しかしながら、上記従来の特許文献1又は特許文献2のインクジェットヘッド取付け姿勢調整方法では、以下の問題点を有している。
すなわち、上述したように、インクジェットヘッドと描画面との距離を予め測定器により測定し、インクジェットヘッドと描画面との距離を一定値に調整するという技術は広く知られている。
ここで、ディスペンサに代表される単一のノズルを持つ塗付装置であればその先端は細く、描画面との距離測定は1箇所のみで足りる。しかし、インクジェットヘッドは複数のノズル孔を有するものが一般的である上に近年インクジェットヘッドの長尺化が進んでいるため、ノズル孔と被吐出面である基板との距離は一意に決まらず、ノズル孔列と被吐出面とのなす角度の影響が大きくなっている。この場合、2点以上でノズル孔と被吐出面との距離を測定し、ノズル孔列と被吐出面との角度ずれを測定する必要がある。
しかしながら、特許文献1に記載の塗布描画装置100は、単一のノズル102を持つ塗付装置であるので、描画面との距離測定は1箇所のみとなっており、複数のノズルを持つ塗付装置については開示がない。
また、特許文献2に開示された塗布描画装置200では、ノズル孔と被吐出面との距離を2点以上で測定するようになっているが、例えば2個の高さセンサ203a・203bによる2個所の測定値における平均値に基づいて液体塗布ノズル202a・202bの高さをZ軸アクチュエータ204a・204bにて2個所の測定値における平均値となるようにそれぞれ独立に補正しているだけであり、ノズル孔列線と被吐出面との角度ずれまでは求めていない。この結果、被吐出面が角度ずれを起こしている場合には、液体塗布ノズル202a・202bの高さを平均高さとなるように位置調整することによって、誤差をプラスマイナスで相殺することにはなるが、両方の液体塗布ノズル202a・202bの高さのいずれもが真の高さとは異なったものとなってしまう。したがって、2点以上でのノズル孔と被吐出面との距離がいずれも略同じであるとはいえない。
近年では、インクジェット装置で塗布する基板も大型化が進み、インクジェットヘッドを搬送する駆動系の移動精度や、基板を搭載するステージの平面度もノズル孔と被吐出面との距離に影響してしまう。また、大型基板を対象としたインクジェット装置にてヘッド搬送の移動精度やステージ平面度を高い精度で要求すると、インクジェット装置の高コスト化の原因となる。さらに、ノズル孔列と被吐出面との角度ずれを把握するために単一の測定器で2点以上での距離を測定するとインクジェットヘッド搬送の誤差を含むために吐出時の角度ずれを正確に測定できない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、インクジェットヘッドに複数のノズル孔が少なくとも1列に配されている場合に、ノズル孔列の両端と被吐出面との距離をノズル孔列と被吐出面との間の角度を踏まえて最適化し、インクジェットヘッドのヘッド搬送誤差、基板ステージの平面度及び平行度誤差による影響を抑えて、基板ステージの全領域でのノズル孔と被吐出面との距離のばらつきを低減し、延いては大型基板に対してであっても着弾精度ばらつきを抑制することができるインクジェットヘッド取付け位置調整方法、及びインクジェット装置のヘッド位置制御方法を提供することにある。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法は、上記課題を解決するために、インクを吐出する複数のノズル孔を有するインクジェットヘッドと、被吐出面である基板を保持する基板ステージと、基板ステージ及びインクジェットヘッドを基板ステージ表面平行平面内、及び該基板ステージ表面平行平面の垂直方向に相対的に移動させる搬送機構とを有するインクジェット装置のインクジェットヘッド取付け位置調整方法において、インクジェットヘッド底面に少なくとも直線上に配された複数のノズル孔の配列方向に沿って設けられ、かつインクジェットヘッドに一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサによって、上記基板ステージ表面平行平面内の相対移動可能範囲内の複数領域にて該変位センサと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定する表面距離測定工程と、上記2つ以上の変位センサによる該変位センサと基板ステージ表面との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔を互いに結んでできるノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度を演算する角度演算工程と、上記ノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度の演算結果から、支持部材に回動自在に取り付けられたインクジェットヘッドの最適なヘッド取付け角度を算出する最適角度算出工程と、上記最適なヘッド取付け角度の算出値に基づいて、インクジェットヘッド取付け角度を回動調整するヘッド取付け角度調整工程とを含むことを特徴としている。
上記の発明によれば、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔の配列方向に沿って設けられ、かつインクジェットヘッドに一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサによって、基板ステージ表面平行平面内の相対移動可能範囲内の複数領域にて該変位センサと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定する。
したがって、被吐出面である基板を保持する基板ステージの全域をある一定の大きさに設定した領域に区切り、少なくとも2つの変位センサにより各領域での変位センサと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定することになる。
次いで、上記の測定結果から、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔を互いに結んでできるノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度を演算する。この結果、各領域でのノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度が求まる。
次いで、ノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度の演算結果から、支持部材に回動自在に取り付けられたインクジェットヘッドの最適なヘッド取付け角度を算出し、この最適なヘッド取付け角度の算出値に基づいて、インクジェットヘッド取付け角度を回動調整する。
これにより、ノズル孔列直線と基板ステージ表面とが平行になるようにインクジェットヘッドの角度調整を行うことができる。
具体的には、例えば、全ての領域におけるノズル孔列直線と基板ステージとの角度ずれの平均値を算出することができるので、この平均角度ずれを相殺するように、インクジェットヘッドの取付け角度を調整し、基板ステージの平均傾きに対してヘッド取付け角度を最適化する。
