JP4730806B2 - ガラス光学素子の成形装置及び成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、プリズム、ミラーその他の光学素子の成形方法と、その方法の実施に使用する成形装置とに関する。特に、本発明は、プレス成形後に研削・研磨が不要なガラスレンズ等のガラス光学素子の成形装置及び成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学素子の製造において、素材をプレス成形するものとしては、例えば特開昭61-205630号公報に開示されているように、上型とおよび下型からなる金型間に、所定温度に加熱したガラス素材を充填し、これら一対の型によりガラス素材を押圧成形する装置が知られている。前記公報に記載のとおり、上又は下型と胴型の当接によって光学素子の肉厚を規制する方式、ストッパ等によって上下型が所定距離離れたときに停止して、肉厚を規制する方式が知られている。しかしながら、これらでは、型内のガラスの冷却固化の過程でヒケ等が生じる問題があった。そのため、該公報では、冷却固化の過程でガラスの収縮に連動して金型を加圧することが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発明者らは、この種の成形装置にあってはプレス成形を連続的に行う過程で、型まわりの部材が熱膨張による位置変化することに配慮していない為、たとえガラスの収縮に連動して加圧をしても、所定精度の光学素子が得られない場合がある事に着目した。一方、特開平9-188531号公報には、部材の不均一な温度分布による光軸ズレを防止する開示があるが、高度の面精度及び肉厚精度を有する光学素子を製造することに関して改善の余地があった。
【0004】
また、上記の問題はプレス後において研磨を要しない程度に高精度に素材を成形しようとする場合に重要である。すなわち、そのような場合、所定の面精度等を得る為に、プレスにあたって光学素子の肉厚を決定した後においても押圧力をきめ細かに制御する課題があり、型まわりの部材が熱膨張による位置変化をする場合には、そのような緻密な制御を正確に行えなくなる。ここで、肉厚決定とは、成形型によりガラス素材が所定の肉厚になるまで押圧することであり、このときの肉厚は、成形された光学素子の最終肉厚とは必ずしも同一ではない。ガラスが冷却された後に、最終肉厚になることを予め算定し、所定の肉厚を定める。
【0005】
特に、凹メニスカスレンズや両凹レンズなどの光学素子は高い面精度が得にくい為、荷重制御(押圧力及びその時間変化)、及び押型の位置制御を正確に行うことが重要な課題となっている。
【0006】
なお、金型まわりの部材の熱膨張及びその経時変化を予め考慮に入れて押圧力及び型位置を制御することも考えられたが、制御系が複雑化する懸念が生じた。
【0007】
本発明の目的は、所望の光学素子をプレス成形するにあたり、面精度を左右する、型の荷重制御及び位置制御を所望の設計で行う技術を提供することにある。また本発明の目的は、プレス後に研磨を要しない程度に高精度に光学素子を成形するにあたり、該光学素子を一層高精度に実現する技術を提供することにある。さらに本発明の目的は、光学素子を高精度に成形する成形装置を簡素な構成で実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様は、
相対向する一対の成形型と、
前記一対の成形型の一方を、他方の成形型に向かって進退させる駆動手段と、
前記他方の成形型を固定する基部と、
前記成形型を加熱する加熱手段とを、有する光学素子の成形装置であって、
前記光学素子の光軸方向に、前記基部に固定された成形型が、前記加熱手段の熱によって位置変化することを実質的に抑止する位置変化抑止手段を有することを特徴とする成形装置である。
【0009】
第1の態様によれば、一対の成形型の一方が熱に起因して光学素子の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止することにより、型位置や押圧力等の緻密な制御を設計値通りに正確に行えるようになる。これにより、光学素子の肉厚精度のみならず面精度等の向上が図られると共に、連続生産における品質のバラツキを防止できる。また、そのような型位置、押圧力等の制御を比較的簡素な装置によって実現できる。
【0010】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載の成形装置であって、
前記位置変化抑止手段が、温度調節手段を有することを特徴とする成形装置である。
【0011】
第2の態様によれば、温度調節により上記正確な制御が図られる。
【0012】
本発明の第3の態様は、
第1又は第2の態様に記載の成形装置であって、
前記温度調節手段が、前記基部の温度を検出する温度検出手段と、温度調節用の流体を循環させる循環機構と、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記流体の流量を制御する流量制御手段とを備えることを特徴とする成形装置である。
【0013】
本発明の第4の態様は、
第2又は第3の態様に記載の成形装置であって、
前記成形装置は、前記一対の成形型と前記加熱手段とを収容する成形室を有し、
前記温度調節手段が、前記成形室の内壁側に配置されていることを特徴とする成形装置である。
【0014】
本発明の第5の態様は、
第1乃至第4の態様のいずれかに記載の成形装置であって、
前記位置変化抑止手段は、前記他方の成形型が支持された前記成形装置の周辺部材が、前記加熱手段の熱によって傾斜することを実質的に抑止するものであることを特徴とする成形装置である。
【0015】
本発明の第6の態様は、
第1乃至第5の態様のいずれかに記載の成形装置であって、
