JP4739493B2 - 正極合剤成形体および電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は正極合剤成形体およびこの成形体を用いて構成される電池に関し、特にアルカリマンガン電池または非水系電解液電池に適用して有効なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばLRの型名で呼ばれている円筒形アルカリマンガン電池は、正極端子を兼ねる有底筒状電池缶内に、この電池缶の内形状に合わせて形成された環状あるいは貫通筒状の正極合剤成形体いわゆる合剤成形体を嵌合装填し、さらにその成形体の内側にセパレータおよび負極合剤を装填および充填するとともに、アルカリ電解液を注入して発電要素を形成した後、負極端子および集電子などを組込んだ封口体で上記電池缶の開口を密閉封止することにより構成される。
【0003】
上記正極合剤成形体は、正極活物質となる二酸化マンガンと、導電剤となる黒鉛を主成分とする合剤をプレス成形によって所定の成形体の形状に形成したものである。この場合、そのプレス成形では、成形型への充填性や取り扱い性などの作業効率を向上させるために、上記主成分を有する合剤粒を被成形材料として使用する。この合剤粒は、上記主成分を含む混合材料をロール圧延した後、解砕機による解砕造粒と篩分けによる粒度選別を行って作製される。
【0004】
上述のようにして作製された正極合剤成形体は、合剤粒が固結一体化された多粒構造をなしているが、上記合剤粒を作製する際の圧延およびその合剤粒を所定の成形体の形状にプレス成形する際の各工程条件をそれぞれ適切に選ぶことにより、所定の成形強度および所定の微細空隙構造(とくに空隙率)を備えることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した正極合剤成形体を使用した電池の放電性能を向上させる手段としては、(1)活物質の量を増やす、(2)活物質の利用率を高めるなどの方法がある。
(1)は、活物質の増量による放電容量の向上が期待されるが、その増量は電池の規格サイズ内で行う必要がある。この制約下で活物質を増量するためには、活物質の配合割合を多くするか、あるいは成形体の成形密度を高くすればよい。しかし、前者は、導電剤の配合割合が減ることにより内部抵抗が増大し、高負荷放電性能(大電流放電特性)が低下してしまうという問題が生じる。後者は、成形体を高密度化した分、成形体内部の空隙体積が減少して電解液の吸液含浸量が少なくなり、これにより活物質の利用率が低下するとともに、高負荷放電性能が低下してしまうという問題が生じる。
(2)は、正極合剤成形体に吸液含浸させる電解液の量を多くすれば良いことが知られている。電解液を多く含浸させることができれば、活物質の利用率が高められて、高負荷放電性能の向上が期待される。電解液の含浸量を多くするためには、正極合剤成形体内の微細空隙体積を大きくすればよく、このためにはその成形体の成形密度を低くすればよいとされていた。しかし、上記空隙体積を大きくした分、活物質量が目減りして放電容量が低下してしまうという問題が生じる。また、上記空隙体積を大きくするために成形密度を低くすると、電解液の吸液含浸による成形体のゆるみが起こり、これによる内部抵抗の増大によって、高負荷放電性能の向上もそれほどは期待できなかった。
【0006】
このように、従来の正極合剤成形体では、正極活物質を増量させることと、電解液の含浸量を多くすることとが互いに背反関係にあって、放電容量と高負荷放電性能を両立して向上させることは、困難であるとされていた。
【0007】
この発明は、以上のような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、正極活物質と含浸電解液を共に増量させることを可能にし、これにより、放電容量と高負荷放電性能を両立して向上させることを可能にした正極合剤成形体および電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するための手段は、本発明では次のとおりである。
【0009】
===正極合剤成形体===
<手段1>電極活物質と導電剤を主成分とし、かつ電解液を吸液含浸するための微細空隙構造を有する正極合剤成形体において、
上記主成分を有しかつ上記微細空隙構造を有する合剤粒が所定形状に固結されて上記成形体が形成されているとともに、上記電解液の含浸に対して上記合剤粒が合剤粒間よりも高強度に形成されており、