この調整方法は、インクジェットヘッドに一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサを用いて行っているため、インクジェットヘッドを搬送する駆動系の位置決め誤差も補正していることになる。このため、高い位置決め精度で装置を構成することが困難な大型のインクジェット装置に対して特に有用であると言える。
この結果、インクジェットヘッドに複数のノズル孔が少なくとも1列に配されている場合に、ノズル孔列の両端と被吐出面との距離をノズル孔列と被吐出面との間の角度を踏まえて最適化し、インクジェットヘッドのヘッド搬送誤差、基板ステージの平面度及び平行度誤差による影響を抑えて、基板ステージの全領域でのノズル孔と被吐出面との距離のばらつきを低減し、延いては大型基板に対してであっても着弾精度ばらつきを抑制することができるインクジェットヘッド取付け位置調整方法を提供することができる。
また、これにより、一定の着弾精度を実現するために求められる基板ステージの平行度及び平面度、ヘッド搬送精度の条件を緩めることができる。つまり、大型基板を対象とした高精度のインクジェット装置を安価に製造することができると言える。
尚、複数のノズル孔が直線上に並んでいるだけでなく、平面に複数列に分布している場合には、ノズル孔が存在する面と被吐出面との角度ずれを小さくする必要があるため、2点ではなく3点の距離を測定して平面の傾きを算出することになる。しかし、平均角度ずれを相殺するように、インクジェットヘッドの取付け角度を調整する手法は同様である。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、前記少なくとも2つ以上の変位センサによる該変位センサと基板ステージ表面との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、前記ノズル孔列直線における該直線上の第1の点と基板ステージ表面との間の距離を、前記基板ステージ表面平行平面内の前記相対移動可能範囲内の複数領域でそれぞれ求める距離演算工程と、上記相対移動可能範囲内の複数領域において、上記ノズル孔列直線における該直線上の第1の点と基板ステージ表面との間の距離を一定の値とするために必要な各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離を算出する垂直方向移動距離算出工程とを含むことが好ましい。尚、直線上の第1の点は、例えば、ノズル孔列直線における両端のノズル孔の中心を選択することができる。
これにより、被吐出面である基板を保持する基板ステージの全域をある一定の大きさに設定した各領域において、ノズル孔列直線における該直線上の第1の点と基板ステージ表面との間の距離を演算により求める。次いで、上記各領域においてノズル孔列直線における該直線上の第1の点と基板ステージ表面との間の距離を一定の値とするために必要な各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離を算出する。
この結果、基板ステージ表面がノズル孔列直線に対して傾斜している場合に、インクジェットヘッドを基板ステージ表面のある領域に水平移動したときに、その領域において、ノズル孔列直線上の第1の点が垂直方向において基準位置つまり一定の値よりもどれ位異なっているかを把握することができる。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、前記インクジェットヘッドのインクを吐出する前には、前記算出された各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離に基づいてインクジェットヘッドを各領域にて相対移動させる垂直方向相対移動工程を含むことが好ましい。
これにより、インクジェットヘッドのインクを吐出する前には、前記算出された各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離に基づいてインクジェットヘッドを各領域にて相対移動させる。
この結果、実際にインクジェット装置にインクを吐出するときには、各領域においてその距離が一定値になるようにヘッド高さを制御することによって、インクジェットヘッドと基板ステージとの距離を最適化することができる。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするメンテナンス機構を有する場合には、前記ヘッド取付け角度調整工程の後、前記2つ以上の変位センサによって、該変位センサとメンテナンス機構の基準面との距離をそれぞれ測定する基準面距離測定工程と、上記2つ以上の変位センサによる該変位センサとメンテナンス機構の基準面との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、前記ノズル孔列直線とメンテナンス機構の基準面とのなす角度を演算する基準面角度演算工程と、上記メンテナンス機構の基準面と前記ノズル孔列直線とのなす角度の演算結果から、該メンテナンス機構の最適な設置角度を算出するメンテナンス機構最適角度算出工程と、上記メンテナンス機構の最適な設置角度に基づいて、メンテナンス機構の設置角度を調整するメンテナンス機構設置角度調整工程とを含むことが好ましい。
これにより、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするメンテナンス機構を有する場合には、前記同様に、変位センサを用いて、インクジェットヘッドのメンテナンス機構の基準面とノズル孔列直線とのなす角度を求めることによって、メンテナンス機構の角度の最適値を算出することができ、角度補正を行うことができる。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、前記基準面距離測定工程の後、前記メンテナンス機構の基準面と前記ノズル孔列直線の該直線上における第2の点との間の距離を演算するメンテナンス機構距離演算工程と、インクジェットヘッドのメンテナンス時に要求される上記ノズル孔列直線とメンテナンス機構との垂直方向の相対距離から、メンテナンス時にインクジェットヘッドを垂直方向に相対移動させるべき距離を算出するメンテナンス機構垂直方向移動距離算出工程とを含むことが好ましい。尚、上記第2の点は、前記第1の点と一致していてもよい。
これにより、メンテナンス機構とノズル孔列直線との垂直方向の距離も求めることができる。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、前記メンテナンス機構設置角度調整工程及びメンテナンス機構垂直方向移動距離算出工程の後、インクジェットヘッドのメンテナンス時には前記垂直方向に相対移動させるべき距離に基づいてインクジェットヘッドを垂直方向に相対移動させることが好ましい。
これにより、メンテナンス機構とノズル孔列直線との垂直方向の算出距離に基づいて、メンテナンスに最適な距離とする位置にインクジェットヘッド又はメンテナンス機構を垂直移動するように制御することができ、メンテナンス性も向上する。
