JP4739503B2 - 不均質イオン交換膜の形成方法及び装置 - Google Patents

不均質イオン交換膜の形成方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な不均質イオン交換膜、そのような膜の製造方法及び装置並びにそのような膜を用いたイオン除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水、飲料、化学薬品及び廃流等の流体の精製は、多種多様なシステムでおこなうことができ、複数の異なる最終物が得られる。超純水や飲料水目的の場合、精製では、塩気のある水又は塩水に含有される実質的な量のイオンの除去、濁り及び大きな粒子の除去、又は生物を殺すことが必要とされると思われる。また、このような精製では、逆浸透透過物及びDI透過物から実質的な量のイオンを除去することも必要とされると思われる。
【0003】
イオンの除去については、いくつかの基本的なシステムが商業的に受け入れられている:イオン交換、逆浸透、電気透析及び電気脱イオン。
【0004】
一般的に、流体の脱イオンに関する確立された方法には、蒸留、イオン交換、電気透析及び逆浸透などがある。蒸留では、水を蒸気相に移行させることにより水を汚染物から分離し、ほとんどの汚染物を残液として残す。イオン交換では、塩を水素イオン及び水酸化物イオンと交換することにより溶液からイオンを除去する。電気透析では、膜を使用して、直流電流の影響下でイオン移動により塩を除去する。逆浸透では、水透過性であるが溶質透過性ではない膜を使用して、水を膜を通して圧力により移動させることにより水を精製する。電気脱イオン(EDI)法では、イオン交換樹脂と膜とを組み合わせて使用して水を脱イオン化する。EDI装置は、バルク塩除去から逆浸透生成物水のさらなる精製に至るまでの広範な供給物を効率的に脱イオン化できる。
【0005】
典型的には、電気脱イオンでは、陽イオン交換膜のフラットシートと陰イオン交換膜のフラットシートとを多数交互に、2つの電極の間に配置し、イオン交換樹脂の混合床をこれらの膜の間に交互に添加する。
【0006】
樹脂ビーズを含むコンパートメントは、一般的に希薄コンパートメントと称される。イオンが移行して処理される隣接のコンパートメントは、濃縮コンパートメントと称される。濃縮コンパートメントは、通常希薄コンパートメントよりもはるかに薄く、希薄コンパートメントから移行してくる濃縮されたイオンを集める役割を果たす。濃縮コンパートメントは、さらなるイオン交換樹脂を含んでいてもいなくてもよい。
【0007】
流体流をこのシステムを介して供給し、電位(電圧)をかけると、イオンは電極の方向に移行し始める。この際、陰イオンは陽極に、陽イオンは陰極に移行する。
【0008】
希薄コンパートメントでは、イオンは、「合致する」膜に出会ったときのみ、隣接濃縮コンパートメントに入ることができる。すなわち、陰イオンが陰イオン膜と出会い、陽イオンが陽イオン膜に出会ったときに隣接濃縮コンパートメントに入ることができる。
【0009】
濃縮コンパートメントでは、イオンは、電極への移行を続けるが、このときには「反対の」膜に出会う。すなわち、陰イオンは陽イオン膜に出会い、陽イオンは陰イオン膜に出会う。これらの膜は、イオンの移動をブロックし、イオンを濃縮コンパートメントにトラップし、そこでゆすがれる。
【0010】
EDI法では、最終的には、水は希薄コンパートメントで連続的に脱イオンされ、望ましくないイオンは濃縮コンパートメントから出る。
【0011】
米国特許第4,465,573号明細書(Harry O’Hare:Method and Apparatus for Purification of Water(水の精製方法及び装置))は、このような装置、及び種々の最終ユーザの間で商業的に受け入れられ続けている電気脱イオンの登場を記載している。
【0012】
このような精製装置にとって重要な要素は、選択的にイオンを拡散及び吸着し、一定の他のイオン並びに非イオン化溶質及び溶媒を排除できる膜である。これらの膜は、一般的に「イオン交換膜」と称され、水、食品、飲料、化学薬品及び廃流の処理のための分別、輸送消耗及び電気再生、精製のための多種多様な装置に用いられている。このような膜は、電気化学装置や電気泳動だけでなく、分析装置及び処理用途にも用いられる。
