JP2002048158A - カップリング及び発進クラッチ - Google Patents

カップリング及び発進クラッチ

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JP2002048158A
JP2002048158A JP2000236907A JP2000236907A JP2002048158A JP 2002048158 A JP2002048158 A JP 2002048158A JP 2000236907 A JP2000236907 A JP 2000236907A JP 2000236907 A JP2000236907 A JP 2000236907A JP 2002048158 A JP2002048158 A JP 2002048158A
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JP
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clutch
torque
coupling
plate
vehicle
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JP2000236907A
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Inventor
Kazunori Kuroda
和典 黒田
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GKN Driveline Japan Ltd
Original Assignee
Tochigi Fuji Sangyo KK
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  • Mechanical Operated Clutches (AREA)
  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ドラグトルクを防止しながら、充分なトルク
伝達容量を得る。 【解決手段】 入力側と出力側の各トルク伝達部材5,
9の間でトルクを伝達するメインクラッチと、操作手段
25によって断続操作されるパイロットクラッチ23
と、クラッチ23を介して入力する伝達トルクを増幅し
ながら押圧力に変換する変換手段17と、この押圧力に
よってメインクラッチを押圧し連結させる押圧部材19
とを備え、前記メインクラッチを、互いに並列に配置さ
れた摩擦クラッチ11と噛み合いクラッチ15とで構成
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の動力伝達系
などに用いられるカップリングと、発進クラッチに関す
る。
【0002】
【従来の技術】「ガイア新型車解説書 0−22頁、ト
ヨタ自動車株式会社 編集、同サービス部 発行、19
98年 5月29日」に図5のような電磁式のカップリ
ング501が記載されている。
【0003】カップリング501は4輪駆動車の後輪側
動力伝達系に配置されており、回転ケース503、ハブ
505、多板式のメインクラッチ507及びパイロット
クラッチ509、アーマチャ511、電磁石513、カ
ムリング515、ボールカム517、押圧部材519、
コントローラなどから構成されている。
【0004】回転ケース503はプロペラシャフトを介
してトランスファからトランスミッション側に連結され
ている。また、ハブ505にはドライブピニオンシャフ
ト521がスプライン連結されており、ドライブピニオ
ンシャフト521に一体形成されたドライブピニオンギ
ヤ523はリヤデフ(エンジンの駆動力を左右の後輪に
配分するデファレンシャル装置)側のリングギヤと噛み
合っている。
【0005】メインクラッチ507は回転ケース503
とハブ505との間に配置されており、パイロットクラ
ッチ509は回転ケース503とカムリング515との
間に配置されている。
【0006】ボールカム517はカムリング515と押
圧部材519との間に設けられており、押圧部材519
はスプライン部525によってハブ505に連結されて
いる。
【0007】回転ケース503にはオイルが充填されて
おり、メインクラッチ507とパイロットクラッチ50
9はこのオイルに浸されて湿式クラッチになっている。
【0008】コントローラは、電磁石513の励磁、励
磁電流の制御、励磁停止などを行う。
【0009】電磁石513が励磁されると、アーマチャ
511が吸引されてパイロットクラッチ509が押圧さ
れ、パイロットクラッチ509が締結されると、回転ケ
ース503とハブ505の間の伝達トルクがボールカム
517に掛かり、生じたカムスラスト力により押圧部材
519を介してメインクラッチ507が押圧され締結さ
れる。
【0010】カップリング501が連結されると、エン
ジンの駆動力が後輪に送られて車両は4輪駆動状態にな
り、悪路走破性、発進性、加速性、車体の安定性などが
向上する。
【0011】電磁石513の励磁電流を制御すると、パ
イロットクラッチ509の滑りによってボールカム51
7のカムスラスト力が変わり、メインクラッチ507の
連結力が変化して後輪に送られる駆動力が調整される。
【0012】また、電磁石513の励磁を停止すると、
パイロットクラッチ509が開放されてボールカム51
7のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ507が
開放されてカップリング501の連結が解除され、車両
は2輪駆動状態になる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】カップリング501の
ような構成の装置でトルク伝達容量を大きくするには、
メインクラッチ507とパイロットクラッチ509のク
ラッチ容量を大きくし、また、ボールカム517の容量
を大きくする必要がある。
【0014】メインクラッチ507とパイロットクラッ
チ509のクラッチ容量を大きくするには、これらのク
ラッチ板枚数を増やすか、これらを大径にする必要があ
る。
【0015】ところが、メインクラッチ507とパイロ
ットクラッチ509は、クラッチ板を充分に潤滑・冷却
して耐久性を高めるために、上記のように、一般に湿式
であり、オイル中で用いられるから、連結を解除するた
めに電磁石513の励磁を停止しても、オイルの粘性に
よってドラグトルク(引き摺りトルク)が発生する恐れ
がある。
【0016】しかも、クラッチ容量を大きくしようとク
ラッチ板の枚数を増やすと、ドラグトルクがそれだけ大
きくなる。
【0017】メインクラッチ507にドラグトルクが生
じると、このドラグトルクはそのままカップリング50
1の残留トルクになる。
【0018】されに、パイロットクラッチ509にドラ
グトルクが生じると、そのドラグトルクに応じた伝達ト
ルクがボールカム517に入力してカムスラスト力が生
じてしまい、メインクラッチ507(カップリング50
1)を締結してより大きな残留トルクを発生させる。
【0019】このように、ドラグトルクが生じるとカッ
プリング501は連結を完全には解除できなくなる。
【0020】カップリング501の連結を解除できない
と、後輪を切り離して車両を完全な2輪駆動状態にする
ことができなくなり、後輪側の動力伝達系が走行抵抗と
なってエンジンの燃費に影響を与えると共に、車両の旋
回性、回頭性などで意図した性能が得られなくなる。
【0021】また、カップリング501をエンジンと自
動変速機との間に配置して発進クラッチにする場合は、
連結解除操作しても発進クラッチの連結が完全には解除
されないから、信号などで停車したときに車体が前方に
這い出すクリープ現象が起きる。
【0022】また、発進クラッチがトルクを完全に遮断
できないと、自動変速機で円滑な変速が難しくなる上
に、シンクロ機構の容量をそれだけ大きくしなければな
らなくなるまた、パイロットクラッチ509のクラッチ
板枚数を増やすと、これを操作する電磁石513も大型
にする必要が生じ、カップリング501がそれだけ大型
で重くなり、車載性に影響する上に、バッテリの負担が
増加して、燃費にも影響してしまう。
【0023】また、トルク容量を大きくするためにメイ
ンクラッチ507とパイロットクラッチ509を大径に
すると、ドラグトルクの影響をそれだけ大きく受け易く
なる上に、カップリング501が大径になり、周辺部材
との干渉によって車載性に影響する。
【0024】また、ボールカム517の容量を大きくす
ると、カップリング501が重くなってしまう。
【0025】このように、トルク伝達容量の増加とドラ
グトルクの防止対策は、一方を採れば他側が悪化するか
ら、両立させることが難しい。
【0026】そこで、本発明は、ドラグトルクを防止し
ながら充分なトルク伝達容量が得ることができるカップ
リングと、同様に構成された発進クラッチの提供を目的
とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】請求項1のカップリング
は、入力側と出力側の各トルク伝達部材と、これら両ト
ルク伝達部材の間でトルクを伝達するメインクラッチ
と、操作手段によって断続操作されるパイロットクラッ
チと、パイロットクラッチを介して入力する伝達トルク
を増幅しながら押圧力に変換する変換手段と、この押圧