前記合剤粒は、空気透過法により測定される換算平均粒子径が1.5μm以下である、
ことを特徴とする正極合剤成形体。
<手段2>手段1の正極合剤成形体において、前記合剤粒は、材料のBET比表面積とその配合比から求められる理論比表面積に対するBET比表面積の比が85%以下であることを特徴とする。
<手段3>手段1または2のいずれかの正極合剤成形体において、前記正極活物質が二酸化マンガンであることを特徴とする。
<手段4>手段1から3のいずれかの正極合剤成形体において、前記導電剤が黒鉛であることを特徴とする。
<手段5>手段1から4のいずれかの正極合剤成形体において、前記電解液の含浸による微小亀裂が前記合剤粒間において優先的に生じるように前記合剤粒を形成したことを特徴とする。
<手段6>手段1から5のいずれかの正極合剤成形体において、前記合剤粒間の微細空隙がその合剤粒内の微細空隙よりも多いことを特徴とする。
<手段7>手段1から6のいずれかの正極合剤成形体において、前記合剤粒内の密度がその合剤粒間の密度よりも高いことを特徴とする。
<手段8>手段1から7のいずれかの正極合剤成形体において、前記合剤粒は、長径と短径の比が2以上の異径合剤粒を20重量%以上含むことを特徴とする。
【0010】
===電池===
<手段9>正極活物質として手段1〜8のいずれかの正極合剤成形体を使用するとともに、その成形体が電解液含浸前に有していた初期空隙体積以上の電解液を含浸できることを特徴とする電池。
<手段10>手段9の電池において、密閉封止された電池缶内にて、この電池缶の内形状に合わせて形成された前記正極合剤成形体が嵌合装填されて、セパレータ、負極および電解液と共に発電要素を形成していることを特徴とする。
<手段11>手段9の電池において、密閉封止された電池缶内にて、この電池缶の内形状に合わせて、前記正極合剤成形体が缶内成形により形成されており、セパレータ、負極および電解液と共に発電要素を形成していることを特徴とする。
<手段12>手段9から11のいずれかの電池において、前記電解液がアルカリ電解液であることを特徴とする。
<手段13>手段9から11のいずれかの電池において、前記電解液が非水系電解液であることを特徴とする。
<手段14>手段9から13のいずれかの電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として8.3N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単一サイズ(例えばJIS規格のR20型)の電池を構成したことを特徴とする。
<手段15>手段9から13のいずれかの電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として5.8N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単二サイズ(例えばJIS規格のR14型)の電池を構成したことを特徴とする。
<手段16>手段9から13のいずれかの電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として4.8N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単三サイズ(例えばJIS規格のR6型)の電池を構成したことを特徴とする。
<手段17>手段9から13のいずれかの電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として4.6N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単四サイズ(例えばJIS規格のR03型)の電池を構成したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の代表的な実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
===正極合剤成形体===
図1は、本発明による正極合剤成形体の全体図および部分拡大図を示す。
同図に示す正極合剤成形体1は、円筒形電池に使用されるものであって、円環コア状に成形されている。この成形体1は、二酸化マンガンと黒鉛を主成分とする合剤粒2がプレス成形により所定形状(上記コア状)に固結一体化されたものであって、一種の多粒構造をなしている。この成形体1は、電解液を吸液含浸する微細空隙構造を有する。この微細空隙構造は、比較的微細空隙が少ない合剤粒2内と比較的微細空隙が多い合剤粒2間の二つの部分に形成されている。電解液は、まず、合剤粒2間の微細空隙に吸液されて成形体1内の全体に粗く行き渡った後、各合剤粒2内の微細空隙に細かく分散して含浸されると考えられる。
