JP4443357B2 - 多色発色レーザーマーキング用成形品、多色マーキング付き成形品及びレーザーマーキング方法 - Google Patents
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Description
また、黒色又は暗色系の地色に隠蔽された着色剤に由来する有彩色のマーキングを付与するための熱可塑性樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。
本発明は以下に示される。
1.成形部と、該成形部の表面に配された膜部とを備え、レーザー光を該膜部の表面に照射することにより、該膜部における照射部を除去して除去部を形成し、その後、同一波長のレーザー光を異なる照射条件で照射又は波長の異なるレーザー光を照射することにより、レーザー光照射の際の被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように、レーザー光を該除去部を通して上記成形部の露出面に照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされる多色発色レーザーマーキング用成形品であって、上記膜部は、有機材料及び/又は無機材料を含有する組成物〔Y〕を含み、上記成形部は、重合体(A)と、有彩色着色剤(B)と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質(C)とを含有する組成物〔X〕を含み、上記有彩色着色剤(B)の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に0.001〜3質量部であり、上記黒色物質(C)の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に0.01〜2質量部であることを特徴とする多色発色レーザーマーキング用成形品。
2.上記膜部の厚さが、0.1nm〜1mmである上記1に記載の多色発色レーザーマーキング用成形品。
3.上記重合体(A)が、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体を含む上記1又は2に記載の多色発色レーザーマーキング用成形品。
4.上記有彩色着色剤(B)の示差熱分析による発熱ピークが、360℃以上590℃以下の範囲である上記1乃至3のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用成形品。
5.上記1乃至4のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用成形品の膜部の表面にレーザー光を照射し、該膜部における照射部を除去して除去部を形成する工程と、同一波長のレーザー光を異なる照射条件で照射又は波長の異なるレーザー光を照射することにより、レーザー光照射の際の被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように、レーザー光を該除去部を通して該成形品の成形部の露出面に照射する工程と、を備え、該成形部の該露出面における照射部を、請求項1乃至4のいずれかに記載の有彩色着色剤(B)に由来する色を含む2以上の異なる色調にマーキングすることを特徴とする多色発色レーザーマーキング方法。
6.多色発色レーザーマーキング用成形品の成形部の露出面について、低エネルギー量のレーザー光の照射部が、上記1乃至4のいずれかに記載の有彩色着色剤(B)に由来する色にマーキングされ、且つ、高エネルギー量のレーザー光の照射部が、白色又は上記有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色にマーキングされる上記5記載の多色発色レーザーマーキング方法。
7.上記5又は6に記載の多色発色レーザーマーキング方法により、表面に2以上の異なる色調のマーキングが形成されていることを特徴とする多色マーキング付き成形品。
特に、膜部が金属等からなる膜、メタリック塗料等からなる膜等、表面がメタリック調である場合には、上記の色のマーキングがより鮮明である。
上記重合体(A)が、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体を含む場合には、マーキング部の発色をより鮮明なものとすることができる。
1.多色発色レーザーマーキング用成形品
本発明の多色発色レーザーマーキング用成形品は、重合体(A)と、有彩色着色剤(B)と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質(C)とを含有する組成物〔X〕を含む成形部と、この成形部の表面に配され且つ有機材料及び/又は無機材料を含む組成物〔Y〕を含む膜部とを備え、レーザー光を上記膜部の表面に照射することにより、膜部における照射部を除去し、その後、同一波長のレーザー光を異なる照射条件で照射又は波長の異なるレーザー光を照射することにより、レーザー光照射の際の被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように、レーザー光を除去部(除去空間)を通して上記成形部の露出面に照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされるものであり、上記組成物〔X〕に含有される有彩色着色剤(B)の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に0.001〜3質量部であり、上記黒色物質(C)の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に0.01〜2質量部である。即ち、本発明の多色発色レーザーマーキング用成形品1は、図1に示すように、成形部11と、この成形部11の表面に配された膜部12とを備える。
この成形部は、重合体(A)と、有彩色着色剤(B)と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質(C)とを含有する組成物〔X〕を含む。