【0013】
市販のイオン交換膜は、一般的に均質膜と不均質膜の2種類に分類される。均質膜は、膜の全容積(強度向上のために使用されることのある支持材は除く)を、反応性ポリマーから作製される。一方、不均質膜は、電気化学的性質を付与するイオン交換樹脂と物理的強度及び一体性を付与するバインダーとを含有する複合材料から形成されている。
【0014】
イオン交換樹脂粒子は、膜間の導電率増加ブリッジとしての役割を果たすイオン移送経路としての役割を果たしてイオン移動を促進する。減少した液体塩分濃度、高電圧及び低流動性の条件下では、樹脂も、樹脂粒子又は膜の表面での薄層における水のイオンへの分割のためH+形及びOH−形に転化する。これにより、さらに得られる水の品質が向上する。電気脱イオン化中、樹脂粒子内のイオン濃度は、比較的一定に維持され、樹脂粒子から濃縮コンパートメントへのイオンの移行は、精製されている水からの同一又は類似のイオンの樹脂粒子への移行により実質的にバランスされている。
【0015】
このような膜は、高温耐性、低圧力損失並びに低内部漏れ及び外部漏れの要件を満たす必要がある。低圧力損失は、ポンプ要件を減少させ、また膜を互いにより近づけて配置できるので、水流の電気抵抗により生じる電力消費を減少できる。選択的イオン電気透析の場合、選択的イオン交換樹脂は、本発明の膜の樹脂要素として使用できる。移送消耗電気透析の場合、陰イオン樹脂と陽イオン樹脂との混合物又は両性樹脂を、陰イオン膜又は陽イオン膜の一つの樹脂要素の代わりに使用できる。大きい、多価又は遅拡散イオンの輸送の場合、低架橋イオン交換樹脂を膜に使用できる。
【0016】
典型的には、出発イオン交換樹脂ビーズは、外観が半透明球状ビーズで、有効サイズが約0.25〜約0.75mmである物理的特性を有する。イオン交換樹脂の化学安定性は、とりわけ、動作温度に依存し、一般的に陽イオン交換樹脂については285°F、陰イオン交換樹脂については195°Fを超えてはならない。樹脂ビーズは、一般的に、硫酸(陽イオン)又は第四アンモニウム官能基(陰イオン)等の活性官能基を架橋ポリスチレンに組み込む方法により製造される。
【0017】
上記膜は、逆浸透(RO)法、電気透析(ED)法及び電気透析反転(EDR)法の装置に有用である。このような膜は、特に電気脱イオン及び電気脱イオン反転用途に有用である。これらの用途では、漏れ及び圧力損失の減少が重要であり、また装置内に膜を容易に接着できる利点がある。また、元素並びに水素、水酸化物、ヒドロニウムイオン、酸素及び塩素等のイオンが電気脱イオン装置でインサイチュ生成することがあるので、耐薬品性は特に重要である。さらに、膜が平滑であると、樹脂充填の自動化及び膜間樹脂の逆洗の必要性の排除を容易にできる。最後に、接着剤の排除により、電気脱イオン装置を超純水製造に使用するときの顕著な利点である抽出物レベルを減少させる。
【0018】
多種多様なこのような膜は、当該技術分野において公知である。これに関して、例えば、このような膜は、米国特許第3,627,703号、第4,167,551号、第3,876,565号、第4,294,933号、第5,089,187号、第5,346,924号、第5,683,634号、第5,746,916号、第5,814,197号、第5,833,896号及び第5,395,570号各明細書に記載されている。
【0019】
米国特許第5,346,924号明細書(Giuffrida)は、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)又は高分子量高密度ポリエチレン(HMWHDPE)を含むバインダーを用いた不均質イオン交換膜及びその製造方法を開示している。この膜は、イオン交換樹脂の顆粒又はペレット及びLLDPEバインダー又はHMWHDPEバインダーから作製される。これらの原料は、熱可塑性押出法、熱プレス法、又は圧力及び熱を用いて一定幅と厚さ又は他の制御形成された寸法を有する乾燥複合シートを作製する別の同様の方法において原料として使用されているものである。次に、このような方法により形成される膜シートを、コンディショニングし、水処理により活性化する。
