JP4732755B2 - 磁性粒子捕集用磁力体及びその利用 - Google Patents

磁性粒子捕集用磁力体及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、磁性粒子捕集用磁力体、該磁力体を用いる磁性粒子の捕集方法、及び、該磁力体を用いる装置に関する。本発明は、免疫測定法等の磁性粒子を用いた分析に用いることができる。
近年、微小な磁性粒子を担体として利用し、溶液中で各種の反応等を行う手法が多数開発されている。例えば、免疫測定法(例えば、J.Immunol.Methods,218:1−2,1−8,Sep1(1998)参照)、核酸の抽出・分析方法(例えば、Biotechniques,13:1,124−31,Jul(1992)参照)、タンパク質・リガンドの分析方法、コンビナトリアル・ケミストリー等の化学反応等の多くの分野において磁性粒子を用いた各種手法が開発され、繁用されている。
例えば、種々の疾病の早期検出法や極微量の物質の検出法として繁用されている各種の免疫測定法の中でも、抗原又は抗体を担持させた磁性粒子を用いる手法は、高い感度が得られることやB/F分離等の操作が簡便であること等から、高く評価されている。B/F分離とは、反応チューブやマイクロタイタープレートのウェル等の反応容器から、未反応物を含む反応液を廃棄した後、洗浄液の供給、廃棄という洗浄操作を繰り返し、抗原抗体反応物と未反応物とを分離する工程である。抗原又は抗体を担持させた磁性粒子を用いた場合には、この磁性粒子と試料とを混合することにより抗原抗体反応を行わせた後、生成した免疫複合体を含む磁性粒子を捕集する工程、未反応の抗原又は抗体を分離・洗浄する工程等を含むB/F分離を、磁力を利用して簡便かつ迅速に行うことができる。
具体的には、例えば、反応チューブやマイクロタイタープレートのウェルのような静置された状態の反応容器等に磁力体を接触させて磁性粒子の捕集を行う方法(例えば、特開平3−144367号公報参照)や、容器内から液体を吸引・吐出するフローラインとして用いられるチップやステンレスパイプ、フレキシブルチューブ等に磁力体を接触させ、磁性粒子の捕集を行う方法(例えば、特許第3115501号公報参照)、その他多数の報告がなされている。
しかし、これらの方法では、磁性粒子の回収率(捕集効率)の向上が重要な課題となっている。微小の磁性粒子は各種の反応を高効率で行うためには有用であるが、溶液中で浮遊しやすく、回収率が低下しやすい。回収率が低下すると、洗浄、分離等の過程で磁性粒子が流失したりして誤差を生じ、測定値の信頼性が低下することがある。しかし、流出を防ぐために洗浄を十分に行わないと、完全な分離が達成されず、各種検体の前処理等の分離後の上清を使用する場合にはコンタミネーションが生じることもある。特に免疫測定法においては、B/F分離が複数回行われるために、磁性粒子の流失や誤差を生じた場合に測定値への影響が大きくなってしまう。
これらの問題を解決するために、例えば、磁性粒子の全てを確実に捕集させるまで長い時間をかけて沈降させる方法が試みられている。しかしこの方法では、反応チューブやマイクロタイタープレート等の反応液が静止している反応容器を用いた場合には比較的短時間で捕集することができるものの、容器内から液体を吸引・吐出するフローラインのように反応液が流動している場合には回収率を向上させるのが困難であった。また、測定に要する時間を長大化させる要因となり、迅速な測定が求められる臨床検査等には不向きであった。
一方、磁性粒子を捕集するために磁力体として用いられる電磁石又は永久磁石等を大きくして、磁力を強める方法も試みられたが、装置が大きくなってしまう等の問題があり、実用的とは言えなかった。
このように、複数回のB/F分離を行う免疫測定法等においても高い再現性が得られるような、簡便かつ高効率の磁性粒子の捕集方法は未だ確立されているとは言えず、小型で効率的に磁性粒子を捕集することができる磁力体の開発が求められている。特に、近年臨床検査において重要視されているPOCT(Point of Care Testing)分野等においては、小型で取り扱いがしやすく、医療現場において医師や看護婦が迅速に検査を行えるような装置が求められており、装置の小型化は必須である。また、POCT分野で用いられる装置では、迅速な検査を達成させるために採血後の全血をそのまま用いることも求められるが、夾雑タンパク質を多く含む全血を試料として用いた場合には磁性粒子が凝集しやすいため回収率の低下をまねくことが多く、強力な磁力体を用いて迅速で回収率の高いB/F分離を行うことが強く求められている。
本発明は、簡便かつ高効率で磁性粒子を捕集するための磁性粒子捕集用磁力体、該磁力体を用いる磁性粒子の捕集方法、及び該磁力体を配設した装置を提供するためになされたものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を進めた結果、隣接する複数の磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置させれば、効率的に磁性粒子を捕集できる磁力体を作製できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち本発明によれば、
(1)複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されていることを特徴とする磁性粒子捕集用磁力体、が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、
(2)磁極面中に少なくとも1つ以上の磁力のピークを有し、該ピークの磁力が600ガウス以上であることを特徴とする磁性粒子捕集用磁力体、
(3)液体中の磁性粒子を磁力により壁面に吸着保持した後に、磁力の影響を受けないようにすることによって該磁性粒子を離脱させることを含む磁性粒子の捕集方法であって、
前記磁力は、複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されている磁性粒子捕集用磁力体より発せられるものであることを特徴とする方法、
(4)壁面が、容器内から液体を吸引し吐出する分注機の液体吸引ラインの内壁面である上記(3)に記載の方法、
(5)磁性粒子が、免疫測定を行うためのものである上記(3)又は(4)に記載の方法、
(6)液体中の磁性粒子を磁力により壁面に吸着保持した後に、磁力の影響を受けないようにすることによって該磁性粒子を離脱させることを含む磁性粒子の捕集方法であって、前記磁力が、磁極面中に少なくとも1つ以上の磁力のピークを有し、該ピークの磁力が600ガウス以上である磁性粒子捕集用磁力体より発せられるものであることを特徴とする方法、
(7)壁面が、容器内から液体を吸引し吐出する分注機の液体吸引ラインの内壁面である上記(6)に記載の方法、
(8)磁性粒子が、免疫測定を行うためのものである上記(6)又は(7)に記載の方法、
(9)(a)試料に、当該試料中に含まれる被検物質に特異的に結合する第1の物質を担持させた磁性粒子を添加して反応させる第1の反応工程、
(b)第1の反応工程で形成された第1の反応生成物を反応系から分離する第1の分離工程、
(c)分離された第1の反応生成物に、該反応生成物に特異的に結合する第2の物質を添加して反応させ、反応系中に第2の反応生成物を形成させる第2の反応工程、
(d)第2の反応工程で形成された第2の反応生成物を反応系から分離する第2の分離工程、及び
(e)分離された第2の反応生成物の量を測定する測定工程を含む試料中に存在する被検物質の免疫測定法であって、
第1又は第2の反応生成物の反応系からの分離は、複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されている磁性粒子捕集用磁力体を用いて行われることを特徴とする方法、
(10)第2の反応生成物の量の測定が、化学発光法又は蛍光法により行われることを特徴とする上記(9)に記載の方法、
(11)(a)試料に、当該試料中に含まれる被検物質に特異的に結合する第1の物質を担持させた磁性粒子を添加して反応させる第1の反応工程、
(b)第1の反応工程で形成された第1の反応生成物を反応系から分離する第1の分離工程、
(c)分離された第1の反応生成物に、該反応生成物に特異的に結合する第2の物質を添加して反応させ、反応系中に第2の反応生成物を形成させる第2の反応工程、