また、上記硬化性の重合体等の硬化の時期は、特に限定されず、成形部を製造した時点、本発明の成形品に対してレーザー光を照射した時点等とすることができる。尚、上記硬化性の重合体等は、有彩色着色剤(B)、黒色物質(C)等と混練する時点、及び、成形部を製造する時点で硬化していなくてもよい。この場合は、未硬化の重合体、オリゴマー等を示すこととする。
ポリマーアロイとしては、PA/ゴム強化熱可塑性樹脂、PC/ゴム強化熱可塑性樹脂、PBT/ゴム強化熱可塑性樹脂、PC/PMMA等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
従って、上記重合体(A)としては、上記例示した重合体のうち、(1)単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたゴム強化熱可塑性樹脂、(2)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル単量体単位を30質量%以上含む共重合体等のアクリル系樹脂、(3)ポリアセタール樹脂、(4)ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。
上述の通り、ゴム強化共重合樹脂(A1)及びビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)の形成のために、(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましいことから、ゴム質重合体(a)の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(b1)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、このゴム強化共重合樹脂(A1)とビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化共重合樹脂が特に好ましい。尚、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を重合すると、通常、ビニル系単量体(b1)がゴム質重合体にグラフト重合しているグラフト重合体成分と、グラフトしていないビニル系単量体(b1)の(共)重合体成分との混合物等が得られる。
また、上記(共)重合体(A2)の形成に用いられるビニル系単量体(b2)としては、上記(メタ)アクリル酸エステル;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;マレイミド系化合物;エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、上述のビニル系単量体(b1)及びビニル系単量体(b2)は、同一の単量体を同量で又は異なる量で用いてもよいし、異なる種類の単量体を用いてもよい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのうち、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
(1)芳香族ビニル化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは5、更に好ましくは10、特に好ましくは20であり、同上限は、好ましくは100、更に好ましくは80である。
(2)シアン化ビニル化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは3、特に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは50、更に好ましくは40、特に好ましくは35である。
(3)(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは100、更に好ましくは95であり、特に好ましくは90である。
(4)マレイミド系化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは70、更に好ましくは60であり、特に好ましくは55である。
(5)官能基を有するビニル系化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは0.1、更に好ましくは0.5、特に好ましくは1であり、同上限は、好ましくは30、更に好ましくは25である。
ビニル系単量体の使用量が上述の範囲内にあると、用いる単量体の効果が十分に発揮されるので好ましい。
乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を乳化重合させる際の、ビニル系単量体(b1)の使用方法は、通常、以下の通りであるが、ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b1)を重合させる際のビニル系単量体(b1)の使用方法は、この使用方法に限定されない。尚、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b1)を全量一括して添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合の途中で添加してもよい。
溶液重合、塊状重合による製造方法は、公知の方法を適用することができる。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体としてアクリル系ゴムを用いたものは、アセトニトリルを使用する)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
尚、上記グラフト率(%)は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変化させることにより、容易に制御することができる。
上記(共)重合体(A2)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、成形加工性及び成形部における耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、極限粘度〔η〕は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)と同様、製造方法の調整により制御することができる。
上記ゴム強化熱可塑性樹脂の好ましい態様の例を以下(1)〜(4)に示す。
