JP3186071B2 - 鉛蓄電池用極板及び凝集粒の製造方法 - Google Patents

鉛蓄電池用極板及び凝集粒の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉛蓄電池用極板及びこの
極板で用いる凝集粒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から極板の活物質利用率を向上させ
るために、陽極板において活物質の多孔度を増加させる
ことが行われている。活物質の多孔度を増加させる具体
的な方法としては、活物質形成用のペーストを調整する
ときに体積の大きい硫酸鉛の含有率を上げ、この硫酸鉛
が化成後に体積の小さな活物質である二酸化鉛になるの
を利用して活物質層内に細孔を発生させる方法や、ペー
スト中の水分量を増加して水分の占有体積を利用して高
多孔度化を図る方法が提案された。これらの方法は活物
質層の密度を低くして、疎な活物質層を形成する方法で
あり、電池使用初期は活物質利用率が高いものの、その
後の活物質利用率の低下が著しく、極板寿命が短くて実
用的ではなかった。
【0003】そこでペースト中の水分量を少なくして活
物質層の密度を高くし、ペーストに多孔質な物質を添加
する方法と、硫酸と層間化合物を作る黒鉛をペ―ストに
添加し層間が拡がることにより活物質層内に亀裂を発生
させて活物質層内に空間を確保する方法も提案されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前者の例としては、多
孔質な物質として多孔性のシリカや中空繊維を添加する
ものがある。しかしながらこれらの物質は、陽極板で見
ると二酸化鉛との結合性が無いかまたは結合性が弱いこ
とがある。そのため電池使用の初期段階では活物質利用
率の向上が認められるが、中期から活物質の崩壊が生じ
やすく、利用率の低下が生じて電池寿命が短くなる。後
者の例の問題点としては、黒鉛の拡がりによる圧力が生
じ、この圧力が活物質を破壊する破壊力となるため、極
板,極板群及び電池作製時にこの破壊力を吸収する工夫
が必要である。さらに、黒鉛は徐々に微細化して極板か
ら離脱していくため、電池が使用されていくと活物質層
内に大きな孔が発生して極板寿命が低下する。これら二
種類の方法で極板寿命が低下する原因は、添加物質と二
酸化鉛との間の結合率が極めて弱いか、ほとんどないこ
とである。
【0005】また、鉛酸化物を造粒して顆粒として厚み
の厚い極板の活物質に添加する方法も提案されている。
この方法では顆粒により形成された孔により活物質の利
用率を向上させ、極板の寿命は厚さで確保する方法であ
るが当然のことながら薄い極板には使用できない欠点が
あり、この方法を使用できる極板は5mm以上の厚みが必
要であるとされている。以上は陽極板について記したが
陰極板においても添加物質と金属鉛との間の結合力が弱
く大きな空孔を生じ、活物質層の集電力を低下させる欠
点がある。
【0006】本発明の目的は、活物質の高多孔度を確保
したとき、極板としての寿命が損なわれるのを解決でき
る鉛蓄電池用極板を得ることにある。
【0007】本発明の他の目的は、所要の範囲の大きさ
の細孔をもつ多孔質の凝集粒を製造できる凝集粒の製造
方法を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明では、鉛
化合物の微細粒子と耐酸性および耐酸化性を有する細繊
維とを凝集してなる多孔質の凝集粒が活物質中に添加さ
れている鉛蓄電池用極板であって、前記凝集粒は数十〜
数百μm の大きさの細孔をもつ多孔となっていること
を特徴とする。
【0009】ここで本願明細書における鉛化合物とは、
鉛、鉛酸化物および塩基性硫酸鉛のうち少なくとも一種
から選択されたものである。
【0010】また請求項2の発明は、請求項1に記載の
凝集粒を製造する凝集粒の製造方法であって、鉛化合物
の微細粒子と耐酸性及び耐酸化性の細繊維とを結合剤と
水と共に混合したものを圧延し、乾燥し、粉砕して凝集
粒を得ることを特徴とする。
【0011】
【作用】請求項1の発明のように、鉛化合物の微細粒子
と耐酸性および耐酸化性を有する細繊維とを凝集してな
る多孔質の凝集粒を添加すると、鉛化合物は化成後に電
極の活物質となり、ペーストから形成される活物質と一
体化して相互の結合性が確保される。また細繊維は鉛化
合物の微細粒子を強固に保持するため、ペーストに凝集
粒を添加して混練した場合でも、凝集粒は再び微粒子に
分裂することがない。凝集粒として数十〜数百μm の大
きさの細孔をもつ多孔のものを用いた極板によれば、
初期の容量が大きく、また充放電を繰り返しても容量低
下のほとんどない鉛蓄電池を得ることができる。
【0012】より具体的に説明すると、本発明は極板の
