次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
以下、本発明の電子写真感光体の構成を図面に沿って説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体の構成を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、導電層41、バリア層43、感光層33が設けられている。
図2は、本発明の電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、導電層41、バリア層43、電荷発生層35と電荷輸送層37が設けられている。
図3は、本発明の更に別の構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、導電層41、バリア層43、電荷発生層35と電荷輸送層37と保護層39が設けられている。
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特許文献36に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体1として良好に用いることができる。
次に導電層について述べる。
導電層は、感光層4の塗工性向上、感光層4の電気的破壊に対する保護、基体表面の欠陥の被覆等のために、導電性支持体1上に導電性被膜として形成されるものである。この導電層は、電気的に十分低い抵抗であることが要求されるばかりではなく、高速の電子写真プロセスにおいて繰り返し使用される際に電荷の蓄積を防ぎ、安定した電位特性を提供するものでなければならない。
導電性の被膜は、導電性の材料を蒸着、スパッタ等の乾式成膜法により設けるか、導電性の粉体をバインダー樹脂に分散して形成される。導電性粉末としては、比抵抗105Ω・cm以下の材料が有効に用いられ、ニッケル、銅、銀、アルミニウム等の金属粉体、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等、及びそれらの混合物といった導電性金属酸化物粉末(導電性無機顔料)やカーボンブラック、繊維状カーボン等が用いられる。また、スズもしくは酸化スズもしくは両者の混合物をドープした酸化インジウムを含有する蒸着膜等も使用することが出来る。いずれの構成の場合にも、導電層の状態において感光体の使用電界強度(概ね105V/cm)における体積抵抗値として、105Ω・cmから1010Ω・cmの範囲に有ることが好適である。
また本発明の導電層には、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に、感光層内部での光干渉によるモアレ像の発生を防止する機能を併せて持たせることで、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。このような機能を発現するために、導電層は屈折率の大きな材料を有することが有効である。上述の導電性金属酸化物や導電性無機顔料の他に、ポリジメチルシロキサンを主成分とする微小な球体、もしくは粗面化剤を導入することもできる。
バインダー樹脂としては後述のバリア層と同様のものを使用できるが、導電層の上にバリア層および感光層を積層することを考慮すると、バリア層や感光層の塗工溶媒に侵されないことが肝要である。
バインダー樹脂としては、熱硬化型樹脂が良好に使用される。特に、アルキッド/メラミン樹脂の混合物が最も良好に使用される。この際、アルキッド/メラミン樹脂の混合比は、モアレ防止層の構造及び特性を決定する重要な因子である。両者の比(重量比)が5/5〜8/2の範囲が良好な混合比の範囲として挙げることが出来る。5/5よりもメラミン樹脂がリッチであると、熱硬化の際に体積収縮が大きくなり塗膜欠陥を生じやすくなったり、感光体の残留電位を大きくする方向にあり望ましくない。また、8/2よりもアルキッド樹脂がリッチであると、感光体の残留電位低減には効果があるものの、バルク抵抗が低くなりすぎて地汚れが悪くなる方向になり望ましくない。
また、導電層の膜厚は1〜20μm、好ましくは2〜10μmとするのが適当である。膜厚が1μm未満では効果の発現性が小さく、20μmを越えると残留電位の蓄積を生じたり、塗膜表面性が低下する場合があるので望ましくない。
上述の導電性無機顔料や導電性金属酸化物は溶剤と結着剤樹脂と共に常法により、例えばボールミル、サンドミル、アトライラー等により分散し、また、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
次に、バリア層について述べる。
バリア層は、感光体帯電時に電極(導電性支持体)に誘起される逆極性の電荷が、支持体から導電層を経由して感光層に注入するのを防止する機能を有する層である。負帯電の場合には正孔注入防止、正帯電の場合には電子注入防止の機能を有する。バリア層としては、酸化アルミ層に代表される陽極酸化被膜、SiOに代表される無機系の絶縁層、特開平3―191361号公報に記載されるような金属酸化物のガラス質ネットワークから形成される層、特開平3―141363号公報に記載されるようなポリフォスファゼンからなる層、特開平3―101737号公報に記載されるようなアミノシラン反応生成物からなる層、この他には絶縁性の結着剤樹脂からなる層、硬化性の結着剤樹脂からなる層等が挙げられる。中でも湿式塗工法で形成可能な絶縁性の結着樹脂あるいは硬化性の結着樹脂から構成される層が良好に使用できる。バリア層は、その上に感光層を積層するものであるから、感光層を湿式塗工法で設ける場合には、これらの塗工溶媒により塗膜が侵されない材料あるいは構成からなることが肝要である。
使用できる結着剤樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂例えば、活性水素(−OH基、−NH2基、−NH基等の水素)を複数個含有する化合物とイソシアネート基を複数個含有する化合物及び/又はエポキシ伴を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂等も使用できる。この場合活性水素を複数個含有する化合物としては、例えばポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂等があげられる。イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等とこれらのプレポリマー等があげられ、エポキシ基を複数有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等があげられる。中でも、成膜性、環境安定性、溶剤耐性の点などから、ポリアミドが最も良好に用いられる。
その中でもN−メトキシメチル化ナイロンが最も好ましい。ポリアミド樹脂は、電荷の注入を抑制する効果が高い上に残留電位に与える影響が少ない。また、これらのポリアミド樹脂は、アルコール可溶性の樹脂であって、ケトン系溶媒には不溶性を示し、また浸積塗工においても均一な薄膜を形成することができ、塗工性に優れている。特に、この下引き層は残留電位上昇の影響を最小限にするために薄膜にする必要がある上、膜厚の均一性が要求されるため、塗工性は画質安定性において重要な意味を持っている。
しかし、一般にアルコール可溶性樹脂は湿度依存性が大きく、それにより低湿環境下では抵抗が高くなり残留電位上昇が、高湿環境下では抵抗が低くなり、帯電低下が引き起こされ、環境依存性が大きいことが大きな課題であった。しかし、N−メトキシメチル化ナイロンは、高い絶縁性を示し、導電性支持体から注入される電荷のブロッキング性に非常に優れている上、残留電位に与える影響が少なく、さらに環境依存性が大幅に低減され、画像形成装置の使用環境が変化しても常に安定した画質を維持することが可能であるため、下引き層を積層した場合に最も好適に用いられる。加えて、N−メトキシメチル化ナイロンを用いた場合には残留電位の膜厚依存性が小さく、そのため残留電位への影響を低減し、かつ高い地汚れ抑制効果を得ることが可能となる。
N−メトキシメチル化ナイロンにおけるメトキシメチル基の置換率は、特に限定されるものではないが、15mol%以上であることが好ましい。N−メトキシメチル化ナイロンを用いたことによる上記効果は、メトキシメチル化度によって影響され、メトキシメチル基の置換率がこれより低い場合には、湿度依存性が増加したり、アルコール溶液とした場合に白濁したりする傾向が見られ、塗工液の経時安定性がやや低下する場合がある。
また、オイルフリーアルキド樹脂とアミノ樹脂例えば、ブチル化メラミン樹脂等を熱重合させた熱硬化性樹脂、さらにまた、不飽和結合を有するポリウレタン、不飽和ポリエステル等の不飽和結合を有する樹脂と、チオキサントン系化合物、メチルベンジルフォルメート等の光重合開始剤との組合せ等の光硬化性樹脂も結着剤樹脂として使用できる。