力によってメインクラッチを押圧し連結させる押圧部材
とを備え、前記メインクラッチが、互いに並列に配置さ
れた摩擦クラッチと噛み合いクラッチからなることを特
徴としている。
【0028】パイロットクラッチが連結されると、両ト
ルク伝達部材の間の伝達トルクを受けて変換手段が作動
し、この伝達トルクを増幅しながら押圧力に変換し、こ
の押圧力を受けた押圧部材がメインクラッチである摩擦
クラッチと噛み合いクラッチをそれぞれ押圧し、摩擦ク
ラッチを締結し、噛み合いクラッチを噛み合わせ、カッ
プリングを連結させる。
【0029】パイロットクラッチの連結を解除すると、
変換手段の押圧力が消失し、摩擦クラッチの締結と、噛
み合いクラッチの噛み合いがそれぞれ解除され、カップ
リングが開放される。
【0030】このカップリングを、4輪駆動車で2輪駆
動走行する際に切り離される車輪側の動力伝達系に配置
した場合は、カップリングを連結すると車両は4輪駆動
状態になり、悪路走破性、発進性、加速性、車体の安定
性などが向上する。
【0031】また、カップリングの連結を解除すると、
カップリングから車輪までが切り離されて車両は2輪駆
動状態になり、車両の回頭性、旋回性などが向上すると
共に、エンジンの燃費が向上する。
【0032】また、請求項1のカップリングは、摩擦ク
ラッチに加えて噛み合いクラッチを併用し、メインクラ
ッチを構成したから、摩擦クラッチだけでメインクラッ
チを構成する従来例と較べて、トルク伝達容量が大幅に
増加し、車輪に充分な駆動力を伝達することができる。
【0033】従って、トルク伝達容量を増やすために、
メインクラッチとパイロットクラッチのクラッチ板枚数
を増やす必要がなくなり、また、これらを大径にする必
要がなくなる。
【0034】このように、クラッチ板の枚数を増やす必
要がないから、オイルの粘性によるドラグトルクの増大
が防止され、メインクラッチとパイロットクラッチを大
径にする必要がないから、ドラグトルクの影響が増幅さ
れることはない。
【0035】また、メインクラッチを構成する噛み合い
クラッチと摩擦クラッチの間でクラッチ容量の配分割合
を任意に設定可能であり、例えば、全体のクラッチ容量
が同一の場合、噛み合いクラッチの容量を大きくすれ
ば、摩擦クラッチの容量を小さくすることが可能であ
り、摩擦クラッチの容量を小さくすれば、ドラグトルク
をそれだけ小さくできる。
【0036】こうして、ドラグトルクが極めて小さくな
り、実質的に防止されるから、カップリングの連結は、
解除操作に応じて迅速に、また、完全に解除される。
【0037】従って、このカップリングを動力伝達系に
用いる上記の4輪駆動車では、任意のタイミングで車輪
を切り離し、完全な2輪駆動状態にすることができるか
ら、旋回性、回頭性などで所望の性能が得られると共
に、ドラグトルクが原因の切り離し側の動力伝達系の走
行抵抗によるエンジンの燃費への影響が防止される。
【0038】また、上記のように、充分なトルク伝達容
量が得られるから、パイロットクラッチの操作手段(例
えば、電磁石)と、メインクラッチを押圧する変換手段
も大型にする必要がなくなり、さらに、メインクラッチ
とパイロットクラッチが大径化しないから、カップリン
グは、重量増加、大径化、大径化による周辺部材との干
渉などが防止され、車載性が大幅に向上する。
【0039】また、操作手段の駆動源(例えば、バッテ
リ)の負担増加と燃費への影響が防止される。
【0040】請求項1のカップリングは、上記のよう
に、トルク伝達容量の増加とドラグトルクの防止とを両
立させた上に、ドラグトルクが極めて小さいから、内部
をオイルによって充分に潤滑・冷却することが可能であ
り、それだけ高い耐久性が得ることができる。
【0041】また、メインクラッチの摩擦クラッチと噛
み合いクラッチが押圧される過程で、摩擦クラッチの締
結が始まるタイミングを、噛み合いクラッチが噛み合う
タイミングより適度に早くすれば、先に締結が始まる摩
擦クラッチによって締結の度合いに応じたトルク伝達が
開始されると共に、その摩擦抵抗によって噛み合いクラ
ッチを構成する噛み合い歯の相対回転速度が小さくな
り、位相が合い易くなる。
【0042】噛み合いクラッチは、このような摩擦クラ
ッチのシンクロ機能によって噛み合いが円滑に行われ、
位相が合うまでに生じるラチェッティングの時間が短縮
され、ラチェット音が大幅に低減されると共に、噛み合
いクラッチの耐久性を向上することができる。
【0043】さらに、噛み合いクラッチの噛み合いに先
立って、上記のように、摩擦クラッチが締結されてお
り、カップリングの伝達トルクが既に立ち上がっている
から、噛み合いクラッチが噛み合ったときのショックが
大幅に低減され、車両の乗員が受ける違和感が緩和され
る。
【0044】また、摩擦クラッチでシンクロ機能が得ら
れることによって、噛み合いクラッチ用のシンクロ機構
が不要になるから、カップリングは、シンクロ機構を装
備することに伴う構造の複雑化、大型化、重量増加、車
載性への影響、コストの上昇などが避けられる。
【0045】請求項2の発明は、請求項1に記載のカッ
プリングであって、摩擦クラッチの押圧側、または、受
圧側に弾性部材を配置したことを特徴とし、請求項1の
構成と同等の作用・効果が得られる。
【0046】また、摩擦クラッチの押圧側か受圧側に弾
性部材を配置したことによって、摩擦クラッチの締結が
それだけ早く開始されると共に、締結が開始されてから
終了するまでの押圧ストロークが長くなる。
【0047】ストロークが長くなることによって、摩擦
クラッチによるトルクの立ち上がりが緩やかになり、カ
ップリングを連結したときのショックが小さくなるか
ら、乗員の違和感がさらに緩和される。
【0048】また、弾性部材を配置することによって摩
擦クラッチの締結が早く始まるから、摩擦クラッチを先
に締結させてシンクロ機能やショック低減機能などを得
る上記のような構成が容易になる。
【0049】請求項3の発明は、請求項1または請求項
2に記載の発明であって、4輪駆動車において2輪駆動
走行時に切り離される車輪側の動力伝達系に配置され、
この車輪を断続することを特徴とし、請求項1または請
求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0050】また、本発明のカップリングは、上記のよ
うにドラグトルクを実質的に防止できるから、2輪駆動
状態で車輪を切り離したときに、ドラグトルクによる車
輪の連れ回りが防止され、旋回性、回頭性などで所望の
性能が得られると共に、ドラグトルクによる切り離し側
の動力伝達系での走行抵抗が大幅に低減され、燃費が向
上する。
【0051】しかも、4輪駆動状態と2輪駆動状態とを
切り換える4輪駆動車では、2輪駆動状態で走行する時
間が4輪駆動状態で走行する時間より遙かに長いから、
ドラグトルクを極めて小さくする本発明のカップリング
は、走行時間の長い2輪駆動状態でドラグトルクの防止
効果が得られる請求項3の構成に好適である。
【0052】また、本発明のカップリングは、補助動力
を用いた4輪駆動車にも好適であり、例えば、2輪駆動
走行に切り換えたとき、あるいは、4輪駆動状態でロー
ルバック現象(登坂時にエンジン側車輪の空転によって
車体が後退する現象)が生じたときに、カップリングに
よって補助動力側の車輪を切り離すように構成すれば、
上記のようにドラグトルクが極めて小さいから、補助動
力と車輪とを確実に切り離することができる。
【0053】さらに、補助動力に電動モータを用いたも
のでは、車輪の連れ回りによって電動モータが無理に回
されることが防止され、磁界側あるいは回転子側の巻線
に掛かる負担と温度上昇、軸受けに掛かる負担などが軽
減され、電動モータの耐久性が大きく向上する。
【0054】また、ブラシタイプの電動モータでは、ブ
ラシの耐久性も向上するから、ブラシの交換回数がそれ
だけ少なくてすみ、保守コストを大幅に削減することが
できる。
【0055】また、電動モータの起電力によってバッテ
リ、オルタネータ、制御回路の構成素子などに大きな負
荷が掛かることが防止され、これらの機能が正常に保た
れると共に、耐久性が大きく向上する。
【0056】請求項4の発進クラッチは、請求項1〜3
の何れか一項に記載されたカップリングの入力側トルク
伝達部材をエンジン側に連結し、出力側トルク伝達部材
を変速機側に連結したことを特徴とする。
【0057】この構成は、請求項1〜3のカップリング
をエンジンと変速機の間に配置して発進クラッチにした
ものであり、上記のように、ドラグトルクが防止され、
連結解除操作に応じて連結を完全に解除できるから、信
号などで停車したときのクリープ現象が防止され、クリ
ープ現象に伴う燃費への影響が防止される。
【0058】また、変速機は、この発進クラッチによっ
て変速時にエンジンと完全に遮断されるから、円滑な変
速が可能になる。
【0059】従って、変速機のシンクロ機構に必要な容
量がそれだけ小さくなり、シンクロ機構を含めた変速機
が小型軽量になり、車載性が向上する。
【0060】
【発明の実施の形態】[第1実施形態]図1によってカ
ップリング1(本発明の第1実施形態)の説明をする。
【0061】カップリング1は請求項1,2,3の特徴
を備えており、後輪を切り離して2輪駆動状態にする4
輪駆動車で、リヤデフとエンジン(トランスファ)側と
の間に配置されている。また、図1の左方はこの車両の
前方(エンジン側)に相当し、符号を与えていない部材
