JP4729202B2 - 湿式摩擦クラッチ及び電磁クラッチ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のカップリングやデファレンシャル装置等に用いられる湿式摩擦クラッチ及び電磁クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平10−329562号公報に図10のような駆動力伝達装置301が記載されている。
【0003】
駆動力伝達装置301は、回転ケース303、インナーシャフト305、メインクラッチ307、ボールカム309、プレッシャープレート311、カムリング313、パイロットクラッチ315、アーマチャ317、電磁石319などから構成されている。
【0004】
駆動力伝達装置301は4輪駆動車において2輪駆動走行時に切り離される後輪側のプロペラシャフトを分断して配置されており、回転ケース303は前側のプロペラシャフトに連結され、インナーシャフト305は後側のプロペラシャフトに連結されている。
【0005】
回転ケース303はメインクラッチ307が連結されている円筒部材321と、ロータ323から構成されており、ロータ323は電磁石319の磁路の一部を構成し、円筒部材321は磁路からの磁束の漏洩を防止するためにステンレス鋼で作られている。
【0006】
メインクラッチ307は、円筒部材321とインナーシャフト305との間に配置された多板クラッチであり、ボールカム309は、インナーシャフト305に移動自在に連結されたプレッシャープレート311とカムリング313との間に設けられている。
【0007】
パイロットクラッチ315は多板クラッチからなり、アーマチャ317とロータ323とに挟まれている。
【0008】
この駆動力伝達装置301では、ロータ323、パイロットクラッチ315、アーマチャ317等によって電磁石319の磁路が磁力線325のように形成されており、電磁石319を励磁すると、磁力線325によってアーマチャ317が吸引されるため、パイロットクラッチ315を押圧して締結させる。
【0009】
パイロットクラッチ315が締結されると、パイロットトルクが生じてボールカム309にエンジンの駆動力が掛かり、発生したカムスラスト力によってメインクラッチ307が押圧され、駆動力伝達装置301が連結されて後輪側に駆動力が伝達され、車両は4輪駆動状態になる。
【0010】
また、電磁石319の励磁を停止すると、パイロットクラッチ315が開放されてボールカム309のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ307が開放されて駆動力伝達装置301の連結が解除され、後輪側が切り離されて車両は2輪駆動状態になる。
【0011】
多板クラッチからなるパイロットクラッチ315は、アウタプレート及びインナプレートの複数が交互に積層されることにより構成されている。また、アウタプレートは円筒部材321に係合するものであり、そのための係合突起が外周側に一定間隔で形成されている。インナプレートはカムリング313に係合するものであり、そのための係合突起が内周側に一定間隔で形成されている。
【0012】
パイロットクラッチ315は、電磁石319の磁力線325によってアーマチャ317が吸引されることにより、積層状態のアウタプレート及びインナプレートが密着して摩擦力が発生し、締結するものである。一方、パイロットクラッチ315が締結していないときには、アウタプレート及びインナプレートが相互に摺動するため、オイルによって潤滑する必要があり、回転ケース303内にはオイルが充填されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
パイロットクラッチ315では、電磁石319へ通電しない2輪駆動時においても、アウタプレート及びインナプレートが積層状態で摺動しているため、低温時などではオイルの粘性によって隣接しているクラッチ板の間で引きずりトルクが発生する恐れがある。この引きずりトルクがある程度以上になると、アウタプレート及びインナプレートが締結されたと同様な状態となり、パイロットクラッチ315にパイロットトルクが生じ、ボールカム309を介してメインクラッチ307が押圧力が作用して、後輪側に駆動力が伝達されてしまう恐れがある。
【0014】
このように必要のないときに後輪側に駆動力が伝達されてしまうと、駆動ロスとなって車両の走行性や燃費に影響を与えてしまう。
【0015】
そこで、本発明は、クラッチ板間の引きずりトルクを抑制することができ、不要時にクラッチ板が締結することがなく、車両の動力伝達機構(カップリング)等に適用した場合には、走行性に影響がなく、燃費を向上することのできる湿式摩擦クラッチ及び電磁クラッチを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の湿式摩擦クラッチは、一側と他側の各トルク伝達部材の間に配置された湿式摩擦クラッチであって、前記湿式摩擦クラッチは、一側と他側にそれぞれ連結され、円周方向に所定長さで延びる複数の円弧状のオイル保持部が板厚方向に打ち抜き形成されると共に、前記オイル保持部が軸方向に相互に連通し前記オイル保持部の内周側と外周側との摩擦面で相互に摺動するように重ね合わされたアウタープレート及びインナープレートからなり、隣接した前記アウタープレートと前記インナープレートのうち一方のプレートにおける前記円弧状のオイル保持部の円周方向端部の径方向幅を、他方のプレートにおける前記円弧状のオイル保持部の円周方向部の径方向幅より大きく形成することで、前記アウタープレートと前記インナープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせたことを特徴としている。
