JP4730696B2 - マークの表示方法およびその製品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は素材の表面またはめっきを施した表面に、レーザーマーキングで任意の文字、図柄等を加工し、マーク部にインキや塗料等で色付けする方法およびその製品に関する。製品はトイレ、洗面所、浴室、台所、各種施設の水廻りに取付けられる水栓器具製品で、給水・排水栓、給水・排水金具、衛生陶器付属金具、アクセサリー、手すり、その他周辺機器関係。
【0002】
【従来の技術】
金属や樹脂製品の素材の表面またはめっきを施した表面に、メーカー名や文字、図柄等を色付けして表示するマーク付けは、広い分野で行われている。従来の技術で一般的なものとしては、素材の表面またはめっきを施した表面に直接印刷して表示する方法や、切削、彫刻、エッチング等の方法で表面に凹部を形成したものや、成形時に表面に凹部を形成したものに、インキや塗料等を流し込んで表示する方法がある。また、一部では印刷したシール等を貼り付けて表示しているものもある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の、素材の表面またはめっきを施した表面に直接印刷して表示したものは、素材によっては密着性が弱いものがあり印刷の厚さも薄いため、使用中に剥がれたり摩擦や摩耗で擦り減って消えてしまうものがある。特に、めっき品への印刷は密着性が最も弱く表面を手入れする頻度も多いので、使用中に表示がなくなることも少なくない。また、印刷したシールを貼り付けたものも、印刷と同様の問題がある。
【0004】
また、切削、彫刻、エッチングや成形等で表面に凹部を形成したものに、インキや塗料等を流し込んだものは、色付けしたインキや塗装が凹部に埋もれるので密着性や耐摩耗性は良くなるが、凹部周辺にインキや塗料等がはみ出さない様に作業の工夫を要したり、凹部の加工を深くして流し込み後に表面の拭き取りをしたり表面全面の研削を行うため、加工コストが高くなる問題がある。また、切削や彫刻や成形の場合は加工できる工具の大きさに制限があり、エッチングの場合はエッチングによる腐食でマークを形成するので、いずれも細かく鮮明な線を表示することは難しい。
【0005】
以上の様な問題点から、素材の表面またはめっきを施した表面に直接印刷して表示したものや、印刷したシールを貼り付けたものは、密着性や耐摩耗性があまり要求されない箇所に限って使用したり、打刻、彫刻、エッチング、成形等で表示したものは、コストを考慮の上、簡単な文字、図柄等に限り使用する等の制約があるものが多い。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、素材の表面またはめっきを施した表面に、レーザーマーキングを施した箇所のみにインキや塗料等で色付けして、密着性、耐摩耗性に優れた、色付けされた表示が簡単にできる方法とその製品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、素材の上に複数層のめっきを施した表面にレーザーマーキングでめっき層の範囲内の深さで凹凸部を形成し、その上からインキまたは塗料で色付けするマークの表示方法であって、前記複数層のめっきはニッケルめっき層の上にクロムめっき層を施したものであり、レーザーマーキングで、前記クロムめっき層を除去し、さらにその下層の前記ニッケルめっき層を前記ニッケルめっき層の厚さの範囲内に留めて除去し、前記ニッケルめっき層の前記凹凸部の上からレーザーマーキングの形状と同一形状の色付けを行うことを特徴とする。
【0008】
この方法により、レーザーマーキングされた箇所はニッケルめっき層の範囲内の深さで表面が凹凸状になるように加工されているので、素材の表面が外気に露出することなく素材の耐食性を確保させながらも、形成された凹凸面によりインキや塗料との接触面積が増えて強いアンカー効果が得られることから、素材のめっきを施した表面とインキや塗料との間の密着性や耐摩耗性が格段に向上する。
【0009】
請求項2は、素材の上に複数層のめっきを施した表面にマスキングを施した後、その上からレーザーマーキングでマスキングを貫通し、且つめっき層の範囲内の深さで表面に凹凸部を形成し、その上からインクまたは塗料で色付けした後にマスキングを取り除くマークの表示方法であって、前記複数層のめっきはニッケルめっき層の上にクロムめっき層を施したものであり、レーザーマーキングで、前記クロムめっき層を除去し、さらにその下層の前記ニッケルめっき層を前記ニッケルめっき層の厚さの範囲内に留めて除去し、前記ニッケルめっき層の前記凹凸部の上からインクまたは塗料で色付けした後にマスキングを取り除くことで、レーザーマーキングの形状と同一形状の色付けを行うことを特徴とする。
【0010】
この方法により、レーザーマーキングと色付けの形状合わせや位置ずれの問題がなくなる。また、色付け後にマスキングを剥がすので、マスキング部へのインキや塗料等が付着しても問題ないので、色付けする方法を選択することができ、作業性も格段に向上し、コスト低減も可能となる。
また、レーザーマーキングによる凹部の形成範囲をニッケルめっき層の範囲としながら、色付けの厚さはマスキングの厚さで制御することが可能となる。