(1)ゴム質重合体の存在下、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られたゴム強化共重合樹脂。
(2)上述の(1)と、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
(3)上述の(1)と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
(4)ゴム質重合体の存在下、メタクリル酸メチルを用いず、芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物とを含む単量体を重合して得られたゴム強化共重合樹脂と、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
従って、上記アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを含む単量体を用いて得られた樹脂が特に好ましく、メタクリル酸メチル単量体単位を30質量%以上含む(共)重合体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が好ましい。
上記ポリアセタール樹脂は、構造あるいは分子量の異なるものを、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ジカルボン酸及びジアミンを縮重合させる場合のジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
尚、ポリアミド樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上記ポリアミド樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、ジオール及びジイソシアネートの反応の際には、鎖伸長剤を用いてもよい。
発熱ピークを示す温度が上記範囲にある有彩色着色剤としては、フタロシアニン骨格を有する顔料又は染料(青〜緑色)、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料又は染料(橙〜赤色)、ジオキサジン骨格を有する顔料又は染料(紫色)、キナクリドン骨格を有する顔料又は染料(橙〜紫色)、キノフタロン骨格を有する顔料又は染料(黄〜赤色)、アンスラキノン骨格を有する顔料又は染料(黄〜青色)、ペリレン骨格を有する顔料又は染料(赤〜紫色)、ペリノン骨格を有する顔料又は染料(橙〜赤色)、金属錯体骨格を有する顔料又は染料(黄〜紫色)、インダンスロン系顔料(青〜緑色)、トリアリルカルボニウム系顔料(青色)、モノアゾ系顔料(黄〜緑色)、ジスアゾ系顔料(黄〜緑色)、イソインドリノン系顔料(黄〜紫色)、チオインジゴ系顔料(赤〜紫色)、アンスラピリドン系染料(黄色)等が挙げられる。尚、括弧内に着色剤の色を記載したが、一例である。
上記のうち、好ましい有彩色着色剤は、フタロシアニン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ジオキサジン骨格、キナクリドン骨格、キノフタロン骨格、アンスラキノン骨格、ペリレン骨格、金属錯体骨格等から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する着色剤であり、以下に具体的に例示する。
上記フタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤は、顔料又は染料である。
上記一般式(I)において、Mは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)又は2つの水素原子であることが好ましく、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又は亜鉛(Zn)が更に好ましく、銅(Cu)又はアルミニウム(Al)が特に好ましい。尚、Mが金属の場合、ハロゲン原子、OH等の配位子を有してもよい。
また、上記一般式(I)において、R1〜R16は、無置換の水素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;スルホン酸アミド基(−SO2NHR)、−SO3 −・NH3R+等の置換基(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基である。)が好ましく、R1〜R16のうちの複数の隣接するRが連結して芳香環を形成した基も好ましい。特に好ましくは、無置換の水素原子又はスルホン酸アミド基である。
上記フタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤として、好ましい具体的な構造を以下の(1)〜(6)に列挙する。このうち、(1)、(3)及び(4)が特に好ましい。
(1)上記一般式(I)におけるMがCuであり、且つ、R1〜R16が無置換の水素原子である銅フタロシアニン顔料。
(2)上記一般式(I)におけるMがCuであり、R1〜R16が、各々、独立して無置換の水素原子又はハロゲン原子であるハロゲン含有銅フタロシアニン顔料。尚、ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子が好ましい。
(3)上記一般式(I)におけるMがCuであり、R1〜R16のうちの4〜8個、好ましくは4個が、上記スルホン酸アミド基又は−SO3 −・NH3R+、好ましくはスルホン酸アミドである溶剤可溶型銅フタロシアニン染料。特に好ましい溶剤可溶型銅フタロシアニン染料の構造を、下記一般式(II)に示す。
上記一般式(II)において、各Rは、各々、独立して炭素数4〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
(4)上記一般式(I)におけるMがAlであり、且つ、R1〜R16が無置換の水素原子であるアルミニウムフタロシアニン顔料。Alは、配位子として−OH又は−Clを有しているものが好ましく、−OHを有しているものが更に好ましい。特に好ましいアルミニウムフタロシアニン顔料の構造を、以下に示す。
(6)上記一般式(I)におけるMがZnであり、且つ、R1〜R16が、各々、独立して無置換の水素原子又はハロゲン原子である亜鉛フタロシアニン顔料。