本発明のインクジェット装置のヘッド位置制御方法は、上記課題を解決するために、インクを吐出する複数のノズル孔を有するインクジェットヘッドと、被吐出面である基板を保持する基板ステージと、基板ステージ及びインクジェットヘッドを基板ステージ表面平行平面内、及び該基板ステージ表面平行平面の垂直方向に相対的に移動させる搬送機構とを有するインクジェット装置のヘッド位置制御方法において、上記インクの吐出前に、上記インクジェットヘッドを上記基板の上方に相対的に移動させるヘッド吐出位置移動工程と、上記インクジェットヘッドにおける基板の上方のヘッド吐出位置での、インクジェットヘッド底面に少なくとも直線上に配された複数のノズル孔を互いに結んでできるノズル孔列直線と基板とのなす角度及び距離を測定する測定工程と、上記測定工程での測定結果からノズル孔列直線の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する角度距離算出工程と、上記算出工程でのノズル孔列直線の角度補正値及び垂直方向相対移動距離に基づいて、ノズル孔列直線の角度補正、及びインクジェットヘッドの垂直方向相対移動を行う補正工程とを含むことを特徴としている。
上記の発明によれば、上記インクの吐出前に、インクジェットヘッドにおける基板の上方のヘッド吐出位置での、ノズル孔列直線と基板とのなす角度及び距離を測定し、ノズル孔列直線の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する。
これにより、インクジェットヘッドに複数のノズル孔が少なくとも1列に配されている場合に、ノズル孔列の両端と被吐出面との距離をノズル孔列と被吐出面との間の角度を踏まえて最適化し、インクジェットヘッドのヘッド搬送誤差、基板ステージの平面度及び平行度誤差による影響を抑えて、基板ステージの全領域でのノズル孔と被吐出面との距離のばらつきを低減し、延いては大型基板に対してであっても着弾精度ばらつきを抑制することができるインクジェット装置のヘッド位置制御方法を提供することができる。
本発明のインクジェット装置のヘッド位置制御方法では、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするメンテナンス機構を有する場合には、インクジェットヘッドのメンテナンス前に、インクジェットヘッドをメンテナンス機構の上方に相対的に移動させるメンテナンス位置移動工程と、上記インクジェットヘッドにおけるメンテナンス機構の上方位置での、前記ノズル孔列直線とメンテナンス機構の基準面とのなす角度及び距離を測定する基準面角度距離測定工程と、上記基準面角度距離測定工程での測定結果からノズル孔列直線の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する基準面角度距離算出工程と、上記算出工程でのノズル孔列直線の角度補正値及び垂直方向相対移動距離に基づいて、ノズル孔列直線の角度補正、及びインクジェットヘッドの垂直方向相対移動を行う基準面補正工程とを含むことが好ましい。
これにより、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするメンテナンス機構を有する場合には、前記同様に、変位センサを用いて、インクジェットヘッドのメンテナンス機構の基準面とノズル孔列直線とのなす角度及び垂直方向の距離を求めることによって、メンテナンス機構の角度及び距離の最適値を算出することができ、インクジェットヘッドの角度補正及び距離補正を行うことができる。
本発明のインクジェットヘッド取付け位置調整方法は、以上のように、インクジェットヘッド底面に少なくとも直線上に配された複数のノズル孔の配列方向に沿って設けられ、かつインクジェットヘッドに一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサによって、上記基板ステージ表面平行平面内の相対移動可能範囲内の複数領域にて該変位センサと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定する表面距離測定工程と、上記2つ以上の変位センサによる該変位センサと基板ステージ表面との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔を互いに結んでできるノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度を演算する角度演算工程と、上記ノズル孔列直線と基板ステージ表面とのなす角度の演算結果から、支持部材に回動自在に取り付けられたインクジェットヘッドの最適なヘッド取付け角度を算出する最適角度算出工程と、上記最適なヘッド取付け角度の算出値に基づいて、インクジェットヘッド取付け角度を回動調整するヘッド取付け角度調整工程とを含む方法である。
本発明のインクジェット装置のヘッド位置制御方法は、以上のように、インクの吐出前に、上記インクジェットヘッドを上記基板の上方に相対的に移動させるヘッド吐出位置移動工程と、上記インクジェットヘッドにおける基板の上方のヘッド吐出位置での、インクジェットヘッド底面に少なくとも直線上に配された複数のノズル孔を互いに結んでできるノズル孔列直線と基板とのなす角度及び距離を測定する測定工程と、上記測定工程での測定結果からノズル孔列直線の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する角度距離算出工程と、上記算出工程でのノズル孔列直線の角度補正値及び垂直方向相対移動距離に基づいて、ノズル孔列直線の角度補正、及びインクジェットヘッドの垂直方向相対移動を行う補正工程とを含む方法である。
それゆえ、インクジェットヘッドに複数のノズル孔が少なくとも1列に配されている場合に、ノズル孔列の両端と被吐出面との距離をノズル孔列と被吐出面との間の角度を踏まえて最適化し、インクジェットヘッドのヘッド搬送誤差、基板ステージの平面度及び平行度誤差による影響を抑えて、基板ステージの全領域でのノズル孔と被吐出面との距離のばらつきを低減し、延いては大型基板に対してであっても着弾精度ばらつきを抑制することができるインクジェットヘッド取付け位置調整方法、及びインクジェット装置のヘッド位置制御方法を提供するという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態のインクジェットヘッド取付け姿勢調整方法を説明するために、図2に示すような大型のインクジェット装置を例に挙げて説明する。
本実施の形態で使用するインクジェット装置10は、図2に示すように、固定の大型の基板ステージ1と、インクジェットユニット20と、このインクジェットユニット20を水平面内で搬送する2軸の平面方向駆動装置2と、後述するインクジェットヘッド21をメンテナンスするメンテナンスユニット3とを備えている。尚、2軸とは互いに直交するX軸及びY軸をいう。
上記インクジェットユニット20の内部には、図3(a)(b)に示すように、ノズル孔Nが一直線状に並んだノズル孔列直線としてのノズル孔列21N を有するインクジェットヘッド21と、このインクジェットヘッド21を搭載し、該インクジェットヘッド21を鉛直方向、つまり上記直交するX軸及びY軸にて形成される平面に直交するZ軸方向に平行に設けられたヘッド鉛直方向駆動軸22に沿って駆動される搬送機構としての鉛直方向駆動部材23とが設けられている。
