JP4741508B2 - フッ素化ポリマー、光学部材、電気部材及びコーティング材料 - Google Patents

フッ素化ポリマー、光学部材、電気部材及びコーティング材料 Download PDF

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Description

本発明は、新規なフッ素化ポリマー、光学部材、電気部材及びコーティング材料に関する。
フッ素化ポリマーは、プラスチック光ファイバーやフォトレジスト材料などの光学部材として、あるいは表面改質剤等として使用され、幅広い分野で利用される有用な物質である。しかし、フッ素化ポリマーの合成工程は複雑であり、かつコストが高い。
フッ素化ポリマーは、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物を重合することにより得られる。フッ素化ポリマーの一例として、1,3−ジオキソラン誘導体等が開示されている(例えば、特許文献1〜2、及び非特許文献1〜2参照)。
米国特許第3,308,107号明細書 米国特許第3,450,716号明細書 Izvestiya A Kademii Nank SSSR, Seriya Khimicheskaya著,「VIBRATIONAL SPECTROSCOPY」,1988年2月、p.392-395 Yuminovら著,「VIBRATIONAL SPECTROSCOPY」,1989年4月、p938
本発明の課題は、新規なフッ素化ポリマー、光学部材、電気部材及びコーティング材料を提供することである。
本発明者らは、下記の有用で新規な含フッ素化合物と合成方法を開発した。本発明は以下に示す通りである。なお、本発明は、下記第1〜第8の態様のうち、第1〜第3及び第8の態様である。
本発明の第1の態様は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素化ポリマーである。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記フッ素化ポリマーがホモポリマーである。
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記フッ素化ポリマーが下記式(2)で表される。
式(2)中、Y1〜Y4は各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を表す。
本発明の第4の態様は、2−クロロ−2,2−ジフロロエタン−1,1−ジオールと、下記式(3)で表される化合物の少なくとも1種との反応によって製造される、下記式(4)で表されるフッ素化化合物の製造方法である。
式(3)中、Xは、水酸基、フッ素原子、又は臭素原子を表す。
本発明の第5の態様は、2−クロロ−2,2−ジフロロアセトアルデヒドと、エチレンオキサイドとの反応によって製造される、下記式(4)で表されるフッ素化化合物の製造方法である。
本発明の第6の態様は、第4の態様の方法によって得られた下記式(4)で表されるフッ素化化合物の重合によって下記式(1)で表されるポリマーを製造するフッ素化ポリマーの製造方法である。
本発明の第7の態様は、第5の態様の方法によって得られた下記式(4)で表されるフッ素化化合物の重合によって下記式(1)で表されるポリマーを製造するフッ素化ポリマーの製造方法である。
本発明の第8の態様は、第1の態様に記載のフッ素化ポリマーを含む光学/電気部材又はコーティング材料である。
本発明によれば、有用で新規なフッ素ポリマー、及びフッ素ポリマーを用いた光学部材部材及びコーティング材料を提供することができる。
1.フッ素化化合物の製造方法
本発明のポリマーは、下記式(4)で表される1,3−ジオキソラン誘導体を重合して得られる。

まず始めに、上記式(4)で表される含フッ素化合物の製造方法について説明する。ここで、本発明では、2つの製造方法を提示する。
1−1.第一の製造方法
1,3−ジオキソラン誘導体である上記含フッ素化合物は、2−クロロ−2,2−ジフロロエタン−1,1−ジオールと、下記式(3)で表される化合物とを用いて製造される。

ここで、Xは、水酸基、塩素原子又は臭素原子を表し、好ましくは、塩素原子である。
これら化合物の反応スキームを以下に例示するが、これに限定されない。
本発明の第一の製造方法は以下の2つの工程を含み、簡易かつ安価な方法である。
(1) 2−クロロ−2,2−ジフロロエタン−1,1−ジオールと、式(3)で表される化合物の少なくとも1種とから、塩化カルシウムと炭酸カリウムとを用いて、脱水しながら脱ハロゲン化水素を行う工程、と
(2)塩基により、脱ハロゲン化水素を行う工程。
以下、(1)〜(2)の2つの工程について、説明する。
(1)の工程
