JP4731717B2 - 自動車ドアの窓枠構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のドアに設けられてドアガラスの昇降を案内しかつドアガラスの外周部を保持する窓枠の構造に関し、より詳しくは窓枠の剛性を確保しつつ重量の低減を可能とする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5〜図7に示したように、自動車のドア1には、ドアガラス2の昇降を案内するとともに一杯に上昇したドアガラス2の周縁を堅固に保持するための窓枠3が設けられている。
【0003】
この窓枠3のうち上下方向に延びる部分3aは、図7に示すようにアウタパネル4およびインナパネル5から形成されるとともに、ドアガラス2の周縁2aを受け入れるための開口3bが設けられている。
開口3bには、ドアガラス2の外周部2aを摺動自在に封止するランチャンネル6が配設される。
そして、このランチャンネル6を保持するための断面形状略コ字形のロール成形部材7が、接着若しくはスポット溶接等によりアウタパネル4およびインナパネル5にそれぞれ固着されている。
【0004】
なお、図7中に参照符号8を付して2点鎖線で示す物は、図示されない車体側と窓枠3との間を液密に封止するためのウェザストリップである。
さらに、図6中に参照符号9を付して点線で示す物は、ドア1の窓肩部分および窓枠3の下端部に設けられて窓枠3の強度および剛性を高めるための補強部材である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の自動車ドアの窓枠構造においては、図6中に点線で示したように、断面形状略コ字形のロール成形部材7がドア1の窓肩から窓枠3の上端部3cまで連続して延びている。
これにより、窓枠3の上端部3cのように高い強度および剛性をあまり必要としない部分までロール成形部材7によって補強されるため、重量をさらに減少させる余地があった。
【0006】
また、ロール成形部材7の断面形状が単純なコ字形であるため、それ自身の強度および剛性が充分とは言えず、さらには補強部材9と組み合わせる際に断面係数の高い断面形状を構成できないため、窓枠3の内部の空間を有効に活用して窓枠3の強度および剛性を充分に高めることができなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、重量を軽減しつつ強度剛性をより一層高めることができる自動車ドアの窓枠構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する請求項1に記載の手段は、
自動車ドアの窓枠のうち上下方向に延びてドアガラスの昇降を案内する部分の構造であって、
前記ドアガラスの周縁を受け入れる開口を有した窓枠本体と、
前記窓枠本体の上下方向の中間部より下方において前記開口に沿って前記窓枠本体の内側に固着された上下方向に延びる第1の補強部材と、
前記第1の補強部材の上下方向の中間部より下方において前記窓枠本体と前記第1の補強部材との間の隙間内に固着された第2の補強部材と、を備え、
前記第1の補強部材は、水平断面で見たときに、
前記ドアガラスの周縁に向かって前後方向に開口するとともに所定の間隔をあけて前後方向に延びる左右一対の横壁と前記左右一対の横壁の後側の端部同士を接続して左右方向に延びる底壁とで構成され、その室外側の横壁が前記ドアガラスよりも室外側において前記窓枠本体の前記開口の近傍に固着される断面形状略コ字形の第1の部分と、
前記ドアガラスの室内側の表面に向かって室外側に開口するとともに所定の間隔をあけて左右方向に延びる前後一対の縦壁と前記一対の縦壁の室内側の端部同士を接続して前後方向に延びる底壁とで構成され、その前側の縦壁が前記ドアガラスよりも室内側において前記窓枠本体の前記開口の近傍に固着され、その後側の縦壁が前記第1の部分の室内側の横壁に接続される断面形状略コ字形の第2の部分と、を有し、
前記第2の補強部材は、
前側の端部が前記第2の部分を形成する前記底壁に固着されるとともに、後側の端部が前記第1の部分より後方において前記窓枠本体に固着される。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の自動車ドアの窓枠構造においては、上下方向に延びてドアガラスの昇降を案内する部分の上端部は窓枠本体のみによって形成され、上下方向の中間部は窓枠本体および第1の補強部材によって形成され、かつ上下方向の下端部は窓枠本体と第1および第2の補強部材によって形成されるから、各部分において必要な強度剛性を確保しつつ無駄な部分を省いて重量および製造コストを低減することができる。
