JP5573024B2 - 製鋼スラグの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鋼スラグを加熱手段で加熱しながら、SiO含有改質材および還元用炭素源を添加し、製鋼スラグを溶融改質還元処理する製鋼スラグの処理方法に関する。
溶銑予備処理及び脱炭工程等の製鋼工程の精錬処理で発生する製鋼スラグは、遊離CaO(以下、「f・CaO」と記載する。)を含み、このf・CaOの水和反応により体積が膨張し、多くの微小な亀裂や開気孔を生ずる場合がある。このようなf・CaOを多く含む製鋼スラグは体積安定性が低い。また、溶融状態(流動性を有する状態)の製鋼スラグはCOガスを主とする気泡を多く含んでおり、このような気泡を多く含む溶融状態の製鋼スラグを冷却すると気泡を含んだ状態で凝固してしまうため、低品質のものとなる。
そのため、製鋼スラグは、土木工事用の仮設材、道路の地盤改良材、下層路盤材等の低級用途に専ら使用され、より高級用途である上層路盤材、コンクリート用骨材、石材原料等には用いられにくい。
これに対して、製鋼スラグを上述のような高級用途に有効利用するために、製鋼スラグ中のf・CaOを低減させたり、溶融状態の製鋼スラグ中の気泡を低減させたりすることにより、製鋼スラグの高品質化を図り、商品価値を高めることが行われている。
例えば、特許文献1には、SiO含有改質材を添加して塩基度を低下させるとともに、還元用炭素源を添加して酸化鉄量を低減させてCOガスを主とする気泡の発生を抑制することが記載されている。また、特許文献1には、SiO、Al、MgOのうちの少なくともいずれか1種を含有する物質を添加し、スラグの溶融温度を低下させることも記載されている。
また、例えば、特許文献2には、スラグ中の酸化鉄やPの濃度を低減させるために、ランスから吹き込まれた酸素による製鋼スラグのへこみ深さLと製鋼スラグの厚みLS0との比L/LS0を所定の範囲に制限することが記載されている。また、溶融改質還元処理開始前に、所定量の炭素含有物質を添加することにより、スラグの粘性を低下させて、COを主とする気泡を沈静化させることも記載されている。
特開2007−297693号公報 特開2007−297694号公報
ところで、本発明者らの検討によれば、改質還元処理の際にスラグ中に存在する炭素分の量が多過ぎると、スラグの流動性が悪化する結果、攪拌が不均一となり、還元性不良を引き起こす場合があることがわかった。また、この場合、改質還元処理の際に添加した還元用炭素源中の炭素分とスラグとの分離が阻害され、炭素分が処理後のスラグ中に残留してしまうため、処理後のスラグの強度の低下を招くということもわかった。
これに対して、特許文献1には、還元用炭素源を添加する点については記載されているが、その添加量の適切な範囲については言及されていない。
また、特許文献2には、改質処理及び還元処理の開始前に添加される炭素含有物質の量Wが、Wc=CFe/100×Ws×10(CFe:トータル鉄濃度、W:製鋼スラグの質量)であることが好ましいということが記載されている。しかし、この場合、例えば、トータル鉄濃度を15質量%とすると、スラグの質量の1.5倍の還元用炭素源をスラグ中に存在させる必要がある。このような炭素分が過多となっている状況下では、攪拌が不均一となり、還元性が悪化するとともに、改質還元処理終了後にスラグ中に残留する炭素分が多く、スラグの分離が不完全となり、製品としてのスラグの強度が低下する、という問題がある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、製鋼スラグを溶融改質還元処理する製鋼スラグの処理方法において、還元用炭素源の適切な添加量を規定することにより、製鋼スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元反応を促進させるとともに、還元用炭素源のスラグ中への残留を抑制し、緻密で強度の高いスラグを得ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶融改質還元処理を通じて製鋼スラグの質量に対する炭素量が所定範囲となるように還元用炭素源であるコークス又は石炭の添加量を決定するとともに、溶融改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が所定の値以上となるようにSiO含有改質材の添加量を決定することにより、製鋼スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元反応を促進させるとともに、還元用炭素源であるコークス又は石炭のスラグ中への残留を抑制し、緻密で強度の高いスラグを得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、溶銑が保持されている反応容器に装入された、液相率30%以上であり固相と液相とが共存した状態にあり、Al が7質量%未満である製鋼スラグを加熱手段で加熱しながら、前記製鋼スラグにSiO含有改質材と、コークス又は石炭と、を添加し、前記製鋼スラグを溶融改質還元処理する製鋼スラグの処理方法において、前記溶融改質還元処理を通じて前記製鋼スラグの質量100質量部に対して炭素量が5質量部以上25質量部以下となるように前記コークス又は石炭を添加し、前記溶融改質還元処理後の前記製鋼スラグの塩基度が0.7以上となるように前記SiO含有改質材を添加する、製鋼スラグの処理方法が提供される。
ここで、前記製鋼スラグの処理方法では、前記加熱手段が前記製鋼スラグへ供給する熱源として、反応容器内の前記製鋼スラグに上吹き送酸しながら前記反応容器内の炭素を燃焼させた際に発生する燃焼熱を用い、前記溶融改質還元処理を通じて、前記製鋼スラグの質量100質量部に対する炭素量を5質量部以上25質量部以下に維持するように、前記コークス又は石炭を前記反応容器に連続的に供給することが好ましい。
また、この場合に、送酸開始前に、前記製鋼スラグの質量100質量部に対して5質量部以上25質量部以下の量の炭素分を含む前記コークス又は石炭を前記製鋼スラグに添加した後に送酸を開始し、送酸開始後に、前記溶融改質還元処理において発生する排ガス量Q(Nm/h)並びに前記排ガス中のCO濃度及びCO濃度を連続的に測定し、当該測定値を用いて下記式(1)により決定された量のコークス又は石炭を前記反応容器に連続的に供給することが好ましい。
コークス又は石炭の添加量(kg/h)
=(%CO+%CO)/100×Q/22.4×12/(コークス又は石炭中の炭素割合) ・・・(1)
ただし、前記式(1)において、「%CO」及び「%CO」は、それぞれ、前記排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を表す。
本発明によれば、製鋼スラグを溶融改質還元処理する製鋼スラグの処理方法において、溶融改質還元処理を通じて製鋼スラグの質量に対する炭素量が所定範囲となるように還元用炭素源を添加するとともに、溶融改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が所定の値以上となるようにSiO含有改質材を添加することにより、製鋼スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元反応を促進させるとともに、還元用炭素源のスラグ中への残留を抑制し、緻密で強度の高いスラグを得ることが可能となる。