【0013】
合剤粒2は、二酸化マンガンと黒鉛を主成分とする混合物から造粒されたものであって、上記主成分を含む混合材料をロール圧延した後、解砕機による解砕造粒と篩分けによる粒度選別を行って作製される。
【0014】
ここで、合剤粒2は、合剤粒2間よりも高い密度および強度を持つように形成されている。高強度化された合剤粒2は、電解液を含浸しても、造粒時に形成された初期の微細空隙形状をほぼそのまま保持する。他方、その合剤粒2よりも低強度となっている合剤粒2間は、電解液を含浸したときに、膨潤して微小亀裂が生じる。この微小亀裂は合剤粒2間に新たな空隙空間を形成する。この空間に電解液が入り込んで、さらに新たな空隙空間が生じ、ここにまた電解液が入り込む。これにより、成形体1が電解液含浸前に有していた初期空隙体積以上の電解液が吸液含浸されるようになる。
【0015】
このとき、成形体1全体は、合剤粒2を高密度化することにより、高密度に形成することができる。合剤粒2は高密度化するほど硬く高強度になるが、これに伴って、合剤粒2間の接合強度は相対的に低くなる。したがって、成形体1に電解液を吸液含浸させると、その電解液の含浸による膨潤および微小亀裂は合剤粒2間にて優先的に生じるようになる。
【0016】
高密度化された合剤粒2内の微細空隙は合剤粒2間の微細空隙よりも少なくなるが、合剤粒2間の微細空隙に含浸された電解液が、その電解液の含浸によって新たに形成される空隙空間を通して各合剤粒2に満遍なく行き渡ることにより、成形体1全体としても多量の電解液を均等に含浸することができる。
【0017】
合剤粒2間は電解液の含浸によって微小亀裂が生じるが、合剤粒2の高密度化のため、合剤粒2に亀裂は生じることは無く、成形体1の導電性は良好に保たれる。したがって、この場合は、前述した成形体のゆるみが起きた場合とは違って、成形体1の内部抵抗が増大するようなことはなく、これにより、良好な高負荷放電性能を得ることができる。
【0018】
また、高密度化された合剤粒2は成形体1にしたときの成形強度も高くすることができる。これにより、通常の成形体では実現できない成形強度を実現することができる。合剤粒2間の接合強度も、電解液を吸液する前の状態では、成形時の高強度を保つことができる。したがって、割れや欠けは生じにくく、これによって電池の組立作業性を大幅に向上させることができる。
【0019】
さらに、上記成形体1では、その成形材料として使用する合剤粒2に、長径と短径の比が2以上の異径合剤粒を20重量%以上含ませることにより、成形強度を大幅を向上させられることが判明した。これは、上記異径合剤粒を20重量%以上含む合剤粒は見掛け比重が低くなり、これを所定寸法の合剤成形体に成形するためには、従来の合剤成形よりも高い成形圧力が必要となることに加えて、球状の合剤粒を成形した場合に比べて、合剤粒同士の絡み合いが密になることによる。これにより、合剤成形体の強度をさらに高めて電池の組立作業性を一層向上させることができる。
【0020】
以上のように、この発明による正極合剤成形体では、正極活物質と含浸電解液を共に増量させることが可能であって、これにより、電池の放電容量と高負荷放電性能を両立して向上させることを可能にしている。また、吸液前の状態での成形体強度を従来よりも大幅に高めることができるので、電池の組立作業性を大幅に向上させるという効果も併せて得ることができる。
【0021】
===電池===
図2は、上述した正極合剤成形体1を使用したアルカリマンガン電池の実施形態を示す。
同図に示す電池3は、正極端子を兼ねる有底筒状の金属製電池缶31内に、その電池缶31の内形状に合わせて形成されたコア状の正極合剤成形体1を嵌合装填し、さらにその合剤成形体1の内側にセパレータ32および負極33を装填および充填するとともに、アルカリ電解液を注入して発電要素34を形成した後、負極端子35、集電子36およびガスケット37などを組込んだ封口体38で上記電池缶31の開口を密閉封止することにより構成される。
正極合剤成形体1には前述したものが使用されている。この成形体1には電解液含浸前に有していた初期空隙体積以上の電解液が含浸されている。これにより、この電池3は、放電容量と高負荷放電性能が共に向上させられている。
【0022】
【実施例】
以下、本発明のさらに具体的な実施例を示す。
【0023】