2−クロロ−2,2−ジフロロエタン−1,1−ジオールと、式(3)で表される化合物とは、等モルずつで反応させることが好ましい。式(3)で表される化合物は、1種類のみであっても複数種併用してもよい。しかしながら、単一の種類を用いる場合が好ましい。塩化カルシウムや、炭酸カリウムに代えて、炭酸ナトリウム等を使用することもできる。
また、発熱反応のため、冷却しながら反応させることが好ましい。その他、反応条件については特に制限は無く、次の(2)の工程の前に、蒸留等の精製工程を加えることも好ましい。
(2)の工程
(1)の工程で得られた化合物から、脱ハロゲン化水素を行う。このハロゲン化水素の脱離反応では、エタノール等のアルコール中で、水酸化カリウムのような強塩基を用いる。塩基としては、t−ブトキシカリウム等を用いることもできる。
本発明の製造方法では、上記(1)〜(2)の工程以外の工程を加えて、製造することもできる。
1−2.第二の製造方法
2−クロロ−2,2−ジフロロアセトアルデヒドと、エチレンオキシドとを用いて、上記式(4)で表される1,3−ジオキソラン誘導体含フッ素化合物を製造する。これら化合物の反応スキームを以下に例示するが、これに限定されない。
本発明の第二の製造方法は、以下の2つの工程を含み、簡易かつ安価な方法である。
(1) 2−クロロ−2,2−ジフロロアセトアルデヒドと、エチレンオキシドとの触媒反応を行う工程、と
(2)塩基により、脱ハロゲン化水素を行う工程。
以下、(1)〜(2)の2つの工程について、説明する。
(1)の工程
2−クロロ−2,2−ジフロロアセトアルデヒドとエチレンオキシドとは、等モルずつで反応させることが好ましい。
触媒としては、NiCl2、CuCl2、ZnCl2等を用いることができる。また、触媒の使用量は、夫々の化合物1モルに対して、0.001〜0.01モル程度である。
また、発熱反応のため、冷却しながら反応させることが好ましい。その他、反応条件については特に制限は無く、次の(2)の工程の前に、蒸留等の精製工程を加えることも好ましい。
(2)の工程
(2)の工程で得られた化合物から、脱ハロゲン化水素を行う。このハロゲン化水素の脱離反応では、エタノール等のアルコール中で、水酸化カリウムのような強塩基を用いる。塩基としては、t−ブトキシカリウム等を用いることもできる。
本発明の製造方法では、上記(1)〜(2)の工程以外の工程を加えて、製造することもできる。
2.含フッ素ポリマーの製造方法
前記式(4)で表される1,3−ジオキソラン誘導体は、ラジカル重合開始剤を用いて容易に重合させることができ、下記式(1)を構造に有するポリマーを得ることができる。
前記式(4)で表される1,3−ジオキソラン誘導体は5員環であり、安定した物質である。一方、6員環の場合には、重合の際に開環しやすくなるため、得られるポリマーは混合物となり、耐熱性などの物理的性質が低下しやすい。
下記式(1)を構造に有するポリマーは、常法によってラジカル重合により製造できる。ラジカル触媒としては、通常の物を用いることができる。例えば、過酸化物やAIBN(2,2−アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。
上記重合では、前記式(4)で表される1,3−ジオキソラン誘導体のみをモノマー原料として用いた場合には、ホモポリマーが得られる。
一方、前記式(4)で表される1,3−ジオキソラン誘導体以外のモノマーを併用すると、前記式(4)で表される化合物とその他のモノマーとのコポリマーが得られる。その他のモノマーとしては、炭素二重結合を有する化合物であれば特に限定されない。かかるコポリマーとしては、下記式(2)で表されるポリマーを挙げることができる。
ここで、Y1〜Y4は各々独立に水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。好ましくは、Y1〜Y4は、各々独立に、フッ素原子又は塩素原子である。
nとmとの比率は、好ましくは1:9〜5:5であり、より好ましくは、2:8〜3:7である。
3.含フッ素ポリマー
式(1)を構造に有するポリマーは、アセトン、DMSO、トルエン、THF、クロロホルム、メタノールのような溶媒には溶解しないが、フッ素化溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)や少量のトリフルオロ酢酸を含むクロロホルムには溶解する。
式(1)を構造に有するポリマーは、融点が高く、ガラス転移温度も高く、熱的に極めて安定な物質である。特に、式(1)を構造に有するホモポリマーの場合、半結晶体であり融点が高く、熱に極めて安定な物質となる。また、式(1)を構造に有するポリマーは、硫酸又は水酸化カリウム熱濃縮水溶液中においても安定である。
これに対し、前記式(4)で表される化合物のフッ素原子をすべて水素原子に置換した2‐メチレン‐1,3‐ジオキソランをラジカル重合した場合、得られるポリマーは、部分的に開環したものであることが報告されている(W.J.Bailey,Z.N: and S.Wu; J. Poly Sci, Polymer Chem Ed. 20 3021(1982))。
