JP2003277081A - ガラス光学素子の成形装置及び成形方法 - Google Patents

ガラス光学素子の成形装置及び成形方法

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JP2003277081A JP2002086518A JP2002086518A JP2003277081A JP 2003277081 A JP2003277081 A JP 2003277081A JP 2002086518 A JP2002086518 A JP 2002086518A JP 2002086518 A JP2002086518 A JP 2002086518A JP 2003277081 A JP2003277081 A JP 2003277081A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 押圧後に研磨を要しない程度に高精度に光学
素子を成形するにあたり、該光学素子を一層高精度に実
現する。 【解決手段】 成形装置は、加熱軟化した被成形素材
を、誘導コイル53,53により予熱された相対向する
一対の成形型52a,52bで押圧して光学素子に成形
する。上型52aを成形室30に固定して、下型52b
のみが予め定めた所定のストローク量繰り出されるよう
にする。さらに、成形室の各内壁には、非磁性体からな
る冷却板91…を貼設すると共に、その冷却板には水冷
パイプ91a…を張り巡らす。図示せぬ制御部は、成形
室30の熱変形を回避し、且つ総ての壁の温度が常に略
等しく揃うように各々の水冷パイプに循環させる冷却水
の流量を個別に制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レンズ、プリズ
ム、ミラーその他の光学素子の成形方法と、その方法の
実施に使用する成形装置とに関する。特に、本発明は、
プレス成形後に研削・研磨が不要なガラスレンズ等のガ
ラス光学素子の成形装置及び成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学素子の製造において、素材をプレス
成形するものとしては、例えば特開昭61-205630号公報
に開示されているように、上型とおよび下型からなる金
型間に、所定温度に加熱したガラス素材を充填し、これ
ら一対の型によりガラス素材を押圧成形する装置が知ら
れている。前記公報に記載のとおり、上又は下型と胴型
の当接によって光学素子の肉厚を規制する方式、ストッ
パ等によって上下型が所定距離離れたときに停止して、
肉厚を規制する方式が知られている。しかしながら、こ
れらでは、型内のガラスの冷却固化の過程でヒケ等が生
じる問題があった。そのため、該公報では、冷却固化の
過程でガラスの収縮に連動して金型を加圧することが開
示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、発明者
らは、この種の成形装置にあってはプレス成形を連続的
に行う過程で、型まわりの部材が熱膨張による位置変化
することに配慮していない為、たとえガラスの収縮に連
動して加圧をしても、所定精度の光学素子が得られない
場合がある事に着目した。一方、特開平9-188531号公報
には、部材の不均一な温度分布による光軸ズレを防止す
る開示があるが、高度の面精度及び肉厚精度を有する光
学素子を製造することに関して改善の余地があった。
【0004】また、上記の問題はプレス後において研磨
を要しない程度に高精度に素材を成形しようとする場合
に重要である。すなわち、そのような場合、所定の面精
度等を得る為に、プレスにあたって光学素子の肉厚を決
定した後においても押圧力をきめ細かに制御する課題が
あり、型まわりの部材が熱膨張による位置変化をする場
合には、そのような緻密な制御を正確に行えなくなる。
ここで、肉厚決定とは、成形型によりガラス素材が所定
の肉厚になるまで押圧することであり、このときの肉厚
は、成形された光学素子の最終肉厚とは必ずしも同一で
はない。ガラスが冷却された後に、最終肉厚になること
を予め算定し、所定の肉厚を定める。
【0005】特に、凹メニスカスレンズや両凹レンズな
どの光学素子は高い面精度が得にくい為、荷重制御(押
圧力及びその時間変化)、及び押型の位置制御を正確に
行うことが重要な課題となっている。
【0006】なお、金型まわりの部材の熱膨張及びその
経時変化を予め考慮に入れて押圧力及び型位置を制御す
ることも考えられたが、制御系が複雑化する懸念が生じ
た。
【0007】本発明の目的は、所望の光学素子をプレス
成形するにあたり、面精度を左右する、型の荷重制御及
び位置制御を所望の設計で行う技術を提供することにあ
る。また本発明の目的は、プレス後に研磨を要しない程
度に高精度に光学素子を成形するにあたり、該光学素子
を一層高精度に実現する技術を提供することにある。さ
らに本発明の目的は、光学素子を高精度に成形する成形
装置を簡素な構成で実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様は、
相対向する一対の成形型間に加熱軟化した被成形ガラス
素材を配置し、この被成形ガラス素材を前記一対の成形
型で押圧してガラス光学素子に成形する成形装置におい
て、前記一対の成形型の一方が、熱に起因して前記光学
素子の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止する位
置変化抑止手段を備えることを特徴とする。
【0009】第1の態様によれば、一対の成形型の一方
が熱に起因して光学素子の光軸方向に位置変化するのを
実質的に抑止することにより、型位置や押圧力等の緻密
