金属化合物等のアルカリ水溶液とを混合し、所定のpHで所定時間共沈反応を行い、水酸化物を沈殿させる。その後、所望により沈殿物をイオン交換水により繰返し傾斜洗浄し、上澄み液の電気伝導度が所定の値以下になった時点で、沈殿したインジウムの共沈水酸化物を濾別する。次いで、この共沈水酸化物ケーキを大気中で350〜800℃、好ましくは500〜800℃の温度で焼成処理し、酸化インジウム超微粒子を作製する。焼成後の粒子は凝集しているので、粉砕してその凝集粒子をほぐすことが好ましい。
上記共沈反応において、反応温度は一般に25〜70℃であり、反応時間は反応温度に依存するが、一般に30〜120分間であり、反応終了時のpHは5〜11である。
また、超微粒子分散液に用いられる溶剤としては、使用する超微粒子によって適宜選択されるものであり、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状アルカン;などを挙げることができる。さらに、水を用いることもできる。
これらは、単独で用いても、混合溶剤として用いてもよい。例えば、長鎖アルカンの混合物であるミネラルスピリットであってもよい。
例えば上述の方法により得られた酸化インジウム超微粒子を用いて超微粒子分散液を調製する際に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、4−ヒドロキシ−4メチル−2ペンタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのアルキルエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;などが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で、もしくは2種以上を混合して使用することができる。
さらに、上記溶剤は、後述する超微粒子分散液を塗布した後に行われる乾燥および焼成の際に蒸発するものであることが好ましい。特に、溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上、最も好ましくは190℃以上である。溶剤の沸点が上記範囲より低いと、例えば乾燥時に一気に蒸発しやすくなるので、超微粒子が凝集しやすくなり、均一な膜が得られない場合があるからである。一方、溶剤の沸点の上限は、焼成温度の上限から350℃程度とされる。
このような溶剤としては、上記の中でも、テルピネオール、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ドデシルベンゼン、ミネラルスピリットなどが好ましく用いられる。
上記溶剤の使用量は、使用する超微粒子に応じて、塗布しやすく、かつ所望の膜厚を得ることができるように適宜選択すればよい。具体的には、超微粒子分散液中の超微粒子の濃度が、1〜50wt%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40wt%の範囲内である。超微粒子の濃度が上記範囲未満であると、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となり、また所望の膜厚が得られない可能性があるからである。一方、超微粒子の濃度が上記範囲を超えると、超微粒子分散液の粘度が高くなり流動性が低下するので、これもまた第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことが困難となり、さらには第2無機絶縁層表面の平坦性が損なわれる可能性があるからである。
また、超微粒子分散液の粘度としては、20℃において100cP以下であることが好ましく、中でも10cP以下であることが好ましい。粘度が上記範囲であれば、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐとともに、平坦な膜を形成できるからである。
(ii)塗布工程
本態様においては、次に、上記超微粒子分散液を塗布して塗膜を形成する。
超微粒子分散液の塗布方法としては、第1無機絶縁層のピンホール等の欠陥を塞ぐことができ、かつ均一な厚みに塗布できる方法であればよく、例えばスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
上記超微粒子分散液を塗布して塗膜を形成した後は、塗膜を乾燥させて、溶剤を除去してもよい。乾燥温度としては、溶剤の種類に応じて適宜選択されるが、通常は50℃〜100℃程度である。
(iii)焼成工程
本態様においては、次に、上記塗膜を焼成する。
焼成温度は、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、150℃〜350℃程度であることが好ましく、より好ましくは150℃〜250℃の範囲内であり、さらに好ましくは150℃〜220℃の範囲内である。焼成温度が低すぎると超微粒子が十分に焼結しない可能性があり、また、焼成温度が高すぎると基板や着色層等に熱的ダメージを与えるおそれがあるからである。超微粒子を構成する無機酸化物等を単体で焼結するのに必要な温度は一般に400〜700℃程度であるが、本発明においては超微粒子のサイズ効果により、150℃〜350℃という極めて低い温度で焼成することができる。
また、焼成時間についても、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、通常は10分〜1時間程度であり、好ましくは15分〜30分である。
本工程においては、酸化性雰囲気中で焼成してもよく、また超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成してもよい。すなわち、一段階プロセスで焼成してもよく、二段階プロセスにより焼成してもよい。二段階プロセスによる焼成では、超微粒子の表面だけがさらに酸化されて、焼結が不十分となるのを回避できるからである。また、二段階で焼成するので、低温焼成でさらに緻密な膜を形成することができるからである。