【0011】
請求項3は、前記マスキングの材質として、アルミ、ステンレス、ニッケル、銀等の金属類、エンビ、ポリエステル、アクリル等の樹脂類、和紙、洋紙等の紙類等、その他レーザー加工で貫通して下地の表面に凹凸部を形成できるものを使用し、上記マスキング材質をフィルム上にして、アクリルやエポキシその他の粘着剤を付けて、シートやテープ状にしたものを使用することを特徴とする。
この方法により、レーザーマーキングと色付けの形状合わせや位置ずれの問題がなくなる。また、色付け後にマスキングを剥がすので、マスキング部へのインキや塗料等が付着しても問題ないので、色付けする方法を選択することができ、作業性も格段に向上し、コスト低減も可能となる。
【0012】
請求項4は、前記樹脂類のマスキング材質で、樹脂類の場合に水やアルカリ溶液に溶けるレジストインキや塗料を使用することを特徴とする。
従って、レジストインキや塗料等を塗布したり印刷する方法を選択することにより、目的、用途に応じてマスキングの厚さを自由に変えることができ、マークのバリエーションが増やせる。
【0013】
また、請求項に示すように、請求項1からの方法は、水栓器具製品に任意の文字、図柄を色付けして表示するために適用できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
水栓器具製品の素材としては、金属類では銅合金、ステンレス、亜鉛ダイキャスト等や、樹脂類ではABS、ポリアセタール、ポリカーボネート等その他があり、表面処理としては生地品に研磨や羽布加工したものや、ニッケルクロムや金等の湿式めっきや、TiNやZrN等のイオンプレーティングによる乾式めっきや、エポキシ、ポリエステル等の塗装を施したものがある。
【0015】
本発明では、まず表示の目的と用途により、レーザーマーキングの加工条件と色付けの方法を決定する。レーザーマーキングで0.1〜1.0mm程度の深さの凹部を形成した後に、インキや塗料を流し込むか刷け塗り等の方法が良い。レーザーマーキングで凹部の深さは任意の深さで良く、色付けの厚さを任意に設定したい場合には、マスキングを使用して色付けを行う。レーザーマーキングの深さは目的に応じてその深さを設定し、色付けを厚くしたい場合は、マスキングを厚くしインキや塗料を流し込むか刷け塗り等の方法を選定し、色付けが薄くて良い場合は、マスキングを薄くし刷け塗りやべた印刷等の方法を選定すると良い。いずれの場合においても、必要とされる凹部の深さはレーザーマーキングの加工条件で、色付けの厚さはマスキングの厚さで制御することが可能となり、目的に合わせた組み合わせが自由に選定できるようになる。
【0016】
また、インキや塗料による色付けは部品加工の最終工程となるので、インキや塗料の選定に制約がなく、白、黒、青、赤、黄はもちろんのこと、金、銀、メタリック等、すべての色に対応することができる。更に色毎に作業を行えば多色の色付けも可能となる。
【0017】
【実施例】
本発明の実施例を以下に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではなく、本発明の技術的思考の範囲内で多くの改変をなしえることはもちろんである。
【0018】
水栓器具製品である水栓金具の部品のスパウトにめっきを施し、レーザーマーキング後印刷インキで色付けしたもので、レーザー加工深さ、密着性、耐摩耗性の評価を行った。スパウトの素材は黄銅鋳物品で、表面の研磨加工を行った後にニッケルクロムめっきを施した。色付けのインキはポリエステル系のインキを使用し、色付け後70℃×60分の乾燥を実施した。マークの書体は図1に示す、外径φ26mm、線幅1mmの手の形をした図柄のものとした。
評価方法としては、密着性はテープはく離試験を、耐摩耗性は往復運動摩耗試験を実施し評価した。また、密着性の一次評価はマーク完成後に行い、二次評価は煮沸試験後に行った。
【0019】
参考例1
めっきしたスパウトの先端上面部に、図1の図柄をレーザーマーキング加工した。レーザーマーキング装置は、(株)東芝製のYAGレーザマーカ LAY−724CC−1AB形を使用し、マーキングの加工条件は、Q−SWが2KHz、電流値が18A、マーキング速度が1000mm/S、マーク幅が1mm、ピッチ0.02mmで実施しの後、インキを流し込んで表示を完成した。レーザーマーキングでのマークの深さは0.1〜0.2mm程度の深さで凹状に加工されており、色付けされたマークの評価結果、一次、二次の密着性、耐摩耗性とも問題はなかった。マーク部の断面を図2に示す。
【0020】
実施例1
上記参考例1のレーザーマーキングの加工条件を変えて、色付けの方法を印刷に変えて実施した。マーキングの加工条件は、Q−SWが2KHz、電流値が14A、マーキング速度が200mm/Sで実施の後、レーザーのマーク位置に合わせて同じマークを位置がずれないように調整して印刷を実施した。レーザーマーキングでのマークの深さは2〜5μm程度の深さで凹凸状に加工されており、色付けされたマークの評価結果、一次、二次の密着性とも問題はなく、耐摩耗性も印刷のみの場合の数倍以上は確保されており問題はなかった。マーク部の断面を図3に示す。
【0021】