(d)第2の反応工程で形成された第2の反応生成物を反応系から分離する第2の分離工程、及び
(e)分離された第2の反応生成物の量を測定する測定工程を含む試料中に存在する被検物質の免疫測定法であって、
第1又は第2の反応生成物の反応系からの分離が、磁極面中に少なくとも1つ以上の磁力のピークを有し、該ピークの磁力が600ガウス以上である磁力体を用いて行われることを特徴とする方法、
(12)第2の反応生成物の量の測定が、化学発光法又は蛍光法により行われることを特徴とする上記(11)に記載の方法、
(13)容器内から液体を吸引し吐出する液体吸引ラインを有する分注機と、この液体吸引ラインに配設された磁力体とを備え、該磁力体の磁力により液体吸引ラインに吸引された液体中の磁性粒子を該液体吸引ラインの内壁面に吸着保持した後に、該磁力体の磁力の影響を受けないようにすることによって磁性粒子を液体吸引ラインから離脱させて液体と共に液体吸引ライン外へ吐出するように制御される装置であって、前記磁力体は、複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されているものであることを特徴とする装置、
(14)容器内から液体を吸引し吐出する液体吸引ラインを有する分注機と、この液体吸引ラインに配設された磁力体とを備え、該磁力体の磁力により液体吸引ラインに吸引された液体中の磁性粒子を該液体吸引ラインの内壁面に吸着保持した後に、該磁力体の磁力の影響を受けないようにすることによって磁性粒子を液体吸引ラインから離脱させて液体と共に液体吸引ライン外へ吐出するように制御される装置であって、前記磁力体は、磁極面中に少なくとも1つ以上の磁力のピークを有し、該ピークの磁力が600ガウス以上であることを特徴とする装置、が提供される。
図1は、磁力体A、B、C、及びDの構成を示した図である。Aは単一磁力体、B、C及びDは本発明の積層された磁力体である。
図2は、B/F分離の工程において磁力体を使用する装置に、本発明の磁力体及びチップがセットされた様子を示す図である。
図3は、8つの容器からなる自動測定用カートリッジの断面図である。
図4は、磁力体A、BによるHTLV−1磁性粒子の回収率を示したグラフである。縦軸は回収率(単位:%×1/100)、横軸は時間(単位:秒)である。磁力体Aを用いた場合の結果をダイヤ形で示し、磁力体Bを用いた場合の結果を四角で示した。
図5は、磁力体A、B、CによるTP−N磁性粒子の回収率を示したグラフである。縦軸は回収率(単位:%×1/100)、横軸は時間(単位:秒)である。磁力体Aを用いた場合の結果をダイヤ形、磁力体Bを用いた場合の結果を四角、磁力体Cを用いた場合の結果を三角で示した。
図6は、磁力体A、B、Dによる抗原が何も担持されていない磁性粒子の回収率を示したグラフである。縦軸は回収率(単位:%×1/100)、横軸は時間(単位:秒)である。磁力体Aを用いた場合の結果をダイヤ形、磁力体Bを用いた場合の結果を四角、磁力体Dを用いた場合の結果を三角で示した。
図7は、磁力体のハンディ・ガウスメーターによる磁力の測定における、磁力体に対する測定用プローブの位置を示す図。
図8は、磁力体の磁極面位置による磁力の測定結果を示す図。縦軸は磁力(単位:gauss)、横軸は磁極面位置(単位:mm)である。磁力体Aの結果をダイヤ形、磁力体Bの結果を四角、磁力体Cの結果を三角で示し、これらは実線で示した。磁力体Dの結果は小四角と点線で示した。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
1.本発明の磁性粒子捕集用磁力体
本発明の磁性粒子捕集用磁力体は、複数の磁石が、隣接する磁石同士が接触するように配置されたものである。そして、本発明の磁力体は、隣接する磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されている(以下、これを「積層されている」と称することがある)ことを特徴とする磁力体である。尚、本発明において「平行」とは、磁力体を構成するそれぞれの磁石の磁化方向が同一であることを意味するものではなく、ある磁石の磁化方向と他の磁石の磁化方向が逆方向であっても、「平行」である。
一般に、磁石の磁力は、磁石が磁力を発する面(該磁力体を構成する磁石の磁化方向に対して垂直な側面:以下、これを「磁極面」と称することがある)の端部で強く、中心部で弱い。従って、例えば、単一の磁石よりなる磁力体(以下、これを「単一磁力体」と称することがある)を用いた場合、大きな磁石を用いてもその端部でしか強い磁力が得られず、磁石の磁極面全体にわたって強い磁力を得ることができないため、磁性粒子の捕集が非効率になるという問題があった。
これに対して、本発明の磁力体では、複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されているため、該磁力体の磁極面の磁石と磁石が接触している部位(以下、これを「積層部」と称することがある)で強い磁力が得られ、各々の磁石の中心部では磁力は弱くなることがわかった。すなわち単一磁力体では、ある一定の面積を有する磁極面において、磁石の端部分でしか強い磁力を得られないのに対して、本発明の磁力体では、複数の磁石が積層されているために磁力体の磁極面の複数箇所で強い磁力を得ることができるという大きな特徴がある。すなわち、本発明の磁力体は、磁極面中に1つ以上の磁力のピークを有する。ピークを有するとは、磁極面中のある点における磁力が、磁石の積層方向における前記の点の両側よりも大きいことをいい、この点をピークという。
例えば、単一磁力体では磁極面の両端にのみ強い磁力が得られる箇所がある。2個の磁石を積層した磁力体では、両端の他に一箇所の積層部において強い磁力が得られる(ピークを有する)。3個の磁石を積層した磁力体では、両端の他に2箇所の積層部において強い磁力が得られる(ピークを有する)。
また、一般的に、磁石の磁力線の及ぶ距離(磁界の広さ)は、磁石の大きさに応じて大きくなる。このことから、従来、大きな磁石による強い磁力を用いれば、磁性粒子の捕集等においても効果が増強されると考えられていた。しかし、近年技術の進歩により微細なディスポーザブルチップ等を容器内から液体を吸引し吐出するフローライン(以下、これを「液体吸引ライン」と称することがある)として用い得るようになったことから、これらに対してただ単に大きな磁石を用いても、磁力線の及ぶ範囲が広すぎてチップ等の内径部分に集中させることができず、漂遊磁界が広くなってしまうという問題点があった。
これに対して、本発明の磁力体は、複数の磁石を組み合わせて用いているために各々の磁石の大きさは適度に小さくなり、各磁石が発する磁力線の及ぶ距離が短く、磁極面近傍に集積していて、漂流磁界が減少するという特徴がある。従って、例えば、細い流路を有する液体吸引ラインに磁性粒子捕集用磁力体として接触させて用いた場合に、効率的に磁性粒子を捕集することができる。
このような二つの大きな特徴により、本発明の磁力体は、液体吸引ラインや容器の内壁面において、磁性粒子を非常に効率的に捕集することができるという大きな効果を奏し、磁性粒子捕集用磁力体として特に好適である。
用いる磁石としては、磁極としてS極(南極)とN極(北極)を有し、磁性粒子を捕集できるような磁力を発することのできるものであればいかなるものでもよい。例えば、永久磁石、電磁石等が挙げられるが、発生磁場の強度や安定性、電源が不要である等の点から、永久磁石が好ましく用いられる。永久磁石としては、例えば、アルニコ、バリウムフェライト、ネオジム、サマリウムコバルト等の適当な磁性材料を、棒状、板状、立方体状、円盤状、馬蹄形等の任意の形状に成形・磁化させたもの等が挙げられる。棒状としては、断面が四角形であることが好ましい。上記の磁石の中でも、ネオジム磁石を棒状又は板状に成形したものが好ましく用いられる。
上記磁石を複数用いて、これらを隣接する磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置させることにより、本発明の磁力体を作製することができる。尚、それぞれの磁石の間に間隙があっても、磁力体が一体として構成され、必要とされる磁力が十分に得られるものであれば、それぞれの磁石は実質的に接触している。本発明において「接触して」とは、このような実質的に接触している場合を含む。ただし、各々の磁石の間には間隙はない方が好ましい。