また、整流性のある導電性高分子や、帯電極性に合わせてアクセプター(ドナー)性の樹脂・化合物などを加えて、基体からの電荷注入を制抑するなどの機能をよく持たせても良い。
また、バリア層の膜厚は0.1μm以上4.0μm未満、好ましくは0.3μm以上1.5μm以下程度が適当である。バリア層が厚くなると、帯電と露光の繰返しによって、特に低温低湿で残留電位の上昇が著しく、また、膜厚が薄すぎるとブロッキング性の効果が小さくなる、またバリア層には、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進材等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光、電子線等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
次に感光層について説明する。感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層構成の感光層(図1)でも構わないが、電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層型(図2、図3)が感度、耐久性において優れた特性を示し、良好に使用される。説明の都合上、積層構成からなる感光層について先に述べる。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生物質としては、特に限定はなく、公知の材料を用いることが出来る。中でも、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンは有用に用いることが出来る。特に、特開2001−19871号公報に記載の結晶型、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が良好に用いられ、更に26.3°にピークを有さない結晶は有効に使用できる。更に、上記結晶型を有し、結晶合成時あるいは分散濾過処理により、平均粒子サイズを0.25μm以下にし、粗大粒子の存在しないチタニルフタロシアン結晶(特開2004−83859号公報、特開2004−78141号公報)は最も有用に使用できる。
電荷発生層は、前記電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
ここで用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は望ましいものである。具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層8は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、式(I)〜式(X)で表わされる高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。尚、式(I)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、
aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。
式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、(II)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、式(III)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7、Ar8、Ar9は同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、式(IV)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(VI)の場合と同じである。尚、式(VI)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、式(VI)の場合と同じである。尚、(VI)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し,R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、式(VII)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22,Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、式(VIII)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、式(IX)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、式(I)の場合と同じである。尚、式(X)は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
また、電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質として、上述の高分子電荷輸送物質の他に、電荷輸送層の成膜時には電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も含むものである。
更に電荷輸送層の構成として、架橋構造からなる電荷輸送層も有効に使用される。架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成するものである。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現するものである。
また、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、電荷輸送層としての機能を十分に発現することが可能となる。電荷輸送能を有するモノマーとしては、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。
このような網目構造を有する電荷輸送層は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、電荷輸送層を積層構造として、下層(電荷発生層側)には低分子分散ポリマーの電荷輸送層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する電荷輸送層を形成しても良い。
これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れたものである。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層は、自身が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる電荷輸送層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れたものである。このため、高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特開平3―109406号公報、特開2000―206723号公報、特開2001―34001号公報等に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。
本発明において電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
上記は感光層が積層構成の場合について述べたが、本発明においては感光層が単層構成でも構わない。感光層を単層構成とするためには、少なくとも上述の電荷発生物質とバインダー樹脂を含有する単一層を設けることで感光層は構成され、バインダー樹脂としては電荷発生層や電荷輸送層の説明の所に記載したものが良好に使用される。また、単層感光層には電荷輸送物質を併用することで、高い光感度、高いキャリア輸送特性、低い残留電位が発現され、良好に使用できる。この際、使用する電荷輸送物質は、感光体表面に帯電させる極性に応じて、正孔輸送物質、電子輸送物質の何れかが選択される。更に、上述した高分子電荷輸送物質もバインダー樹脂と電荷輸送物質の機能を併せ持つため、単層感光層には良好に使用される。
本発明においては、下記式(2)又は(3)で表される電子輸送剤は、感光層に含有される。また前記電子輸送剤に加え、下記式(4)で表される電子輸送剤が、感光層に含有されてもよい。