実施例2
上記参考例1にマスキングを追加し、レーザーマーキングの加工条件を変えて実施した。マスキングはエンビに粘着剤を貼ったシートで厚さが0.12mmのものを使用し、マーキングの加工条件は、Q−SWが2KHz、電流値が16、マーキング速度が200mm/Sで実施の後、インキを流し込みした後にマスキングを剥がして表示を完成した。レーザーマーキングでのマークの深さはマスキングを貫通して下地の表面から2〜5μm程度の深さに凹凸状に加工されており、色付けされたマークの評価結果、一次、二次の密着性、耐摩耗性とも問題はなかった。マスキングを剥がす前のマーク部の断面を図4に示す。
【0022】
実施例3
上記実施例のマスキングを変えて、色付けの方法を印刷に変えて実施した。マスキングはアルミに粘着剤を貼ったテープで厚さが0.08mmのものを使用し、マーキングの加工条件は、Q−SWが2KHz、電流値が16、マーキング速度が200mm/Sで実施の後、インキをべた印刷した後にマスキングを剥がして表示を完成した。レーザーマーキングでのマークの深さはマスキングを貫通して下地の表面から2〜5μm程度の深さに凹凸状に加工されており、色付けされたマークの評価結果は実施例3と同様に、一次、二次の密着性、耐摩耗性とも問題はなかった。実施例3、4からマスキングのテープ厚としては、0.01〜1mmが好ましい。
【0023】
実施例4
上記実施例のマスキングをアクリル樹脂系のアルカリはく離型レジスト塗料に変えて、色付けの方法を刷け塗りに変えて実施した。マスキングの塗料を厚さ10〜20μm程度に刷け塗りして乾燥した後、マーキングの加工条件は、Q−SWが2KHz、電流値が16、マーキング速度が200mm/Sで実施の後、インキを塗付した後にマスキングを水酸化ナトリウム3%水溶液で剥がして表示を完成した。レーザーマーキングでのマークの深さはマスキングを貫通して下地の表面から2〜5μm程度の深さに凹凸状に加工されており、色付けされたマークの評価結果は実施例と同様に、一次、二次の密着性、耐摩耗性とも問題はなかった。
【0024】
比較例1
上記実施例のめっき品に、印刷のみ実施したもので比較した。印刷の厚さは5〜10μm程度で、色付けされたマークの評価結果は、一次の密着性は問題なかったが、二次の密着性剥がれるものがあり、耐摩耗性でも磨耗してなくなる問題があった。
【0025】
【発明の効果】
本発明により、素材の表面またはめっきを施した表面にレーザーマーキングを施した箇所に、インキや塗料等で色付けすることで、視認性、耐食性、耐摩耗性、デザイン性に優れた、色付けされた表示が簡単に得られることになり、任意の文字、図柄等を表示している水栓器具製品へ広く応用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明実施例のマーク書体の図である。
【図2】 参考例1のマーク部の断面図である。
【図3】 本発明実施例1のマーク部の断面図である。
【図4】 本発明実施例2のマーク部の断面図である。

Claims (5)

  1. 素材の上に複数層のめっきを施した表面にレーザーマーキングでめっき層の範囲内の深さで凹凸部を形成し、その上からインキまたは塗料で色付けするマークの表示方法であって、前記複数層のめっきはニッケルめっき層の上にクロムめっき層を施したものであり、レーザーマーキングで、前記クロムめっき層を除去し、さらにその下層の前記ニッケルめっき層を前記ニッケルめっき層の厚さの範囲内に留めて除去し、前記ニッケルめっき層の前記凹凸部の上からレーザーマーキングの形状と同一形状の色付けを行うことを特徴とするマークの表示方法。
  2. 素材の上に複数層のめっきを施した表面にマスキングを施した後、その上からレーザーマーキングでマスキングを貫通し、且つめっき層の範囲内の深さで表面に凹凸部を形成し、その上からインクまたは塗料で色付けした後にマスキングを取り除くマークの表示方法であって、前記複数層のめっきはニッケルめっき層の上にクロムめっき層を施したものであり、レーザーマーキングで、前記クロムめっき層を除去し、さらにその下層の前記ニッケルめっき層を前記ニッケルめっき層の厚さの範囲内に留めて除去し、前記ニッケルめっき層の前記凹凸部の上からインクまたは塗料で色付けした後にマスキングを取り除くことで、レーザーマーキングの形状と同一形状の色付けを行うことを特徴とするマークの表示方法。
  3. 前記マスキングの材質として、アルミ、ステンレス、ニッケル、銀等の金属類、エンビ、ポリエステル、アクリル等の樹脂類、和紙、洋紙等の紙類等、その他レーザー加工で貫通して下地の表面に凹凸部を形成できるものを使用し、上記マスキング材質をフィルム上にして、アクリルやエポキシその他の粘着剤を付けて、シートやテープ状にしたものを使用することを特徴とする請求項2に記載のマークの表示方法。
  4. 前記樹脂類のマスキング材質で、樹脂類の場合に水やアルカリ溶液に溶けるレジストインキや塗料を使用することを特徴とする請求項3に記載のマークの表示方法。
  5. 請求項1から4のいずれかの方法で、任意の文字、図柄を色付けして表示した水栓器具製品。
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