磁石は、2個以上、好ましくは3個以上を組み合わせて用いる。個数の上限は、用いる磁石の大きさと、該磁石を複数用いて作製される本発明の磁力体をどのような大きさ(外寸)で作製するかによって決定される。各磁石の大きさは同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
例えば、各磁石が小さくなりすぎると、かえって発生する磁力が小さくなり、磁性粒子の捕集効率が低下することがある。作製する磁力体の外寸に合わせて、磁性粒子を捕集する部位での磁力が最大となるよう、適切な大きさの磁石を選択すればよい。好ましい磁石の個数及び各磁石の大きさは、後述するような手法で該磁力体が接触する部位の磁力を測定したり、実際に磁性粒子の回収率を求めたりして、その磁力体の有する磁力が磁性粒子を捕集するのに充分な大きさであることを確認して決定すればよい。外寸は、該磁力体を接触させる反応容器等の大きさや、該磁力体を配設する装置の仕様等に鑑みて決定すればよい。例えば、装置に対して大きすぎないことや、光電子増倍管等の磁力の影響を受ける可能性のある部分に影響を与えないこと等を考慮すればよい。
具体的には、例えば、液体吸引ラインを有する自動測定装置(プレシジョン・システム・サイエンス社製「SX−6G」等)に配設して用いる場合には、ラインとして用いられているチップ等の長さ、内径、壁厚、材質等により決定すればよい。1個の磁石のラインに接する面(磁極面)の長さは壁厚等に関係して決定され、互いに隣り合う磁石間に生じる磁力線が磁性粒子の移動ラインに適切に届くようなものを用いることが重要である。具体的には、例えば、0.75mmの壁厚のチップを用いた場合、1個の磁石の縦の長さ(磁石の積層方向において縦の長さ)が3mm以上であることが望ましい。反応チューブやマイクロタイタープレート等の静置して用いる容器の場合には、該チューブの長さ、内径、壁厚、材質等や、マイクロタイタープレートの大きさ、ウェルの大きさ等により決定すればよい。
以下に、プレシジョン・システム・サイエンス社製「SX−6G」等の小型自動測定装置に配設して用いる磁力体を例に挙げて、さらに具体的に本発明の磁力体の例、及び、該磁力体を作製するための磁石の選択方法の例を説明する。該装置には、液体を吸引・吐出する液体吸引ラインとして、2〜3mm程度の内径と0.5〜1mm程度の壁厚を有するディスポーザブルチップが配設されている。例えば、2.25mmの内径と0.75mmの壁厚を有するポリプロピレン製ディスポーザブルチップが好ましく用いられている。
このような液体吸引ラインに接触させて用いる磁性粒子捕集用磁力体の大きさとしては、例えば、縦(積層方向)は50mm以下、好ましくは20mm以下である。横(磁化方向)は20mm以下、好ましくは15mm以下である。幅は、10mm以下、好ましくは5mm以下である。大きさの下限は、前述のとおり、磁性粒子を補集するという目的が達せられるものであればよい。積層させる磁石の数としては、例えば、外寸が縦15mm×横14mm×幅4mmの磁力体を作製する場合、好ましくは2〜4個、特に好ましくは3個である。すなわち、一つの磁石の縦の長さが3.75〜7.5mm程度がよい。
このような本発明の磁力体を構成する各磁石の大きさの決定は、例えば、磁性粒子が吸着される部位である液体吸引ラインの内壁面における磁力を測定し、それが磁性粒子を吸着するのに十分な磁力を有していることを確認することにより、確実に行うことができる。また、実際に磁性粒子の回収率(捕集効率)を測定し、回収率が好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であることを確認する方法も好ましく用いられる。
液体吸引ラインの内壁面における磁力を測定する方法としては、例えば、ハンディ・ガウスメーター(MODEL4048:F.W.BELL社製)等の一般的な磁力測定装置を用いて、該磁力体が液体吸引ラインの内壁面に及ぼす磁力を実際に測定する方法等が挙げられる。具体的には、例えば、測定用プローブ(例えば、前記測定装置の場合、T−4048−001(F.W.BELL社製)等)を磁力体の磁極面近くにセットし、磁力を測定する。このとき、プローブは、実際にはチップに壁厚があることを考慮して磁極面から少し離してセットするのがよい。また、例えば、実際にチップの外壁面に磁力体を接触させ、その内壁面にプローブをセットして、チップ内壁面における磁力を測定してもよい。
先に詳述したとおり、本発明の磁力体の磁極面では、磁石と磁石の接触している部位(積層部)に強い磁力のピークがあり、各磁石の中心部では磁力は弱くなっている。すなわち、本発明の磁力体を作製する場合には、磁力体の端部分のみでなく、各積層部でも十分な磁力が得られることを指標にして作製することが好ましい。本発明の磁力体としては、各積層部における磁力が磁性粒子を捕集するのに十分な大きさであって、かつ、積層部が複数あるものが特に好ましい。ここで、積層部における十分な磁力とは、例えば、600ガウス以上、好ましくは800ガウス以上、より好ましくは1000ガウス以上である。
従って、本発明の磁力体の磁力の測定に際しては、好ましくは磁極面の複数箇所において測定を行い、複数箇所にわたって充分な磁力が得られることを確認することが好ましい。また、プローブは、磁極面に垂直にセットしても、平行にセットしてもよく、一定の手法で測定が行われ、測定値が比較できればよい。しかし、一般にプローブの測定部はある程度の面積を有するので、ある一点における磁力を測定することは困難であるが、プローブを磁極面に対して垂直にセットし、磁極面の複数の点における磁力を測定することにより、正確な検討が可能である。特に、積層部にあたる点の磁力を測定することが好ましく、積層部を含む複数の点において連続的な測定を行い、磁極面中に存在する磁力のピークの数及びその磁力を解析することがより好ましい。
また、磁性粒子の回収率を指標として判断する場合には、市販の磁性粒子溶液等を実際に本発明の磁力体を配設した自動測定装置に供し、目的の測定法と同様の方法で実験を行って、磁性粒子の回収率を求めればよい。磁性粒子としては、例えば、HTLV−1磁性粒子試薬ルミパルスHTLV−1(富士レビオ社製)、TP−N磁性粒子試薬ルミパルスII TP−N(富士レビオ社製)、磁性粒子RP−M1(ローヌプーラン社製)等が挙げられる。
複数の磁石を平行に接触して配置させ、本発明の磁力体として作製する方法としては、磁極が南北交互に隣接して配置されることから、その磁石同士の保持力を利用して接着させることもできるし、接着剤等を利用することもできる。また、前述のとおり、十分な磁力が得られるものであれば、磁石間に間隙を有していてもよい。
2.本発明の磁力体を用いる磁性粒子の捕集方法
本発明の磁性粒子の捕集方法は、液体中の磁性粒子を磁力により壁面に吸着保持した後に、磁力の影響を受けないようにすることによって該磁性粒子を離脱させることを含む方法であって、磁力が、上述の本発明の磁力体より発せられるものであることを特徴とする方法である。
この発明で用いられる該磁力体は、上述した本発明の磁力体である。上記磁力体は、磁石の積層部において強い磁力を発することができ、また、磁力線が磁力体の近傍に集積され、漂遊磁界が減少しているという特徴を有しており、該磁力体を構成する磁石の磁化方向に対して垂直な側面(磁極面)において磁力が増強されていることから、この磁極面を用いて磁性粒子の捕集を効果的に行うことができる。
ここで、壁面とは、反応チューブやマイクロタイタープレートのウェルのような反応容器、容器内から液体を吸引し吐出する分注機の液体吸引ラインの内壁面等を意味する。本発明においては、前記液体吸引ラインの内壁面であることが好ましく、該ラインとして用いられるチップやステンレスパイプ、フレキシブルチューブ等の外壁面に本発明の磁力体を接触させることにより、該磁力体を接触させた部位(以下、これを「磁力部位」と称することがある)の内壁面に磁性粒子を効果的に吸着保持させることができる。また、これを磁力部位から離脱させて磁性粒子が磁力の影響を受けないようにすることによって、磁性粒子を該内壁面から簡便に離脱させることができる。このような手法には、従来、磁性粒子を損失しやすいという問題点があったが、本発明の磁力体により高い回収率が達成され、この問題点は解決された。
磁性粒子が磁力の影響を受けないようにするには、例えば、磁性体が永久磁石である場合には、磁性体を壁面から遠ざけることによって、又、磁性体が電磁石である場合は、前記と同様の方法によって、もしくは電磁石への通電を止めることによって、達成される。
