JP4742204B2 - 脂肪細胞分化制御剤 - Google Patents

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本発明は、脂肪細胞分化誘導剤、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対する薬剤又は飲食品、脂肪細胞の分化誘導方法に関する。
現在わが国では約600万人の糖尿病患者がいると考えられ、特に40歳以上の国民ではその40人に1人が糖尿病であるといわれている。糖尿病は脳膜症による失明、尿毒症による腎不全、下肢壊疸の原因となるばかりでなく、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす原因となる。
糖尿病発症の主要な機序の一つは、脂肪細胞の過度の分化であるとされている。脂肪細胞は体内に摂取された余剰のエネルギーを中性脂肪の形で貯蔵することによって肥大化し、この肥大化した脂肪細胞はインスリン抵抗性惹起因子(TNFα、レジスチン、FFAなど)を分泌し、この因子により骨格筋や肝臓でインスリンの情報伝達が障害され、インスリン抵抗性が惹起されることが明らかになっている。
従来、インスリン抵抗性改善薬として知られているチアゾリジンジオン系薬剤は、脂肪細胞分化のマスターキー因子としてペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体γ(PPARγ)に結合し、PPARγの活性を上昇させて前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を促進し、インスリン抵抗性を改善させる作用を有することが知られている。上記のように脂肪細胞はインスリン抵抗性関連分子を分泌するが、分泌される分子の種類は脂肪細胞の分化の程度により異なり、分化が進んで肥大化した脂肪細胞では腫瘍壊死因子α(TNFα)、レジスチン、脂肪酸といったインスリン抵抗性惹起分子の分泌が多く、一方、比較的新規で小型の脂肪細胞ではアディポネクチンやレプチンといったインスリン感受性改善分子の分泌が多い。PPARγが高度活性化すると脂肪細胞分化が促進されて小型脂肪細胞が増加すると同時に、肥大化した脂肪細胞のアポトーシスが促進されることが知られており、これがチアゾリジンジオン系薬剤のインスリン抵抗性改善作用の機序と考えられている。このことから、脂肪細胞への分化誘導剤は、肥満やインスリン抵抗性に起因する疾患の予防又は改善に有用であると考えられている。
ところで、脂肪幹細胞は、脂肪細胞への分化誘導初期において短時間に細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇すると脂肪細胞への分化は抑制されるが、分化誘導後期に細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇すると脂肪細胞分化は促進されることが明らかになっている。このことから、脂肪細胞の分化にはPPARγ以外に細胞内カルシウム濃度が重要な役割を有すると考えられている(非特許文献1参照)。従って、細胞内のカルシウムイオンの濃度を調節して脂肪細胞への分化を制御することができれば、脂肪細胞の分化異常又は増殖に起因する疾患を予防又は改善することができるのではないかと期待されている。
Physiol Genomics. 2000 Aug 9;3(2):75-82
しかしながら、分化誘導後期に脂肪細胞分化に作用する促進性カルシウムの生理的流入経路となるイオンチャネルは明らかにされていなかったため、イオンチャネルを人為的に操作して、脂肪細胞に分化させることはできなかった。
そこで、本発明者らは、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対して有用な、脂肪細胞の分化を促進することができる化合物、及びその化合物を有効成分として含有し、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患を予防又は改善することができる薬剤又は機能性食品、並びにそれらの使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、細胞内のカルシウムイオン濃度を調節するTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストが脂肪細胞の分化を誘導することを見出した。このことから、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患を予防・改善するのに有用であることが示された。本発明者らは、このようにして本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る脂肪細胞分化誘導剤は、TRPカルシウムチャネルタンパク質に対するアゴニストを有効成分として含有する。
また、本発明に係る薬剤は、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対する薬剤であって、TRPカルシウムチャネルタンパク質に対するアゴニストを有効成分として含有する。前記疾患としては、例えば、脂肪細胞肥大型肥満又はその肥満により生ずる疾患などである。前記肥満により生ずる疾患としては、例えば、インスリン抵抗性症候群、インスリン非依存型糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、脂質代謝異常、高インスリン血症、高脂血症、血栓症、脂質蓄積症、塞栓症、狭心症、軟化症、虚血性疾患、心筋梗塞、皮膚障害、脳内出血、くも膜下出血、潰瘍、糖尿病による合併症等を挙げることができる。