な制御を設計値通りに正確に行えるようになる。これに
より、光学素子の肉厚精度のみならず面精度等の向上が
図られると共に、連続生産における品質のバラツキを防
止できる。また、そのような型位置、押圧力等の制御を
比較的簡素な装置によって実現できる。
【0010】本発明の第2の態様は、第1の態様による
成形装置において、前記一対の成形型が、基部に固定さ
れた受型と、前記光学素子の光軸方向に可動する押型と
からなり、前記位置変化抑止手段が、前記基部の少なく
とも一部の温度を調節することにより前記受型の少なく
とも前記光軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度調
節手段を備えることを特徴とする。
【0011】第2の態様によれば、温度調節により上記
正確な制御が図られる。また、一方の成形型のみが可動
するから、双方の成形型が可動する装置と比較して構成
を簡素にできる。
【0012】本発明の具体的な態様では、前記温度調整
手段が基部の少なくとも一部の温度が実質的に一定とな
るように調節することで、プレス成形工程を繰り返す過
程で、基部が熱膨張又は熱収縮してしまうことを防止す
る。ここで実質的に一定とは、成形しようとする光学素
子に要求される精度によって適宜決定されるが、通常は
基部の温度変化がプレス成形開始時に対して、±5℃以
内、好ましくは±2℃以内となるような範囲を指す。な
お、前記温度調節手段は、加温手段、冷却手段、又は冷
却及び加温の両機能を有していてもよい。要は、プレス
成形工程を連続して行なうにあたり、固定部材の温度が
終始所定範囲内におさまるように温度調節することが肝
要である。
【0013】本発明の温度調節手段は、冷却手段である
ことが好ましい。プレス成形を繰りかえすうちに、成形
型周辺の温度が上昇し、これに伴って基部(例えば成形
室壁面)の寸法が僅かに変化する。すると、基部に固定
された受型の位置精度が狂う。そこで、温度調節手段に
よって、基部の少なくとも一部を冷却することにより成
形型周辺の温度上昇を防止する。
【0014】また、基部の少なくとも一部とは、本発明
の目的を逸脱しない範囲で当該基部の任意の部位を指
す。基部における受型の位置に最も影響しやすい部位の
温度調節を行なうことが好ましいのは言うまでも無い。
なお、基部(例えば成形室の壁面)の温度は、室温±1
0℃の範囲に保つとよい。
【0015】通常、成形装置は、成形型を収容する成形
室を有するため、好ましくは成形室が基部として機能す
る。この場合、装置をシンプルにする観点からは、成形
室に成形型の一方を固定するのが好ましい。固定の態様
は、直接でも間接的な固定でも良い。例えば、後述のよ
うに、成形室の天面に上型を直接又は間接に取付ける態
様が好ましい。
【0016】本発明の第3の態様は、第2の態様による
成形装置において、前記押型が前記受型に向かって予め
定めた所定ストローク量繰り出すように構成されている
ことを特徴とする。第3の態様によれば、押型が受型に
向かって予め定めた所定ストローク量繰り出すので、熱
変形その他の外乱を繰り出し量にフィードバックさせる
場合などに比べて制御系を簡素でにきる。
【0017】本発明の具体的な態様による成形装置は、
前記押型を前記受型に向かって進退させる駆動手段を備
える。この場合において、該駆動手段が押型を予め定め
た所定ストローク量繰り出すようにするのが好ましい。
この繰り出し量は、連続的なプレス成形に先だって、予
め定めておくことができる。さらには、駆動手段が押型
を駆動する具体的方法(例えば、押圧成形工程中の押圧
力の増減や、押型位置の変位の仕方など)を、時間や温
度の関数として予めプログラミングして、制御装置(図
示せず)に入力しておくことができる。
【0018】本発明の駆動手段としては、サーボモータ
が好ましく、トルク制御と位置制御ができる手段を伴う
ことが更に好ましい。すなわち、押圧成形を通じ、所望
のトルクでサーボモータを制御できることが好適であ
る。これにより、光学素子の肉厚を含む最終形状が決定
する過程で押圧力等の緻密な制御を実現できる。
【0019】本発明の第4の態様は、第2又は第3の態
様において、前記基部が、少なくとも前記受型及び押型
を収容する成形室を構成していることを特徴とする。
【0020】ここで、前記成形室の素材は特に限定され
ないが、熱膨張係数が過大でないこと(熱膨張係数α=
20×10-6程度以下)、加工性に富んでいること、及
び材料自身の放出ガス量が少ないこと(真空容器壁に適
していること)を満たす素材が望ましい。好ましくは、
成形室の素材としてステンレス鋼を用いる。
【0021】前記成形室は、好ましくは天面と壁面を有
して多面体に構成する。プレス成形を非酸化性雰囲気で
行なう場合には、この成形室が外部と成形型等を遮断す
る密閉部材として機能する。
【0022】例えば、直方体形状の成形室であれば、各
壁面が異なった温度に加温されてしまう場合がある。こ
れは、熱源からの距離が各壁面で異なる場合に深刻化す
る。そこで、各々の壁面にその壁面の温度を検出する温
度検出手段を設け、当該各温度検出手段の検出結果に基
づいて各壁の冷却を行なうことにより、当該各壁間の温
度差を低減させるのが好ましい。
【0023】本発明の具体的な態様は、第4の態様によ
る成形装置において、前記受型及び押型は、それぞれ上
下一対に配置された上型及び下型として構成されてあ
り、前記成形室は、前記上型が固定される天面と、前記
上型及び下型を前記光軸まわりに取り囲むように配置さ
れた側面とを有してなる。このとき、光軸方向が上下方
向となり、基部の温度変化による肉厚変化が生じやすい
が本発明により効果的に防止できる。
【0024】ここで、前記各面に少なくとも1つの温度
検出手段を設け、その検出結果を元に、各面の温度制御