磁性粒子としては、該磁力体より発せられる磁力の影響を受けて捕集され得る性質を有するものであればいかなるものでも用い得る。径の大小を問わず、形状も球状に限定されるものではなく、目的の測定、分析、反応等に応じて適当な材質、コーティング、大きさ等のものを選択して用いればよい。
具体的には、例えば、免疫測定を行う場合には、四酸化三鉄(Fe)、三酸化二鉄(Fe)、種々のフェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属、コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金からなる微粒子等の磁性粒子が好ましく用いられる。さらに、これらの磁性粒子を、ポリスチレン等の高分子のラテックスや、ゼラチン、リポソーム等の内部に含まれる形で調製したり、表面に固定化したものも用いることができる。その形状は、球状であることが好ましい。また、その粒径は、本発明の磁力体を用いて精度良くB/F分離を行うことができればいかなる大きさでもよいが、粒径が小さすぎると分離の効率が悪く、大きすぎると沈殿しやすくなる。具体的には、例えば、粒径の下限は、0.05μm、好ましくは0.1μm、上限は10μm、好ましくは4μm、より好ましくは2μmが適当であり、粒径の範囲はこれら上限と下限の組み合わせから選ばれる。粒径の具体的範囲としては、通常、0.05〜10μm、好ましくは0.05〜4μm、より好ましくは0.1〜2μmである。
これらの磁性粒子に、それ自体公知の通常用いられる方法により抗原又は抗体を担持させて免疫測定法に用いることができる。抗原又は抗体を担持させる方法としては、例えば、物理吸着法、化学結合法等が挙げられる。吸着量、磁性粒子を懸濁して用いる溶液の種類、該溶液中の磁性粒子の濃度等は、用いる磁性粒子、抗原又は抗体、測定対象、試料等にあわせて適宜選択、調製すればよい。
上記したような磁性粒子、及び、任意の抗原又は抗体等が担持された磁性粒子は、磁性粒子又は試薬として多数市販されており、容易に入手可能である。
また、例えば、核酸の抽出・分析を行う場合に用いられる磁性粒子は、核酸を含む溶液と混合し、必要に応じて反応を行うことにより、その表面に核酸を付着させることのできるものであれば、いかなるものでもよい。
磁性粒子の捕集の部位及び方法は、それ自体公知の通常用いられる磁力体による磁性粒子の捕集方法に準じて行うことができるが、前述のとおり、本発明の磁力体を構成する磁石の磁化方向に垂直な側面(磁極面)が目的の測定、分析、反応等に供された反応容器等の外壁面に接触されるようにして用いることが好ましい。具体的には、例えば、反応チューブやマイクロタイタープレート等の静置して用いる容器において磁性粒子の捕集を行う場合には、反応チューブやマイクロタイタープレートのウェルの側面又は底面に本発明の磁力体を接触させて用いればよい。また、例えば、磁性粒子を用いた測定、分析、反応等を行う装置に配設された分注機の液体吸引ラインとして用いられるチップやステンレスパイプ、フレキシブルチューブ等において磁性粒子の捕集を行う場合には、該チップやステンレスパイプ、フレキシブルチューブの側面に本発明の磁力体を接触させて用いればよい。これらの中でも、本発明の方法は、液体吸引ラインが配設された自動測定装置において特に好適に用いられる。
このような本発明の方法は、磁性粒子を用いて行われる各種の測定、分析、反応等に適用することができる。測定対象となる被検物質としては、例えば、抗原、抗体、タンパク質、リガンド、酵素、基質、DNA、ベクターDNA、RNA、又はプラスミド等の、免疫学的物質、生物学的物質、分子学的物質等が挙げられる。それらの物質の定性・定量には、アイソトープ、酵素、化学発光、蛍光発光、電気化学発光等に用いられる各種の標識物質等が用いられ、測定法及びその装置等はそれ自体公知の通常用いられるものを用いることができる。
具体的には、例えば、免疫測定法、核酸の抽出・分析方法、タンパク質・リガンドの分析方法、コンビナトリアル・ケミストリー、各種検体の前処理等の化学反応等において好適に用いられる。例えば、免疫測定法においては、本発明の磁性粒子の捕集方法は、B/F分離の工程に適用される。また、例えば、核酸の抽出・分析方法においては、核酸の分離・精製の工程に適用される。例えば、核酸を抽出する試料が各種細胞の場合には、該細胞を公知の方法に従って溶解して細胞抽出液を調製し、この細胞抽出液と磁性粒子とを混合することにより、磁性粒子表面に核酸を付着させる。この核酸が付着した磁性粒子を本発明の磁性粒子の捕集方法を用いて捕集することにより、夾雑物が多く含まれる細胞抽出液から、簡便に核酸を分離・精製することができる。また、さらに、コンビナトリアル・ケミストリー等の化学反応の場合は、化学反応により合成された生成物の分離・精製の工程に適用される。
上記の各種方法の中でも、本発明の磁性粒子の捕集方法は、免疫測定法におけるB/F分離に適用されることが特に好ましい。
3.本発明の免疫測定法
本発明の免疫測定法は、B/F分離に上記磁性粒子捕集用磁力体を用いる点に特徴を有する方法である。
具体的には、例えば、(a)患者から得られた試料に、当該試料中に含まれる被検物質に特異的に結合する第1の物質を担持させた磁性粒子を添加して反応させる第1の反応工程、(b)第1の反応工程で形成された第1の反応生成物を反応系から分離する第1の分離工程、(c)分離された第1の反応生成物に、該反応生成物に特異的に結合する第2の物質を添加して反応させ、反応系中に第2の反応生成物を形成させる第2の反応工程、(d)第2の反応工程で形成された第2の反応生成物を反応系から分離する第2の分離工程、及び(e)分離された第2の反応生成物の量を測定する測定工程を含む方法等において、上記工程(b)及び(d)の分離工程における第1又は第2の反応生成物の反応系からの分離(B/F分離)が、本発明の磁力体を用いる磁性粒子の捕集方法により行われる。上記免疫測定法は、自動免疫測定装置を用いて行うこともできる。
ここで、第1及び第2の物質とは抗原又は抗体であり、反応生成物とは免疫複合体を意味する。試料としては、第1の物質と特異的に反応する被検物質を含むものであり、例えば、生体試料、環境試料、食品試料等が挙げられる。生体試料とは、例えばヒト等の生体から得られる試料であり、好ましくは患者から得られる試料である。患者から得られる試料とは、測定や分析を必要とする患者由来の試料であればいかなるものでも用い得るが、例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液等の体液や、種々の細胞、組織、又はそれらの抽出液等が挙げられる。また、環境試料としては、例えば、河川、海、湖等の水、土壌等が挙げられる。
また、反応生成物の量の測定は、それ自体公知の通常用いられる方法により行うことができるが、例えば、反応に用いる第1の物質又は第2の物質を標識物質で標識し、反応系から分離された反応生成物に含まれる標識物質の量に基づいて測定するのが好ましい。具体的には、例えば、酵素免疫測定法の場合には、二次抗体を標識化した酵素にその基質を反応させ、反応生成物の量を光学的手法等により測定すればよい。化学発光免疫測定法の場合には、発光反応系による発光量を測定する。蛍光抗体法の場合には蛍光物質に由来する蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には、放射性物質由来の放射線量を測定すればよい。ここで、標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、フルオレセインイソチアネート、希土類金属キレート等の蛍光物質、H、14C、125I等の放射性同位体、化学発光物質等が挙げられる。酵素、化学発光物質等の場合には、それ自体単独では測定可能なシグナルをもたらすことはできないことから、それぞれ対応する適当な基質等を選択して用いればよい。また、これらの反応には、さらにビオチン、アビジン等を利用してもよい。