式中、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R17、R18、R19、R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。
式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、1から100までの整数を表す。
式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。
上述した感光層構成と併せてその添加方法について示す。
感光層が単層構成の場合、電子輸送物質として使用される。光キャリア発生サイトが感光体表面近傍か、バルク深くかに依るが、メインに正孔を移動させる構成である場合には添加剤のような形(多量に使用される主材料ではないという意味)で使用され、メインに電子を移動させるような場合にはメインの電荷(電子)輸送物質として使用される。具体的には、単層感光層が正帯電で使用され、感光層表面近傍で光キャリアを生成させるような構成の場合、感光層中の電荷としてはメインには正孔が長い距離を移動することになる。この場合には、メインの電荷輸送物質は正孔輸送物質ということになり、式(2)、式(3)、及び式(4)の電子輸送剤は、表面への電子移動物質として使用される。一方、バルクの深いところ(支持体側)で光キャリアを生成させる場合、電子がメインに移動することになり、この場合には式(2)、式(3)、及び式(4)の電子輸送剤は、メインの電荷輸送物質として使用される。帯電極性が負帯電の場合には、上記説明の逆になる。
感光層が積層構成の場合、帯電極性によって、添加される層が異なる可能性が出てくる。電荷発生層/電荷輸送層の順で感光層が積層されるが、負帯電で使用される場合には、メインには正孔が移動することになる。このため、上記式(2)、式(3)、及び式(4)の電子輸送剤は、電荷輸送層に添加される場合には添加剤のような形で使用され、電荷発生層に添加される場合には電子輸送物質として使用される。逆に正帯電で使用される場合には、メインには電子が移動することになる。このため、上記式(2)、式(3)、及び式(4)の電子輸送剤は、電荷輸送層に用いられる場合には電荷輸送物質として使用される。電荷発生層に使用される場合には添加剤のような形で使用される。
本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。近年、日常的にコンピュータの使用が行われるようになり、プリンターによる高速出力とともに、装置の小型も望まれている。従って、保護層を設け、耐久性を向上させることによって、本発明の高感度で異常欠陥のない感光体を有用に用いることができる。
本発明で使用できる保護層としては、特開2002−278120号公報等に記載のフィラーを分散した保護層、特開2005−115353号公報等に記載の光架橋型保護層、特開2002−31911号公報等に記載の電荷注入層のようなものが使用できる。
次に、図面を用いて本発明の画像形成装置を詳しく説明する。
図4は、本発明の画像形成プロセスおよび画像形成装置を説明するための概略図であり、下記に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図4において、感光体1は導電性支持体上に少なくとも特定の下引層と感光層が設けられてなり、感光層には前記式(2)、式(3)、及び式(4)で表される電子輸送剤を含有してなる。感光体はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電ローラ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ、転写ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
これらの、帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式が望ましい。接触帯電方式においては帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。ここでいう接触方式の帯電部材とは、感光体表面に帯電部材の表面が接触するタイプのものであり、帯電ローラ、帯電ブレード、帯電ブラシの形状がある。中でも帯電ローラや帯電ブラシが良好に使用される。
また、近接配置した帯電部材とは、感光体表面と帯電部材表面の間に200μm以下の空隙(ギャップ)を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。空隙の距離から、コロトロン、スコロトロンに代表される公知の帯電器とは区別されるものである。本発明において使用される近接配置された帯電部材は、感光体表面との空隙を適切に制御できる機構のものであればいかなる形状のものでも良い。例えば、感光体の回転軸と帯電部材の回転軸を機械的に固定して、適正ギャップを有するような配置にすればよい。中でも、帯電ローラの形状の帯電部材を用い、帯電部材の非画像形成部両端にギャップ形成部材を配置して、この部分のみを感光体表面に当接させ、画像形成領域を非接触配置させる、あるいは感光体非画像形成部両端ギャップ形成部材を配置して、この部分のみを帯電部材表面に当接させ、画像形成領域を非接触配置させる様な方法が、簡便な方法でギャップを安定して維持できる方法である。特に特開2002−148904号、特開2002−148905号に記載された方法は良好に使用できる。帯電部材側にギャップ形成部材を配置した近接帯電機構の一例を図5に示す。前記方式を用いることで、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能、さらには、トナー等による汚れが生じない、接触による機械的摩耗が発生しない等の利点を有していることから良好に使用される。さらに印加方式としては、交流重畳を用いることでより帯電ムラが生じにくい等の利点を有し、良好に使用できる。
このような接触方式の帯電部材あるいは非接触帯電方式の帯電部材を用いた場合、感光体の絶縁破壊を生じやすいという欠点を有している。しかしながら、本発明に用いられる感光体は、電荷ブロッキング層とモアレ防止層の積層構成からなる中間層を有し、更に感光層には電荷発生物質の粗大粒子が含有されていないため、感光体の耐圧性が極めて高い。このため、感光体の絶縁破壊に対する耐性が高く、上記帯電部材のメリット(帯電ムラ防止)が生かせるものである。
このような帯電部材により感光体に帯電が施されるが、通常の画像形成装置においては、感光体に起因する地汚れが発生し易いため、感光体にかかる電界強度は低めに設定される(40V/μm以下、好ましくは30V/μm以下)。これは、地汚れの発生が電界強度に依存し、電界強度が上昇すると地汚れ発生確率が上昇するためである。しかしながら、感光体にかかる電界強度を低下させることは、光キャリア発生効率を低下させ、光感度を低下させる。また、感光体表面と導電性支持体との間にかかる電界強度が低下するため、感光層で生成する光キャリアの直進性が低下し、クローン反発による拡散が大きくなり、結果として解像度の低下を生じる。一方、本発明の電子写真感光体を用いることにより、地汚れ発生確率を極端に低下させることが出来るため、電界強度を必要以上に低下させる必要はなくなり、40V/μm以上の電界強度下でも使用できるようになる。このため、感光体光減衰におけるゲイン量を十分に確保でき、後述の現像(ポテンシャル)に対しても大きな余裕度を生み出し、解像度も低下させることなく現像が出来るようになる。
また、画像露光部5には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度を確保できる光源が使用される。
除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800nmの長波長光を有するため、前述の電荷発生材料であるフタロシアニン顔料が高感度を示すことから良好に使用される。かかる光源等は、図4に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られ、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
図6は、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は導電性支持体上に少なくとも特定の下引層と感光層が設けられてなり、感光層には前記式(2)、式(3)、及び式(4)で表される電子輸送剤を含有してなる。駆動ローラ22a,22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、第6図において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7に示すものが挙げられる。感光体1は導電性支持体上に少なくとも特定の下引層と感光層が設けられてなり、感光層には前記式(2)、式(3)、及び式(4)で表される電子輸送剤を含有してなる。
