JP4729449B2 - 建設機械の圧縮機 - Google Patents
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Description
このような空気調和機は、一般的に、空気調和機を流れる冷媒の圧力を、圧縮機によって切り換えることで、車両キャブの室内空間の冷暖房を行う。
例えば、特許文献1には、上述した車両に搭載される空気調和装置の電磁クラッチおよび圧縮機に関して、クラッチ連結時における騒音やエンジン等にかかる負荷の急激な変化を抑制することが可能な構成が開示されている。
すなわち、上記公報に開示された圧縮機は、クラッチ連結時における騒音や衝撃を低減することを目的とするものであり、回転部と固定部との間に形成される隙間への土砂埃の浸入を抑制するための措置としては、隙間の開口部分が後進方向に向くように圧縮機を配置した以外には特に考慮されていない。
ここで、上記回転部とは、建設機械に搭載されたエンジン等の回転駆動源からの回転駆動力が伝達されて回転するプーリやプーリとともに回転するクラッチ板等が含まれる。また、上記固定部としては、電磁クラッチを構成するステータや上記クラッチ板を収納するケース等が含まれる。さらに、電磁クラッチは、回転部に含まれるクラッチ板とシャフトに一体化された被動作板とを連結することで、回転部の回転駆動力を間接的にシャフトへと伝達する。
一方、建設機械に搭載された圧縮機の場合には、一般的に、自動車よりも車速が遅く、作業時における平均車速は前進よりも後進の方が大きい。しかも、基本的に建設機械が作業を行う場所としては、採掘現場や工事現場等のような土砂埃が大量に発生し易い環境であるため、自動車と同じように圧縮機を配置にしただけでは、回転部と固定部との間に形成される隙間への土砂埃の侵入を防ぐことはできないおそれがある。
これにより、土砂埃が上記隙間へ入り込むためには、例えば、カバー部材の背面側と回転部および固定部等との間に形成された隙間を通過する必要があるため、上記隙間への土砂埃等の侵入量を従来よりも大幅に低減することができる。この結果、自動車よりも過酷な環境で使用される建設機械に搭載された圧縮機であっても、回転部と固定部との間に形成され、本体部側に向かって開口する隙間への土砂埃等の侵入によって圧縮機において動作不良が発生し、例えば、エアコンの温度制御が適正に行われなくなる等の不具合の発生を回避することができる。
ここでは、回転部と固定部との間に形成される隙間がブルドーザ等の建設機械の前進方向とは反対の方向に向かって開口するように、圧縮機が配置されている。
これにより、建設機械に搭載されており、後進方向からも空気の流れが生じ得る圧縮機であっても、回転部と固定部との間に形成された隙間への土砂埃の侵入を効果的に抑制して、圧縮機における動作不良の発生を防止することができる。
ここでは、回転部と固定部との間に形成される略円環状の隙間を覆うカバー部材が、固定部の外径とほぼ同じ大きさの略円形になるように形成されている。
本発明の建設機械の圧縮機では、土砂埃の侵入を抑制するために設けられたカバー部材が、圧縮機の本体部側から突出することがないように取り付けられている。
これにより、圧縮機に対してカバー部材を取り付けた場合でも、カバー部材によって凹凸が形成されることで土砂埃が溜まり易くなることを防止して、回転部と固定部との間の隙間への土砂埃の侵入をさらに効果的に抑制することができる
ここで、回転部と固定部との間の隙間への土砂埃の侵入をより効果的に抑制するためには、この隙間を覆うカバー部材をできる限り近接配置することが好ましい。しかし、カバー部材を回転部と接触するまで近接配置してしまうと、カバー部材との接触が回転部の回転の抵抗となり、接触による騒音も発生するおそれがある。
これにより、回転部と固定部との間の隙間への土砂埃の侵入を効果的に抑制しつつ、回転部の回転を妨げることなく運転時における騒音の発生を防止することが可能な圧縮機を提供することができる。
[ブルドーザ1の構成]
本実施形態に係るコンプレッサ(建設機械の圧縮機)35は、図1に示すように、不整地において作業を行うブルドーザ(建設機械)1の車体フレーム3内に搭載されている。そして、ブルドーザ1は、主として、キャブ2、車体フレーム(エンジンルーム)3、作業機構6、走行装置7を備えている。
車体フレーム3は、作業機構6および走行装置7が取り付けられており、その上部にはキャブ2が載置されている。また、車体フレーム3は、内部にエンジン31等が設けられており、エンジン31において発生した回転駆動力が、後述する走行装置7のスプロケット73に伝達される。なお、この車体フレーム3の内部構成については、後段にて詳述する。
[車体フレーム3内部の構成]
車体フレーム3は、図2に示すように、内部に、エンジン31、トルクコンバータ32、トランスミッション33、エアコンユニット34、コンプレッサ35およびコンデンサ36等を格納している。