前記加熱手段が、前記一対の成形型を誘導加熱により加熱する加熱手段を備え、
前期温度調節手段が、当該加熱手段が発生する磁場を遮蔽する非磁性部材を含んで構成されていることを特徴とする成形装置である。
【0016】
第6の態様によれば、非磁性部材が、加熱手段が発生する磁場を遮蔽するから、仮に基部がステンレスのように誘導加熱による影響を受ける素材からなる場合であっても、当該基部の温度上昇を防止できる。非磁性部材としては、銅からなる部材が挙げられる。
【0017】
本発明の第7の態様は、
相対向する一対の成形型間に被成形ガラス素材を配置し、この被成形ガラス素材が加熱により軟化した状態で、前記一対の成形型によって押圧してガラス光学素子に成形する押圧成形工程を含むガラス光学素子の成形方法であって、
前記一対の成形型の一方が、熱に起因して前記光学素子の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止する位置変化抑止工程を含むことを特徴とする成形方法である。
【0018】
本発明の第8の態様は、
第7の態様に記載の成形方法であって、
前記一対の成形型が、基部に固定された受型と、前記光学素子の光軸方向に可動する押型とからなり、
前記位置変化抑止工程には、前記基部の少なくとも一部の温度を調節することにより、前記受型の少なくとも前記光軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度調節工程が含まれることを特徴とする成形方法である。
【0019】
本発明の第9の態様は、
第8の態様に記載の成形方法であって、
前記温度調節工程では、前記基部の複数の部位における温度を検知すると共に、その検知結果に基づいて当該各部位の温度調節を独立に行うことを特徴とする成形方法である。
【0020】
本発明を適用して成形される光学素子の種類としては、レンズ形状の両凸、メニスカスなどがあるが、面精度を出すことが難しい凹メニスカスレンズ又は両凹レンズの成形などには、本発明は好適に用いられる。球面、非球面いずれでも良い。径は25mm程度のものが成形できた。
【0021】
本発明の第10の態様は、
第8または第9の態様に記載の成形方法であって、
押圧によりガラス素材を所定の肉厚とした後、荷重制御又は押型の位置制御を行うことを特徴とする成形方法である。
【0022】
本発明は、相対向する一対の成形型間に加熱軟化した被成形ガラス素材を配置し、この被成形ガラス素材を前記一対の成形型で押圧してガラス光学素子に成形する成形装置において、前記一対の成形型の一方が、熱に起因して前記光学素子の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止する位置変化抑止手段を備えることが好ましい。
【0023】
また本発明では、前記一対の成形型が基部に固定された受型と、前記光学素子の光軸方向に可動する押型とからなり、前記位置変化抑止手段が、前記基部の少なくとも一部の温度を調節することにより前記受型の少なくとも前記光軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度調節手段を備えることが好ましい。
【0024】
上記の構成により、温度調節により上記正確な制御が図られる。また、一方の成形型のみが可動するから、双方の成形型が可動する装置と比較して構成を簡素にできる。
【0025】
本発明の具体的な態様では、前記温度調整手段が基部の少なくとも一部の温度が実質的に一定となるように調節することで、プレス成形工程を繰り返す過程で、基部が熱膨張又は熱収縮してしまうことを防止する。ここで実質的に一定とは、成形しようとする光学素子に要求される精度によって適宜決定されるが、通常は基部の温度変化がプレス成形開始時に対して、±5℃以内、好ましくは±2℃以内となるような範囲を指す。なお、前記温度調節手段は、加温手段、冷却手段、又は冷却及び加温の両機能を有していてもよい。要は、プレス成形工程を連続して行なうにあたり、固定部材の温度が終始所定範囲内におさまるように温度調節することが肝要である。
【0026】
本発明の温度調節手段は、冷却手段であることが好ましい。プレス成形を繰りかえすうちに、成形型周辺の温度が上昇し、これに伴って基部(例えば成形室壁面)の寸法が僅かに変化する。すると、基部に固定された受型の位置精度が狂う。そこで、温度調節手段によって、基部の少なくとも一部を冷却することにより成形型周辺の温度上昇を防止する。
【0027】
また、基部の少なくとも一部とは、本発明の目的を逸脱しない範囲で当該基部の任意の部位を指す。基部における受型の位置に最も影響しやすい部位の温度調節を行なうことが好ましいのは言うまでも無い。なお、基部(例えば成形室の壁面)の温度は、室温±10℃の範囲に保つとよい。
【0028】
通常、成形装置は、成形型を収容する成形室を有するため、好ましくは成形室が基部として機能する。この場合、装置をシンプルにする観点からは、成形室に成形型の一方を固定するのが好ましい。固定の態様は、直接でも間接的な固定でも良い。例えば、後述のように、成形室の天面に上型を直接又は間接に取付ける態様が好ましい。
【0029】
本発明の好ましい態様として、前記押型が前記受型に向かって予め定めた所定ストローク量繰り出すように構成されていることがある。当該構成によれば、押型が受型に向かって予め定めた所定ストローク量繰り出すので、熱変形その他の外乱を繰り出し量にフィードバックさせる場合などに比べて制御系を簡素にできる。
【0030】
本発明の具体的な態様による成形装置は、前記押型を前記受型に向かって進退させる駆動手段を備える。この場合において、該駆動手段が押型を予め定めた所定ストローク量繰り出すようにするのが好ましい。この繰り出し量は、連続的なプレス成形に先だって、予め定めておくことができる。さらには、駆動手段が押型を駆動する具体的方法(例えば、押圧成形工程中の押圧力の増減や、押型位置の変位の仕方など)を、時間や温度の関数として予めプログラミングして、制御装置(図示せず)に入力しておくことができる。