超微粒子が酸化しない雰囲気としては、例えば真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気としては、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不雰囲気が挙げられる。
還元性雰囲気としては、例えば水素、一酸化炭素、低級アルコール等の雰囲気が挙げられる。低級アルコールとしては、炭素数が1〜6の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
また、真空雰囲気が、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不活性ガス;酸素、水蒸気等の酸化性ガス;水素、一酸化炭素、低級アルコール等の還元性ガス;または上記不活性ガスと酸化性ガスもしくは還元性ガスとの混合ガス;を含んでいてもよい。真空雰囲気の場合に酸化性ガスを導入すると、超微粒子は酸化せずに、超微粒子に付着している有機化合物(溶剤や分散剤)だけを燃焼させる効果がある。真空状態は、単にポンプで引いただけでもよく、また一旦ポンプ引きした後、不活性ガス、還元性ガス、酸化性ガスを導入してもよい。真空雰囲気中での焼成は、通常、10−5〜10Pa程度で行うことができる。
酸化性雰囲気は、酸素、水蒸気、酸素含有ガス(例えば空気等)、水蒸気含有ガスなどを含んでいてもよい。
本態様においては、超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成した後、酸化性雰囲気中で焼成する前に、塗膜を乾燥させてもよい。これにより、溶剤や分散剤を除去することができるからである。溶剤や分散剤の除去は、焼成時に行ってもよい。
また、酸化性雰囲気中での焼成後、さらに還元性雰囲気中で焼成してもよい。
さらに、焼成時に紫外線照射を行ってもよい。時間短縮・低温化の面でさらに効果がある。また、焼成では、大気圧プラズマ等を用いた、いわゆるプラズマ焼結を用いることもできる。
(2)第2態様
本態様においては、金属の超微粒子を含有する超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する。すなわち、本態様の第2無機絶縁層形成工程は、超微粒子分散液を調製する超微粒子分散液調製工程と、この超微粒子分散液を塗布する塗布工程と、この塗布工程で得られた塗膜を焼成する焼成工程とを有する。
なお、塗布工程および焼成工程については、上記第1態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、超微粒子分散液調製工程について説明する。
(i)超微粒子分散液調製工程
本態様に用いられる超微粒子分散液は、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、金属の超微粒子を溶剤に分散させることにより調製される。
本態様に用いられる金属の超微粒子としては、例えばIn、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等の超微粒子が挙げられる。これらの中でも、In(インジウム)、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、湿式還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。得られた超微粒子の表面は、金属状態であることが好ましいが、一部が酸化された状態であってもよい。
ガス中蒸発法は、ガス雰囲気中でかつ溶剤の蒸気の共存する気相中で金属を蒸発させ、蒸発した金属を均一な超微粒子に凝縮させて溶媒中に分散し、分散液を得る方法である。このガス中蒸発法では、粒度の揃った金属超微粒子を得ることができる。ガス中蒸発法により得られた金属超微粒子を原料として、超微粒子分散液を調製するには、超微粒子分散液に使用する溶剤で置換を行えばよい。また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。
なお、ガス中蒸発法による超微粒子の作製方法ついては、特許第2561537号公報や特開2005−183054公報などに詳しい。
また、超微粒子の作製方法として、液相還元法等の化学還元法を用いることができる。この場合、超微粒子を製造するための原料として、金属含有有機化合物である還元用原料を使用することができる。
化学還元法は、還元剤を用いる化学反応により超微粒子分散液を調製する方法である。この化学還元法により得られる製造した微粒子の場合、粒径を任意に調整可能である。化学還元法では、まず、原料に分散剤を添加した状態で、所定の温度で原料を加熱分解させるか、あるいは、還元剤、例えば水素や水素化ホウ素ナトリウム等を利用して、金属超微粒子を発生させる。次いで、発生した金属超微粒子のほぼ全量を独立分散状態で回収する。得られた分散液を、超微粒子分散液に使用する溶剤に置換すれば、所望の超微粒子分散液が得られる。得られた超微粒子分散液は、真空中での加熱により濃縮しても、安定な分散状態を維持している。
なお、化学還元法による超微粒子の作製方法ついては、特開2005−81501公報などに詳しい。
なお、超微粒子分散液に用いられる溶剤、ならびに、超微粒子分散液の濃度および粘度等については、上記第1態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
C.有機EL表示装置
次に、本発明の有機EL表示装置について説明する。
本発明の有機EL表示装置は、上述した有機EL素子用バリア性基板と、上記有機EL素子用バリア性基板の第2無機絶縁層上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とするものである。
