JP2004254367A - 電磁アクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【課題】大型化やエネルギーロスを伴わずに磁束のロスを軽減し、充分な操作力を得ると共に、組み付けを容易にする。
【解決手段】電磁コイル5と、電磁コイル5の磁束を通す磁束経路部材7,9とを備え、磁束経路部材7,9に、磁力向上手段11を設けた。
【選択図】 図3
【解決手段】電磁コイル5と、電磁コイル5の磁束を通す磁束経路部材7,9とを備え、磁束経路部材7,9に、磁力向上手段11を設けた。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、クラッチなどの被操作装置を操作する電磁アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1に図8のような差動歯車機構1001が記載されている。
【0003】
この差動歯車機構1001は、デフケース1003、ベベルギア式の差動機構1005、ボールカム1007、噛み合いクラッチ1009、アーマチャ1011、電磁アクチュエータ1013、デフキャリヤ1015から構成されており、車体に固定されたデフキャリヤ1015に収容されている。
【0004】
ベベルギア式の差動機構1005は、デフケース1003に連結されたピニオンシャフト1017、ピニオンシャフト1017上に支承されたピニオンギア1019、ピニオンギア1019と噛み合ったサイドギア1021,1023などからなり、リングギア1025を介してデフケース1003を回転させるエンジンの駆動力は、ピニオンシャフト1017とピニオンギア1019からサイドギア1021,1023に配分され、左右の車輪に伝達される。
【0005】
ボールカム1007は、左右のカムリング1027,1029とその間に配置されたボール1031から構成されており、ボール1031はデフケース1003上で回転自在に支持されている。また、噛み合いクラッチ1009は、右のカムリング1029と左のサイドギア1021との間に形成されている。アーマチャ(駆動板)1011は、左のカムリング1027に固定されており、電磁アクチュエータ1013はデフキャリヤ1015に固定されている。
【0006】
電磁アクチュエータ1013を励磁すると、アーマチャ1011が吸引され、左のカムリング1027がアーマチャ1011と電磁アクチュエータ1013を介してデフキャリヤ1015に連結され、さらに、デフケース1003の回転を受けてボールカム1007が作動し、右のカムリング1029を移動させて噛み合いクラッチ1009を噛み合わせる。噛み合いクラッチ1009が噛み合うと、左のサイドギア1021がカムリング1029を介してデフケース1003に連結され、差動機構1005の差動回転がロックされる。
【0007】
また、電磁アクチュエータ1013の励磁を停止すると、カムリング1027が自由回転状態になり、ボールカム1007の作動が停止して噛み合いクラッチ1009の噛み合いが解除され、差動機構1005の差動回転ロックが解除される。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−240760号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
電磁アクチュエータ1013は、電磁コイル1033を磁性材料のコイルハウジング1035と非磁性材料からなるスペーサ1037に収容して構成されている。コイルハウジング1035は電磁コイル1033のコア部分であり、コイルハウジング1035の端面1035a、1035bがアーマチャ1011と対向することで端面1035a、アーマチャ1011、端面1035bを通る磁束経路が構成されている。そして、電磁コイル1033へ通電することで、アーマチャ1011がコイルハウジング1035側へ磁力により引き付けられる。
【0010】
この場合、アーマチャ1011と対向するコイルハウジング1035の端面1035a、1035bの面積を増やせば、例えば、端面1035aからアーマチャ1011へ向かう磁力線やアーマチャ1011から端面1035bへ向かう磁力線を増やすことができ、アーマチャ1011をコイルハウジング1035側へ引き付ける磁力を大きくすることができる。
【0011】
ところが、アーマチャ1011を引き付ける磁力を向上するために、アーマチャ1011に対向する端面1035a、1035bの面積を増やすとコイルハウジング1035が全体として大型になり、これに伴って、電磁アクチュエータ1013のレイアウト上の自由度と車載性が低下する。また、磁力を向上するために電磁コイル1033自体を大きくすると、これに伴ってコイルハウジング1035が大型になり、同様に電磁アクチュエータ1013が大型化する。
【0012】
そこで、本発明は、アーマチャを引き付ける磁力を向上することができると共に、大型化することのない電磁アクチュエータの抵抗を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電磁アクチュエータは、電磁コイルと、前記電磁コイルの磁束を通す磁束経路部材とを備え、前記磁束経路部材に、磁力向上手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
このように、請求項1の電磁アクチュエータでは、磁束経路部材に磁力向上手段を設けたことにより、充分な磁力(操作力)が得られ、磁束を増やすために電磁コイルを大型にしたりコイルハウジング等を大型にする必要がなくなる。
【0015】
従って、大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリー負担の増加によるエネルギーロスが避けられる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載された電磁アクチュエータであって、前記磁力向上手段が、前記磁束経路部材の磁束経路面積を拡大するように形成されていることを特徴とし、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0017】
また、請求項1と同様に、電磁コイルを大型化せずに磁束のロスを軽減し、充分な操作力力が得られるから、大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリー負担の増加によるエネルギーロスが避けられる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載された電磁アクチュエータであって、前記磁束経路部材が、前記電磁コイルを収容する磁性の収容部材であり、前記磁力向上手段が、前記収容部材に設けられていることを特徴とし、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0019】
また、電磁コイルを収容する収容部材は必須の部材であり、必須の収容部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段を設けたことにより、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項3に記載された電磁アクチュエータであって、前記収容部材が、複数個の磁性部材から構成されており、前記磁性部材を、ネジ部によって螺着することにより、前記ネジ部が、磁束経路面積を拡大して磁力を向上させる磁力向上手段を構成していることを特徴とする。
【0021】
請求項4の構成では、磁力向上手段をネジ部にしたことにより、各磁性部材の接触面積が増加して局部的な磁束の集中が防止され、その上、接合部の面圧が上昇する。その結果、磁気の飽和が起こりにくくなって磁束のロスが軽減され、請求項1〜請求項3の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0022】
また、ネジ部を、テーパーネジにすれば、磁性部材間の接触面積と接合部(ネジ部)の面圧が増加し、磁束ロスの軽減効果がさらに向上する。
【0023】
また、ネジ止めを用いるこの構成では、圧入や加締めを用いる従来例と異なって、それぞれの治具や工具が不要になり、それだけコストが低減されると共に、磁性部材の一方を他方にネジ込む作業は極めて容易であり、組み付け性がよい。
【0024】
また、ネジ部の固定機能(ストッパ機能)によって各磁性部材が強固に連結され、振動や衝撃を受けても、磁性部材の、例えば、軸方向の浮き上がりや外れが防止されるから、信頼性が向上し、動作が正常に保たれる。
【0025】
また、ネジ部の固定機能によって各磁性部材が強固に連結されるから、収容部材の強度も大きく向上する。
【0026】
また、ネジ止めには特に広いスペースが必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【0027】
請求項5の発明は、請求項3に記載された電磁アクチュエータであって、前記収容部材が、複数個の磁性部材から構成されており、前記磁性部材の一方を前記磁束を横切って他方に貫入させることにより、前記貫入部が、磁束経路面積を拡大して磁力を向上させる磁力向上手段を構成していることを特徴とする。
【0028】
請求項5の構成では、磁性部材の一方を磁束を横切って他方に貫入させることにより、例えば、貫入側が矩形であれば互いの間で磁束をほぼ直角に横切る2対の対向面が得られ、貫入側が楔形であれば互いの間で磁束を横切る2対の長い対向面が得られるから、磁気飽和が防止されて磁束のロスが軽減され、請求項1〜請求項3の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0029】
また、磁性部材の一方を他方に貫入させる構成は、構造が簡単であり、低コストに実施できる上に、特に広いスペースは必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1〜図3によって本発明の第1実施形態である電磁アクチュエータ1及びこれを用いたデファレンシャル装置3の説明をする。なお、以下の説明の中で左右の方向はデファレンシャル装置3が用いられた車両及び図1での左右の方向である。
【0031】
[電磁アクチュエータ1の構成]
電磁アクチュエータ1は、電磁コイル5と、電磁コイル5の磁束を通すリング状のコイルハウジング7,9(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)と、コイルハウジング7,9を一体に連結するネジ部11(磁力向上手段)から構成されている。
【0032】
電磁コイル5は、コイルハウジング7,9に収容され、そのリード線はデファレンシャル装置3を収容するデフキャリヤ13の外部に引き出され、コントローラを介して車載のバッテリに接続されている。
【0033】
コイルハウジング7は断面がコの字状であり、コイルハウジング7,9は、互いの間に電磁コイル5を収容した状態で、ネジ部11によって互いにネジ止めされ一体にされている。また、図3のように、周方向の数個所でネジ部11に加締め部14を設ければネジ部11の弛みが防止される。コイルハウジング7,9は磁性材料(S10C)で作られており、ネジ部11を設けたことにより、コイルハウジング7,9の接合部で電磁コイル5の磁束ロスが軽減される。また、コイルハウジング7は連結部材を介してデフキャリヤ13に固定され、回り止めされており、図2のように、コイルハウジング9の内周には、周方向等間隔に4個の切り欠き15が設けられている。
【0034】
[デファレンシャル装置3の構成]