【0031】
本発明の駆動手段としては、サーボモータが好ましく、トルク制御と位置制御ができる手段を伴うことが更に好ましい。すなわち、押圧成形を通じ、所望のトルクでサーボモータを制御できることが好適である。これにより、光学素子の肉厚を含む最終形状が決定する過程で押圧力等の緻密な制御を実現できる。
【0032】
更に、本発明において、前記基部が、少なくとも前記受型及び押型を収容する成形室を構成していることが好ましい。
【0033】
ここで、前記成形室の素材は特に限定されないが、熱膨張係数が過大でないこと(熱膨張係数α=20×10-6程度以下)、加工性に富んでいること、及び材料自身の放出ガス量が少ないこと(真空容器壁に適していること)を満たす素材が望ましい。好ましくは、成形室の素材としてステンレス鋼を用いる。
【0034】
前記成形室は、好ましくは天面と壁面を有して多面体に構成する。プレス成形を非酸化性雰囲気で行なう場合には、この成形室が外部と成形型等を遮断する密閉部材として機能する。
【0035】
例えば、直方体形状の成形室であれば、各壁面が異なった温度に加温されてしまう場合がある。これは、熱源からの距離が各壁面で異なる場合に深刻化する。そこで、各々の壁面にその壁面の温度を検出する温度検出手段を設け、当該各温度検出手段の検出結果に基づいて各壁の冷却を行なうことにより、当該各壁間の温度差を低減させるのが好ましい。
【0036】
本発明の具体的な態様は、上記の成形装置において、前記受型及び押型は、それぞれ上下一対に配置された上型及び下型として構成されてあり、前記成形室は、前記上型が固定される天面と、前記上型及び下型を前記光軸まわりに取り囲むように配置された側面とを有してなる。このとき、光軸方向が上下方向となり、基部の温度変化による肉厚変化が生じやすいが本発明により効果的に防止できる。
【0037】
ここで、前記各面に少なくとも1つの温度検出手段を設け、その検出結果を元に、各面の温度制御を独立に行なうのが好ましい。そうすると、光学素子のTilt(傾き)をより確実に防止できる。なお、天面にも温度検知手段を設けても良い。
【0038】
本発明の具体的な態様では、前記温度調節手段が前記基部の少なくとも一部を冷却する。より具体的には、前記温度調節手段が前記基部の少なくとも一部を水冷により冷却する。
【0039】
本発明の具体的な態様による成形装置は、前記基部に沿って温度調節用の流体を循環させる循環機構を備えることを特徴とする。ここで、前記循環機構の素材は、第1に熱伝導率が0.50以上であること、第2に耐熱性として材料融点で600℃程度以上を有すること、第3に加工性に富んでいること、などの条件下で選択される。これら総ての条件を満たすものとして銅が挙げられる。また、本発明においては、前記循環機構に循環させる流体の流量を調節することにより温度調節を行なうのが好ましい。この場合、流体そのものの温度を調整するよりも正確且つ容易に基部の温度調節を行なえる。なお、循環させる流体の種類を選択することによって温度調節を行なうこともできる。
【0040】
本発明のさらに具体的な態様は、前記温度調節手段が、前記流体の流量を調節する為の流量調節手段を備えることが好ましい。
【0041】
本発明の成形装置において、前記温度調節手段が、前記基部の温度を検出する温度検出手段と、当該基部に沿って温度調節用の流体を循環させる循環機構と、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記流体の流量を制御するための流量制御手段と、を備えることが好ましい。
【0042】
本発明の具体的な態様による成形装置は、前記基部が、前記光学素子の光軸方向に延在する光軸方向延在部を有していて、前記温度検出手段が、当該光軸方向延在部における複数の部位の温度を検出するように構成されていることができる。
【0043】
具体的な態様では、成形型または成形型を収めた母型を加熱する加熱手段を成形室内に設置する。加熱手段としては、高周波誘導加熱コイル、胴型ヒーターなどが用いられる。好ましくは、加熱手段として誘導加熱コイルを用いる。高速昇温が可能で、また冷却速度も速く生産効率の向上が図れるからである。なお、この加熱手段は一対の型のそれぞれに配設するのが好ましい。
【0044】
また、本発明の成形装置において、前記各成形型を誘導加熱により加熱する加熱手段を備え、前記温度調節手段が、前記基部と前記加熱手段との間に配置されて当該加熱手段が発生する磁場を遮蔽する非磁性部材を含んで構成されていることが好ましい。なお、この温度調節手段が前記循環機構の機能を兼ねていてもよい。
【0045】
上記の態様によれば、非磁性部材が、加熱手段が発生する磁場を遮蔽するから、仮に基部がステンレスのように誘導加熱による影響を受ける素材からなる場合であっても、当該基部の温度上昇を防止できる。非磁性部材としては、銅からなる部材が挙げられる。
【0046】
本発明の更なる態様は、相対向する一対の成形型間に加熱軟化した被成形ガラス素材を配置し、この被成形ガラス素材を前記一対の成形型によって押圧してガラス光学素子に成形する押圧成形工程を含むガラス光学素子の成形方法であって、前記一対の成形型の一方が、熱に起因して前記光学素子の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止する位置変化抑止工程を含むものである。
【0047】
本発明の押圧成形工程では、成形型と被成形素材の温度を予め等しくして押圧成形する所謂等温プレスを行ってもよいし、また被成形素材を、成形型の温度よりも高温に予熱して押圧成形する所謂非等温プレスを行ってもよい。好ましくは、該被成形ガラス素材をその粘度で106〜108ポアズに相当する温度に予熱し、同被成形ガラス素材の粘度で108〜1010ポアズ相当の温度に加熱された成形型に供給して押圧成形を行なうと、本発明の効果が顕著となる。