本実施の形態では、この鉛直方向駆動部材23には、支持部材としての回転軸24に回転自在に軸支されかつ任意の回転位置で固定できるヘッド取付け姿勢調整板25が設けられており、このヘッド取付け姿勢調整板25に上記のインクジェットヘッド21が固定されている。
本実施の形態では、このヘッド取付け姿勢調整板25におけるインクジェットヘッド21の両端側に2つの変位センサ26a・26bが搭載されている。すなわち、変位センサ26a・26bは、図1(a)(b)に示すように、インクジェットヘッド21の近傍でノズル孔列21N に平行な方向に距離Wの間隔で並べてヘッド取付け姿勢調整板25に取り付けられている。このように、2つの変位センサ26a・26bは、ノズル孔列21N の被吐出面に対する位置を測定するので、ノズル孔列21N における両端のノズル孔Nの近傍に設置されていることが好ましい。
上記変位センサ26a・26bは、それぞれ、例えば、発光素子及び受光素子を有する光検知センサからなっており、発光素子からレーザーを出射し、上記基板ステージ1での反射光を受光素子にて受光することによって、各変位センサ26a・26bと大型基板ステージ1との距離が測定できるようになっている。
本実施の形態では、図2に示すように、基板ステージ1の内、4000mm×4000mmの領域を吐出対象領域として決定し、その領域を縦横50ずつの領域に分割している。この結果、一つの領域の寸法は80mm四方となり、合計2500の領域に分割されている。一つの領域の寸法は上記ノズル孔列21N の長さを基準に決定している。
上記構成のインクジェット装置10のインクジェットヘッド取付け姿勢調整方法について以下に説明する。尚、説明においては、変位センサ26a・26bの測定値の一般表示系をそれぞれ測定値LA ・LB とする。
第一に、変位センサ26a・26bの測定値LA ・LB の基準出しを行う。基準出しの作業を行う場合には、図1(a)(b)に示すように、インクジェットヘッド21の吐出面つまりノズル孔列21N に平行でありかつその吐出面からの距離が既知(LH とする)である基準冶具11を取付け、各変位センサ26a・26bによるその基準冶具11までの距離の測定値を測定値LA0・LB0とする。この基準冶具11は、基準出しの作業のときにのみ取り付ければよく、他の作業の際には取り外すものとする。
例えば、ある領域上にインクジェットヘッド21を移動させ、そのときの2つの変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBの差が測定値LA0と測定値LB0との差に等しくなれば(LA −LB =LA0−LB0)、その領域は現状のノズル孔列21N と平行であることになる。また、その領域とノズル孔列21N との角度ずれθは(式1)で算出される。
θ=arctan(((LA −LB)−(LA0−LB0))/W) …(式1)
第二に、基板ステージ1における合計2500個のそれぞれの領域上にインクジェットヘッド21を移動させ、両変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBを記録する。その結果、変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBの組が(LA1,LB1)から(LA2500,LB2500)まで2500組得られる。ここで、この測定を行ったときの、ヘッド鉛直方向駆動軸22での座標値は(LZ0)であったとする。
(式1)によって現状のヘッド取付け姿勢におけるノズル孔列21N と各領域とのなす角度(θ1〜θ2500)が算出できる。これらの平均値(θAve)が基板ステージ1とノズル孔列21N との平均角度ずれとなる。
この角度ずれの平均値(θAve)を相殺する方向にヘッド取付け姿勢調整板25を回転軸24の回りに回転させてヘッド取付け姿勢を補正することにより、基板ステージ1の平均傾斜に合った姿勢にインクジェットヘッド21を取り付けられたことになる。すなわち、ヘッド取付け姿勢を最適化するためには、現状の取付け姿勢から−平均値(θAve)だけヘッド姿勢を調整すればよいということになる。
この算出された角度の分だけ姿勢を変化させる作業も、変位センサ26a・26bを用いることによって、簡便に行うことができる。具体的には、ある平坦平面の上方に変位センサ26a・26b及びインクジェットヘッド21を移動させて、その状態での変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBの差を記録する。その2つの変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBの差が、前述の−平均値(θAve)に相当する分だけ変化するようにインクジェットヘッド21の取付け姿勢を調整すればよく、そのときに利用する平面の傾きは問われない。
今回使用したインクジェットヘッド21では、ノズル孔列21N の長さが70mmであり、測定された平均角度ずれの値は0.15deg程であった。この場合、ノズル孔列21N の中央のノズル孔Nを被吐出面から0.5mmの位置まで近づけたとすると、一端のノズル孔Nと被吐出面との距離は0.59mm、他端のノズル孔Nと被吐出面との距離では0.41mmとなってばらつきが発生してしまう。
ノズル孔Nから被吐出面までの距離は着弾精度に大きく影響するので、一定であることが好ましい。また、ノズル孔列21N の長さが長くなれば、角度ずれが吐出面距離ばらつきに与える影響が大きくなるので、長尺のインクジェットヘッド21では被吐出面とノズル孔列21N との角度は最適化する必要性が大きい。
また、全ての領域での角度ずれを測定した場合に、最大値がある一定値以上であれば、ノズル孔列21N の中央のノズル孔Nを被吐出面に0.5mmまで近づけたときに、一端のノズル孔Nは被吐出面に接触してしまうという判断が可能である。本実施の形態では、角度ずれが0.8deg以上となる領域があれば、その領域ではインクジェットヘッド21を降下させることができないと判断できる。
この結果、基板ステージ1の平均傾斜にノズル孔列21N の角度を合わせることにより、インク吐出時のノズル孔N間の被吐出面までの距離のばらつきを抑えることができ、着弾精度の向上を実現することができる。
このように、本実施の形態のインクジェットヘッド取付け位置調整方法は、インクを吐出する複数のノズル孔Nを有するインクジェットヘッド21と、被吐出面である基板を保持する基板ステージ1と、基板ステージ1及びインクジェットヘッド21を基板ステージ表面平行平面内、及び該基板ステージ表面平行平面の垂直方向に相対的に移動させる平面方向駆動装置2、ヘッド鉛直方向駆動軸22及び鉛直方向駆動部材23からなる搬送機構とを有するインクジェット装置10のインクジェットヘッド取付け位置調整方法である。
このインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、インクジェットヘッド底面に少なくとも直線上に配された複数のノズル孔Nの配列方向に沿って設けられ、かつインクジェットヘッド21に一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサ26a・26bによって、基板ステージ表面平行平面内の相対移動可能範囲内の複数領域にて変位センサ26a・26bと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定する表面距離測定工程と、2つ以上の変位センサ26a・26bによる該変位センサ26a・26bと基板ステージ表面との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔Nを互いに結んでできるノズル孔列21N と基板ステージ表面とのなす角度を演算する角度演算工程と、ノズル孔列21N と基板ステージ表面とのなす角度の演算結果から、支持部材であるか回転軸24に回動自在に取り付けられたインクジェットヘッド21の最適なヘッド取付け角度を算出する最適角度算出工程と、上記最適なヘッド取付け角度の算出値に基づいて、インクジェットヘッド取付け角度を回動調整するヘッド取付け角度調整工程とを含む。
上記の構成によれば、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔Nの配列方向に沿って設けられ、かつインクジェットヘッド21に一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサ26a・26bによって、基板ステージ表面平行平面内の相対移動可能範囲内の複数領域にて該変位センサ26a・26bと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定する。
したがって、被吐出面である基板を保持する基板ステージ1の全域をある一定の大きさに設定した領域に区切り、少なくとも2つの変位センサ26a・26bにより各領域での変位センサ26a・26bと基板ステージ表面との距離をそれぞれ測定することになる。
次いで、上記の測定結果から、インクジェットヘッド底面に直線上に配された複数のノズル孔Nを互いに結んでできるノズル孔列21N と基板ステージ表面とのなす角度を演算する。この結果、各領域でのノズル孔列21N と基板ステージ表面とのなす角度が求まる。
次いで、ノズル孔列21N と基板ステージ表面とのなす角度の演算結果から、回転軸24に回動自在に取り付けられたインクジェットヘッド21の最適なヘッド取付け角度を算出し、この最適なヘッド取付け角度の算出値に基づいて、インクジェットヘッド取付け角度を回動調整する。
これにより、ノズル孔列21N と基板ステージ表面とが平行になるようにインクジェットヘッド21の角度調整を行うことができる。
具体的には、例えば、全ての領域におけるノズル孔列21N と基板ステージ1との角度ずれの平均値を算出することができるので、この平均角度ずれを相殺するように、インクジェットヘッド21の取付け角度を調整し、基板ステージ1の平均傾きに対してヘッド取付け角度を最適化する。
この調整方法は、インクジェットヘッド21に一体的に取り付けられた少なくとも2つ以上の変位センサ26a・26bを用いて行っているため、インクジェットヘッド21を搬送する駆動系の位置決め誤差も補正していることになる。このため、高い位置決め精度で装置を構成することが困難な大型のインクジェット装置に対して特に有用であると言える。
この結果、インクジェットヘッド21に複数のノズル孔Nが少なくとも1列に配されている場合に、ノズル孔列21N の両端と被吐出面との距離をノズル孔列21N と被吐出面との間の角度を踏まえて最適化し、インクジェットヘッド21のヘッド搬送誤差、基板ステージ1の平面度及び平行度誤差による影響を抑えて、基板ステージ1の全領域でのノズル孔Nと被吐出面との距離のばらつきを低減し、延いては大型基板に対してであっても着弾精度ばらつきを抑制することができるインクジェットヘッド取付け位置調整方法を提供することができる。
また、これにより、一定の着弾精度を実現するために求められる基板ステージ1の平行度及び平面度、ヘッド搬送精度の条件を緩めることができる。つまり、大型基板を対象とした高精度のインクジェット装置を安価に製造することができると言える。
尚、複数のノズル孔Nが直線上に並んでいるだけでなく、平面に複数列に分布している場合には、ノズル孔が存在する面と被吐出面との角度ずれを小さくする必要があるため、2点ではなく3点の距離を測定して平面の傾きを算出することになる。しかし、平均角度ずれを相殺するように、インクジェットヘッド21の取付け角度を調整する手法は同様である。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
前記実施の形態1では、インクジェットヘッド21の取付け姿勢つまり取付け角度の最適化について説明したが、本実施の形態では、被吐出面とノズル孔Nとの距離を最適化する方法について説明する。本実施の形態で使用したインクジェット装置10は、前記実施の形態1で使用したインクジェット装置10と同一であるため説明は省略する。
まず、被吐出面とノズル孔Nとの距離は、インクジェットの着弾精度に大きく影響し、大き過ぎる場合には着弾精度は悪化し、小さい場合には平面度誤差等の要因でインクジェットヘッド21が基板ステージ1に干渉したり、インクジェットヘッド21に付着した液体材料で被吐出面を汚したりしてしまう可能性が増す。
インクジェットユニット2を水平面内に搬送する2軸の平面方向駆動装置2がなす搬送平面の平面度、及び基板ステージ1のステージ平面の平面度がいずれも高く、両者の平行度も高いインクジェット装置10であれば、実施の形態1のように、インクジェットヘッド21の取付け姿勢が最適化されてさえいれば、インクジェットユニット20が吐出対象領域のどこにある場合であっても、鉛直方向にインクジェットヘッド21を一定距離だけ移動させることによって、インクジェットヘッド吐出面つまりノズル孔列21Nと被吐出面との距離を一定とすることが可能である。
しかしながら、大型基板を処理するインクジェット装置10では広い領域で高い位置決め精度のインクジェット搬送系を実現することは困難であり、実現するとすればコストも増加してしまう。
そこで、本実施の形態では、実施の形態1で得られた変位センサ26a・26bの測定データから、ノズル孔列21Nと被吐出面との距離をある一定の目標値となるように制御するようにしている。これにより、インクジェット搬送系が広い領域で高い位置決め精度を有していなくても、被吐出面とノズル孔Nとの距離を最適化することが可能となる。この方法について以下に説明する。
まず、実施の形態1において、変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBの組が(LA1,LB1)から(LA2500,LB2500)まで2500組得られたとし、測定時のヘッド鉛直方向駆動軸22の座標値は(LZ0)であったとする。