(比較例1)
・合剤成形体(単三サイズ用)の作製
正極活物質としての電解二酸化マンガン90.5重量%と、導電剤としての人造黒鉛4.5重量部と電解液(40%濃度の水酸化カリウム水溶液)5重量部を良く混合し、これをロール間隙3mmのロール圧延機で線圧2.5t/cmの圧力を加えながら圧延した後、解砕機で粉砕して篩分けし、粒径を180〜1000μmに揃えた合剤粒を作製した。
この合剤粒を成形金型に入れて加圧成形し、外径13.5mm、内径9.0mm、高さ13.4mmの貫通円筒状で密度3.2g/cmの合剤成形体をバインダー無添加で作製した。
【0024】
・アルカリマンガン電池(単三サイズ)の作製
上記合剤成形体を、正極端子を兼ねる有底円筒状の金属製電池缶内に3個重ねて嵌合装填する。装填後、装填作業のために拡開されていた電池缶の開口をビーディング加工で縮径する。
次に、成形体の中空部にビニロン繊維不織布からなる有底円筒状セパレータを挿入する。この後、セパレータ中空部に40%濃度の水酸化カリウム水溶液からなる電解液を注液する。ここで吸液時間を40分とることで、0.54cc(0.75g)の電解液を合剤成形体(セパレータ吸液分は除く)に吸液させることができた。
この吸液の後、ゲル状負極合剤を5.8g充填する。ゲル状負極合剤は、亜鉛合金粉末200重量部、ゲル化剤としてのポリアクリル酸を1.3重量部、ポリアクリル酸ナトリウムを0.7重量部、水58重量部、酸化亜鉛0.7重量部、水酸化カリウム4.2重量部からなる。
この後、電池缶を封口体で密閉封止する。封口体は、内側面に真鍮製の棒状集電子が溶接された負極端子板と、この端子板と電池缶の間に介装される絶縁性ガスケットなどをあらかじめ一体に組立てた集合部品である。この封口体を電池缶開口部に嵌着した後、その電池缶の開口部を内側にかしめ加工することによって、電池缶内部を密閉封止する。このとき、負極端子の内側に溶接された集電子はゲル状負極中に挿入される。
【0025】
(実施例1)
・合剤成形体(単三サイズ用)の作製
比較例1と同様の正極活物質と黒鉛を使用し、同様の組成の合剤を作製した。この合剤をロール間隙0.1mmのロール圧延機で線圧6t/cmの圧力を加えるなどの適当な条件を設定して、圧延を行った。ロール圧延された合剤は解砕機で粉砕して篩分けし、粒径を180〜1000μmに揃えた合剤粒に造粒した。この圧延操作により、合剤粒は針状に解砕された。この合剤粒を金型に入れて加圧成形し、比較例1と同じ外形状、サイズ、重量および密度の合剤成形体をバインダー無添加で作製した。
【0026】
・アルカリマンガン電池(単三サイズ)の作製
上記合剤成形体を比較例1と同様に用いて電池を作製したが、この実施例では、吸液時間40分で0.67cc(0.94g)の電解液を合剤成形体に吸液させることができた。
【0027】
(比較例2)
比較例1と同様の方法で、外径9.75mm、内径6.4mm、高さ11.05mm、重量1.54gの合剤成形体を作製し、これを用いて単四サイズのアルカリマンガン電池を作製した。この場合、合剤成形体への電解液の吸液量は0.21cc(0.30g)であった。
【0028】
(実施例2)
実施例1と同様の操作を行って作製した合剤粒を用いて、比較例2と同じ外形状、サイズ、重量および密度の合剤成形体を作製し、これを用いて比較例2と同タイプの電池を作製した。この場合、合剤成形体への電解液の吸液量は0.29cc(0.40g)であった。
【0029】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で、外径24.8mm、内径17mm、高さ18.5mm、重量15.2gの合剤成形体を作製し、これを2個重ねで用いて単二サイズのアルカリマンガン電池を作製した。この場合、合剤成形体への電解液の吸液量は1.84cc(2.57g)であった。
【0030】
(実施例3)
実施例1と同様の操作を行って作製した合剤粒を用いて、比較例3と同じ外形状、サイズ、重量および密度の合剤成形体を作製し、これを比較例3と同じく2個重ねで用いて同タイプの電池を作製した。この場合、合剤成形体への電解液の吸液量は2.16cc(3.02g)であった。
【0031】
(比較例4)
比較例1と同様の方法で、外径32.2mm、内径21.7mm、高さ18.5mm、重量32.0gの合剤成形体を作製し、これを2個重ねで用いて単一サイズのアルカリマンガン電池を作製した。この場合、合剤成形体への電解液の吸液量は4.14cc(5.79g)であった。
【0032】
(実施例4)