このとき、第1の補強部材は、断面形状コ字形の第1および第2の部分を有するから、大きな断面係数を確保して強度および剛性を十分に高めることができる。
さらに、第2の補強部材は、第1の補強部材を形成する第2の部分の底壁にその一方の端部が固着されるから、第2の補強部材の一方の端部を第1の補強部材を介して窓枠本体に堅固に接続することができる。
これにより、窓枠本体と第1および第2の補強部材とにより堅固な閉断面構造を形成できるから、最も高い強度および剛性が求められる窓枠の下端部においても、各補強部材の板厚を増すことなしに十分に高い強度および剛性を確保することができる。
さらに、第1の補強部材に断面形状コ字形の第2の部分を設けるので、窓枠本体と第1および第2の補強部材をそれぞれスポット溶接する際に、スポット溶接機の先端を第2の部分内に入り込ませることができ、スポット溶接作業を容易にかつ確実に行うことができる。
【0010】
また、上記の課題を解決する請求項2に記載の手段は、請求項1に記載の自動車ドアの窓枠構造において、前記ドアガラスの周縁と前記窓枠との間の隙間を封止する封止部材を、前記窓枠本体の前記開口および前記第1の補強部材の前記第1の部分に係止することを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に記載の自動車ドアの窓枠構造においては、窓枠本体の開口および第1の補強部材の第1の部分に封止部材を係止するから、第1の補強部材が存在しない窓枠の上端部においても封止部材を確実に保持することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る自動車ドアの窓枠構造の一実施形態を、図1乃至図4を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、自動車の前後進方向を前後方向と、かつ自動車の車体幅方向を左右方向と、鉛直方向を上下方向と言う。
【0013】
図1に示した自動車のドア10は運転席側のドアであり、ドアガラス2の昇降を案内するとともに一杯に上昇したドアガラス2の周縁を堅固に保持するための窓枠11が設けられている。
【0014】
この窓枠11のうち上下方向に延びてドアガラス2の昇降を案内する部分11aの上部は、図2に示したように、アウタパネル12およびインナパネル13によって形成された窓枠本体14のみから構成されている。
【0015】
アウタパネル12は、ドアガラス2よりも室外側(図示上側)においてドアガラス2と平行に延びるとともに、その前端12aは折り返されて鋭角部分を形成しないように処理され、かつその後端12bはインナパネル13をクリンチングしている。
【0016】
インナパネル13は、その前壁13aがドアガラス2の室内側表面2bに対して所定寸法だけ室内側(図示下側)に離間しつつ室内側に向かって略垂直に延びており、ドアガラス2の周縁2aを受け入れる開口14aをアウタパネル12と共に形成している。なお、この開口14aには、ドアガラス2の周縁2aと窓枠11との間の隙間を液密に封止するためのウェザストリップ(封止部材)15が装着される。
また、前壁13aの室内側の端部からは横壁13bがドアガラス2と平行に延びるように延設されている。
さらに、横壁13bの後端からは縦壁13cがアウタパネル13に対して略垂直に室外側に延びるように延設されている。
さらに、縦壁13cの室外側の端部からはアウタパネル12と平行に延びる横壁13dが後側(図示右側)に延設され、図示されない車体側と窓枠11との間の隙間を液密に封止するウェザストリップ8の取付部を形成している。
加えて、インナパネル13の後端13eはインナパネルの後端12bによってクリンチングされ、インナパネル13と一対に固着されている。
【0017】
一方、図1に示したように、窓枠本体14の上下方向の中間部より下方には、第1の補強部材20が開口14aに沿って上下方向に延びるように窓枠本体14の内側に固着されている。
【0018】
この第1の補強部材20は、図3に示したように、ドアガラス2の周縁2aに向かって開口する断面形状コ字形の第1の部分21と、ドアガラス2の室内側の表面2bに向かって開口する断面形状コ字形の第2の部分22とを有している。
【0019】