デファレンシャル装置3は、電磁アクチュエータ1、ガイド部材17、プランジャ19、スライド部材21、デフケース23、ベベルギア式の差動機構25、ドッグクラッチ27(被操作装置)、リターンスプリング29、ポジションスイッチ31、コントローラから構成されている。
【0035】
ガイド部材17は、ステンレス鋼のような非磁性材料で作られており、コイルハウジング7の内周側に溶接され、図1のように、デフケース23の右ボス部33に形成された段差部35と、右ボス部33を支承するテーパーローラーベアリング37のインナーレース39とスラストワッシャ41との間で軸方向に位置決めされている。
【0036】
プランジャ19は、磁性材料(S10C)で作られており、スライド部材21の外周に固定されている。プランジャ19とスライド部材21はコイルハウジング7,9とガイド部材17との間に配置されており、プランジャ19は上記のコイルハウジング9に組み付けられ、スライド部材21はガイド部材17の外周で軸方向移動自在に支承されている。なお、ガイド部材17の、スライド部材21との摺動部にはテフロン(登録商標)のコーティングが施され、ガイド部材17との間で摺動抵抗を低減させている。
【0037】
プランジャ19とコイルハウジング7,9とによって電磁コイル5の磁束経路が構成されている。また、電磁コイル5の磁力によってプランジャ19が左方へ移動したときに、プランジャ19と突き当たって停止させるストッパ部43がコイルハウジング9に設けられている。コイルハウジング7,9の間には、磁束のバイパスを防止し、コイルハウジング7とプランジャ19とコイルハウジング9を通る磁束を成立させるためのエアギャップ45が設けられている。さらに、ガイド部材17には、プランジャ19が右方へ戻るときにオイルを流出させて抵抗を低減し、ドッグクラッチ27の噛み合い解除レスポンスを向上させる開口47が設けられている。
【0038】
デフケース23は、デフキャリヤ13の内部に配置されており、ケーシング本体49とカバー51から構成されている。ケーシング本体49には、上記のボス部33及び段差部35と、開口53,55、57と、支承部59が設けられており、カバー51には、ボス部61と、開口63と、支承部65と、オイル流路67が設けられている。ケーシング本体49とカバー51はボルト69で固定されており、各ボス部33,61は上記のテーパーローラーベアリング37を介してそれぞれデフキャリヤ13に支承されている。また、デフキャリヤ13にはオイル溜りが形成されており、各ボス部33,61の内周には螺旋状のオイル溝が形成されている。
【0039】
デフケース23にはリングギアがボルトで固定されており、このリングギアは動力伝達系のギヤと噛み合っている。この動力伝達系はトランスミッション側に連結されており、デフケース23はトランスミッションとこの動力伝達系とを介して伝達されるエンジンの駆動力により回転駆動される。
【0040】
差動機構25は、複数本のピニオンシャフト71、各ピニオンシャフト71上で支承されたピニオンギア73、出力側のサイドギア75,77から構成されている。
【0041】
各ピニオンシャフト71は、デフケース23(ケーシング本体49)の開口55に端部を係合し、スプリングピン79によって抜け止めされている。デフケース23と各ピニオンギア73との間には球面ワッシャ81が配置されており、ピニオンギア73の遠心力と、サイドギア75,77との噛み合いによってピニオンギア73に生じる噛み合い反力を受けている。サイドギア75,77は左右からそれぞれ各ピニオンギア73と噛み合っており、各サイドギア75,77のボス部83,85はカバー51とケーシング本体49の支承部65,59によって回転自在に支承されている。各ボス部83,85はスプライン連結された車軸を介して左右の車輪側に連結されている。また、左サイドギア75とカバー51との間にはスラストワッシャ87が配置され、サイドギア75の噛み合い反力を受けており、右サイドギア77とケーシング本体49との間にはスラストワッシャ89,89が配置され、サイドギア77の噛み合い反力を受けている。
【0042】
ドッグクラッチ27は、右サイドギア77に形成された噛み合い歯91と、クラッチリング93に形成された噛み合い歯95によって構成されている。
【0043】
クラッチリング93には脚部97が周方向等間隔に形成されており、各脚部97はケーシング本体49の開口57を貫通してデフケース23に回り止めされ、軸方向移動自在に配置されている。図1の下半部のようにクラッチリング93が左に移動するとドッグクラッチ27が噛み合って差動機構25の差動がロックされ、図1の上半部のようにクラッチリング93が右に移動するとドッグクラッチ27の噛み合いが解除され、差動ロックが解除される。
【0044】
リターンスプリング29は右サイドギア77とクラッチリング93との間に配置され、クラッチリング93をドッグクラッチ27の噛み合い解除側(右方)に付勢している。また、クラッチリング93はリターンスプリング29の付勢力により、プレッシャープレート99を介してスライド部材21(プランジャ19)を右方に押圧している。このプレッシャープレート99は腕部101によって回転側のクラッチリング93(脚部97)に連結されており、静止側のスライド部材21との間で摺動(相対回転)を許容(吸収)している。
【0045】
ポジションスイッチ31はデフキャリヤ13に取り付けられており、プレッシャープレート99の軸方向往復移動に伴ってON−OFFし、その信号をコントローラに送る。
【0046】
[動作及び作用]
コントローラは、電磁コイル5の励磁と、励磁停止を行う。
【0047】
電磁コイル5が励磁されると、磁束経路に磁束ループ103が発生し、その磁力によってプランジャ19が、図1の上半部の位置から下半部の位置まで移動し、プレッシャープレート99を介し、リターンスプリング29の付勢力に抗してクラッチリング93を左方へ押圧し、ドッグクラッチ27を噛み合わせて差動機構25の差動をロックさせる。
【0048】
また、上記のようにコイルハウジング7,9をネジ部11で連結したことによりコイルハウジング7,9の接合部で接触面積が増加し、局部的な磁束の集中と磁束の集中による磁束の飽和が軽減され、その上、接合部の面圧が上昇して磁束の透過が促される。こうして磁束のロスが軽減され、プランジャ19を大きな磁力で移動操作することができる。
【0049】
悪路や低μ路を走行中のように、左右の駆動輪が空転し易い状況で差動をロックさせると、空転車輪からの駆動力の逃げが防止され、悪路などの脱出性、走破性が向上し、車両のスタックが防止される。
【0050】
また、電磁コイル5の励磁を停止すると、リターンスプリング29の付勢力によってクラッチリング93とプレッシャープレート99とプランジャ19が右方へ戻り、ドッグクラッチ27の噛み合いが解除され、差動機構25の差動が自由になる。
【0051】
コントローラはポジションスイッチ31から受け取ったON−OFF信号に基づいて、デファレンシャル装置3(差動機構25)の差動回転がロックされているか否かを判断する。
【0052】
また、デフケース23とリングギアが回転するとオイル溜りのオイルが掻き上げられ、掻き上げられたオイルはデフケース23の開口53,57,63から流入し、さらに、ボス部33,61内周の各螺旋状オイル溝のネジポンプ作用によってオイル流路67と、スラストワッシャ87,89の隙間を通ってデフケース23の内部に流入する。流入したオイルは、差動機構25を構成する各ギア73,75,77の噛み合い部、ピニオンシャフト71とピニオンギア73の摺動部、デフケース23とクラッチリング93との摺動部、ドッグクラッチ27(噛み合い歯91,95)などに供給されてこれらを潤滑・冷却する。また、電磁アクチュエータ1の下部もオイル溜りに浸されており、プランジャ19とプレッシャープレート99との摺動部、プランジャ19とコイルハウジング7,9との摺動部及びスライド部材21とガイド部材17との摺動部、ポジションスイッチ31とプレッシャープレート99との摺動部なども潤滑・冷却される。
【0053】
上記の各潤滑・冷却部では、供給されたオイルによって磨耗が軽減され、耐久性が向上すると共に、各摺動部での摩擦抵抗の低減によってエンジンの燃費が向上する。
【0054】
[電磁アクチュエータ1及びデファレンシャル装置3の効果]
電磁アクチュエータ1とデファレンシャル装置3は、上記のように構成されたことによって次のような効果が得られる。
【0055】
コイルハウジング7,9をネジ部11で連結して接触面積を広くし、接合部の面圧を上昇させたことにより、磁束のロスが軽減され、プランジャ19を大きな磁力で移動操作することができる。
【0056】
従って、プランジャ19に倒れや囓りに伴う移動抵抗が生じても、その影響を受けにくくなると共に、オイルの粘度が大きくなる低温時(寒冷期や寒冷地)でもオイルによる移動抵抗の影響を受けにくくなり、プランジャ19の操作レスポンスの低下とバラツキが防止されるから、電磁アクチュエータ1の動作が円滑で安定する。
【0057】
また、電磁アクチュエータ1によってドッグクラッチ27が円滑に断続されるから、車両が悪路などを走行する際、必要に応じて差動機構25の差動を迅速にロックすれば、悪路の脱出性や走破性の向上効果、スタックの防止効果が高く保たれる。
【0058】
また、電磁アクチュエータ1は、充分な磁力(操作力)が得られるから、磁束のロスを補うために電磁コイル5を大型にし、励磁電流を増加する必要がなくなり、電磁アクチュエータ1とデファレンシャル装置3の大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリーの負担増加が防止され、エンジンの燃費が向上する。
【0059】
また、電磁コイル5を収容するコイルハウジング7,9は電磁アクチュエータ1にとって必須の部材であり、このように必須の部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段(ネジ部11)を設けたから、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0060】
また、ネジ部11によってコイルハウジング7,9を連結する電磁アクチュエータ1では、圧入や加締めを用いる従来例と異なって治具や工具が不要であり、それだけコストが低減されると共に、コイルハウジング9をコイルハウジング7にネジ込む作業は極めて容易であり、組み付け性がよい。
【0061】
また、ネジ部11の固定機能によってコイルハウジング7,9が強固に連結されるから、走行中などに振動や衝撃を受けても、コイルハウジング9がコイルハウジング7から軸方向に浮き上がったり、外れたりすることが防止され、電磁アクチュエータ1の信頼性が向上し、長期にわたって動作が正常に保たれる。
【0062】
また、コイルハウジング7,9の強度も、ネジ部11の固定機能によって大きく向上する。
【0063】
また、ネジ止め(ネジ部11を設けること)は特に広いスペースが必要ないから、限られたスペースで上記のような種々の効果が得られる。
【0064】
[第2実施形態]
図4は本発明の第2実施形態である電磁アクチュエータ201を示している。
【0065】
[電磁アクチュエータ201の構成]
電磁アクチュエータ201は、電磁コイル5と、電磁コイル5を収容するコイルハウジング7,9と、コイルハウジング7,9を一体に連結するネジ部203(磁力向上手段)から構成されている。
【0066】
第1実施形態はコイルハウジング7,9を平行ネジのネジ部11で連結した例であるが、電磁アクチュエータ201では、コイルハウジング7,9がテーパーネジ203で連結されている。