【0017】
通常、アウタープレートとインナープレートのオイル保持部に保持されたオイルによって、クラッチ板の間が潤滑されている。
【0018】
また、この発明では、隣接しているアウタープレート及びインナープレートのオイル保持部の形状が異なっているため、アウタープレート及びインナープレートの回転の際に、アウタープレート及びインナープレートのオイル保持部に動油圧効果が発生し、隣接しているアウタープレート及びインナープレートに動油圧効果によって離間作用が働く。このため、アウタープレートとインナープレート間の引きずりトルクを抑制することができる。
【0019】
従って、本発明の湿式摩擦クラッチを車両のカップリングやデファレンシャル装置のクラッチに用いた場合には、不要な動力が伝わることがなく、走行性を安定させることができると共に、駆動ロスが解消され燃費を向上することができる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記一方のプレートにおける前記円弧状のオイル保持部の径方向幅が、前記他方のプレートにおける前記円弧状の保持部の径方向幅よりも円周方向の所定長さ全てで幅広に形成され前記アウタープレートと前記インナープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせたことを特徴とし、請求項1の構成と同様な作用・効果を得ることができるのに加え、隣接する一方のプレートのオイル保持部を、他方のプレートのオイル保持部よりも幅広に設定してあるため、動油圧によって、幅広の部分でアウタープレートとインナープレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記一方のプレート前記オイル保持部の円周方向端部に外径方向に向かって放射状に延びる拡張部を設けて径方向幅を大きく形成して、前記アウタープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせていることを特徴とし、請求項1の構成と同様な作用・効果を得ることができるのに加え、隣接する一方のプレートのオイル保持部の端部に前記拡張部が形成されているため、動油圧によって、拡張部で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記一方のプレートの前記円弧状のオイル保持部の円周方向の両端部に、径方向に向かって前記円弧状のオイル保持部の一般部よりも幅広に膨らんだ膨張部を設けて径方向幅を大きく形成して、前記アウタープレートと前記インナープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせていることを特徴とし、請求項1の構成と同様な作用・効果を得ることができるのに加え、隣接する一方のプレートのオイル保持部の両端部に膨張部が形成されているため、動油圧によって、該膨張部で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0023】
請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の発明であって、オイル保持部の円周方向の両端部の縁部が前記オイル保持部の一般部の板厚よりも薄く設定してあることを特徴とし、請求項2〜4のいずれか一項の構成と同様な作用・効果を得ることができるのに加え、隣接する一方のプレートの両端部の縁部を一般部の板厚よりも薄く設定してあるため、動油圧によって、該両端部で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0025】
請求項の発明の電磁クラッチは、電磁石と、電磁石の磁力により吸引されるアーマチャと、電磁石の磁路内に配置された請求項1〜5の何れかに記載の湿式摩擦クラッチとを備えた電磁クラッチであって、前記オイル保持部が電磁石の磁路を形成するための透磁率低下手段としてのギャップ部となっていることを特徴としている。
【0026】
このように電磁石の磁路内に湿式摩擦クラッチを配置することにより、電磁石への通電によって湿式摩擦クラッチのプレートを締結する際、プレートに形成した透磁率低下手段により、磁路を短絡させることなく確実に形成することができる。
【0027】
また、この発明では、オイル保持部が透磁率低下手段としてのギャップ部となっているため、オイル保持部及びギャップ部を別個に形成する必要がなく、構造が簡単となると共に、別途透磁率低下手段を形成する必要がない分、プレートの磁路面積を確保することができるため、プレート締結のための磁束を大きくすることができ、プレートの締結を良好に行うことができる。
【0028】
さらに、プレートの磁路面積を確保できる分、電磁石やその電源(バッテリ)を小さくすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1〜図4によって、本発明の第1実施形態を組み込んだリヤデフ(デファレンシャル装置)1の説明をする。
【0030】
た、左右の方向はリヤデフ1を用いた車両及び図1での左右の方向であり、符号のない部材等は図示されていない。
【0031】
この車両は4輪駆動車であり、リヤデフ1は2輪駆動走行時に切り離される後輪側に配置されている。
【0032】
図1のように、リヤデフ1は、回転ケース3、デフケース5、ベベルギア式の差動機構7、クラッチ機構9、その一部を構成するロータ11などから構成されている。
【0033】
リヤデフ1はデフキャリヤに収容されており、このデフキャリヤにはオイル溜まりが設けられている。
【0034】