改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度と圧縮強度(N/mm)との関係の一例を示すグラフである。 改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合(質量%)と処理後のスラグ中のT.Fe濃度(質量%)との関係の一例を示すグラフである。 改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合(質量%)と改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度(N/mm)との関係の一例を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[本発明に係る製鋼スラグの処理方法について]
初めに、本発明に係る製鋼スラグの処理方法の概略について説明する。本発明に係る製鋼スラグの処理方法は、製鋼スラグを加熱手段で加熱しながら、製鋼スラグにSiO含有改質材および還元用炭素源を添加し、製鋼スラグを溶融改質還元処理する方法である。すなわち、本発明に係る製鋼スラグの処理方法では、製鋼スラグを反応容器に装入した後に、加熱手段を用いて加熱して溶融させた製鋼スラグに対してSiO含有改質材および還元用炭素源を添加し、製鋼スラグを溶融状態で改質及び還元する。なお、製鋼スラグは、種湯としての溶銑が保持されている反応容器に装入される。以下、このような本発明に係る製鋼スラグの処理方法に関する各項目について詳細に説明する。
(製鋼スラグの種類)
本発明は製鋼スラグを改質処理の対象としており、改質対象の製鋼スラグとしては、特に限定されるものではなく、例えば、脱炭スラグ、溶銑予備処理スラグ、電気炉スラグ等を使用することができる。
(処理中のスラグの状態)
また、本発明では、上述したように製鋼スラグを加熱手段により溶融させ、製鋼スラグが溶融した状態で改質処理及び還元処理を行う。このように溶融状態で処理を行うのは、f・CaOの滓化(溶融均一化)やスラグの還元反応を促進するためには、処理対象のスラグが溶融状態であることが有効だからである。以下、この点についてより詳細に説明する。
(製鋼スラグの改質処理)
溶融状態の製鋼スラグにSiO含有改質材を添加して改質処理を行うことにより、製鋼スラグ中の未反応のf・CaOを滓化させ、滓化したf・CaOとSiO等との反応によりf・CaOを低減させることができる。したがって、f・CaOの水和反応(Ca+2HO→Ca(OH)+H)による体積膨張を防止することができる。ここで、溶融状態で改質処理を行うのは、溶融温度未満で改質処理を行った場合には、処理前に未滓化のスラグが固相として残存し、固相として高融点の析出相が残存する場合があるため、SiOとの反応が十分に進行せず、安定してf・CaOを減少させることができないためである。
なお、本発明における「溶融状態」とは流動性を有する状態であれば良く、必ずしも改質還元処理開始前から完全に液相である必要はない。具体的な指標としては、スラグ組成から市販の熱力学計算モデルソフト(例えば、SOLGASMIX)で求めた推定値で表すと、液相率が30%以上であれば良い。改質還元処理の進行に伴い、加熱や改質材の溶射により塩基度が低下することで固相率が低下し、その結果、スラグの流動性がさらに向上し改質還元処理が促進される。
(製鋼スラグの還元処理)
本発明では、溶融状態で製鋼スラグの還元処理を行うことにより、製鋼スラグ中の酸化鉄を低減し(これにより、トータル鉄(以下、「T.Fe」と記載する。)が低減される。)、COガスを主とする気泡の発生を防止することができる。このCOガスの気泡は、転炉などから排出された直後の溶融状態の製鋼スラグ(以下、「溶融スラグ」と記載する場合がある。)中には粒鉄が懸濁しており、この懸濁粒鉄に含まれる炭素と溶融スラグ中の酸化鉄とが反応することにより発生する。そこで、溶融スラグ中の酸化鉄を還元して酸素源である酸化鉄の量を低減させることにより、COガスの発生を防止することができる。
本発明ではまた、溶融状態で製鋼スラグの還元処理を行うことにより、製鋼スラグ中のT.Feを低減させることで、スラグを白色化または透明化して外観を改善し、スラグの高付加価値化を図ることができる。スラグは、T.Feが多い場合は黒色を呈しているが、スラグ中のFeOやFeを還元してT.Feを低減させると、還元処理後のスラグを脱色させて白色または透明に近づけることができる。このようにT.Feが多く黒色を呈している製鋼スラグを白色化または透明化して、コンクリート骨材としてセメントとともに混合すること等ができれば、還元処理後の製鋼スラグの用途を著しく拡げることができる。そのためには、セメントと同等またはセメントよりも白色化することが必要となる。セメントよりも黒色の強いスラグを骨材として混合した場合、コンクリート内に黒色の点として現れ、外観を損ねることになるからである。
具体的には、本発明者らが行った実験の結果によれば、還元処理により製鋼スラグ中のT.Feの濃度を1.5質量%以下とすると、普通ポルトランドセメントに骨材として混合してもセメントの外観を損ねることはないため、好ましい。また、T.Feが0.5質量%以下にまで低減すると、白色セメントの白色度に匹敵し、より高級な用途である白色セメントの骨材として使用することができるので、還元処理により製鋼スラグ中のT.Feを0.5質量%以下とすることが特に好ましい。
本発明ではまた、溶融状態で製鋼スラグの還元処理を行うことにより、製鋼スラグ中の鉄、リン、マンガン等の有価成分を回収することができる。製鋼スラグ中には、CaO、SiOの他に、鉄、リン、マンガン等の有価金属が酸化物(FeO、MnO、P等)の形で多く含有されている。そこで、溶銑を種湯として用いている場合には、これらの有価成分の酸化物を、製鋼スラグ中に還元用の炭素源を添加することにより還元し、鉄、リン、マンガン等の有価成分を溶銑中に回収することができる。
特に、リンは、肥料原料等として用いられるため重要である。一般に、リンは鉄のもろさの原因となるため、通常は脱リン処理により溶銑中から取り除かれるが、本発明は、リンを一時的に種湯溶銑中に濃化させておき、その後高濃度のリンを含む溶銑を脱リンし、得られたスラグ中に高濃度の酸化リン(P)として回収し、肥料原料等として資源化する目的で用いられる。
また、例えば、同一の種湯溶銑を用いて本発明の還元処理を繰り返して行い、溶銑中のリン濃度を高めた後に脱リンを行うことにより、高濃度の酸化リンを含む脱リンスラグを生成することが可能である。このような脱リンスラグは、少量のスラグからリンを高効率で回収できる高品位のリン資源となる。
(種湯溶銑の役割)
また、本発明では、溶融状態の製鋼スラグを種湯としての溶銑が保持された反応容器に装入する。これにより、製鋼スラグの改質還元反応の際、溶融状態の製鋼スラグの顕熱だけでなく、種湯溶銑の顕熱を利用でき、吸熱反応である還元反応中に一旦溶融したスラグが溶融状態を維持することができる。その結果、上述したように、スラグ中のf・CaOの滓化を促進し、スラグの還元速度を維持し、かつ、COの脱泡速度を維持することもできる。ここで、溶銑が有する顕熱を利用することにより、還元反応(吸熱反応)中もスラグの溶融状態を維持するという観点からは、種湯溶銑の質量は、製鋼スラグの質量の1/4以上であることが好ましく、製鋼スラグと同質量以上であることがさらに好ましく、製鋼スラグの質量の1.5倍以上であることが最も好ましい。製鋼スラグの質量に対し、溶銑の質量が1/4未満である場合には、還元反応中にスラグの温度低下を招き、スラグの溶融状態を維持することが困難となるため、溶銑の質量が製鋼スラグの質量に対して1/4以上であることが好ましい。