【0067】
このようにコイルハウジング7,9をテーパーネジ203で連結したことにより、コイルハウジング7,9の接触面積が平行のネジ部11より増加し、また、接合部(ネジ部203)の面圧も上昇する。
【0068】
従って、第2実施形態の電動式カップリング201は、磁束ロスの軽減効果がさらに向上し、プランジャ19の操作力がそれだけ大きくなり、第1実施形態と同等の、あるいは、第1実施形態以上の作用・効果が得られる。
【0069】
[第3実施形態]
図5と図6によって本発明の第3実施形態である電磁アクチュエータ301及びこれを用いたリヤデフ303及びこれを用いた動力伝達装置の説明をする。なお、以下の説明の中で左右の方向はリヤデフ303と動力伝達装置を後輪側の動力系に用いた4輪駆動車及び図5での左右の方向である。
【0070】
この4輪駆動車は、駆動力源にエンジンと電動モータとを併用するハイブリッドの電気自動車であり、エンジンを駆動力源にする前輪側の動力系と、電動モータを駆動力源にする後輪側の動力系から構成され、リヤデフ303を用いた動力伝達装置は後輪側の動力系に用いられている。
【0071】
前輪側動力系は、横置きのエンジン及びトランスミッションと、フロントデフ(駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置と)、前車軸と、左右の前輪から構成されており、後輪側の動力系は、上記の動力伝達装置と、後車軸と、左右の後輪から構成されている。
【0072】
[電磁アクチュエータ301の構成]
電磁アクチュエータ301は、電磁コイル305と、電磁コイル305の磁束を通すリング状のコイルハウジング307(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)及びロータ309(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)と、コイルハウジング307がロータ309に貫入する矩形の貫入部311,313(磁力向上手段)から構成されている。
【0073】
電磁コイル305は、コイルハウジング307とロータ309との間に収容されており、そのリード線はリヤデフ303と動力伝達装置を収容するケーシング315の外部に引き出され、コントローラを介して車載のバッテリに接続されている。
【0074】
コイルハウジング307は断面がコの字状であり、上記のように互いの間に電磁コイル305を収容した状態で、コイルハウジング307は貫入部311,313によってロータ309に貫入している。下記のように、これらの貫入部311,313を設けたことにより電磁コイル305の磁束ロスが軽減されている。コイルハウジング307はケーシング315に固定され、回り止めされており、コイルハウジング307とロータ309との間には適度なエアギャップが形成されている。コイルハウジング307とロータ309は磁性材料(S10C)で作られており、コイルハウジング307と、上記のエアギャップと、ロータ309と、下記のパイロットクラッチ329とアーマチャ339とによって電磁コイル305の磁束経路が構成されている。
【0075】
ロータ309には、図5,6のように、磁束経路上での磁束の短絡を軽減する開口317と、リヤデフ303側への磁束の漏洩を軽減する開口319がそれぞれ周方向等間隔に6個設けられており、また、係合部321が周方向等間隔に3個設けられている。
【0076】
[リヤデフ303の構成]
リヤデフ303は、電磁アクチュエータ301と、アウターデフケース323と、インナーデフケース325と、多板式のメインクラッチ327及びパイロットクラッチ329と、ボールカム331と、プレッシャープレート333と、カムリング335と、リターンスプリング337と、アーマチャ339と、ベベルギア式の差動機構341と、コントローラから構成されている。
【0077】
アウターデフケース323には、左端に大径ギア343が溶接され、また、内周にはスプライン部345が設けられており、大径ギア343をボールベアリング347,347によってインナーデフケース325上に支承されている。
【0078】
インナーデフケース325には、左右のボス部349,351と、外周のスプライン部353と、支承部355,357と、開口359,361が設けられており、左のボス部349をボールベアリング363によってケーシング315に支承され、右のボス部351をボールベアリング363と電磁コイル305のコイルハウジング307とを介してケーシング315に支承されている。ボス部349,351の内周には螺旋状のオイル溝が形成されている。また、上記のロータ309は、スナップリング365によって右ボス部351の外周に固定され軸方向に位置決めされていると共に、アウターデフケース323の右側壁を兼ねている。
【0079】
メインクラッチ327は、アウターデフケース323とインナーデフケース325との間に配置されており、アウタープレート367はアウターデフケース323のスプライン部345に連結され、インナープレート369はインナーデフケース325のスプライン部353に連結されている。
【0080】
パイロットクラッチ329は、アウターデフケース323とカムリング335との間に配置されており、アウタープレート371はアウターデフケース323のスプライン部345に連結され、インナープレート373はカムリング335の外周にスプライン連結されている。また、パイロットクラッチ329(インナープレート373)とロータ309との間にはワッシャ372が配置され、その腕部374をロータ309の係合部321に係合させている。このワッシャ372はインナープレート373とロータ309が直接摺動して摩耗するのを防止する。
【0081】
ボールカム331はプレッシャープレート333とカムリング335との間に配置されている。プレッシャープレート333はインナーデフケース325のスプライン部353に軸方向移動自在にスプライン連結されており、ボールカム331のカムスラスト力を受けてメインクラッチ327を押圧する。また、カムリング335とロータ309との間には、ボールカム331のカム反力を受けると共に、カムリング335とロータ309間の相対回転を吸収するスラストベアリング375が配置されている。
【0082】
リターンスプリング337は、プレッシャープレート333とインナーデフケース325との間に配置されており、プレッシャープレート333をメインクラッチ327の連結解除方向(右方)に付勢している。
【0083】
アーマチャ339はリング状に形成されており、プレッシャープレート333とパイロットクラッチ329(インナープレート373)との間に軸方向移動自在に配置されている。また、アーマチャ339の内周はプレッシャープレート333に形成された段差部377の外周で相対回転自在に支持され、センターリングされている。
【0084】
差動機構341は、複数本のピニオンシャフト379、ピニオンギア381、出力側のサイドギア383,385などから構成されている。
【0085】
各ピニオンシャフト379はインナーデフケース325の回転中心から放射状に配置されており、それぞれの先端はインナーデフケース325の開口359に係合すると共に、止め輪387でインナーデフケース325に取り付けられたメインクラッチ327用の受圧部材389に、段差部391を突き当てて回り止めされている。各ピニオンギア381はピニオンシャフト379上でそれぞれ回転自在に支承されており、サイドギア383,385は左右からピニオンギア381と噛み合っている。各サイドギア383,385とインナーデフケース325との間には、サイドギア383,385の噛み合い反力を受けるスラストワッシャ393がそれぞれ配置されている。サイドギア383,385は左右の後車軸にそれぞれスプライン連結されており、各後車軸はインナーデフケース325の左右のボス部349,351とケーシング315とをそれぞれ貫通して左右の後輪に連結されている。各後車軸とケーシング315との間にはオイルシール395がそれぞれ配置されており、オイル漏れと外部からの異物の侵入を防止している。
【0086】
インナーデフケース325の回転はピニオンシャフト379からピニオンギア381を介して各サイドギア383,385に配分され、さらに後車軸から左右の後輪に伝達される。また、悪路や低μ路などで後輪の間に駆動抵抗差が生じると、インナーデフケース325を回転させる駆動力はピニオンギア381の自転によって左右の後輪に差動配分される。
【0087】
[動力伝達装置の構成]
動力伝達装置は、電動モータと、減速機構と、リヤデフ303と、電動モータ用のバッテリーと、各種センサーと、コントローラから構成されている。
【0088】
電動モータは、コントローラを介してバッテリーに接続されており、ケーシング315の外側にボルト止めされ、その出力軸はケーシング315に貫入し、ケーシング315の内部にベアリングで支承された第1軸に連結されている。
【0089】
減速機構は、上記の第1軸と、第2軸と、2段の減速ギヤ組から構成されている。第1軸と同様に、第2軸もケーシング315の内部にベアリングで支承されており、初段の減速ギア組は互いに噛み合った小径ギアと大径ギアから構成され、終段の減速ギア組は互いに噛み合った小径ギアと大径ギア343から構成されている。初段減速ギア組の小径ギアは第1軸に一体形成されており、大径ギアは第2軸に圧入されている。また、終段減速ギア組の小径ギアは第2軸に一体形成されており、大径ギア343は、上記のように、リヤデフ303のアウターデフケース323に溶接されている。
【0090】
電動モータの駆動力は、初段と終段の各減速ギア組によって後輪の走行回転数域まで減速され、トルクが増幅されてリヤデフ303のアウターデフケース323を回転させる。
【0091】
[動作及び作用]
コントローラは、センサーからの情報に基づいて電動モータの駆動、回転数調整、駆動停止などを行うと共に、通常の走行中は、電動モータの駆動停止及びリヤデフ303(メインクラッチ327)による駆動力の遮断を行って後輪側動力系の作動を停止させると共に、前輪をエンジンで駆動し、車両を前輪側動力系による2輪駆動状態にする。また、大きな駆動力が必要になると、コントローラは電動モータを駆動すると共に、リヤデフ303のメインクラッチ327を連結して後輪側動力系を作動させ、後輪を補助的に駆動し、車両を4輪駆動走行させる。
【0092】
さらに、コントローラは、センサーによって検知した路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて、電磁コイル305の励磁、励磁電流の制御、励磁停止を行う。また、電磁コイル305の励磁は、電動モータを回転させるとき同時に行われ、電磁コイル305の励磁停止は、電動モータの回転を停止させるとき同時に行われる。
【0093】
電磁コイル305が励磁されると、磁束経路上に磁束ループ397が形成されてアーマチャ339が吸引され、ロータ309との間でパイロットクラッチ329を押圧して締結しパイロットトルクを発生させる。パイロットトルクが発生するとパイロットクラッチ329によってアウターデフケース323に連結されたカムリング335と、インナーデフケース325側のプレッシャープレート333とを介してボールカム331に電動モータの駆動力が掛かり、ボールカム331はこの駆動力を増幅しながらカムスラスト力に変換し、プレッシャープレート333を左方に移動させてメインクラッチ327を押圧し締結させる。
【0094】