例えば、酵素化学発光法(CLEIA)においては酵素が用いられる。このような酵素の例としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられる。これらの酵素の基質としては、それぞれに対応したものを用いればよく、例えば、アルカリホスファターゼに対しては、1,2−ジオキセタンから誘導された化学発光基質であるアダマンチルメトキシフェニルホスホリルジオキシセタン(AMPPD)、2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン}−4−イル)−1−フェニルリン酸二ナトリウム(商品名「CDP−STAR」:トロピックス社製)等を用い、ペルオキシダーゼに対してはルミノール/過酸化物を用い、ガラクトシダーゼに対してはアダマンチルメトキシフェニルβ−D−ガラクトシルジオキシセタン(AMPGD)を用いることができる。本発明の方法を適用した免疫測定法においては、この酵素化学発光法を利用した検出法が好ましく用いられ、標識物質としてアルカリフォスファターゼ、その基質として1,2−ジオキセタンから誘導された化学発光基質(例えば、トロピックス社製「CDP−STAR」)が特に好ましく用いられる。また、蛍光法も好ましく用いられる。
以下、本発明の磁力体を自動免疫測定装置に組み込み、磁性粒子を用いた免疫測定を行う場合を例に挙げて、さらに具体的に説明する。該装置として、磁性粒子を用いた免疫測定を行う装置であって、分注機の液体吸引ラインとしてチップが配設され、複数の反応容器が連結された自動測定用カートリッジ等を用いて簡便な測定を行うことのできる装置(特許第3115501号公報等)を例に挙げ、ステップに従って説明する。
(1)磁性粒子を用いた免疫測定を自動的に行うことのできる自動免疫測定装置に、磁性粒子捕集用磁力体として本発明の磁力体を組み込む。
(2)目的の被検物質が抗原である場合には抗体、抗体である場合には抗原を担持させた磁性粒子溶液を調製する。
(3)前記自動測定用カートリッジに、患者より得られた試料溶液、試料希釈液、磁性粒子溶液、B/F分離用の洗浄液、標識化抗体溶液、基質溶液等を充填し、装置にセットする。
(4)上記(1)で本発明の磁力体を組み込んだ装置を、通常の運転方法に従って運転し、測定を行う。まず、希釈液を用いて任意の希釈倍率に調整された試料溶液と磁性粒子溶液とを混合し、第一の抗原抗体反応を行わせる。
(5)次に、未反応の物質を除去するためにB/F分離を行う。まず、液体吸引ラインとしてセットされたチップを通じて反応液を吸引し、このとき、本発明の磁力体をチップ外壁面に接触させて磁性粒子を捕集する。好ましくは、磁力体を接触させた状態で何度か溶液の吸引・吐出を行い、磁性粒子を十分に磁力部位の内壁面に吸着保持させる。次に、磁性粒子がチップ内壁面に吸着保持された状態で溶液を吐出して分離を行った後、別の反応容器に充填されたB/F分離用の洗浄液を吸引・吐出して洗浄を行う。
(6)前記チップの外壁面から本発明の磁力体を離脱させて磁力の影響をなくした後に、標識化抗体溶液、例えば、アルカリフォスファターゼ(ALP)標識化二次抗体溶液を吸引・吐出し、上記(5)でチップ内壁面に吸着保持された磁性粒子を分散させ、かつ、被検物質に特異的に結合させることにより第二の抗原抗体反応を行わせて免疫複合体を生成させる。
(7)上記(5)と同様にして第二のB/F分離を行い、未反応の標識化抗体(ALP標識化二次抗体)を分離・洗浄する。
(8)上記(6)で生成した免疫複合体に含まれる標識化物質の量(標識化物質のシグナル)を測定する。標識化物質にALPを用いる場合は、ALPに、1,2−ジオキセタンから誘導された化学発光基質(例えば、トロピックス社製「CDP−STAR」)を作用させ、生じたシグナルを光電子増倍管により測定する。得られた測定値に基づいて、患者由来の試料に含まれていた被検物質の量を求めることができる。
4.本発明の磁力体を用いる装置
上記本発明の磁力体及び該磁力体を用いる磁性粒子の捕集方法は、該磁力体が、特定の磁力部位において同じ大きさの単一磁力体に比べて強い磁力を発する性質を有することから、装置に組み込んで用いるのに非常に有用である。中でも、用いる磁力体の大きさ(外寸)に限度があるもの、小型化が要求されるもの等、より小型で、かつ強力な磁力体を配設することが求められるような装置等において、特に好適に用いられる。
本発明の磁力体及び該磁力体を組み込んで用いる装置としては、磁性粒子を用いて前記した各種の測定、分析、反応等を行うための装置であればいかなるものであってもよい。これらの中でも、自動免疫測定装置に本発明の磁力体を組み込んだものが特に好ましい。自動免疫測定装置としては、全自動もしくは一部が自動化された免疫測定用の装置であって、それ自体公知の通常用いられるものを単独もしくは組み合わせて用いることができる。このような装置の中でも、本発明の磁力体は、容器内から液体を吸引し吐出する分注機の液体吸引ラインに配設されて用いられることが特に好ましい。
すなわち、本発明により、容器内から液体を吸引し吐出する液体吸引ラインを有する分注機と、この液体吸引ラインに配設された磁力体とを備え、該磁力体の磁力により液体吸引ラインに吸引された液体中の磁性粒子を該液体吸引ラインの内壁面に吸着保持した後に、該磁力体の磁力の影響を受けないようにすることによって磁性粒子を液体吸引ラインから離脱させて液体と共に液体吸引ライン外へ吐出するように制御される装置であって、前記磁力体は、複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置されているものであることを特徴とする装置が提供される。
また、前記装置において、容器内から液体を吸引し吐出する液体吸引ラインを有する分注機と、この液体吸引ラインに配設された磁力体とを備え、該磁力体の磁力により液体吸引ラインに吸引された液体中の磁性粒子を該液体吸引ラインの内壁面に吸着保持した後に、該磁力体の磁力の影響を受けないようにすることによって磁性粒子を液体吸引ラインから離脱させて液体と共に液体吸引ライン外へ吐出するように制御される装置であって、前記磁力体は、磁極面中に少なくとも1つ以上の磁力のピークを有し、該ピークの磁力が600ガウス以上であることを特徴とする装置が提供される。
前記液体吸引ラインが配設された装置とは、磁性粒子を含有する液体中からの磁性粒子の捕集を、液体が収容されている容器側で行なうのではなく、該液体を吸引・吐出する分注機の液体吸引ラインにおいて行なうものであって、該ラインとして用いられるチップ等の吸引・吐出系側に配設された磁力体の磁力を利用し、磁性粒子を短時間でほぼ完全に吸着保持させて、測定精度の飛躍的な向上を実現することができるという特徴を有している。また、液体吸引ラインとしてディスポーザブルのチップ等を用いた場合には、試薬間又は試料間のクロスコンタミネーションを完全に防止することができ、異なる反応工程や処理工程の各種の検査法に容易に対応することができるために多項目測定が可能になる。しかも、磁性粒子を用いる装置の単純化・簡易化・汎用化・低コスト化をも実現することができるという画期的な効果を有している。しかし、かかる装置においては、磁力体を作用させる部位が液体が収容された容器等ではなく液体吸引ラインであるために液体が流動的であり、狭い範囲で強力に磁性粒子を捕集することが必須である。本発明の磁力体を用いれば、かかる装置における磁力不足を解消して高い回収率を達成させることができ、測定の精度をさらに高めることができる。
前記磁力体は、液体吸引ラインの口径や吸着保持する磁性粒子の量、大きさ等に対応させて、該ラインに1以上配設することができる。配設態様としては種々の態様が考えられるが、例えば、液体吸引ラインの液体流れ方向に沿って配設したり、液体吸引ラインを挟んだ状態で対設したり、あるいは、放射状に対設させて配設することができる。
さらに、この発明において、上記磁力体は、上記液体吸引ラインの外側に配設することもできるし、液体吸引ラインに直接接触させて取り付けることもできる。磁力体を該ラインの外側に配設する場合には、該磁力体を永久磁石で構成し、該磁力体を前記ラインに近付けることにより、前記ライン内に吸引された液体中の磁性粒子を該ラインの内壁面に吸着保持させることができ、また、前記磁力体を該ラインから離脱させることで、前記磁性粒子を液体吸引ラインから離脱させて液体と共に該ライン外へ吐出させることができる。
液体吸引ラインとしてチップを用いる場合には、クロスコンタミネーションを防止するため、検体が所定の測定法に基づく処理工程に従って処理される工程において、同一試料に対してのみ繰り返して用いられるようにすることが望ましい。同一試料に用いられるチップの本数は、1本以上でもよく、各種測定の反応・処理工程に必要な数だけ用いればよい。また、液体吸引ラインを、チップが着脱されないノズル方式で形成した場合には、上記液体吸引ライン内の液体と接触した接液部の内外を液体の吸引・吐出作動によりクロスコンタミネーションが発生しない程度まで洗浄して、前記液体と磁性粒子の分離・撹拌・洗浄を行なうことも可能である。