等は図示されていない。
【0062】この車両は、常時エンジンで前輪を駆動す
る2輪駆動状態で走行し、必要に応じてカップリング1
により後輪をエンジン側に連結し、4輪駆動状態にす
る。
【0063】カップリング1は、クラッチハウジング
3、入力軸5(入力側トルク伝達部材)、コンパニオン
フランジ7、クラッチハブ9(出力側トルク伝達部
材)、多板クラッチ11(摩擦クラッチ:メインクラッ
チ)、ウェーブリング13(弾性部材)、噛み合いクラ
ッチ15(メインクラッチ)、ボールカム17(カム機
構:変換手段)、プレッシャープレート19(押圧部
材)、カムリング21、多板式のパイロットクラッチ2
3、電磁石25(操作手段)、アーマチャ27、コント
ローラなどから構成されている。
【0064】上記のリヤデフはデフキャリヤに収容され
ており、カップリング1もこのデフキャリヤに収容さ
れ、リヤデフの前方に配置されている。デフキャリヤに
はオイルが封入され、オイル溜まりが設けられている。
【0065】クラッチハウジング3は、非磁性体(例え
ば、アルミニウム材料)で作られており、前後に開口部
29,31が形成されている。
【0066】入力軸5は、軸用の磁性体(例えば、スチ
ール材料)で作られており、後部にはフランジ部33が
形成されている。
【0067】このフランジ部33はクラッチハウジング
3の前側の開口部29に嵌合し、ボルト35で固定され
ており、非磁性体のクラッチハウジング3と磁性体の入
力軸5が一体にされている。
【0068】コンパニオンフランジ7は、入力軸5にセ
レーション連結されており、ナット37で固定されてい
る。このコンパニオンフランジ7はプロペラシャフト側
のフランジに連結されることによって、エンジン(トラ
ンスファ)側に連結されている。
【0069】クラッチハウジング3の後側の開口部31
には、磁性体で作られたリング状のロータ39が取り付
けられ、スナップリング41で位置決めされている。さ
らに、ロータ39は、凸部43をクラッチハウジング3
の溝45に係合することによって、クラッチハウジング
3と一体に回転する。
【0070】入力軸5とクラッチハウジング3とロータ
39は、上記のように一体にされており、これらは入力
軸5上のベアリング47とロータ39上のベアリング4
9によってデフキャリヤに支承されている。
【0071】クラッチハブ9は、クラッチハウジング3
の内部に配置されており、前端部をボールベアリング5
1によって入力軸5のフランジ部33に支承され、後端
部をニードルベアリング53によってロータ39に支承
されている。
【0072】また、このクラッチハブ9は、リヤデフ側
のドライブピニオンシャフトにセレーション連結されて
いる。
【0073】多板クラッチ11は、クラッチハウジング
3とクラッチハブ9との間に配置されている。そのアウ
タープレート55はクラッチハウジング3の内周に設け
られたスプライン57に連結されており、インナープレ
ート59はクラッチハブ9の外周に設けられたスプライ
ン61に連結されている。
【0074】ウェーブリング13は、多板クラッチ11
のプレート55,59とクラッチハウジング3の壁部6
3との間に配置されている。なお、ウェーブリング13
は自由長で配置されており、下記のように、プレッシャ
ープレート19に押圧されるまでは撓み(スプリング
力)が生じない。
【0075】噛み合いクラッチ15は、この壁部63に
設けられた噛み合い歯65と、クラッチ部材67に設け
られた噛み合い歯69とで構成されている。このクラッ
チ部材67は多板クラッチ11のインナープレート59
に設けられた貫通孔71を軸方向移動自在に貫通するこ
とにより、インナープレート59と一体に回転しなが
ら、噛み合いクラッチ15の操作方向に移動可能であ
る。
【0076】なお、クラッチ部材67と壁部63の間
に、クラッチ部材67を噛み合いクラッチ15の噛み合
い解除方向に付勢するリターンスプリングを配置しても
よい。
【0077】ボールカム17は、プレッシャープレート
19とカムリング21との間に配置されている。
【0078】プレッシャープレート19は、クラッチハ
ブ9のスプライン61に軸方向移動可能に連結されてお
り、ボールカム17のスラスト力を受けて、多板クラッ
チ11の締結方向と噛み合いクラッチ15の噛み合い方
向に移動する。
【0079】カムリング21は、クラッチハブ9の外周
に配置されており、カムリング21とロータ39との間
には、ボールカム17のカム反力を受けるワッシャ73
とスラストベアリング75が配置されている。
【0080】パイロットクラッチ23は、クラッチハウ
ジング3とカムリング21との間に配置されている。そ
のアウタープレート77はクラッチハウジング3のスプ
ライン57に連結されており、インナープレート79は
カムリング21の外周に設けられたスプライン81に連
結されている。
【0081】電磁石25は、支持部材を介してデフキャ
リヤに固定されており、適度なエアギャップを介してロ
ータ39の凹部83に貫入している。また、電磁石25
は片側シール型のベアリング85によってロータ39に
支承され、エアギャップが適正な値に保たれている。電
磁石25のリード線はデフキャリヤの外部に引き出さ
れ、車載のバッテリに接続されている。
【0082】アーマチャ27はパイロットクラッチ23
のプレート77,79とプレッシャープレート19との
間に配置されており、クラッチハウジング3に取り付け
られたスナップリングにより、プレッシャープレート1
9と接触しないように位置決めされている。
【0083】ロータ39とパイロットクラッチ23とア
ーマチャ27とによって電磁石25の磁気回路87が構
成されている。
【0084】ロータ39は溶接された非磁性体(例え
ば、ステンレス鋼等)のリング89により、径方向の外
側と内側に分割されており、パイロットクラッチ23の
各プレート77,79には、リング89と対応する位置
に、切り欠き91が周方向等間隔に設けられている。こ
れらのリング89と切り欠き91とによって、磁気回路
87の磁力の短絡が防止されている。
【0085】コントローラは、電磁石25の励磁と励磁
停止を行う。
【0086】電磁石25が励磁されると、アーマチャ2
7が吸引されてパイロットクラッチ23が押圧され、パ
イロットクラッチ23が締結されると、クラッチハウジ
ング3からパイロットクラッチ23とカムリング21と
を介してボールカム17にエンジンの駆動力が掛かり、
発生したカムスラスト力を受けてプレッシャープレート
19が前方に移動し、壁部63との間でウェーブリング
13を撓めながら多板クラッチ11を押圧して締結する
と共に、プレッシャープレート19に押圧されてクラッ
チ部材67が移動し、噛み合いクラッチ15(噛み合い
歯65,69)が噛み合う。
【0087】こうして、カップリング1が連結される。
【0088】また、多板クラッチ11のストロークはウ
ェーブリング13を配置したことによって長くなってい
るから、噛み合いクラッチ15の噛み合い開始に先立っ
て、多板クラッチ11の締結が開始され、カップリング
1の伝達トルクが立ち上がり、ウェーブリング13の撓
みが大きくなると、噛み合いクラッチ15の噛み合いが
行われる。
【0089】また、先に締結される多板クラッチ11の
摩擦抵抗を受けて噛み合い歯65,69の相対回転速度
が小さくなり、位相が合い易くなるから、このシンクロ
機能によって噛み合いクラッチ15の噛み合いは円滑に
行われる。
【0090】カップリング1が連結されると、エンジン
の駆動力がカップリング1からリヤデフに伝達され、左
右の後輪に配分されて、車両は4輪駆動状態になり、悪
路走破性、発進性、加速性、車体の安定性などが向上す
る。
【0091】また、電磁石25の励磁を停止すると、パ
イロットクラッチ23が開放されてボールカム17のカ
ムスラスト力が消失し、ウェーブリング13の付勢力に
より各プレート55,59を介してプレッシャープレー
ト19とクラッチ部材67が後退して多板クラッチ11
と噛み合いクラッチ15が開放され、カップリング1の
連結が解除される。
【0092】このとき、上記のように、噛み合いクラッ
チ15用のリターンスプリングが配置されていれば、そ
の付勢力によってクラッチ部材67が後退し、噛み合い
クラッチ15の噛み合いが迅速に解除される。
【0093】カップリング1の連結が解除されると、リ
ヤデフ側が切り離され、車両は前輪駆動の2輪駆動状態
になり、車両の回頭性、旋回性などが向上すると共に、
エンジンの燃費が向上する。
【0094】また、入力軸5とクラッチハウジング3と
ロータ39は一体の密閉容器を形成しており、その内部
には入力軸5のフランジ部33に設けられたオイル孔9
3からオイルが注入される。オイル注入後このオイル孔
93は密封ボール95を圧入してシールされる。
【0095】また、入力軸5のフランジ部33とクラッ
チハウジング3との間にはOリング97が配置され、ク
ラッチハウジング3とロータ39との間にはOリング9
9が配置され、ロータ39とクラッチハブ9との間には
断面がX字状のシールであるXリング101が配置され
ており、それぞれ外部へのオイル洩れを防止している。
【0096】封入されたオイルは、クラッチハブ9に設
けられたオイル溜まり103に保持される。また、クラ
ッチハブ9にはこのオイル溜まり103と連通する径方
向のオイル流路105が設けられている。
【0097】クラッチハブ9が回転すると、オイルはオ