本発明に係る機能性食品は、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患を予防又は改善するための機能性食品であって、TRPカルシウムチャネルタンパク質に対するアゴニストを有効成分として含有する。前記アゴニストとしては、例えば、トウガラシ、前記トウガラシの乾燥物、又は前記トウガラシ若しくは前記乾燥物の抽出物、ペパーミントの葉、前記葉の乾燥物、又は前記葉若しくは前記乾燥物の抽出物、ワサビ、前記ワサビの抽出物、又はカラシ油、シナモンの樹皮、前記樹皮の乾燥物、前記樹皮若しくは前記樹皮の乾燥物、又はケイヒの精油等を用いることができる。
本発明に係る方法は、脂肪細胞に分化しうる未分化細胞を脂肪細胞へ分化誘導するための脂肪細胞分化誘導方法であって、前記未分化細胞にTRPカルシウムチャネルタンパク質に対するアゴニストを作用させる工程を含む。
また、本発明に係る方法は、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患を予防・改善する方法であって、TRPカルシウムチャネルタンパク質に対するアゴニストを作用させるように、ヒト又はヒト以外の脊椎動物(例えば、マウス、ラットなど)に投与する工程を含む。
なお、前記タンパク質としては、例えば、TRPV1、TRPV4、TRPM8、TRPA1等を挙げることができる。また、前記アゴニストは、カプサイシン、メンソール、アリルイソチオシアネート、シンナムアルデヒド、及び、アイシリンからなる群から選ばれるいずれかの化合物若しくはその薬理学的に許容される塩又はその水和物、又はこれらのうち2以上を組み合わせたものなどである。
本発明によれば、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対して有用な、脂肪細胞の分化を促進することができる化合物、及びその化合物を有効成分として含有し、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患を予防又は改善することができる薬剤又は機能性食品、並びにそれらの使用方法を提供することができる。
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==脂肪細胞分化制御剤==
上述のように、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、脂肪細胞への分化を誘導することから、脂肪細胞の分化誘導剤として有用であるといえる。
ここで、TRPカルシウムチャネルタンパク質とは、TRP(transient receptor potential)スーパーファミリーに属し、細胞内のカルシウムイオン透過性を調節する機能を有するタンパク質をいい、例えば、TRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4、TRPV5、TRPV6等のTRPV(vanilloid)、TRPC1、TRPC3、TRPC4、TRPC5、TRPC6、TRPC7等のTRPC(canonical)、TRPM1、TRPM2、TRPM3、TRPM4 TRPM5、TRPM6 TRPM7、TRPM8等のTRPM(melastatin)、TRPML1、TRPML2、TRPML3等のTRPML(muclopins)、TRPP1、TRPP2、TRPP3、TRPP5等のTRPP(polycystin)、及びTRPA1(ANKTM1)を挙げることができる。
また、上述のTRPカルシウムチャネルタンパク質に対するアゴニストとしては、実施例に記載されている、カプサイシン等のTRPV1及びTRPV4のアゴニスト、4α-PDD (4α-phorbol 12,13-didecanoate)、oxyeicosatrienoic acid等のTRPV4のアゴニスト、メンソール、アイシリン等のTRPM8のアゴニスト、及びアリルイソチオシアネート、シンナムアルデヒド、アイシリン等のTRPA1のアゴニストを用いることができる。また、これらのTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、カプサイシン、メンソール、アイシリン、アリルイソチオシアネート、及びシンナムアルデヒドのように、カルシウムイオンの濃度を調節して脂肪細胞の分化を誘導することが期待できることから、12-(S)-HPETE(12-(S)-hydroperoxyeicosatetraenoyl acid)、5-(S)HETE(5-(S)hydroxyeicosatetraenoic acid)、LTB4(leukotriene B4)等のアラキドン酸に対するリポキシゲナーゼ代謝産物、並びに、RTX(resiniferatoxin)、アナンダミド(anandamide)、及びオルバニル(olvanil:N-9-Z-octadecenoyl-vanillamide)などのTRPV1のアゴニストも有用であり、同様に、TRPV1、TRPV4、TRPM8、及びTRPA1以外の上述のTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストも有用であると考えられる。
==薬剤==
大人に多くみられる肥満は、脂肪細胞が脂肪を過剰に蓄積することによる脂肪細胞の分化異常(肥大化)により起こる(肥大型肥満)。肥大型肥満に対する予防・改善方法としては、食生活の改善及び運動による改善の他に、脂肪細胞を増加させて脂肪細胞の肥大化を防止する方法が有用であると考えられている。