【0048】
本発明の成形方法において、前記一対の成形型が、基部に固定された受型と、前記光学素子の光軸方向に可動する押型とからなり、前記位置変化抑止工程には、前記基部の少なくとも一部の温度を調節することにより前記受型の少なくとも前記光軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度調節工程が含まれることが好ましい。
【0049】
また、本発明の成形方法において、前記押圧成形工程では、前記押型を予め定めた所定ストローク量繰り出すことが好ましい。
【0050】
前記温度調節工程では、前記基部に沿って温度調節用の流体を循環させると共に、当該基部の温度に基づいて前記流体の流量を調節することが好ましい。
【0051】
本発明の具体的な態様による成形方法は、前記基部が、前記光学素子の光軸方向に延在する光軸方向延在部を有していて、前記温度調節工程では、当該光軸方向延在部における複数の部分の温度を検出し、その検出結果に基づいて当該基部の少なくとも一部の温度を調節することが好ましい。
【0052】
本発明では、上記の成形方法において、前記温度調整工程では、前記基部の複数の部位における温度を検知すると共に、その検知結果に基づいて当該各部位の温度調節を独立に行うことが好ましい。
【0053】
本発明を適用して成形される光学素子の種類としては、レンズ形状の両凸、メニスカスなどがあるが、面精度を出すことが難しい凹メニスカスレンズ又は両凹レンズの成形などには、本発明は好適に用いられる。球面、非球面いずれでも良い。径は25mm程度のものが成形できた。
【0054】
本発明は、上記の何れかの態様による成形方法を用いる凹メニスカスレンズの製造方法を包含する。
【0055】
また、本発明は、上記の何れかの態様による成形方法を用いる両凹レンズの製造方法を包含する。
【0056】
なお、本発明の成形装置、及び成形方法によって成形する光学素子の肉厚公差(許容される肉厚誤差)は、例えば±0.03mm程度である。また、被成形素材としてガラスを用いる場合その硝種は特に限定されるものではなく、様々の屈折率或いはアッべ数を有する光学素子を成形できる。
【0057】
【発明の実施の形態】
図1は実施の形態による成形装置を平面方向からみた場合の断面概略図である。このプレス成形装置10は、加熱室20及び成形室30を備える。加熱室20と成形室30は通路40で相互に連通されている。これら加熱室20、成形室30及び通路40によって、外部から遮断された一つの密閉空間を構成している。ステンレスその他の部材により、この密閉空間の外壁を形成し、シーリング材によって、その気密性を保証できる。
【0058】
この密閉空間は、光学素子の成形に際して非酸化性ガス雰囲気にされる。すなわち、図示しないガス交換装置によって、該空間内の空気が排気され、代わりに非酸化性ガスが充填される。非酸化性ガスとしては、好適には窒素ガスが用いられる。通路40が加熱室20と成形室30との相互間における気体の交換を可能にするから、プレス成型時においては加熱室20と成形室30の気圧、ガス濃度及び温度は略一定にされる。但し、通路40には気密バルブ41が設けられていて、作業者による成形室30内の保守点検時には当該気密バルブ41が閉じることにより、加熱室20側の加熱ガスが成形室30側に流出せぬ様になっている。
【0059】
加熱室20は、プレスに先立って被成形ガラス素材を加熱軟化する領域である。被成形ガラス素材としては、プレス成形のために予備成形したもの(以下、「ガラスプリフォーム」という。)を用いる。加熱室20には、ガラス加熱装置22及びガラスプリフォームGを供給するハンドラ(以下、供給ハンドラ23という)が設置される。また、外部からガラスプリフォームGを加熱室20内へ供給するための搬入部21が設置される。搬入部21は、気密性を維持しつつガラスプリフォームを搬入するために、図示しない搬入室を備える。外部から供給されたガラスプリフォームを搬入室に搬入し、この内部を非酸化性ガスで充填した後に、加熱室20側の扉を開けて順次ガラスプリフォームGを内部へ搬入する。
【0060】
供給ハンドラ23は、搬入部21から搬入されるガラスプリフォームGを、ガラス加熱装置22による加熱領域に搬送し、更に、加熱後のガラスプリフォームを成形室30へ搬送する。供給ハンドラ23は、そのアーム24の先端に浮上皿25を備え、その上でガラスプリフォームを浮上させながら保持する。実施例では、加熱室20内に固定される駆動部23aによって、浮上皿25を備えるアーム24が水平に支承され、該アーム24は略90°の回転角をもって水平方向に回動される。また、アーム24は、駆動部23aを中心とした半径方向に出退可能に構成されており、これによって、保持したガラスプリフォームを成形室30に搬送可能にする。
【0061】
ガラス加熱装置22は、供給されたガラスプリフォームGを所定の粘度に相応する温度にまで加熱する。ガラスプリフォームを安定して一定の温度まで昇温するために、抵抗素子を用いた抵抗加熱による加熱装置を用いるのが好ましい。ガラス加熱装置22は、アーム24上に保持したガラスプリフォームの移動軌跡下に設置されている。従って、アーム24によるガラスプリフォームの搬送中にガラスプリフォームを加熱できる。なお、アーム24をガラス加熱装置22上で所定時間停止し、ガラスを加熱するようにしてもよい。これらの事項は、対象となるガラスの加熱に必要な時間に応じて決定される。加熱室20から成形室30へのガラスプリフォームの受け渡しは通路40を介して供給ハンドラ23によって行われる。
【0062】