図10は本発明の有機EL表示装置の一例を示すものである。図10に示すように、本発明の有機EL表示装置50は、上述した有機EL素子用バリア性基板10と、上記有機EL素子用バリア性基板10の第2無機絶縁層53上に形成された透明電極層54と、この透明電極層54上にパターン状に形成された有機EL層55と、この有機EL層55上に形成された背面電極層56とを有するものである。また、透明電極層54上であって、パターン状の有機EL層55間には絶縁層57が形成されている。この絶縁層57は、透明電極層54と背面電極層56とを接触させないようにするために設けられる層である。さらに、この絶縁層57上には隔壁58が形成されている。有機EL層55が形成されている部分は表示領域である。また、有機EL素子用バリア性基板10は、基板51上に第1無機絶縁層52および第2無機絶縁層53が順に積層されたものである。
本発明によれば、上述した有機EL素子用バリア性基板を用いるので、ダークスポット等の欠陥の発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能な有機EL表示装置とすることができる。また、有機EL素子用バリア性基板では、第1無機絶縁層および第2無機絶縁層を積層することによりバリア性が得られるので、従来のようにスパッタリング法や真空蒸着法により厚膜の透明バリア層を設ける必要がなく、低コスト化が図れる。
以下、このような有機EL表示装置の各構成について説明する。
1.有機EL層
本発明に用いられる有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布による湿式法で有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化されて形成される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
以下、このような有機EL層の各構成について説明する。
(1)発光層
本発明に用いられる発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものである。上記発光層を形成する材料としては、通常、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、または高分子系発光材料を挙げることができる。
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
また、金属錯体系発光材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)を用いることができる。
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料および金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
本発明に用いられる発光材料としては、上記の中でも、金属錯体系発光材料または高分子系発光材料であることが好ましく、さらには高分子系発光材料であることが好ましい。また、高分子系発光材料の中でも、π共役構造をもつ導電性高分子であることが好ましい。このようなπ共役構造をもつ導電性高分子としては、上述したようなポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定はされなく、例えば1nm〜200nm程度とすることができる。
また、発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で蛍光発光または燐光発光するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
発光層の形成方法としては、高精細なパターニングが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、および自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。また、発光層をパターニングする際には、異なる発光色となる画素のマスキング法により塗り分けや蒸着を行ってもよく、または発光層間に隔壁を形成してもよい。このような隔壁を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を用いることができる。さらに、これらの隔壁を形成する材料の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理を行ってもよい。
(2)電荷注入輸送層
本発明においては、透明電極層または背面電極層と発光層との間に電荷注入輸送層が形成されていてもよい。ここでいう電荷注入輸送層とは、上記発光層に透明電極層または背面電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を、透明電極層または背面電極層と発光層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
電荷注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔注入輸送層、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子注入輸送層とがある。以下、正孔注入輸送層および電子注入輸送層について説明する。
(i)正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層としては、発光層に正孔を注入する正孔注入層、および正孔を輸送する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、または、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