この亜鉛フタロシアニン顔料の構造を、下記一般式(III)に示す。
亜鉛フタロシアニン顔料としては、上記一般式(III)におけるR1〜R16がすべて水素原子である亜鉛フタロシアニン顔料が特に好ましい。
Ar及びAr’を構成する芳香族環は、芳香族性を有すれば、どのような環でもよいが、通常、5又は6員環の、単環又は2〜6縮合環からなる芳香環であり、O、S、N等のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アンスラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、イミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、チアゾール環、ジベンゾチオフェン環等が挙げられ、これらのうち、6員環が好ましく、6員環の単環が更に好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
上記芳香族環は置換基を有している方が好ましく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、アミノ基、−NHCOR’、−COR’及び−COOR’(但し、R’は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)が挙げられ、このうち、ハロゲン原子、特に塩素原子が好ましい。
上記ジオキサジン骨格を有する有彩色着色剤としては、上記一般式(V)において、置換基R17及びR18を有することが特に好ましい。R17及びR18は、ハロゲン原子又は−NHCOR’が好ましく、−NHCOR’が更に好ましい。また、R19〜R22は、ハロゲン原子、−NHCOR’、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基等が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシル基又は−NHCOR’が更に好ましい。
上記一般式(IX)で表される、キノフタロン骨格を有する有彩色着色剤としては、R28〜R30が無置換の水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基であり、R31及びR32が無置換の水素原子であり、且つ、R33〜R36がハロゲン原子である化合物が好ましい。
より好ましい着色剤は、R28及びR29が無置換の水素原子又はハロゲン原子であり、R30〜R32が無置換の水素原子であり、R33〜R36がハロゲン原子であり、且つ、X5〜X8がハロゲン原子である化合物である。この着色剤は、通常、顔料である。
特に好ましい着色剤は、R28及びR29が無置換の水素原子であり、R30〜R32が無置換の水素原子であり、R33〜R36がハロゲン原子(X9〜X12)であり、且つ、X5〜X8がハロゲン原子である化合物である。
上記一般式(XII)で表される化合物は、通常、黄〜青色の染料である。
上記一般式(XXI)で表される、ペリレン骨格を有する有彩色着色剤としては、R47及びR48が炭素数1〜12のアルキル基である着色剤が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基である着色剤が更に好ましい。
上記黒色物質(C)としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル100質量部及び黒色物質0.1質量部のみからなる黒色試験片に対し、出力31A、周波数5.5kHz、波長1,064nmのレーザー光を照射した場合に、照射部が白色又は黒色以外の色に変色するものが好ましい。
チタンブラックは、一般に、二酸化チタンを還元して得られるものである。上述のチタンブラックの平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm、更に好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μmであり、上限は、好ましくは2μm、更に好ましくは1.5μm、特に好ましくは1.0μm、最も好ましくは0.8μmである。
また、黒色酸化鉄は、一般に、Fe3O4又はFeO・Fe2O3で表される鉄の酸化物である。上述の黒色酸化鉄の平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm、更に好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μm、最も好ましくは0.3μmであり、上限は、好ましくは2μm、更に好ましくは1.5μm、特に好ましくは1.0μm、最も好ましくは0.8μmである。
上記白色系物質としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記帯電防止剤の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.5〜10質量部である。
上記有機系難燃剤としては、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ブロム化ポリスチレン樹脂、ブロム化架橋ポリスチレン樹脂、ブロム化ビスフェノールシアヌレート樹脂、ブロム化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー、ブロム化アルキルトリアジン化合物等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素と窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記難燃剤の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
上記耐候剤の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜5質量部である。
上記充填材の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは0.5〜30質量部である。