一方、成形室30は、加熱室20において予備加熱されたガラスプリフォームGをプレスして、所望の形状のガラス光学素子(以下、光学ガラスGという)を成形する領域である。1つの実施例においては、オーステナイト系ステンレスSUS304を用いて成形室30を構成する。成形室30には、プレス装置33、光学ガラスの搬出用のハンドラ(以下、搬出ハンドラ32という)、及びプレス成形された光学ガラスを外部へ搬出するための搬出部31が設置される。搬出部31は、成形室30の気密性を維持しつつ光学ガラスを外部へ搬出するために、非酸化性ガスが充填された図示しない搬出室を備えている。搬出ハンドラ32から渡された光学ガラスは、この搬出室に一旦搬入されてから外部に搬出される。
【0063】
プレス装置33は、供給ハンドラ23によって加熱室20から搬送されるガラスプリフォームGを受け入れ、これをプレス(押圧)して所望の形状の光学ガラスを成形する。プレス装置33は、相対向する一対の成形型を備えており、その間に供給されたガラスプリフォームGをこれら一対の成形型で押圧して光学ガラスに成形する。成形型の周囲には、これを予熱する予熱手段としての型加熱装置34が設置されている。型加熱装置34の好ましい実施態様は、高周波誘導を用いた加熱方式のものである。ガラスプリフォームのプレスに先立って、成形型をこの型加熱装置34によって加熱し、所定の温度に維持する。プレス時における成形型の温度は、予熱されたガラスプリフォームの温度と略同じであっても、又はそれよりも低いものであってもよい。
【0064】
搬出ハンドラ32は、プレス装置33によってプレスされた光学ガラスを搬出部31へ受け渡す。搬出ハンドラ32は、駆動部32aに対し回動自在に支承されたアーム32bの先端に吸着パッド32cを備えている。吸着パッド32cは、成形型の下型上にある光学ガラスを真空吸着し、搬出ハンドラ32による搬送を可能にする。アーム32bの回動により吸着された光学ガラスは、搬出部31下に搬送され、ここに設置された図示しない昇降手段上に置かれる。アーム32bの待避後に、該昇降手段が上昇され、光学ガラスは搬出部31へ受け渡される。
【0065】
次に、プレス装置33まわりの構成について詳細に説明する。図2は、プレス装置33まわりを正面からみた場合の構成を示す断面概略図である。同図に示すように、プレス装置33は筒状に形成された上下一対の母型51a,51bに、それぞれ上型(受型)52a,下型(押型)52bを備えて構成される。上型52a及び下型52bの互いの対向面には、成形する光学ガラスの球面又は非球面に合わせて設計された成形面が形成されている。供給ハンドラ23によって供給されるガラスプリフォームGは、上型52aと下型52bの間に配置され、そのガラスプリフォームGを一対の型52a,52bで押圧して光学素子に成形する。
【0066】
具体的には、上型52aが、成形室30に固定され、下型52bが成形しようとする光学素子の光軸方向(図2中、上下方向)に可動する。すなわち、供給ハンドラ23によってガラスプリフォームGが供給された後は、下型52bが上型52aに向かって予め定めた所定のストローク量繰り出すことで、ガラスプリフォームGを押圧して光学ガラスに成形する。
【0067】
また、上型52aと下型52bのそれぞれの周囲には、その型を予熱する型加熱装置34としての誘導加熱コイル53,53が配設されている。誘導加熱コイル53,53はプレス形成に先立って、一対の成形型52a,52bを誘導加熱により所定温度に予熱する。1つの実施形態において、一対の成形型52a,52bは誘導加熱コイル53,53によって、ガラスプリフォームよりも低い温度(108〜1012ポアズの粘度にするのに必要な温度)程度に予熱された後、ガラスプリフォームGを受け入れてこれをプレスする。
【0068】
また、図2に示すように、成形室30は、上型52aが固定される天面61と、上型52a及び下型52bを光学素子の光軸まわりに取り囲むように配置された側面62,62…と、天面61に対向する底面63とを備えて直方体状に構成されている。成形室30を構成する当該各面のうち、側面62,62…は、成形しようとする光学ガラスの光軸方向(図2中、上下方向)に延在している。
【0069】
また、上型52aは、成形しようとする光学素子の光軸方向に延在する支柱71によって天面61に固定されている。この支柱71と成形室30とを含んで基部を構成している。なお、支柱71は天面61を貫通しているが、当該貫通部分はフッ素ゴムなどからなるシール部材72により気密封止されている。一方、下型は、成形しようとする光学素子の光軸方向に延在する突き上げ棒73を介して成形室30の外に配置された成形型駆動機構80に繋がれている。突き上げ棒73は、成形室30の底面63を貫通しているが、当該貫通部分は、フッ素ゴムなどからなるシール部材74により気密封止されている。
【0070】
成形型駆動機構80は、繰り出し量(位置制御)及びトルク制御が可能なサーボモータと、そのサーボモータの制御プログラムを有する制御系とを備えて構成されている。成形型駆動機構80では、制御系が制御プログラムに従ってサーボモータを制御して突き上げ棒73を光軸方向(図2中、上下方向)に進退させることにより、ガラスプリフォームの押圧力、押圧時間、及び押圧のタイミングなどの緻密な制御が行われる。
【0071】
また図2に示すように、誘導加熱コイル53,53と成形室30の内壁との間には、熱伝導率が高く且つ非磁性体である銅からなる冷却板91,92…が配置されている。これら冷却板91,92…は、成形室30の総ての内壁に貼設されている。さらに当該各冷却板91,92…の熱源側の表面にはそれぞれ同じく銅製のパイプ91a,92a…が張り巡らされている。各パイプは半田付けにより冷却板に取り付けることができる。パイプ91a,92a…の設置箇所は成形室30の内部でも外部でも良いがこれを内部に設置している。成形室内部にパイプ91a,92a…を設けた方が、熱源側であるから冷却効率が良い。
【0072】