従って、本発明に係るTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストを有効成分として含有する薬剤は、脂肪細胞の分化を誘導して小型の新生脂肪細胞を増加することができ、脂肪細胞の肥大化を防止することができると考えられる。
また、肥大化された脂肪細胞は、脂肪細胞肥大型肥満を引き起こすだけではなく、インスリン抵抗性惹起分子を分泌してインスリン抵抗性症候群等の脂肪細胞の分化異常(肥大化)に起因する疾患を引き起こすことが知られている。
従って、本発明に係るTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストを有効成分として含有する薬剤は、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対する薬剤として用いることにより、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患の予防又は改善(進行抑制、治療を含む)を行うことが可能であると考えられる。
前記脂肪細胞の分化異常に起因する疾患としては、例えば、脂肪細胞肥大型肥満、その肥満により生じる疾患などがある。肥満により生じる疾患としては、インスリン抵抗性症候群、インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)、高血圧症、動脈硬化症(アテローム硬化症)、脂質代謝異常、高インスリン血症、高脂血症、血栓症(例えば、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患など)、脂質蓄積症(例えば、脂肪肝、ゴーシェー(Goucher)病、ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病、黒内障性家族性痴呆など)、塞栓症(例えば、脳塞栓症、肺塞栓症など)、狭心症、軟化症、虚血性疾患、心筋梗塞、皮膚障害、脳内出血、くも膜下出血、潰瘍、糖尿病による合併症(例えば、感染症、肝機能障害、網膜症、神経障害、腎症など)等である。
==機能性食品==
上述のように、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、脂肪細胞の分化を誘導することから、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストを有効成分として含有する飲食品も同様に脂肪細胞の分化を誘導することができると考えられる。このことから、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストを有効成分として含有する飲食品は、機能性食品として、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患の予防・改善に有用であるといえる。一般に、医薬品による治療は必要ないが、放っておくと脂肪細胞の分化異常による肥満症やインスリン抵抗性症候群等の疾患に罹患する可能性の高い人に対し、運動や食事制限等の指導は極めて難しい。しかし、こうした人々に対し、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストを有効成分として含有する飲食品を与えることにより、運動や食事制限を施さないで、脂肪細胞の肥大化による肥満やインスリン抵抗性症候群等の脂肪細胞の分化異常に起因する疾患の予防や改善を行うことが可能になる。
==上述のアゴニストの製造==
本発明において用いられる、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、従来の合成方法に基づいて製造したり、植物又はその葉若しくは樹皮若しくは油から単離・精製したりすることにより、得ることができる。このようにして得られたTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、脂肪細胞の分化誘導剤、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対する予防剤、改善剤、又は機能性食品の有効成分として使用することができる。また、上述のTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、薬理学的に許容される塩を有する形態として用いてもよく、水和物を有する形態(アゴニストの薬理学的に許容される塩が水和物を有する形態であってもよい。)として用いてもよい。なお、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアンタゴニストの塩は、常法に従って製造することができる。前記塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩など)、その他の金属塩(アルミニウム塩など)、アンモニウム塩、リン酸塩、ホウ酸塩等の無機塩、グルコサミン塩等の有機塩などを挙げることができる。
上述のTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストが、植物又はその葉若しくは樹皮若しくは精油、又はそれらの乾燥物、又は植物油に含まれている場合には、それらをそのまま使用して脂肪細胞の分化誘導剤、脂肪細胞の分化異常に起因する疾患に対する予防剤、改善剤、又は機能性食品の有効成分としてもよい。