回転ケース3は、リングギア13と円筒部材15から構成されており、円筒部材15はプレスで加工され、リングギア13に溶接されている。
【0035】
リングギア13は大径と小径のボ−ルベアリング17,19によってデフケース5上に支持されている。また、リングギア13はヘリカルギアであり、後輪側プロペラシャフトに連結された相手側ヘリカルギアと噛み合っている。
【0036】
図1のように、回転ケース3はリングギア13によるトルク伝達だけを行って、部材の支持機能から開放されたフローティング構造になっている。
【0037】
また、リングギア13は、その捻れ角によって、車両の前進走行時には回転ケース3に右方向の噛み合いスラスト力を与え、後進走行時には左方向の噛み合いスラスト力を与える。
【0038】
ボ−ルベアリング17のアウターレース21はリングギア13の段差部23によって左方向に位置決めされており、インナーレース25は受圧部材27とデフケース5の段差部28とによって右方向に位置決めされている。
【0039】
また、ボ−ルベアリング19のアウターレース29はリングギア13の段差部31によって右方向に位置決めされており、インナーレース33はデフケース5の左ボス部35に装着されたスナップリング37によって左方向に位置決めされている。スナップリング37は、充分な位置決め機能を持ちながら、ある程度以上のスラスト力を受けると破壊するように、適度な強度が与えられている。
【0040】
差動機構7は、複数本のピニオンシャフト39、ピニオンギア41、左右のサイドギア43,45などから構成されている。
【0041】
各ピニオンシャフト39はデフケース5の回転中心軸から放射状に配置されており、それぞれの先端はデフケース5の係合孔47に係合し、スプリングピン49によって抜け止めを施されている。
【0042】
ピニオンギア41はピニオンシャフト39上に支承されており、デフケース5とピニオンギア41との間には、ピニオンギア41の遠心力及びサイドギア43,45との噛み合い反力を受ける球面ワッシャ51が配置されている。
【0043】
サイドギア43,45はそれぞれピニオンギア41と噛み合っており、各サイドギア43,45とデフケース5との間には、サイドギア43,45の噛み合い反力を受けるスラストワッシャ53がそれぞれ配置されている。
【0044】
サイドギア43,45は左右のドライブシャフトにそれぞれスプライン連結されており、各ドライブシャフトはデフケース5の左右のボス部35,55とデフキャリヤから外部に貫通し、継ぎ手を介して左右の後輪に連結されている。
【0045】
デフケース5は、左のボス部35をボ−ルベアリング74によってデフキャリヤに支承され、右のボス部55をボ−ルベアリング75とコア73を介してデフキャリヤに支承されている。
【0046】
リングギア13を回転させるエンジン(原動機)の駆動力は、下記のように、クラッチ機構9が連結されるとデフケース5に伝達される。デフケース5の回転はピニオンシャフト39からピニオンギア41を介して各サイドギア43,45に配分され、さらにドライブシャフトから左右の後輪側に伝達されて車両が4輪駆動状態になり、悪路の脱出性と走破性、発進性、加速性、車体の安定性などが大きく向上する。
【0047】
また、悪路などで後輪間に駆動抵抗差が生じると、エンジンの駆動力はピニオンギア41の自転によって左右の後輪に差動配分される。
【0048】
クラッチ機構9は、電磁石57、ロータ11、多板式のメインクラッチ59及びパイロットクラッチ(本実施形態の湿式摩擦クラッチ)61、カムリング63、ボールカム65(カム機構)、プレッシャープレート67、リターンスプリング69、アーマチャ71、コントローラなどから構成されている。
【0049】
電磁石57のコア73はデフキャリヤに固定されており、そのリード線は外部に引き出され、車載のバッテリに接続されている。
【0050】
ロータ11は磁性材料で作られており、スナップリング77によってデフケースの右ボス部55外周に固定され、軸方向に位置決めされている。また、ロータ11は回転ケース3の右側壁部材を兼ねている。
【0051】
メインクラッチ59は、回転ケース3(円筒部材15)とデフケース5の間に配置されている。そのアウタプレート79は円筒部材15の内周に設けられたスプライン部81に連結されており、インナプレート83はデフケース5の外周に設けられたスプライン部85に連結されている。
【0052】
パイロットクラッチ61は円筒部材15とカムリング63の間に配置されている。そのアウタプレート(クラッチ板)87は円筒部材15のスプライン部81に連結されており、インナプレート(クラッチ板)89はカムリング63の外周に設けられたスプライン部91に連結されている。
【0053】
また、スプライン部81は、円筒部材15をプレス加工するとき同時に加工されており、円筒部材15の右端部まで貫通している。
【0054】
アウタプレート87とインナプレート89は軸方向交互に配置されており、アーマチャ71にはインナプレート89が対向している。
【0055】
ボールカム65はカムリング63とプレッシャープレート67との間に配置されている。プレッシャープレート67はデフケース5のスプライン部85に連結されており、下記のように、ボールカム65のカムスラスト力を受けてメインクラッチ59を押圧する。
【0056】
カムリング63とロータ11との間には、ボールカム65のカム反力を受けるスラストベアリング93が配置されている。
【0057】
リターンスプリング69は、プレッシャープレート67とデフケース5との間に配置され、プレッシャープレート67をメインクラッチ59の連結解除方向に付勢している。
【0058】