また図示はしないが、各パイプには、そのパイプを循環する冷却水(温度調節用の流体)の流量を調節する為の流量調節バルブが取り付けられている。これら冷却板91,92…,パイプ91a,92a…,及び流量調節バルブによって本発明の循環機構を構成している。なお、冷却板及びパイプの素材としては熱伝導率の高い銅(熱伝導率=0.93)が最適といえるが、純アルミ(熱伝導率=0.56)なども候補として挙げられる。
【0073】
また成形室30の天面61,側面62…,及び底面63には、それぞれ温度センサ(図示せず)が取り付けられている。各々の温度センサは、それが取り付けられている面における複数の部位の温度を検出する。検出結果は、図示しない流量制御部に出力される。流量制御部は温度センサからの検出結果に基づいて、流量調節バルブの開き量を制御して各パイプを流れる冷却水の流量を制御することにより、天面61、側面62…、及び底面63の温度調節を個別に行う。なお、流量制御部は、例えばソフトウエアによって実現できる。
【0074】
以上の如く構成された成形装置の作用は次の通りである。供給ハンドラ23は、浮上皿25にて浮上保持している加熱軟化したガラスプリフォームを上型52aと下型52bの間に素早く移動させる。この状態で、アーム24がその長手方向の中心線に沿って2つに分割する。これにより、ガラスプリフォームが下型52bに落下供給される。このとき、上型52a及び下型52cは誘導加熱コイル53,53によって所定の温度に予熱されている。その後、分割したアーム24は再び閉じて、加熱室20側に素早く後退する。なお、プリフォームを下型52bへ落下供給する際、該プリフォームを下型52bの成形面の中央に位置決めするセンタリング手段を備えるのが好ましい。
【0075】
次いで、プリフォーム載せた下型52bは成形型駆動機構80による駆動によって上型52aに向かい素早く上昇する。その後、上下一対の型52a,52bによってプリフォームを押圧成形して凹メニスカスレンズや両凹レンズなどの光学素子に成形する(押圧成形工程)。しかる後、図示しない型冷却手段(好ましくは不活性ガス吹き付けによる冷却)によって一対の型52a,52b及び光学素子を所定の温度(例えばガラス歪点付近)まで加圧しながら降温させる。かくして、所定の光学性能及び形状精度を有した光学ガラスを得る。
【0076】
ガラスプリフォームを連続して押圧成形する際には、型52a,52bの温度が高温(例えば600℃程度)になると共に、その熱放散により周辺雰囲気の温度も高温となる。そこで、押圧成形工程中には、各パイプ91a,92a…に冷却水を循環させて各冷却板を冷却することで、当該各冷却板が誘導加熱コイル53,53及びガラスププリフォームからの放射熱を遮断する(温度調節工程)。これにより、成形型52a,52bの熱変形が抑えられる。また冷却板91,92…は非磁性体からなるので、誘導加熱コイル53,53が発生する磁場を遮蔽する。これにより、誘導加熱による影響を受けるステンレスから構成された成形室30の温度上昇を防止できる。なお、冷却板91,92…に導電性の高い材料を用いるとさらに効果が高い。
【0077】
具体的には、流量制御部が、温度センサからの検出結果に基づいて、成形室30の熱変形を回避し、且つ天面61,側面62…,及び底面63の温度が常に略等しく揃うように、当該各面別にその面に張り巡らされたパイプに循環させる冷却水の流量を個別に制御する。これにより、成形室30は上下左右の何れの方向にも熱変形が抑えられる。また型52a,52bの周辺部材の温度が立ち上げ時から時間と共に緩やかに上昇することも確実に防止できる。その結果、Tiltや偏心等の発生を防止して、精度の高い光学素子を得ることができる。従って、この成形装置は、精度高い肉厚と面精度の制御、傾きの防止など、高精度な性能が要求される光学素子の成形に好適である。
【0078】
特に、成形室の温度を調節することにより当該成形室に固定された受型52aの少なくとも光軸方向(図2中、上下方向)の位置変化を実質的に抑止できる。また、下型の繰り出し量は光学素子の最終肉厚を左右するが、下型52bを駆動する成形型駆動機構80が成形室30の外に配置されているから、下型52bの位置が成形室30の温度変化の影響を受けることはない。従って、連続して押圧成形する過程で、一対の型52a,52bどうしの少なくとも光軸方向の離間量が、熱に起因して変化するのが実質的に抑止される。これにより、光学素子の少なくとも肉厚に誤差が生じることが回避される。
【0079】
また型52a,52bの周辺部材の緩やかな昇温が防止され、プレス開始後の冷却時における型位置制御が所望通りに行われ、且つ押圧力の大きさ、押圧時間、押圧のタイミング等の緻密な制御を正確に行えるようになるから、肉厚精度は勿論、面精度の向上も図られるようになり、特に凹メニスカスレンズや両凹レンズの製造には好適である。さらにそのような緻密な制御を、熱変形を考慮に入れなくてもできるようになるから、成形型駆動機構80の制御系の簡素化が図られる。
【0080】
以上のように本発明の成形装置によれば、相対向する一対の型の一方を固定したまま、すなわち装置の構造を過度に複雑化することなく、面精度、肉厚制御、光軸の傾きなどが所望の仕様を満たす光学素子を効率良く成形できる。すなわち、本発明の構成により、下型の繰り出し量を成形室(固定部材)と同じ位置基準で位置決めでき簡便である。また、凹メニスレンズや両凹レンズのような高面精度を達成する難度の高い光学素子であっても、下型の押圧力制御(繰り出し量やトルク)を所望のパターンで行なうことができるため、これを困難なく成形できる。
【0081】
〔比較例1〕比較のために循環機構(冷却板91,92…及びパイプ91a,92a…)及び流量制御部を具備しない点を除けば上記と同様に構成された成形装置を用いて、連続可動を行ったところ、光学素子の肉厚精度及び傾き精度が悪化した。これは、成形を繰り返すごとに基部としての成形室の温度が上昇し、該成形室の寸法が変化した為であると考えられる。以下、この原因を図3及び図4を参照して説明する。なお、図3及び図4においては便宜上、上記実施の形態による成形装置と同じ部分については同符号を付している。