第1の部分21は、アウタパネル12の内側表面にスポット溶接若しくは接着等により固着される横壁23と、この横壁23に対して所定の間隔をあけて室内側に平行に延びる横壁24と、一対の横壁23,24の後端同士を接続してアウタパネル12に対し略垂直に延びる縦壁25とから構成されている。
さらに、この断面形状コ字形の第1の部分21は、ウェザストリップ15の後端を外嵌してこれを保持するようになっている。
【0020】
第2の部分22は、インナパネル13の前壁13aにスポット溶接若しくは接着等により固着される縦壁26と、この縦壁26に対して所定の間隔をあけて後側に平行に延びる縦壁27と、一対の縦壁26,27の室内側の端部同士を接続してインナパネル13に対し平行に延びる底壁28とから構成されている。
【0021】
すなわち、第1の補強部材20は、断面形状コ字形の第1および第2の部分21,22を有することにより大きな断面係数を確保しているから、その強度および剛性が十分に高くなっている。
したがって、この第1の補強部材20は、窓枠本体14の強度および剛性を充分に高めつつ、窓枠本体14の開口14aの口開きを確実に防止することができる。
【0022】
他方、図1に示したように、第1の補強部材20の上下方向の中間部より下方には、ドア10の窓肩部分と窓枠11aとの接続部分を堅固に補強するための第2の補強部材30が設けられている。
【0023】
この第2の補強部材30は、第1の補強部材20と上下方向に重なる部分においては、図4に示したように、窓枠本体14の内側において第1の補強部材20とインナパネル13との間の隙間に配設されている。
そして、その前側の横壁31は、第1の補強部材20の第2の部分22を形成する底壁28にスポット溶接若しくは接着等により固着されている。
また、その縦壁32は、第1の補強部材20とインナパネル13との間の隙間を通ってアウタパネル12側に延びている。
さらに、その後側の横壁33は、インナパネル13の横壁13dにスポット溶接若しくは接着等により固着されている。
【0024】
このとき、第1の補強部材20における第2の部分22の底壁28に隣接する縦壁26がインナパネル13に固着されているから、第2の補強部材30の前側の端部を、第1の補強部材20を介してインナパネル13に堅固に接続することができる。
これにより、窓枠本体14と第1および第2の補強部材20,30とにより堅固な閉断面構造を形成できるから、最も高い強度および剛性が求められる窓枠11aの下端部においても、各補強部材の板厚を増すことなしに十分に高い強度および剛性を確保することができる。
【0025】
さらに、第1の補強部材20に断面形状コ字形の第2の部分22を設けているので、スポット溶接機の先端をこの第2の部分22の内側に入り込ませることにより、第1の補強部材20と第2の補強部材30とをスポット溶接する作業、および第1の補強部材20とインナパネル13とをスポット溶接する作業を容易にかつ確実に行うことができる。
【0026】
すなわち、本実施形態の自動車ドアの窓枠構造によれば、窓枠11のうち上下方向に延びてドアガラス2の昇降を案内する部分11aの上端部は窓枠本体14のみによって形成され、上下方向の中間部は窓枠本体14および第1の補強部材20によって形成されされ、かつ上下方向の下端部は窓枠本体14と第1および第2の補強部材20,30によって形成されるから、各部分において必要な強度剛性を確保しつつ無駄な部分を省いて窓枠11の重量を低減することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の自動車ドアの窓枠構造においては、ウェザストリップ15を、窓枠本体14の開口14aと、第1の補強部材20の断面形状コ字形の第1の部分21とによって保持するから、第1の補強部材20が存在しない窓枠11aの上端部においてもウェザストリップ15を確実に保持することができる。
【0028】
以上、本発明に係る自動車ドアの窓枠構造の一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、自動車の運転席側のドアの窓枠を例にとって説明したが、後席側のドアの窓枠に本発明を適用できることは言うまでもない。