アーマチャ71はリング状に形成されており、プレッシャープレート67とパイロットクラッチ61との間で軸方向移動自在に配置されている。また、アーマチャ71の内周はプレッシャープレート67の段差部94によってセンターリングされている。
【0059】
ロータ11、パイロットクラッチ61のアウタプレート87とインナプレート89、アーマチャ71によって電磁石57の磁路が構成されており、電磁石57を励磁するとこの磁路上に磁気ループ95が形成される。
【0060】
また、ロータ11と電磁石57のコア73との間には磁路の一部になる所定間隔のエアギャップ97,99が設けられている。ロータ11は、径方向の外側部分101と内側部分103とからなり、外側部分101と内側部分103とがブリッジ部107によって連結されている。ブリッジ部107は磁力の短絡防止効果を高めるために、軸方向の両側に凹部を形成し、薄くしてある。
【0061】
また、ロータ11とパイロットクラッチ61との間には、パイロットクラッチ61とロータ11との当たりを改善するワッシャ109が配置されている。このワッシャ109は、3個の爪111をロータ11の外周に形成された凹部113に折り込んで、ロータ11に取り付けられている。
【0062】
また、パイロットクラッチ61のアウタプレート87の内周とカムリング63との間には隙間115が設けられ、インナプレート89の外周と回転ケース3との間には隙間117が設けられ、回転ケース3とアーマチャ71の外周との間には隙間119が設けられており、それぞれの隙間115,117,119によって磁力の短絡防止効果がさらに向上している。これらの隙間115,117,119はオイル流路となり、パイロットクラッチ61、ボールカム65、メインクラッチ59などの潤滑性と冷却性が向上する。
【0063】
電磁石57、パイロットクラッチ61及びアーマチャ71によって、この実施形態の電磁クラッチが構成されている。
【0064】
パイロットクラッチ61は3枚のアウタプレート87と4枚のインナプレート89とが交互に積層されることにより構成されており、この積層状態でロータ11(電磁石57)とアーマチャ71との間に配置されている。これにより、パイロットクラッチ61は電磁石57とアーマチャ71とに挟まれるように設けられている。アウタプレート87及びインナプレート89は相互に摺動するように積層されるものである。
【0065】
図2、図3及び図4に示すように、アウタプレート87の外径側には、円筒部材15のスプライン部89と係合する係合突起135が形成される一方、インナプレート89の内径側には、カムリング63のスプライン部91と係合する係合突起137が形成されている。
【0066】
また、アウタプレート87及びインナプレート89には、オイル保持部131,133がそれぞれ形成されている。オイル保持部131,133は、所定の長さで円周方向に延びる円弧状となっており、アウタプレート87及びインナプレート89のそれぞれの円周方向に沿って複数が一定間隔で形成されている。
【0067】
オイル保持部131,133はアウタプレート87及びインナプレート89を板厚方向に円弧状に打ち抜くことにより形成されており、これにより、オイル保持部131,133はそれ自体で磁路の短絡を防止するギャップ部となっている。このようにオイル保持部131,133をギャップ部とすることにより、電磁石57の磁束を大きく確保することができ、電磁石57によるパイロットクラッチ61の締結を確実に行うことができる。
【0068】
オイル保持部131、133は略同一の長さとなっており、パイロットクラッチ61は隣接するプレート間でオイル保持部131,133が対向するように、アウタプレート87及びインナプレート89を重ね合わせることにより組み立てられる。従って、隣接したクラッチ板の間では、オイル保持部131,133が軸方向に連通した状態となる。このため、隣接したクラッチ板間でのオイルの流出入が円滑に行われる。
【0069】
アウタプレート87のオイル保持部131の幅に対し、インナプレート89のオイル保持部133は幅が大きくなっており、アウタプレート87及びインナプレート89の間では、オイル保持部131,133の面積が異なっている。オイル保持部131,133に保持或いは供給されたオイルは、パイロットクラッチ61の回転によって動油圧が発生すると、アウタプレート87のオイル保持部131に対し、面積が大きなインナプレート89のオイル保持部133からのオイル流出量が多くなる(動油圧効果)。この動油圧効果によって、アウタプレート87及びインナプレート89が離間される。このため、アウタプレート87及びインナプレート89の間の引きずりトルクを抑制することができる。
【0070】
コントローラは、路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて電磁石57の励磁、励磁電流の制御、励磁停止を行う。
【0071】
電磁石57が励磁されると、アーマチャ71が吸引され、ロータ11との間でパイロットクラッチ61を押圧し締結させる。
【0072】
パイロットクラッチ61が締結されると、パイロットクラッチ61によって回転ケース3に連結されたカムリング63と、デフケース5側のプレッシャープレート67とを介してボールカム65にエンジンの駆動力が掛かる。ボールカム65はこの駆動力を増幅しながらカムスラスト力に変換し、プレッシャープレート67を移動させ、受圧部材27との間でメインクラッチ59を押圧して締結させる。
【0073】
こうしてクラッチ機構9が連結されると、上記のように、リングギア13の回転はデフケース5に伝達され、その回転は差動機構7によって左右の後輪に配分され、車両が4輪駆動状態になる。
【0074】
このとき、電磁石57の励磁電流を制御すると、パイロットクラッチ61の滑りが変化してボールカム65のカムスラスト力が変わり、後輪側に伝達される駆動力が制御される。