図8は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図8において、符号1C、1M、1Y、1Kはドラム状の感光体であり、感光体1は導電性支持体上に少なくとも特定の下引層と感光層が設けられてなり、感光層には前記(1)式で表される電子輸送剤を含有してなる。
この感光体1C、1M、1Y、1Kは図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材2C、2M、2Y、2K、現像部材4C、4M、4Y、4K、クリーニング部材5C、5M、5Y、5Kが配置されている。帯電部材2C、2M、2Y、2Kは、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電部材2C、2M、2Y、2Kと現像部材4C、4M、4Y、4Kの間の感光体表面側より、図示しない露光部材からのレーザー光3C、3M、3Y、3Kが照射され、感光体1C、1M、1Y、1Kに静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体1C、1M、1Y、1Kを中心とした4つの画像形成要素6C、6M、6Y、6Kが、転写材搬送手段である転写搬送ベルト10に沿って並置されている。転写搬送ベルト10は各画像形成ユニット6C、6M、6Y、6Kの現像部材4C、4M、4Y、4Kとクリーニング部材5C、5M、5Y、5Kの間で感光体1C、1M、1Y、1Kに当接しており、転写搬送ベルト10の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ11C、11M、11Y、11Kが配置されている。各画像形成要素6C、6M、6Y、6Kは現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図8に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。まず、各画像形成要素6C、6M、6Y、6Kにおいて、感光体1C、1M、1Y、1Kが矢印方向(感光体と連れ周り方向)に回転する帯電部材2C、2M、2Y、2Kにより帯電され、次に感光体の外側に配置された露光部(図示しない)でレーザー光3C、3M、3Y、3Kにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。次に現像部材4C、4M、4Y、4Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材4C、4M、4Y、4Kは、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーで現像を行う現像部材で、4つの感光体1C、1M、1Y、1K上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙7は給紙コロ8によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ9で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト10に送られる。転写搬送ベルト10上に保持された転写紙7は搬送されて、各感光体1C、1M、1Y、1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。感光体上のトナー像は、転写ブラシ11C、11M、11Y、11Kに印加された転写バイアスと感光体1C、1M、1Y、1Kとの電位差から形成される電界により、転写紙7上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙7は定着装置12に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各感光体1C、1M、1Y、1K上に残った残留トナーは、クリーニング装置5C、5M、5Y、5Kで回収される。尚、第8図の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(6C、6M、6Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。更に、図8において帯電部材は感光体と当接しているが、図5に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、各々の電子写真要素はプロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
−電子輸送剤の合成−
本発明に用いる式(2)で表される電荷輸送物質は、下記に示す構造骨格を有する。
式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。
該置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1〜25、好ましくは炭素数1〜10の炭素原子を有するアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基といった直鎖状のもの、i―プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メチルプロピル基、ジメチルプロピル基、エチルプロピル基、ジエチルプロピル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルペンチル基、メチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基等の分岐状のもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基で置換されたアルキル基、シアノ基で置換されたアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたアルキル基に含まれる。
該置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数3〜25、好ましくは炭素数3〜10の炭素原子を有するシクロアルキル環、具体的には、シクロプロパンからシクロデカンまでの同属環、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン等のアルキル置換基を有するもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基等で置換されたシクロアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のシクロアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたシクロアルキル基に含まれる。
置換または無置換のアラルキル基としては、上述の置換または無置換のアルキル基に芳香族環が置換した基が挙げられ、炭素数6〜14のアラルキル基が好ましい。より具体的には、ベンジル基、ペルフルオロフェニルエチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ターフェニルエチル基、ジメチルフェニルエチル基、ジエチルフェニルエチル基、t−ブチルフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが例示できる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
更に具体的には、下記式(5)乃至式(9)で表される電子輸送物質が、得られる画像が高品質である点で好ましい。尚、式中Meはメチル基を示す。