また、ウェザストリップ15の底壁15aの形状および肉厚を適宜設定することにより、第1の補強部材20が存在しない窓枠11aの上端部において、ウェザストリップ15をより一層確実に保持することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の自動車ドアの窓枠構造においては、ドアガラスの周縁を保持するための窓枠のうち、上下方向に延びてドアガラスの昇降を案内する部分の上端部を窓枠本体のみによって形成し、上下方向の中間部は窓枠本体および第1の補強部材によって形成し、かつ上下方向の下端部は窓枠本体と第1および第2の補強部材によって形成するから、各部分において必要な強度剛性を確保しつつ無駄な部分を省いて窓枠の重量および製造コストを低減することができる。
また、第1の補強部材は、断面形状コ字形の第1および第2の部分を有するから、大きな断面係数を確保して、強度および剛性を十分に高めることができる。
さらに、第2の補強部材は、第1の補強部材を形成する第2の部分の底壁にその一方の端部を固着するから、第2の補強部材の一方の端部を第1の補強部材を介して窓枠本体に堅固に接続することができる。
これにより、窓枠本体と第1および第2の補強部材とにより堅固な閉断面構造を形成できるから、最も高い強度および剛性が求められる窓枠の下端部においても、各補強部材の板厚を増すことなしに十分に高い強度および剛性を確保することができる。
さらに、第1の補強部材に断面形状コ字形の第2の部分を設けるので、窓枠本体と第1および第2の補強部材をそれぞれスポット溶接する際にスポット溶接機の先端を第2の部分内に入り込ませることにより、スポット溶接作業を容易にかつ確実に行うことができる。
加えて、ドアガラスの周縁と窓枠との間の隙間を封止する封止部材を、窓枠本体の開口および第1の補強部材の第1の部分に係止するから、第1の補強部材が存在しない窓枠の上端部においても封止部材を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動車ドアの窓枠構造の一実施形態を模式的に示す側面図。
【図2】図1中に示したII−II破断線に沿った断面図。
【図3】図1中に示したIII−III破断線に沿った断面図。
【図4】図1中に示したIV−IV破断線に沿った断面図。
【図5】自動車のドアを模式的に示す側面図。
【図6】従来の自動車ドアの窓枠構造を模式的に示す側面図。
【図7】図6中に示したVII−VII破断線に沿った断面図。
【符号の説明】
1 自動車ドア
2 ドアガラス
3 窓枠
4 アウタパネル
5 インナパネル
6 ウェザストリップ
7 ロール成形部材
8 ウェザストリップ
9 補強部材
10 自動車ドア
11 窓枠
11a 上下方向に延びる部分
12 アウタパネル
13 インナパネル
14 窓枠本体
14a 開口
15 ウェザストリップ
20 第1の補強部材
21 第1の部分
22 第2の部分
30 第2の補強部材
Claims (2)
- 自動車ドアの窓枠のうち上下方向に延びてドアガラスの昇降を案内する部分の構造であって、
前記ドアガラスの周縁を受け入れる開口を有した窓枠本体と、
前記窓枠本体の上下方向の中間部より下方において前記開口に沿って前記窓枠本体の内側に固着された上下方向に延びる第1の補強部材と、
前記第1の補強部材の上下方向の中間部より下方において前記窓枠本体と前記第1の補強部材との間の隙間内に固着された第2の補強部材と、を備え、
前記第1の補強部材は、水平断面で見たときに、
前記ドアガラスの周縁に向かって前後方向に開口するとともに所定の間隔をあけて前後方向に延びる左右一対の横壁と前記左右一対の横壁の後側の端部同士を接続して左右方向に延びる底壁とで構成され、その室外側の横壁が前記ドアガラスよりも室外側において前記窓枠本体の前記開口の近傍に固着される断面形状略コ字形の第1の部分と、
前記ドアガラスの室内側の表面に向かって室外側に開口するとともに所定の間隔をあけて左右方向に延びる前後一対の縦壁と前記一対の縦壁の室内側の端部同士を接続して前後方向に延びる底壁とで構成され、その前側の縦壁が前記ドアガラスよりも室内側において前記窓枠本体の前記開口の近傍に固着され、その後側の縦壁が前記第1の部分の室内側の横壁に接続される断面形状略コ字形の第2の部分と、を有し、
前記第2の補強部材は、
前側の端部が前記第2の部分を形成する前記底壁に固着されるとともに、後側の端部が前記第1の部分より後方において前記窓枠本体に固着されることを特徴とする自動車ドアの窓枠構造。 - 前記ドアガラスの周縁と前記窓枠との間の隙間を封止する封止部材は、前記窓枠本体の前記開口および前記第1の補強部材の前記第1の部分に係止されることを特徴とする請求項1に記載の自動車ドアの窓枠構造。
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