例えば、上述のアゴニストがカプサイシンである場合には、トウガラシの乾燥物又はその抽出物を使用してもよい。また、上述のアゴニストがメンソールである場合には、ペパーミントの葉、その乾燥物、又はその葉若しくは乾燥物の抽出物を使用してもよい。上述のアゴニストがアリルイソチオシアネートである場合には、ワサビの抽出物、カラシ油を使用することができる。上述のアゴニストがシンナムアルデヒドである場合には、シナモンの樹皮、その乾燥物、又はその樹皮若しくは乾燥物の抽出物、ケイヒの精油を使用することができる。このように、植物又はその葉若しくは樹皮若しくは精油、又はそれらの乾燥物、又は植物油を用いることにより、上述のアゴニストを製造する過程が簡便になり、植物又はその葉若しくは樹皮若しくは精油に含まれる上述のアゴニストを有効に利用することが可能になる。
なお、植物又はその葉若しくは樹皮の乾燥物は、植物又はその葉若しくは樹皮を自然乾燥、凍結乾燥、温風乾燥などの方法によって乾燥することにより得ることができるが、植物又はその葉若しくは樹皮を粉砕して乾燥したり、植物又はその葉若しくは樹皮の乾燥物を粉砕したりすることによって乾燥粉末を得ることとしてもよい。
また、植物又はその葉若しくは樹皮の抽出液は、植物又はその葉若しくは樹皮に溶媒を加え、それらに含まれる上述のアゴニストを溶媒中に溶出させることにより得ることができる。前記溶媒としては、例えば、水、アルコール、酢酸エチル、クロロホルム、又は2種以上の混合溶媒を用いることができるが、水、エタノール、又はこれらの混合物を用いることが安全性の面から好ましい。なお、溶媒中への有効成分の溶出において、撹拌、粉砕、加熱などの二次的作用を加え、有効成分の溶出量の増加及び有効成分の溶出時間の短縮を図ることができる。なお、上記抽出液は、そのまま用いることとしてもよいが、抽出液から植物又はその葉若しくは樹皮の残渣を濾過法又は遠心分離法により除去した抽出液を用いることとしてもよい。
また、上述の抽出液から、その溶媒を蒸発させるか、あるいは乾燥させて除去することにより、固形物(粉末を含む)を得ることとしてもよい。なお、抽出液中の溶媒の蒸発又は乾燥には、例えば、自然乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの方法を利用することができる。
==薬剤又は飲食品の使用==
本発明に係る薬剤は、ヒトまたはヒト以外の脊椎動物に対し、例えば、経口投与することとしてもよいし、静脈内又は腹腔内に投与することとしてもよい。経口投与する場合には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの製剤にしてもよく、腹腔内又は静脈内に投与する場合には、注射剤、坐剤などの製剤にしてもよい。なお、前記製剤は、従来使用されている製剤添加物(例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、溶剤、安定剤など)を用いて、常法により製造することができる。
また、本発明に係る飲食品は、例えば、お茶のように乾燥物をお湯に浸して抽出したもの、青汁のように水を加えてミキサーで粉砕したもの、漢方薬のように乾燥物を煮出したもの、カプセル、錠剤、顆粒等の形状をしたサプリメント、チューインガム、アメ(キャンディ、ドロップなど)、ふりかけなどの形態として使用することができるが、これらに制限されるものではない。なお、本発明に係る飲食品は、最終的に、固形物、粉末、液状、液体状、クリーム状、ゲル状など、どんな形状であってもよい。また、本発明に係る飲食品は、基本的には健常人に投与することを目的とするが、この飲食品が有効である疾患を有する患者が、この飲食品を摂取してもよい。
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実施例1]
細胞内のカルシウムイオン濃度を調節するTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストが、脂肪細胞の分化に関与するかどうかを調べるため、TRPV1及びTRPV4のアゴニストであるカプサイシンを用いて脂肪細胞の分化に及ぼす影響を調べた。
C3H10T1/2 幹細胞をゼラチンコート済みの24穴細胞培養プレートに1.5×104cells/0.5ml/wellの密度で撒き、10% ウシ胎児血清を含むBME(SIGMA)培地中で細胞がコンフルエントになるまで、37℃、5% 炭酸ガス存在下で培養した。細胞がコンフルエントな状態になった後、さらに3日間培養し、カプサイシン、カプサゼピン、ルテニウムレッド等を添加してさらに6日間培養した(ネガティブコントロール(NC)として、カプサイシン、カプサゼピン、及びルテニウムレッドを添加しないで培養したものも準備した。)。なお、培地、カプサイシン、カプサゼピン、ルテニウムレッド等は毎日交換した。
その後、30μMのカプサイシンを添加して培養した細胞内において、油滴形成が明瞭に観察される状態で、10% ホルマリンによって細胞を固定し、Oil Red O(SIGMA社製)で染色した。染色後、細胞中のOil Red Oを100% イソプロパノールにより抽出し、波長550nmで吸光度を測定して細胞に取り込まれたOil Red Oを定量した。なお、ネガティブコントロールにおいては、細胞内に油滴形成がみられなかったが、ネガティブコントロールの細胞も同様に固定してOil Red Oで染色し、その後吸光度を測定したところ、細胞内にOil Red Oの取り込みが観察された。これはおそらく内在性の油分によるものであると思われる。