【0020】
通常、不均質イオン交換膜は、粒状又は粉末ポリマーバインダーをミキサーに入れ、材料が溶融するまで加熱することにより作製される。次に、イオン交換樹脂を粉末状で添加後、得られた組成物を混合して溶融物全体にイオン交換樹脂を均一に分布させる。次に、溶融キャスト混合物を、キャストするか、押出機に送ることができる。
【0021】
溶融混合物をキャストしてストランド状とする場合、ストランドを、一般的に冷却後ペレット化する。その後、ペレットを、押出機又は熱と圧力とを組み合わせた他のポリマー処理装置に供給する。溶融及びフィルム形成は、一般的に比較的高温、例えば、300〜350°Fの範囲で実施する。
【0022】
米国特許第3,627,703号明細書(Kojima等)は、微視的発泡し且つ三次元分子配向したポリプロピレン樹脂マトリックスと、それに分散させたイオン交換性材料とを含むポリプロピレン樹脂複合体を開示している。一実施態様によれば、この複合体は、固体ポリプロピレンマトリックスと、より大きな膨潤性を有するイオン交換材料とを含む前駆体複合体を、酸処理及びアルカリ処理を含む化学処理に附することを含む方法により製造される。一具体的態様によれば、ポリプロピレン樹脂及びイオン交換材料を、ポリプロピレン樹脂の融点より高い温度で混練する。高温での混練に続いて、混合物を、成形(フォーミング又はモールディング)した後、化学処理する。
【0023】
バインダーとしてのポリプロピレンの長所を認める一方で、米国特許第3,627,703号明細書(Kojima等)は、樹脂材料を多段溶融及び温度サイクルに附するイオン交換膜の製造方法を開示している。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、当業者は、処理パラメータを正確に制御して活性イオン部位及び組み込まれた樹脂材料の他の所望の特性を保持すると同時に、電気脱イオン等の要求される環境に必要とする構造的一体性を有する不均質イオン交換膜を提供する、不均質イオン交換膜の効率的な製造方法を非常に必要としている。本発明は、これらの必要性を満たすものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ポリマーバインダー及び粉末イオン交換樹脂の所定のインライン配合及び押出による新規な不均質イオン交換膜形成方法及び装置が提供される。イオン交換樹脂は、後半のプロセス段階で、押出用ダイヘッドに移送する前に比較的低温及び短い滞留時間で溶融マトリックスポリマーに配合する。好ましい実施態様では、インライン配合装置は、二軸スクリュー配合押出機を含み、この二軸スクリュー配合押出機により、圧縮して配合ポリマー溶融物を押出用ダイヘッドに移送する前に、イオン交換樹脂及びポリマー溶融物への添加剤の後半段階での混練及び混合をおこなう。したがって、配合ポリマー溶融材料を、過剰の熱及び剪断に暴露しないので、得られる不均質イオン交換膜の最終的な特性が高まる。得られた不均質イオン交換膜及びこのような膜を利用した流体流の処理装置も提供される。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、不均質イオン交換膜の形成方法であって、
a)プロピレンバインダー供給材料を溶融手段を備えたインライン配合押出機に供給し、前記ポリマーバインダーを混練し且つ押出用シートダイヘッドに移行させる工程であって、前記押出機が添加物を前記溶融ポリマーバインダーにインラインで供給及び配合するための手段をさらに備えている工程と、
b)前記押出機内で前記ポリマーバインダーを、前記ポリマーバインダーの軟化点と前記ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲で維持して溶融マトリックスポリマーを形成する工程と、
c)前記溶融マトリックスポリマーを混練して均質マトリックスを形成する工程と、
d)続いて、粉末イオン交換樹脂を、工程c)で得られた前記溶融マトリックスポリマーに添加し、前記ポリマーバインダーの軟化点と前記ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲に維持して混合して、滞留時間中に前記押出機内で均質配合溶融物を形成する工程と、