また、上記のように、コイルハウジング307の貫入部311,313がロータ309に貫入しており、これらの貫入部311,313が矩形であるから、少なくとも貫入部311では磁束をほぼ直角に横切る2対の対向面が得られると共に、コイルハウジング307とロータ309との重なり幅(貫入部311,313の深さ)が大きくなって磁束経路面積が拡大され、磁気飽和が防止されて磁束のロスが軽減される。従って、電磁コイル305を小型にしても、充分な磁力でアーマチャ339を移動操作することができる。
【0095】
メインクラッチ327が連結されると、大径ギア343(アウターデフケース323)を回転させる電動モータの駆動力は、インナーデフケース325に伝達され、その回転は差動機構341によって左右の後輪に配分され、車両が4輪駆動状態になる。
【0096】
このとき、電磁コイル305の励磁電流を制御すると、パイロットクラッチ329の滑り率が変化してボールカム331のカムスラスト力が変わり、後輪側に伝達される駆動力が制御される。このような駆動力の制御を、例えば、旋回時に行うと旋回性と車体の安定性とを大きく向上させることができる。
【0097】
また、電磁コイル305の励磁を停止すると、パイロットクラッチ329が開放されてボールカム331のカムスラスト力が消失し、リターンスプリング337の付勢力によってプレッシャープレート333が右方に戻り、メインクラッチ327の連結が解除され、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。
【0098】
メインクラッチ327の連結解除操作は、上記のように電動モータの停止操作と同時に行われるから、2輪駆動状態では、アウターデフケース323と減速機構と電動モータが後輪の連れ回りから切り離され、減速機構、電動モータ及びそのベアリング、バッテリー、レギュレータなどの集積回路が後輪の連れ回りによる悪影響から保護され、耐久性が向上する。
【0099】
また、ケーシング315に設けられたオイル溜りのオイルは、各減速ギア組と大径ギア343の回転によって撥ね上げられ、各減速ギア組とそのベアリングを潤滑・冷却すると共に、アウターデフケース323とインナーデフケース325の左右両側の隙間からこれらの間に流入し、パイロットクラッチ329、アーマチャ339とプレッシャープレート333との摺動部(段差部377)、ボールカム331、スラストベアリング375、メインクラッチ327などを潤滑・冷却する。また、オイル溜りのオイルはインナーデフケース325の回転に伴って、ボス部349,351の螺旋状オイル溝からそのネジポンプ作用によって内部に流入し、差動機構341の各ギア381,383,385の噛み合い部などを潤滑・冷却し、さらに遠心力を受けて開口361からメインクラッチ327側に移動し、メインクラッチ327、ボールカム331、パイロットクラッチ329などを潤滑・冷却した後、オイル溜りに戻る。
【0100】
[電磁アクチュエータ301及びリヤデフ303の効果]
電磁アクチュエータ301とリヤデフ303は、上記のように構成されたことによって次のような効果が得られる。
【0101】
コイルハウジング307の貫入部311,313により、ロータ309との間で磁束のロスが軽減されるから、電磁コイル305は充分な磁力でアーマチャ339を操作できる。
【0102】
従って、アーマチャ339に倒れや囓りに伴う移動抵抗が生じても、その影響を受けにくくなると共に、オイルの粘度が大きくなる低温時でもオイルによる移動抵抗の影響を受けにくくなり、アーマチャ339の操作レスポンスの低下とバラツキが防止されるから、リヤデフ303(パイロットクラッチ329とメインクラッチ327)は、電磁アクチュエータ301により円滑で安定して断続操作される。
【0103】
このように、メインクラッチ327が円滑に断続操作されるから、路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて、メインクラッチ327を迅速に断続操作すれば、悪路の脱出性や走破性、スタックの防止効果、発進性、加速性、旋回性を大きく向上させることができる。
【0104】
また、充分な磁力(操作力)が得られるから、磁束のロスを補うために電磁コイル305を大型にし、励磁電流を増加する必要がなくなり、電磁アクチュエータ301とリヤデフ303の大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリーの負担増加が防止され、エンジンの燃費が向上する。
【0105】
また、電磁コイル305を収容するコイルハウジング307とロータ309は電磁アクチュエータ301にとって必須の部材であり、このように必須の部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段(貫入部311,313)を設けたから、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0106】
また、コイルハウジング307の貫入部311,313をロータ309に貫入させるこの構成では、圧入や加締めを用いる従来例と異なって治具や工具が不要であり、それだけコストが低減される。
【0107】
また、コイルハウジング307をロータ309に貫入させる構成は、構造が簡単であり、低コストに実施できる上に、貫入部311,313を設けるには特に広いスペースが必要ないから、限られたスペースで上記のような種々の効果が得られる。
【0108】
[第4実施形態]
図7は本発明の第4実施形態である電磁アクチュエータ401を示しており、この電磁アクチュエータ401は、第3実施形態のリヤデフ303で、電磁アクチュエータ301に代えて用いられている。
【0109】
[電磁アクチュエータ401の構成]
電磁アクチュエータ401は、電磁コイル305と、電磁コイル305を収容するコイルハウジング307及びロータ309と、コイルハウジング307がロータ309に貫入する貫入部403,405(磁力向上手段)から構成されている。
【0110】
第3実施形態はコイルハウジング307の矩形の貫入部311,313をロータ309に貫入させた例であるが、電磁アクチュエータ401では、コイルハウジング307が楔形の貫入部403,405をロータ309に貫入させている。
【0111】
このように、第4実施形態の電動式カップリング401は、貫入部403,405を楔形にしたことによって互いの間で磁束を横切る長い対向面が得られ、磁束ロスの軽減効果が向上し、アーマチャ339の操作力が大きくなり、第3実施形態と同等の作用・効果が得られる。
【0112】
[本発明の範囲に含まれる他の態様]
なお、本発明の電磁アクチュエータでは、磁力で操作する部材は、各実施形態のように、プランジャでも、アーマチャでもよい。
【0113】
また、本発明の電磁アクチュエータの被操作装置は、クラッチに限らない。また、このクラッチも、各実施形態のように噛み合いクラッチや多板クラッチの他に、単板クラッチやコーンクラッチのような摩擦クラッチでもよく、さらに、第3実施形態のように、磁力でパイロットクラッチを連結してカム機構を作動させ、メインクラッチを締結させるように構成しても、あるいは、磁力でクラッチを直接連結させるように構成してもよい。
【0114】
【発明の効果】
請求項1の電磁アクチュエータは、磁束経路部材に設けた磁力向上手段により充分な磁力(操作力)が得られ、磁束を増やすために電磁コイルやコイルハウジング等を大型にする必要がない。従って、大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリー負担の増加によるエネルギーロスが避けられる。
【0115】
請求項2の電磁アクチュエータは、請求項1の構成と同等の効果を得ることができる。
【0116】
請求項3の電磁アクチュエータは、請求項1または請求項2の構成と同等の効果を得ることができる。
【0117】
また、電磁コイルを収容するために必須の部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段を設けたから、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0118】
請求項4の電磁アクチュエータは、磁力向上手段のネジ部によって、各磁性部材の接触面積が増加し、接合部の面圧が上昇して磁束のロスが軽減され、請求項1〜請求項3の構成と同等の効果を得ることができる。
【0119】
また、ネジ部をテーパーネジにすれば、磁束ロスの軽減効果がさらに向上する。
【0120】
また、ネジ止めを用いる構成では、圧入や加締めを用の治具や工具が不要になってコストが低減されると共に、磁性部材の一方を他方にネジ込む作業は極めて容易であり、組み付け性がよい。
【0121】
また、ネジ部の固定機能によって各磁性部材の連結強度(収容部材の強度)が向上し、振動や衝撃を受けても、磁性部材の浮き上がりや外れが防止されて信頼性が向上し、動作が正常に保たれる。
【0122】
また、ネジ止めには広いスペースが必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【0123】
請求項5の電磁アクチュエータは、磁性部材の一方を他方に貫入させることによって磁束を横切る広い対向面が得られ、磁束のロスが軽減されて請求項1〜請求項3の構成と同等の効果を得ることができる。
【0124】
また、磁性部材の一方を他方に貫入させる構成は、構造が簡単であり、低コストで実施できる上に、広いスペースが必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の電磁アクチュエータとこれを用いたデファレンシャル装置を示す断面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】第1実施形態の要部拡大断面図である。
【図4】第2実施形態の要部拡大断面図である。
【図5】第3実施形態の電磁アクチュエータとこれを用いたリヤデフを示す断面図である。
【図6】第3実施形態に用いられたロータの側面図である。
【図7】第4実施形態の要部拡大断面図である。
【図8】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 電磁アクチュエータ
5 電磁コイル
7,9 コイルハウジング(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)
11 コイルハウジング7,9を連結するネジ部(磁力向上手段)
201 電磁アクチュエータ
203 コイルハウジング7,9を連結するテーパーネジ部(磁力向上手段)
301 電磁アクチュエータ
307 コイルハウジング(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)
309 ロータ(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)
311,313 コイルハウジング307がロータ309に貫入する矩形の貫入部(磁力向上手段)
401 電磁アクチュエータ
403,405 コイルハウジング307がロータ309に貫入する楔状の貫入部(磁力向上手段)
【発明の属する技術分野】
この発明は、クラッチなどの被操作装置を操作する電磁アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1に図8のような差動歯車機構1001が記載されている。
【0003】