上記抗菌剤の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜10質量部である。
この膜部は、上記成形部の表面に配され且つ有機材料及び/又は無機材料を含有する組成物〔Y〕を主成分とするものである。尚、この組成物〔Y〕は、複数成分を含んでもよいし、単一成分のみからなるものであってもよい。上記複数成分とは、有機材料又は無機材料を各々2種以上用いる場合、並びに、有機材料及び無機材料を組み合わせて用いる場合をいう。尚、上記膜部は、上記成形部の全表面にあってよいし、一部の表面にあってもよい。また、上記膜部の数は特に限定されない。
金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、金、銀、パラジウム、インジウム、ルテニウム、鉄、白金、シリコン等が挙げられる。
合金としては、銅・ニッケル合金、銅・スズ合金、銅・亜鉛合金、鉄・ニッケル合金、クロム・ニッケル合金、ニッケル・コバルト合金、ニッケル・コバルト・リン合金、スズ・コバルト合金、アルミニウム・亜鉛合金、アルミニウム・銅合金、アルミニウム・マンガン合金、アルミニウム・シリコン合金、アルニミウム・マグネシウム合金、アルニミウム・シリコン・マグネシウム合金、アルニミウム・亜鉛・マグネシウム合金等が挙げられる。
上記組成物〔Y〕を用いて、膜部を形成する際には、上記組成物〔Y〕を成形部表面の所定の位置に対して、塗装(塗工、印刷、吹き付け等)、転写、メッキ、気相処理(蒸着、イオンプレーティング、スパッタ、プラズマ処理等)等より選択される。尚、上記膜部は、組成物〔Y〕を主成分とするものであれば、1層のみであってよいし、同一組成の2層以上で構成されてもよいし、異なる組成で積層されたものであってもよい。
本発明の多色発色レーザーマーキング方法は、上記成形品の膜部の表面に、レーザー光を照射し、膜部における照射部を除去する工程(以下、「工程(I)」ともいう。)と、同一波長のレーザー光を異なる照射条件で照射又は波長の異なるレーザー光を照射することにより、レーザー光照射の際の被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように、レーザー光を除去部を通して上記成形品の成形部の露出面に照射する工程(以下、「工程(II)」ともいう。)とを備え、成形部の露出面における照射部を、上記有彩色着色剤(B)に由来する色を含む2以上の異なる色調にマーキングすることを特徴とする。
一般的に、レーザー光照射の際の被照射物に対する「エネルギー量」は、レーザー光の照射条件に依存する。具体的には、照射するレーザー光の種類、波長、パルス幅、周波数、出力の他、照射時間、照射面積、光源から成形品までの距離と角度、照射方法等を変えることにより、「被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように」レーザー光を照射することができる。具体的には、波長の異なるレーザー光を用いる場合のみならず、同一波長のレーザー光を用い、照射時間等の他の照射条件が異なる場合も、異なるエネルギー量とすることができる。また、照射条件を同一として、1回照射の場合、及び、2回以上照射の場合において、被照射物に対するエネルギー量は異なり、この場合、照射時間の長い後者の方が「高いエネルギー量」となる。
照射するレーザー光の種類は特に限定されず、100〜2,000nmの範囲の波長を有するレーザーを発することができるものであれば、気体、固体、半導体、色素、エキシマー及び自由電子のいずれでもよい。
気体レーザーとしては、ヘリウム・ネオンレーザー、希ガスイオンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、金属蒸気レーザー、炭酸ガスレーザー等が挙げられる。
固体レーザーとしては、ルビーレーザー、ネオジウムレーザー、波長可変固体レーザー等が挙げられる。
半導体レーザーとしては、無機でも有機でもよい。無機の半導体レーザーとしては、GaAs/GaAlAs系、InGaAs系、InP系等が挙げられる。
また、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF等の半導体レーザー励起固体レーザーを用いることもできる。
上記例示したレーザーは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
一般的なレーザーマーキング用装置は、レーザー発振器、レーザー変調器、ハンドリングユニット、コントローラー等を備える。
上記成形部の露出面に対し、λ1及びλ2という2つの異なる波長のレーザー光を異なる位置に照射した場合(但し、λ1>λ2とする。)、波長λ1の(低エネルギーの)レーザー光の照射により上記有彩色着色剤(B)に由来する色のマーキングを、そして、波長λ2の(高エネルギーの)レーザー光の照射により白色又は上記有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色のマーキングを得ることができる。
上記λ1及びλ2は特に限定されないが、通常、100〜2,000nmの範囲にある。また、これらの差|λ1−λ2|は、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは200〜1,500nmである。
従って、異なる波長のレーザー光を発するレーザーを選択し、例えば、2つの異なる波長のレーザー光を成形部の異なる位置に照射した場合に、低エネルギーの、例えば、長波長のレーザー光の照射により上記有彩色着色剤(B)に由来する色のマーキングを、そして、高エネルギーの、例えば、短波長のレーザー光の照射により白色又は上記有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色のマーキングを得ることができる。
上記長波長のレーザー光の波長は、好ましくは1,064nmであり、上記短波長のレーザー光の波長は、好ましくは532nmである。
尚、本発明においては、上記有彩色着色剤(B)が360℃以上590℃以下の範囲に発熱ピークを有する場合に、特に、波長1,064nmのレーザー光を照射した場合に上記有彩色着色剤(B)に由来する色のマーキングを、波長532nmのレーザー光を照射した場合に白色又は上記有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色のマーキングを、いずれも鮮明に形成することができる。