図1(a)に示すように、第一の領域にて変位センサ26a・26bの測定を行ったときの、ノズル孔列21Nの中央のノズル孔Nと被吐出面との距離Lg1は、実施の形態1に記載した変位センサ26a・26bから基準冶具11までの測定値(LA0,LB0)と、既知であるその基準冶具11の測定面とノズル孔列21Nとの距離(LH )とを用いて下記(式2)にて表すことができる。
Lg1=(LA1+LB1)/2+LH−(LA0+LB0)/2 …(式2)
上記(式2)から分かるように、実施の形態1で得られた変位センサ26a・26bによる測定データから、測定時のインクジェットヘッド21の鉛直方向位置におけるノズル孔列21Nの中央のノズル孔Nと被吐出面との距離が算出できることになる。さらにそのときのヘッド鉛直方向駆動軸22の座標値は(LZ0)であることから、この領域でノズル孔列21Nと被吐出面との距離が所望の値Lg となるためのヘッド鉛直方向駆動軸22の座標値LZ1は下記(式3)で求められる。
LZ1=LZ0+Lg1−Lg …(式3)
このように、(式2)及び(式3)を用いれば、角度ずれを測定したときの変位センサ26a・26bによる測定データから、ある領域でノズル孔列21N と被吐出面との距離が所望の値となるためのヘッド鉛直方向駆動軸22の座標値におけるデータテーブルが得られることになる。
吐出時にインクジェットユニット20が基板ステージ1内のどの領域に存在するかをヘッド鉛直方向駆動軸22の座標値から判断し、データテーブルを参照することによってその領域に応じた鉛直方向の座標値を取得し、その座標値を基にインクジェットヘッド21を鉛直方向に駆動させることによって、吐出可能領域の任意の領域においてノズル孔列21Nと被吐出面との距離を一定値とすることが可能になる。
このように、本実施の形態のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、少なくとも2つ以上の変位センサ26a・26bによる該変位センサ26a・26bと基板ステージ表面との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、ノズル孔列21N における該直線上の第1の点としての例えば中央の点と基板ステージ表面との間の距離を、基板ステージ表面平行平面内の相対移動可能範囲内の複数領域でそれぞれ求める距離演算工程と、相対移動可能範囲内の複数領域においてノズル孔列21N の該直線上の第1の点としての例えば中央の点と基板ステージ表面との間の距離を一定の値とするために必要な各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離を算出する垂直方向移動距離算出工程とを含む。
これにより、被吐出面である基板を保持する基板ステージ1の全域をある一定の大きさに設定した各領域において、ノズル孔列21N における該直線上の第1の点としての例えば中央の点と基板ステージ表面との間の距離を演算により求める。次いで、各領域においてノズル孔列21N における該直線上の第1の点としての例えば中央の点と基板ステージ表面との間の距離を一定の値とするために必要な各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離を算出する。
この結果、基板ステージ表面がノズル孔列21N に対して傾斜している場合に、インクジェットヘッド21を基板ステージ表面のある領域に水平移動したときに、その領域において、ノズル孔列21N 上の第1の点としての例えば中央の点が垂直方向において基準位置つまり一定の値よりもどれ位異なっているかを把握することができる。
また、本実施の形態のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、インクジェットヘッド21のインクを吐出する前には、算出された各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離に基づいてインクジェットヘッド21を各領域にて相対移動させる垂直方向相対移動工程を含む。
これにより、インクジェットヘッド21のインクを吐出する前には、算出された各領域でのインクジェットヘッド垂直方向相対移動距離に基づいてインクジェットヘッド21を各領域にて相対移動させる。
この結果、実際にインクジェット装置10にインクを吐出するときには、各領域においてその距離が一定値になるようにヘッド高さを制御することによって、インクジェットヘッド21と基板ステージ1との距離を最適化することができる。
また、本実施の形態のインクジェット装置10のヘッド位置制御方法は、インクを吐出する複数のノズル孔Nを有するインクジェットヘッド21と、被吐出面である基板を保持する基板ステージ1と、基板ステージ1及びインクジェットヘッド21を基板ステージ表面平行平面内、及び該基板ステージ表面平行平面の垂直方向に相対的に移動させる平面方向駆動装置2、ヘッド鉛直方向駆動軸22及び鉛直方向駆動部材23からなる搬送機構とを有するインクジェット装置10のヘッド位置制御方法である。
このヘッド位置制御方法では、インクの吐出前に、インクジェットヘッド21を基板の上方に相対的に移動させるヘッド吐出位置移動工程と、インクジェットヘッド21における基板の上方のヘッド吐出位置での、インクジェットヘッド底面に少なくとも直線上に配された複数のノズル孔Nを互いに結んでできるノズル孔列21N と基板とのなす角度及び距離を測定する測定工程と、測定工程での測定結果からノズル孔列21N の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する角度距離算出工程と、算出工程でのノズル孔列21N の角度補正値及び垂直方向相対移動距離に基づいて、ノズル孔列21N の角度補正、及びインクジェットヘッド21の垂直方向相対移動を行う補正工程とを含む。
この構成によれば、インクの吐出前に、インクジェットヘッド21における基板の上方のヘッド吐出位置での、ノズル孔列21N と基板とのなす角度及び距離を測定し、ノズル孔列21N の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する。
これにより、インクジェットヘッド21に複数のノズル孔Nが少なくとも1列に配されている場合に、ノズル孔列21N の両端と被吐出面との距離をノズル孔列21N と被吐出面との間の角度を踏まえて最適化し、インクジェットヘッド21のヘッド搬送誤差、基板ステージ1の平面度及び平行度誤差による影響を抑えて、基板ステージ1の全領域でのノズル孔Nと被吐出面との距離のばらつきを低減し、延いては大型基板に対してであっても着弾精度ばらつきを抑制することができるインクジェット装置10のヘッド位置制御方法を提供することができる。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図4ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、インクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との角度ずれの低減について説明する。