【0075】
このような駆動力の制御を、例えば、旋回時に行うと旋回性と車体の安定性とを大きく向上させることができる。
【0076】
また、電磁石57の励磁を停止すると、パイロットクラッチ61が開放されてボールカム65のカムスラスト力が消失し、リターンスプリング69の付勢力によってプレッシャープレート67が右方に戻り、メインクラッチ59が開放されてクラッチ機構9の連結が解除され、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。
【0077】
左右のドライブシャフトがそれぞれ貫通するデフケース5のボス部35,55内周には螺旋状のオイル溝が設けられている。また、デフケース5には、メインクラッチ59と対応する部分に多数の開口が設けられており、回転ケース3には、パイロットクラッチ61と対応する部分に開口121,121が設けられている。
【0078】
また、回転ケース3(円筒部材15)の右端部側に配置されたパイロットクラッチ61とアーマチャ71の付近には、上記の隙間115,117,119が設けられている。
【0079】
回転ケース3の下部は、デフキャリヤに設けられているオイル溜まりに浸されており、このオイルは隙間115,117,119からパイロットクラッチ61、アーマチャ71とプレッシャープレート67との摺動部、ボールカム65、スラストベアリング93、メインクラッチ59、ボールベアリング17などに移動し、これらを潤滑・冷却する。
【0080】
また、オイルはデフケース5の回転に伴って螺旋状のオイル溝から内部に流入して差動機構7の各ギアの噛み合い部、球面ワッシャ51を潤滑・冷却し、さらに遠心力を受けて上記の開口からメインクラッチ59側に流出し、メインクラッチ59、ボ−ルベアリング17、ボールカム65、パイロットクラッチ61、スラストベアリング93などを潤滑・冷却し、隙間115,117,119と開口121,121から流出してオイル溜まりに戻る。
【0081】
また、ボ−ルベアリング17,19はリングギア13の回転によって跳ね掛けられたオイルによっても潤滑・冷却される。
【0082】
また、電磁石57は、オイルによって冷却され特性が安定すると共に、電磁石57の熱によってオイル溜まりのオイルと周辺のパイロットクラッチ61やボールカム65などが加温され、暖められたオイルが循環し、上記の各構成部材を暖めて、それぞれの機能を安定させる。
【0083】
また、エンジンとリヤデフ1との間で、例えば、ギアボックスや軸受けが焼き付きを起こしたような場合、後輪の走行回転によって回転ケース3のリングギア13が相手側ヘリカルギアより先行回転する状態になる。
【0084】
この状態では、リングギア13と相手側ヘリカルギアの間で伝達されるトルクの方向が後進走行と同じ方向になるから、上記のように、ヘリカルギアの噛み合いによって回転ケース3を左方へ移動させるスラスト力が生じる。
【0085】
また、上記のように、ボールベアリング19の位置決めをするスナップリング37は強度が適度に調整されているから、ボールベアリング19を介してこのスラスト力を受けるとスナップリング37が破壊され、回転ケース3が左に移動し、この移動によってパイロットクラッチ61のアウタプレート87が円筒部材15のスプライン部81から外れる。
【0086】
アウタプレート87がスプライン部81から外れると、パイロットクラッチ61を開放したときと同様に、ボールカム65のカムスラスト力が消失してメインクラッチ59が開放され、後輪側が切り離される。
【0087】
従って、4輪駆動状態で走行中に入力側に故障が生じても、自動的に後輪側が切り離されるから、故障モードが改善される。
【0088】
また、クラッチ機構9の連結が解除されているとき(2輪駆動状態)、パイロットクラッチ61のインナプレート89、プレッシャープレート67、アーマチャ71、カムリング63(ボールカム65)、スラストベアリング93、ロータ11はデフケース5と共に回転し、パイロットクラッチ61のアウタプレート87は回転ケース3と共に回転する。
【0089】
このような構成では、アーマチャ71に対向してアウタプレート87を配置すると、2輪駆動走行中にアウタプレート87からアーマチャ71に摩擦によって駆動力が伝達され、後輪側が連れ回り状態になり、この駆動ロスによってエンジンの燃費に影響を与える恐れがあるが、リヤデフ1では、上記のように、パイロットクラッチ61のインナプレート89がアーマチャ71と対向して配置されており、摩擦による駆動力の伝達が生じないから、後輪の連れ回りが防止され、駆動ロス等による燃費への影響が防止される。
【0090】
また、ロータ11を回転ケース3側に支持すると、2輪駆動走行中に、デフケース5側のカムリング63と回転ケース3側のロータ11の相対回転がスラストベアリング93に掛かり、耐久性に影響をあたえる恐れがあるが、ロータ11をデフケース5上で支持したリヤデフ1では、スラストベアリング93がこのような相対回転から開放され、耐久性が向上している。
【0091】
こうして、リヤデフ1が構成されている。
【0092】
上記のように、パイロットクラッチ61においては、アウタプレート87のオイル保持部131に対して、インナプレート89のオイル保持部133が幅広に形成されて面積が大きくなっているため、アウタプレート87及びインナプレート89の間で、オイルの動油圧効果が発生する。この動油圧効果によってアウタプレート87及びインナプレート89が離間されるため、アウタプレート87及びインナプレート89の間の引きずりトルクを抑制することができる。
【0093】