e)工程d)で得られた前記配合溶融ポリマーマトリックスを、押出用シートダイヘッドに直接移して不均質イオン交換膜を形成する工程と、
を含む。
【0027】
押出しに続いて、この新規な膜を、脱イオン水浴中で、膨張が生じるまで少なくとも2時間180°Fの温度で洗浄するのが好ましい。
【0028】
好ましい実施態様では、本発明の装置は、二軸スクリュー配合押出機を備えており、前記押出機が、第一供給帯域と、第二溶融帯域と、溶融物を均質に混練するための第三帯域と、前記第三帯域の下流に設けられたポリマー溶融物へ添加物を供給する手段と、前記ポリマー溶融物への添加物の混練及び混合を更におこなう第四帯域と、得られた配合ポリマー溶融物に押出剤を混合する第五帯域と、前記配合ポリマー溶融物を押出用ダイヘッドに移すための第六圧縮帯域とを備えている。
【0029】
任意のコンピュータ処理装置により、押出システムのバランスを連続的に監視及び修正して本発明による不均質膜の形成方法を実施できる。制御ソフトウエアは、押出システムにおける主要点からの所定のデータを解析するアルゴリズムプログラムを利用し、数値計算をおこない、押出機のスクリューRPM、温度範囲、滞留時間及び供給量の必要な修正をおこなうものが好ましい。
【0030】
好ましいポリマーマトリックスは、ダイヘッドから押出される好ましいポリマー溶融物を20重量%〜80重量%含む。マトリックス用の好ましいポリマーバインダーは、極めて狭い分子量分布(MWD)、均一組成分布(CD)及び狭い立体規則性分布(TD)のポリマーを生成する単一部位触媒によるメタロセンプロピレンポリマーである。上記好ましいポリマーは、125〜130℃の範囲内の比較的低い融点を有する。メタロセンプロピレンポリマーの狭い分子量分布により、薄膜の押出しを可能にする独特のレオロジーを示す。さらに、メルトフローレート(MFR)により、反応器において、処理変動ダウンストリームの減少及びポスト反応器制御レオロジー(CR)の必要性の排除ができるように正確に目標を定めることができる。可能な分子量は、0.01〜5,000のMFR範囲である。好ましいポリマーの典型的な分子量分布は、2.0である。狭い分子量分布と狭い立体規則性分布は、CR処理の排除と相まって、低分子量分子を実質的に減少させ、したがって、抽出分を顕著に減少させる。
【0031】
ポリマーバインダーに分散させるイオン交換樹脂は、陰イオン性、陽イオン性、両性のいずれのイオン交換材料であってもよく、別のイオン形を使用してもよい。好ましくは、好ましいポリプロピレン樹脂の溶融点範囲で安定であるイオン交換樹脂を、配合ポリマーマトリックスの製造に用いる。
【0032】
したがって、本発明による不均質イオン交換膜は、電気脱イオンモジュールの作製に特に有用である。本発明の方法により、樹脂イオン交換材料が過剰の熱及び剪断に暴露されないので向上した特性を示すような膜を形成するための、効率的且つ経済的な方法が提供される。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、ポリマーバインダー及び粉末イオン交換樹脂の所定のインライン配合及び押出しによる不均質イオン交換膜を形成するための新規な形成方法及び装置が提供される。イオン交換樹脂を、後半のプロセス段階で、押出用シートダイヘッドへの移送の前に、比較的低温及び短い滞留時間で溶融マトリックスポリマーに配合する。
【0034】
したがって、配合ポリマー溶融材料が過剰な熱及び剪断に暴露されないので、得られる不均質イオン交換膜の最終的な特性が高まる。
【0035】
典型的には、有機分子は、炭素原子からなる骨格が水素に覆われてなり、他の原子からなる原子団がその骨格に結合している。これらの結合基は、常に化学反応性又は作用の部位であることから、官能基と称される。
【0036】
これに関して、2つの原子を共有結合でいっしょに保持するのに関与するエネルギーは以下の通りであることが一般的に分かっている:
1.運動エネルギー(運動)及び熱(実質的に分子運動)
2.a)電気的力(異なる、反発等の電荷の引力)から生じる位置エネルギー
【0037】