活物質内部にペーストの成分によって生成される細孔に
加えて、前述の凝集粒を添加することにより活物質内部
に例えば数十μm 以上の大きな細孔を配置して、従来極
板の表層部に集中していた放電反応を内部に展開するこ
とにより、活物質の利用率向上と寿命向上を図る。
【0013】活物質内部に大きな細孔を配置する方法と
して鉛化合物の微細粒子を細繊維で連結した多孔性のあ
る凝集粒に加工して使用する。この凝集粒の細孔には、
電解液である硫酸が浸透し、放電時に活物質内部での反
応を促進する。これにより活物質表層の集中使用による
劣化を抑制する。充電時には放電した活物質から遊離し
た硫酸がこの細孔へ速やかに排出され、極板外部への移
動が容易となる。このことにより充電反応が効率よく進
行する。このような充放電反応への効果により極板の寿
命特性を損なうことなく活物質の利用率を向上させるこ
とができる。
【0014】細繊維は通常添加される結合剤とともに、
ペーストに添加された後の混練などの加工時に凝集粒が
分裂することを防止する。これにより前記効果を確実に
発揮させることができる。
【0015】請求項2の発明では、請求項1に記載の凝
集粒を製造するに際し、鉛化合物の微細粒子と耐酸性及
び耐酸化性の細繊維とを結合剤と水と共に混合したもの
を圧延し、乾燥し、粉砕して凝集粒を得るので、圧延工
程の存在により所要の範囲の細孔を有する凝集粒を容易
に製造することができる。
【0016】
【実施例】本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明す
る。本発明の実施例の極板を製造する場合には、ペース
トの成分である鉛化合物の微細粒子と耐酸、耐酸化性の
細繊維とを併用して例えば予め数十〜数百μm の大きさ
の細孔をもつ多孔体からなる顆粒または凝集粒を製造し
ておく。そしてこれをペーストに所定量添加し混練して
ペーストの段階で多孔性を確保する。ペーストを格子に
充填して極板とした後、ペーストを電池の活物質とする
化成工程を経ると、予め設けた細孔はそのまま活物質層
内部にも残り多孔性のある活物質層を形成することがで
きる。なお、凝集粒の基になる鉛化合物の微粒子として
は、鉛,鉛酸化物及び塩基性硫酸鉛のうち少なくとも一
種類を選択して用いることができ、微粒子の平均粒径は
数μm程度のものが最も良く、また凝集粒は粒径が0.
5〜1.5mmのものが効果的である。また凝集粒の添加
量はペーストの重量に対して5〜25%まで、好ましく
は5〜10%の範囲が適当である。
【0017】添加する凝集粒の作成プロセスの一例を簡
単に図1に示した。水以外の材料は鉛化合物の添加粒子
として平均粒径が数μm 程度のPbO2 を、結合剤とし
てCMC(カルボキシルメチルセルロース)を、細繊維
として0.7μm の径で3mmの長さにカットしたアクリ
ル繊維を使用した。まず、CMCを20g含む水溶液1
リットルに対しPbO2 微粒子1Kgとアクリル繊維3g
加えて充分攪拌し、沈降させた後取出し薄い板状に圧延
する。この圧延した板状のものを熱板で圧力をかけなが
ら急速に乾燥させ、乾燥させたものを粉砕式の造粒機を
使って凝集粒を作った。
【0018】凝集粒から細繊維をはみ出さすため、粉砕
時のカッターの刃の断面が凹型のものを使用した。上刃
1a及び下刃1bの刃方の一例を図2に示した。凝集粒
の構造モデルの図を図3に示した。図3に示すように、
PbO2 粒子2はアクリル繊維3を骨格として凝集し細
孔4を形成している。このような凝集粒の代表的な細孔
径の分布例を図4に示した。この細孔分布では、20μ
m 付近と100μm 付近にピークを有している。このよ
うな凝集粒を用いて格子に充填するペーストを次のよう
にして調整した。
【0019】まず、PbO2 からなる鉛粉、希硫酸と水
とを混練し、見掛け密度4.5g/cmのペーストを
作り、このペーストに前記した凝集粒を10wt%加え再
び混練した。この混練したペーストを格子に一枚当たり
100g充填し、熟成後化成して陽極板を作製した。陽
極板の細孔分布の測定例を、凝集粒を添加しない場合と
合わせて図5に示した。図5において、曲線aは凝集粒
を添加しない場合の細孔分布であり、曲線bは凝集粒を
添加した化成後の極板の細孔分布を示している。凝集粒
を添加した陽極板は20μm 付近と100μm 付近の径
を持つ細孔が多く形成されていることが分かる。
【0020】図6に凝集粒の極板中における存在状態を
示した。凝集粒はペースト5の中に大きな細孔4を確保
し、且つ周囲のペースト5に細繊維3を侵入させた形で
極板中に存在していた。
【0021】凝集粒を添加した極板の放電容量と従来の
極板の放電容量との比較を容量比率で示している。図7
において、Aは凝集粒を入れない高密度のペ―ストを使
用した極板を用いた場合の容量比率であり、BはAのペ