また、Oil Red Oを抽出した後の細胞を、0.3N 水酸化ナトリウム及び0.1% ラウリル硫酸ナトリウムを含む溶液で可溶化し、細胞に含まれるタンパク質量を、ウシ血清アルブミンを標準としてBioRad Protein Assayにより測定した。その後、細胞に取り込まれたOil Red Oの量を細胞に含まれるタンパク質量で正規化した値を算出し、これを幹細胞から脂肪細胞への分化誘導能の指標とした。その結果を図1に示す。なお、図1中の各値は、ネガティブコントロールにおける値を「1」として求めた相対値を示す。
図1に示すように、TRPV1及びTRPV4のアゴニストであるカプサイシンは、幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用を有することが明らかになった。また、カプサイシンと、TRPV1、TRPM8、TRPA1等のアンタゴニストであるカプサゼピン又はTRPVファミリーに属するタンパク質のアンタゴニストであるルテニウムレッドとを用いた場合には、カプサイシン単独で用いた場合に比べて幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用が抑制されることが明らかになった。このことから、カプサイシンの効果は、TRPV1又はTRPV4を通じて生じていることが明らかになった。
従来、TRPV1及びTRPV4のアゴニストであるカプサイシンは、経口摂取した際に熱代謝亢進による脂肪分解および脂肪燃焼効果があることが知られており、熱代謝亢進を目的として経口および経皮投与で食品・医薬部外品として広く用いられているが、脂肪細胞の分化を誘導することは知られていなかった。従って、カプサイシンが幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用を有する知見は初めて明らかにされたものであり、カプサイシンを用いることにより、幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用とともに脂肪分解および脂肪燃焼作用の相乗効果によって、肥満を効率的に予防又は改善することが可能であることがわかった。
[実施例2]
次に、TRPV1以外のTRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストが、TRPV1及びTRPV4のアゴニストと同様に、幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用を有することを確認するために、TRPM8のアゴニストであるメンソール(l-Menthol)、TRPA1アゴニストであるアリルイソチオシアネート又はシンナムアルデヒド、TRPM8とTRPA1に対するアゴニストであるアイシリンを用いて、実施例1に記載の方法に準じて実験を行った。
図2及び図3に示すように、TRPM8やTRPA1のアゴニストは、幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用を有することが明らかになった。
以上の結果から、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストは、幹細胞から脂肪細胞への分化誘導作用を有することが示された。また、TRPカルシウムチャネルタンパク質のアゴニストを用いることにより、脂肪細胞の分化誘導作用を調節することができることが明らかになった。
本発明の一実施例において、TRPV1及びTRPV4のアゴニストが、幹細胞から脂肪細胞への分化に与える影響を調べた結果を示す図である。横軸は各化合物の濃度を、縦軸は細胞中のタンパク質あたりのOil Red Oの取り込み量(相対値)をそれぞれ表す。なお、図中のNCは溶媒(DMSO:ジメチルスルフォキサイド)のみを添加したネガティブコントロールを、CAPはカプサイシンを、CZPはカプサゼピンを、RRはルテニウムレッドをそれぞれ意味する。各値は平均値±S.E.M.(n=4)で表示した。 本発明の一実施例において、TRPM8のアゴニストが、幹細胞から脂肪細胞への分化に与える影響を調べた結果を示す図である。横軸は各化合物の濃度を、縦軸は細胞中のタンパク質あたりのOil Red Oの取り込み量(相対値)をそれぞれ表す。なお、図中のNCは溶媒(DMSO)のみを添加したネガティブコントロールを意味する。各値は平均値±S.E.M.(n=4)で表示した。 本発明の一実施例において、TRPA1のアゴニストが、幹細胞から脂肪細胞への分化に与える影響を調べた結果を示す図である。横軸は各化合物の濃度を、縦軸は細胞中のタンパク質あたりのOil Red Oの取り込み量(相対値)をそれぞれ表す。なお、図中のNCは溶媒(DMSO)のみを添加したネガティブコントロールを、AIはアリルイソチオシアネートを、tCAはシンナムアルデヒドをそれぞれ意味する。各値は平均値±S.E.M.(N=4)で表示した。

Claims (2)

  1. カプサイシン、メンソール、アリルイソチオシアネート、シンナムアルデヒド、及び、アイシリンからなる群から選ばれるいずれかの化合物若しくはその薬理学的に許容される塩又はその水和物を有効成分として含有する脂肪細胞分化誘導剤。
  2. 脂肪細胞に分化しうる未分化細胞を脂肪細胞へ分化誘導するための脂肪細胞分化誘導方法(ただし、ヒト個体を用いた方法を除く)であって、
    前記未分化細胞にカプサイシン、メンソール、アリルイソチオシアネート、シンナムアルデヒド、及び、アイシリンからなる群から選ばれるいずれかの化合物若しくはその薬理学的に許容される塩又はその水和物を作用させることを特徴とする方法。
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