を独立に行なうのが好ましい。そうすると、光学素子の
Tilt(傾き)をより確実に防止できる。なお、天面にも
温度検知手段を設けても良い。
【0025】本発明の具体的な態様では、前記温度調節
手段が前記基部の少なくとも一部を冷却する。より具体
的には、前記温度調節手段が前記基部の少なくとも一部
を水冷により冷却する。
【0026】本発明の具体的な態様による成形装置は、
前記基部に沿って温度調節用の流体を循環させる循環機
構を備えることを特徴とする。ここで、前記循環機構の
素材は、第1に熱伝導率が0.50以上であること、第2に
耐熱性として材料融点で600℃程度以上を有すること、
第3に加工性に富んでいること、などの条件下で選択さ
れる。これら総ての条件を満たすものとして銅が挙げら
れる。また、本発明においては、前記循環機構に循環さ
せる流体の流量を調節することにより温度調節を行なう
のが好ましい。この場合、流体そのものの温度を調整す
るよりも正確且つ容易に基部の温度調節を行なえる。な
お、循環させる流体の種類を選択することによって温度
調節を行なうこともできる。
【0027】本発明のさらに具体的な態様は、前記温度
調節手段が、前記流体の流量を調節する為の流量調節手
段を備えることを特徴とする。
【0028】本発明の第5の態様は、第2乃至第4の何
れかの態様による成形装置において、前記温度調節手段
が、前記基部の温度を検出する温度検出手段と、当該基
部に沿って温度調節用の流体を循環させる循環機構と、
前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記流体の流量
を制御するための流量制御手段と、を備えることを特徴
とする。
【0029】本発明の具体的な態様による成形装置は、
前記基部が、前記光学素子の光軸方向に延在する光軸方
向延在部を有していて、前記温度検出手段が、当該光軸
方向延在部における複数の部位の温度を検出するように
構成されていることを特徴とする。
【0030】具体的な態様では、成形型または成形型を
収めた母型を加熱する加熱手段を成形室内に設置する。
加熱手段としては、高周波誘導加熱コイル、胴型ヒータ
ーなどが用いられる。好ましくは、加熱手段として誘導
加熱コイルを用いる。高速昇温が可能で、また冷却速度
も速く生産効率の向上が図れるからである。なお、この
加熱手段は一対の型のそれぞれに配設するのが好まし
い。
【0031】本発明の第6の態様は、第2乃至第5の何
れかの態様による成形装置において、前記各成形型を誘
導加熱により加熱する加熱手段を備え、前記温度調節手
段が、前記基部と前記加熱手段との間に配置されて当該
加熱手段が発生する磁場を遮蔽する非磁性部材を含んで
構成されていることを特徴とする。なお、この温度調節
手段が前記循環機構の機能を兼ねていてもよい。
【0032】第6の態様によれば、非磁性部材が、加熱
手段が発生する磁場を遮蔽するから、仮に基部がステン
レスのように誘導加熱による影響を受ける素材からなる
場合であっても、当該基部の温度上昇を防止できる。非
磁性部材としては、銅からなる部材が挙げられる。
【0033】本発明の第7の態様は、相対向する一対の
成形型間に加熱軟化した被成形ガラス素材を配置し、こ
の被成形ガラス素材を前記一対の成形型によって押圧し
てガラス光学素子に成形する押圧成形工程を含むガラス
光学素子の成形方法であって、前記一対の成形型の一方
が、熱に起因して前記光学素子の光軸方向に位置変化す
るのを実質的に抑止する位置変化抑止工程を含むことを
特徴とする。
【0034】本発明の押圧成形工程では、成形型と被成
形素材の温度を予め等しくして押圧成形する所謂等温プ
レスを行ってもよいし、また被成形素材を、成形型の温
度よりも高温に予熱して押圧成形する所謂非等温プレス
を行ってもよい。好ましくは、該被成形ガラス素材をそ
の粘度で106〜108ポアズに相当する温度に予熱し、
同被成形ガラス素材の粘度で108〜1010ポアズ相当
の温度に加熱された成形型に供給して押圧成形を行なう
と、本発明の効果が顕著となる。
【0035】本発明の第8の態様は、第7の態様による
成形方法において、前記一対の成形型が、基部に固定さ
れた受型と、前記光学素子の光軸方向に可動する押型と
からなり、前記位置変化抑止工程には、前記基部の少な
くとも一部の温度を調節することにより前記受型の少な
くとも前記光軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度
調節工程が含まれることを特徴とする。
【0036】本発明の第9の態様は、第8の態様による
成形方法において、前記押圧成形工程では、前記押型を
予め定めた所定ストローク量繰り出すことを特徴とす
る。
【0037】本発明の第10の態様は、第8又は第9の
態様による成形方法において、前記温度調節工程では、
前記基部に沿って温度調節用の流体を循環させると共
に、当該基部の温度に基づいて前記流体の流量を調節す
ることを特徴とする。
【0038】本発明の具体的な態様による成形方法は、
前記基部が、前記光学素子の光軸方向に延在する光軸方
向延在部を有していて、前記温度調節工程では、当該光
軸方向延在部における複数の部分の温度を検出し、その
検出結果に基づいて当該基部の少なくとも一部の温度を
調節することを特徴とする。
【0039】本発明の第11の態様は、第8乃至第10
の何れかの態様による成形方法において、前記温度調整
工程では、前記基部の複数の部位における温度を検知す
ると共に、その検知結果に基づいて当該各部位の温度調
節を独立に行うことを特徴とする。
【0040】本発明を適用して成形される光学素子の種
類としては、レンズ形状の両凸、メニスカスなどがある
が、面精度を出すことが難しい凹メニスカスレンズ又は