また、溶銑を種湯として使用することにより、還元反応のサイトとして溶銑/スラグ界面を利用することができる。製鋼スラグの還元反応は、スラグ/還元用炭素源界面よりも、主に溶銑/スラグ界面で進行する。言い換えると、還元反応速度はスラグ/還元用炭素源界面よりも、溶銑/スラグ界面で大きいので、溶銑を保持した容器内に製鋼スラグを装入することにより、溶銑/スラグ界面を還元反応サイトとして利用して、製鋼スラグの還元反応速度を大きくする(還元反応を促進する)ことができる。ここで、還元反応サイトとして溶銑/スラグ界面を利用した場合に、還元反応速度を最大化するために、還元反応界面積を最大化する観点からは、種湯として用いる溶銑の量は、少なくとも反応容器の底面全体を覆う量であることが好ましい。
さらに、溶銑を種湯として使用することにより、製鋼スラグ中の有価成分(鉄、リン、マンガン等)を種湯として用いた溶銑中に高効率で回収することができる。製鋼スラグ中のリンやマンガン等の有価金属の酸化物は、還元されて金属単体となり種湯溶銑中に移行する。種湯溶銑は、上述したように、還元反応界面積を最大化する観点から、少なくとも反応容器の底面全体を覆うために、反応容器内に多量に保持されている。したがって、製鋼スラグ中のリンやマンガン等の有価成分は、量の多い種湯溶銑に移行しても、種湯溶銑中の有価成分の濃度は低い状態であるので、製鋼スラグからの有価成分の移行速度、言い換えると、製鋼スラグ中の有価成分の酸化物の還元速度を、有価成分濃度が飽和に達するまで維持することができる。一方、種湯溶銑が少量である場合には、リンやマンガン等の有価成分の濃度が飽和に達しやすくなるため、有価成分の酸化物の還元速度は低下してしまう。
(加熱手段)
本発明では、改質処理および還元処理を行う際に同一の処理温度を維持するために、加熱手段として加熱用バーナー等による加熱手段(以下、「バーナー加熱手段」という。)、または、燃焼用炭材を供給しながらランス等により酸素を吹き込むことによる加熱手段(以下、「酸素ガスを使用する加熱手段」という。)を使用することが好ましい。ここで、上記加熱用バーナーの燃料としては、例えば、重油、液化石油ガス(LPG)などを使用することができる。また、酸素ガスを使用する加熱手段の場合には、燃焼用炭材を燃焼させた際に発生する燃焼熱を利用して製鋼スラグを加熱する。燃焼用炭材は、製鋼スラグの還元処理に使用する還元用炭素源と同一の形態でも異なる形態でもよく、この燃焼用炭材としては、例えば、廃プラスチック、バイオマス、パルプ屑等の炭素質廃棄物などを使用することができる。また、燃焼用炭材と還元用炭素源とは、その双方を同一の加熱手段、例えば、粉体溶射バーナーから供給してもよく、異なる加熱手段から、例えば、燃焼用炭材は粉体溶射バーナーから供給し、還元用炭素源は粉体溶射バーナーとは別のスラグ上面側に設置したパイプから供給してもよい。
(ガス撹拌によるスラグの均熱化)
また、改質還元処理の際、上述したような加熱はスラグ上面側から行われるため、スラグ上面側では改質反応や還元反応が十分に進む一方で、スラグ下面側(溶銑側)ではスラグ上面側からの加熱の効果が及びにくいため、改質反応や還元反応が十分に進まないことがある。そこで、改質還元処理中の製鋼スラグを均熱化するため、製鋼スラグ中に上吹きランス等からガスの吹込みを行って、処理中のスラグを撹拌するようにしてもよい。このような撹拌に使用するガス種としては、例えば、アルゴンなどの不活性ガスを使用することができるが、スラグに燃焼用炭材が供給される場合には、撹拌用ガスとして酸素を含むガスを使用することにより、撹拌用の酸素含有ガスが燃焼用炭材を燃焼させることができるため、スラグ撹拌と同時にスラグ温度の維持を効率的に行うことができる。
なお、詳しくは後述するように、スラグ中に存在する炭素分の量が多過ぎると、粘度が高くなり、スラグの流動性が低下するため、上述したようなガス攪拌が不均一となりやすい。そのため、スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元性が悪化することとなる。
(SiO含有改質材)
また、本発明において、SiO含有改質材は、改質処理において、製鋼スラグの塩基度(CaO/SiOの質量比)を低減するために、製鋼スラグに添加される。このようなSiO含有改質材としては、ケイ酸を含有しているものであれば特に限定はされないが、SiO含有量が50質量%以上のものが好ましく、例えば、石炭灰、ケイ砂などが例示できる。なお、SiO含有改質材について、SiO成分の残部は主にAl成分である場合が多い。また、SiO含有改質材のサイズについては、特に限定はされない。
なお、上記SiO含有改質材として石炭灰を使用する場合等には、石炭灰中にAlが含有されているが、通常のSiO含有改質材の添加量では、溶融改質還元処理を通じてスラグ中のAl濃度が、7質量%未満程度となる。
ここで、本発明においては、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が0.7以上となるように、SiO含有改質材の添加量を調整することが必要となる。以下に、図1を参照しながら、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度を0.7以上とする理由について説明する。図1は、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度と圧縮強度(N/mm)との関係の一例を示すグラフである。
本発明者らは、改質還元処理後の製鋼スラグの適正な塩基度を検討するために、以下のような実験を行った。
まず、種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークス3.3tを事前に一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量は、塩基度を変化させた改質還元処理後のスラグを得るために変数とした。
また、コークスは、炭素分に換算して、転炉型反応容器に装入した溶銑予備処理スラグの質量100質量部に対して15質量部(溶銑予備処理スラグの質量100質量%に対して外数で15質量%)となる添加量とした。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、溶融改質還元処理により発生する排ガス量Q(Nm/h)および排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を連続的に測定し、この測定値に基づき、次式より決定した。
コークス供給速度(kg/h)
=(%CO+%CO)/100×Q/22.4×12/(コークス中の炭素割合)
(「%CO」及び「%CO」は、それぞれ、排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を表す。)
溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出し、凝固させた。
なお、本実験におけるスラグ組成の分析方法としては、JIS K 0119に準拠して蛍光X線分析を行い、また、改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度は、JIS A 1132に準拠して測定した。測定結果を下記表1に示す。この実験の結果、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度と圧縮強度(N/mm)について、図1のような関係があることがわかった。
Figure 0005573024
なお、CaO/SiO以外のスラグ成分は、Al濃度が5〜6質量%、MgO濃度が5〜7質量%、T.Fe濃度が0.2〜0.5質量%、MnO濃度が0.9〜1.5質量%であった。