実施例1と同様の操作を行って作製した合剤粒を用いて、比較例4と同じ外形状、サイズ、重量および密度の合剤成形体を作製し、これを比較例4と同じく2個重ねで用いて同タイプの電池を作製した。この場合、合剤成形体への電解液の吸液量は5.28cc(7.38g)であった。
【0033】
上記比較例1〜4と実施例1〜4にてそれぞれ作製した合剤成形体と電池の特性を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004739493
【0035】
表1からあきらかなように、比較例1〜4に対して、実施例1〜4ではそれぞれ、合剤成形体の成形密度および成形強度が大幅に高められ、これに応じて電解液の吸液量も大幅に増加している。とくに電解液については、いずれも、初期空隙体積以上の量が吸液されている。また、各々の単一から単四サイズでの高負荷放電特性が向上している。
【0036】
また、上記実施例1〜4などの結果から、バインダー無添加で加圧成形して得られる合剤成形体の強度(成形体の高さ当たりの強度)は、単一サイズのアルカリマンガン電池に使用される合剤成形体では8.3N/cm以上、単二サイズのアルカリマンガン電池に使用される合剤成形体では、5.8N/cm以上、単三サイズのアルカリマンガン電池に使用される合剤成形体では4.8N/cm以上、単四サイズのアルカリマンガン電池に使用される合剤成形体では4.6N/cm以上がそれぞれ、合剤成形体の高密度化と電解液吸液量の増加による放電性能の向上にとくに有効であることが判明した。
【0037】
次に、合剤成形体について、さらに具体的な実施例を示す。
【0038】
(実施例5)
比較例1と同様の合剤を使用し、ロール圧延機の条件(ロール線圧、回転数など)をA、Bでは比較例1と同様な種々の条件で圧延を行い、C、Dでは実施例1と同様な種々の条件で圧延を行った。これを粉砕・篩分け(180〜1000μm)して、以下の4種類(A〜D)の合剤粒を作製した。
【0039】
A:長径と短径の比が2以上の異径合剤粒の比率 5重量%
B: 同 12重量%
C: 同 20重量%
D: 同 31重量%
【0040】
各合剤粒(A〜D)ごとにそれぞれ、成形密度3.2g/cm、外径13.5mm、内径9mm、高さ13.4mmの貫通円筒状合剤成形体を作製し、これを3個重ねで用いて単三サイズのアルカリマンガン電池を作製した。電池の作製に際しては、40%濃度の水酸化カリウムからなるアルカリ電解液を使用した。また、ゲル状負極は電池ごとに6g充填した。
【0041】
各合剤粒(A〜D)ごとに作製された合剤成形体と電池の特性をそれぞれ調べたところ、表2のような結果が得られた。
【0042】
【表2】
Figure 0004739493
【0043】
表2において、成形強度は、合剤成形体の径方向破壊強度である。電解液吸液量は、電池1個分の合剤成形体が吸液する電解液量である。電池作製時には、その吸液量にセパレータの吸液量を加えた量を注液した。
表2からもあきらかなように、長径と短径の比が2以上の異径合剤粒を20重量%以上含ませることにより、合剤成形体の成形強度と電解液吸液量を格段に増大させることができ、これにより、放電性能も大幅に向上させることができる。
【0044】
(実施例6)
比較例1と同様の合剤を使用し、ロール圧延機の条件(ロール線圧、回転数など)をE、Fでは比較例1と同様な種々の条件で圧延を行い、G、Hでは実施例1と同様な種々の条件で圧延を行った。これを粉砕・篩分け(180〜1000μm)して、空気透過法により測定される平均粒子径によって分別される以下の4種類(E〜H)の合剤粒を作製した。
【0045】
E:空気透過法による換算平均粒子径 1.89μm
F: 同 1.72μm
G: 同 1.50μm
H: 同 1.22μm
【0046】
この平均粒子径は、恒圧空気透過法に基づく粉体比表面積測定装置(島津製作所製:SS−100)を用い、水面圧力差157gf/cmの条件で2cmの空気が試料を透過する時間を測定した。測定に際しては、合剤粒(E〜H)ごとに、直径14mm、厚さ約4mmの試料層を作成した。この測定結果から、次の式1(Kozeny-Carmanの式)を用いて換算平均粒子径dを算出した。式1に示すように、この換算平均粒子径dは、試料の比表面積と試料密度の積に逆比例する。したがって、換算平均粒子径dが小さいものほど、高密度あるいは構造が緻密であると見ることができる。
【0047】
【数1】
Figure 0004739493
【0048】