イル溜まり103から各オイル流路105を通り、多板
クラッチ11、ウェーブリング13、噛み合いクラッチ
15、ボールベアリング51などに与えられてこれらを
潤滑・冷却し、さらに、プレッシャープレート19のオ
イル流路107を通り、ボールカム17、スラストベア
リング75、パイロットクラッチ23、アーマチャ2
7、Xリング101などを潤滑・冷却する。
【0098】こうして、カップリング1が構成されてい
る。
【0099】カップリング1は、上記のように、多板ク
ラッチ11に噛み合いクラッチ15を加えてメインクラ
ッチを構成したことにより、摩擦クラッチだけでメイン
クラッチを構成する従来例と較べて、トルク伝達容量が
大幅に増加するから、後輪に充分な駆動力を伝達して、
車両の動力性能を大きく向上させることができる。
【0100】また、充分なトルク伝達容量が得られるか
ら、多板クラッチ11とパイロットクラッチ23のプレ
ート枚数を増やす必要がなくなると共に、これらを大径
にする必要がなくなる。
【0101】このように、プレート枚数を増やす必要が
ないから、オイルの粘性によるドラグトルクの増大が防
止され、多板クラッチ11とパイロットクラッチ23を
大径にする必要がないから、ドラグトルクの影響が増幅
されることはない。
【0102】また、多板クラッチ11と噛み合いクラッ
チ15との間でクラッチ容量の配分割合を任意に設定す
ることが可能であり、例えば、全体のクラッチ容量が同
一の場合、噛み合いクラッチ15の容量を大きくすれ
ば、多板クラッチ11の容量がそれだけ小さくなり、多
板クラッチ11の容量を小さくすれば、ドラグトルクは
それだけ小さくなる。
【0103】こうして、ドラグトルクが極めて小さくな
るから、カップリング1は連結解除操作(電磁石25の
励磁停止)に応じて迅速に、また、完全に連結が解除さ
れる。
【0104】従って、車両は、任意のタイミングで車輪
を切り離し、2輪駆動状態にすることができるから、旋
回性、回頭性などで所望の性能が得られると共に、ドラ
グトルクによるエンジンの燃費への影響が防止される。
【0105】また、2輪駆動状態で後輪を切り離したと
きは、ドラグトルクによる走行抵抗が大幅に低減される
上に、4輪駆動走行時間より遙かに長い2輪駆動走行中
にこのような効果が得られるから、燃費が大幅に向上す
る。
【0106】また、上記のように、充分なトルク伝達容
量が得られるから、パイロットクラッチ23の操作手段
である電磁石25と、多板クラッチ11を押圧するボー
ルカム17も大型にする必要がなくなり、さらに、多板
クラッチ11とパイロットクラッチ23が大径化しない
から、カップリング1は、重量増加、大径化、大径化に
よる周辺部材との干渉などが防止され、車載性が大幅に
向上する。
【0107】また、電磁石25を大型にしないから、バ
ッテリの負担増加と燃費への影響が防止される。
【0108】上記のように、カップリング1は、トルク
伝達容量の増加とドラグトルクの防止とを両立させた上
に、ドラグトルクの影響が極めて小さいから、オイルに
よって充分に潤滑・冷却することが可能であり、高い耐
久性が得られる。
【0109】また、ウェーブリング13を配置したこと
によって、噛み合いクラッチ15の噛み合いより先に、
多板クラッチ11の締結が開始されると共に、締結が開
始されてから終了するまでのストロークが長くなる。
【0110】ストロークが長くなることによって、多板
クラッチ11によるトルクの立ち上がりが緩やかにな
り、カップリング1を連結したときのショックが小さく
なって、車両の乗員が受ける違和感が大幅に緩和され
る。
【0111】また、先に締結される多板クラッチ11の
シンクロ機能によって噛み合いクラッチ15が円滑に噛
み合うから、位相が合うまでに生じるラチェッティング
の時間が短縮され、ラチェット音が大幅に低減されると
共に、噛み合いクラッチ15(噛み合い歯65,69)
の耐久性が向上する。
【0112】また、先に締結される多板クラッチ11に
よってカップリング1の伝達トルクが立ち上がっている
から、噛み合いクラッチ15が噛み合ったときのショッ
クが大幅に低減され、乗員の違和感がさらに緩和され
る。
【0113】また、上記の理由で、噛み合いクラッチ1
5のシンクロ機構が不要であるから、カップリング1
は、シンクロ機構を設けることに伴う構造の複雑化、大
型化、重量増加、車載性への影響、コストの上昇などが
避けられる。
【0114】また、ウェーブリング13を配置すれば、
多板クラッチ11の締結がそれだけ早く始まるから、噛
み合いクラッチ15のシンクロ機能を得ると共に連結時
のショックを低減させる上記のような構成が、ウェーブ
リング13を配置するだけで容易に成立する。
【0115】[第2実施形態]図2によって発進クラッ
チ201(本発明の第2実施形態)の説明をする。
【0116】発進クラッチ201は請求項1,2,3,
4の特徴を備えており、車両のエンジンと自動変速機と
の間に配置されている。以下、左右の方向は図2での左
右の方向であり、エンジンは発進クラッチ201の右側
に配置され、自動変速機は左側に配置されている。な
お、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0117】発進クラッチ201は、エンジンのクラン
ク軸に連結された入力軸203、クラッチハウジング2
05(入力側トルク伝達部材)、磁性材料のロータ20
7(出力側トルク伝達部材)、多板クラッチ209(摩
擦クラッチ:メインクラッチ)、プレッシャープレート
211(押圧部材)、噛み合いクラッチ213(メイン
クラッチ)、ウェーブリング215(弾性部材)、多板
式のパイロットクラッチ217、アーマチャ219、ボ
ールカム221(カム機構:変換手段)、電磁石223
(操作手段)、自動変速機側の出力軸225、コントロ
ーラなどから構成されている。
【0118】入力軸203にはフランジ部材227がボ
ルト229によって固定されており、フランジ部材22
7はトーションスプリング231を介してディスク23
3に連結されている。トーションスプリング231はそ
のダンパー機能によってエンジンの回転変動を吸収す
る。
【0119】クラッチハウジング205は、ボルト23
5によってディスク233に固定されている。
【0120】ロータ207は、出力軸225にスプライ
ン連結されている。
【0121】多板クラッチ209は、軸方向に交互配置
された複数枚のアウタープレート237とインナープレ
ート239とを有し、クラッチハウジング205とロー
タ207との間に配置されている。アウタープレート2
37はクラッチハウジング205の内周に軸方向移動自
在にスプライン連結されており、インナープレート23
9はロータ207に溶接されたリング241の外周に軸
方向移動自在にスプライン連結されている。
【0122】また、これらアウタープレート237とイ
ンナープレート239の左側には受圧部材243が配置
されており、クラッチハウジング205にスプライン連
結され、スナップリング244によって左方に位置決め
されている。
【0123】プレッシャープレート211のボス部24
5は、ニードルベアリング247を介して出力軸225
に支承されており、多板クラッチ209と噛み合いクラ
ッチ213の連結及び連結解除の両方向に移動可能であ
る。
【0124】噛み合いクラッチ213は、リング241
(ロータ207)に設けられた噛み合い歯249と、プ
レッシャープレート211に設けられた噛み合い歯25
1とで構成されている。
【0125】ウェーブリング215は、多板クラッチ2
09の各プレート237,239とプレッシャープレー
ト211との間に配置されている。なお、ウェーブリン
グ215は自由長で配置されており、下記のように、プ
レッシャープレート211に押圧されるまでは撓み(ス
プリング力)が生じない。
【0126】パイロットクラッチ217は、軸方向に交
互配置された複数枚のアウタープレート253とインナ
ープレート255とを有し、リング241(ロータ20
7)とプレッシャープレート211のボス部245との
間に配置されている。アウタープレート253はリング
241の内周に軸方向移動自在にスプライン連結されて
おり、インナープレート255はボス部245に軸方向
移動自在にスプライン連結されている。
【0127】なお、パイロットクラッチ217は多板ク
ラッチ209の径方向内側に配置されており、これらは
径方向に完全にオーバーラップしている。また、噛み合
いクラッチ213も各クラッチ209,213に対して
径方向にほぼオーバーラップしている。
【0128】アーマチャ219は、パイロットクラッチ
217の各プレート253,255の右側に配置されて
おり、リング241の内周にスプライン連結され、スナ
ップリング256によって位置決めされている。
【0129】ボールカム221は、プレッシャープレー
ト211のボス部245とクラッチハウジング205の
円板部257にそれぞれ形成されたカム溝にボール25
9を配置して構成されている。
【0130】このように、ボールカム221はパイロッ
トクラッチ217の径方向内側(クラッチハウジング2
05の回転中心付近)に配置されており、パイロットク
ラッチ217とクラッチハウジング205から大きなト
ルクを受ける。
【0131】電磁石223は発進クラッチ201を収容
するトランスミッションケース261に固定されてお
り、ロータ207に設けられた凹部263に所定のエア