両凹レンズの成形などには、本発明は好適に用いられ
る。球面、非球面いずれでも良い。径は25mm程度のもの
が成形できた。
【0041】本発明の第12の態様は、第7乃至第11
の何れかの態様による成形方法を用いる凹メニスカスレ
ンズの製造方法である。
【0042】本発明の第20の態様は、第7乃至第11
の何れかの態様による成形方法を用いる両凹レンズの製
造方法である。
【0043】なお、本発明の成形装置、及び成形方法に
よって成形する光学素子の肉厚公差(許容される肉厚誤
差)は、例えば±0.03mm程度である。また、被成形素材
としてガラスを用いる場合その硝種は特に限定されるも
のではなく、様々の屈折率或いはアッべ数を有する光学
素子を成形できる。
【0044】
【発明の実施の形態】図1は実施の形態による成形装置
を平面方向からみた場合の断面概略図である。このプレ
ス成形装置10は、加熱室20及び成形室30を備え
る。加熱室20と成形室30は通路40で相互に連通さ
れている。これら加熱室20、成形室30及び通路40
によって、外部から遮断された一つの密閉空間を構成し
ている。ステンレスその他の部材により、この密閉空間
の外壁を形成し、シーリング材によって、その気密性を
保証できる。
【0045】この密閉空間は、光学素子の成形に際して
非酸化性ガス雰囲気にされる。すなわち、図示しないガ
ス交換装置によって、該空間内の空気が排気され、代わ
りに非酸化性ガスが充填される。非酸化性ガスとして
は、好適には窒素ガスが用いられる。通路40が加熱室
20と成形室30との相互間における気体の交換を可能
にするから、プレス成型時においては加熱室20と成形
室30の気圧、ガス濃度及び温度は略一定にされる。但
し、通路40には気密バルブ41が設けられていて、作
業者による成形室30内の保守点検時には当該気密バル
ブ41が閉じることにより、加熱室20側の加熱ガスが
成形室30側に流出せぬ様になっている。
【0046】加熱室20は、プレスに先立って被成形ガ
ラス素材を加熱軟化する領域である。被成形ガラス素材
としては、プレス成形のために予備成形したもの(以
下、「ガラスプリフォーム」という。)を用いる。加熱
室20には、ガラス加熱装置22及びガラスプリフォー
ムGを供給するハンドラ(以下、供給ハンドラ23とい
う)が設置される。また、外部からガラスプリフォーム
Gを加熱室20内へ供給するための搬入部21が設置さ
れる。搬入部21は、気密性を維持しつつガラスプリフ
ォームを搬入するために、図示しない搬入室を備える。
外部から供給されたガラスプリフォームを搬入室に搬入
し、この内部を非酸化性ガスで充填した後に、加熱室2
0側の扉を開けて順次ガラスプリフォームGを内部へ搬
入する。
【0047】供給ハンドラ23は、搬入部21から搬入
されるガラスプリフォームGを、ガラス加熱装置22に
よる加熱領域に搬送し、更に、加熱後のガラスプリフォ
ームを成形室30へ搬送する。供給ハンドラ23は、そ
のアーム24の先端に浮上皿25を備え、その上でガラ
スプリフォームを浮上させながら保持する。実施例で
は、加熱室20内に固定される駆動部23aによって、
浮上皿25を備えるアーム24が水平に支承され、該ア
ーム24は略90℃の回転角をもって水平方向に回動さ
れる。また、アーム24は、駆動部23aを中心とした
半径方向に出退可能に構成されており、これによって、
保持したガラスプリフォームを成形室30に搬送可能に
する。
【0048】ガラス加熱装置22は、供給されたガラス
プリフォームGを所定の粘度に相応する温度にまで加熱
する。ガラスプリフォームを安定して一定の温度まで昇
温するために、抵抗素子を用いた抵抗加熱による加熱装
置を用いるのが好ましい。ガラス加熱装置22は、アー
ム24上に保持したガラスプリフォームの移動軌跡下に
設置されている。従って、アーム24によるガラスプリ
フォームの搬送中にガラスプリフォームを加熱できる。
なお、アーム24をガラス加熱装置22上で所定時間停
止し、ガラスを加熱するようにしてもよい。これらの事
項は、対象となるガラスの加熱に必要な時間に応じて決
定される。加熱室20から成形室30へのガラスプリフ
ォームの受け渡しは通路40を介して供給ハンドラ23
によって行われる。
【0049】一方、成形室30は、加熱室20において
予備加熱されたガラスプリフォームGをプレスして、所
望の形状のガラス光学素子(以下、光学ガラスGとい
う)を成形する領域である。1つの実施例においては、
オーステナイト系ステンレスSUS304を用いて成形室30
を構成する。成形室30には、プレス装置33、光学ガ
ラスの搬出用のハンドラ(以下、搬出ハンドラ32とい
う)、及びプレス成形された光学ガラスを外部へ搬出す
るための搬出部31が設置される。搬出部31は、成形
室30の気密性を維持しつつ光学ガラスを外部へ搬出す
るために、非酸化性ガスが充填された図示しない搬出室
を備えている。搬出ハンドラ32から渡された光学ガラ
スは、この搬出室に一旦搬入されてから外部に搬出され
る。
【0050】プレス装置33は、供給ハンドラ23によ
って加熱室20から搬送されるガラスプリフォームGを
受け入れ、これをプレス(押圧)して所望の形状の光学
ガラスを成形する。プレス装置33は、相対向する一対
の成形型を備えており、その間に供給されたガラスプリ
フォームGをこれら一対の成形型で押圧して光学ガラス
に成形する。成形型の周囲には、これを予熱する予熱手
段としての型加熱装置34が設置されている。型加熱装
置34の好ましい実施態様は、高周波誘導を用いた加熱
方式のものである。ガラスプリフォームのプレスに先立
って、成形型をこの型加熱装置34によって加熱し、所
定の温度に維持する。プレス時における成形型の温度
は、予熱されたガラスプリフォームの温度と略同じであ