また、上記成形部に、波長532nmのレーザー光を照射して得られる白色系マーキング部のLab値と、上記成形部に、波長1,064nmのレーザー光を照射して得られる有彩色のマーキング部のLab値と、から算出されるΔE2を、好ましくは3以上、より好ましくは3.5以上、更に好ましくは4〜50とすることができる。このΔE2は、大きいほど色調差が明瞭である。
尚、ΔE1及びΔE2は、下記方法により求めることができる。
ΔE1=√{(L1−L2)2+(a1−a2)2+(b1−b2)2}
上記式において、L1、a1及びb1は、波長532nmのレーザー光を照射した際に形成された白色マーキング部の値であり、L2、a2及びb2は、上記有彩色着色剤(B)を含まない配合で成形した試験片に対して波長1,064nmのレーザー光を照射した際に形成された白色マーキング部の値である。
また、ΔE2は、上記試験片に対して波長532nmのレーザー光を照射した際に形成された白色マーキング部、及び、同じ試験片の異なる位置に対して波長1,064nmmのレーザー光を照射した際に形成された有彩色マーキング部の各Lab値を測定し(後者をL3、a3及びb3とする。)、下記式に従い、算出することができる。
ΔE2=√{(L1−L3)2+(a1−a3)2+(b1−b3)2}
まず、成形部11と、この成形部11の表面に配された膜部12とを備える成形品の、膜部12の表面に対し、2つの異なるエネルギーを有するレーザー光を照射する(図2の〔a〕)。レーザー光の照射は同時に行ってよいし、別々に行ってもよい。これらのレーザー光の照射により、膜部における各照射部が除去され、除去部(除去空間)2が形成されると同時に、成形部が露出する(図2の〔b〕)。この露出面は、通常、成形部の地色を呈している。
その後、上記各レーザー光は、各除去部2を通って、成形部11の露出面に照射され(図2の〔c〕)、高エネルギーのレーザー光の照射部は、白色又は上記有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色にマーキング(図2における4)され、低エネルギーのレーザー光の照射部は、上記有彩色着色剤(B)に由来する色にマーキング(図2における3)される(図2の〔d〕)。
レーザー光の波長が異なると、レーザー光のエネルギーも異なることが一般的であるため、より低いエネルギーにおいてカーボンブラックを気化させ、上記有彩色着色剤(B)に由来する色のマーキングを、より高いエネルギーにおいて白色又はその有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色のマーキングを形成することができる。
異なる2種のエネルギーを有するレーザー光を成形品の表面に照射すると、エネルギーE1のレーザー光が照射された部分は、レーザー光の熱変換によりカーボンブラックが気化するのみであるため、有彩色着色剤(B)に由来する色にマーキングされ、また、エネルギーE2のレーザー光が照射された部分は、カーボンブラックを気化し、更に、その有彩色着色剤(B)の一部又は全部を分解、飛散等させることによって、もとの有彩色着色剤(B)の色と異なる色、例えば、白色、その有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色、又は、変色してその有彩色着色剤(B)と全く異なる色にマーキングされると考えられる。
更に、上記黒色物質(C)として黒色酸化鉄が含まれる成形品に、レーザー光が照射されると、成形品の照射部に存在する黒色酸化鉄が、赤みがかった白色に変色し、照射部における黒色の度合いが小さくなる、あるいは無色となる。
従って、上記黒色物質(C)としてチタンブラック、黒色酸化鉄等が含まれる成形品に、更に有色の着色剤が含まれている場合、カーボンブラックを用いた場合と同様のマーキングをすることができる。異なる2種のエネルギーを有するレーザー光を照射した場合も、カーボンブラックの場合と同様であり、異なる色調のレーザーマーキングを形成することができる。
従って、上記成形部の露出面において形成された白色マーキングの白色度は、JIS K7105等により評価することができる。この白色度は、色の白さの度合いを意味し、ある一定光量の光を対象物に照射したときの反射率により評価される。反射率は、ハンター白色度計等により測定することができる。ここで、反射率は、照射する光の種類(波長等)によって異なり、ハンター白色度計の場合は、光の3原色である青色光で測定を行う。本発明に係わる組成物〔X〕及びこれを含む成形部において得られた白色マーキングの白色度(%)は、酸化マグネシウムの反射光に対する強度の割合で表すことができる。人間の視覚による白さと白色度計による白色度とは必ずしも一致しないこともあるが、本発明に係わる組成物〔X〕及びこれを含む成形部において得られた白色マーキングは、白色度が低くても人間の目に白く見えればよい。しかしながら、白色度の目安としては、好ましくは55〜100%、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%である。
即ち、まず、成形品表面の大面積に、レーザー光を照射し、膜部のみを除去する。このときのレーザー光のエネルギーは、後に照射するレーザー光のエネルギー(e)よりも大きくても、同じでも、小さくてもよい。また、このときの成形部の露出面は、膜部が存在しないため、膜部を構成した成分に由来する色ではなく、成形部自身に由来する、黒色又は暗色系の色である。そして、成形部の露出面を形成した後、低エネルギーのレーザー光を照射することにより、有彩色着色剤(B)に由来する色のマーキング部を形成する。一方、高エネルギーのレーザー光を照射することにより、白色又は有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色のマーキング部を形成する。
また、レーザー光の照射によって、それ自身が消滅する又は変色する黒色物質(C)は、レーザー光の熱を吸収した後、瞬時に上記挙動を示すが、例えば、チタンブラック等は、レーザー光の熱により変色した際、蓄熱を伴うことがある。これによって、レーザー光の照射部が上記形状を有することとなる。