ギャップを介して配置されている。
【0132】ロータ207には非磁性体(例えば、ステ
ンレス鋼)のリング265が溶接されており、このリン
グ265によって径方向の外側と内側で磁気的に絶縁さ
れている。また、パイロットクラッチ217の各プレー
ト253,255には、リング265と対応する位置
に、切り欠きが周方向等間隔に設けられている。これら
のリング265と切り欠きとによって、電磁石223の
磁力の短絡が防止されている。
【0133】トランスミッションケース261は車体側
に固定されており、出力軸225はノーシール型のボー
ルベアリング267を介してトランスミッションケース
261に支承されている。
【0134】コントローラは、電磁石223の励磁と励
磁停止を行う。
【0135】電磁石223が励磁されると、アーマチャ
219が吸引されてパイロットクラッチ217が締結さ
れ、プレッシャープレート211が出力軸225側に連
結され、クラッチハウジング205からボールカム22
1にエンジンの駆動力が掛かり、発生したカムスラスト
力によってプレッシャープレート211が左に移動し、
ウェーブリング215を撓めながら先に受圧部材243
との間で多板クラッチ209を押圧して締結し、さら
に、噛み合いクラッチ213(噛み合い歯249,25
1)を噛み合わせる。
【0136】こうして、発進クラッチ201が連結さ
れ、車両が発進可能になる。
【0137】また、多板クラッチ209のストロークは
ウェーブリング215を配置したことによって長くなっ
ており、上記のように、噛み合いクラッチ213の噛み
合いが始まる前に、多板クラッチ209の締結が開始さ
れて発進クラッチ201の伝達トルクが立ち上がり、ウ
ェーブリング215の撓みがさらに大きくなると、噛み
合いクラッチ213の噛み合いが行われる。
【0138】また、先に締結される多板クラッチ209
の摩擦抵抗により、噛み合い歯249,251の相対回
転速度が小さくなって位相が合い易くなり、このシンク
ロ機能によって噛み合いクラッチ213の噛み合いが円
滑に行われる。
【0139】なお、多板クラッチ209を押圧するボー
ルカム221のカムスラスト力はクラッチハウジング2
05上の受圧部材243に掛かり、カム反力はクラッチ
ハウジング205に掛かるから、多板クラッチ209の
押圧力とその反力はクラッチハウジング205上で相殺
される。
【0140】また、変速時は電磁石223の励磁を停止
する。
【0141】電磁石223の励磁を停止すると、パイロ
ットクラッチ217が開放されてボールカム221のカ
ムスラスト力が消失し、ウェーブリング215の付勢力
によってプレッシャープレート211が右方に戻り、多
板クラッチ209と噛み合いクラッチ213が開放さ
れ、発進クラッチ201の連結が解除されて、変速が容
易になる。
【0142】また、クラッチハウジング205と受圧部
材243との間にはOリング269が配置されており、
受圧部材243とトランスミッションケース261との
間にはオイルシール271が配置されて、発進クラッチ
201を密封型にしている。
【0143】密封型にされた発進クラッチ201は、ロ
ータ205と出力軸225との間にオイル流路を形成
し、矢印273のように、ここから自動変速機のATポ
ンプでATF(オートマチック・トランスミッション・
オイル)を内部に供給するように構成されている。
【0144】内部に供給されたオイルはATポンプの圧
力と、遠心力とによってニードルベアリング247、パ
イロットクラッチ217、噛み合いクラッチ213、多
板クラッチ209、ウェーブリング215などに与えら
れ、これらを潤滑・冷却する。また、オイルはプレッシ
ャープレート211に設けられたオイル孔275からク
ラッチハウジング205の円板部257側に移動してボ
ールカム221を潤滑・冷却し、矢印277のように、
出力軸225のオイル流路279を通って自動変速機側
に戻る。
【0145】なお、受圧部材243とトランスミッショ
ンケース261との間にオイルシール271を配置する
代わりに、受圧部材243とロータ207との間にシー
ル(Oリング)を配置すれば、相対回転部材の間に配置
されるシールがなくなるから、シール及び発進クラッチ
(カップリング)の耐久性が向上する。
【0146】こうして、発進クラッチ201が構成され
ている。
【0147】発進クラッチ201は、上記のように、多
板クラッチ209に噛み合いクラッチ213を加えてメ
インクラッチを構成したことにより、摩擦クラッチだけ
でメインクラッチを構成する従来例と較べて、トルク伝
達容量が大幅に増加するから、車輪に充分な駆動力を伝
達して、車両の動力性能を大きく向上させることができ
る。
【0148】また、充分なトルク伝達容量が得られるか
ら、多板クラッチ209とパイロットクラッチ217の
プレート枚数を増やす必要がなくなると共に、これらを
大径にする必要がなくなる。
【0149】プレート枚数を増やす必要がないから、オ
イルの粘性によるドラグトルクの増大が防止され、多板
クラッチ209とパイロットクラッチ217を大径にす
る必要がないから、ドラグトルクの影響が増幅されるこ
とはない。
【0150】また、全体のクラッチ容量を同一に保ちな
がら、噛み合いクラッチ213の容量を大きくし、多板
クラッチ209の容量を小さくすれば、ドラグトルクは
それだけ小さくなる。
【0151】こうして、ドラグトルクが極めて小さくな
るから、発進クラッチ201は連結解除操作(電磁石2
23の励磁停止)に応じて迅速に、また、完全に連結が
解除される。
【0152】従って、車両は、信号などで停車したとき
のクリープ現象が防止される。
【0153】また、発進クラッチ201によって変速時
に自動変速機がエンジンと完全に遮断されるから、円滑
な変速が可能になる。
【0154】また、自動変速機がシンクロ機構を備えて
いる場合は、シンクロ機構に必要な容量がそれだけ小さ
くなるから、自動変速機が全体に小型軽量になり、車載
性が向上する。
【0155】また、上記のように、充分なトルク伝達容
量が得られるから、パイロットクラッチ217の操作手
段である電磁石223と、多板クラッチ206を押圧す
るボールカム221も大型にする必要がなくなり、さら
に、多板クラッチ209とパイロットクラッチ217が
大径化しないから、発進クラッチ201は、重量増加、
大径化、大径化による周辺部材との干渉などが防止さ
れ、車載性が大幅に向上する。
【0156】また、電磁石223を大型にしないから、
バッテリの負担増加と燃費への影響が防止される。
【0157】上記のように、発進クラッチ201は、ト
ルク伝達容量の増加とドラグトルクの防止とを両立させ
た上に、ドラグトルクの影響が極めて小さいから、オイ
ルによって充分に潤滑・冷却することが可能であり、高
い耐久性が得られる。
【0158】また、ウェーブリング215を配置したこ
とによって、上記のように、多板クラッチ209の締結
が先に開始されて押圧ストロークが長くなるから、多板
クラッチ209によるトルクの立ち上がりが緩やかにな
り、発進クラッチ201を連結したときのショックが小
さくなって、車両の乗員が受ける違和感が大幅に緩和さ
れる。
【0159】また、先に締結される多板クラッチ209
のシンクロ機能によって、噛み合いクラッチ213の噛
み合いが円滑に行われるから、位相が合うまでに生じる
ラチェッティングの時間が短縮され、ラチェット音が大
幅に低減されると共に、噛み合いクラッチ213(噛み
合い歯249,251)の耐久性が向上する。
【0160】また、多板クラッチ209によって発進ク
ラッチ201の伝達トルクが先に立ち上がっているか
ら、噛み合いクラッチ213が噛み合ったときのショッ
クが大幅に低減され、乗員の違和感がさらに緩和され
る。
【0161】また、上記の理由で、噛み合いクラッチ2
13のシンクロ機構が不要であるから、発進クラッチ2
01は、シンクロ機構を設けることに伴う構造の複雑
化、大型化、重量増加、車載性への影響、コストの上昇
などが避けられる。
【0162】また、ウェーブリング215を配置すれ
ば、多板クラッチ209の締結がそれだけ早く始まるか
ら、噛み合いクラッチ213のシンクロ機能を得ると共
に連結時のショックを低減させる上記のような構成が、
ウェーブリング215を配置するだけで容易に成立す
る。
【0163】[第3実施形態]次に、図3と図4によっ
て断続クラッチ301(本発明の第3実施形態:カップ
リング)の説明をする。
【0164】断続クラッチ301は請求項1,2,3の
特徴を備えている。図3は断続クラッチ301を示し、
図4はこれを用いた動力伝達装置303とを示してい
る。また、左右の方向は動力伝達装置301を用いた車
両及び各図での左右の方向であり、符号のない部材等は
図示されていない。
【0165】この車両は、前輪をエンジンで駆動し、後
輪を補助動力(本実施例では電動モータ)で駆動する4
輪駆動車であり、その動力系は、エンジンとトランスミ
ッション、フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前
輪に配分するデファレンシャル装置)、左右の前輪など
から構成される前輪側の主動力系と、電動モータ、電動
モータ用バッテリ、センサーからの情報に基づいて電動
モータを制御するコントローラ、動力伝達装置303、
左右の後輪などから構成される後輪側の補助動力系とで
構成されている。