引きずりトルクを抑制することができるから、パイロットクラッチ61にパイロットトルクが発生することがなく、パイロットトルクによるボールカム65を介したメインクラッチ59の不用意な締結を防止することができる。このようにメインクラッチ59の不用意な締結がないため、2輪駆動時に4輪駆動となることがない。このため、走行性が安定し、駆動ロスを解消して燃費を向上することができる。
【0094】
また、オイル保持部131,133がアウタプレート87及びインナプレート89のギャップ部となっているため、オイル保持部131,133及びギャップ部を別個に形成する必要がなく、構造が簡単となる。
【0095】
また、このようにオイル保持部131,133を形成する必要がない分、アウタプレート87及びインナプレート89の磁路面積を確保することができる。このため、パイロットクラッチ61の締結のための磁束を大きくすることができ、その締結を良好に行うことができる。
【0096】
また、磁路面積を確保できる分、電磁石57やその電源(バッテリ)を小さくすることができるため、車載性が向上する。
【0097】
なお、この実施形態ではアウタプレート87のオイル保持部131に対して、インナプレート89のオイル保持部133が幅広に形成されて面積が大きくなっている例を示したが、インナプレート89のオイル保持部133に対して、アウタプレート87のオイル保持部131が幅広に形成してあっても同様の作用・効果を得ることができることは言うまでもない。
【0098】
[第2実施形態]
図5,図6によって第2実施形態を説明する。この実施形態は、前記第1実施形態とはオイル保持部143の形状が異なるものであり、その他の部分については前記第1実施形態と同様のため重複する説明を省略する。
【0099】
図5,6は、パイロットクラッチ61のアウタプレート87を示すものであり、外径側には、円筒部材15のスプライン部81と係合する係合突起135が形成されている。なお、インナプレート89は第1実施形態と同様なものが使用される。
【0100】
図5に示すように、アウタプレート87には、所定の長さのオイル保持部141,143が円周方向に沿って一定間隔で形成されている。オイル保持部141,143は電磁石57の磁路を形成するギャップ部としても機能するものであり、電磁石57の磁路を確保することが可能となっている。
【0101】
オイル保持部143はオイル保持部141の間に位置しており、オイル保持部141はインナプレート89のオイル保持部133と同様な円弧状となっている。これに対し、オイル保持部143は円弧状となっているのに加えて、その一側の端部に外径方向に向かって放射状に延びる拡張部143aが形成されている。
【0102】
拡張部143aはアウタプレート87の回転方向R1に対し、その反対側の端部に形成されるものであり、インナプレート89のオイル保持部133の形成領域よりも外側に位置するように延びている。従って、オイル保持部143はインナプレート89のオイル保持部133とは異なった形状となるものである。
【0103】
図6に示すように、アウタプレート87に対し、第1実施形態のインナプレート89を重ね合わせることによりパイロットクラッチ61が形成される。このとき、アウタプレート87及びインナプレート89は、オイル保持部133及び141,143が軸方向に連通するように重ね合わせられる。この積層状態で、円筒部材15の回転に伴ってアウタプレート89が矢印R1方向に回転してインナプレート89との間で差回転が発生すると、動油圧によってオイル保持部141,143内のオイルは矢印R1と反対の方向である矢印L1方向(図5参照)に流れる。なお、この流れはアウタプレート87の回転による遠心力によっても同様に起きるものである。
【0104】
オイル保持部143においては、矢印L1方向の端部に拡張部143aが形成されているため、オイルは方向転換して拡張部143aに流入する。拡張部143aに流入したオイルは、図6の矢印で示すように、隣接して積層されているインナプレート89に向かって流れ出るため、インナプレート89を押すような効果(動油圧効果)が発生する。これにより、インナプレート89がアウタプレート87から離間される。このため、アウタプレート87及びインナプレート89の間の引きずりトルクを抑制することができる。
【0105】
なお、この第2実施形態では、インナプレート87のオイル保持部143に拡張部143aを形成した例を示したが、アウタプレート89側のホイル保持部133に同様の拡張部143aを形成しても同様の作用・効果を得ることができることは言うまでもない。
【0106】
[第3実施形態]
図7によって第3実施形態を説明する。この実施形態は、第1実施形態とはオイル保持部145の形状が異なるものであり、その他の部分については前記第1実施形態と同様のため重複する説明を省略する。
【0107】
図7は、パイロットクラッチ61のインナプレート89を示すものであり、内径側には、カムリング63のスプライン部91と係合する係合突起137が形成されている。なお、アウタプレート87は第1実施形態と同様なもの(但し、オイル保持部131の幅は後述するインナプレート89のオイル保持部145の一般部と略同寸のもの)が使用される。
【0108】
インナプレート89には、所定長さのオイル保持部145が円周方向に沿って一定間隔で形成されている。オイル保持部145の全体はインナプレート89の外周に沿うように円弧状となっているが、その長さ方向の両端部には、径方向に膨張する膨張部145aが形成されている。膨張部145aはオイル保持部145の他の部分よりも幅が大きくなるものである。
【0109】