すなわち、この装置における液体と磁性粒子の分離は、磁力体により磁性粒子を吸着保持させたまま液体のみを吐出することで行なわれ、次いで、磁力体によりチップ内壁面に磁性粒子を吸着保持したまま他の容器内に収容された液体中に上記チップを挿入し、該磁力体の磁力の影響を受けない状態にして前記液体の吸引・吐出動作を繰り返すことで実行される。また、撹拌及び洗浄は、液体吸引ラインにチップが装着されている場合には、前記磁力体によりチップ内壁面に磁性粒子を吸着保持したまま撹拌・洗浄位置まで該チップを移送した後、前記液体の吸引・吐出作動を繰り返すことで行われる。この場合の撹拌・洗浄は、チップ内壁面に磁性粒子を吸着保持したままで行なうこともできるし、磁力体による磁力の影響を受けない状態で液体の吸引・吐出を1回以上行なうことで実行することもできる。
上記装置には、反応容器として複数の収納部(ウェル)をもった形状で形成された自動測定用カートリッジ(WO01/84152号公報等)が好ましく用いられる。該カートリッジのウェルに、反応上必要な試料及び試薬等を予め分注してパッケイジングしておき、前記磁力体の磁力によって液体吸引ラインの内壁面に吸着保持された磁性体が、そのまま次のウェルへ移送されるように構成しておくことにより、迅速・簡便な測定が可能になり、コンタミネーションや誤差を生じる可能性を軽減することができる。この場合には、分注される各溶液についても、上記試薬等と同様に予めカートリッジのウェルに分注しておいてもよいし、装置内に別に設置されたボトル等から供給されてもよい。さらに、試料は、例えば、元の検体容器等から直接定量して分注することもできる。カートリッジのウェル数は、上記した試料、試薬、溶液等の数に応じて必要な数を決定して形成すればよく、列についても、単数でもよく、複数列にしてマイクロタイタープレート状に形成することもできる。このような形状に形成することにより、同時に多項目を測定したり、多検体を測定することが可能になる。
また、このような自動測定装置は、バーコードやICカード等の情報管理技術を組み合わせて用いることにより、測定や測定結果の管理、解析等をさらに迅速、簡便に行うことが可能になる。例えば、前記自動測定用カートリッジにバーコートを付し、該バーコードを自動的に認識する機能を搭載した装置では、試料を採取した患者のデータ、測定項目等を自動的に認識し、反応温度、測光条件等の測定条件を改めて入力・設定することなく測定を行わせることができる。得られた測定結果は、バーコードより読みとられたデータに基づいて効率的に分類・管理される。また、予め各測定項目ごとの検量線や判定のための基準値等を入力したICカードを併用すれば、分類・管理された測定結果を解析し、判定することもできる。
上記した本発明の装置は、単一磁力体に比べて小さく、かつ強力な磁力を有する磁力体を用いて構成されていることから、装置自体を小型化、軽量化することができ、免疫測定を安定的に高精度で行うことができる。このような小型の自動免疫測定装置は、例えば、緊急検査や医師・看護婦が手軽に行う検査として需要の高いポイント・オブ・ケアー・テスティング(POCT)の分野等において特に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1.本発明の磁力体の作製
市販の磁石(マグナ社製)を用いて、単一磁力体と、隣接する複数の磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して配置された本発明の磁力体とを用意した。
単一磁力体としては、縦15mm×横14mm×幅4mmの大きさの単一の磁石からなる「磁力体A」(図1のA)を用意した。
次に、縦7.5mm×横14mm×幅4mmの磁石2つを、隣接する磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に接触して組み合わせた「磁力体B」(図1のB:縦15mm×横14mm×幅4mm)と、縦5mm×横14mm×幅4mmの磁石3つを同様に組み合わせた「磁力体C」(図1のC:縦15mm×横14mm×幅4mm)を作製した。さらに、縦3mm×横14mm×幅4mmの磁石5つを同様に組み合わせた「磁力体D」(図1のD:縦15mm×横14mm×幅4mm)を作製した。磁石は、磁石同士の保持力により接着させるか、もしくは、接着剤により接着させた。
実施例2.本発明の磁力体を用いた磁性粒子回収率試験
上記実施例1で作製した磁力体を用いて、磁性粒子の回収率試験を行った。
(1)使用機器、試薬等
試験には、プレシジョン・システム・サイエンス社製核酸抽出装置SX−6Gを用いた。この装置は、磁性粒子を利用した核酸抽出を行うためのものであり、そのB/F分離の工程において使用する磁力体が組み込まれている。この磁力体を上記実施例1で作製した磁力体に交換し、磁性粒子の回収率試験を行った。装置に磁力体(1)及びチップ(2)がセットされた様子を、図2に示した。
装置にセットして用いる吸引・吐出を行うためのチップは、ポリプロピレン製のディスポーザブルチップ(2)で、磁性粒子(3)を捕集する部位(磁力部位)における内径が約2.25mm、壁厚が約0.75mmのものを用いた。測定用カートリッジとしては、8個の容器が連結された自動測定用カートリッジを用いた。
磁性粒子溶液としては、HTLV−1抗原が担持された磁性粒子(以下、これを「HTLV−1磁性粒子試薬」と称することがある:ルミパルスHTLV−1、富士レビオ社製)、TP−N抗原が担持された磁性粒子(以下、これを「TP−N磁性粒子試薬」と称することがある:ルミパルスII TP−N、富士レビオ社製)、抗原は何も担持されていない磁性粒子(RP−M1:ローヌプーラン社製)の3種類の市販の磁性粒子溶液を用いた。B/F分離用の洗浄液としては、市販のB/F洗浄液(ルミパルス洗浄液、LOT No.JJ2080、富士レビオ社製)を用いた。
磁性粒子の回収率は吸光度により判定することとし、溶液の吸光度測定は、分光光度計Multiskan MS(Labsystem社製)を用いて行った。
(2)測定方法
i)まず、自動測定用カートリッジ(図3)に下記のとおりに溶液を充填した。
第1容器:B/F洗浄液(100μl)
第2容器:磁性粒子溶液(150μl)
第3容器:B/F洗浄液(500μl)
第4容器:B/F洗浄液(500μl)
第5容器:B/F洗浄液(500μl)
第6容器:B/F洗浄液(500μl)
第7容器:B/F洗浄液(500μl)
第8容器:B/F洗浄液(200μl)
ii)上記i)で溶液が充填されたカートリッジをSX−6Gにセットし、下記の1〜27のステップに従って実験を行った。
(step1)容器1の溶液100μlを吸引して、容器2へ吐出する
(step2)容器2において液を吸引・吐出により攪拌し、混合する
(step3)容器2においてB/F分離を行う
(step4)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器3へ移動
(step5)容器3において磁力体をチップから外す
(step6)容器3において液を吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step7)容器3においてB/F分離を行う
(step8)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器4へ移動
(step9)容器4において磁力体をチップから外す
(step10)容器4において液を吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step11)容器4においてB/F分離を行う
(step12)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器5へ移動
(step13)容器5において磁力体をチップから外す
(step14)容器5において液を吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step15)容器5においてB/F分離を行う
(step16)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器6へ移動
(step17)容器6において磁力体をチップから外す