該式(2)で表される電子輸送物質の製造方法としては、下記の方法が例示できる。ナフタレンカルボン酸若しくはその無水物をアミン類と反応させ、モノイミド化する方法、ナフタレンカルボン酸若しくはその無水物を緩衝液によりpH調整してジアミン類と反応させる方法等により得られる。モノイミド化は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、酢酸、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルエチレンウレア、ジメチルスルホキサイド等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。pH調整には水酸化リチウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液をリン酸等の酸との混合により作製した緩衝液を用いる。カルボン酸とアミン類やジアミン類とを反応させて得られたカルボン酸誘導体脱水反応は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限は無いがベンゼン、トルエン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、無水酢酸等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。いずれの反応も、無触媒若しくは触媒存在下でおこなってよく、特に限定されないが例えばモレキュラーシーブスやベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸等を脱水剤として用いることが例示できる。
尚、上述の式(5)で表される電子輸送物質は、下記の方法により製造した。
第一工程
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン2.14g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体A 2.14g(収率31.5%)を得た。
第二工程
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体A 2.0g(5.47mmol)と、ヒドラジン一水和物0.137g(2.73mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、式(5)で表される電子輸送物質1を0.668g(収率33.7%)得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=726のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素69.41%、水素5.27%、窒素7.71%に対し、実測値で炭素69.52%、水素5.09%、窒素7.93%あった。
尚、上述の式(6)で表される電子輸送物質は、下記の方法により製造した。
第一工程
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物10g(37.3mmol)とヒドラジン一水和物0.931g(18.6mmol)、p−トルエンスルホン酸20mg、トルエン100mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、二量体C 2.84
g(収率28.7%)を得た。
第二工程
100ml4つ口フラスコに、二両体C 2.5g(4.67mmol)、DMF30mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノプロパン0.278g(4.67mmol)とDMF10mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、モノイミド体C 0.556g(収率38.5%)を得た。
第三工程
50ml4つ口フラスコに、モノイミド体C 0.50g(1.62mmol)、DMF10mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン0.186g(1.62mmol)とDMF5mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、上記式(6)で表される電子輸送物質2を0.243g(収率22.4%)得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=670のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素68.05%、水素4.51%、窒素8.35%に対し、実測値で炭素68.29%、水素4.72%、窒素8.33%あった。
尚、上述の式(7)で表される電子輸送物質は、下記の方法により製造した。
第一工程
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノプロパン1.10g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体B 2.08g(収率36.1%)を得た。
第二工程
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体B 2.0g(6.47mmol)と、ヒドラジン一水和物0.162g(3.23mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、上記式(7)で表される電子輸送物質3を0.810g(収率37.4%)得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=614のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素66.45%、水素3.61%、窒素9.12%に対し、実測値で炭素66.28%、水素3.45%、窒素9.33%あった。
尚、上述の式(8)で表される電子輸送物質は、下記の方法により製造した。
第一工程
200ml4つ口フラスコに、上述した二量体C 5.0g(9.39mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン 1.08g(9.39mmol)DMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、モノイミド体D 1.66g(収率28.1%)を得た。
第二工程
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体D 1.5g(2.38mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノオクタン0.308g(2.38mmol)とDMF10mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、式(8)で表される電子輸送物質4 0.328g(収率18.6%)を得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=740のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素69.72%、水素5.44%、窒素7.56%に対し、実測値で炭素69.55%、水素5.26%、窒素7.33%あった。
尚、上述の式(9)で表される電子輸送物質は、下記の方法により製造した。
第一工程
200ml4つ口フラスコに、上述した二量体C 5.0g(9.39mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン 1.08g(9.39mmol)DMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、モノイミド体D 1.66g(収率28.1%)を得た。
第二工程
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体D 1.5g(2.38mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、6−アミノウンデカン0.408g(2.38mmol)とDMF10mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、上述した式(9)で表される電子輸送物質5 0.276g(収率14.8%)を得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=782のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素70.57%、水素5.92%、窒素7.16%に対し、実測値で炭素70.77%、水素6.11%、窒素7.02%あった。
また本発明で用いる上記式(3)で表される電荷輸送剤は主に以下の2通りの合成方法によって合成される。
式(3)で表される化合物の繰り返し単位nは1から100の整数である。