正孔注入輸送層に用いられる材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン誘導体等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
また、正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
(ii)電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層としては、発光層に電子を注入する電子注入層、および電子を輸送する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、または、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、およびアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
また、電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
一方、電子輸送層に用いられる材料としては、第1無機絶縁層および第2無機絶縁層、あるいは背面電極層から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、またはトリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)等を挙げることができる。
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層からなる電子注入輸送層としては、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入輸送層とすることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
2.透明電極層および背面電極層
本発明に用いられる透明電極層および背面電極層は、互いに反対の電荷をもつ電極である。
透明電極層は、一般に透明性および導電性を有する金属酸化物の薄膜で構成される。このような金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫等が挙げられる。
また、背面電極層としては、一般に金属が用いられる。具体的には、マグネシウム合金(MgAgなど)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMgなど)、アルミニウム、アルカリ土類金属(Caなど)、アルカリ金属(K、Liなど)等が挙げられる。
透明電極層および背面電極層は、一般的な電極層の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。
3.絶縁層
本発明においては、透明電極層と背面電極層とを絶縁するために絶縁層が形成されていてもよい。この絶縁層は、非表示領域としてパターン状に形成されるものである。
絶縁層の形成材料としては、例えば紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような絶縁層は、上記の樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。また、パターニングの方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例]
(ブラックマトリックスの形成)
透明基材として、150mm×150mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製 Sn面研磨品)を準備した。この透明基材を定法にしたがって洗浄した後、透明基材の片側全面にスパッタリング法により酸化窒化複合クロムの薄膜(厚み0.2μm)を形成し、この複合クロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、複合クロム薄膜のエッチングを行って、84μm×284μmの長方形状の開口部を100μmピッチでマトリックス状に備えたブラックマトリックスを形成した。
(着色層の形成)
赤色、緑色、青色の3種の着色層用感光性塗料を調製した。すなわち、赤色着色層用感光性塗料は、縮合アゾ系顔料(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、クロモフタルレッドBRN)をバインダー樹脂に分散させたものとした。緑色着色層用感光性塗料は、フタロシアニン系緑色顔料(東洋インキ製造社製、リオノールグリーン2Y−301)をバインダー樹脂に分散させたものとした。青色着色層用感光性塗料は、アンスラキノン系顔料(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、クロモフタルブルーA3R)をバインダー樹脂に分散させたものとした。バインダー樹脂としてはアクリル系UV硬化性樹脂組成物(アクリル系UV硬化性樹脂20%・アクリル系UV硬化性樹脂モノマー20%・添加剤5%・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55%)を用いた。アクリル系UV硬化性樹脂組成物10部に対し、各着色剤を1部(部数はいずれも質量基準。)の割合で配合して、十分に混合分散させた。