【0082】
光学素子の肉厚精度が悪化した要因としては、連続可動を行う過程で図3中、想像線(破線)で示すように、固定された上型52aの位置が時間と共に下型から遠ざかる方向(図3中、上方向)に変位した為であると考えられる。これは主として、光学素子の光軸方向に延在する側面62,62…が熱膨張したことに因ると考えられる。下型の繰り出し量は一定であるから、このような場合、押圧時における各成形型どうしの光軸方向の離間量が増大し、結果として成形される光学素子の肉厚が厚くなってしまう。
【0083】
また、光学素子の傾き精度が悪化した要因としては、連続可動を行う過程で図4中、想像線(破線)で示すように、天面61が時間と共に水平位置に対して傾斜した為であると考えられる。これは主として、光学素子の光軸方向に延在する側面62,62…間で温度差が生じた為であると考えられる。具体的には図4において、右側の側面62の方が左側の側面62よりも熱源(誘導加熱コイル53)に近い為、これら左右の側面が均等に膨張しない。すなわち、左側の側面の方が熱膨張量が小さくなるので、結果的に天面61が左側に傾斜したものと考えられる。このような場合、天面61に固定された上型52aも傾斜するので、光学素子の光軸にTilt(傾き)が発生する。レンズの片面もしくは両面が非球面形状である場合、傾き精度は特に厳しいものが要求される。先のレンズ肉厚精度と同様、傾き精度を満たす温度差管理も極めて重要となる。
【0084】
以上からわかるように、光学素子の肉厚精度に影響を及ぼさないように成形室30の温度を調整するのは勿論、成形室30を構成する各面間の温度差を低減することも重要である。なお本発明では、成形室を構成する各面61,62…,63の冷却回路を独立させ、各々の面の温度調節を個別に行うこととしたので、上記の問題の一切を回避できる。
【0085】
〔実施例〕SUS304ステンレスからなる全高700mmの成形室内でガラスプリフォームの押圧成形を連続的に行った。押圧成形を連続的に行う過程で、成形室の内壁に取り付けた銅製パイプに、20℃に保たれた水を循環させることによって成形室の冷却を行った。そして、立ち上げからのレンズ間での肉厚の変化に注目したところ、2時間経過した時点で肉厚に+0.026mmの増加が認められた。しかし、その後はこの数値を保ち肉厚スペック(1.8±0.025)から外れることはなかった。なお、立ち上げ時からの壁温度の上昇は2℃に抑えることができた。
【0086】
〔比較例2〕一方、成形室の冷却を行わずに同様の成形室内でガラスプリフォームの押圧成形を連続的に行った。そして、立ち上げからのレンズ間での肉厚の変化に注目したところ、立ち上げ時は肉厚スペック(1.8±0.025)に対し1.778とスペック内であったが、時間の経過と共に肉厚傾向となり、2時間後は2.298と大きくスペックから外れた。なお、これは成形室を構成するSUS304ステンレスの熱膨張係数α=18.8×10-6から膨張量を計算で求めたものに略一致している。また、立ち上げから略2時間が経過した時点で成形室内の壁温度は40℃上昇した。
【0087】
以上の実施例と比較例2を比較すると、特にレンズ肉厚のスペックに対する成形室の温度管理が極めて重要であることが判る。なお、成形室の壁の材質はSUS304に限定されるものではないが、熱膨張係数の小さい素材で成形室を構成するのが有利であることは言うまでもない。
【0088】
〔変形例〕図5は、別の実施の形態による成形装置におけるプレス装置まわりを正面からみた場合の構成を示す断面概略図である。同図において、図2と同様の構成部材には便宜上、同符号を付して重複する説明を省略する。この成形装置では、循環機構が所謂ジャケット構造をなしている。すなわち、成形室を構成する各面には、それぞれ断面短冊状の空隙101a,102a,103a…が形成されたジャケット部材101,102,103…が取り付けられている。各ジャケット部材の空隙には図5中、紙面に垂直な方向に冷却液が循環するようになっている。なお各ジャケット部材は、非磁性体で且つ熱伝導率の高い銅から構成されている。循環機構としてこのようなジャケット構造を採用した場合、ジャケット部材そのものが冷却板としての機能を発揮するからより効率的な温度調整が行える。また、ジャケット部材が遮蔽部材としての機能を発揮するから、成形室30の誘導加熱が防止される。
【0089】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、極めて成形温度の高いプレス成形を行なった場合などに、本発明の温度調節手段をもっても成形室の温度上昇を防止しきれない場合には、成形室の温度変化に起因する肉厚変動分をキャンセルするように下型の繰り出し量を予め設定するようにしてもよい。下型の繰り出し量は成形型駆動機構80の制御系のプログラムで設定できる。
【0090】
また、プレス成形を行ないながら成形型52a,52b又はその近傍の温度検出を行ない、そこで得られた温度情報を成形型駆動機構80の制御系にリアルタイムでフィードバックして下型の繰り出し量などを決定してもよい。
【0091】