繰り返し単位nは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を、繰り返し単位の分子量で割ることで、求めることができる。すなわち化合物は分子量に分布をもった状態で存在する。nが100をこえると化合物の分子量が大きくなり、各種溶媒に対する溶解性が落ちるため、100以下が好ましい。一方例えばnが1の場合はナフタレンカルボン酸の三量体であるが、R1、R2の置換基を適切に選択することにより、オリゴマーでも優れた電子移動特性が得られる。このように繰り返し単位nの数により、オリゴマーからポリマーまで幅広い範囲のナフタレンカルボン酸誘導体が合成される。オリゴマー領域の分子量が小さい範囲では、段階的に合成することで、単分散の化合物を得ることができる。分子量が大きい化合物の場合は、分子量に分布をもった化合物が得られる。
式(3)で表される電荷輸送剤としては具体的に以下の化合物が例示できる。
式(3−1)で示される化合物を電子輸送剤6、式(3−2)で示される化合物を電子輸送剤7、及び式(3−3)で示される化合物を電子輸送剤8とする。
上述の式(3−1)で表される電荷輸送剤6は、下記の方法により製造される。
第一工程
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノペンタン1.62g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体E3.49g(収率45.8%)を得た。
第二工程
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体E3.0g(7.33mmol)と、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物0.983g(3.66mmol)、ヒドラジン一水和物0.368g(7.33mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて2回精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、構造式(3−1)で表される化合物0.939g(収率13.7%)を得た。
質量分析(FD−MS)において、M/z=934のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素66.81%、水素3.67%、窒素8.99%に対し、実測値で炭素66.92%、水素3.74%、窒素9.05%であった。
またこれらの電荷輸送剤に加えて、上記式(4)で表される電荷輸送剤をさらに加えることにより、電荷輸送能を低下させることなく成膜時における収縮を緩和し、アルミ蒸着したPETシートやニッケルベルト等のフレキシブルなシートを支持体とした場合、一般にカールと称される反りが減少させることが可能となる。また添加により膜が緻密となるため酸性ガスによる影響をさらに受けにくくなるという利点、即ち耐ガス性がより向上するという効果がある。
式(4)で表される電荷輸送剤としては具体的に以下の化合物が例示できる。
式(4−1)で示される化合物を電子輸送剤9、及び式(4−2)で示される化合物を電子輸送剤10とする。
これらの電荷輸送剤の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは電荷輸送剤全体量に対して1%から50%程度であり、より好ましくは5%〜30%である。添加量が1%未満であると膜質改善が軽微で明確な効果が見られず、50%以上となると電荷輸送能がやや低下する傾向がみられる場合があるからである。
−チタニルフタロシアニン結晶の合成−
(顔料合成例1)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。これを顔料1とする。
前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。なお、顔料合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図9に示す。
また、顔料合成例1で得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図10に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
(顔料合成例2)
−チタニルフタロシアニン結晶の合成−
顔料合成例1の方法に従って、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを合成し、次のように結晶変換を行い、顔料合成例1よりも一次粒子の小さなフタロシアニン結晶を得た。
特開2004−83859号公報、実施例1に準じて、顔料合成例1で得られた結晶変換前の水ペースト60質量部にテトラヒドロフラン400質量部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5質量部を得た。これを顔料2とする。顔料合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で44倍の量を用いた。
顔料合成例1で作製された結晶変換前チタニルフタロシアニン(水ペースト)の一部をイオン交換水でおよそ1質量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製のネットですくい取り、チタニルフタロシアニンの粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM、日立:H−9000NAR)にて、75000倍の倍率で観察を行った。平均粒子径として、以下のように求めた。
上述のように観察されたTEM像をTEM写真として撮影し、映し出されたチタニルフタロシアニン粒子(針状に近い形)を30個任意に選び出し、それぞれの長径の大きさを測定する。測定した30個体の長径の算術平均を求めて、平均粒子径とした。以上の方法により求められた顔料合成例1における水ペースト中の平均粒子径は、0.06μmであった。
また、顔料合成例1及び顔料合成例2における濾過直前の結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶を、テトラヒドロフランでおよそ1質量%になるように希釈し、上の方法と同様に観察を行った。上記のようにして求めた平均粒子径を表1に示す。
なお、顔料合成例1及び顔料合成例2で作製されたチタニルフタロシアニン結晶は、必ずしも全ての結晶の形が同一ではなかった(三角形に近い形、四角形に近い形など)。このため、結晶の最も大きな対角線の長さを長径として、計算を行った。
顔料合成例2で作製した顔料2は、先程と同様の方法でX線回折スペクトルを測定した。その結果、顔料合成例2で作製した顔料2のX線回折スペクトルは、顔料合成例1で作製した顔料1のスペクトルと一致した。
(実施例1)
長さ340mm、直径30mmのアルミシリンダー(JIS1050)を導電性支持体とし、下記組成の導電層塗工液、バリア層塗工液、感光層塗工液を塗布、乾燥し、10μmの導電層、0.5μmのバリア層、20μmの感光層を形成して感光体を得た(感光体1とする)。
◎導電層塗工液
酸化錫−酸化アンチモン粉末 140部
(比抵抗:106Ω・cm、平均1次粒径0.4μm)
アルキッド樹脂 33.6部
[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、 大日本インキ化学工業製]
メラミン樹脂 18.7部
[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、大日本インキ化学工業製]
2−ブタノン 100部
◎バリア層塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(FR101:鉛市製) 5部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
◎感光層塗工液
まず、電荷発生材料として先に合成した顔料1を30重量部、シクロヘキサンノン970重量とともにボールミル装置にて2時間分散せしめ、電荷発生材料分散液とした。これとは別にテトラヒドロフラン340重量部に、Z型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量;4万、帝人化成社製)49重量部、先に合成した電子輸送剤1を20重量部、下記構造式の化合物29.5重量部、及びシリコーンオイル(KF50−100CS 信越化学工業社製)0.1重量部を溶解せしめ、これに前述の電荷発生材料分散液66.6重量部を添加し撹拌して感光層塗工液とした。
(実施例2)
実施例1において、バリア層の膜厚を0.3μmとした以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体2とする)。
(実施例3)
実施例1において、バリア層の膜厚を1.5μmとした以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体3とする)。
(実施例4)