6員環である2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキサンをラジカル重合した場合にも、重合の際に開環しやすくなるため、得られるポリマーはビニル付加重合ポリマーと開環ポリマーとの共重合体及び/又は混合物となり、耐酸、耐アルカリ、耐熱性などの物理的性質が低下しやすい。一方、前記式(4)で表される化合物は、ラジカル開始剤を用いてラジカル重合反応をおこなっても、得られるポリマーはビニル付加重合体のみが得られ、開環ポリマーは検出され難い。得られるポリマーが混合物でないことは、融点やガラス転移温度等をより高める効果がある。このように式(1)を構造に有するポリマーは化学的にも熱的にも安定である。すなわち、本発明の式(1)を構造に有するポリマーは結晶性が高く、耐熱性、耐光性にも優れることから、特殊ペイント等に好適に用いることができる。
また、前記式(2)で表されるコポリマーも、フッ素化溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)や少量のトリフルオロ酢酸を含むクロロホルムに溶解する。
上記ホモポリマー及びコポリマーに比較して、含フッ素ポリマーであるテトラフルオロエチレンの共重合体は、溶媒に難溶である。すなわち、本発明の式(2)で表されるコポリマーは、該溶解性によって金属やガラス表面との接着性が向上し、新しい薄膜コーティング材、絶縁素材として応用できる。
さらに、このホモポリマーやコポリマーのフィルム表面を希硝酸や過マンガン酸カリウム等で酸化することにより、表面に下記官能基を有することができる。
このような官能基を備えることで、表面の接着性をより大きく改善することができる。
本発明のホモポリマーやコポリマーは、フィルムを形成するのに利用することができ、すなわち、材料、ガラスやその他のものをコーティングするための溶液を準備することができる。形成した薄膜は、化学的、熱的に、同様に、光に関しても非常に安定である。それゆえ、特に保護塗布材料として有益である。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
(クロロジフルオルロアセトアルデヒドの合成)
クロロジフルオロアセトアルデヒドは、クロロジフルオロ酢酸メチルエステルを水素化アルミニウムリチウムで還元して得た。
100mlの無水エーテルに100g(0.69モル)のクロロジフルオロ酢酸メチルエステルを加え、攪拌機、漏斗、及び還流冷却器を備える1Lの三ツ口フラスコ装置に入れた。フラスコはドライアイス/アセトン浴中で冷却された。
別の操作において、150mlのエーテル溶液に7g(0.18モル)の水素化アルミニウムリチウムを加えた。生成したスラリーを2時間攪拌した。攪拌後、水素化アルミニウムリチウムのエーテル溶液は、別に準備したクロロジフルオロ酢酸メチルエステルに3時間かけて滴下した。水素化アルミニウムリチウムを加えた後、‐78℃に保った反応混合物に95質量%エタノール液を20ml加えた。その後、混合物は、そのまま室温に戻した。アルミニウム化合物を溶解させるため、得られた反応混合物を、粉砕した氷と50mlの濃塩酸とが入った2Lのビーカーに注ぎ入れた。混合物は2相に分離し、水相はエーテルで抽出した。エーテル部分は、乾燥せずに95℃〜100℃で蒸留した。得られた蒸留物の殆どが、クロロジフルオルロアセトアルデヒドの水和物(CClF2CH(OH)2)であった。収率は75%であった。
(2‐クロロジフルオロメチル‐1,3‐ジオキソランの合成)
冷却器を備える1Lのフラスコに、157g(1.4モル以下)のCClF2CH(OH)2、197g(1.5モル)の2‐ブロモエタノール、及び20gの塩化カルシウムが加えられた。フラスコは7時間90℃に加熱され、その後室温に冷却された。上相は5Lのフラスコに移され、2Lのアセトンと386g(2.8モル)の炭酸カリウムをフラスコに添加した。反応を50℃で3日間保ったところ、固形物が析出した。溶媒は蒸留によって除去した。その生成物は、蒸留によって精製した。収率は88%(195g)で、沸点は62℃/30mmHgであった。
1HNMRでは、5.24ppm(t,1H,‐CH‐),3.94−4.3ppm(m,4H,‐OCH2‐)であった。
19FNMR(ppm)では、−70.56ppm(2F,‐CF2‐)であった。
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランの合成)
氷浴中に置いたフラスコに、50g(0.31モル)の2‐クロロジフルオロメチル‐1,3‐ジオキソランと800mlのTHFを加えた。37g(0.33モル)のt‐ブトキシカリウムを更にフラスコに滴下した。19FNMR測定によって反応をモニタリングした。2‐クロロジフルオロメチル‐1,3‐ジオキソランに帰因する70.56ppmでの信号が減少し、>C=CF2に帰因する‐136.75ppmの信号が時間とともに増加した。塩酸の除去が85%を超えた後で、モノマーはTHFを用いて減圧下でコールドトラップ(‐78℃)に集められた。