この差動歯車機構1001は、デフケース1003、ベベルギア式の差動機構1005、ボールカム1007、噛み合いクラッチ1009、アーマチャ1011、電磁アクチュエータ1013、デフキャリヤ1015から構成されており、車体に固定されたデフキャリヤ1015に収容されている。
【0004】
ベベルギア式の差動機構1005は、デフケース1003に連結されたピニオンシャフト1017、ピニオンシャフト1017上に支承されたピニオンギア1019、ピニオンギア1019と噛み合ったサイドギア1021,1023などからなり、リングギア1025を介してデフケース1003を回転させるエンジンの駆動力は、ピニオンシャフト1017とピニオンギア1019からサイドギア1021,1023に配分され、左右の車輪に伝達される。
【0005】
ボールカム1007は、左右のカムリング1027,1029とその間に配置されたボール1031から構成されており、ボール1031はデフケース1003上で回転自在に支持されている。また、噛み合いクラッチ1009は、右のカムリング1029と左のサイドギア1021との間に形成されている。アーマチャ(駆動板)1011は、左のカムリング1027に固定されており、電磁アクチュエータ1013はデフキャリヤ1015に固定されている。
【0006】
電磁アクチュエータ1013を励磁すると、アーマチャ1011が吸引され、左のカムリング1027がアーマチャ1011と電磁アクチュエータ1013を介してデフキャリヤ1015に連結され、さらに、デフケース1003の回転を受けてボールカム1007が作動し、右のカムリング1029を移動させて噛み合いクラッチ1009を噛み合わせる。噛み合いクラッチ1009が噛み合うと、左のサイドギア1021がカムリング1029を介してデフケース1003に連結され、差動機構1005の差動回転がロックされる。
【0007】
また、電磁アクチュエータ1013の励磁を停止すると、カムリング1027が自由回転状態になり、ボールカム1007の作動が停止して噛み合いクラッチ1009の噛み合いが解除され、差動機構1005の差動回転ロックが解除される。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−240760号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
電磁アクチュエータ1013は、電磁コイル1033を磁性材料のコイルハウジング1035と非磁性材料からなるスペーサ1037に収容して構成されている。コイルハウジング1035は電磁コイル1033のコア部分であり、コイルハウジング1035の端面1035a、1035bがアーマチャ1011と対向することで端面1035a、アーマチャ1011、端面1035bを通る磁束経路が構成されている。そして、電磁コイル1033へ通電することで、アーマチャ1011がコイルハウジング1035側へ磁力により引き付けられる。
【0010】
この場合、アーマチャ1011と対向するコイルハウジング1035の端面1035a、1035bの面積を増やせば、例えば、端面1035aからアーマチャ1011へ向かう磁力線やアーマチャ1011から端面1035bへ向かう磁力線を増やすことができ、アーマチャ1011をコイルハウジング1035側へ引き付ける磁力を大きくすることができる。
【0011】
ところが、アーマチャ1011を引き付ける磁力を向上するために、アーマチャ1011に対向する端面1035a、1035bの面積を増やすとコイルハウジング1035が全体として大型になり、これに伴って、電磁アクチュエータ1013のレイアウト上の自由度と車載性が低下する。また、磁力を向上するために電磁コイル1033自体を大きくすると、これに伴ってコイルハウジング1035が大型になり、同様に電磁アクチュエータ1013が大型化する。
【0012】
そこで、本発明は、アーマチャを引き付ける磁力を向上することができると共に、大型化することのない電磁アクチュエータの抵抗を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電磁アクチュエータは、電磁コイルと、前記電磁コイルの磁束を通す磁束経路部材とを備え、前記磁束経路部材に、磁力向上手段を設けたことを特徴としている。
【0014】
このように、請求項1の電磁アクチュエータでは、磁束経路部材に磁力向上手段を設けたことにより、充分な磁力(操作力)が得られ、磁束を増やすために電磁コイルを大型にしたりコイルハウジング等を大型にする必要がなくなる。
【0015】
従って、大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリー負担の増加によるエネルギーロスが避けられる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載された電磁アクチュエータであって、前記磁力向上手段が、前記磁束経路部材の磁束経路面積を拡大するように形成されていることを特徴とし、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0017】
また、請求項1と同様に、電磁コイルを大型化せずに磁束のロスを軽減し、充分な操作力力が得られるから、大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリー負担の増加によるエネルギーロスが避けられる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載された電磁アクチュエータであって、前記磁束経路部材が、前記電磁コイルを収容する磁性の収容部材であり、前記磁力向上手段が、前記収容部材に設けられていることを特徴とし、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0019】
また、電磁コイルを収容する収容部材は必須の部材であり、必須の収容部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段を設けたことにより、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0020】
請求項4の発明は、請求項3に記載された電磁アクチュエータであって、前記収容部材が、複数個の磁性部材から構成されており、前記磁性部材を、ネジ部によって螺着することにより、前記ネジ部が、磁束経路面積を拡大して磁力を向上させる磁力向上手段を構成していることを特徴とする。
【0021】
請求項4の構成では、磁力向上手段をネジ部にしたことにより、各磁性部材の接触面積が増加して局部的な磁束の集中が防止され、その上、接合部の面圧が上昇する。その結果、磁気の飽和が起こりにくくなって磁束のロスが軽減され、請求項1〜請求項3の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0022】
また、ネジ部を、テーパーネジにすれば、磁性部材間の接触面積と接合部(ネジ部)の面圧が増加し、磁束ロスの軽減効果がさらに向上する。
【0023】
また、ネジ止めを用いるこの構成では、圧入や加締めを用いる従来例と異なって、それぞれの治具や工具が不要になり、それだけコストが低減されると共に、磁性部材の一方を他方にネジ込む作業は極めて容易であり、組み付け性がよい。
【0024】
また、ネジ部の固定機能(ストッパ機能)によって各磁性部材が強固に連結され、振動や衝撃を受けても、磁性部材の、例えば、軸方向の浮き上がりや外れが防止されるから、信頼性が向上し、動作が正常に保たれる。
【0025】
また、ネジ部の固定機能によって各磁性部材が強固に連結されるから、収容部材の強度も大きく向上する。
【0026】
また、ネジ止めには特に広いスペースが必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【0027】
請求項5の発明は、請求項3に記載された電磁アクチュエータであって、前記収容部材が、複数個の磁性部材から構成されており、前記磁性部材の一方を前記磁束を横切って他方に貫入させることにより、前記貫入部が、磁束経路面積を拡大して磁力を向上させる磁力向上手段を構成していることを特徴とする。
【0028】
請求項5の構成では、磁性部材の一方を磁束を横切って他方に貫入させることにより、例えば、貫入側が矩形であれば互いの間で磁束をほぼ直角に横切る2対の対向面が得られ、貫入側が楔形であれば互いの間で磁束を横切る2対の長い対向面が得られるから、磁気飽和が防止されて磁束のロスが軽減され、請求項1〜請求項3の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0029】
また、磁性部材の一方を他方に貫入させる構成は、構造が簡単であり、低コストに実施できる上に、特に広いスペースは必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1〜図3によって本発明の第1実施形態である電磁アクチュエータ1及びこれを用いたデファレンシャル装置3の説明をする。なお、以下の説明の中で左右の方向はデファレンシャル装置3が用いられた車両及び図1での左右の方向である。
【0031】
[電磁アクチュエータ1の構成]
電磁アクチュエータ1は、電磁コイル5と、電磁コイル5の磁束を通すリング状のコイルハウジング7,9(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)と、コイルハウジング7,9を一体に連結するネジ部11(磁力向上手段)から構成されている。
【0032】
電磁コイル5は、コイルハウジング7,9に収容され、そのリード線はデファレンシャル装置3を収容するデフキャリヤ13の外部に引き出され、コントローラを介して車載のバッテリに接続されている。
【0033】
コイルハウジング7は断面がコの字状であり、コイルハウジング7,9は、互いの間に電磁コイル5を収容した状態で、ネジ部11によって互いにネジ止めされ一体にされている。また、図3のように、周方向の数個所でネジ部11に加締め部14を設ければネジ部11の弛みが防止される。コイルハウジング7,9は磁性材料(S10C)で作られており、ネジ部11を設けたことにより、コイルハウジング7,9の接合部で電磁コイル5の磁束ロスが軽減される。また、コイルハウジング7は連結部材を介してデフキャリヤ13に固定され、回り止めされており、図2のように、コイルハウジング9の内周には、周方向等間隔に4個の切り欠き15が設けられている。
【0034】
[デファレンシャル装置3の構成]
デファレンシャル装置3は、電磁アクチュエータ1、ガイド部材17、プランジャ19、スライド部材21、デフケース23、ベベルギア式の差動機構25、ドッグクラッチ27(被操作装置)、リターンスプリング29、ポジションスイッチ31、コントローラから構成されている。
【0035】
ガイド部材17は、ステンレス鋼のような非磁性材料で作られており、コイルハウジング7の内周側に溶接され、図1のように、デフケース23の右ボス部33に形成された段差部35と、右ボス部33を支承するテーパーローラーベアリング37のインナーレース39とスラストワッシャ41との間で軸方向に位置決めされている。
【0036】
プランジャ19は、磁性材料(S10C)で作られており、スライド部材21の外周に固定されている。プランジャ19とスライド部材21はコイルハウジング7,9とガイド部材17との間に配置されており、プランジャ19は上記のコイルハウジング9に組み付けられ、スライド部材21はガイド部材17の外周で軸方向移動自在に支承されている。なお、ガイド部材17の、スライド部材21との摺動部にはテフロン(登録商標)のコーティングが施され、ガイド部材17との間で摺動抵抗を低減させている。