より高温では、ランダムな分子運動のエネルギーが増加し、結合エネルギーを超え、したがって、共有結合が切断されることがしばしばある。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、
a)プロピレンバインダー供給材料を溶融手段を備えたインライン配合押出機に供給し、前記ポリマーバインダーを混練し且つ押出用シートダイヘッドに移行させる工程であって、前記押出機が添加物を前記溶融ポリマーバインダーにインラインで供給及び配合するための手段をさらに備えている工程と、
b)前記押出機内で前記ポリマーバインダーを、前記ポリマーバインダーの軟化点と前記ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲で維持して溶融マトリックスポリマーを形成する工程と、
c)前記溶融マトリックスポリマーを混練して均質マトリックスを形成する工程と、
d)粉末イオン交換樹脂を、工程c)で得られた前記溶融マトリックスポリマーに添加し、前記ポリマーバインダーの軟化点と前記ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲に維持して混合して、滞留時間中に前記押出機内で均質配合溶融物を形成する工程と、
e)工程d)で得られた前記配合溶融ポリマーマトリックスを、押出用シートダイヘッドに直接移して不均質イオン交換膜を形成する工程と、
を含む。
【0039】
押出しに続いて、この新規な膜を、脱イオン水浴中で、膨張及び完全水和が生じるまで少なくとも2時間180°Fの温度で洗浄するのが好ましい。
【0040】
本発明によれば、イオン交換樹脂を、マトリックスを溶融且つ最初の混練に附した後にポリマーマトリックスに添加することが重要である。イオン交換樹脂のこの後半の段階の処理により、活性官能基の共有結合が破壊されることを最小限に抑えることができる。
【0041】
複合体に分散させるイオン交換材料は、陰イオン性、陽イオン性、両性のいずれのイオン交換材料であってもよく、別のイオン形を使用してもよい。
【0042】
本発明により利用できる代表的な粒状樹脂には、ゲル及びマクロ細孔イオン交換樹脂、例えば、スルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼン及びアミノ化ポリスチレン−ジビニルベンゼンであって、純粋な形態又は混合物(I型、II型又はIII型)、例えば、Dow Chemical社から商標DOWEXで入手できるもの;クロマトグラフィ用樹脂;二官能イオン交換樹脂、例えば、イオン抑制樹脂(Biord AG11A8)又はスルホネート及び第四アミン官能の両方を含有するイオン交換樹脂、スルホン化フェノール樹脂、ポリスチレンリン酸又はイミノ二酢酸樹脂、アミノ化アクリル樹脂又はアミノ化メタクリル樹脂、エポキシポリアミン樹脂、アミノエチルセルロース等がある。
【0043】
ポリマーマトリックスは、ダイヘッドから押出されるポリマー溶融物を20重量%〜80重量%含む。マトリックス用の好ましいポリマーは、極めて狭い分子量分布(MWD)、均一組成分布(CD)及び狭い立体規則性分布(TD)の好ましいポリマーを生成する単一部位触媒によるメタロセンポリプロピレンポリマーである。好ましいポリマーは、125〜130℃の範囲の融点を有する。メタロセンポリプロピレンポリマーの狭い分子量分布により、薄膜の押出しを可能にする新規のレオロジーを示す。さらに、メルトフローレート(MFR)により、反応器において、処理変動ダウンストリームの減少及びポスト反応器制御レオロジー(CR)の必要性の排除ができるように正確に目標を定めることができる。可能な分子量は、0.01〜5,000のMFR範囲である。好ましいポリマーの典型的な分子量分布は、2.0である。狭い分子量分布と狭い立体規則性分布は、CR処理の排除と相まって、低分子量分子を実質的に減少させ、したがって、得られた膜中の抽出分を顕著に減少させる。
【0044】
マトリックス用の好ましいポリマーの一つは、EXXON社がACHIEVE(商標)として販売しているポリプロピレンポリマーである。EXXPOL触媒の単一部位性により、狭い立体規則性分布(TD)が得られ、また、ランダムコポリマー(RCP)において、狭い組成分布(CD)が得られる。単一部位性により、一般的な清浄性に関する領域においてポリマーの性能上の利点が得られる。