上記の3種の着色層用感光性塗料を用いて各色の着色層を形成した。すなわち、ブラックマトリックスが形成された上記の透明基材全面に、緑色着色層用感光性塗料をスピンコート法により塗布し、プリベーク(80℃、30分間)を行った。その後、所定の着色層用フォトマスクを用いて露光した。次いで、現像液(0.05%KOH水溶液)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行って、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅90μm)の緑色着色層(厚み1.5μm)を形成した。同様に、赤色着色層の感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅90μm)の赤色着色層(厚み1.5μm)を形成した。さらに、青色着色層の感光性塗料を用いて、ブラックマトリックスパターンに対して所定の位置に帯状(幅90μm)の青色着色層(厚み1.5μm)を形成した。
(平坦化層の形成)
平均分子量が約100,000であるノルボルネン系樹脂(JSR(株)製 ARTON)をトルエンで希釈した平坦化層用塗布液を使用し、スピンコート法により上記着色層上に塗布した後、ベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、上記着色層を覆うように平坦化層(厚み7μm)を形成した。平坦化層は、透明かつ均一な膜であった。
(第1無機絶縁層の形成)
次に、上記平坦化層上に下記の条件でスパッタリング法により酸化ケイ素膜を2回成膜して、厚み200nmの第1無機絶縁層を形成した。各成膜工程の間では、#800程度の研磨テープを用いて純水を噴霧しながらラッピング研磨を行った。次いで、下層の酸化ケイ素膜に対し、回転研磨機(Speed Fam社製)を使用してアルミナの微粒子研磨剤を噴霧しながら鏡面研磨(ポリッシング)を行った。
酸化ケイ素膜の成膜条件
・RFスパッタ電力:50W/cm、周波数13.56MHz
・成膜レート:10nm/分
・成膜圧力:0.5Pa
・SiOターゲット:4N(密度2.25g/cm
(第2無機絶縁層の形成)
ヘリウムガス圧力0.5torrの条件下で高周波誘導加熱を用いるガス中蒸発法によりIn微粒子を生成する際に、生成過程のIn微粒子にα−テルピネオールとドデシルアミンとの20:1(容量比)の蒸気を接触させ、冷却捕集してIn微粒子を回収し、α−テルピネオール溶媒中に独立した状態で分散している平均粒径10nmのIn微粒子を20重量%含有する分散液を調製した。この分散液(コロイド液)1容量に対してアセトンを5容量加え、攪拌した。極性のアセトンの作用により分散液中の微粒子は沈降した。2時間静置後、上澄みを除去し、再び最初と同じ量のアセトンを加えて攪拌し、2時間静置後、上澄みを除去した。この沈降物から、残留溶媒を完全に除去し、平均粒径10nmのIn微粒子を作製し、X線回折により、酸化されていない微粒子であることを確認した。この微粒子を10wt%の濃度にてテトラデカン中に分散させ、超微粒子分散液を得た。
この超微粒子分散液をスピンコート法により上記第1無機絶縁層上に塗布した。その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの焼成を行った。このときの膜厚は200nmであった。このようにして形成した第2無機絶縁層について、5cmの領域における大きさ1μm以上のピンホールを、光学顕微鏡写真(倍率=1000倍)にて観察した結果、検出できなかった。
(透明電極層の形成)
次いで、上記第2無機絶縁層上にイオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)膜を形成し、このITO膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO膜のエッチングを行って、透明電極層を形成した。この透明電極層は、透明基材上から着色層上に乗り上げるように第2無機絶縁層上に形成された幅60μmの帯状パターンであり、着色層上に位置するものであった。
(補助電極の形成)
次に、上記の透明電極層を覆うように第2無機絶縁層上の全面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み0.2μm)を形成し、このクロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、クロム薄膜のエッチングを行って、補助電極を形成した。この補助電極は、透明基材上から着色層上に乗り上げるように透明電極層上に形成された帯状のパターンであり、着色層上では幅14μmでブラックマトリックス上に位置し、透明基材周縁部の端子部では幅が60μmのものとした。
(絶縁層と隔壁部の形成)
平均分子量が約100,000であるノルボルネン系樹脂(JSR(株)製 ARTON)をトルエンで希釈した絶縁層用塗布液を使用し、スピンコート法により透明電極層を覆うように第2無機絶縁層上に塗布した後、ベーク(100℃、30分間)を行って絶縁膜(厚み1μm)を形成した。次に、この絶縁膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、絶縁膜のエッチングを行って絶縁層を形成した。この絶縁層は、透明電極層と直角に交差する帯状(幅20μm)のパターンであり、ブラックマトリックス上に位置するものとした。
次に、隔壁部用塗料(日本ゼオン(株)製 フォトレジスト ZPN1100)をスピンコート法により絶縁層を覆うように全面に塗布し、プリベーク(70℃、30分間)を行った。その後、所定の隔壁部用フォトマスクを用いて露光し、現像液(日本ゼオン(株)製ZTMA−100)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、絶縁層上に隔壁部を形成した。この隔壁部は、高さ10μm、下部(絶縁層側)の幅15μm、上部の幅26μmである形状を有するものであった。
(有機EL層の形成)