トルクコンバータ32は、オイルを介してエンジン31の動力をトランスミッション33の入力軸に対して伝達するものであって、車体フレーム3内における後ろ寄りに配置されている。
エアコンユニット34は、キャブ2内においてブルドーザ1の操作を行うオペレータの快適性を向上させるための冷暖房装置であって、キャブ2と車体フレーム3との境界部分付近に配置されている。
[コンプレッサ35の構成]
コンプレッサ35は、図3、図4および図5に示すように、主として、本体(本体部)51とプーリ部52とによって構成されており、より詳細には、シャフト50と、本体51と、プーリ52aと、電磁クラッチ53と、ベアリング54と、ステータ(固定部)55と、ロータ(回転部)56と、を備えている。
本体51は、上述したように、図示しないスクロールを格納しており、これを回転させることによってスクロール内に流入した冷媒を高温高圧の気体へと変換する。
プーリ52aは、図示しないベルトを介してエンジン31と接続されており、ベアリング54を介してエンジン31からの回転駆動力を受けて回転する。
ステータ55は、回転部としてのロータ56の径方向における内側に配置されており、電磁コイル53aが巻き付けられるステータコアの部分と、カバー(カバー部材)55aとによって構成されている。なお、このカバー55aについては、後段にて詳述する。
(カバー55aの構成)
カバー55aは、本体51とプーリ部52との間に配置されており、ロータ56の内周面とステータ55の外周面との間に形成された後進方向に向かって開口する略円環状の隙間Xの開口端側を覆う位置まで延伸している。なお、本実施形態では、隙間Xの大きさは、約0.3mmとなっている。
また、カバー55aは、略円環状の隙間Xに合わせて形成された略円形の板材であって、シャフト50を中心とする径方向における大きさは、シャフト50を中心とする円の径方向におけるロータ56の外周面までの距離と同程度になるように形成されている。
さらに、カバー55aは、図4に示すように、エンジン31からの回転駆動力を受けて回転するロータ56との間に、水平方向において約0.3mm程度の隙間Yを開けて取り付けられている。
[実施例1]
ここで、上記実施形態1で説明したカバー55a付きのコンプレッサ35と、従来のコンプレッサとで、クラッチ内部への土砂埃等のダストの侵入量を比較した実験結果より推定される稼働時間とクラッチの磨耗量との関係を、図6および図7を用いて説明する。
その実験結果としては、図6に示すように、従来のコンプレッサにおいてクラッチ内部に侵入したダスト(土砂埃)量が、0.305g、0.097g、0.125gであったのに対して、本発明を適用したコンプレッサにおいてクラッチ内部に侵入したダスト量は、0.057g、0.022g、0.023gと、約20%前後(18.7%、22.7%、18.4%)にまで軽減できることが分かった。
以上の実験結果から、本発明のように、ロータ56とステータ55との間に形成される隙間Xの開口部分を覆うようにカバー55aを設けて、クラッチ内部への土砂埃等のダストの侵入を効果的に抑制することで、クラッチの摩耗量を低減して、コンプレッサ35の寿命を延ばすことができる。
(1)
本実施形態のブルドーザ1のコンプレッサ35は、図2に示すエンジン31から回転駆動力が伝達されたプーリ52aとシャフト50とを電磁クラッチ53を介して接続して、エアコンユニット34に流れる冷媒の圧力を変化させる圧縮機であって、図4に示すように、プーリ52aの回転に伴って回転するロータ56と、この内周側に対向配置されたステータ55との間であって、本体51とプーリ52aとの間に形成される隙間Xの開口端側を覆うように、カバー55aを配置している。
本実施形態のブルドーザ1のコンプレッサ35は、図4に示すロータ56とステータ55との間に形成される隙間Xの開口端が、図3に示すように、ブルドーザ1の前進方向とは反対向き、つまり後進方向に向かって開口するように配置されている。
通常、自動車等に搭載されたコンプレッサでは、本実施形態のコンプレッサ35と同様に、車体の前進方向とは反対向きに隙間の開口端が向くように配置することで、隙間への空気の直接的な流入を防止して隙間へのダストの侵入を抑制している。しかし、ブルドーザ等の建設機械の場合には、採掘現場等の土砂埃が非常に多い環境下での作業になることや、自動車程の前進速度が速くなく、むしろ作業時には前進よりも後進の方が速度が大きい場合が多いことから、自動車と同じ向きになるようにコンプレッサを配置しただけでは、上記隙間へのダストの侵入を十分に抑制することは困難である。
これにより、上記隙間Xへの土砂埃等の侵入を効果的に抑制して、クラッチ部分における摩耗の進行が早まることを防止することができる。この結果、隙間Xへの土砂埃の侵入によるクラッチ部分における接続不良等の不具合の発生を効果的に防止することができる。
本実施形態のブルドーザ1のコンプレッサ35では、ロータ56とステータ55との間に形成される隙間Xの開口端側を覆うように配置されたカバー55aを、略円形の板材によって形成するとともに、図4に示すように、ロータ56の外径とほぼ同じ大きさの外径を有している。