この測定方法では、試料層の密度が大きくなると換算平均粒子径の値は小さくなる傾向にある。しかし、試料層の密度をさらに高めると逆に換算平均粒子径の値は大きくなる。これは、試料層に大きな亀裂が生じたためと考えられる。したがって、この実施例の試験では、試料層密度を高めていって換算平均粒子径が最小となった値を採用した。つまり、亀裂が生じる直前の換算平均粒子径の値を採用した。
【0049】
各合剤粒(E〜H)ごとにそれぞれ、成形密度3.2g/cm、外径13.5mm、内径9mm、高さ13.4mmの貫通円筒状合剤成形体を作製し、これを3個重ねで用いて単三サイズのアルカリマンガン電池を作製した。電池の作製に際しては、40%濃度の水酸化カリウムからなるアルカリ電解液を使用した。また、ゲル状負極は電池ごとに6g充填した。
【0050】
各合剤粒(E〜H)ごとに作製された合剤成形体と電池の特性をそれぞれ調べたところ、表3のような結果が得られた。
【0051】
【表3】
Figure 0004739493
【0052】
表3において、成形強度は、合剤成形体の径方向破壊強度である。電解液吸液量は、電池1個分の合剤成形体が吸液する電解液量である。電池作製時には、その吸液量にセパレータの吸液量を加えた量を注液した。
表3からもあきらかなように、本発明の合剤粒GとHは、他の合剤粒EとFに比べて、合剤成形体の成形強度、電解液吸液量、放電性能をそれぞれ大幅に向上させている。これにより、上記換算平均粒子径dは1.5μm以下とすることが、本発明の効果を高める上で、とくに有効であることが判明した。
【0053】
(実施例7)
比較例1と同様の合剤を使用し、ロール圧延機の条件(ロール線圧、回転数など)をI、Jでは比較例1と同様な種々の条件で圧延を行い、K、Lでは実施例1と同様な種々の条件で圧延を行った。これを粉砕・篩分け(180〜1000μm)して、材料のBET比表面積とその配合比から求められる理論比表面積に対するBET比表面積の比(%)によって分別される以下の4種類(I〜L)の合剤粒を作製した。
【0054】
Figure 0004739493
ただし、二酸化マンガンのBET比表面積を31m/g、黒鉛のBET比表面積を21m/gとし、合剤の理論比表面積は29m/gとした。
【0055】
各合剤粒(I〜L)ごとにそれぞれ、成形密度3.2g/cm、外径13.5mm、内径9mm、高さ13.4mmの貫通円筒状合剤成形体を作製し、これを3個重ねで用いて単三サイズのアルカリマンガン電池を作製した。電池の作製に際しては、40%濃度の水酸化カリウムからなるアルカリ電解液を使用した。また、ゲル状負極は電池ごとに6g充填した。
【0056】
各合剤粒(I〜L)ごとに作製された合剤成形体と電池の特性をそれぞれ調べたところ、表4のような結果が得られた。
【0057】
【表4】
Figure 0004739493
【0058】
表4において、成形強度は、合剤成形体の径方向破壊強度である。電解液吸液量は、電池1個分の合剤成形体が吸液する電解液量である。電池作製時には、その吸液量にセパレータの吸液量を加えた量を注液した。
表4からもあきらかなように、本発明の合剤粒KおよびLは、他の合剤粒I〜Jに比べて、合剤成形体の成形強度、電解液吸液量、放電性能をそれぞれ大幅に向上させている。これにより、上記理論比表面積に対するBET比表面積の比(%)が85%以下とすることが、本発明の効果をさらに高める上で、とくに有効であることが判明した。
【0059】
以上、本発明をその代表的な実施態様に基づいて説明してきたが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。たとえば、二酸化マンガン以外の正極活物質、あるいは黒鉛以外の導電剤を使用した正極合剤成形体および電池にも本発明は適用可能である。また、アルカリ電解液以外の電解液、例えば非水系電解液を用いる電池にも適用可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の正極合剤成形体によれば、正極活物質と含浸電解液を共に増量させることを可能にし、これにより、放電容量と高負荷放電性能を両立して向上させることができる。また、成形強度を高めて電池組立作業性を向上させることができる。
【0061】
また、本発明の電池によれば、正極合剤成形体に初期空隙体積以上の電解液を含浸させたことにより、放電容量と高負荷放電特性を共に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による正極合剤成形体の実施態様を示す断面図である。