っても、又はそれよりも低いものであってもよい。
【0051】搬出ハンドラ32は、プレス装置33によ
ってプレスされた光学ガラスを搬出部31へ受け渡す。
搬出ハンドラ32は、駆動部32aに対し回動自在に支
承されたアーム32bの先端に吸着パッド32cを備え
ている。吸着パッド32cは、成形型の下型上にある光
学ガラスを真空吸着し、搬出ハンドラ32による搬送を
可能にする。アーム32bの回動により吸着された光学
ガラスは、搬出部31下に搬送され、ここに設置された
図示しない昇降手段上に置かれる。アーム32bの待避
後に、該昇降手段が上昇され、光学ガラスは搬出部31
へ受け渡される。
【0052】次に、プレス装置33まわりの構成につい
て詳細に説明する。図2は、プレス装置33まわりを正
面からみた場合の構成を示す断面概略図である。同図に
示すように、プレス装置33は筒状に形成された上下一
対の母型51a,51bに、それぞれ上型(受型)52
a,下型(押型)52bを備えて構成される。上型52
a及び下型52bの互いの対向面には、成形する光学ガ
ラスの球面又は非球面に合わせて設計された成形面が形
成されている。供給ハンドラ23によって供給されるガ
ラスプリフォームGは、上型52aと下型52bの間に
配置され、そのガラスプリフォームGを一対の型52
a,52bで押圧して光学素子に成形する。
【0053】具体的には、上型52aが、成形室30に
固定され、下型52bが成形しようとする光学素子の光
軸方向(図2中、上下方向)に可動する。すなわち、供
給ハンドラ23によってガラスプリフォームGが供給さ
れた後は、下型52bが上型52aに向かって予め定め
た所定のストローク量繰り出すことで、ガラスプリフォ
ームGを押圧して光学ガラスに成形する。
【0054】また、上型52aと下型52bのそれぞれ
の周囲には、その型を予熱する型加熱装置34としての
誘導加熱コイル53,53が配設されている。誘導加熱
コイル53,53はプレス形成に先立って、一対の成形
型52a,52bを誘導加熱により所定温度に予熱す
る。1つの実施形態において、一対の成形型52a,5
2bは誘導加熱コイル53,53によって、ガラスプリ
フォームよりも低い温度(108〜1012ポアズの粘度
にするのに必要な温度)程度に予熱された後、ガラスプ
リフォームGを受け入れてこれをプレスする。
【0055】また、図2に示すように、成形室30は、
上型52aが固定される天面61と、上型52a及び下
型52bを光学素子の光軸まわりに取り囲むように配置
された側面62,62…と、天面61に対向する底面6
3とを備えて直方体状に構成されている。成形室30を
構成する当該各面のうち、側面62,62…は、成形し
ようとする光学ガラスの光軸方向(図2中、上下方向)
に延在している。
【0056】また、上型52aは、成形しようとする光
学素子の光軸方向に延在する支柱71によって天面61
に固定されている。この支柱71と成形室30とを含ん
で基部を構成している。なお、支柱71は天面61を貫
通しているが、当該貫通部分はフッ素ゴムなどからなる
シール部材72により気密封止されている。一方、下型
は、成形しようとする光学素子の光軸方向に延在する突
き上げ棒73を介して成形室30の外に配置された成形
型駆動機構80に繋がれている。突き上げ棒73は、成
形室30の底面63を貫通しているが、当該貫通部分
は、フッ素ゴムなどからなるシール部材74により気密
封止されている。
【0057】成形型駆動機構80は、繰り出し量(位置
制御)及びトルク制御が可能なサーボモータと、そのサ
ーボモータの制御プログラムを有する制御系とを備えて
構成されている。成形型駆動機構80では、制御系が制
御プログラムに従ってサーボモータを制御して突き上げ
棒73を光軸方向(図2中、上下方向)に進退させるこ
とにより、ガラスプリフォームの押圧力、押圧時間、及
び押圧のタイミングなどの緻密な制御が行われる。
【0058】また図2に示すように、誘導加熱コイル5
3,53と成形室30の内壁との間には、熱伝導率が高
く且つ非磁性体である銅からなる冷却板91,92…が
配置されている。これら冷却板91,92…は、成形室
30の総ての内壁に貼設されている。さらに当該各冷却
板91,92…の熱源側の表面にはそれぞれ同じく銅製
のパイプ91a,92a…が張り巡らされている。各パ
イプは半田付けにより冷却板に取り付けることができ
る。パイプ91a,92a…の設置箇所は成形室30の
内部でも外部でも良いがこれを内部に設置している。成
形室内部にパイプ91a,92a…を設けた方が、熱源
側であるから冷却効率が良い。
【0059】また図示はしないが、各パイプには、その
パイプを循環する冷却水(温度調節用の流体)の流量を
調節する為の流量調節バルブが取り付けられている。こ
れら冷却板91,92…,パイプ91a,92a…,及
び流量調節バルブによって本発明の循環機構を構成して
いる。なお、冷却板及びパイプの素材としては熱伝導率
の高い銅(熱伝導率=0.93)が最適といえるが、純アル
ミ(熱伝導率=0.56)なども候補として挙げられる。
【0060】また成形室30の天面61,側面62…,
及び底面63には、それぞれ温度センサ(図示せず)が
取り付けられている。各々の温度センサは、それが取り
付けられている面における複数の部位の温度を検出す
る。検出結果は、図示しない流量制御部に出力される。
流量制御部は温度センサからの検出結果に基づいて、流
量調節バルブの開き量を制御して各パイプを流れる冷却
水の流量を制御することにより、天面61、側面62
…、及び底面63の温度調節を個別に行う。なお、流量
制御部は、例えばソフトウエアによって実現できる。
【0061】以上の如く構成された成形装置の作用は次