実施例1において、バリア層の膜厚を4.0μmとした以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体4とする)。
(実施例5)
実施例1において、バリア層の膜厚を0.1μmとした以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体5とする)。
(実施例6)
実施例1におけるバリア層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体6とする)。
◎バリア層塗工液
アルコール可溶性ナイロン(東レ:アミランCM8000) 4部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
(実施例7)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤2を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体7とする)。
(実施例8)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤3を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体8とする)。
(実施例9)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤4を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体9とする)。
(実施例10)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤5を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体10とする)。
(参考例11)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤6を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体11とする)。
(参考例12)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤7を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体12とする)。
(参考例13)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤8を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体13とする)。
(実施例14)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤1を18部と電子輸送剤9を2部とを用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体14とする)。
(実施例15)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤1を17部と電子輸送剤10を3部とを用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体15とする)。
(参考例16)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤6を18部と電子輸送剤9を2部とを用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体16とする)。
(参考例17)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに電子輸送剤6を16部と電子輸送剤10を4部とを用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体17とする)。
(実施例18)
実施例1における感光層塗工液において、使用した顔料1の代わりに顔料2を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体18とする)。
(比較例1)
実施例1において、導電層を設けない以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体19とする)。
(比較例2)
実施例1において、バリア層を設けない以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体20とする)。
(比較例3)
実施例1において、感光層塗工液に電子輸送剤1を使用しない以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体21とする)。
(比較例4)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに下記構造の物質を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体22とする)。
(比較例5)
実施例1において、使用した電子輸送剤1の代わりに下記構造の物質を用いた以外は、実施例1と同様に感光体を作製した(感光体23とする)。
(実施例19)
長さ340mm、直径30mmのアルミシリンダー(JIS1050)を導電性支持体とし、下記組成の導電層塗工液、バリア層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液を塗布、乾燥し、10μmの導電層、0.5μmのバリア層、0.3μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成して感光体を得た(感光体24とする)。
◎導電層塗工液
酸化錫−酸化アンチモン粉末 140部
(比抵抗:106Ω・cm、平均1次粒径0.4μm)
アルキッド樹脂 33.6部
[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、 大日本インキ化学工業製]
メラミン樹脂 18.7部
[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、大日本インキ化学工業製]
2−ブタノン 100部
◎バリア層塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(FR101:鉛市製) 5部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
◎電荷発生層塗工液
下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
顔料合成例1で作製したチタニルフタロシアニン顔料 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノンおよび顔料を全て投入し、ローター回転数1200r.p.m.にて30分間分散を行ない、分散液を作製した。この分散液中の顔料粒子の粒度分布を、堀場製作所:CAPA−700にて測定した。その結果、平均粒径0.30μm、標準偏差0.19μmであった。
◎電荷輸送層塗工液
先に合成した電子輸送剤1 9部
Z型ポリカーボネート樹脂 10部
(帝人化成:パンライトTS2040)
テトラヒドロフラン 120部
シリコーンオイル 0.01部
(KF50−100CS 信越化学工業社製)
テトラヒドロフランにZ型ポリカーボネート樹脂を溶解し、次いで電子輸送剤1、シリコーンオイルの順に加えて、不溶部がなくなった時点で電荷輸送層塗工液とした。
(実施例20)
実施例19において、使用した電子輸送剤の代わりに電子輸送剤1を8部と電子輸送剤9を1部とを用いた以外は、実施例19と同様に感光体を作製した。(感光体25とする)
(比較例6)
実施例19において、導電層を設けなかった以外は、実施例19と同様に感光体を作製した(感光体26とする)。
(比較例7)
実施例19において、バリア層を設けなかった以外には、実施例19と同様に感光体を作製した(感光体27とする)。
(比較例8)
実施例19における電荷輸送層塗工液に使用した電子輸送剤1の代わりに、下記構造の物質を用いた以外は実施例19と同様に感光体を作製した(感光体28とする)。
(比較例9)
実施例19における電荷輸送層塗工液に使用した使用した電子輸送剤1の代わりに、下記構造の物質を用いた以外は実施例19と同様に感光体を作製した(感光体29とする)。
(実施例21)
