JP4734167B2 - 製鋼スラグの処理方法 - Google Patents
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Description
(1)溶融製鋼スラグを溶銑が保持された反応容器に装入し,前記反応容器に装入された溶融製鋼スラグにSiO2含有改質材および還元用炭素源を添加し,加熱用バーナーまたは燃焼用炭材を供給しながら酸素ランスを下降させてスラグ上面上に照射し,前記製鋼スラグの溶融状態を維持したまま前記製鋼スラグの改質処理および還元処理を行うことを特徴とする,製鋼スラグの処理方法。
(2)前記製鋼スラグにSiO2含有物質を添加し,前記製鋼スラグ中のCaOとSiO2との質量比である塩基度CaO/SiO2を1.9以下とすることを特徴とする,(1)に記載の製鋼スラグの処理方法。
(3)前記製鋼スラグの溶融温度を1300℃以下にすることを特徴とする,(1)または(2)に記載の製鋼スラグの処理方法。
(4)前記製鋼スラグにSiO2,Al2O3およびMgOのうちの少なくともいずれか1種を含有する物質を添加することで,前記製鋼スラグの溶融温度を1300℃以下にすることを特徴とする,(3)に記載の製鋼スラグの処理方法。
(5)前記還元処理により前記製鋼スラグ中のトータル鉄の含有率を1.5質量%以下とすることを特徴とする,(1)〜(4)のいずれかに記載の製鋼スラグの処理方法。
(6)前記還元処理により前記製鋼スラグ中に含まれる酸化リンを還元し,溶銑中にリンを回収することを特徴とする,(1)〜(5)のいずれかに記載の製鋼スラグの処理方法。
(7)前記還元用炭素源は,炭素質廃棄物であることを特徴とする,(1)〜(6)のいずれかに記載の製鋼スラグの処理方法。
(8)前記SiO2含有改質材は,Al2O3をさらに含有することを特徴とする,(1)〜(7)のいずれに記載の製鋼スラグの処理方法。
本発明は製鋼スラグを改質処理の対象としており,改質対象の製鋼スラグとしては,特に限定されるものではなく,例えば,脱炭スラグ,溶銑予備処理スラグ,電気炉スラグ等を使用することができる。
溶融状態の製鋼スラグにSiO2含有改質材を添加して改質処理を行うことにより,製鋼スラグ中の未反応の遊離CaOを滓化させ,滓化した遊離CaOとSiO2等との反応により遊離CaOを低減させることができる。したがって,遊離CaOの水和反応(Ca+2H2O→Ca(OH)2+H2)による体積膨張を防止することができる。ここで,溶融状態で改質処理を行うのは,溶融温度未満で改質処理を行った場合には,処理前に未滓化のスラグが固相として残存し,固相として高融点の析出相が残存する場合があるため,SiO2との反応が十分に進行せず,安定して遊離CaOを減少させることができないためである。
本発明では,溶融状態で製鋼スラグの還元処理を行うことにより,第1に,製鋼スラグ中のトータル鉄を低減し,COガスを主とする気泡の発生を防止することができる。このCOガスの気泡は,転炉などから排出された直後の溶融スラグ中には粒鉄が懸濁しており,この懸濁粒鉄の表面に付着した炭素と溶融スラグ中の酸化鉄とが反応することにより発生する。そこで,溶融スラグ中の酸化鉄を還元して酸素源である酸化鉄の量を低減させることにより,COガスの発生を防止することができる。
また,本発明では,溶融状態の製鋼スラグを種湯としての溶銑が保持された反応容器に装入することで,第1に,製鋼スラグの改質還元反応の際,溶融状態の製鋼スラグの顕熱だけでなく,種湯溶銑の顕熱を利用でき,吸熱反応である還元反応中もスラグの溶融状態を維持することができる。その結果,上述したように,スラグ中の遊離CaOの低減を促進し,スラグの還元速度を維持し,かつ,COの脱泡速度を維持することもできる。ここで,溶銑が有する顕熱を利用することにより,還元反応(吸熱反応)中もスラグの溶融状態を維持するという観点からは,種湯溶銑の質量は,製鋼スラグの質量の1/4以上であることが好ましく,製鋼スラグと同質量以上であることがさらに好ましく,製鋼スラグの質量の1.5倍以上であることが最も好ましい。製鋼スラグの質量に対し,溶銑の質量が1/4未満である場合には,還元反応中にスラグの温度低下を招き,スラグの溶融状態を維持することが困難となるため好ましくない。
また,本発明の製鋼スラグの処理方法を実施する際には,製鋼スラグの組成を制御することにより,スラグの溶融温度を1300℃以下にすることが好ましい。このように,スラグの溶融温度を1300℃以下の比較的低温にすることにより,スラグの流動性を良化させて,製鋼スラグの還元速度をさらに大きくすることができる。
本発明では,改質処理および還元処理を行う際に同一の処理温度を維持するために,加熱用バーナー等による加熱,または,燃焼用炭材を供給しながらランス等により酸素を吹き込むことによる加熱を行うことが好ましい。加熱用バーナーの燃料としては,例えば,重油,LPGなどを使用することができる。また,加熱用バーナーの代わりに,燃焼用炭材を供給しながら,酸素を吹き込むことにより炭材を燃焼させた燃焼熱により加熱してもよい。燃焼用炭材は,上述した還元用炭素源と同一の形態でも異なる形態でもよい。またく,燃焼用炭材と還元用炭素源とは,その双方を同一の加熱手段,例えば,粉体溶射バーナーから供給してもよく,異なる加熱手段から,例えば,燃焼用炭材は粉体溶射バーナーから供給し,還元用炭素源は粉体溶射バーナーとは別のスラグ上面側に設置したパイプから供給してもよい。