また、光学素子の肉厚精度や面精度を向上させると云う観点からは、当該光学素子の光軸方向に延在する光軸方向延在部の温度調節が特に肝要である。本発明で云う光軸方向延在部には、側面62…のみならず支柱71や突き上げ棒73なども含まれるから、それら支柱71や突き上げ棒73などにも温度センサを設けると共にその温度を調節して、それらの熱膨張及び熱収縮を防止してもよい。さらに、それら支柱71や突き上げ棒73などを含む光軸方向延在部の熱変位分を予め求めておき、連続的なプレス成形に先立って、その熱変位分をキャンセルするように下型の繰り出し量を設定するようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態では、流量制御部による自動制御でパイプ或いはジャケット部材に循環させる冷却水の流量を調節することとしたが、冷却水の流量の調節は作業者が流量調節バルブ(流量調節手段)を操作することによって行うこともできる。その場合は、各面に対応する温度センサの検出結果が目視可能な形態で成形室の外部に表示出力されるようにするのが好ましい。そうすると、制御系の簡素化やコストダウンが図られる。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の肉厚精度、面精度を満足した光学素子をプレス成形で高精度に実現できる。また本発明によれば、プレス後に研磨を要しない程度に高精度に光学素子を成形するにあたり、面精度の得にくい形状のものであっても該光学素子を一層高精度に実現できる。さらに本発明によれば、光学素子を高精度に成形する成形装置を簡素な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による成形装置を平面方向からみた場合の断面概略図。
【図2】実施の形態による成形装置における成形型まわりの構成を示す断面概略図。
【図3】熱膨張によって上型の位置が変化する1つの態様を説明する為の図。
【図4】熱膨張によって上型の位置が変化する別の態様を説明する為の図。
【図5】別の実施の形態による成形装置における成形型まわりの構成を示す断面概略図。
【符号の説明】
10…成形装置、33…成形型、52a…上型、52b…下型、30…成形室、61…天面、62…壁面、71…支柱、73…突き上げ棒、92…冷却板、92a…パイプ、G…ガラスプリフォーム;ガラス光学素子。
Claims (10)
- 成形しようとするガラス光学素子の光軸方向で対向する天面および底面と、当該ガラス光学素子の光軸まわりに取り囲むように配設されていて当該天面および底面を対向した状態に保持する側面とから構成され、これらの面によって外部から遮断された密閉空間の外壁を形成するようにした成形室と、
前記成形室の天面または底面のいずれかに固定されている固定型と、当該固定型に対して進退可能に設けられている可動型とからなる相対向する一対の成形型と、
前記可動型を前記固定型に向かって進退させる駆動手段と、
前記成形型を加熱する加熱手段と、
前記成形室を構成する天面、底面および側面の温度を調整する温度調節手段と
からなることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。 - 請求項1に記載のガラス光学素子の成形装置であって、
温度調節手段は、前記成形室の内壁側に配設されていることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。 - 請求項1または2に記載のガラス光学素子の成形装置であって、
前記温度調節手段は、前記成形室を構成する天面、底面および側面に貼設されていて、内部または表面に温度調節用の流体が循環可能な流路が形成されている板状部材であることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。 - 請求項3に記載のガラス光学素子の成形装置であって、
前記温度調節手段は、前記成形室を構成する天面、底面および側面の各面の温度を検出する温度検出手段と、温度調節用の流体を循環させる循環機構と、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記流体の流量を制御する流量制御手段とを備えることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載のガラス光学素子の成形装置であって、
前記加熱手段は誘導加熱によるものであり、前記温度調節手段は当該誘導加熱による加熱手段が発生する磁場を遮蔽する部材を含んで構成されていることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。 - 請求項5に記載の加熱手段は、高周波誘導を用いた加熱方式のものであることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。
- 請求項5に記載の磁場を遮蔽する部材は、銅または純アルミであることを特徴とするガラス光学素子の成形装置。
- 成形しようとする光学素子の光軸方向で対向する天面および底面と、当該光学素子の光軸まわりに取り囲むように配置されていて当該天面および底面を対向した状態に保持する側面とから構成される成形室を備え、当該成形室の天面または底面のいずれかに固定されている固定型と、当該固定型に向かって進退可能に設けられている可動型とからなる相対向する一対の成形型間に被成形ガラス素材を配置し、この被成形ガラス素材が加熱により軟化した状態で、当該一対の成形型によって押圧してガラス光学素子を成形する押圧成形工程を含むガラス光学素子の成形方法であって、
前記成形室を構成する天面、底面および側面を温度調節手段によって所定の温度に保持する温度調節工程を含む
ことを特徴とするガラス光学素子の成形方法。 - 請求項8に記載のガラス光学素子の成形方法であって、
前記温度調節工程は、前記成形室の天面、底面および側面の複数の部位における温度を検知すると共に、その検知結果に基づいて当該各部位の温度調整を独立に行うことを特徴とするガラス光学素子の成形方法。 - 請求項8または9に記載のガラス光学素子の成形方法であって、
押圧によりガラス素材を所定の肉厚とした後、荷重制御又は押型の位置制御を行うことを特徴とするガラス光学素子の成形方法。
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