本実験の結果、図1に示すように、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が0.7未満となると、急激にスラグの圧縮強度が低下する傾向にあることがわかった。これは、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が0.7未満であると、スラグの粘性が高く、改質還元処理終了後にスラグを反応容器から排出する際に還元用炭素源が巻き込まれた状態で排出され、スラグと炭素分とが分離せずに炭素分がスラグ中に残存し、この残存した炭素の粒子が亀裂等の起点となるため、スラグの強度が低下するものと推測される。
そこで、本発明に係る製鋼スラグの処理方法においては、改質還元処理の製鋼スラグの塩基度が0.7以上の範囲となるように、SiO含有改質材の添加することとした。
本発明に係る製鋼スラグの溶融改質還元処理方法においては、図1に示すように、改質スラグの強度を高くできるため、例えば、上層路盤材、コンクリート用骨材、石材原料(割栗石等)、砥砂等の高級用途に十分使用可能な品質の製鋼スラグを得ることができる。
また、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が1.5以下となるように、SiO含有改質材の添加量を調整することが好ましい。製鋼スラグの塩基度が1.5を超えると、スラグの融点が上昇し、スラグの粘度が高くなることから、スラグ中のf・CaOとSiO含有改質材中のSiOとの反応が十分に進行せず、安定してf・CaOを減少させることができにくくなるためである。さらに、塩基度がより低い方が改質反応をより確実に行うことができることから、改質還元処理後の製鋼スラグの塩基度が1.4以下となるように、SiO含有改質材の添加量を調整することがより好ましい。
(還元用炭素源)
本発明において、還元用炭素源は、上述したように、COガスを主とする気泡の発生や外観の白色化のためにT.Feを低減させたり、鉄やリン等の有価金属を回収する目的で添加されるものであるが、製鋼スラグ量に対する還元用炭素源中の炭素量が少な過ぎると、還元剤の量が不足して製鋼スラグの還元処理が不十分となるため、COガスを主とするガスによりスロッピングが発生したり、酸化鉄やP等の酸化物の還元不良が発生して有価金属が十分に回収できないおそれがある。
ただし、製鋼スラグ量に対する炭素量が多くなり過ぎると、改質還元処理中のスラグの流動性が低下するために、スラグの攪拌が不均一となり、スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元性不良を引き起こす場合があることが、本発明者らの検討により判明した。従って、還元用炭素源中の炭素量が多くなり過ぎると、改質還元処理に要する時間が増大し、これに伴い、加熱等のためのエネルギー原単位が増大するとともに、COの発生量も増加してしまう、という問題を生ずる。さらには、製鋼スラグ中の酸化物の還元速度が低下するために、T.Feを十分に低下させることができずにスラグ製品としての特性(吸水率等)が悪化したり、P等の有価金属の回収量も低下したりする、という問題も生ずる。また、この場合、溶融改質還元処理の際に添加した還元用炭素源中の炭素分とスラグとの分離が阻害され、改質還元処理後の製鋼スラグ中に残留してしまう炭素分が多くなり、この炭素分とスラグとの分離が不完全となるため、処理後のスラグの強度の低下を招く、という問題もある。
<還元用炭素源の添加量>
そこで、本発明者らは、還元用炭素源の適切な添加量について検討するために、以下のような実験を行った。本実験では、改質還元処理中における製鋼スラグ中の炭素量(質量%)と処理後のスラグ中のT.Fe量(質量%)との関係、及び、改質還元処理中における製鋼スラグ中の炭素量(質量%)と改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度(N/mm)との関係を調査した。
まず、種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰を2t、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークスを一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量は、転炉型反応容器に装入する前の溶銑予備処理スラグを採取し、蛍光X線分析装置にて組成を分析し、目標とするCaO/SiOの比1.2とするのに必要なSiO量を算出することにより決定した。また、スラグ中に共存する炭素分質量割合の設定を、種々変更させた。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、溶融改質還元処理により発生する排ガス量Q(Nm/h)および排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を連続的に測定し、この測定値に基づき、次式より決定した。
コークス供給速度(kg/h)
=(%CO+%CO)/100×Q/22.4×12/(コークス中の炭素割合)
(「%CO」及び「%CO」は、それぞれ、排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を表す。)
溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出し、凝固させた。
上記のようにしてスラグ中に共存する炭素分質量割合を変化させて溶融改質還元処理の実験を行い、スラグ中に共存する炭素分質量割合と処理後T.Fe濃度(質量%)との関係、および、スラグ中に共存する炭素分質量割合と圧縮強度との関係を調査した。
ここで、本実験におけるスラグ組成の分析方法としては、JIS K 0119に準拠して蛍光X線分析を行った。また、改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度は、JIS A 1132に準拠して測定した。測定結果を下記表2および表3に示す。
Figure 0005573024
Figure 0005573024
本実験の結果、改質還元処理中における製鋼スラグ中の炭素量(質量%)と処理後のスラグ中のT.Fe濃度(質量%)との関係について、図2のような関係があり、改質還元処理中における製鋼スラグ中の炭素量(質量%)と改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度(N/mm)との関係について、図3のような関係があることがわかった。なお、図2は、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合(質量%)と処理後のスラグ中のT.Fe濃度(質量%)との関係の一例を示すグラフである。図3は、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合(質量%)と改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度(N/mm)との関係の一例を示すグラフである。
まず、図2に示すように、処理後のスラグ中のT.Fe濃度については、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合が高くなるに従い、処理後のスラグ中のT.Fe濃度が低くなっていき、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合が5質量%以上25質量%以下(処理中の製鋼スラグ100質量%に対して外数で5質量%以上25質量%以下)の範囲で処理後のスラグ中のT.Fe濃度が1質量%未満と低位となるが、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合が25質量%を超えると、処理後のスラグ中のT.Fe濃度が高くなる傾向にあることがわかった。