このインナプレート89に対し、前記アウタプレート87が積層されることによりパイロットクラッチ61が形成される。従って、インナプレート89のオイル保持部145とアウタプレート87のオイル保持部131とは形状及び面積が異なっている。積層はインナプレート89のオイル保持部145とアウタプレート87のオイル保持部131とが軸方向に連通するように行われ、オイル保持部145及び131は、電磁石57の磁路の短絡を防止するギャップ部としても作用する。
【0110】
この実施形態において、アウタプレート87及びインナプレート89が回転すると、インナプレート89のオイル保持部145の両端部に膨張部145aが形成されているため、アウタプレート87とインナプレート89との間に動油圧が発生する。この動油圧効果によって、アウタプレート87及びインナプレート89が離間されるため、アウタプレート87及びインナプレート89の間の引きずりトルクを抑制することができる。
【0111】
なお、この第3実施形態では、インナプレート89のオイル保持部145の両端部に膨張部145aを形成した例を示したが、アウタプレート87側のオイル保持部131の両端部に膨張部を形成しても、同様の作用・効果を得ることができることは言うまでもない。
【0112】
[第4実施形態]
図8及び図9によって第4実施形態を説明する。この実施形態は、前記第1実施形態とはオイル保持部147の形状が異なるものであり、その他の部分については前記第1実施形態と同様のため重複する説明を省略する。
【0113】
図8及び図9は、パイロットクラッチ61のインナプレート89を示すものであり、内径側には、カムリング63のスプライン部91と係合する係合突起137が形成されている。なお、アウタプレート87は第1実施形態と同様なもの(但し、オイル保持部131の幅は後述するインナプレート89のオイル保持部147の一般部と略同寸のもの)が使用される。
【0114】
インナプレート89には、所定長さのオイル保持部147が円周方向に沿って一定間隔で形成されている。オイル保持部147の全体はインナプレート89の外周に沿うように円弧状となっているが、その長さ方向の両端部の縁部147aがインナプレート89の一般部の板厚tよりも薄く設定してあるものである。
【0115】
具体的には、図9(a)、(b)に示すように、オイル保持部147の縁部147aがインナプレート89の一般部の板厚tよりも薄く設定して隣接するアウタプレート87との間に隙間が形成されている。このように、オイル保持部147の縁部147aと隣接するアウタプレート87との間に隙間を形成することにより、オイルを隙間部分に貯留することができ、アウタプレート87及びインナプレート89が回転すると、動油圧が発生し動油圧効果によって、インナプレート89及びアウタプレート87の間へオイルを導入する。
【0116】
また、図9(a)では、オイル保持部147の縁部147aとインナプレート89の外面89aとが斜面部149によって連設されている。オイルはこの斜面部149を流動してアウタプレート87及びインナプレート89との間に入るため、オイルをインナプレート89とアウタプレート87との摺動部に円滑に導入することができ、これにより、引きずりトルクを抑制することができる。
【0117】
一方、図9(b)は該縁部147aの異なる例を示しており、ここでは、オイル保持部147の両端のエッジ部151が円弧状となっている。図9(b)の構造においても図9(a)と同様にオイル保持部147のエッジ部151を円弧状とすることにより、オイルが円滑に流動することができる。このため、インナプレート89とアウタプレート87との摺動部にオイルを円滑に導入することができ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0118】
このインナプレート89に対し、前記アウタプレート87が積層されることによりパイロットクラッチ61が形成される。従って、インナプレート89のオイル保持部147とアウタプレート87のオイル保持部131とは形状及び面積が異なっている。積層はインナプレート89のオイル保持部147とアウタプレート87のオイル保持部131とが軸方向に連通するように行われ、オイル保持部147及び131は、電磁石57の磁路の短絡を防止するギャップ部としても作用する。
【0119】
従って、実施形態において、アウタプレート87及びインナプレート89が回転すると、インナプレート89のオイル保持部147の縁部147aが一般部の板厚保よりも薄く設定してあるため、アウタプレート87とインナプレート89との間に動油圧が発生すると、この動油圧効果によって、アウタプレート87及びインナプレート89が離間されるため、アウタプレート87及びインナプレート89の間の引きずりトルクを抑制することができる。
【0120】
なお、この第4実施形態では、インナプレート89のオイル保持部147の両端部の縁部147aがインナプレート89の一般部の板厚tよりも薄く設定した例を示したが、アウタプレート87側の両端部の縁部を同様に一般部の板厚保よりも薄く設定しても同様の作用・効果を得ることができることは言うまでもない。
【0121】
なお、前述の実施形態では、何れも本発明の湿式摩擦クラッチを電磁クラッチのパイロットクラッチに適用した例を示したが、これに限るものではなく、湿式クラッチを使用する装置全般において適用できることは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】
請求項1の発明では、隣接しているプレートのオイル保持部の形状が異なっており、プレートの間で動油圧効果が発生するため、隣接しているプレートを離間することができ、プレート間の引きずりトルクを抑制することができる
【0123】