前者の例としては、レーザー光の照射によって、瞬時に溶解し、もとの大きさから変形する、例えば、大きくなることがある。この場合には、マーキング部の強度がより向上し、特に、マーキング部が凸部である場合には、より耐久性に優れる。このような効果を示す熱硬化性重合体は、粒状であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。
本発明の多色マーキング付き成形品は、上記の本発明の多色発色レーザーマーキング方法により、(膜部側の)表面に2以上の異なる色調のマーキングが形成されていることを特徴とする。マーキングの色は、上記有彩色着色剤(B)そのものの色、濃度変化の度合いが小さい色、又は、変色により色調が異なる色、あるいは、白色又はその着色剤に由来する色の濃度が低下した色等である。
図2の〔d〕の態様の多色マーキング付き成形品5は、成形部11と、この成形部11の表面に配された膜部12と、膜部が存在しない除去空間2a及び2bと、除去空間2aの底部であり且つ成形部11の露出面が有彩色着色剤(B)に由来する色にマーキングされたマーキング部3(以下、「有彩色マーキング部3」ともいう。)と、除去空間2bの底部であり且つ成形部11の露出面が白色又はその着色剤に由来する色の濃度が低下した色にマーキングされたマーキング部4(以下、「白色マーキング部4」ともいう。)とを備える。
尚、上記多色マーキング付き成形品を構成する重合体の種類によっては、成形部におけるレーザー光照射部が発泡している場合がある。特に、ポリアセタール樹脂、単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたスチレン系樹脂、単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたゴム強化熱可塑性樹脂等を用いた場合にはレーザー光照射部が発泡しやすい。レーザー光照射部が発泡部となると、レーザー光照射時の有彩色着色剤(B)の挙動によっては、レーザー光照射部(発泡部)とその周辺の未照射部との屈折率差が大きくなり、マーキングがより鮮明となることがある。特に、より高いエネルギーによって有彩色着色剤(B)が分解、飛散等することにより、白色又はその着色剤に由来する色の濃度が低下した色となった場合には、レーザー光照射部(発泡部)とその周辺の未照射部との屈折率差が大きいために、より鮮明なマーキングが形成された多色マーキング付き成形品とすることができる。
下記の原料成分を用い、表1に記載の配合処方に従って、含有される有彩色着色剤の種類別に5種の組成物を調製した。即ち、各原料成分をミキサーにより5分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出し、ペレット(組成物)を得た。その後、得られたペレットを十分に乾燥し、射出成形機(型名「EC−60」、東芝機械社製)により、「成形部」として、縦80mm、横55mm及び厚さ2.5mmの板状成形体(X−1)〜(X−5)を製造した。また、有彩色着色剤を含有しない配合による板状成形体(X−6)も製造した。
この重合体(A)として、以下の方法により得たゴム強化熱可塑性樹脂を用いた。即ち、還流冷却機、温度計及び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、初期重合成分としてポリブタジエンゴムラテックスを固形分換算で40部、イオン交換水65部、ロジン酸石鹸0.35部、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を投入し、その後、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.4部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合を行った。その後、インクレメント成分としてイオン交換水45部、ロジン酸石鹸0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を2時間かけて連続的に添加し、更に1時間かけて重合反応を完結させ、共重合体ラテックスを得た。この共重合体ラテックスに硫酸を加えて重合体成分を凝固させ、水洗、乾燥してゴム強化共重合樹脂(A1)を得た。
一方、還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、イオン交換水250部、ロジン酸カリウム3.0部、スチレン40部、アクリロニトリル15部、メタクリル酸メチル45部及びt−ドデシルメルカプタン0.1部を投入し、その後、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部、硫酸第1鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部をイオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。次いで、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を加えて重合を開始し、約1時間重合させて反応を完結した。得られた共重合体ラテックスに硫酸を加えて重合体成分を凝固させ、水洗、乾燥して重合体(A2)を得た。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)40%と、重合体(A2)60%とを混合し、50mmφ押出機を用い、シリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出してゴム強化熱可塑性樹脂をペレットとして得た。
以下に示す着色剤を用いた。尚、示差熱分析により測定された発熱ピーク温度を併記した。測定装置は、セイコー電子社製「TG−DTA320型(横型炉)」である。約3mgの試料をアルミニウム製の直径5mm×高さ2.5mmの皿型容器に均一に密に充填し、昇温速度を10℃/分として、空気中、流速200ml/分で測定した。尚、測定装置における温度の較正は、インジウム及びスズを用いて行った。また、重量の較正は、室温下、分銅を用いて行い、更に、シュウ酸カルシウムを用いて行った。発熱ピーク温度は、昇温曲線におけるピークトップにより決定した。
(1)着色剤(B1)
下記の構造を有するジオキサジン系顔料(紫色)を用いた。発熱ピーク温度は402℃である。