改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合と処理後のスラグ中のT.Fe濃度との関係が上記のような傾向を示すのは、炭素分の質量割合が5質量%未満の場合には、還元剤量が少ないためにスラグ中の酸化鉄等の酸化物の還元速度が低下するためT.Fe濃度が高く、炭素分の質量割合が5質量%以上25質量%以下の範囲においては、還元剤量が十分に多く、かつ、炭素分の増加によるスラグの流動性の悪化も起こらないため、スラグ中の酸化物の還元速度が速く、炭素分の質量割合が25質量%を超えると、スラグの流動性が悪化し、スラグの撹拌が十分になされないためにスラグ中の酸化物の還元不良が発生するためであると考えられる。なお、炭素分の質量割合が5質量%以上25質量%以下の範囲において、T.Fe濃度が一定となっているのは、T.Fe濃度が平衡濃度となり、それ以上低下しないようになるためである。
また、図3に示すように、改質還元処理後の製鋼スラグの圧縮強度については改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合が高くなるに従い、圧縮強度も高くなっていき、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合が5質量%以上25質量%以下(処理中の製鋼スラグ100質量%に対して外数で5質量%以上25質量%以下)の範囲で圧縮強度が40N/mmと高位で一定となり、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合が25質量%を超えると、圧縮強度が低下する傾向にあることがわかった。
改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素分の質量割合と処理後のスラグの圧縮強度との関係が上記のような傾向を示すのは、炭素分の質量割合が5質量%以上25質量%以下の範囲においては、炭素量増加によるスラグの流動性の悪化が起こらないため、改質還元処理後の製鋼スラグ中に残留する炭素分が少なく、この炭素分がスラグから分離できるためであると考えられる。すなわち、炭素量増加によるスラグの流動性の悪化が起こらないと、スラグの撹拌が十分に行われ、改質還元処理の際に添加した還元用炭素源中の炭素分がFeO等の酸化物の還元反応に使用されることから、未反応の還元用炭素源の発生も抑制される。また、スラグ中に未反応の還元用炭素源が残留している場合であっても、スラグの流動性が高いため、処理後のスラグと還元用炭素源との分離が容易となる。一方、炭素分の質量割合が25質量%を超えると、スラグと炭素分との分離が十分に行われず、スラグ中に炭素分が残留することになる。この場合、残留した炭素の粒子が、固化させた後のスラグの亀裂や割れの起点となるため、スラグの強度が低下することとなる。
なお、製鋼スラグ中の炭素分とスラグとの分離は、通常は、溶融状態の処理後の改質スラグ中で炭素分を浮上させることにより行う。このとき、処理後の改質スラグの粘度が高いと、炭素分の浮上が妨げられるため、還元剤としての炭素分とスラグとの分離が不完全となる場合がある。また、処理後の改質スラグ中に残留する炭素分が多いと、その浮上に時間がかかるために、その間の温度低下によりスラグの粘度が上昇し、還元剤としての炭素分とスラグとの分離が不完全となる場合がある。
このように、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素量が5質量%未満であると、還元剤量が不足しているため、スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元速度が遅くなることから、処理後のスラグ中のT.Fe濃度が高くなるため、スロッピングや、処理後スラグの外観の黒色化等が発生する。一方、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素量が25質量%を超えると、スラグの粘性が悪化し、スラグの撹拌が十分に行われないために、スラグ中の酸化鉄やP等の酸化物の還元不良が発生する。また、この場合、改質還元処理に要する時間が長くなり、生産効率が低下する。さらに、改質還元処理中の製鋼スラグ中に共存する炭素量が25質量%を超える場合には、改質還元処理後の製鋼スラグ中に還元剤として添加した炭素分が残留しやすくなるため、処理後の改質スラグの強度が低下する。なお、炭素分の質量割合が5質量%以上25質量%以下の範囲において、圧縮強度が一定となっているのは、スラグ中に気泡や炭材が存在しなくなり、改質スラグそのものの強度となるためである。
そこで、本発明に係る製鋼スラグの処理方法においては、改質還元処理中における製鋼スラグ中のFeO等の還元を促進させ、還元用炭素源のスラグ中への残留を抑制し、かつ、改質還元処理により緻密で強度の高い改質された製鋼スラグを得るために、改質還元処理中を通じて、製鋼スラグの質量100質量%に対して炭素量が外数で5質量%以上25質量%以下(製鋼スラグの質量100質量部に対して炭素量が5質量部以上25質量部以下)となるように、還元用炭素源を添加することとした。また、還元用炭素源の添加量について、改質還元処理初期の熱損失を低減するという観点から、製鋼スラグの質量100質量部に対して炭素量が15質量部以下となるようにすることが好ましい。さらに、還元用炭素源の添加量について、より確実にスラグ等の還元が可能となることから、製鋼スラグの質量100質量部に対して炭素量が10質量部以上となるようにすることが好ましい。
<還元用炭素源の具体例>
以上説明したような還元用炭素源の具体例としては、主にコークスや石炭等が挙げられるが、これには限られず、例えば、上述した還元用炭材と同様に、廃プラスチック、バイオマス、パルプ屑等の炭素質廃棄物などを使用することもできる。かかる炭素質廃棄物は、還元用炭素源または燃焼用炭素源のいずれか一方として使用してもよく、還元用炭素源および燃焼用炭素源の双方に使用してもよい。
<還元用炭素源の添加方法>
ここで、還元用炭素源の添加方法としては、製鋼スラグを加熱する加熱手段が当該製鋼スラグへ供給する熱源として、反応容器内の製鋼スラグに上吹き送酸しながら反応容器内の炭素を燃焼させた際に発生する燃焼熱を用いる場合、すなわち、上記加熱手段が酸素ガスを使用する加熱手段である場合には、溶融改質還元処理を通じて、製鋼スラグの質量100質量%に対する炭素量を外数で5質量%以上25質量%以下(製鋼スラグの質量100質量部に対して炭素量が5質量部以上25質量部以下)に維持するように、還元用炭素源を反応容器に連続的に供給することが好ましい。
ここで、還元用炭素源中には揮発分が含まれているものがあることから、一度に大量に反応容器中に装入すると、加熱されることにより揮発分が蒸発して大量のガスが発生することとなる。そこで、このような場合には、少量の還元用炭素源をフィーダー等で切出し量を調整しながら連続的に処理中のスラグに供給することが好ましい。
具体的には、例えば、反応容器への送酸開始前に、製鋼スラグの質量100質量%に対して5質量%以上25質量%以下の量の炭素分を含む還元用炭素源を製鋼スラグに添加した後に送酸を開始し、さらに、送酸開始後に、溶融改質還元処理において発生する排ガス量Q(Nm/h)並びに排ガス中のCO濃度及びCO濃度を連続的に測定し、当該測定値を用いて下記式(1)により決定された量の還元用炭素源を反応容器に連続的に供給することが好ましい。