(step18)容器6において液を吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step19)容器6においてB/F分離を行う
(step20)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器7へ移動
(step21)容器7において磁力体をチップから外す
(step22)容器7において液を吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step23)容器7においてB/F分離を行う
(step24)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器8へ移動
(step25)容器8において磁力体をチップから外す
(step26)容器8において液を吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step27)容器8にて分散された溶液を分光光度計にて計測する
なお、上記ステップ中で、「磁力体をチップから外す」とは、チップに接触させていた磁力体を離脱させて磁力の影響をなくすことを意味し、これによりチップ内壁面に吸着保持されていた磁性粒子が容器内へ吐出される。
また、上記ステップ中で「B/F分離」とは、
ア)磁力体をチップにセットする(磁力体をチップに接触させる)
イ)B/F吸引1:磁力部位を通過するように液を吸引:流速A[μl/sec]
ウ)B/F吐出1:磁力部位を通過するように液を吐出:流速B[μl/sec]
エ)B/F吸引2:磁力部位を通過するように液を吸引:流速C[μl/sec]
オ)B/F吐出2:磁力部位を通過するように液を吐出:流速D[μl/sec]の5工程よりなる。すなわち、磁力体がチップに接触した状態(磁性粒子がチップ内壁面に吸着保持された状態)で、溶液を2回吸引・吐出した。吸引・吐出の流速及び所要時間は、B/F分離を行うトータルの時間(磁性粒子が吸着保持されている時間(捕集時間))によって下記のように設定して行った。
<捕集時間 80secの場合>
B/F吸引1:流速A=32μl/sec、所要時間=20sec
B/F吐出1:流速B=32μl/sec、所要時間=20sec
B/F吸引2:流速C=32μl/sec、所要時間=20sec
B/F吐出2:流速D=32μl/sec、所要時間=20sec
<捕集時間 160secの場合>
B/F吸引1:流速A=16μl/sec、所要時間=40sec
B/F吐出1:流速A=16μl/sec、所要時間=40sec
B/F吸引2:流速C=16μl/sec、所要時間=40sec
B/F吐出2:流速D=16μl/sec、所要時間=40sec
<捕集時間 240secの場合>
B/F吸引1:流速A:10.7μl/sec、所要時間=60sec
B/F吐出1:流速A=10.7μl/sec、所要時間=60sec
B/F吸引2:流速A=10.7μl/sec、所要時間=60sec
B/F吸引2:流速A=10.7μl/sec、所要時間=60sec
iii) HTLV−1磁性粒子試薬については、磁力体A及びBを用いて、上記B/F分離の時間、すなわち、磁性粒子が吸着保持されている時間(捕集時間)を、80秒、160秒、240秒の3通りにして実験を行った。TP−N磁性粒子試薬については、磁力体A、B及びCを用いて、捕集時間を80秒、160秒、240秒の3通りにして測定を行った。抗原が何も担持されていない磁性粒子(RP−M1:ローヌプーラン社製)については、磁力体A、B、及びDを用いて、捕集時間を80秒、160秒、240秒の3通りにして測定した。
吸光度測定は、測定波長490nmで行った。
(3)解析及び結果
上記(2)において得られた測定値を用いて、下記式に従って磁性粒子の回収率を求めた。
磁性粒子回収率(%)=((B−b)/(A−a))×(200/150)×100
上記式において、Aはあらかじめ測定前に求めておいた磁性粒子溶液の吸光度、aは測定前にあらかじめ求めておいた分散媒の吸光度、Bは測定の結果得られた磁性粒子溶液の吸光度、bは容器8において磁性粒子の分散媒となるB/F洗浄液の吸光度である。なお、aとしては、上記(2)に記載の2種類の磁性粒子溶液を別に分取して遠心分離した後、上清として分散媒のみを回収し、これを測定して得られた吸光度を用いた。また、(200/150)は、容量補正である。すなわち、最初に磁性粒子が含まれていた溶液の液量が150μl(容器2)であり、この溶液中から磁性粒子を磁力により回収し、最終的に200μlの溶液中に分散させ(容器8)、この溶液の吸光度を測定していることから、吸光度に液量比200/150をかけて液量補正を行い、回収率を求めた。
HTLV−1磁性粒子試薬を用いた測定の結果を表1に、そのグラフを図4に示した。TP−N磁性粒子試薬を用いた測定の結果を表2に、そのグラフを図5に示した。抗原が何も担持されていない磁性粒子(RP−M1:ローヌプーラン社製)を用いた測定の結果を表3に、そのグラフを図6に示した。
Figure 0004732755
Figure 0004732755
Figure 0004732755
HTLV−1磁性粒子及びTP−N磁性粒子を用いた実験の結果より、いずれの磁性粒子を用いても、単一の磁石よりなる磁性体Aに比べて、積層された磁力体B及びCは非常に効率よく磁性粒子を捕集できることが示された。また、捕集時間を長くするとより高い回収率が得られ、240秒では90%以上という高回収率を達成できることがわかった。
一方、抗原が何も担持されていない磁性粒子を用いた実験の結果、5個の磁石が積層された磁力体Dでは、磁性粒子の捕集効率が低下し、磁力体A及びBよりも低いことがわかった。
実施例3.本発明の磁力体を用いた免疫測定
上記実施例1で作製した磁力体を用いて、磁性粒子を用いる免疫測定を行い、その効果を解析した。
(1)使用機器、試薬等
装置、磁力体、チップ、及びカートリッジは、上記実施例2と同様のものを用いた。磁力体としては、上記実施例1で作製した磁力体A及びCを用いた。
磁性粒子としては、HBs抗体が担持された磁性粒子(以下、これを「HBs−Ag磁性粒子試薬」ということがある:ルミパルスII HBs−Ag、富士レビオ社製、Lot No.NC3022)を用いて、HBs抗原を含むサンプル(富士レビオ社製、Lot No.NW3011、濃度の異なる2サンプルを使用)を測定した。また、HIV抗原が担持された磁性粒子(以下、これを「HIV磁性粒子試薬」ということがある:ルミパルス オーソHIV−1/2、富士レビオ社製、Lot No.CD2104)を用いて、HIV抗体を含むサンプル(富士レビオ社製、Lot No.CD0085)を測定した。
(2)測定方法
i)自動測定用カートリッジ(図3)に、下記のとおり溶液を充填した。
第1容器:試料溶液(100μl)
第2容器:磁性粒子溶液(150μl)
第3容器:B/F洗浄液(500μl)
第4容器:B/F洗浄液(500μl)
第5容器:標識化二次抗体溶液(ALP)(250μl)
第6容器:B/F洗浄液(500μl)
第7容器:B/F洗浄液(500μl)
第8容器:発光基質溶液(200μl)
ii)上記i)で溶液を充填したカートリッジをSX−6Gにセットして、下記のステップ1〜27に従って測定を行った。測定は、各サンプルにつき3回ずつ行った。
(step1)容器1の試料溶液100μlを吸引して、容器2へ吐出する
(step2)容器2において液の吸引・吐出により攪拌し、試料溶液と磁性粒子溶液とを混合し、第一の抗原抗体反応を行わせる。
(step3)容器2においてB/F分離を行う
(step4)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器3へ移動
(step5)容器3において磁力体をチップから外す
(step6)容器3において液の吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step7)容器3においてB/F分離を行う
(step8)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器4へ移動
(step9)容器4において磁力体をチップから外す
(step10)容器4において液の吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step11)容器4においてB/F分離を行う
(step12)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器5へ移動