次いで、上記の隔壁をマスクとして、真空蒸着法により正孔注入層、発光層、電子注入層からなる有機EL層を形成した。すなわち、まず、4,4´,4´´トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスクを介して200nm厚まで蒸着して成膜し、その後、4,4´−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを20nm厚まで蒸着して成膜することによって、隔壁がマスクパターンとなり、各隔壁間のみを材料が通過して透明電極層上に正孔注入層が形成された。
次に、上記と同様に、隔壁をマスクとして、発光材料を300nmまで蒸着して成膜することにより発光層を形成した。
さらに、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを20nm厚まで蒸着して成膜することにより電子注入層とした。
このようにして形成された有機EL層(厚み540nm)は、幅約280μmの帯状パターンとして各隔壁間に存在(一部は絶縁層上に乗り上げて存在)するものであり、隔壁の上部表面にも同様の層構成でダミーの有機EL層が形成された。そして、有機EL層の表面と、上述のように形成された絶縁層の下面(第2無機絶縁層との界面)との間には、460nmの間隙が形成され、絶縁層の側端部位が有機EL層に直に接触しないものであった。
(背面電極層の形成)
次に、画像表示領域よりも広い所定の開口部を備えたマスクを介して上記の隔壁が形成されている領域に真空蒸着法によりマグネシウムと銀を同時に蒸着(マグネシウムの蒸着速度=1.3〜1.4nm/秒、銀の蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜した。これにより、隔壁がマスクとなって、マグネシウム/銀混合物からなる背面電極層(厚み200nm)が有機EL層上に形成された。この背面電極層は、幅280μmの帯状パターンとして有機EL層上に存在するものであり、隔壁の上部表面にもダミーの背面電極層が形成された。
以上により、有機EL表示装置を作製した。この有機EL表示装置の透明電極層と背面電極層に直流8.5Vの電圧を10mA/cmの一定電流密度で印加して連続駆動させることにより、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の発光層を発光させた。そして、着色層で色補正された後、透明基材の反対面側で観測される各色の発光について、ダークエリアによる不良発生率を測定した結果、0.5%であり、高品質の三原色画像表示が可能なものであった。
[比較例]
実施例と同様にして平坦化層までを形成した。次に、平坦化層上に、実施例の第1無機絶縁層と同様の条件でスパッタリング法により酸化ケイ素膜を2回成膜して、無機絶縁層(厚み300nm)を形成した。各成膜工程の間では、実施例と同様にして研磨処理を行った。このようにして形成した無機絶縁層について、5cmの領域における大きさ1μm以上のピンホール数を、光学顕微鏡写真(倍率=1000倍)にて計数した結果は、実施例と同じであった。
その後、実施例と同様にして、有機EL表示装置を作製した。この有機EL表示装置について、実施例と同様に電圧を印加して画像表示品質を観察し、ダークエリアによる不良発生率を測定した結果、10%と高いものであり、良好な三原色画像表示は不可能であった。
本発明の有機EL素子用バリア性基板の一例を示す概略断面図である。 超微粒子で形成された膜のSEM写真である。 蒸着膜のSEM写真である。 本発明の有機EL素子用バリア性基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用バリア性基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用バリア性基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用バリア性基板の他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子用バリア性基板の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の有機EL素子用バリア性基板の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1,51 … 基板
2,52 … 第1無機絶縁層
3,53 … 第2無機絶縁層
4 … 着色層
5 … 色変換層
6 … 透明保護層
10 … 有機EL素子用バリア性基板
12a,12b … 蒸着膜
23 … 超微粒子分散液
50 … 有機EL表示装置
54 … 透明電極層
55 … 有機EL層
56 … 背面電極層

Claims (4)

  1. 基板上に少なくとも一層の蒸着膜を形成する第1無機絶縁層形成工程と、
    前記第1無機絶縁層上に超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し、焼成して、膜を形成する第2無機絶縁層形成工程とを有し、
    前記第2無機絶縁層形成工程にて、前記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板の製造方法。
  2. 前記第1無機絶縁層形成工程にて、基板上に下層の蒸着膜を形成し、前記下層の蒸着膜表面を研磨した後、前記下層の蒸着膜上に上層の蒸着膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板の製造方法。
  3. 前記溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板の製造方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用バリア性基板の第2無機絶縁層上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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