【0037】
プランジャ19とコイルハウジング7,9とによって電磁コイル5の磁束経路が構成されている。また、電磁コイル5の磁力によってプランジャ19が左方へ移動したときに、プランジャ19と突き当たって停止させるストッパ部43がコイルハウジング9に設けられている。コイルハウジング7,9の間には、磁束のバイパスを防止し、コイルハウジング7とプランジャ19とコイルハウジング9を通る磁束を成立させるためのエアギャップ45が設けられている。さらに、ガイド部材17には、プランジャ19が右方へ戻るときにオイルを流出させて抵抗を低減し、ドッグクラッチ27の噛み合い解除レスポンスを向上させる開口47が設けられている。
【0038】
デフケース23は、デフキャリヤ13の内部に配置されており、ケーシング本体49とカバー51から構成されている。ケーシング本体49には、上記のボス部33及び段差部35と、開口53,55、57と、支承部59が設けられており、カバー51には、ボス部61と、開口63と、支承部65と、オイル流路67が設けられている。ケーシング本体49とカバー51はボルト69で固定されており、各ボス部33,61は上記のテーパーローラーベアリング37を介してそれぞれデフキャリヤ13に支承されている。また、デフキャリヤ13にはオイル溜りが形成されており、各ボス部33,61の内周には螺旋状のオイル溝が形成されている。
【0039】
デフケース23にはリングギアがボルトで固定されており、このリングギアは動力伝達系のギヤと噛み合っている。この動力伝達系はトランスミッション側に連結されており、デフケース23はトランスミッションとこの動力伝達系とを介して伝達されるエンジンの駆動力により回転駆動される。
【0040】
差動機構25は、複数本のピニオンシャフト71、各ピニオンシャフト71上で支承されたピニオンギア73、出力側のサイドギア75,77から構成されている。
【0041】
各ピニオンシャフト71は、デフケース23(ケーシング本体49)の開口55に端部を係合し、スプリングピン79によって抜け止めされている。デフケース23と各ピニオンギア73との間には球面ワッシャ81が配置されており、ピニオンギア73の遠心力と、サイドギア75,77との噛み合いによってピニオンギア73に生じる噛み合い反力を受けている。サイドギア75,77は左右からそれぞれ各ピニオンギア73と噛み合っており、各サイドギア75,77のボス部83,85はカバー51とケーシング本体49の支承部65,59によって回転自在に支承されている。各ボス部83,85はスプライン連結された車軸を介して左右の車輪側に連結されている。また、左サイドギア75とカバー51との間にはスラストワッシャ87が配置され、サイドギア75の噛み合い反力を受けており、右サイドギア77とケーシング本体49との間にはスラストワッシャ89,89が配置され、サイドギア77の噛み合い反力を受けている。
【0042】
ドッグクラッチ27は、右サイドギア77に形成された噛み合い歯91と、クラッチリング93に形成された噛み合い歯95によって構成されている。
【0043】
クラッチリング93には脚部97が周方向等間隔に形成されており、各脚部97はケーシング本体49の開口57を貫通してデフケース23に回り止めされ、軸方向移動自在に配置されている。図1の下半部のようにクラッチリング93が左に移動するとドッグクラッチ27が噛み合って差動機構25の差動がロックされ、図1の上半部のようにクラッチリング93が右に移動するとドッグクラッチ27の噛み合いが解除され、差動ロックが解除される。
【0044】
リターンスプリング29は右サイドギア77とクラッチリング93との間に配置され、クラッチリング93をドッグクラッチ27の噛み合い解除側(右方)に付勢している。また、クラッチリング93はリターンスプリング29の付勢力により、プレッシャープレート99を介してスライド部材21(プランジャ19)を右方に押圧している。このプレッシャープレート99は腕部101によって回転側のクラッチリング93(脚部97)に連結されており、静止側のスライド部材21との間で摺動(相対回転)を許容(吸収)している。
【0045】
ポジションスイッチ31はデフキャリヤ13に取り付けられており、プレッシャープレート99の軸方向往復移動に伴ってON−OFFし、その信号をコントローラに送る。
【0046】
[動作及び作用]
コントローラは、電磁コイル5の励磁と、励磁停止を行う。
【0047】
電磁コイル5が励磁されると、磁束経路に磁束ループ103が発生し、その磁力によってプランジャ19が、図1の上半部の位置から下半部の位置まで移動し、プレッシャープレート99を介し、リターンスプリング29の付勢力に抗してクラッチリング93を左方へ押圧し、ドッグクラッチ27を噛み合わせて差動機構25の差動をロックさせる。
【0048】
また、上記のようにコイルハウジング7,9をネジ部11で連結したことによりコイルハウジング7,9の接合部で接触面積が増加し、局部的な磁束の集中と磁束の集中による磁束の飽和が軽減され、その上、接合部の面圧が上昇して磁束の透過が促される。こうして磁束のロスが軽減され、プランジャ19を大きな磁力で移動操作することができる。
【0049】
悪路や低μ路を走行中のように、左右の駆動輪が空転し易い状況で差動をロックさせると、空転車輪からの駆動力の逃げが防止され、悪路などの脱出性、走破性が向上し、車両のスタックが防止される。
【0050】
また、電磁コイル5の励磁を停止すると、リターンスプリング29の付勢力によってクラッチリング93とプレッシャープレート99とプランジャ19が右方へ戻り、ドッグクラッチ27の噛み合いが解除され、差動機構25の差動が自由になる。
【0051】
コントローラはポジションスイッチ31から受け取ったON−OFF信号に基づいて、デファレンシャル装置3(差動機構25)の差動回転がロックされているか否かを判断する。
【0052】
また、デフケース23とリングギアが回転するとオイル溜りのオイルが掻き上げられ、掻き上げられたオイルはデフケース23の開口53,57,63から流入し、さらに、ボス部33,61内周の各螺旋状オイル溝のネジポンプ作用によってオイル流路67と、スラストワッシャ87,89の隙間を通ってデフケース23の内部に流入する。流入したオイルは、差動機構25を構成する各ギア73,75,77の噛み合い部、ピニオンシャフト71とピニオンギア73の摺動部、デフケース23とクラッチリング93との摺動部、ドッグクラッチ27(噛み合い歯91,95)などに供給されてこれらを潤滑・冷却する。また、電磁アクチュエータ1の下部もオイル溜りに浸されており、プランジャ19とプレッシャープレート99との摺動部、プランジャ19とコイルハウジング7,9との摺動部及びスライド部材21とガイド部材17との摺動部、ポジションスイッチ31とプレッシャープレート99との摺動部なども潤滑・冷却される。
【0053】
上記の各潤滑・冷却部では、供給されたオイルによって磨耗が軽減され、耐久性が向上すると共に、各摺動部での摩擦抵抗の低減によってエンジンの燃費が向上する。
【0054】
[電磁アクチュエータ1及びデファレンシャル装置3の効果]
電磁アクチュエータ1とデファレンシャル装置3は、上記のように構成されたことによって次のような効果が得られる。
【0055】
コイルハウジング7,9をネジ部11で連結して接触面積を広くし、接合部の面圧を上昇させたことにより、磁束のロスが軽減され、プランジャ19を大きな磁力で移動操作することができる。
【0056】
従って、プランジャ19に倒れや囓りに伴う移動抵抗が生じても、その影響を受けにくくなると共に、オイルの粘度が大きくなる低温時(寒冷期や寒冷地)でもオイルによる移動抵抗の影響を受けにくくなり、プランジャ19の操作レスポンスの低下とバラツキが防止されるから、電磁アクチュエータ1の動作が円滑で安定する。
【0057】
また、電磁アクチュエータ1によってドッグクラッチ27が円滑に断続されるから、車両が悪路などを走行する際、必要に応じて差動機構25の差動を迅速にロックすれば、悪路の脱出性や走破性の向上効果、スタックの防止効果が高く保たれる。
【0058】
また、電磁アクチュエータ1は、充分な磁力(操作力)が得られるから、磁束のロスを補うために電磁コイル5を大型にし、励磁電流を増加する必要がなくなり、電磁アクチュエータ1とデファレンシャル装置3の大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリーの負担増加が防止され、エンジンの燃費が向上する。
【0059】
また、電磁コイル5を収容するコイルハウジング7,9は電磁アクチュエータ1にとって必須の部材であり、このように必須の部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段(ネジ部11)を設けたから、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0060】
また、ネジ部11によってコイルハウジング7,9を連結する電磁アクチュエータ1では、圧入や加締めを用いる従来例と異なって治具や工具が不要であり、それだけコストが低減されると共に、コイルハウジング9をコイルハウジング7にネジ込む作業は極めて容易であり、組み付け性がよい。
【0061】
また、ネジ部11の固定機能によってコイルハウジング7,9が強固に連結されるから、走行中などに振動や衝撃を受けても、コイルハウジング9がコイルハウジング7から軸方向に浮き上がったり、外れたりすることが防止され、電磁アクチュエータ1の信頼性が向上し、長期にわたって動作が正常に保たれる。
【0062】
また、コイルハウジング7,9の強度も、ネジ部11の固定機能によって大きく向上する。
【0063】
また、ネジ止め(ネジ部11を設けること)は特に広いスペースが必要ないから、限られたスペースで上記のような種々の効果が得られる。
【0064】
[第2実施形態]
図4は本発明の第2実施形態である電磁アクチュエータ201を示している。
【0065】
[電磁アクチュエータ201の構成]
電磁アクチュエータ201は、電磁コイル5と、電磁コイル5を収容するコイルハウジング7,9と、コイルハウジング7,9を一体に連結するネジ部203(磁力向上手段)から構成されている。
【0066】
第1実施形態はコイルハウジング7,9を平行ネジのネジ部11で連結した例であるが、電磁アクチュエータ201では、コイルハウジング7,9がテーパーネジ203で連結されている。
【0067】
このようにコイルハウジング7,9をテーパーネジ203で連結したことにより、コイルハウジング7,9の接触面積が平行のネジ部11より増加し、また、接合部(ネジ部203)の面圧も上昇する。
【0068】
従って、第2実施形態の電動式カップリング201は、磁束ロスの軽減効果がさらに向上し、プランジャ19の操作力がそれだけ大きくなり、第1実施形態と同等の、あるいは、第1実施形態以上の作用・効果が得られる。
【0069】
[第3実施形態]
図5と図6によって本発明の第3実施形態である電磁アクチュエータ301及びこれを用いたリヤデフ303及びこれを用いた動力伝達装置の説明をする。なお、以下の説明の中で左右の方向はリヤデフ303と動力伝達装置を後輪側の動力系に用いた4輪駆動車及び図5での左右の方向である。
【0070】
この4輪駆動車は、駆動力源にエンジンと電動モータとを併用するハイブリッドの電気自動車であり、エンジンを駆動力源にする前輪側の動力系と、電動モータを駆動力源にする後輪側の動力系から構成され、リヤデフ303を用いた動力伝達装置は後輪側の動力系に用いられている。