【0045】
現時点での好ましい実施態様によれば、インライン配合装置は、二軸スクリュー配合押出機を含む。この二軸スクリュー配合押出機は、配合ポリマー溶融物を圧縮して押出用シートダイヘッドに移送する前に、後半段階でのイオン交換樹脂と任意の添加物のポリマー溶融物への混練及び混合を実施する。
【0046】
二軸スクリュー押出機は、共回転するものでも、カウンター回転するものでもよい。回転数、供給量、バレル及びダイに沿った温度及び液状化のための真空レベルなどのプロセスパラメータは、手動又は自動で制御してよい。読み出しには、好ましくは溶融物圧力、溶融物温度及びモータのアンペア数などがある。モータは、スクリューにエネルギーを入力し、回転スクリューは、剪断作用及びエネルギーをこのプロセスに付与して成分を混合し、液状化及び必要に応じてポンピングする。
【0047】
二軸スクリュー押出機へのフィーダシステムは、押出機の前端における圧力の安定性を確実に確保して、得られる膜の寸法安定性を確保しなければならない。好ましくは、重量計量供給装置を使用して、二軸スクリュー押出機から直接押出して、それらの使用にともなう組成上の精度を向上させる。
【0048】
マトリックスに添加物(単一又は複数)を混合する手段は、分散形でも分布形でもよい。好ましくは、本発明のシステムにおいてより狭い混合要素を使用する。これは、より分配性が高く、溶融分割速度が高くて伸長及び平面剪断作用が最小であることによる。分配混合要素により、伸長剪断作用なしに多くの溶融物分割が可能となる。
【0049】
二軸スクリュー押出機における圧力勾配は、選択されるスクリューにより決まる。翼要素を、スクリューチャンネルに充填されないようにするとともに、下流のベント/フィードバレル部の下の圧力がゼロであるように、効果的に配置することができる。これにより、下流の順次供給が容易となり、ベントの溢れを防止できる。
【0050】
好ましくは、100メッシュ未満のサイズ、得に32メッシュ未満のサイズの粉末状イオン交換材料を、サイドラム押出機を介して溶融マトリックスポリマーに添加して第二混練−混合帯域に入れる。第二混合帯域は、溶融マトリックスポリマー、すなわち、均質ポリプロピレンポリマーへの粉末状添加物を導入するサイド供給入口を備えている。第二混練−混合帯域は、大気ベントをおこないながら、ポリプロピレンの融点よりも高い温度に維持する。その後、溶融ポリマーマトリックスとイオン交換材料との配合物を、押出剤を添加することができる第三混練−混合帯域に供給する。典型的には、このような押出剤は、グリセリン等を含んでおり、さらなる処理移行及びダイヘッドを介した押出しを容易にする。第三混練−混合帯域は、好ましくはガス抜きのために真空条件下に維持し、その後、溶融混合物を、圧縮部を介してダイヘッドに移送する。
【0051】
このように、本発明による新規な不均質ポリプロピレンイオン交換膜は、二軸スクリュー配合押出機により形成される。これに関して、二軸スクリュー押出機は、連続的にメタロセンポリプロピレンバインダーを所定の配合により樹脂材料と、比較的小さな剪断作用及び伸長力により混合、液状化及び処理する。したがって、従来のペレット化工程と再溶融は不必要であり、過剰な熱及び剪断作用を回避できる。
【0052】
以下、本発明の方法及び装置の具体的実施例を示す。
【0053】
図1は、本発明によるインライン配合装置の好ましい実施態様の概略ブロック図である。図1に示すように、ポリマーバインダー供給材料を、例えば、重力供給装置10により、押出システム内の第一帯域12に供給する。第二帯域14では、押出機内のポリマーバインダーを、ポリマーバインダーの軟化点と、ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲で溶融させて、溶融マトリックスポリマーを形成する。第三帯域16では、溶融マトリックスポリマーを混練して、均質マトリックスを形成する。第四帯域18では、任意の添加物をポリマーマトリックスに供給できる。この添加物は、例えば、均質マトリックスの展性を高めるためのグリセリン等の通常の押出剤である。別の重力供給装置20により、粉末状イオン交換樹脂を、第五帯域22において溶融マトリックスポリマーに添加し、得られた配合マトリックスを、さらに混合及び混練してから、第六帯域24でガス抜きする。第七帯域26では、配合溶融ポリマーマトリックスを、圧縮し且つ押出用シートダイヘッド28へ供給して不均質イオン交換膜を形成する。