以上のように作製した感光体1を図4に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として655nmLEDを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように帯電部材への印加バイアス、半導体レーザーの光量を設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続1万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): +500V
現像バイアス: +350V
現像部位における露光部表面電位: +70V
評価は、1万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した。測定方法としては、図4に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を+500Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。結果を表2に示す。
また、1万枚後において白ベタ画像を出力し、地肌部の汚れを評価した。尚、地汚れ画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。結果を表2に示す。
(実施例22〜30、参考例31〜33、実施例34、35、参考例36、37、実施例38〜40、比較例10〜18)
実施例21において使用した感光体1の代わりに、感光体2〜29を用いた以外は実施例21と同様に評価を行った。プロセス条件として、感光体帯電電位(未露光部電位)は+500V、現像バイアスは+350Vになるように固定した。露光量は、実施例21における感光体初期状態において、露光部電位が70Vになる光量と同じ光量に設定し、疲労試験前後における露光部表面電位を測定した。結果を表2に示す。
(実施例41)
長さ340mm、直径30mmのアルミシリンダー(JIS1050)を導電性支持体とし、下記組成の導電層塗工液、バリア層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液を順次塗布、乾燥し、10μmの導電層、0.5μmのバリア層、0.3μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成して感光体を得た(感光体30とする)。
◎導電層塗工液
酸化錫−酸化アンチモン粉末 140部
(比抵抗:106Ω・cm、平均1次粒径0.4μm)
アルキッド樹脂 33.6部
[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、 大日本インキ化学工業製]
メラミン樹脂 18.7部
[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、大日本インキ化学工業製]
2−ブタノン 100部
◎バリア層塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(FR101:鉛市製) 5部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
◎電荷発生層塗工液
下記組成の分散液を下に示す条件のビーズミリングにより作製した。
顔料合成例1で作製したチタニルフタロシアニン顔料 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
先に合成した電子輸送剤1 1部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラール及び電子輸送剤1を溶解した2−ブタノンおよび顔料を全て投入し、ローター回転数1200rpmにて30分間分散を行ない、分散液を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
下記構造の電荷輸送物質 7部
Z型ポリカーボネート樹脂 10部
(帝人化成:パンライトTS2040)
テトラヒドロフラン 120部
シリコーンオイル 0.01部
(KF50−100CS 信越化学工業社製)
テトラヒドロフランにZ型ポリカーボネート樹脂を溶解し、次いで電荷輸送物質、シリコーンオイルの順に加えて、不溶部がなくなった時点で電荷輸送層塗工液とした。
(比較例19)
実施例41における電荷発生層塗工液に使用した電子輸送剤1を使用しない以外は、実施例41と同様に感光体を作製した(感光体31とする)。
(実施例42)
以上のように作製した感光体30を図4に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として655nmLEDを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように帯電部材への印加バイアス、半導体レーザーの光量を設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続1万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V
現像部位における露光部表面電位: −110V
評価は、1万枚の画像印刷前後における感光体未露光部電位を測定した。測定方法としては、図4に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体17が初期状態で−900Vに帯電される印加バイアスに固定し、現像部位における未露光部表面電位を測定した。この際、感光体1周目と2周目について評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例20)
実施例42で使用した感光体30に代えて、感光体31を用いた以外は実施例42と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例43)
先に作製した感光体1を図7に示すようなプロセスカートリッジに装着し、図8に示すようなタンデム型フルカラー画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材として図5に示すような非接触ローラ帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として655nmLEDを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続1万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): +500V
現像バイアス: +350V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): +80V
評価は、1万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した(黒ステーション)。測定方法としては、図8に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を+500Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における露光部電位を測定した。
また、1万枚の印刷後において、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力して、カラー色の再現性について評価した。尚、色再現性評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。
更に、1万枚の印刷後において、白ベタ画像を出力し、地肌汚れ評価を行った。以上の結果を表4に示す。
(実施例44
〜52、参考例53〜55、実施例56、57、参考例58、59、実施例60〜62、比較例21〜29)
実施例43において使用した感光体1の代わりに、感光体2〜29を用いた以外は実施例43と同様に評価を行った。プロセス条件として、感光体帯電電位(未露光部電位)は+500V、現像バイアスは+350Vになるように固定した。露光量は、実施例43における感光体初期状態において、露光部電位が80Vになる光量と同じ光量に設定し、疲労試験前後における露光部表面電位を測定した。結果を表4に示す。
以上、詳細かつ具体的な発明から明らかなように、本発明によれば、画像形成装置の繰り返し使用時や、画像形成装置の置かれる環境変動等に対して、感光体の静電特性の変動が少なく、異常画像の発生の少ない電子写真感光体が提供される。
また、この電子写真感光体を用いる事により、常に安定した画像を出力することの出来る画像形成装置が提供され、また、取扱の利便性が高いプロセスカートリッジが提供される。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。