の通りである。供給ハンドラ23は、浮上皿25にて浮
上保持している加熱軟化したガラスプリフォームを上型
52aと下型52bの間に素早く移動させる。この状態
で、アーム24がその長手方向の中心線に沿って2つに
分割する。これにより、ガラスプリフォームが下型52
bに落下供給される。このとき、上型52a及び下型5
2cは誘導加熱コイル53,53によって所定の温度に
予熱されている。その後、分割したアーム24は再び閉
じて、加熱室20側に素早く後退する。なお、プリフォ
ームを下型52bへ落下供給する際、該プリフォームを
下型52bの成形面の中央に位置決めするセンタリング
手段を備えるのが好ましい。
【0062】次いで、プリフォーム載せた下型52bは
成形型駆動機構80による駆動によって上型52aに向
かい素早く上昇する。その後、上下一対の型52a,5
2bによってプリフォームを押圧成形して凹メニスカス
レンズや両凹レンズなどの光学素子に成形する(押圧成
形工程)。しかる後、図示しない型冷却手段(好ましく
は不活性ガス吹き付けによる冷却)によって一対の型5
2a,52b及び光学素子を所定の温度(例えばガラス
歪点付近)まで加圧しながら降温させる。かくして、所
定の光学性能及び形状精度を有した光学ガラスを得る。
【0063】ガラスプリフォームを連続して押圧成形す
る際には、型52a,52bの温度が高温(例えば600
℃程度)になると共に、その熱放散により周辺雰囲気の
温度も高温となる。そこで、押圧成形工程中には、各パ
イプ91a,92a…に冷却水を循環させて各冷却板を
冷却することで、当該各冷却板が誘導加熱コイル53,
53及びガラスププリフォームからの放射熱を遮断する
(温度調節工程)。これにより、成形型52a,52b
の熱変形が抑えられる。また冷却板91,92…は非磁
性体からなるので、誘導加熱コイル53,53が発生す
る磁場を遮蔽する。これにより、誘導加熱による影響を
受けるステンレスから構成された成形室30の温度上昇
を防止できる。なお、冷却板91,92…に導電性の高
い材料を用いるとさらに効果が高い。
【0064】具体的には、流量制御部が、温度センサか
らの検出結果に基づいて、成形室30の熱変形を回避
し、且つ天面61,側面62…,及び底面63の温度が
常に略等しく揃うように、当該各面別にその面に張り巡
らされたパイプに循環させる冷却水の流量を個別に制御
する。これにより、成形室30は上下左右の何れの方向
にも熱変形が抑えられる。また型52a,52bの周辺
部材の温度が立ち上げ時から時間と共に緩やかに上昇す
ることも確実に防止できる。その結果、Tiltや偏心等の
発生を防止して、精度の高い光学素子を得ることができ
る。従って、この成形装置は、精度高い肉厚と面精度の
制御、傾きの防止など、高精度な性能が要求される光学
素子の成形に好適である。
【0065】特に、成形室の温度を調節することにより
当該成形室に固定された受型52aの少なくとも光軸方
向(図2中、上下方向)の位置変化を実質的に抑止でき
る。また、下型の繰り出し量は光学素子の最終肉厚を左
右するが、下型52bを駆動する成形型駆動機構80が
成形室30の外に配置されているから、下型52bの位
置が成形室30の温度変化の影響を受けることはない。
従って、連続して押圧成形する過程で、一対の型52
a,52bどうしの少なくとも光軸方向の離間量が、熱
に起因して変化するのが実質的に抑止される。これによ
り、光学素子の少なくとも肉厚に誤差が生じることが回
避される。
【0066】また型52a,52bの周辺部材の緩やか
な昇温が防止され、プレス開始後の冷却時における型位
置制御が所望通りに行われ、且つ押圧力の大きさ、押圧
時間、押圧のタイミング等の緻密な制御を正確に行える
ようになるから、肉厚精度は勿論、面精度の向上も図ら
れるようになり、特に凹メニスカスレンズや両凹レンズ
の製造には好適である。さらにそのような緻密な制御
を、熱変形を考慮に入れなくてもできるようになるか
ら、成形型駆動機構80の制御系の簡素化が図られる。
【0067】以上のように本発明の成形装置によれば、
相対向する一対の型の一方を固定したまま、すなわち装
置の構造を過度に複雑化することなく、面精度、肉厚制
御、光軸の傾きなどが所望の仕様を満たす光学素子を効
率良く成形できる。すなわち、本発明の構成により、下
型の繰り出し量を成形室(固定部材)と同じ位置基準で
位置決めでき簡便である。また、凹メニスレンズや両凹
レンズのような高面精度を達成する難度の高い光学素子
であっても、下型の押圧力制御(繰り出し量やトルク)
を所望のパターンで行なうことができるため、これを困
難なく成形できる。
【0068】〔比較例1〕比較のために循環機構(冷却
板91,92…及びパイプ91a,92a…)及び流量
制御部を具備しない点を除けば上記と同様に構成された
成形装置を用いて、連続可動を行ったところ、光学素子
の肉厚精度及び傾き精度が悪化した。これは、成形を繰
り返すごとに基部としての成形室の温度が上昇し、該成
形室の寸法が変化した為であると考えられる。以下、こ
の原因を図3及び図4を参照して説明する。なお、図3
及び図4においては便宜上、上記実施の形態による成形
装置と同じ部分については同符号を付している。
【0069】光学素子の肉厚精度が悪化した要因として
は、連続可動を行う過程で図3中、想像線(破線)で示
すように、固定された上型52aの位置が時間と共に下
型から遠ざかる方向(図3中、上方向)に変位した為で
あると考えられる。これは主として、光学素子の光軸方
向に延在する側面62,62…が熱膨張したことに因る
と考えられる。下型の繰り出し量は一定であるから、こ
のような場合、押圧時における各成形型どうしの光軸方
向の離間量が増大し、結果として成形される光学素子の
肉厚が厚くなってしまう。