【0054】
メタロセンプロピレンポリマー供給材料を二軸スクリュー配合押出機に供給することにより、不均質ポリプロピレンイオン交換膜を製造した。この押出機は、第一供給帯域と、第二溶融帯域と、溶融物を均一に混練する第三帯域と、第三帯域の下流に配置された供給入り口ポートと、ポリマー溶融物への添加物のさらなる混練及び混合を実施する第四帯域と、配合ポリマー溶融物に押出剤を混合する第五帯域と、ガス抜き用の第六帯域と、配合ポリマー溶融物を押出用シートダイヘッドに移送する第七圧縮帯域とを備えている。バインダーは、押出機のポリマー溶融部内に130℃未満の温度で維持させて前記バインダーを溶融し且つ混練して均質溶融物を形成した。その後、混練溶融マトリックスポリマーを、中間混合帯域に移し、粉末状イオン交換樹脂を溶融マトリックスポリマーに添加し、続いて溶融マトリックスポリマーをイオン交換材料と、大気圧下約130℃未満の温度で混練及び混合した。次に、配合した溶融ポリマーマトリックスを、押出機の圧縮帯域に移した。その後、配合溶融ポリマーマトリックスを、前記圧縮帯域から押出用シートダイヘッドに移送して、押出厚さ0.001インチ〜0.050インチの膜を形成した。
【0055】
好ましくは、得られた膜は、0.005〜0.025インチの範囲内の厚みを有する。EDI用途の場合、得られた膜は、0.008〜0.012インチの範囲内の厚みを有するものである。
【0056】
典型的には、押出システムにおけるイオン交換材料の滞留時間は、2分未満であり、好ましくは30秒未満である。
【0057】
したがって、本発明によれば、不均質イオン交換膜形成用装置であって、単一機械において、二軸スクリュー配合押出機を備えており、前記押出機が、第一供給帯域と、第二溶融帯域と、溶融物を均質に混練するための第三帯域と、前記第三帯域の下流に設けられたポリマー溶融物へ添加物を供給する手段と、前記ポリマー溶融物への添加物の混練及び混合をおこなう第四帯域と、得られた配合ポリマー溶融物に押出剤を混合する第五帯域(前記3つの帯域後のどこに配置してもよい)と、配合ポリマー溶融物のガス抜き用第六圧縮帯域と、配合ポリマー溶融物を付属のシートダイヘッドに移送する第七圧縮帯域と、さらに、薄溶融シート膜を押出すための調整可能シートダイヘッド、膜成形、冷却及びカレンダリング用ロールスタック、及び膜巻き取り装置を備えており、イオン交換材料の滞留時間を高温で最小限、理想的には2分未満、好ましくは1分未満とする。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、処理パラメータを正確に制御して活性イオン部位及び組み込まれた樹脂材料の他の所望の特性を保持すると同時に、電気脱イオン等の要求される環境に必要とする構造的一体性を有する不均質イオン交換膜が得られる。また、前記不均質イオン交換膜の効率的な製造方法及び装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様による具体的なインライン配合装置用の複数の帯域を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
10 重力供給装置
12 第一帯域
14 第二帯域
16 第三帯域
18 第四帯域
20 重力供給装置
22 第五帯域
24 第六帯域
26 第七帯域
28 シートダイ

Claims (17)

  1. 不均質イオン交換膜の形成方法であって、
    a)プロピレンバインダー供給材料を溶融手段を備えたインライン配合押出機に供給し、前記ポリマーバインダーを混練し且つ押出用シートダイヘッドに移行させる工程であって、前記押出機が添加物を前記溶融ポリマーバインダーにインラインで供給及び配合するための手段をさらに備えている工程と、