―ストに凝集粒を入れた極板の容量比率であり、Cは凝
集粒を入れない見掛け密度3.5g/cmの低密度ペ
―ストを使用した極板を用いた場合の容量比率である。
凝集粒入り極板Bの容量比率は、凝集粒を添加しない前
のペーストを使った同図のAの極板に比べ、35%の容
量の増加が認められた。また、凝集粒を添加しないペー
ストで見掛け密度が低いCの極板と比べても、凝集粒を
入れたBの極板の方が放電容量は多かった。
【0022】前記したA〜Cの三種類の陽極板を用いて
容量48Ahの電池を作製し、JISの測定法に準じて、
20A放電容量で充放電サイクル寿命試験を実施した。
その結果を図8に示した。図8においてLは寿命判定線
である。この結果から判るように、本発明の陽極板Bを
用いたものは初期の容量が大きく、また充放電を繰り返
しても容量の低下はほとんどない。一方従来品のペース
トの見掛け密度の低い陽極板Cを用いたものでは初期容
量は大きいものの、すぐ容量の低下が生じ寿命に達し
た、また高い見掛け密度のペーストを使った陽極板Aを
用いたものでは放電容量は低いままで推移した。
【0023】次に凝集粒に添加する細繊維の量とそれら
を陽極板に添加した場合の電池寿命への影響を図9に示
した。この図から判るように、細繊維の添加量は0.3
wt%までは添加量の増加に伴なって寿命を増加できる効
果があるが、これ以上多くしてもその効果は無い。
【0024】上記実施例によれば、同一のペーストを用
いた場合で比較すると放電容量を約35%増加させるこ
とができ、また寿命特性も改善することができる。本実
施例では陽極板についてのみ記したが、陽極板Pbの微
粒子からなる凝集粒を作製して適用したところ同様の効
果が得られた。
【0025】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、凝集粒として
数十〜数百μm の大きさの細孔をもつ多孔体を用いた鉛
蓄電池用極板なので、初期の容量が大きく、また充放電
を繰り返しても容量低下のほとんどない鉛蓄電池を得る
ことができる。
【0026】また請求項2の発明では、請求項1に記載
の凝集粒を製造するに際し、鉛化合物の微細粒子と耐酸
性及び耐酸化性の細繊維とを結合剤と水と共に混合した
ものを圧延し、乾燥し、粉砕して凝集粒を得るので、圧
延工程の存在により所要の範囲の細孔を有する凝集粒を
容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】凝集粒の製造プロセスを説明するための図であ
る。
【図2】凝集粒を製造する場合に用いるカッタの刃型を
示す断面図である。
【図3】凝集粒の構造モデルを示す図である。
【図4】凝集粒の細孔分布状態を示す図である。
【図5】凝集粒を添加した活物質を有する化成後の極板
における細孔分布状態を示す図である。
【図6】極板の活物質中に凝集粒が存在する状態を例を
示す図である。
【図7】本発明の極板を用いた電池と従来の極板を用い
た電池の放電容量を比較する図である。
【図8】本発明の極板を用いた電池と従来の極板を用い
た電池の寿命を比較する図である。
【図9】細繊維の添加量と電池寿命との関係を示した図
である。
【符号の説明】
1a 上刃 1b 下刃 2 PbO2 粒子 3 細繊維 4 空孔 5 活物質
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭52−17624(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/14 - 4/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉛化合物の微細粒子と耐酸性および耐酸化
    性を有する細繊維とを凝集してなる多孔質の凝集粒が活
    物質中に添加されている鉛蓄電池用極板であって、 前記凝集粒は数十〜数百μm の大きさの細孔をもつ多孔
    となっていることを特徴とする鉛蓄電池用極板。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の凝集粒を製造する凝集粒
    の製造方法であって、 鉛化合物の微細粒子と耐酸性及び耐酸化性の細繊維とを
    結合剤と水と共に混合したものを圧延し、乾燥し、粉砕
    して前記凝集粒を得ることを特徴とする凝集粒の製造方
    法。
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JP6066119B2 (ja) * 2012-04-06 2017-01-25 株式会社Gsユアサ 液式鉛蓄電池
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