図2に示すインクジェット装置10において、前記インクジェットヘッド21は吐出する液体材料やその他の塵等がノズル孔付近に付着していたり、インクジェットヘッド21の内部における流路の液体材料に気泡が含まれていたりすると、正常に吐出することができなくなってしまう。そのために、インクジェットヘッド21をメンテナンスするメンテナンスユニット3が必要となる。
メンテナンスユニット3は、ノズル孔付近を払拭するためのワイプ機構や、気泡や塵等を吸引除去するためのキャップ機構等によりインクジェットヘッド21をメンテナンスする。ワイプ機構であればそのワイプ部材の当接圧力がノズル穴列に対して均一であることが必要である一方、キャップ機構であれば吸引するための密閉性を確保するためにインクジェットヘッド21はキャップ機構に対して平行に接触する必要がある。
上記理由から、高いメンテナンス性能を実現するためには、インクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との角度ずれも低減させることが必要になる。
ここで、このインクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との角度ずれに関しても、インクジェットヘッド21が多ノズル化及び長尺化すれば、同じ角度ずれであってもインクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との距離のばらつきに与える影響は大きくなる。このため、本実施の形態では、長尺ヘッドにおいてメンテナンスユニット3の傾きの調整ができるように、メンテナンスユニット3には、メンテナンスユニット角度調整機構が設けられている。
実施の形態1及び実施の形態2から分かるように、大型のインクジェット装置10において、インクジェットヘッド21と大型の基板ステージ1との角度ずれの大小はインクジェット装置10の基本的な性能に影響するので、インクジェットヘッド21の取付け姿勢は、インクジェット装置10の基板ステージ1の平面及びインクジェットユニット搬送系平面に合わせる必要があり、インクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との角度ずれを補正するためには、メンテナンスユニット3上にインクジェットヘッド21が位置しているときのインクジェットヘッド21の角度にメンテナンスユニット3の角度を合わせるという作業が必要になる。
そのためには、メンテナンスユニット3の上部に平坦な基準面を設ける。メンテナンスユニット3に搭載されるメンテナンス機構のうち、メンテナンス時にインクジェットヘッド21に平行であるべき機構はこの基準面に平行になるように設計、構成されている必要がある。
具体的には、メンテナンスユニット3の上部に一体の基準プレートを設け、その上に他のメンテナンス機構を搭載する構成とし、基準プレート上面をメンテナンスユニット3の基準面とすることによって実現できる。
すなわち、本実施の形態のメンテナンスユニット3は、図4に示すように、メンテナンスユニット下部3aとメンテナンスユニット上部3bとを備えている。上記メンテナンスユニット上部3bの表面には、両端側には基準面としての基準プレート31・31が設けられていると共に、上記2つの基準プレート31・31の間には、例えばキャップ機構及びワイプ機構等の各種のメンテナンス機構32が設けられている。
また、本実施の形態では、メンテナンスユニット3の姿勢を最適化されたインクジェットヘッド21の姿勢に合わせるため、メンテナンスユニット3にも姿勢調整機構が必要である。このメンテナンスユニット3の姿勢調整機構は、メンテナンスユニット3全体の姿勢を調整できる必要はなく、上記メンテナンスユニット上部3bとそれに搭載されたメンテナンス機構32及び基準プレート31・31のみを一括して姿勢調整できればよく、その他構成物は姿勢調整機構外部に配置されていて構わない。
そこで、本実施の形態では、図5に示すように、メンテナンスユニット下部3aとメンテナンスユニット上部3bとの間に設けた3箇所の高さ調整機構33にて、メンテナンスユニット上部3bの平面の傾きを調整できるようになっている。この高さ調整機構33は、例えば、ネジ等の締めによって高さが変化するものとなっている。
すなわち、高さ調整機構33は、メンテナンスユニット上部3bの平面における3点の高さを調節することによって、メンテナンスユニット上部3bの平面の傾きを調整するようになっている。なお、本発明においては、高さ調整機構33は、必ずしもこれに限らず、他の昇降手段を用いることが可能であると共に、3箇所に限らず4箇所等とすることができる。
上記構成のメンテナンスユニット3におけるメンテナンスユニット上部3bの平面の傾き調整方法を以下に説明する。
本実施の形態では、インクジェットヘッド21におけるノズル孔列21N は、Y軸に平行な方向に設けられているので、まず、メンテナンスユニット3がY軸方向に関してインクジェットヘッド21に対して平行になるように調整する。
調整手順として、最初に、インクジェットユニット20に搭載した2つの変位センサ26a・26bがメンテナンスユニット3における一つの基準プレート31のある一箇所を測定できる位置にインクジェットユニット20を移動させる。
このときに、変位センサ26a・26bはインクジェットヘッド21の近傍に設置され、かつ基準プレート31は各種のメンテナンス機構32の近傍に設置されていると共に、変位センサ26a・26bにて基準プレート31・31を測定しているときのインクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との位置関係が、実際にインクジェットヘッド21のメンテナンスを行うときの位置関係に近いことが好ましい。そのときの、変位センサ26a・26bの測定値LAm1・LBm1を取得する。
この測定値の差LAm1 −LBm1 が実施の形態1で述べた基準値LA0 −LB0 に等しくなる状態がノズル孔列21N とメンテナンスユニット3の基準プレート31とが平行である状態であるから、LAm1 −LBm1 =LA0 −LB0 となるようにメンテナンスユニット3におけるノズル孔列21N の列方向の傾きを調整する。調整後のこの位置での変位センサ26a・26bの測定値をLAm1’、LBm1’とする。
次に、インクジェットユニット20に搭載した2つの変位センサ26a・26bがメンテナンスユニット3の基準プレート31の前記測定位置と異なる箇所を測定できる位置にインクジェットユニット20を移動させる。
具体的には、インクジェットヘッド21をX軸方向に移動させ、他の基準プレート31にて再度測定し、X軸方向に関してメンテナンスユニット3をインクジェットヘッド21に対して平行に調整する。
このときの測定位置は、前記測定位置と比較して変位センサ26a・26bが並んでいる方向(ノズル孔列21N と平行な方向)と直交する方向にずれている必要がある。そのときの変位センサ26a・26bの測定値LAm2 ・LBm2 を取得する。このときのインクジェットヘッド21における鉛直方向の位置(鉛直方向駆動軸の座標値)は最初の測定時と等しくする。
次いで、メンテナンスユニット3のノズル孔列21N の列方向の傾き調整は前段階で完了しているため、この2つの測定値の差LAm2 −LBm2 は基準値LA0 −LB0 に十分近い値となっているはずである。