    b)前記押出機内で前記ポリマーバインダーを、前記ポリマーバインダーの軟化点と前記ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲で維持して溶融マトリックスポリマーを形成する工程と、
    c)前記溶融マトリックスポリマーを混練して均質マトリックスを形成する工程と、
    d)続いて、粉末イオン交換樹脂を、工程c)で得られた前記溶融マトリックスポリマーに添加し、前記ポリマーバインダーの軟化点と前記ポリマーバインダーの融点との間の温度範囲に維持して混合して、滞留時間中に前記押出機内で均質配合溶融物を形成する工程と、
    e)工程d)で得られた前記配合溶融ポリマーマトリックスを、押出用シートダイヘッドに直接移して不均質イオン交換膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記粉末イオン交換樹脂を、20重量%〜80重量%の範囲で前記溶融マトリックスポリマーに添加する、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  3. 前記ポリマーバインダーが、ポリプロピレンポリマーである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  4. 前記粉末イオン交換樹脂は、平均サイズが32メッシュ未満のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  5. 前記ポリマーバインダーが、融が130℃未満のメタロセンポリプロピレンポリマーである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  6. 前記粉末イオン交換樹脂は、平均サイズが100メッシュ未満のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  7. 前記粉末イオン交換樹脂は、I型のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  8. 前記粉末イオン交換樹脂は、II型のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  9. 前記粉末イオン交換樹脂は、III型のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  10. 前記粉末イオン交換樹脂は、陰イオン性のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  11. 前記粉末イオン交換樹脂は、陽イオン性のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  12. 前記粉末イオン交換樹脂は、両性のものである、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  13. 前記粉末イオン交換樹脂が、I型、II型、III型、陰イオン性、陽イオン性、両性及びそれらの混合物からなる群から選択されたイオン交換物質の混合物である、請求項1に記載の不均質イオン交換膜の形成方法。
  14. 請求項1に記載の方法により形成された不均質イオン交換膜。
  15. 厚さが、0.001インチ〜0.05インチの範囲内である、請求項14に記載の不均質イオン交換膜。
  16. 厚さが、0.005インチ〜0.020インチの範囲内である、請求項14に記載の不均質イオン交換膜。
  17. ポリマーバインダーと粉末イオン交換樹脂との所定のインライン配合及び押出しをおこなって不均質膜を形成するための装置であって、二軸スクリュー配合押出機を組み合わせて備えており、前記押出機が、第一供給帯域と、第二溶融帯域と、溶融物を均質に混練するための第三帯域と、前記第三帯域の下流に設けられたポリマー溶融物へ添加物を供給する手段と、前記ポリマー溶融物への添加物の混練及び混合を更におこなう第四帯域と、得られた配合ポリマー溶融物に押出剤を混合する第五帯域と、前記配合ポリマー溶融物を押出用ダイヘッドに移すための第六圧縮帯域とを備えていることを特徴とする装置。
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