還元用炭素源添加量(kg/h)
=(%CO+%CO)/100×Q/22.4×12/(還元用炭素源中の炭素割合)
・・・(1)
ただし、上記式(1)において、「%CO」及び「%CO」は、それぞれ、排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を表す。ここで、排ガス中のCO濃度およびCO濃度は、反応容器に接続された排ガスダクトから排ガスをサンプリングし、質量分析計、赤外線ガス分析計、ガスクロマトグラフィ等の分析機器を用いて測定することができる。
上記式(1)に示すように、追加で添加する還元用炭素源は、還元剤としてスラグ中の酸化物と反応して系外に排出される炭素分(CO及びCOとして排出される炭素分)の量を補充するように反応容器に供給することにより、溶融改質還元処理を通じて、製鋼スラグの質量100質量%に対する炭素量を外数で5質量%以上25質量%以下に維持することができる。
なお、還元用炭素源をフィーダー等で切出す際に、フィーダーの切り換え等により、一旦、供給が中断することがあるが、この程度であれば、特に問題はないため、連続的な供給とみなすことができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は、上述した本発明の実施の形態に基づいて、製鋼スラグの改質還元処理を行い、処理後のスラグ(改質スラグ)の成分や物性(吸水率及び圧縮強度)を評価したものである。
(実施例1)
種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰を2t、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークス3.3tを事前に一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量は、転炉型反応容器に装入する前の溶銑予備処理スラグを採取し、蛍光X線分析装置にて組成を分析し、目標とするCaO/SiOの比1.2とするのに必要なSiO量を算出することにより決定した。また、コークスは、炭素分で転炉型反応容器に装入した溶銑予備処理スラグの質量100質量%に対して外数で15質量%となる添加量とした。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、溶融改質還元処理により発生する排ガス量Q(Nm/h)および排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を連続的に測定し、この測定値に基づき、次式より決定した。
コークス供給速度(kg/h)
=(%CO+%CO)/100×Q/22.4×12/(コークス中の炭素割合)
(「%CO」及び「%CO」は、それぞれ、排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を表す。)
本実施例における溶融改質還元処理では、スラグ中に適正量の炭素分が共存していたため、スロッピングの発生もなく、安定した操業が可能であった。また、溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出し、転炉型反応容器に溶銑を残存させた。ここで、スラグ排出の際、還元用炭素源として添加したコークスも同時に排出されるが、スラグの粘度が低かったことから、コークスとスラグとの分離性が良く、コークスが、スラグ中に巻き込まれることなく、スラグ層の上に浮上分離した。冷却後、転炉型反応容器内のスラグ及びコークスをスラグ鍋から取り出すと、スラグとコークスとは完全に分離でき、コークスは、次チャージの溶融改質還元処理の還元用炭素源として使用することができた。なお、回収できたスラグ量とコークス量は、それぞれ、14tと3tであった。
改質還元処理前および処理後のスラグ、本実施例で使用した石炭灰およびコークスの成分を下記表4〜6にそれぞれ示す。なお、本実施例および以下に説明する実施例2、比較例1〜3におけるスラグ組成の分析方法としては、蛍光X線分析(JIS K 0119)を、f・CaO分析にはエチレングリコール抽出法ICP発光分光分析を用いた。ただし、f・CaOの分析において、f・CaOを抽出する方法としてTBP(トリブロムフェノール)法等があり、抽出が正しくできればいずれの方法を用いても良い。
なお、下記表4におけるT.Feとは、FeOと、Feと、金属鉄の合計濃度である。FeOと、Feと、金属鉄とは、化学分析を用いれば、それぞれの濃度を独立して評価することができるが、本実施例のように、蛍光X線分析を用いた場合には、Feを含む全ての成分の合計濃度としてしか分析することができない。また、下記表4では、f・CaOは、蛍光X線分析では分析できず、上述したように別途分析した値であるため、f.CaO量は外数として示してある。
Figure 0005573024
Figure 0005573024
Figure 0005573024
上記表4に示すように、溶融改質還元処理後の改質スラグは、体積膨張の原因となるf・CaOが1質量%未満に低減されており、上層路盤材等の高級用途に利材化しても問題ない水準まで改質された。また、溶融改質還元処理後の改質スラグ中のT.Feは0.5質量%未満まで低減された結果、冷却後のスラグは白色化され、普通ポルトランドセメント及び白色セメントに混合しても外観上、その違いは認められなかった。
また、得られた溶融改質還元処理後の改質スラグには、コークスが残留していなかったため、吸水率は0.7質量%と低く、圧縮強度は42N/mmと高く、砂、骨材、割栗石等として十分使用可能な品質であった。なお、本実施例および以下に説明する実施例2、比較例1〜3において、吸水率は、JIS A 1109及びJIS A 1135に準拠して測定し、圧縮強度は、JIS A 1132に準拠して測定した。
また、溶融改質還元処理後のスラグにおいては、MnOやPのような有価成分の酸化物も還元されてスラグ中の濃度が低減し、種湯溶銑に有価成分(マンガン、リン)として回収された。その結果、下記表7に示すように、種湯溶銑中のマンガンやリンの濃度は上昇した。
Figure 0005573024
(実施例2)
種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰を2t、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークス4tを事前に一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量は、転炉型反応容器に装入する前の溶銑予備処理スラグを採取し、蛍光X線分析装置にて組成を分析し、目標とするCaO/SiOの比1.2とするのに必要なSiO量を算出することにより決定した。また、コークスは、炭素分で転炉型反応容器に装入した溶銑予備処理スラグの質量100質量%に対して外数で18質量%となる添加量とした。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、実施例1と同様の方法により決定した。
本実施例における溶融改質還元処理では、スラグ中に適正量の炭素分が共存していたため、スロッピングの発生もなく、安定した操業が可能であった。