(step13)容器5において磁力体をチップから外す
(step14)容器5において標識化二次抗体溶液を吸引・吐出し、チップ内壁面に吸着保持された状態の磁性粒子を分散させ、被検物質に特異的に結合させ第二の抗原抗体反応を行わせて免疫複合体を生成させる。
(step15)容器5においてB/F分離を行う
(step16)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器6へ移動
(step17)容器6において磁力体をチップから外す
(step18)容器6において液の吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step19)容器6においてB/F分離を行う
(step20)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器7へ移動
(step21)容器7において磁力体をチップから外す
(step22)容器7において液の吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step23)容器7においてB/F分離を行う
(step24)チップ内に磁性粒子を捕集したまま容器8へ移動
(step25)容器8において磁力体をチップから外す
(step26)容器8において発光基質溶液の吸引・吐出により攪拌し、磁性粒子を分散させる
(step27)(step14)で生成した免疫複合体に含まれるALPにCDP−STAR(トロピックス社製)を作用させ、生じたシグナルを光電子増倍管により測定する
(3)解析及び結果
上記(2)で得られた3回分の測定値(発光カウント(cps))から、平均値(Avg)、標準偏差(SD)、変動係数(cv)を求めた。
HBs−Ag磁性粒子試薬を用いた測定の結果を表4に、HIV磁性粒子試薬を用いた測定の結果を表5に示した。
Figure 0004732755
Figure 0004732755
解析の結果、いずれの磁性粒子を用いた免疫測定においても、単一の磁石よりなる磁力体Aに比べて、本発明の磁力体Cを用いれば非常に安定的な測定を行うことができ、高い再現性を得られることが示された。
実施例4.本発明の磁力体の磁極面における磁力分布の解析
上記実施例1〜3において、複数の磁石が積層された本発明の磁力体の効果が確認された。そこで、上記実施例1において作製した磁力体A、B、C、Dの4つについて、さらに詳細に磁力の解析を行った。
各磁力体の磁力は、ハンディ・ガウスメーター(MODEL4048:F.W.BELL社製)及び測定用プローブ(T−4048−001型:F.W.BELL社製)を用いて測定した。まず、図7に示すとおり、プローブ(4)の測定部を測定対象とする磁力体(5)の磁極面に対して垂直に、磁極面から1mmの距離をあけてセットした。測定は、磁力体A、B、Cについては、磁極面の端部から端部まで、2.5mmずつ移動させながら各点における磁力を測定した。磁力体Dについては、磁極面の端部から端部まで、1.5mmずつ移動させながら各点における磁力を測定した。
測定結果を、表6及び図8に示した。
Figure 0004732755
測定の結果、図8に示すとおり、各磁力体の磁極面において連続的に測定した磁力をグラフで表すと、各磁力体ごとに固有の磁力のピーク及びピーク数が見られた。単一磁力体である磁力体Aでは、磁力体の端部のみで強い磁力が測定された。これに対して、2個の磁石が積層された磁力体Bでは、磁力体の端部の他に、磁力体の磁極面中に存在する1箇所の磁石積層部で磁力のピークが見られ、1000ガウス以上の強い磁力が測定された。また、3個の磁石が積層された磁力体Cでは、磁力体の端部の他に、磁力体の磁極面中に存在する2箇所の積層部で磁力のピークが見られ、1000ガウス以上の強い磁力が測定された。しかし、5個の磁石が積層された磁力体Dでは、磁力体の端部の他に、磁力体の中心に存在する4箇所の積層部で磁力のピークが見られたが、いずれのピークの磁力も600ガウス以下と小さく、ピーク形状が明瞭でなかった。
これらの結果から、本発明の磁力体が、磁力体の端部のみでなく各磁石の積層部で強い磁力を発する性質を有することが確認された。また、磁力体Dが、600ガウス以上の強い磁力のピークを有しておらず、ピーク形状が小さく不明瞭であったことから、縦15mm×横14mm×幅4mm程度の外寸の磁力体を作製するにあたっては、磁石が5個以上であると磁力が不十分になると考えられた。本発明の磁力体は、このよう測定結果を指標にして最適な構成を決定することができる。また、これらの結果は、上記実施例2及び3の結果とも一致している。すなわち、本発明の磁力体B及びCは、磁力体の端部のみでなく、その磁極面中にも1つ以上の磁力のピークを有し、かつ、その磁力は1000ガウス以上という大きいものであって、これらは単一磁力体である磁力体Aよりも効率的に磁性粒子を補集する能力を有していた。
一方、磁力体Dは、磁極面中に磁力のピークは有したいたものの、その磁力は600ガウス以下と十分でなく、この磁力体Dを用いると、磁性粒子の回収率は磁力体Aよりも低下していた。
以上、実施例1〜4の結果より、本発明の磁力体が有する二つの大きな特徴、すなわち、(1)磁力体の端部のみでなく、各磁石の積層部においても強い磁力を発することができること、(2)磁力線が磁極面近傍に集積していて、液体吸引ラインとして用いるチップ等に有効に磁力を及ぼすことができること、が確認され、このような磁力体が磁性粒子の捕集に特に好適であることが示された。
産業上の利用の可能性
本発明の磁力体、及び、本発明の磁性粒子の捕集方法を用いることにより、磁性粒子の捕集を極めて高精度で安定的に、かつ高速で行うことができる。これにより、複数回のB/F分離を必要とする免疫測定等においても高い精度で安定的に測定を行うことができる。また、磁力体を小型化できるために装置の小型化も可能になる。

Claims (7)

  1. 複数の磁石が、隣接するそれぞれの磁石の磁極が南北交互になるように磁化方向に対して平行に、一列に接触して間隙無く配置されていることを特徴とし、磁極面中に少なくとも1つの600ガウス以上の磁力のピークを有することを特徴とする磁性粒子捕集用磁力体。
  2. 液体中の磁性粒子を磁力により壁面に吸着保持した後に、磁力の影響を受けないようにすることによって該磁性粒子を離脱させることを含む磁性粒子の捕集方法であって、前記吸着保持が請求項1に記載の磁性粒子捕集用磁力体を用いて行われることを特徴とする方法。
  3. 壁面が、容器内から液体を吸引し吐出する分注機の液体吸引ラインの内壁面である請求項2に記載の方法。
  4. 磁性粒子が、免疫測定を行うためのものである請求項2又は3に記載の方法。
  5. (a)試料に、当該試料中に含まれる被検物質に特異的に結合する第1の物質を担持させた磁性粒子を添加して反応させる第1の反応工程、
    (b)第1の反応工程で形成された第1の反応生成物を反応系から分離する第1の分離工程、
    (c)分離された第1の反応生成物に、該反応生成物に特異的に結合する第2の物質を添加して反応させ、反応系中に第2の反応生成物を形成させる第2の反応工程、
    (d)第2の反応工程で形成された第2の反応生成物を反応系から分離する第2の分離工程、及び
    (e)分離された第2の反応生成物の量を測定する測定工程を含む試料中に存在する被検物質の免疫測定法であって、
    第1又は第2の反応生成物の反応系からの分離は、請求項1に記載の磁性粒子捕集用磁力体を用いて行われることを特徴とする方法。
  6. 第2の反応生成物の量の測定が、化学発光法又は蛍光法により行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 容器内から液体を吸引し吐出する液体吸引ラインを有する分注機と、この液体吸引ラインに配設された磁力体とを備え、該磁力体の磁力により液体吸引ラインに吸引された液体中の磁性粒子を該液体吸引ラインの内壁面に吸着保持した後に、該磁力体の磁力の影響を受けないようにすることによって磁性粒子を液体吸引ラインから離脱させて液体と共に液体吸引ライン外へ吐出するように制御される装置であって、前記磁力体は、請求項1に記載の磁性粒子捕集用磁力体であることを特徴とする装置。
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