【図2】この発明による電池の全体構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 合剤成形体
2 合剤粒
3 電池
31 金属製電池缶
32 セパレータ
33 負極
34 発電要素
35 負極端子
36 集電子
37 ガスケット
38 封口体

Claims (17)

  1. 電極活物質と導電剤を主成分とし、かつ電解液を吸液含浸するための微細空隙構造を有する正極合剤成形体において、
    上記主成分を有しかつ上記微細空隙構造を有する合剤粒が所定形状に固結されて上記成形体が形成されているとともに、上記電解液の含浸に対して上記合剤粒が合剤粒間よりも高強度に形成されており、
    前記合剤粒は、空気透過法により測定される換算平均粒子径が1.5μm以下である、
    ことを特徴とする正極合剤成形体。
  2. 請求項1に記載の正極合剤成形体において、前記合剤粒は、材料のBET比表面積とその配合比から求められる理論比表面積に対するBET比表面積の比が85%以下であることを特徴とする。
  3. 請求項1または2に記載の正極合剤成形体において、前記正極活物質が二酸化マンガンであることを特徴とする。
  4. 請求項1からのいずれかに記載の正極合剤成形体において、前記導電剤が黒鉛であることを特徴とする。
  5. 請求項1からのいずれかに記載の正極合剤成形体において、前記電解液の含浸による微小亀裂が前記合剤粒間において優先的に生じるように前記合剤粒を形成したことを特徴とする。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の正極合剤成形体において、前記合剤粒間の微細空隙がその合剤粒内の微細空隙よりも多いことを特徴とする。
  7. 請求項1からのいずれかに記載の正極合剤成形体において、前記合剤粒内の密度がその合剤粒間の密度よりも高いことを特徴とする。
  8. 請求項1からのいずれかに記載の正極合剤成形体において、前記合剤粒は、長径と短径の比が2以上の異径合剤粒を20重量%以上含むことを特徴とする。
  9. 正極活物質として請求項1からのいずれかに記載の正極合剤成形体を使用するとともに、その成形体が電解液含浸前に有していた初期空隙体積以上の電解液を含浸できることを特徴とする電池。
  10. 請求項に記載の電池において、密閉封止された電池缶内にて、この電池缶の内形状に合わせて形成された前記正極合剤成形体が嵌合装填されて、セパレータ、負極および電解液と共に発電要素を形成していることを特徴とする。
  11. 請求項に記載の電池において、密閉封止された電池缶内にて、この電池缶の内形状に合わせて、前記正極合剤成形体が缶内成形により形成されており、セパレータ、負極および電解液と共に発電要素を形成していることを特徴とする。
  12. 請求項9から11のいずれかに記載の電池において、前記電解液がアルカリ電解液であることを特徴とする。
  13. 請求項9から11のいずれかに記載の電池において、前記電解液が非水系電解液であることを特徴とする。
  14. 請求項9から13のいずれかに記載の電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として8.3N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単一サイズの電池を構成したことを特徴とする。
  15. 請求項9から13のいずれかに記載の電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として5.8N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単二サイズの電池を構成したことを特徴とする。
  16. 請求項9から13のいずれかに記載の電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として4.8N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単三サイズの電池を構成したことを特徴とする。
  17. 請求項9から13のいずれかに記載の電池において、合剤成形体の単位高さ当たりの強度として4.6N/cm以上の強度を付与された前記正極合剤成形体を使用して単四サイズの電池を構成したことを特徴とする。
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