上記処理の終了後、さらに、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰を2t添加した。一方、還元用炭素源として使用するコークスは、前処理でスラグ中に適正範囲の量が共存しているため添加しなかった。その後、次の溶銑予備処理スラグを20t追加装入し、20分間の溶融改質還元処理を行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、実施例1と同様の方法により決定した。
このように、溶融改質還元処理を4回繰り返して行った。以上5回の溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出し、転炉型反応容器に溶銑を残存させた。ここで、スラグ排出の際、還元用炭素源として添加したコークスも同時に排出されるが、スラグの粘度が低かったことから、コークスとスラグとの分離性が良く、コークスが、スラグ中に巻き込まれることなく、スラグ層の上に浮上分離した。冷却後、転炉型反応容器内のスラグ及びコークスをスラグ鍋から取り出すと、スラグとコークスとは完全に分離でき、コークスは、次チャージの溶融改質還元処理の還元用炭素源として使用することができた。なお、回収できたスラグ量とコークス量は、それぞれ、56tと3.8tであった。
以上5回の繰り返し処理によって、スラグ中に共存する炭素分は減少していったが、最終的にはスラグ質量に対する炭素分の質量割合は6%であったため、スロッピングの発生もなく安定した操業が可能であった。なお、さらに繰り返して処理を行う場合、スラグ質量が処理回数とともに増えるので、それに合わせて、コークス等の還元用炭素源を補給すれば問題なく操業が可能である。
改質還元処理前および処理後のスラグの組成を下記表8に示す。また、本実施例では、石炭灰およびコークスについては、上記実施例と同様に、上記表5,6に示した組成のものを使用した。
なお、下記表8におけるT.Feとは、FeOと、Feと、金属鉄の合計濃度である。FeOと、Feと、金属鉄とは、化学分析を用いれば、それぞれの濃度を独立して評価することができるが、本実施例のように、蛍光X線分析を用いた場合には、Feを含む全ての成分の合計濃度としてしか分析することができない。また、下記表8では、f・CaOは、蛍光X線分析では分析できず、上述したように別途分析した値であるため、f.CaO量は外数として示してある。
Figure 0005573024
上記表8に示すように、溶融改質還元処理後の改質スラグは、体積膨張の原因となるf・CaOが1質量%未満に低減されており、上層路盤材等の高級用途に利材化しても問題ない水準まで改質された。また、溶融改質還元処理後の改質スラグ中のT.Feは0.5質量%未満まで低減された結果、冷却後のスラグは白色化され、普通ポルトランドセメント及び白色セメントに混合しても外観上、その違いは認められなかった。
また、得られた溶融改質還元処理後の改質スラグには、コークスが残留していなかったため、吸水率は0.6質量%と低く、圧縮強度は45N/mmと高く、砂、骨材、割栗石等として十分使用可能な品質であった。
また、溶融改質還元処理後のスラグにおいては、MnOやPのような有価成分の酸化物も還元されてスラグ中の濃度が低減し、種湯溶銑に有価成分(マンガン、リン)として回収された。その結果、下記表9に示す濃度まで高めることができた。この後、この溶銑の脱リン処理を行った結果、脱リンスラグ中にPとして高濃度のリン成分を効率的に回収できた。
Figure 0005573024
(比較例1)
種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰3.5t、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークス3.3tを事前に一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量は、転炉型反応容器に装入する前の溶銑予備処理スラグを採取し、蛍光X線分析装置にて組成を分析し、目標とするCaO/SiOの比0.65とするのに必要なSiO量を算出することにより決定した。また、コークスは炭素分で転炉型反応容器に装入した溶銑予備処理スラグの質量100質量%に対して外数で15質量%となる添加量とした。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、実施例1と同様の方法により決定した。
本比較例における溶融改質還元処理では、スラグ中に適正量の炭素分が共存していたため、スロッピングの発生もなく、安定した操業が可能であった。溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出し、転炉型反応容器に溶銑を残存させた。ここで、スラグ排出の際、還元用炭素源として添加したコークスも同時に排出されるが、処理後の改質スラグ中の塩基度(CaO/SiO)が0.65と低かったため、スラグの粘度が高くなり、その結果、コークスとスラグとの分離性が悪かった。そのため、冷却後の改質スラグの内部には浮上分離できなかったコークス粒が多数存在した状態であった。
改質還元処理前および処理後のスラグの成分を下記表10に示す。また、本比較例では、石炭灰およびコークスについては、上記実施例と同様に、上記表5,6に示した組成のものを使用した。
なお、下記表10におけるT.Feとは、FeOと、Feと、金属鉄の合計濃度である。FeOと、Feと、金属鉄とは、化学分析を用いれば、それぞれの濃度を独立して評価することができるが、本実施例のように、蛍光X線分析を用いた場合には、Feを含む全ての成分の合計濃度としてしか分析することができない。また、下記表10では、f・CaOは、蛍光X線分析では分析できず、上述したように別途分析した値であるため、f.CaO量は外数として示してある。
Figure 0005573024
上記表10に示すように、溶融改質還元処理後の改質スラグは、体積膨張の原因となるf・CaOが1質量%未満に低減されており、上層路盤材等の高級用途に利材化しても問題ない水準まで改質された。また、溶融改質還元処理後の改質スラグ中のT.Feは0.5質量%未満まで低減された結果、冷却後のスラグは白色化され、普通ポルトランドセメント及び白色セメントに混合しても外観上、その違いは認められなかった。
また、得られた溶融改質還元処理後の改質スラグには、コークスが多量に残留していたため、吸水率は5.4質量%と高く、また、圧縮強度は15N/mmと低く、コンクリート骨材やアスコン骨材としては使用できなかった。
また、溶融改質還元処理後の改質スラグにおいて、MnOやPのような有価成分の酸化物はほとんど還元されず、下記表11に示すように種湯溶銑に有価成分(マンガン、リン)として十分に回収することができなかった。
Figure 0005573024
(比較例2)
種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰2t、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークス8.8tを事前に一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量の投入量は、転炉型反応容器に装入する前の溶銑予備処理スラグを採取し、蛍光X線分析装置にて組成を分析し、目標とするCaO/SiOの比1.2とするのに必要なSiO量を算出することにより決定した。また、コークスは炭素分で転炉型反応容器に装入した溶銑予備処理スラグの質量100質量%に対して外数で40質量%となる添加量とした。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、実施例1と同様の方法により決定した。