生成物である2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランは、加熱により迅速に重合するため、0℃において真空下でTHFを除去して溶液を濃縮した。モノマーのTHF溶液は、濃度0.4Mで、モノマーを22.7g含有した。収率は60%だった。このTHF溶液をラジカル重合に用いた。
1HNMR(CDCl3)δ(ppm):4.36(s,4H)
19FNMR(CDCl3)δ(ppm):‐1360.4(s,‐CF2‐)
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランのポリマー化)
実施例1で得られたモノマー(2‐クロロジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソラン)40mmolに100mlのTHFを加えた溶液と65mgのAIBN(0.4mmol)とをガラス管に入れ、脱気した。それから、3‐サイクルの冷却真空機でアルゴンを補充し、ガラス管を封止し、そして1日間60℃で加熱した。重合中、ポリマーを凝集させた。凝集物をメタノール中に添加し、ヘキサフルオロイソプロパノール溶液から沈殿させて、精製した。2‐クロロジフルオロメチル‐1,3‐ジオキソランポリマーの収率は80%で、3.9g得られた。
[実施例2]
(2‐クロロジフロロメチル‐1,3‐ジオキソランの合成)
冷却器を備える1Lのフラスコに、114.5g(1.11モル)の2‐クロロ−2,2−ジフルオロアセトアルデヒド、44g(1モル)のエチレンオキサイド、及び1.3g(0.01モル)のNiCl2が加えられた。フラスコは7時間90℃に加熱され、その後室温に冷却された。上相は5Lのフラスコに移され、2Lのアセトンと386g(2.8モル)の炭酸カリウムを添加した。反応を50℃で3日間保ったところ、固形物が析出した。溶媒は蒸留によって除去した。その生成物は、蒸留によって精製した。収率は88%(129.4g)で、沸点は62℃/30mmHgであった。
1HNMRでは、5.24ppm(t,1H,‐CH‐),3.94−4.3ppm(m,4H,‐OCH2‐)であった。
19FNMR(ppm)では、−70.56ppm(2F,‐CF2‐)であった。
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランの合成)
2‐クロロジフルオロメチル‐1,3‐ジオキソランは、上記得られた2‐クロロジフルオロメチル‐1,3‐ジオキソランを用いて、実施例1と同様の方法で得た。
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランのポリマー化)
2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランは、実施例1と同様の方法で重合することができた。
[実施例3]
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランとテトラフルオロエチレンとのコポリマー)
2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランを6g含有する1,1,2−トリクロロトリフルオロエチレンの200ml溶液と、0.02gのパーフロロプロピオニルパーオキサイドを、重合のための1Lのオートクレーブに液体窒素温度下で入れた。このオートクレーブは、攪拌器と反応物を出し入れする開口部とを有している。溶液を減圧下で脱気し、オートクレーブがアルゴンで充填された後、16gのテトラフルオロエチレンを液体窒素温度下で導入した。反応器は徐々に室温に戻され、それから40〜45℃で10時間加熱された。未反応モノマーと溶液が、減圧下、78℃で捕集され除去された。溶液と未反応モノマーとを蒸留した後、更に、固体生成物は5時間100℃の温度で、真空下で熱せられた。22gの固体生成物が分離された。TGAは450℃で2%の重量損失を示した。19FNMR分析では、ジオキソランとテトフルオロエチレンの構成比率は、0.5:2.0を示し、生成物はヘキサフルオロベンゼンのようなフッ素溶媒に溶解した。
[実施例4]
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランとテトラフルオロエチレンとのコポリマー)
2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランを3g含有する1,1,2−トリクロロトリフルオロエチレンの150ml溶液と、0.02gのパーフロロ−t−ブチルパーオキサイドを、重合のために、1Lのオートクレーブに液体窒素温度で入れた。減圧下で溶液が脱気し、オートクレーブをアルゴンで充填した後、液体窒素温度で、32gのテトラフルオロエチレンを導入した。反応は実施例3に記載のようにして行った。29gの固体生成物が得られ、コポリマーにおけるジオキソランとテトフルオロエチレンの構成比率は、0.5:10であることが分かった。