【0070】また、光学素子の傾き精度が悪化した要因
としては、連続可動を行う過程で図4中、想像線(破
線)で示すように、天面61が時間と共に水平位置に対
して傾斜した為であると考えられる。これは主として、
光学素子の光軸方向に延在する側面62,62…間で温
度差が生じた為であると考えられる。具体的には図4に
おいて、右側の側面62の方が左側の側面62よりも熱
源(誘導加熱コイル53)に近い為、これら左右の側面
が均等に膨張しない。すなわち、左側の側面の方が熱膨
張量が小さくなるので、結果的に天面61が左側に傾斜
したものと考えられる。このような場合、天面61に固
定された上型52aも傾斜するので、光学素子の光軸に
Tilt(傾き)が発生する。レンズの片面もしくは両面が
非球面形状である場合、傾き精度は特に厳しいものが要
求される。先のレンズ肉厚精度と同様、傾き精度を満た
す温度差管理も極めて重要となる。
【0071】以上からわかるように、光学素子の肉厚精
度に影響を及ぼさないように成形室30の温度を調整す
るのは勿論、成形室30を構成する各面間の温度差を低
減することも重要である。なお本発明では、成形室を構
成する各面61,62…,63の冷却回路を独立させ、
各々の面の温度調節を個別に行うこととしたので、上記
の問題の一切を回避できる。
【0072】〔実施例〕SUS304ステンレスからなる全高
700mmの成形室内でガラスプリフォームの押圧成形を
連続的に行った。押圧成形を連続的に行う過程で、成形
室の内壁に取り付けた銅製パイプに、20℃に保たれた水
を循環させることによって成形室の冷却を行った。そし
て、立ち上げからのレンズ間での肉厚の変化に注目した
ところ、2時間経過した時点で肉厚に+0.026mmの増加が
認められた。しかし、その後はこの数値を保ち肉厚スペ
ック(1.8±0.025)から外れることはなかった。なお、
立ち上げ時からの壁温度の上昇は2℃に抑えることがで
きた。
【0073】〔比較例2〕一方、成形室の冷却を行わず
に同様の成形室内ででガラスプリフォームの押圧成形を
連続的に行った。そして、立ち上げからのレンズ間での
肉厚の変化に注目したところ、立ち上げ時は肉厚スペッ
ク(1.8±0.025)に対し1.778とスペック内であった
が、時間の経過と共に肉厚傾向となり、2時間後は2.298
と大きくスペックから外れた。なお、これは成形室を構
成するSUS304ステンレスの熱膨張係数α=18.8×10-6
ら膨張量を計算で求めたものに略一致している。また、
立ち上げから略2時間が経過した時点で成形室内の壁温
度は40℃上昇した。
【0074】以上の実施例と比較例2を比較すると、特
にレンズ肉厚のスペックに対する成形室の温度管理が極
めて重要であることが判る。なお、成形室の壁の材質は
SUS304に限定されるものではないが、熱膨張係数の小さ
い素材で成形室を構成するのが有利であることは言うま
でもない。
【0075】〔変形例〕図5は、別の実施の形態による
成形装置におけるプレス装置まわりを正面からみた場合
の構成を示す断面概略図である。同図において、図2と
同様の構成部材には便宜上、同符号を付して重複する説
明を省略する。この成形装置では、循環機構が所謂ジャ
ケット構造をなしている。すなわち、成形室を構成する
各面には、それぞれ断面短冊状の空隙101a,102
a,103a…が形成されたジャケット部材101,1
02,103…が取り付けられている。各ジャケット部
材の空隙には図5中、紙面に垂直な方向に冷却液が循環
するようになっている。なお各ジャケット部材は、非磁
性体で且つ熱伝導率の高い銅から構成されている。循環
機構としてこのようなジャケット構造を採用した場合、
ジャケット部材そのものが冷却板としての機能を発揮す
るからより効率的な温度調整が行える。また、ジャケッ
ト部材が遮蔽部材としての機能を発揮するから、成形室
30の誘導加熱が防止される。
【0076】以上、本発明の好適な実施の形態について
説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、極め
て成形温度の高いプレス成形を行なった場合などに、本
発明の温度調節手段をもっても成形室の温度上昇を防止
しきれない場合には、成形室の温度変化に起因する肉厚
変動分をキャンセルするように下型の繰り出し量を予め
設定するようにしてもよい。下型の繰り出し量は成形型
駆動機構80の制御系のプログラムで設定できる。
【0077】また、プレス成形を行ないながら成形型5
2a,52b又はその近傍の温度検出を行ない、そこで
得られた温度情報を成形型駆動機構80の制御系にリア
ルタイムでフィードバックして下型の繰り出し量などを
決定してもよい。
【0078】また、光学素子の肉厚精度や面精度を向上
させると云う観点からは、当該光学素子の光軸方向に延
在する光軸方向延在部の温度調節が特に肝要である。本
発明で云う光軸方向延在部には、側面62…のみならず
支柱71や突き上げ棒73なども含まれるから、それら
支柱71や突き上げ棒73などにも温度センサを設ける
と共にその温度を調節して、それらの熱膨張及び熱収縮
を防止してもよい。さらに、それら支柱71や突き上げ
棒73などを含む光軸方向延在部の熱変位分を予め求め
ておき、連続的なプレス成形に先立って、その熱変位分
をキャンセルするように下型の繰り出し量を設定するよ
うにしてもよい。
【0079】また、上記実施の形態では、流量制御部に
よる自動制御でパイプ或いはジャケット部材に循環させ
る冷却水の流量を調節することとしたが、冷却水の流量
の調節は作業者が流量調節バルブ(流量調節手段)を操
作することによって行うこともできる。その場合は、各
面に対応する温度センサの検出結果が目視可能な形態で