本比較例における溶融改質還元処理では、スラグ中には適正量以上の炭素分が共存していたため、スラグの攪拌が十分には行われなかった。溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出し、転炉型反応容器に溶銑を残存させた。ここで、スラグ排出の際、還元用炭素源として添加したコークスも同時に排出されるが、体積ではスラグよりコークスの方が大きいため、スラグとコークスとのの分離性が悪かった。そのため、冷却後のスラグ内部には浮上分離できなかったコークス粒が多数存在した状態であった。
改質還元処理前および処理後のスラグの成分を下記表12に示す。また、本比較例では、石炭灰およびコークスについては、上記実施例と同様に、上記表5,6に示した組成のものを使用した。
なお、下記表12におけるT.Feとは、FeOと、Feと、金属鉄の合計濃度である。FeOと、Feと、金属鉄とは、化学分析を用いれば、それぞれの濃度を独立して評価することができるが、本実施例のように、蛍光X線分析を用いた場合には、Feを含む全ての成分の合計濃度としてしか分析することができない。また、下記表12では、f・CaOは、蛍光X線分析では分析できず、上述したように別途分析した値であるため、f.CaO量は外数として示してある。
Figure 0005573024
上記表12に示すように、溶融改質還元処理後の改質スラグは、体積膨張の原因となるf・CaOが1質量%未満に低減されており、上層路盤材等の高級用途に利材化しても問題ない水準まで改質された。しかし、溶融改質還元処理後の改質スラグ中のT.Feは1.5質量%と高く、スラグは白色化されず、普通ポルトランドセメント及び白色セメント用原料には使用できなかった。
また、得られた溶融改質還元処理後の改質スラグには、コークスが多量に残留していたため、吸水率は6.5質量%と高く、また、圧縮強度は6N/mmと極めて低く、砂や骨材、割栗石等として全く使用できない品質であった。
また、溶融改質還元処理後の改質スラグにおいて、MnOやPのような有価成分の酸化物はほとんど還元されず、下記表13に示すように種湯溶銑に有価成分(マンガン、リン)として十分に回収することができなかった。
Figure 0005573024
(比較例3)
種湯溶銑100tを保持する転炉型反応容器に、SiO含有改質材として使用する5〜10mm径の石炭灰2t、還元用炭素源として使用する10〜50mm径のコークス0.7tを事前に一括投入した。その後、溶銑予備処理スラグ20tを溶融状態のまま転炉型反応容器に装入した。なお、石炭灰の投入量の投入量は、転炉型反応容器に装入する前の溶銑予備処理スラグを採取し、蛍光X線分析装置にて組成を分析し、目標とするCaO/SiOの比1.2とするのに必要なSiO量を算出することにより決定した。また、コークスは炭素分で転炉型反応容器に装入した溶銑予備処理スラグの質量100質量%に対して外数で3質量%となる添加量とした。
スラグの装入後、上吹きランスより酸素を供給し、溶融改質還元処理を20分間行った。処理温度は1400℃〜1470℃で行い、処理中のスラグを常に溶融状態に維持した。なお、上吹き酸素による燃焼やスラグ中の酸化鉄分等の還元によって消費される炭素分を補うために、溶融改質還元処理中に、反応容器の上方から10〜50mm径のコークスを連続供給した。このときのコークスの供給速度については、実施例1と同様の方法により決定した。
本比較例における溶融改質還元処理では、スラグ中には適正量以下しか炭素分が共存していなかったため、スロッピングが多発し、操業が困難であった。溶融改質還元処理の終了後、処理後の改質スラグをスラグ鍋に排出したが、スラグがフォーミングした状態で排出したため、冷却後のスラグ内部には気泡が多数存在した状態であった。
改質還元処理前および処理後のスラグの成分を下記表14に示す。また、本比較例では、石炭灰およびコークスについては、上記実施例と同様に、上記表5,6に示した組成のものを使用した。
なお、下記表14におけるT.Feとは、FeOと、Feと、金属鉄の合計濃度である。FeOと、Feと、金属鉄とは、化学分析を用いれば、それぞれの濃度を独立して評価することができるが、本実施例のように、蛍光X線分析を用いた場合には、Feを含む全ての成分の合計濃度としてしか分析することができない。また、下記表14では、f・CaOは、蛍光X線分析では分析できず、上述したように別途分析した値であるため、f.CaO量は外数として示してある。
Figure 0005573024
上記表14に示すように、溶融改質還元処理後の改質スラグは、体積膨張の原因となるf・CaOが1質量%未満に低減されており、上層路盤材等の高級用途に利材化しても問題ない水準まで改質された。しかし、溶融改質還元処理後の改質スラグ中のT.Feは5.3質量%と高く、スラグは黒色のままで、普通ポルトランドセメント及び白色セメント用原料には使用できなかった。
また、得られた溶融改質還元処理後の改質スラグには、気泡が多量に残留していたため、吸水率は7.8質量%と極めて高く、また、圧縮強度は3N/mmと極めて低く、砂や骨材、割栗石等として全く使用できない品質であった。
また、溶融改質還元処理後の改質スラグにおいて、MnOやPのような有価成分の酸化物はほとんど還元されず、下記表15に示すように種湯溶銑に有価成分(マンガン、リン)として十分に回収することができなかった。
Figure 0005573024
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (3)

  1. 溶銑が保持されている反応容器に装入された、液相率30%以上であり固相と液相とが共存した状態にあり、Al が7質量%未満である製鋼スラグを加熱手段で加熱しながら、前記製鋼スラグにSiO含有改質材と、コークス又は石炭と、を添加し、前記製鋼スラグを溶融改質還元処理する製鋼スラグの処理方法において、
    前記溶融改質還元処理を通じて前記製鋼スラグの質量100質量部に対して炭素量が5質量部以上25質量部以下となるように前記コークス又は石炭を添加し、
    前記溶融改質還元処理後の前記製鋼スラグの塩基度が0.7以上となるように前記SiO含有改質材を添加することを特徴とする、製鋼スラグの処理方法。
  2. 前記加熱手段が前記製鋼スラグへ供給する熱源として、反応容器内の前記製鋼スラグに上吹き送酸しながら前記反応容器内の炭素を燃焼させた際に発生する燃焼熱を用い、
    前記溶融改質還元処理を通じて、前記製鋼スラグの質量100質量部に対する炭素量を5質量部以上25質量部以下に維持するように、前記コークス又は石炭を前記反応容器に連続的に供給することを特徴とする、請求項1に記載の製鋼スラグの処理方法。
  3. 送酸開始前に、前記製鋼スラグの質量100質量部に対して5質量部以上25質量部以下の量の炭素分を含む前記コークス又は石炭を前記製鋼スラグに添加した後に送酸を開始し、
    送酸開始後に、前記溶融改質還元処理において発生する排ガス量Q(Nm/h)並びに前記排ガス中のCO濃度及びCO濃度を連続的に測定し、当該測定値を用いて下記式(1)により決定された量のコークス又は石炭を前記反応容器に連続的に供給することを特徴とする、請求項2に記載の製鋼スラグの処理方法。
    コークス又は石炭の添加量(kg/h)
    =(%CO+%CO)/100×Q/22.4×12/(コークス又は石炭中の炭素割合)・・・(1)
    (前記式(1)において、「%CO」及び「%CO」は、それぞれ、前記排ガス中のCO濃度およびCO濃度(体積%)を表す。)
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