【0166】通常の走行中は、主動力系を作動させて前
輪をエンジンで駆動し、例えば、発進時、加速時、前輪
が空転したとき、あるいは、登坂時や段差を乗り越える
ときなどのように、大きな駆動力が必要なときに、補助
動力系を作動させて後輪を電動モータで駆動する。
【0167】このように、動力伝達装置303は後輪側
の補助動力系に配置されており、減速機構305、断続
クラッチ301、リヤデフ307、コントローラなどか
ら構成されている。
【0168】動力伝達装置303はケーシング309に
収容されており、このケーシング309は減速機構30
5と断続クラッチ301を収容するギヤケーシング部3
11とリヤデフ307を収容するデフキャリヤ部313
から構成されている。
【0169】また、ケーシング309にはオイル溜まり
が設けられている。
【0170】減速機構305は、3段の減速ギヤ組31
5,317,319と、下記のように、これらが連結さ
れた第1軸321、第2軸323、第3軸から構成され
ており、第3軸は同軸配置された中空の外側軸325と
内側軸327(出力側トルク伝達部材)から構成されて
いる。
【0171】減速ギヤ組315は減速ギヤ329,33
1から構成され、減速ギヤ組317は減速ギヤ333,
335から構成され、減速ギヤ組319は減速ギヤ33
7,339から構成されている。
【0172】減速ギヤ組315の減速ギヤ329は第1
軸321のほぼ中央に形成され、減速ギヤ331は第2
軸323の右端部に形成されている。
【0173】減速ギヤ組317の減速ギヤ333は第2
軸323の左端部に形成され、減速ギヤ335(動力伝
達部材)は外側軸325の右端部に形成されている。
【0174】減速ギヤ組319の減速ギヤ337は内側
軸327の右端部に形成されている。また、減速ギヤ3
39はリングギヤであり、リヤデフ307のデフケース
341にボルト343で固定されている。
【0175】このように減速ギヤ組315,317,3
19は、互い違いに組み付けることによってリヤデフ3
07のデフセンター寄りに配置されている。
【0176】第1軸321はボールベアリング345,
347を介してギヤケーシング部311に支承されてお
り、第1軸321の右端部には後輪駆動用の上記電動モ
ータの出力軸が連結されている。また、第1軸321と
ギヤケーシング部311との間には、外部へのオイル漏
れを防止するオイルシール349が配置されている。
【0177】第2軸323はボールベアリング351,
353を介してギヤケーシング部311に支承されてい
る。
【0178】ボールベアリング351は、第2軸323
の左端部ではなく中央よりに配置されており、こうする
ことによって第2軸323の左端部に、外側軸325と
の係合部(減速ギヤ333)を形成することが可能にな
っている。
【0179】また、第3軸の内側軸327はボールベア
リング355,357を介してギヤケーシング部311
に支承されており、外側軸325はボールベアリング3
59,361を介して内側軸327の外周に支承されて
いる。
【0180】デフケース341はボールベアリング36
3,365を介してデフキャリヤ部313に支承されて
いる。
【0181】上記のように、減速ギヤ組319はリヤデ
フ307側のリングギヤ(減速ギヤ339)を含んで構
成されており、各減速ギヤ組315,317,319と
リヤデフ307は同一のケーシング309に収容されて
いるから、各減速ギヤ組315,317,319とリヤ
デフ307は一体に構成(ユニット化)されている。
【0182】断続クラッチ301は、外側軸325と内
側軸327の間に配置されており、断続クラッチ301
が連結されると、電動モータの駆動力は、減速ギヤ組3
15,317,319によって3段に減速された後リヤ
デフ307のデフケース341を回転させる。
【0183】リヤデフ307は、ベベルギヤ式の差動機
構を備えており、この差動機構は、デフケース341に
固定された複数本のピニオンシャフト、各ピニオンシャ
フト上に支承されたピニオンギヤ、これらのピニオンギ
ヤと噛み合った一対の出力側サイドギヤから構成されて
いる。
【0184】各サイドギヤは、左右のドライブシャフト
367,369にスプライン連結されている。各ドライ
ブシャフト367,369はデフキャリヤ部313から
外部に貫通し、継ぎ手371,373を介して左右の後
輪に連結されている。
【0185】また、各ドライブシャフト367,369
とデフキャリヤ部313との間には、外部へのオイル漏
れを防止するオイルシール375,375が配置されて
いる。
【0186】デフケース341を回転させる電動モータ
の駆動力は、ピニオンシャフトからピニオンギヤを介し
て各サイドギヤに配分され、さらにドライブシャフト3
67,369と継ぎ手371,373を介して左右の後
輪に伝達され、車両が4輪駆動状態になり、悪路の脱出
性と走破性、発進性、加速性、車体の安定性などが大き
く向上する。
【0187】また、悪路などで後輪間に駆動抵抗差が生
じると、電動モータの駆動力はピニオンギヤの自転によ
って各後輪に差動配分される。
【0188】また、電動モータの回転を停止すると、車
両はエンジンの前輪駆動による2輪駆動状態になり、こ
のとき、下記のように、コントローラは断続クラッチ3
01の連結を解除し、後輪による連れ回りを電動モータ
から遮断する。
【0189】図4に拡大して示したように、断続クラッ
チ301は、回転ケース377(入力側トルク伝達部
材)、プレッシャープレート379(押圧部材)、多板
クラッチ381(摩擦クラッチ:メインクラッチ)、噛
み合いクラッチ383(メインクラッチ)、ウェーブリ
ング385(弾性部材)、多板式のパイロットクラッチ
387、カムリング389、ボールカム391(変換手
段)、アーマチャ393、電磁石395(操作手段)、
トロコイド式のギヤポンプ397(図3)、コントロー
ラなどから構成されている。
【0190】回転ケース377は減速ギヤ組317の外
側軸325に溶接されている。
【0191】プレッシャープレート379は、内側軸3
27の外周に移動自在にスプライン連結されており、下
記のように、多板クラッチ381と噛み合いクラッチ3
83の連結及び連結解除の両方向に移動可能である。
【0192】多板クラッチ381は、軸方向に交互配置
された複数枚のアウタープレート399とインナープレ
ート401とを有し、回転ケース377とプレッシャー
プレート379との間に配置されている。アウタープレ
ート399は回転ケース377の内周に軸方向移動自在
にスプライン連結されており、インナープレート401
はプレッシャープレート379に軸方向移動自在にスプ
ライン連結されている。
【0193】噛み合いクラッチ383は、プレッシャー
プレート379に設けられた噛み合い歯403と、外側
軸325(回転ケース377)に設けられた噛み合い歯
405とで構成されている。
【0194】ウェーブリング385は、多板クラッチ3
81の各プレート399,401と回転ケース377と
の間に配置されている。なお、ウェーブリング385は
自由長で配置されており、下記のように、プレッシャー
プレート379に押圧されるまでは撓み(スプリング
力)が生じない。
【0195】パイロットクラッチ387は、軸方向に交
互配置された複数枚のアウタープレート407とインナ
ープレート409とを有し、回転ケース377とカムリ
ング389との間に配置されている。アウタープレート
407は回転ケース377の内周に軸方向移動自在にス
プライン連結されており、インナープレート409はカ
ムリング389の外周に軸方向移動自在にスプライン連
結されている。
【0196】ボールカム391は、プレッシャープレー
ト379とカムリング389にそれぞれ形成されたカム
溝にボール411を配置して構成されている。
【0197】アーマチャ393は、パイロットクラッチ
387の各プレート407,409の右側に配置されて
おり、回転ケース377の内周に取り付けられたスナッ
プリング413によって位置決めされ、プレッシャープ
レート379と接触しないようにされている。
【0198】電磁石395のコア415は、連結部材4
17とボルト419によってギヤケーシング部311に
連結されている。また、コイル421からコア415と
ギヤケーシング部311とを介して外部に引き出された
リード線423は車載のバッテリに接続されている。
【0199】回転ケース377の左端部には電磁石39
5の磁気回路の一部を構成する磁性材料のロータ425
が配置されている。このロータ425は回転ケース37
7の内周に取り付けられたスナップリング427によっ
て軸方向に位置決めされていると共に、ニードルベアリ
ング429によって内側軸327上に支承されている。
【0200】また、カムリング389とロータ425と
の間には、ボールカム391のカム反力を受けるスラス
トベアリング431とワッシャ433が配置されてい
る。
【0201】また、電磁石395のコア415はロータ
425に設けられた凹部435に所定のエアギャップを
介して配置されている。
【0202】ロータ425には非磁性体(例えば、ステ
ンレス鋼)のリング437が溶接されており、このリン
グ437によって径方向の外側と内側で磁気的に絶縁さ
れている。また、パイロットクラッチ387の各プレー
ト407,409には、リング437と対応する位置
に、切り欠きが周方向等間隔に設けられている。これら