測定時におけるインクジェットヘッド21の鉛直方向の位置は等しいので、最初の測定位置及び現在の測定位置におけるインクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との距離の差は、変位センサ26a・26bの測定値の平均値の差Ld として(式4)で与えられる。
Ld =(LAm1’+LBm1’)/2−(LAm2+LBm2)/2 …(式4)
次いで、最初の測定位置及び現在の測定位置におけるインクジェットヘッド21とメンテナンスユニット3との距離が等しく(Ld =0)なるように、メンテナンスユニット3のノズル孔列21N と直交する方向の傾きを調整する。
これらの一連の作業によって、メンテナンスユニット3の姿勢はインクジェットヘッド21のノズル孔列21N の列方向及びノズル孔列21N に直交する方向の2方向でインクジェットヘッド21のノズル孔列21N の平面に沿うように最適化されたことになる。
さらに、変位センサ26a・26bの測定値LA ・LBを取得した状態でのノズル孔列21N と基準プレート31・31との距離Lgmは下記(式5)で与えられる。
Lgm=(LAm1’+LBm1’)/2+LH −(LA0+LB0)/2 …(式5)
基準プレート31・31から例えばワイプ機構の先端までの鉛直方向の距離や、基準プレート31・31からキャップ機構の上面までの鉛直方向の距離が、設計値等から既知であれば、例えば前記状態でのキャップ機構の上面とノズル孔列21N の平面との距離も算出できる。このため、キャップ機構の上面とノズル孔列21N の平面とを当接させるために移動させるべき相対移動量が得られることになる。
このように、インクジェットヘッド21の近傍に設けた変位センサ26a・26bを用いることによって、メンテナンスユニット3の傾きの最適化だけでなく、メンテナンス実行時にインクジェットヘッド21を降ろすべき距離の値をも得ることができる。したがって、インクジェット装置10の立上げ時の調整とパラメータ最適化との所要時間を短縮することができる。
尚、本実施の形態においては、メンテナンスユニット上部3bのX軸方向の傾斜を2つの変位センサ26a・26bを用いて測定していたが、必ずしもこれに限定されず、例えば、3つの変位センサを用いて測定することも可能である。
例えば3つの変位センサ26a・26b・26cを用いる場合には、図6示すように、インクジェットヘッド21の両側に設けられた変位センサ26a・26bの位置に対して、平面形状三角形となる位置に変位センサ26cを設ける。そして、メンテナンスユニット上部3bには、3つの変位センサ26a・26b・26cにて同時に測定ができる広さの基準面としての基準プレート41を設ける。
これにより、直ちに、メンテナンスユニット上部3bのX軸方向の傾き及びY軸方向の傾きを算出することが可能となる。
このように、本実施の形態のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、インクジェットヘッド21をメンテナンスするメンテナンス機構32を有する場合には、ヘッド取付け角度調整工程の後、2つ以上の変位センサ26a・26bによって、該変位センサ26a・26bとメンテナンス機構32の基準プレート31・31との距離をそれぞれ測定する基準面距離測定工程と、2つ以上の変位センサ26a・26bによる該変位センサ26a・26bとメンテナンス機構32の基準プレート31・31との距離の少なくとも2箇所の測定結果から、ノズル孔列21N とメンテナンス機構32の基準プレート31・31とのなす角度を演算する基準面角度演算工程と、メンテナンス機構32の基準プレート31・31とノズル孔列21N とのなす角度の演算結果から、メンテナンス機構32の最適な設置角度を算出するメンテナンス機構最適角度算出工程と、メンテナンス機構32の最適な設置角度に基づいて、メンテナンス機構32の設置角度を調整するメンテナンス機構設置角度調整工程とを含む。
これにより、インクジェットヘッド21をメンテナンスするメンテナンス機構32を有する場合には、前記同様に、変位センサ26a・26bを用いて、インクジェットヘッド21のメンテナンス機構32の基準プレート31・31とノズル孔列21N とのなす角度を求めることによって、メンテナンス機構32の角度の最適値を算出することができ、角度補正を行うことができる。
また、本実施の形態のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、基準面距離測定工程の後、メンテナンス機構32の基準プレート31・31とノズル孔列21N の該直線上における第2の点としての例えば中央の点との間の距離を演算するメンテナンス機構距離演算工程と、インクジェットヘッド21のメンテナンス時に要求されるノズル孔列21N とメンテナンス機構32との垂直方向の相対距離から、メンテナンス時にインクジェットヘッド21を垂直方向に相対移動させるべき距離を算出するメンテナンス機構垂直方向移動距離算出工程とを含む。
これにより、メンテナンス機構32とノズル孔列21N との垂直方向の距離も求めることができる。
また、本実施の形態のインクジェットヘッド取付け位置調整方法では、メンテナンス機構設置角度調整工程及びメンテナンス機構垂直方向移動距離算出工程の後、インクジェットヘッド21のメンテナンス時には垂直方向に相対移動させるべき距離に基づいてインクジェットヘッドを垂直方向に相対移動させる。
これにより、メンテナンス機構32とノズル孔列21N との垂直方向の算出距離に基づいて、メンテナンスに最適な距離とする位置にインクジェットヘッド21又はメンテナンス機構32を垂直移動するように制御することができ、メンテナンス性も向上する。
また、本実施の形態のインクジェット装置10のヘッド位置制御方法では、インクジェットヘッド21をメンテナンスするメンテナンス機構32を有する場合には、インクジェットヘッド21のメンテナンス前に、インクジェットヘッド21をメンテナンス機構32の上方に相対的に移動させるメンテナンス位置移動工程と、インクジェットヘッド21におけるメンテナンス機構32の上方位置での、ノズル孔列21N とメンテナンス機構32の基準プレート31・31とのなす角度及び距離を測定する基準面角度距離測定工程と、基準面角度距離測定工程での測定結果からノズル孔列21N の角度補正値、及び垂直方向相対移動距離を算出する基準面角度距離算出工程と、算出工程でのノズル孔列21N の角度補正値及び垂直方向相対移動距離に基づいて、ノズル孔列21N の角度補正、及びインクジェットヘッド21の垂直方向相対移動を行う基準面補正工程とを含む。
これにより、インクジェットヘッド21をメンテナンスするメンテナンス機構32を有する場合には、前記同様に、変位センサ26a・26bを用いて、インクジェットヘッド21のメンテナンス機構32の基準プレート31・31とノズル孔列21N のなす角度及び垂直方向の距離を求めることによって、メンテナンス機構32の角度及び距離の最適値を算出することができ、インクジェットヘッド21の角度補正及び距離補正を行うことができる。
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。