下記の構造を有するジケトピロロピロール系顔料(赤色)を用いた。発熱ピーク温度は550℃である。
下記の構造を有するアルミニウムフタロシアニン顔料(緑色)を用いた。発熱ピーク温度は581℃である。
下記の構造を有するペリノン系染料(赤色)を用いた。発熱ピーク温度はなかった。
下記の構造を有するアンスラキノン系染料(青色)を用いた。発熱ピーク温度はなかった。
三菱化学社製カーボンブラック「三菱カーボン#45」(商品名)を用いた。
実施例1
板状成形体(X−1)の表面に、膜厚10nmのCrメッキ膜を形成し、多色発色レーザーマーキング用成形品を得た。その後、ロフィン・バーゼル社製ダイオード励起型レーザーマーカー(型式「RSM30D」)を用い、1,064nmの波長のレーザー光を、表2に記載の条件にて、1回照射してメッキ膜を除去し、同じ位置にもう一度照射した。また、532nmの波長のレーザー光を、メッキ膜が除去された別の位置に照射した。各照射部の色を観察し、その結果を表2に併記した。表2において、実施例1の「10nm」は、Crメッキ膜の厚さを意味する。以下も同様である。
板状成形体(X−2)の表面に、膜厚10nmのAg蒸着膜層を形成した以外は、上記実施例1と同様にして多色発色レーザーマーキング用成形品の製造及び評価を行った。その結果を表2に併記した。
板状成形体(X−3)の表面に、武蔵ホルト社製[N−31(シルバーM)」の塗料を塗布し、膜厚30nmの皮膜層をスプレー塗装法により形成した以外は、上記実施例1と同様にして多色発色レーザーマーキング用成形品の製造及び評価を行った。その結果を表2に併記した。
実施例1で用いた板状成形体(X−1)に代えて板状成形体(X−4)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして多色発色レーザーマーキング用成形品の製造及び評価を行った。その結果を表2に併記した。
実施例2で用いた板状成形体(X−2)に代えて板状成形体(X−5)を用いた以外は、上記実施例2と同様にして多色発色レーザーマーキング用成形品の製造及び評価を行った。その結果を表2に併記した。
実施例3で用いた板状成形体(X−3)に代えて板状成形体(X−5)を用いた以外は、上記実施例3と同様にして多色発色レーザーマーキング用成形品の製造及び評価を行った。その結果を表2に併記した。
実施例1で用いた板状成形体(X−1)に代えて板状成形体(X−6)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして多色発色レーザーマーキング用成形品の製造及び評価を行った。その結果を表2に併記した。
一方、実施例1及び2は、膜部が金属成分からなるものであり、レーザー光の照射と同時に膜部が除去され、レーザー光の波長が1,064nmであるときに、成形部に含有される有彩色着色剤に由来する色のマーキングが、532nmであるときに、白色のマーキングが、それぞれ、鮮明に得られた。
Claims (7)
- 成形部と、該成形部の表面に配された膜部とを備え、レーザー光を該膜部の表面に照射することにより、該膜部における照射部を除去して除去部を形成し、その後、同一波長のレーザー光を異なる照射条件で照射又は波長の異なるレーザー光を照射することにより、レーザー光照射の際の被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように、レーザー光を該除去部を通して上記成形部の露出面に照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされる多色発色レーザーマーキング用成形品であって、
上記膜部は、有機材料及び/又は無機材料を含有する組成物〔Y〕を含み、
上記成形部は、重合体(A)と、有彩色着色剤(B)と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質(C)とを含有する組成物〔X〕を含み、
上記有彩色着色剤(B)の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に0.001〜3質量部であり、
上記黒色物質(C)の含有量は、上記重合体(A)を100質量部とした場合に0.01〜2質量部であることを特徴とする多色発色レーザーマーキング用成形品。 - 上記膜部の厚さが、0.1nm〜1mmである請求項1記載の多色発色レーザーマーキング用成形品。
- 上記重合体(A)が、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体を含む請求項1又は2に記載の多色発色レーザーマーキング用成形品。
- 上記有彩色着色剤(B)の示差熱分析による発熱ピークが、360℃以上590℃以下の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用成形品。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の多色発色レーザーマーキング用成形品の膜部の表面にレーザー光を照射し、該膜部における照射部を除去して除去部を形成する工程と、
同一波長のレーザー光を異なる照射条件で照射又は波長の異なるレーザー光を照射することにより、レーザー光照射の際の被照射物に対するエネルギー量が2以上の異なるエネルギー量となるように、レーザー光を該除去部を通して該成形品の成形部の露出面に照射する工程と、を備え、
該成形部の該露出面における照射部を、請求項1乃至4のいずれかに記載の有彩色着色剤(B)に由来する色を含む2以上の異なる色調にマーキングすることを特徴とする多色発色レーザーマーキング方法。 - 多色発色レーザーマーキング用成形品の成形部の露出面について、低エネルギー量のレーザー光の照射部が、請求項1乃至4のいずれかに記載の有彩色着色剤(B)に由来する色にマーキングされ、且つ、高エネルギー量のレーザー光の照射部が、白色又は上記有彩色着色剤(B)に由来する色の濃度が低下した色にマーキングされる請求項5記載の多色発色レーザーマーキング方法。
- 請求項5又は6に記載の多色発色レーザーマーキング方法により、表面に2以上の異なる色調のマーキングが形成されていることを特徴とする多色マーキング付き成形品。
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