のリング437と切り欠きとによって、電磁石395の
磁力の短絡が防止されている。
【0203】コントローラは、電磁石395の励磁と励
磁停止操作、後輪駆動用電動モータの回転と回転停止操
作を行い、電動モータを回転させるときはこれと連動し
て電磁石395を連結させ、電動モータの回転を停止さ
せるときはこれと連動して電動モータの連結を解除す
る。
【0204】電磁石395を励磁すると、アーマチャ3
93が吸引されてパイロットクラッチ387を押圧し締
結させる。
【0205】パイロットクラッチ387が締結される
と、パイロットクラッチ387によって回転ケース37
7側に連結されたカムリング389を介してボールカム
391に電動モータの駆動力が掛かり、発生したカムス
ラスト力を受けてプレッシャープレート379が右方に
移動し、ウェーブリング385を撓めながら先に多板ク
ラッチ381を押圧して締結させ、さらに、噛み合いク
ラッチ383(噛み合い歯403,405)を噛み合わ
せ、断続クラッチ301を連結させる。
【0206】断続クラッチ301が連結されると、電動
モータの駆動力が減速ギヤ組315,317,319を
通ってリヤデフ307に伝達され、車両が4輪駆動状態
になる。
【0207】また、多板クラッチ381のストロークは
ウェーブリング385を配置したことによって長くなっ
ており、上記のように、噛み合いクラッチ383の噛み
合いに先立って、多板クラッチ381の締結が開始され
て断続クラッチ301の伝達トルクが立ち上がり、ウェ
ーブリング385の撓みが大きくなると、噛み合いクラ
ッチ383の噛み合いが行われる。
【0208】また、先に締結される多板クラッチ381
の摩擦抵抗により、噛み合い歯403,405の相対回
転速度が小さくなって位相が合い易くなり、このシンク
ロ機能によって噛み合いクラッチ383の噛み合いが円
滑に行われる。
【0209】また、電磁石395の励磁を停止すると、
パイロットクラッチ387が開放されてボールカム39
1のカムスラスト力が消失し、ウェーブリング385の
付勢力により各プレート399,401を介してプレッ
シャープレート379が左方に戻り、多板クラッチ38
1と噛み合いクラッチ383が開放され、断続クラッチ
301の連結が解除される。
【0210】断続クラッチ301の連結が解除される
と、上記のように、車両はエンジンの前輪駆動による2
輪駆動状態になる。
【0211】コントローラは、車両を発進させるとき、
あるいは、加速するとき、電動モータを回転させると共
に、断続クラッチ301を連結させて4輪駆動状態に
し、エンジンの駆動力に電動モータの駆動力を加えて車
両の駆動力を強化し、発進性、加速性を向上させる。
【0212】また、車速が所定値(例えば、20km/
h)に達すると、コントローラは電動モータの回転を停
止し、これと連動して断続クラッチ301の連結を解除
し、2輪駆動状態にする。
【0213】また、コントローラは、登坂時にも車両を
上記のような4輪駆動状態にし、車両の駆動力を強化す
る。
【0214】この登坂中に、前輪が空転して車両が後退
するロールバック現象が生じると、コントローラは、電
動モータの回転を停止し、断続クラッチ301の連結を
解除する。
【0215】このように、断続クラッチ301の連結が
解除されると、電動モータは後輪から切り離され、後輪
の回転(前進走行時は正転、ロールバック時は逆転)に
よって無理に回されることから解放される。
【0216】また、上記のような発進後の所定車速とは
無関係に、走行中の駆動トルクを大きくしたい場合は、
電動モータを回転させ断続クラッチ301を連結すれ
ば、段差や窪地などの乗り越し性が向上し、車両の加速
性がさらに向上する。
【0217】ギヤポンプ397は、中空の連結軸439
を介して内側軸327に回転駆動され、ケーシング30
9のオイル溜まりから吸い上げたオイルを、連結軸43
9と内側軸327に形成された軸方向のオイル流路44
1,443と、内側軸327に形成された径方向のオイ
ル流路445,447,449から多板クラッチ38
1、噛み合いクラッチ383、パイロットクラッチ38
7、ボールカム391、ベアリング429,431など
に供給し、これらを充分に潤滑・冷却する。
【0218】さらに、このオイルは遠心力によって回転
ケース377のオイル流路451,451から外部に排
出され、オイル溜まりに戻る。
【0219】また、プレッシャープレート391には、
オイル流路453が設けられており、このオイル流路4
53によってオイルの移動が促進され、潤滑・冷却効果
が高まると共に、プレッシャープレート391に対する
オイルの移動抵抗が低減され、多板クラッチ381と噛
み合いクラッチ383の連結及び連結解除のレスポンス
が向上する。
【0220】また、電磁石395のコイル421は、オ
イルによって冷却され特性が安定すると共に、その熱に
よってオイル溜まりのオイルと、周辺のパイロットクラ
ッチ387やボールカム391などを加温し、この暖め
られたオイルが、上記のようにギヤポンプ397から多
板クラッチ381などに送られ、これらの機能を暖めて
動作を安定させる。
【0221】なお、断続クラッチ301は、本発明のカ
ップリングを、エンジンを主駆動力源にし電動モータを
補助駆動力源にした電気自動車に適用した例であるが、
本発明のカップリングは、第2実施形態のカップリング
201のように、エンジンを駆動力源にした4輪駆動車
の切り離し側車輪に用いることもできる。
【0222】こうして、断続クラッチ301と動力伝達
装置303が構成されている。
【0223】断続クラッチ301は、上記のように、多
板クラッチ381に噛み合いクラッチ383を加えてメ
インクラッチを構成したことにより、摩擦クラッチだけ
でメインクラッチを構成する従来例と較べて、トルク伝
達容量が大幅に増加するから、後輪に充分な駆動力を伝
達して、車両の動力性能を大きく向上させることができ
る。
【0224】また、充分なトルク伝達容量が得られるか
ら、多板クラッチ381とパイロットクラッチ387の
プレート枚数を増やす必要がなくなると共に、これらを
大径にする必要がなくなる。
【0225】プレート枚数を増やす必要がないから、オ
イルの粘性によるドラグトルクの増大が防止され、多板
クラッチ381とパイロットクラッチ387を大径にす
る必要がないから、ドラグトルクの影響が増幅されるこ
とはない。
【0226】また、全体のクラッチ容量を同一に保ちな
がら、噛み合いクラッチ383の容量を大きくし、多板
クラッチ381の容量を小さくすれば、ドラグトルクは
それだけ小さくなる。
【0227】このように、ドラグトルクが極めて小さく
なるから、断続クラッチ301は連結解除操作(電磁石
395の励磁停止)に応じて迅速に、また、完全に連結
が解除される。
【0228】従って、特に本実施形態のように補助動力
として電動モータを用いたものでは、回転を停止したと
き断続クラッチ301によって後輪と完全に切り離され
るから、電動モータは後輪の回転によって無理に回され
ることがなくなり、磁界側あるいは回転子側の巻線に掛
かる負担と温度上昇、軸受けに掛かる負担などが軽減さ
れ、電動モータの耐久性が大きく向上する。
【0229】また、ブラシタイプの電動モータでは、ブ
ラシの耐久性も向上するから、ブラシの交換回数がそれ
だけ少なくてすみ、保守コストを大幅に削減することが
できる。
【0230】さらに、電動モータの起電力によってバッ
テリ、オルタネータ、制御回路の構成素子などに大きな
負荷が掛かることが防止され、これらの機能が正常に保
たれると共に、耐久性が大きく向上する。
【0231】また、上記のように、充分なトルク伝達容
量が得られるから、パイロットクラッチ387の操作手
段である電磁石395と、多板クラッチ381を押圧す
るボールカム391も大型にする必要がなくなり、さら
に、多板クラッチ381とパイロットクラッチ387が
大径化しないから、断続クラッチ301は、重量増加、
大径化、大径化による周辺部材との干渉などが防止さ
れ、車載性が大幅に向上する。
【0232】また、電磁石395を大型にしないから、
バッテリの負担増加と燃費の影響が防止される。
【0233】上記のように、断続クラッチ301は、ト
ルク伝達容量の増加とドラグトルクの防止とを両立させ
た上に、ドラグトルクの影響が極めて小さいから、オイ
ルによって充分に潤滑・冷却することが可能であり、高
い耐久性が得られる。
【0234】また、ウェーブリング385を配置したこ
とにより、多板クラッチ381の押圧ストロークが長く
なってトルクの立ち上がりが緩やかになり、連結時のシ
ョックが小さくなって、車両の乗員が受ける違和感が大
幅に緩和される。
【0235】また、先に締結される多板クラッチ381
のシンクロ機能によって、噛み合いクラッチ383の噛
み合いが円滑に行われるから、位相が合うまでに生じる
ラチェッティングの時間が短縮され、ラチェット音が大
幅に低減されると共に、噛み合いクラッチ383(噛み
合い歯403,405)の耐久性が向上する。
【0236】また、多板クラッチ381によって断続ク
ラッチ301の伝達トルクが先に立ち上がっているか
ら、噛み合いクラッチ383が噛み合ったときのショッ
クが大幅に低減され、乗員の違和感がさらに緩和され
る。
【0237】また、上記の理由で、噛み合いクラッチ3
83のシンクロ機構が不要であるから、断続クラッチ3
01はシンクロ機構を設けることに伴う構造の複雑化、