【0071】
前輪側動力系は、横置きのエンジン及びトランスミッションと、フロントデフ(駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置と)、前車軸と、左右の前輪から構成されており、後輪側の動力系は、上記の動力伝達装置と、後車軸と、左右の後輪から構成されている。
【0072】
[電磁アクチュエータ301の構成]
電磁アクチュエータ301は、電磁コイル305と、電磁コイル305の磁束を通すリング状のコイルハウジング307(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)及びロータ309(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)と、コイルハウジング307がロータ309に貫入する矩形の貫入部311,313(磁力向上手段)から構成されている。
【0073】
電磁コイル305は、コイルハウジング307とロータ309との間に収容されており、そのリード線はリヤデフ303と動力伝達装置を収容するケーシング315の外部に引き出され、コントローラを介して車載のバッテリに接続されている。
【0074】
コイルハウジング307は断面がコの字状であり、上記のように互いの間に電磁コイル305を収容した状態で、コイルハウジング307は貫入部311,313によってロータ309に貫入している。下記のように、これらの貫入部311,313を設けたことにより電磁コイル305の磁束ロスが軽減されている。コイルハウジング307はケーシング315に固定され、回り止めされており、コイルハウジング307とロータ309との間には適度なエアギャップが形成されている。コイルハウジング307とロータ309は磁性材料(S10C)で作られており、コイルハウジング307と、上記のエアギャップと、ロータ309と、下記のパイロットクラッチ329とアーマチャ339とによって電磁コイル305の磁束経路が構成されている。
【0075】
ロータ309には、図5,6のように、磁束経路上での磁束の短絡を軽減する開口317と、リヤデフ303側への磁束の漏洩を軽減する開口319がそれぞれ周方向等間隔に6個設けられており、また、係合部321が周方向等間隔に3個設けられている。
【0076】
[リヤデフ303の構成]
リヤデフ303は、電磁アクチュエータ301と、アウターデフケース323と、インナーデフケース325と、多板式のメインクラッチ327及びパイロットクラッチ329と、ボールカム331と、プレッシャープレート333と、カムリング335と、リターンスプリング337と、アーマチャ339と、ベベルギア式の差動機構341と、コントローラから構成されている。
【0077】
アウターデフケース323には、左端に大径ギア343が溶接され、また、内周にはスプライン部345が設けられており、大径ギア343をボールベアリング347,347によってインナーデフケース325上に支承されている。
【0078】
インナーデフケース325には、左右のボス部349,351と、外周のスプライン部353と、支承部355,357と、開口359,361が設けられており、左のボス部349をボールベアリング363によってケーシング315に支承され、右のボス部351をボールベアリング363と電磁コイル305のコイルハウジング307とを介してケーシング315に支承されている。ボス部349,351の内周には螺旋状のオイル溝が形成されている。また、上記のロータ309は、スナップリング365によって右ボス部351の外周に固定され軸方向に位置決めされていると共に、アウターデフケース323の右側壁を兼ねている。
【0079】
メインクラッチ327は、アウターデフケース323とインナーデフケース325との間に配置されており、アウタープレート367はアウターデフケース323のスプライン部345に連結され、インナープレート369はインナーデフケース325のスプライン部353に連結されている。
【0080】
パイロットクラッチ329は、アウターデフケース323とカムリング335との間に配置されており、アウタープレート371はアウターデフケース323のスプライン部345に連結され、インナープレート373はカムリング335の外周にスプライン連結されている。また、パイロットクラッチ329(インナープレート373)とロータ309との間にはワッシャ372が配置され、その腕部374をロータ309の係合部321に係合させている。このワッシャ372はインナープレート373とロータ309が直接摺動して摩耗するのを防止する。
【0081】
ボールカム331はプレッシャープレート333とカムリング335との間に配置されている。プレッシャープレート333はインナーデフケース325のスプライン部353に軸方向移動自在にスプライン連結されており、ボールカム331のカムスラスト力を受けてメインクラッチ327を押圧する。また、カムリング335とロータ309との間には、ボールカム331のカム反力を受けると共に、カムリング335とロータ309間の相対回転を吸収するスラストベアリング375が配置されている。
【0082】
リターンスプリング337は、プレッシャープレート333とインナーデフケース325との間に配置されており、プレッシャープレート333をメインクラッチ327の連結解除方向(右方)に付勢している。
【0083】
アーマチャ339はリング状に形成されており、プレッシャープレート333とパイロットクラッチ329(インナープレート373)との間に軸方向移動自在に配置されている。また、アーマチャ339の内周はプレッシャープレート333に形成された段差部377の外周で相対回転自在に支持され、センターリングされている。
【0084】
差動機構341は、複数本のピニオンシャフト379、ピニオンギア381、出力側のサイドギア383,385などから構成されている。
【0085】
各ピニオンシャフト379はインナーデフケース325の回転中心から放射状に配置されており、それぞれの先端はインナーデフケース325の開口359に係合すると共に、止め輪387でインナーデフケース325に取り付けられたメインクラッチ327用の受圧部材389に、段差部391を突き当てて回り止めされている。各ピニオンギア381はピニオンシャフト379上でそれぞれ回転自在に支承されており、サイドギア383,385は左右からピニオンギア381と噛み合っている。各サイドギア383,385とインナーデフケース325との間には、サイドギア383,385の噛み合い反力を受けるスラストワッシャ393がそれぞれ配置されている。サイドギア383,385は左右の後車軸にそれぞれスプライン連結されており、各後車軸はインナーデフケース325の左右のボス部349,351とケーシング315とをそれぞれ貫通して左右の後輪に連結されている。各後車軸とケーシング315との間にはオイルシール395がそれぞれ配置されており、オイル漏れと外部からの異物の侵入を防止している。
【0086】
インナーデフケース325の回転はピニオンシャフト379からピニオンギア381を介して各サイドギア383,385に配分され、さらに後車軸から左右の後輪に伝達される。また、悪路や低μ路などで後輪の間に駆動抵抗差が生じると、インナーデフケース325を回転させる駆動力はピニオンギア381の自転によって左右の後輪に差動配分される。
【0087】
[動力伝達装置の構成]
動力伝達装置は、電動モータと、減速機構と、リヤデフ303と、電動モータ用のバッテリーと、各種センサーと、コントローラから構成されている。
【0088】
電動モータは、コントローラを介してバッテリーに接続されており、ケーシング315の外側にボルト止めされ、その出力軸はケーシング315に貫入し、ケーシング315の内部にベアリングで支承された第1軸に連結されている。
【0089】
減速機構は、上記の第1軸と、第2軸と、2段の減速ギヤ組から構成されている。第1軸と同様に、第2軸もケーシング315の内部にベアリングで支承されており、初段の減速ギア組は互いに噛み合った小径ギアと大径ギアから構成され、終段の減速ギア組は互いに噛み合った小径ギアと大径ギア343から構成されている。初段減速ギア組の小径ギアは第1軸に一体形成されており、大径ギアは第2軸に圧入されている。また、終段減速ギア組の小径ギアは第2軸に一体形成されており、大径ギア343は、上記のように、リヤデフ303のアウターデフケース323に溶接されている。
【0090】
電動モータの駆動力は、初段と終段の各減速ギア組によって後輪の走行回転数域まで減速され、トルクが増幅されてリヤデフ303のアウターデフケース323を回転させる。
【0091】
[動作及び作用]
コントローラは、センサーからの情報に基づいて電動モータの駆動、回転数調整、駆動停止などを行うと共に、通常の走行中は、電動モータの駆動停止及びリヤデフ303(メインクラッチ327)による駆動力の遮断を行って後輪側動力系の作動を停止させると共に、前輪をエンジンで駆動し、車両を前輪側動力系による2輪駆動状態にする。また、大きな駆動力が必要になると、コントローラは電動モータを駆動すると共に、リヤデフ303のメインクラッチ327を連結して後輪側動力系を作動させ、後輪を補助的に駆動し、車両を4輪駆動走行させる。
【0092】
さらに、コントローラは、センサーによって検知した路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて、電磁コイル305の励磁、励磁電流の制御、励磁停止を行う。また、電磁コイル305の励磁は、電動モータを回転させるとき同時に行われ、電磁コイル305の励磁停止は、電動モータの回転を停止させるとき同時に行われる。
【0093】
電磁コイル305が励磁されると、磁束経路上に磁束ループ397が形成されてアーマチャ339が吸引され、ロータ309との間でパイロットクラッチ329を押圧して締結しパイロットトルクを発生させる。パイロットトルクが発生するとパイロットクラッチ329によってアウターデフケース323に連結されたカムリング335と、インナーデフケース325側のプレッシャープレート333とを介してボールカム331に電動モータの駆動力が掛かり、ボールカム331はこの駆動力を増幅しながらカムスラスト力に変換し、プレッシャープレート333を左方に移動させてメインクラッチ327を押圧し締結させる。
【0094】
また、上記のように、コイルハウジング307の貫入部311,313がロータ309に貫入しており、これらの貫入部311,313が矩形であるから、少なくとも貫入部311では磁束をほぼ直角に横切る2対の対向面が得られると共に、コイルハウジング307とロータ309との重なり幅(貫入部311,313の深さ)が大きくなって磁束経路面積が拡大され、磁気飽和が防止されて磁束のロスが軽減される。従って、電磁コイル305を小型にしても、充分な磁力でアーマチャ339を移動操作することができる。
【0095】
メインクラッチ327が連結されると、大径ギア343(アウターデフケース323)を回転させる電動モータの駆動力は、インナーデフケース325に伝達され、その回転は差動機構341によって左右の後輪に配分され、車両が4輪駆動状態になる。
【0096】
このとき、電磁コイル305の励磁電流を制御すると、パイロットクラッチ329の滑り率が変化してボールカム331のカムスラスト力が変わり、後輪側に伝達される駆動力が制御される。このような駆動力の制御を、例えば、旋回時に行うと旋回性と車体の安定性とを大きく向上させることができる。
【0097】