請求項2の発明では、請求項1の発明の効果を有するのに加えて、隣接する一方のプレートのオイル保持部を、他方のオイル保持部よりも幅広に設定してあるため、動油圧によって、幅広の部分で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0124】
請求項3の発明では、請求項1の発明の効果を有するのに加えて、隣接する一方のプレートのオイル保持部の端部に拡張部に前記拡張部が形成されているため、動油圧によって、拡張部で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0125】
請求項4の発明では、請求項1の発明の効果を有するのに加えて、隣接する一方のプレートのオイル保持部の両端部に膨張部が形成されているため、動油圧によって、該膨張部で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0126】
請求項5の発明では、請求項2〜4の発明の効果を有するのに加えて、隣接する一方のプレートの両端部の縁部を一般部の板厚よりも薄く設定してあるため、動油圧によって、該両端部で両プレート間にオイルを円滑に導入でき、両プレートを確実に離間させ、引きずりトルクを抑制することができる。
【0128】
請求項の発明では、電磁石の磁路内に湿式摩擦クラッチを配置することにより、電磁石への通電によって湿式摩擦クラッチのプレートを締結する際、プレートに形成した透磁率低下手段により、磁路を短絡させることなく確実に形成することができる。
【0129】
また、この発明では、オイル保持部が透磁率低下手段としてのギャップ部となっているため、オイル保持部及びギャップ部を別個に形成する必要がなく、構造が簡単となると共に、別途透磁率低下手段を形成する必要がない分、プレートの磁路面積を確保することができるため、プレート締結のための磁束を大きくすることができ、プレートの締結を良好に行うことができる。
【0130】
さらに、プレートの磁路面積を確保できる分、電磁石やその電源(バッテリ)を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態が組み込まれたリヤデフの断面図である。
【図2】第1実施形態のインナプレートの正面図である。
【図3】第1実施形態の要部の拡大断面図である。
【図4】第1実施形態のパイロットクラッチの分解断面図である。
【図5】第2実施形態のアウタプレートの正面図である。
【図6】第2実施形態の要部の断面図である。
【図7】第3実施形態のインナプレートの正面図である。
【図8】第4実施形態のインナプレートの正面図である。
【図9】第4実施形態の要部の断面図である。
【図10】従来の構造を用いたカップリングの断面図である。
【符号の説明】
87 アウタプレート
89 インナプレート
131,133,141,143,145,147 オイル保持部
143a 拡張部
145a 膨張部
147a 縁部

Claims (6)

  1. 一側と他側の各トルク伝達部材の間に配置された湿式摩擦クラッチであって、
    前記湿式摩擦クラッチは、一側と他側にそれぞれ連結され、円周方向に所定長さで延びる複数の円弧状のオイル保持部が板厚方向に打ち抜き形成されると共に、前記オイル保持部が軸方向に相互に連通し前記オイル保持部の内周側と外周側との摩擦面で相互に摺動するように重ね合わされたアウタープレート及びインナープレートからなり、隣接した前記アウタープレートと前記インナープレートのうち一方のプレートにおける前記円弧状のオイル保持部の円周方向端部の径方向幅を、他方のプレートにおける前記円弧状のオイル保持部の円周方向端部の径方向幅より大きく形成することで、前記アウタープレートと前記インナープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせたことを特徴とする湿式摩擦クラッチ。
  2. 請求項1に記載の発明であって、前記一方のプレートにおける前記円弧状のオイル保持部の径方向幅が、前記他方のプレートにおける前記円弧状の保持部の径方向幅よりも円周方向の所定長さ全てで幅広に形成され前記アウタープレートと前記インナープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせたことを特徴とする湿式摩擦クラッチ。
  3. 請求項1に記載の発明であって、前記一方のプレート前記オイル保持部の円周方向端部に外径方向に向かって放射状に延びる拡張部を設けて径方向幅を大きく形成して、前記アウタープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせていることを特徴とする湿式摩擦クラッチ。
  4. 請求項1に記載の発明であって、前記一方のプレートの前記円弧状のオイル保持部の円周方向の両端部に、径方向に向かって前記円弧状のオイル保持部の一般部よりも幅広に膨らんだ膨張部を設けて径方向幅を大きく形成して、前記アウタープレートと前記インナープレート相互の前記オイル保持部の形状を異ならせていることを特徴とする湿式摩擦クラッチ。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の発明であって、オイル保持部の円周方向の両端部の縁部が前記オイル保持部の一般部の板厚よりも薄く設定してあることを特徴とする湿式摩擦クラッチ。
  6. 電磁石と、電磁石の磁力により吸引されるアーマチャと、電磁石の磁路内に配置された請求項1〜5の何れかに記載の湿式摩擦クラッチとを備えた電磁クラッチであって、前記オイル保持部が電磁石の磁路を形成するための透磁率低下手段としてのギャップ部となっていることを特徴とする電磁クラッチ。
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