大型化、重量増加、車載性への影響、コストの上昇など
が避けられる。
【0238】また、ウェーブリング385を配置すれ
ば、多板クラッチ381の締結がそれだけ早く始まるか
ら、噛み合いクラッチ383のシンクロ機能を得ると共
に連結時のショックを低減させる上記のような構成が、
ウェーブリング385を配置するだけで容易に成立す
る。
【0239】なお、本発明において、弾性部材の配置箇
所は、摩擦クラッチの押圧側と受圧側のいずれでもよ
い。
【0240】また、弾性部材は、ウェーブリングに限ら
ず、例えば、皿ばね、コイルばね、ゴムやプラスチック
のばねのように、どのような形状、あるいは、材質のス
プリングでもよい。
【0241】また、メインクラッチを構成する摩擦クラ
ッチと、パイロットクラッチは、多板クラッチの他に、
例えば、単板クラッチ、コーンクラッチなどのように、
どのような形式の摩擦クラッチを用いてもよい。
【0242】また、これらは湿式でも乾式でもよい。
【0243】また、多板クラッチや単板クラッチのアウ
タープレートとインナープレートには、カップリングや
発進クラッチに用いられたときに必要な強度、耐久性、
潤滑オイルのような周辺環境に対する適性などの条件に
合わせて、例えば、スティール、カーボン、ペーパーや
これら以外のプレート材料の中から自由に選択すること
ができる。
【0244】また、パイロットクラッチの操作手段は、
電磁石に限らず、電動モータや、油圧アクチュエータの
ような流体圧アクチュエータでもよい。
【0245】
【発明の効果】請求項1のカップリングは、メインクラ
ッチに摩擦クラッチと噛み合いクラッチを併用すること
によって、トルク伝達容量が大幅に増加し、車輪に充分
な駆動力を伝達できる。
【0246】また、メインクラッチとパイロットクラッ
チのクラッチ板枚数を増やす必要がなくなってオイルの
粘性によるドラグトルクの増大が防止され、これらを大
径にする必要がなくなってドラグトルクの増幅が防止さ
れ、さらに、噛み合いクラッチの容量を大きくし摩擦ク
ラッチの容量を小さくすることによって、ドラグトルク
が極めて小さくなるから、カップリングの連結は解除操
作に応じて迅速に、また、完全に解除される。
【0247】従って、このカップリングを4輪駆動車の
動力伝達系に用いた構成では、カップリングで車輪を切
り離す2輪駆動状態で、旋回性、回頭性などで所望の性
能が得られると共に、ドラグトルクによる燃費への影響
が防止される。
【0248】また、充分なトルク伝達容量が得られるこ
とによって、パイロットクラッチの操作手段と、メイン
クラッチを押圧する変換手段とを大型にする必要がなく
なり、さらに、メインクラッチとパイロットクラッチが
大径化しないから、カップリングは、重量増加、大径
化、大径化による周辺部材との干渉などが防止され、車
載性が大幅に向上する。
【0249】また、操作手段の駆動源(例えば、バッテ
リ)の負担増加と燃費への影響が防止される。
【0250】上記のように、請求項1のカップリングは
トルク伝達容量の増加とドラグトルクの防止とを両立さ
せた上に、ドラグトルクの影響が極めて小さいから、オ
イルによって充分に潤滑・冷却することが可能であり、
耐久性がそれだけ向上する。
【0251】また、噛み合いクラッチより先に摩擦クラ
ッチの締結を開始させれば、摩擦クラッチのシンクロ機
能によって噛み合いクラッチの噛み合いが円滑に行わ
れ、ラチェッティングの時間が短縮され、ラチェット音
が大幅に低減されると共に、噛み合いクラッチの耐久性
が向上する。
【0252】また、噛み合いクラッチ用のシンクロ機構
が不要であり、構造の複雑化、大型化、重量増加、車載
性への影響、コストの上昇などが避けられる。
【0253】また、先に締結された摩擦クラッチによっ
てカップリングの伝達トルクが立ち上がっているから、
噛み合いクラッチが噛み合ったときのショックが大幅に
低減され、車両の乗員が受ける違和感が緩和される。
【0254】請求項2のカップリングは、請求項1の構
成と同等の効果が得られる。
【0255】また、弾性部材によって摩擦クラッチの押
圧ストロークが長くなり、トルクの立ち上がりが緩やか
になって連結時のショックが小さくなり、乗員の違和感
がさらに緩和される。
【0256】また、弾性部材を用いたことにより、摩擦
クラッチを先に締結させてシンクロ機能やショック低減
機能などを得る上記のような構成が容易になる。
【0257】請求項3のカップリングは、請求項1また
は請求項2の構成と同等の効果を得ることができる。
【0258】また、ドラグトルクが実質的に防止される
ことにより、2輪駆動状態で車輪を切り離したとき、旋
回性、回頭性などで所望の性能が得られると共に、補助
動力系の走行抵抗が大幅に低減されて燃費が向上する。
【0259】また、電動モータによる補助動力系に用い
れば、電動モータと制御回路の構成素子などが車輪の連
れ回りから保護されて、耐久性が向上する。
【0260】請求項4の発進クラッチは、請求項1〜3
のカップリングを発進クラッチにしたことにより、連結
解除操作に応じてエンジンと変速機とが完全に遮断さ
れ、クリープ現象が防止される。
【0261】また、変速機は、変速時にエンジンから完
全に切り離されて円滑な変速が可能になると共に、シン
クロ機構に必要な容量が小さくなり、シンクロ機構を含
めた変速機が全体に小型軽量になって、車載性が向上す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の断面図である。
【図2】第2実施形態の断面図である。
【図3】第3実施形態などの断面図である。
【図4】図3の第3実施形態部分の拡大図である。
【図5】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 カップリング 5 入力軸(入力側トルク伝達部材) 9 クラッチハブ(出力側トルク伝達部材) 11 多板クラッチ(摩擦クラッチ:メインクラッチ) 13 ウェーブリング(弾性部材) 15 噛み合いクラッチ(メインクラッチ) 17 ボールカム(カム機構:変換手段) 19 プレッシャープレート(押圧部材) 23 パイロットクラッチ 25 電磁石(操作手段) 201 発進クラッチ(カップリング) 205 クラッチハウジング(入力側トルク伝達部材) 207 ロータ(出力側トルク伝達部材) 209 多板クラッチ(摩擦クラッチ:メインクラッ
チ) 211 プレッシャープレート(押圧部材) 213 噛み合いクラッチ(メインクラッチ) 215 ウェーブリング(弾性部材) 217 パイロットクラッチ 221 ボールカム(カム機構:変換手段) 223 電磁石(操作手段) 301 断続クラッチ(カップリング) 327 内側軸(出力側トルク伝達部材) 377 回転ケース(入力側トルク伝達部材) 379 プレッシャープレート(押圧部材) 381 多板クラッチ(摩擦クラッチ:メインクラッ
チ) 383 噛み合いクラッチ(メインクラッチ) 385 ウェーブリング(弾性部材) 387 パイロットクラッチ 391 ボールカム(カム機構:変換手段) 395 電磁石(操作手段)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力側と出力側の各トルク伝達部材と、
    これら両トルク伝達部材の間でトルクを伝達するメイン
    クラッチと、操作手段によって断続操作されるパイロッ
    トクラッチと、パイロットクラッチを介して入力する伝
    達トルクを増幅しながら押圧力に変換する変換手段と、
    この押圧力によってメインクラッチを押圧し連結させる
    押圧部材とを備え、前記メインクラッチが、互いに並列
    に配置された摩擦クラッチと噛み合いクラッチからなる
    ことを特徴とするカップリング。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の発明であって、摩擦ク
    ラッチの押圧側、または、受圧側に弾性部材を配置した
    ことを特徴とするカップリング。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の発明で
    あって、4輪駆動車において2輪駆動走行時に切り離さ
    れる車輪側の動力伝達系に配置され、この車輪を断続す
    ることを特徴とするカップリング。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れか一項に記載された
    カップリングの入力側トルク伝達部材をエンジン側に連
    結し、出力側トルク伝達部材を変速機側に連結したこと
    を特徴とする発進クラッチ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008095704A (ja) * 2006-10-05 2008-04-24 Aisin Seiki Co Ltd 電磁連結装置
WO2015116691A1 (en) * 2014-01-30 2015-08-06 Borgwarner Inc. Composite friction and dog clutch
JP2017125533A (ja) * 2016-01-13 2017-07-20 株式会社ジェイテクト 噛み合いクラッチの制御方法及び制御装置

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