成形室の外部に表示出力されるようにするのが好まし
い。そうすると、制御系の簡素化やコストダウンが図ら
れる。
【0080】
【発明の効果】本発明によれば、所望の肉厚精度、面精
度を満足した光学素子をプレス成形で高精度に実現でき
る。また本発明によれば、プレス後に研磨を要しない程
度に高精度に光学素子を成形するにあたり、面精度の得
にくい形状のものであっても該光学素子を一層高精度に
実現できる。さらに本発明によれば、光学素子を高精度
に成形する成形装置を簡素な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による成形装置を平面方向からみた
場合の断面概略図。
【図2】実施の形態による成形装置における成形型まわ
りの構成を示す断面概略図。
【図3】熱膨張によって上型の位置が変化する1つの態
様を説明する為の図。
【図4】熱膨張によって上型の位置が変化する別の態様
を説明する為の図。
【図5】別の実施の形態による成形装置における成形型
まわりの構成を示す断面概略図。
【符号の説明】
10…成形装置、33…成形型、52a…上型、52b
…下型、30…成形室、61…天面、62…壁面、71
…支柱、73…突き上げ棒、92…冷却板、92a…パ
イプ、G…ガラスプリフォーム;ガラス光学素子。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】相対向する一対の成形型間に加熱軟化した
    被成形ガラス素材を配置し、この被成形ガラス素材を前
    記一対の成形型で押圧してガラス光学素子に成形する成
    形装置において、 前記一対の成形型の一方が、熱に起因して前記光学素子
    の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止する位置変
    化抑止手段を備えることを特徴とする成形装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の成形装置において、 前記一対の成形型が、基部に固定された受型と、前記光
    学素子の光軸方向に可動する押型とからなり、 前記位置変化抑止手段が、前記基部の少なくとも一部の
    温度を調節することにより前記受型の少なくとも前記光
    軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度調節手段を備
    えることを特徴とする成形装置。
  3. 【請求項3】請求項2記載の成形装置において、 前記押型が前記受型に向かって予め定めた所定ストロー
    ク量繰り出すように構成されていることを特徴とする成
    形装置。
  4. 【請求項4】請求項2又は3記載の成形装置において、 前記基部が、前記受型及び押型を収容する成形室を構成
    していることを特徴とする成形装置。
  5. 【請求項5】請求項2乃至4の何れか記載の成形装置に
    おいて、 前記温度調節手段が、 前記基部の温度を検出する温度検出手段と、 当該基部に沿って温度調節用の流体を循環させる循環機
    構と、 前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記流体の流量
    を制御するための流量制御手段と、 を備えることを特徴とする成形装置。
  6. 【請求項6】請求項2乃至5の何れか記載の成形装置に
    おいて、 前記各成形型を誘導加熱により加熱する加熱手段を備
    え、 前記温度調節手段が、前記基部と前記加熱手段との間に
    配置されて当該加熱手段が発生する磁場を遮蔽する非磁
    性部材を含んで構成されていることを特徴とする成形装
    置。
  7. 【請求項7】相対向する一対の成形型間に加熱軟化した
    被成形ガラス素材を配置し、この被成形ガラス素材を前
    記一対の成形型によって押圧してガラス光学素子に成形
    する押圧成形工程を含むガラス光学素子の成形方法であ
    って、 前記一対の成形型の一方が、熱に起因して前記光学素子
    の光軸方向に位置変化するのを実質的に抑止する位置変
    化抑止工程を含むことを特徴とする成形方法。
  8. 【請求項8】請求項7記載の成形方法において、 前記一対の成形型が、基部に固定された受型と、前記光
    学素子の光軸方向に可動する押型とからなり、 前記位置変化抑止工程には、前記基部の少なくとも一部
    の温度を調節することにより前記受型の少なくとも前記
    光軸方向の位置変化を実質的に抑止する温度調節工程が
    含まれることを特徴とする成形方法。
  9. 【請求項9】請求項8記載の成形方法において、 前記押圧成形工程では、前記押型を予め定めた所定スト
    ローク量繰り出すことを特徴とする成形方法。
  10. 【請求項10】請求項8又は9記載の成形方法におい
    て、 前記温度調節工程では、 前記基部に沿って温度調節用の流体を循環させると共
    に、当該基部の温度に基づいて前記流体の流量を調節す
    ることを特徴とする成形方法。
  11. 【請求項11】請求項8乃至10の何れか記載の成形方
    法において、 前記温度調節工程では、前記基部の複数の部位における
    温度を検知すると共に、その検知結果に基づいて当該各
    部位の温度調節を独立に行うことを特徴とする成形方
    法。
  12. 【請求項12】請求項7乃至11の何れか記載の成形方
    法を用いる凹メニスカスレンズの製造方法。
  13. 【請求項13】請求項7乃至11の何れか記載の成形方
    法を用いる両凹レンズの製造方法。
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