(4)
本実施形態のブルドーザ1のコンプレッサ35では、ロータ56とステータ55との間に形成される隙間Xの開口端側を覆うように配置されたカバー55aが、図4に示すように、ロータ56の端部との間に隙間Yが形成されるように取り付けられている。
(5)
本実施形態のブルドーザ1のコンプレッサ35では、図2に示すように、車体フレーム3内において隣接配置されたエンジン31から回転駆動力がプーリ52aに対して伝達される。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、ブルドーザ1の後進方向に向かって、ロータ56とステータ55との間であって、プーリ部52を本体51との間に形成される略円環状の隙間Xが開口するようにコンプレッサ35を配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
(B)
上記実施形態では、ロータ56とステータ55との間に形成される隙間Xへの土砂埃等の侵入を抑制するカバー55aとして、略円形の板材を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
ただし、コンプレッサに対してカバーを取り付けた際に、コンプレッサに形成された凹凸部分に土砂埃等が溜まり易くなることを防止できるという点では、上記実施形態のように、ロータ略円形の部材をカバーとして用いることがより好ましい。
上記実施形態では、ステータ55の一部であるカバー55aの端部を延伸させて、ロータ56とステータ55との間に形成される略円環状の隙間Xの開口端を覆うように配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ステータの一部をカバーとして用いるのではなく、新たに別部材を設けて上記隙間Xの開口端を覆うように配置してもよい。
(D)
上記実施形態では、ロータ56とステータ55との間に形成される略水平方向の隙間X、略鉛直方向の隙間Yを、それぞれ0.3mmの大きさに設定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
(E)
上記実施形態では、固定部としてのステータ55の外周側に、回転部としてのロータ56が位置する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
(F)
上記実施形態では、ブルドーザ1に搭載されたコンプレッサ35を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
2 キャブ
3 車体フレーム(エンジンルーム)
6 作業機構
7 走行装置
31 エンジン
32 トルクコンバータ
33 トランスミッション
34 エアコンユニット
34a 冷媒配管
35 コンプレッサ(建設機械の圧縮機)
36 コンデンサ
50 シャフト
51 本体(本体部)
52 プーリ部
52a プーリ
53 電磁クラッチ
53a 電磁コイル
54 ベアリング
55 ステータ(固定部)
55a カバー(カバー部材)
56 ロータ(回転部)
60 ブレード
61 支持フレーム
62 油圧ブレードチルトシリンダ
63 油圧ブレードリフトシリンダ
70 履体
71 トラックフレーム
72 アイドラ
73 スプロケット
X 隙間
Y 隙間
Claims (5)
- 本体部とプーリ部とを備えた建設機械の圧縮機であって、
前記プーリ部は、
固定部と、
前記固定部の内周側または外周側を覆うように配置されており、回転駆動力を受けて回転する回転部と、
前記回転部の回転駆動力が伝達されて回転するシャフトと、
所定の電気信号を受信して、前記シャフトを回転させるために前記回転部と前記シャフトとを接続する電磁クラッチと、
前記固定部の外周面と前記回転部の内周面との間に形成され、前記本体部側に向かって開口する略円環状の第1の隙間を覆う板状のカバー部材と、
を有しており、
前記カバー部材は、前記回転部との間に第2の隙間が形成されるように配置されている、
建設機械の圧縮機。 - 前記回転部と前記固定部との間に形成される前記第1の隙間が、建設機械の後進方向に向かって開口するように配置されている、
請求項1に記載の建設機械の圧縮機。 - 前記カバー部材は、略円形であって、
前記カバー部材の外径は、前記回転部の外径とほぼ同じになるように形成されている、
請求項1または2に記載の建設機械の圧縮機。 - 前記第2の隙間の大きさは、前記第1の隙間の大きさと略同じである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建設機械の圧縮機。 - 前記カバー部材は、前記固定部の一部を延伸することによって形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の建設機械の圧縮機。
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