また、電磁コイル305の励磁を停止すると、パイロットクラッチ329が開放されてボールカム331のカムスラスト力が消失し、リターンスプリング337の付勢力によってプレッシャープレート333が右方に戻り、メインクラッチ327の連結が解除され、車両は前輪駆動の2輪駆動状態になる。
【0098】
メインクラッチ327の連結解除操作は、上記のように電動モータの停止操作と同時に行われるから、2輪駆動状態では、アウターデフケース323と減速機構と電動モータが後輪の連れ回りから切り離され、減速機構、電動モータ及びそのベアリング、バッテリー、レギュレータなどの集積回路が後輪の連れ回りによる悪影響から保護され、耐久性が向上する。
【0099】
また、ケーシング315に設けられたオイル溜りのオイルは、各減速ギア組と大径ギア343の回転によって撥ね上げられ、各減速ギア組とそのベアリングを潤滑・冷却すると共に、アウターデフケース323とインナーデフケース325の左右両側の隙間からこれらの間に流入し、パイロットクラッチ329、アーマチャ339とプレッシャープレート333との摺動部(段差部377)、ボールカム331、スラストベアリング375、メインクラッチ327などを潤滑・冷却する。また、オイル溜りのオイルはインナーデフケース325の回転に伴って、ボス部349,351の螺旋状オイル溝からそのネジポンプ作用によって内部に流入し、差動機構341の各ギア381,383,385の噛み合い部などを潤滑・冷却し、さらに遠心力を受けて開口361からメインクラッチ327側に移動し、メインクラッチ327、ボールカム331、パイロットクラッチ329などを潤滑・冷却した後、オイル溜りに戻る。
【0100】
[電磁アクチュエータ301及びリヤデフ303の効果]
電磁アクチュエータ301とリヤデフ303は、上記のように構成されたことによって次のような効果が得られる。
【0101】
コイルハウジング307の貫入部311,313により、ロータ309との間で磁束のロスが軽減されるから、電磁コイル305は充分な磁力でアーマチャ339を操作できる。
【0102】
従って、アーマチャ339に倒れや囓りに伴う移動抵抗が生じても、その影響を受けにくくなると共に、オイルの粘度が大きくなる低温時でもオイルによる移動抵抗の影響を受けにくくなり、アーマチャ339の操作レスポンスの低下とバラツキが防止されるから、リヤデフ303(パイロットクラッチ329とメインクラッチ327)は、電磁アクチュエータ301により円滑で安定して断続操作される。
【0103】
このように、メインクラッチ327が円滑に断続操作されるから、路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて、メインクラッチ327を迅速に断続操作すれば、悪路の脱出性や走破性、スタックの防止効果、発進性、加速性、旋回性を大きく向上させることができる。
【0104】
また、充分な磁力(操作力)が得られるから、磁束のロスを補うために電磁コイル305を大型にし、励磁電流を増加する必要がなくなり、電磁アクチュエータ301とリヤデフ303の大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリーの負担増加が防止され、エンジンの燃費が向上する。
【0105】
また、電磁コイル305を収容するコイルハウジング307とロータ309は電磁アクチュエータ301にとって必須の部材であり、このように必須の部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段(貫入部311,313)を設けたから、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0106】
また、コイルハウジング307の貫入部311,313をロータ309に貫入させるこの構成では、圧入や加締めを用いる従来例と異なって治具や工具が不要であり、それだけコストが低減される。
【0107】
また、コイルハウジング307をロータ309に貫入させる構成は、構造が簡単であり、低コストに実施できる上に、貫入部311,313を設けるには特に広いスペースが必要ないから、限られたスペースで上記のような種々の効果が得られる。
【0108】
[第4実施形態]
図7は本発明の第4実施形態である電磁アクチュエータ401を示しており、この電磁アクチュエータ401は、第3実施形態のリヤデフ303で、電磁アクチュエータ301に代えて用いられている。
【0109】
[電磁アクチュエータ401の構成]
電磁アクチュエータ401は、電磁コイル305と、電磁コイル305を収容するコイルハウジング307及びロータ309と、コイルハウジング307がロータ309に貫入する貫入部403,405(磁力向上手段)から構成されている。
【0110】
第3実施形態はコイルハウジング307の矩形の貫入部311,313をロータ309に貫入させた例であるが、電磁アクチュエータ401では、コイルハウジング307が楔形の貫入部403,405をロータ309に貫入させている。
【0111】
このように、第4実施形態の電動式カップリング401は、貫入部403,405を楔形にしたことによって互いの間で磁束を横切る長い対向面が得られ、磁束ロスの軽減効果が向上し、アーマチャ339の操作力が大きくなり、第3実施形態と同等の作用・効果が得られる。
【0112】
[本発明の範囲に含まれる他の態様]
なお、本発明の電磁アクチュエータでは、磁力で操作する部材は、各実施形態のように、プランジャでも、アーマチャでもよい。
【0113】
また、本発明の電磁アクチュエータの被操作装置は、クラッチに限らない。また、このクラッチも、各実施形態のように噛み合いクラッチや多板クラッチの他に、単板クラッチやコーンクラッチのような摩擦クラッチでもよく、さらに、第3実施形態のように、磁力でパイロットクラッチを連結してカム機構を作動させ、メインクラッチを締結させるように構成しても、あるいは、磁力でクラッチを直接連結させるように構成してもよい。
【0114】
【発明の効果】
請求項1の電磁アクチュエータは、磁束経路部材に設けた磁力向上手段により充分な磁力(操作力)が得られ、磁束を増やすために電磁コイルやコイルハウジング等を大型にする必要がない。従って、大型化に伴うレイアウト上の自由度及び車載性の低下と、バッテリー負担の増加によるエネルギーロスが避けられる。
【0115】
請求項2の電磁アクチュエータは、請求項1の構成と同等の効果を得ることができる。
【0116】
請求項3の電磁アクチュエータは、請求項1または請求項2の構成と同等の効果を得ることができる。
【0117】
また、電磁コイルを収容するために必須の部材を磁束経路部材に利用して磁力向上手段を設けたから、部品点数の増加とコストの上昇が避けられる。
【0118】
請求項4の電磁アクチュエータは、磁力向上手段のネジ部によって、各磁性部材の接触面積が増加し、接合部の面圧が上昇して磁束のロスが軽減され、請求項1〜請求項3の構成と同等の効果を得ることができる。
【0119】
また、ネジ部をテーパーネジにすれば、磁束ロスの軽減効果がさらに向上する。
【0120】
また、ネジ止めを用いる構成では、圧入や加締めを用の治具や工具が不要になってコストが低減されると共に、磁性部材の一方を他方にネジ込む作業は極めて容易であり、組み付け性がよい。
【0121】
また、ネジ部の固定機能によって各磁性部材の連結強度(収容部材の強度)が向上し、振動や衝撃を受けても、磁性部材の浮き上がりや外れが防止されて信頼性が向上し、動作が正常に保たれる。
【0122】
また、ネジ止めには広いスペースが必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【0123】
請求項5の電磁アクチュエータは、磁性部材の一方を他方に貫入させることによって磁束を横切る広い対向面が得られ、磁束のロスが軽減されて請求項1〜請求項3の構成と同等の効果を得ることができる。
【0124】
また、磁性部材の一方を他方に貫入させる構成は、構造が簡単であり、低コストで実施できる上に、広いスペースが必要ないから、限られたスペースで大きな磁力向上効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の電磁アクチュエータとこれを用いたデファレンシャル装置を示す断面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】第1実施形態の要部拡大断面図である。
【図4】第2実施形態の要部拡大断面図である。
【図5】第3実施形態の電磁アクチュエータとこれを用いたリヤデフを示す断面図である。
【図6】第3実施形態に用いられたロータの側面図である。
【図7】第4実施形態の要部拡大断面図である。
【図8】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 電磁アクチュエータ
5 電磁コイル
7,9 コイルハウジング(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)
11 コイルハウジング7,9を連結するネジ部(磁力向上手段)
201 電磁アクチュエータ
203 コイルハウジング7,9を連結するテーパーネジ部(磁力向上手段)
301 電磁アクチュエータ
307 コイルハウジング(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)
309 ロータ(磁束経路部材:収容部材:磁性部材)
311,313 コイルハウジング307がロータ309に貫入する矩形の貫入部(磁力向上手段)
401 電磁アクチュエータ
403,405 コイルハウジング307がロータ309に貫入する楔状の貫入部(磁力向上手段)
Claims (5)
- 電磁コイルと、
前記電磁コイルの磁束を通す磁束経路部材とを備え、
前記磁束経路部材に、磁力向上手段を設けたことを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1に記載された発明であって、
前記磁力向上手段が、前記磁束経路部材の磁束経路面積を拡大するように形成されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1または請求項2に記載された発明であって、
前記磁束経路部材が、前記電磁コイルを収容する磁性の収容部材であり、
前記磁力向上手段が、前記収容部材に設けられていることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項3に記載された発明であって、
前記収容部材が、複数個の磁性部材から構成されており、
前記磁性部材を、ネジ部によって螺着することにより、
前記ネジ部が、磁束経路面積を拡大して磁力を向上させる磁力向上手段を構成していることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項3に記載された発明であって、
前記収容部材が、複数個の磁性部材から構成されており、
前記磁性部材の一方を前記磁束を横切って他方に貫入させることにより、
前記貫入部が、磁束経路面積を拡大して磁力を向上させる磁力向上手段を構成していることを特徴とする電磁アクチュエータ。
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-
2003
- 2003-02-18 JP JP2003039696A patent/JP2004254367A/ja active Pending
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