また,改質還元処理の際,上述したような加熱はスラグ上面側から行われるため,スラグ上面側では改質反応や還元反応が十分に進む一方で,スラグ下面側(溶銑側)ではスラグ上面側からの加熱の効果が及びにくいため,改質反応や還元反応が十分に進まないことがある。そこで,改質還元処理中の製鋼スラグを均熱化するため,製鋼スラグ中に上吹きランス等からガスの吹込みを行って,処理中のスラグを撹拌するようにしてもよい。このような撹拌に使用するガス種としては,例えば,アルゴンなどの不活性ガスを使用することができるが,スラグに燃焼用炭材が供給される場合には,撹拌用ガスとしてO2を含むガスを使用することにより,撹拌用のO2含有ガスが燃焼用炭材を燃焼させることができるため,スラグ撹拌と同時にスラグ温度の維持を効率的に行うことができる。
本発明において,上述した還元用炭素源や燃焼用炭素源としては,例えば,廃プラスチック,バイオマス,パルプ屑等の炭素質廃棄物を使用することができる。かかる炭素質廃棄物は,還元用炭素源または燃焼用炭素源のいずれか一方として使用してもよく,還元用炭素源および燃焼用炭素源の双方に使用してもよい。
また,本発明の改質処理で使用するSiO2含有改質材として,Al2O3をさらに含有する改質材を使用してもよい。SiO2のほかAl2O3をスラグに添加することにより,スラグの溶融温度を更に低下させることが出来る。このような改質材としては,例えば,石炭灰などがある。
溶銑予備処理スラグ20トンを溶融状態のまま(スラグの溶融温度は,1320℃であった),種湯溶銑5.1トンを保持するスラグ処理炉に装入した。搬送台車でスラグ処理位置に移送後,加熱用バーナーを下降させてスラグ上面上に照射した。このバーナーは粉体溶射型のものであり,バーナーの燃料としては重油を使用した。SiO2含有改質材としては石炭灰を0.2トンずつ10回,還元用炭素源としてはコークスを0.1トンずつ10回で,それぞれ3分間隔でバーナーの粉体溶射位置から分割添加し,溶融改質還元処理を行った。処理温度は1330℃〜1380℃で行い,処理中のスラグは常に溶融状態を維持した。処理時間は,石炭灰とコークスの10回の分割添加の前後を含めて合計45分であった。なお,途中でスラグ中温度を均一化するため,バーナーによる加熱と並行してスラグ中にガス吹込み用パイプを浸漬させてArガスを吹き込みながらスラグの撹拌を行った。撹拌後は,ガス吹込み用パイプを引き上げた。改質還元処理後のスラグは,処理後スラグ用鍋に排出し,スラグ処理炉には種湯溶銑を残した。
溶銑予備処理スラグ20トンを溶融状態のまま(スラグの溶融温度は,1300℃であった),種湯溶銑200トンを保持するスラグ処理炉に装入した。搬送台車でスラグ処理位置に移送後,酸素ランスを下降させてスラグ上面上に照射した。燃焼用炭材,還元用炭素源,改質材は,酸素ランスと別に設置したそれぞれの供給用のパイプからスラグ面上に供給した。燃焼用炭材としてはコークス,還元用炭素源としては廃プラスチック,改質材として石炭灰を使用し,それぞれ1回当たり0.4トン,0.3トン,0.2トンを10回,5分間隔で分割添加し,溶融改質還元処理を行った。処理温度は1310℃〜1400℃で行い,処理中のスラグは常に溶融状態を維持した。処理時間は,コークス,廃プラスチック,石炭灰の10回の分割添加の前後を含めて合計で60分であった。分割添加5回目と6回目の間に,酸素吹込みと並行してスラグ中にパイプを浸漬してO2ガスを吹き込みスラグ撹拌を行った。撹拌後,本実施例では6回目の分割添加前に撹拌用パイプは引き上げた。改質還元処理後のスラグは,処理後スラグ用鍋に排出し,スラグ処理炉には種湯溶銑を残した。
Claims (8)
- 溶融製鋼スラグを溶銑が保持された反応容器に装入し,前記反応容器に装入された溶融製鋼スラグにSiO2含有改質材および還元用炭素源を添加し,加熱用バーナーまたは燃焼用炭材を供給しながら酸素ランスを下降させてスラグ上面上に照射し,前記製鋼スラグの溶融状態を維持したまま前記製鋼スラグの改質処理および還元処理を行うことを特徴とする,製鋼スラグの処理方法。
- 前記製鋼スラグにSiO2含有物質を添加し,前記製鋼スラグ中のCaOとSiO2との質量比である塩基度CaO/SiO2を1.9以下とすることを特徴とする,請求項1に記載の製鋼スラグの処理方法。
- 前記製鋼スラグの溶融温度を1300℃以下にすることを特徴とする,請求項1または2に記載の製鋼スラグの処理方法。
- 前記製鋼スラグにSiO2,Al2O3およびMgOのうちの少なくともいずれか1種を含有する物質を添加することで,前記製鋼スラグの溶融温度を1300℃以下にすることを特徴とする,請求項3に記載の製鋼スラグの処理方法。
- 前記還元処理により前記製鋼スラグ中のトータル鉄の含有率を1.5質量%以下とすることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の製鋼スラグの処理方法。
- 前記還元処理により前記製鋼スラグ中に含まれる酸化リンを還元し,溶銑中にリンを回収することを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の製鋼スラグの処理方法。
- 前記還元用炭素源は,炭素質廃棄物であることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の製鋼スラグの処理方法。
- 前記SiO2含有改質材は,Al2O3をさらに含有することを特徴とする,請求項1〜7のいずれに記載の製鋼スラグの処理方法。
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