[実施例5]
(2‐ジフルオロメチレン‐1,3‐ジオキソランポリマーの特性)
得られたポリマーは、アセトン、DMSO、トルエン、THF、クロロホルム、メタノールのような溶媒には溶解しなかったが、フッ素化溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)やトリフルオロ酢酸(TFA)には溶解した。
ポリマーの固有粘度(η)は、クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(容積比9/1)中、25℃で、0.38dL/gであった。得られたポリマーの1HNMRと19FNMRスペクトルをBruker AC 300分光計で測定した。溶媒としては、クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(容積比9/1)を用いた。内部標準として、1HNMRにおいてはTMSを、19FNMRにおいてはトリクロロフルオロメタンを、それぞれ使用した。その結果を図1に示す。
1HNMRにおいて、フッ化ビニルに帰因するピークは示されていない。112.00ppmのピークは、主鎖の飽和フッ素化合物(‐CF2‐)を特定している。1HNMRにおける唯一つのピークが4.26ppmにみられ、ジオキソラン環上のプロトンが特定された。IRとNMR測定では、開環生成物の存在は示されなかった。ビニル付加反応のみが行われたことを示している。
図2に示すように、ポリマー粉末のX線回折パターンでは、半結晶体であることが示され、結晶性は約44%であった。融点は356℃であった。これはポリフッ化エチレンの融点327℃よりも高いものであった。
図3に示すように、本発明のポリマーのガラス転移温度は、125℃であった。熱重量分析では、窒素雰囲気下で高い熱安定性を呈した。図4に示すように、窒素雰囲気下(A)での熱分解は、427℃から始まり、空気雰囲気下(B)では、414℃から分解し始めた。
ポリマーの透明薄膜(厚さ0.1mm以下)は、ガラス又はシリコン基板上に当該ポリマーを含有するHFIP溶液を鋳込することで得られた。Metricon model 2010 プリズムカプラーの上に作製した膜を置き、屈折率を測定した。膜の屈折率は、632.8nm波長で1.4396であり、1544nm波長では1.4372であった。
0.5mm以下の厚さの膜を、それぞれ20質量%硫酸水溶液と30質量%水酸化ナトリウム水溶液とに、2日間、60℃で浸漬した。その後、膜を水洗し、乾かした。IRスペクトルと質量測定と乾燥膜に対して行い、これらの条件においては、膜の性能の低下は見られなかった。
このように、得られたポリマーは、熱的、化学的に極めて安定であり、電気部材、光学部材に好適な材料となった。とくに特殊ペイント用途に最適であった。
[実施例6]
実施例1で得られたコポリマーはガラスプレートの上に準備された。プレートにコートされたポリマー(ポリマーの厚さ=0.1〜0.3mm)は、HNO3/H2SO4に50〜60℃で5時間処理された。フィルムを水洗し100℃真空下で乾燥した後、その表面をIR測定によって観察した。スペクトルは、−OHと−C=O−基が表面に生成していることを示した。フィルムのアルミニウムやガラスに対する粘着性は非常に増大した。
実施例2で合成されたポリマーの1HNMRスペクトルと19FNMRスペクトルを示す図である。 実施例2で合成されたポリマーのX線回折パターンを示す図である。 実施例2で合成されたポリマーのガラス転移温度を示す図である。 実施例2で合成されたポリマーの熱分解を示す図である。Aは窒素ガス雰囲気下で、Bは空気雰囲気下である。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素化ポリマー。
  2. 前記フッ素化ポリマーがホモポリマーである請求項1に記載のフッ素化ポリマー。
  3. 前記フッ素化ポリマーが下記式(2)で表される請求項1に記載のフッ素化ポリマー。
    [式(2)中、Y1〜Y4は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を表す。]
  4. 請求項1に記載のフッ素化ポリマーを含む光学部材。
  5. 請求項1に記載のフッ素化ポリマーを含む電気部材。
  6. 請求項1に記載のフッ素化ポリマーを含むコーティング材料。
JP2006540824A 2003-12-01 2004-11-25 フッ素化ポリマー、光学部材、電気部材及びコーティング材料 Active JP4741508B2 (ja)

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